前世の短い生涯を終えた紫陽花《しおか》。異世界に転生した今世では、どんなことが待ち受けているのでしょうか・・・?
ぜひ、お楽しみください!
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目次
第一部1
初作品です!まだまだ拙いですが、頑張ります!
「|紫陽花《しおか》。助けてやれなくてごめんな。」
「本当にごめんなさい。もうすこし早く気づいてあげていれば・・・」
「おねえちゃん・・・」
「父さん母さん。そんな自分を責めないで。|芹《せり》も心配してくれてありがとう。みんなと家族だっただけで幸せだったよ。」
「「「|紫陽花《しおか》・・・」」」
「みんな・・・ありが・・・と・・・だ・・・よ・・・」
ピーーー・・・
・・・・
「ん・・・」
「オルタンス!目が覚めたのね・・・よかった・・・」
(ここは・・・?)
ぐるん・・・
「うっ!?」
「オルタンス!?」
(・・・そうか、私転生したんだ・・・)
‘’私‘’ことオルタンスの前世は日本の小学生・|開紫陽花《ひらきしおか》。
前世の体は難病でとても弱く、その短い生涯を終えた。
そしてオルタンスとなり、階段から落ちて意識が飛んだタイミングでこのことを思い出したようだ・・・
(もう家族と会えないんだね・・・)
「ふっ・・・うっ・・・うぇ〜・・・」
「どうしたのオルタンス?痛かったよね・・・お母さんがいるからね・・・」
気持ちの整理がつかず、こっちの母であるクロエに抱きつく。
「えっく・・・お母さん・・・」
「オルタンス・・・」
母も苦しい表情をしていた・・・
--- ---
しばらくして、やっと飲み込めた私は、「もう大丈夫」といって母から離れた。
母はほっとした表情をして、
「じゃあ申し訳ないけど、お母さんご飯の準備したいから、セシルとリナ見ててくれる?」
と頼まれた。
セシルとリナは私の妹で、2人は双子だ。
ただ、セシルは盲目で、リナはとても病弱である。
正直面倒だし、さっきまで意識が飛んでた人に頼むことではないが、あの2人は誰かが見てないと大変なことになる。
私は苦い顔をしたのを必死に隠して
「ん、いいよ。」
と答えた。
「ありがとう。2人はそこにいるから・・・」
といって母は去っていった。
--- ---
ずっとベッドで横になっていた体を起こし、周りを見渡して、ここの庶民の生活水準の低さを感じた。服も建物も何もかもボロボロなのだ。
そんな部屋の隅っこのベッドでリナは横たわっていて、そのそばにはセシルがちょこんと座っていた。
・・・にしても2人とも可愛い。天使だ。
「あぁお姉ちゃんおはよう。もう大丈夫?」
セシルは目が見えない分、耳や感覚がいいようで、私が体を起こすとすぐに気づいた。
「おはようセシル。私は大丈夫だよ!リナこそ大丈夫?」
「うん!今はよく寝てるよ。」
「そっか。よかった。」
私はよいしょっとベッドを降りて、2人のところへ向かった。
ちなみに年は、私が7歳、セシルとリナが5歳だ。
私はもうすぐ8歳になり、誕生月になったら教会で洗礼式を受ける予定だ。
私がかけよると、セシルが遊びたそうにこっちを見たので、
「セシル。何して遊ぶ?」
と声をかける。セシルは考える仕草をしたあと、
「んーとね・・・“今何が聞こえたゲーム”!」
と答えた。今何が聞こえたゲームとは、目が見えないセシルのために私が考案したゲームで、より多くの音を聞き取れた方が勝ち。というゲームだ。耳のいいセシルは大得意で、まだ1回しか勝ったことがない。
「よし!それをやろう。制限時間は夜ご飯まで!よーく耳をすましてね・・・」
「うん!」
・・・う〜んなかなか聞き取るのは難しい・・・
家はボロボロではあるが、密閉はしっかりしてるのだ。
「あっ!今リントの鳴き声が聞こえた!」
「えっほんと!?やっぱりセシルは耳がいい!」
ちょっと悔しい。・・・ん?この音は!
「はい!馬車の音!」
「お姉ちゃんはや〜い!・・・隣のお店の閉まる音だ!」
「いや、セシルも速いよ・・・」
2人であーだこーだ言っていると、家の中からいい音がしてきた。
この音は・・・
「「お母さんの料理する音!」」
「あっかぶった!」
「じゃあ2人とも特典ね!」
「いえ〜い!そして、お母さんが上がってくる音!」
「ずる〜い!セシル!私も気づいてた!」
「お姉ちゃんが先に言わなかったのがわるいじゃん。」
「うっ・・・」
私がわざと大げさに図星の顔をすると、セシルが「あはは!」笑い出した。つられて私も笑い出す。
ひとしきり笑ったところで母がやってきて、
「みんな、ご飯よ・・・ってリナが寝てるわね・・・お母さんリナを起こしてから行くから、先に座って待ってて。」
と言った。私はセシルと
「は〜い!」
と仲良く答えて、2人でくすくす言いながら台所の方に向かって行った。
--- ---
台所のそばのテーブルに、すでにご飯が用意されていて、私はリナと一緒のパン粥で、一応労わってくれているようだ。セシルと母は、小さいオムレツとそこらへんで取れた野菜のサラダだった。
少しすると、母がまだ眠そうなリナを連れてきて座った。
「お待たせ2人とも。さあ食べましょう!」
「うん!」
「「「「幾千の時をかける、自然の三大神に感謝を捧げ、いただきます。」」」」
これは、この世界のいただきますの挨拶で、少し長いけど、みんな覚えている。
ただ私は、一瞬前世の記憶と混ざってしまい、少しつかえてしまった。
とりあえずスープに口をつける。
「美味しい・・・!」
どうやら現代と変わらないぐらいの食文化はあるようだ。
すると母が心配するように私を見て、
「どう?あなた病み上がりだから・・・それでよかった?」
と聞いてきた。全然余裕なので、
「うん!これで大丈夫!ありがとうお母さん!」
と答えた。その後も4人でわいわいしゃべりながら食べている途中で、あることに気づいた。
「セシル。お野菜全然食べてないじゃん・・・もしかして苦手?」
「・・・うん。」
まぁ子供なんてそんなものだ。どうしようかと考えていると
「あらごめんなさい。セシルは苦手だったよね・・・お母さんが食べようか?」
と母が言った。でも、セシルが食べるチャンスを逃したくない。
・・・あれならいける!
「ちょっと待ってお母さん。私、セシルがお野菜美味しく食べられる方法思いついたの!」
私の突然の発言に、母は一瞬目を丸くしたが、いつもの顔に戻り、
「じゃあやってみなさい。」
と許可してくれた。
「うん!ありがとう。・・・ところで、これとこれとこれとあれって使ってもいい?」
「えぇもちろんよ。」
私が取り出したのは、マヨネーズの元となる調味料と卵だ。
私は、昔見たレシピ通りに作っていく。
最後に少し味見して、
「・・・できた!」
「あら真っ白。・・・これをどうするの?」
「サラダにかけるんだよ!結構美味しく食べられると思うよ!」
「ほんと?お姉ちゃん・・・」
「ほんとだよ!ほらほら!」
とセシルのサラダにマヨネーズをかける。
セシルが疑心暗鬼という感じで野菜を口に入れる。
「・・・!美味しい!こんな美味しくお野菜食べたことない!」
なんとセシルが野菜をパクパク食べ始めた。
・・・マヨネーズの力、すごい。
セシルがあんなに喜んで食べるものだから、母も慌ててかけて、ずっと無口だったリナも「食べたい・・・」
とこぼしていた。
大満足で夕食が終わり、すぐに湯浴みになった。と言っても湯船はなく、お湯で濡らしたタオルで体を拭くだけだ。
私もまだ自分ではうまく拭けないので、母が姉妹3人いっぺんに拭く。
それが終わると、今日はもう寝るのだ。
「夜の女神があなたたちの成長を守りますように。おやすみなさい。」
「「「お母さん、おやすみなさい。」」」
ここの挨拶は長ったらしい。でもしょうがないことだ、と割り切った。
そのあとセシルとリナはすぐに寝たけど、私は寝付けずにいた。ゴロゴロしながら眠気が来るのを待っていると、ギッとドアの音がして、母が入ってきた。
「オルタンス・・・まだ起きてる?」
「お母さん・・・どうしたの?」
「ちょっとオルタンスに聞きたいことがあって・・・こっちにきてもらってもいい?」
「うん。」
突然の呼び出しに、私は意味も分からずついていった・・・
--- ---
「ちょっと待ってて。」と言われ椅子に座って待っていると、
「夜は冷えるから・・・はいこれ。」
コトッという音とともに、甘い匂いが漂った。どうやらハチミツレモンみたいなものをいれてくれたようだ。
「ありがとうお母さん。」
「いいのよ・・・まだ“お母さん”なのね・・・」
「?」
母がぶつぶつ言っていたことを聞き返そうと口を開いたら瞬間、
「ねぇ、オルタンス。」
と言われた。私は慌てて口の形を変えて、
「なぁに?お母さん。」
と答えた。
「あなたって・・・本当にオルタンス?」
「!?」
まさか、異世界転生がばれたというのだろうか。
「だって、オルタンスだったら私のこと母さんっていうし・・・最初は意識が飛んでアレなのかなぁって思ったけど・・・“マヨネーズ“だっけ・・・あんなのオルタンスだったら思いつかないわよ・・・」
「・・・」
やらかしてしまった。オルタンスの記憶は朧げだったからあれだけど、お母さんなんて言わないし、マヨネーズなんか作れない。
「うん。お母さんの言う通りだよ・・・私は、オルタンスであってオルタンスじゃない。・・・だましてしまってごめんなさい。」
「いいのよ。だって中身が違っても、私の大事な娘、オルタンスだもの・・・」
「お母さん・・・!」
私たちはまた抱き合った。今度は母も涙を流している。
落ち着いたあと、私たちはまた少しおしゃべりした。
「そういえばもうすぐあなたの洗礼式ねぇ・・・」
「そうだね。・・・洗礼式ってどんな感じなの?」
「近所の誕生月の同じ子何人かで教会にいって、魔力量とかスキルとかの判定を受けるの・・・
私は魔力が少ないけど、水魔法が少し使えて、作曲スキルがあるのよ・・・それである程度稼いでるわ。」
確かに。母が歌いながら何か書いてるのを、見たオルタンスの記憶がある。
「私はどんなのだろうねぇ・・・」
「ふふっ楽しみね。」
「うん!」
「さぁそろそろ寝ましょうか。夜の女神があなたを癒してくれますように。」
「お母さんも。おやすみなさい。」
母がまた挨拶してくれたので、母と同じお辞儀っぽいポーズをして挨拶を返した。
その後も妹たちや近所の同い年、アイリス、エアニーなどど遊んだりしながら洗礼式までを過ごした。
--- ---
洗礼式当日。母が縫ってくれた深緑の豪奢なワンピースをきて、朝ごはんを食べに向かった。深緑は、私が住んでいるこの国の国色らしい。
テーブルに着くともうみんないて、
「おはよう。とっても素敵よ。」
「お姉ちゃんきれー!」
「素敵ですお姉ちゃん!」
と口々に褒めてもらった。私は照れながら
「ありがとう!」
と笑顔で返した。
朝ごはんを食べ終わって時間になったので、外に出ると、アイリスとエアニーが同じ深緑のワンピースを着て待っていた。
「おはよう!アイリス、エアニーおめでとう!」
私はとりあえずおめでとうと言っておく。
「ありがとうオルタンス。オルタンスもおめでとう!」
「ありがとうなオルタンス。お前もおめでとう。」
2人も私を祝ってくれた。
「ありがとう2人とも!」
その後も続々とご近所さんがきて、私たちを祝ってくれた。私はとにかく「ありがとうございます!」と返した。
そうこうしているうちに普段はならない教会のベルがなり、出発となった。
沿道からの祝福を聞きながら歩いていると、他の地域から出てきた子たちと合流し、また合流して、いつのまにかかなりの人数になっていた。
教会につくと、神父様や神官の人たちが待っていて、続々と中に入った。
全員が椅子に座り、落ち着いたところで神父様が話を始めた。話は、前世の世界で言う神話的なもので、結構面白かった。
そうして判定が始まった。まぁみんな庶民なので、ありふれたものばかりだった。
ちなみに、アイリスは“風魔法(少)、料理スキル”エアニーは“土魔法(少)、鍛治スキル”だった。いよいよ私の番だ。
「ではこの水晶に触れなさい。」
私は言われた通りに水晶に触れた。すると、
「っ!?」
眩い光が当たりを包み込んだ。
「なっなんだ!?」
さすがの神父様も驚いていた。
数秒したところで光は消え、私の結果がうつしだされた。
「なっなんだこれは・・・」
神父様がまた驚いた。
私もゆっくりと結果を見ると、
「ー!?」
私も驚いてしまった。
だって、“全魔法(大強)、全スキル”ってなってて、さらに加護やらなんやらがたくさんついていた。
・・・もしかしてこれ、転生チートってやつでは・・・?
そんなことをぼんやり考えていると、神父様が神妙な顔つきをして
「ユール。このものを“例の場所”へ連れて行きなさい。」
「かしこまりました。」
と神官に命令していた。
そのユールと呼ばれた男が私に近づいてきて、
「失礼します。」
と私をひょいっと抱き上げて教会から出ようとしていた。
「ちょっと!どこに連れていくんですか!?」
「申し訳ありません。それにはお答えしかねます。」
私がバシバシ叩いて抵抗しても、びくともしない。おまけに質問をしてもすべてかわされてしまう。
エアニーやアイリスが
「おい!オルタンスをどこに連れていくんだ!」
「オルタンスを返してください!」
と必死に抗議しても、全部無視している。
「本当にどこにいくんですか?」
「・・・」
ついには答えなくなってしまった。
「はぁ・・・」
私はこれからどうなるんだろうと絶望しながら連れられること5分。
「お待たせいたしました。こちらでございます。」
「え・・・?」
神官が指さしたのは、とても大きな建物だった・・・
第一部1終わり
ここまで読んでくださり、ありがとうございます!初めてなので、まだまだなところはありますが、これからも温かい目で見守ってくれると幸いです。
さて、洗礼式の後、とても大きな建物のところまで連れ去られてしまったオルタンス。そこはいったいなんなのでしょうか・・・そして神父はなぜつれさらわせたのでしょうか・・・?
次回もお楽しみください!
第一部2
第一部の第2話完成しました!
洗礼式で、突然連れ去られてしまったオルタンス。
一体何があるのでしょうか・・・?
「お待たせいたしました。こちらでございます。」
「え・・・?」
洗礼式で、神官に連れさられること5分。着いたのは、とても大きな建物だった。
驚いている私を抱き抱えたまま、神官はつかつかと建物に入っていく。
「ユールにございます。」
そう神官が名乗りを告げると、スッと内扉が開いた。
建物の中も豪華なものばかりで、ここの主人が、とてもお金持ちなことは理解した。
目を見張っているうちに、一室の扉の前に着き、今度は何も言わなくても開いた。
「どうぞお入り。」
女の人の声がした。
部屋に入ると、神官がすっと母がよくやる動きをしたので、私も慌ててそれをやる。
「失礼いたします・・・お久しぶりです、ユゲット女伯爵殿下。本日は|かのもの《・・・・》を連れてまいりました。」
「春の夫婦神の光輝くよき日、よくまいりました。そのものにも挨拶させて頂戴。」
早く挨拶しろと、神官に小声で言われる。
私は、神官と貴族であろう女性の挨拶を参考に、それっぽいことを喋る。これでどうだろう。
「お初にお目にかかります、ユゲット様。オルタンスと申します。春の夫婦神の光輝くよき日、新たな出会いがあることに感謝します。」
ちなみに、ここの世界の庶民には苗字がない。なので、名前を名乗るしかないのだ。
すると女性が驚いたような表情をして、
「あら・・・ずいぶんしっかりしてるのね・・・初めまして。私は、ユゲット・アンジェリーヌです。これからよろしくお願いしますね。」
と挨拶を返してくれた。
顔をよく見るとかなり美しい人で、まだかなり若そうにも見えた。
ふと、隣の神官を見ると、真剣な表情をして、
「では、ユゲット様。お願いしてもよろしいでしょうか?」
と何かを頼んでいた。
「はい。準備させますから、ユールお茶でも飲んでいてください。」
「かしこまりました。」
「ではオルタンス。こちらへ来てください。」
「・・・?かしこまりました。」
私は何が起こるのか不思議に思いながら、ユゲット様の後ろをついて行った・・・
また別の一室に案内された私は、
「ここで待っていて頂戴。」
と言われ待つこと数分。
「待たせてしまってごめんなさいね。」
とユゲット様とユゲット様の侍女が戻ってきた。侍女は、洗礼式で見たものより何倍もある水晶玉と金属板を持っていた。
「では、こちらに触れていただけるかしら?」
「はい。」
どうやら私の結果を再確認するようだ。
私はさっきと同じように水晶に触れた。
またあの強い光が当たりを包み、結果が出た。
「まぁ!・・・なるほど・・・全部に適性があって、その中でも聖魔法が・・・」
ユゲット様は一瞬驚いたあと、何かぶつぶつ言い始める。ちなみに、本人である私には見えなかった。
「はい、よくわかりました。オルタンス。大事な話があるから、こちらに座ってちょうだい?」
ユゲット様がいつになく真剣な表情をする。
「・・・かしこまりました。」
私は背中に冷や汗をかくのを感じながらユゲット様の話を聞いた・・・
「オルタンス。あなたは、全魔法と全スキルに適性があることまでは知っているわよね?」
「はい。」
「神父が連れてこさせた理由はそれだわ。一応決まりみたいなものなの。」
「なるほど。」
どうやら理由はそれらしい。強い子をここに連れてくるのは決まりのようだ。
「それで、あなたが1番強かったのが聖魔法なのよ・・・この国で最上級の・・・」
「!」
どうやら私は、かなり強いらしい。
-チートってやばい・・・
「あの水晶はね、より細かいところまでわかるの。それであなた・・・転生者よね?」
「!・・・はい。そうです。」
どうやらそこまでバレてしまったらしい。
「まぁこの国ではそこまで珍しいことじゃないですけどね・・・ここまで強いのは初めてですけど・・・」
強いのは否めないが、他にも転生者がいることに安堵した。
「それで、ここからが大事なんだけど・・・あなた、私の|養女《むすめ》にならない?」
「はい!?」
思わず声を荒げてしまった。庶民である私が、上級貴族の|養女《むすめ》だなんて・・・
「ちゃんと理由はあるのよ。まず、魔法を使う機会の少ない庶民では、あなたの体が壊れてしまうかもしれない。もう一つは、あなた経営のスキルが特に強いのよ。私、息子がいるんだけどね、あの子経営なんてからっきしだから・・・あなたに任せたいなって・・・」
「私なんかに任せて良いんですか?」
いくらスキルがあるといっても、一応他人だ。なんでなのだろう・・・
「もちろん。だって、お店を経営したいって、あなたの前世の夢じゃないの?」
「!」
そう。前世の私の夢は、お店を経営することだった。まさかそこまで見られてたとは・・・
「・・・少々考える時間をください。」
いくら夢が叶うといっても、大好きな家族と別れる決断ができない。
それに、相談しなきゃいけない。
「えぇ。また来週呼びますから、その時に答えを聞かせてちょうだい。」
「かしこまりました。では、失礼させていただきます。」
「えぇ。またよろしくね。」
こうして私は、新たな世界に片足を突っ込むことになった・・・
「「オルタンス!」」
建物から出ると、アイリスとエアニーがいた。
「2人とも・・・私を探しにきてくれたの?」
「あったり前だろ!友達の一大事なんだから!」
「それで、何があったの?」
2人が心配そうに私を見つめる。本当に頼もしい友達だ。
「上級貴族のユゲット様に養女になることを勧められた・・・私、魔力が多いから、庶民のままだと体壊しちゃうんだって・・・」
私は2人にざっくり説明した。
「はあ!?それほんとかよ!?」
「どうするのオルタンス・・・貴族になっちゃうの・・・?」
案の定2人は驚いていた。
「まだ決めてない。やっぱお母さんと相談しないと・・・」
「まぁ、そうだよね。」
「あっ!いけない。おばさん、すごいお前のこと心配してたぜ。早く帰ってあげたほうがいいかも。」
「そうだね。2人ともありがとう。帰ろっか。」
「ああ!帰ろうぜ!」
「ふふ。そうね。」
そういって私たちは、夕暮れの道を歩いた・・・
「ただいま。」
「オルタンス!・・・よかった・・・」
「お姉ちゃん帰ってきた!」
家に着くと、母とセシルが待っていてくれた。
私は2人にギュッと抱きつく。
「ごめんね。遅くなっちゃって。」
「いいのよ・・・それにしても何があったの?」
「実は・・・」
私は今日あった一切の事情を話す。
2人は驚いたような悲しんだような表情をして、
「そんなことがあったの・・・」
「お姉ちゃん・・・」
と言葉も出ないという感じだった。
「それで、1週間後答えを言いにいかなきゃいけないんだけど・・・どうすればいいんだろう・・・」
私は悩んでいることも伝えた。すると、
「オルタンス。ユゲット様のところに行きなさい。」
「え?お母さん!?」
「そうだよお姉ちゃん。そのほうがお姉ちゃんのためになるよ。」
「セシルまで・・・」
なんと2人から即答をくらった。なんでなんでなんだろう・・・
「そりゃ一緒にこのまま暮らしたいけど・・・私は覚悟してたのよ。だって、風邪の原因が大体魔力だったもの・・・」
「そうだったんだ・・・」
どうやら母はもう覚悟を決めていたらしい。
「きっと、あなたの世界を広げてくれるわよ。私はあなたがより幸せな道を歩んでくれたほうがいいわ。」
母の言葉にさらに後押しされ、私もやっと覚悟を決めた。
「お母さん・・・わかった。私、ユゲット様のところに行く。1週間後一緒にきてくれる?」
「えぇもちろん!」
頼もしい言葉に思わず笑顔になる。
「じゃあ一週間後、よろしくね。」
「わかったわ。さて、ご飯にしましょう。お腹空いちゃったでしょ。リナも起こしてこなきゃね。」
「うん!セシル、一緒にリナ起こしに行く?」
「うん!」
私はセシルと一緒に部屋へと向かっていく。
こうして私は、家族と別れることになったのだった・・・
第一部2終わり。
第一部の第2話終了です。それと同時に、第一部も終了します。これからもこのシリーズは、2〜3話ごとにステージを変えていきます!よろしくお願いします!
さて、家族と別れ、ユゲットの元へ向かうことになったオルタンス。貴族となった彼女には一体どんなことが待ち受けているのでしょうか・・・?次回もお楽しみに!