カラフルピーチのシェアハウスがある、『虹天市』に伝わる伝承、“妖怪天生”。
この街のどこかに結界石があり、それをどかすと妖怪達の町へ行くことができると言う。
その伝承を知ったカラフルピーチは、同じ街に住むいんく、ぷちひなフレンズ、たまちゃんにこのことを伝える。メンバー達は絶対触らないようにしよう、と約束した。
ところが、ひょんなことで結界石が動いて、妖怪の町への通路が姿を現したのだ。
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目次
⓪
--- |妖怪天生《ようかいてんしょう》とは ---
--- 生前人間達と共存し、人間達を助けるために生きた怪物が、怪物特有の特殊能力を持ったまま、人間として転生し再び生きること。 ---
--- 妖怪天生した怪物は、`アヤカシビト`と呼ばれる。 ---
登場人物
|竜王大和《りゅうおうやまと》(じゃぱぱ)
|桃井乃愛《ももいのあ》(のあ)
|黄瀬辰哉《きせたつや》(たっつん)
|姫澤優亜《ひめさわゆうあ》(ゆあん)
|柴本賢治《しばもけんじ》(シヴァ)
|白石《しらいし》どぬく(どぬく)
|宇野里音《うのりおん》(うり)
|橙野恵麻《とうのえま》(えと)
|灰瀬真弘《かいせまひろ》(ヒロ)
|朝霧直斗《あさぎりなおと》(なおきり)
|森岡文彦《もりおかふみひこ》(もふ)
|水城瑠奈《みずきるな》(るな)
|風峰隼人《かざみねはやと》(ふうはや)
|小森信太《こもりしんた》(りもこん)
|登山秋華《とやましゅうか》(しゅうと)
|藤棚襲《ふじだなかさね》(かざね)
|田淵風知《たぶちふうち》(ぷちぷち)
|田淵雛子《たぶちひなこ》(ひなこ)
|本多犬都《ほんだけんと》(ぽん太)
|鏡愛夢《かがみあむ》(いむ)
|猫井玉《ねこいたま》(たまちゃん)
メインキャラクター
|鬼頭涙華《きとうるいか》
鬼のアヤカシビト。怪力の持ち主。
|河瀬美波《かわせみなみ》
河童のアヤカシビト。泳ぐのが得意。
|長花天乃《おさはなあまの》
天狗のアヤカシビト。空を飛べる。
|想田《そうだ》りさと
さとり妖怪のアヤカシビト。相手の心が読める。
街の人々(主に出でくる人)
|口縄有希《くちなわゆき》(メドゥーサ)
|八代正蛇《やしろせいじゃ》(ヤマタノオロチ)
|魚橋夏海《うおはしなつみ》(人魚)
|座敷堂陽鞠《ざしきどうひまり》(座敷わらし)
|堤灯里《つつみあかり》(提灯お化け)
|鎌田伊達《かまだいたち》(かまいたち)
|沙花叉猫寧《さかまたねね》(ねこまた)
|絆狸徒《きずなりと》(化け狸)
|九条狐白《くじょうこはく》(九尾の狐)
|銀狼月海《ぎんろうるか》(狼男)
ブラッドリー・キュラン(吸血鬼)
|招門金子《しょうもんかなこ》(招き猫)
福来商店街の管理人。
|芥子ヶ原心《けしがわらこころ》(こけし)
福来孤児施設の施設長。
|赤瀬弁悟《あかせべんご》(赤べこ)
福来病院の院長。
|緑谷逹馬《みどりたにたつま》(達磨)
福来農協の組合長。
|張本《はりもと》こいぬ(犬張子)
福来図書館の館長。
|高麗川戦奴《こまがわせんと》(狛犬)
福来警察署の警視総監。
|鬼頭竜瓦《きとうりゅうが》(鬼瓦)
涙華の叔父で鬼瓦探偵事務所の所長。
①
お婆さん「・・・と言うことがあり、私は妖怪の町を見ることができたのです」
目の前で淡々と話を続けるお婆さん。それをじっと聞いていた|姫澤優亜《ひめさわゆうあ》は、信じられないと言う顔をしていた。
この日、優亜の高校では|虹天《こうてん》市に昔から住むお婆さんに来てもらい、この街に伝わる伝承を語ってもらっていた。その伝承が、『|妖怪天生《ようかいてんしょう》』。人間と友好的な関係を築いていた妖怪が、その特殊能力を持ったまま人間に生まれ変わり、結界で隔てられた町に暮らしている・・・というものである。
このお婆さん・・・|竹内伊予《たけうちいよ》さんは、実際に妖怪の町に行ったことがあると言う。
優亜(絶対嘘だろ)
優亜はこう言う話は信じないタイプ。帰ってから|竜王大和《りゅうおうやまと》に話をする時も、嘘だと思っていた。
大和「・・・妖怪天生、か」
優亜「正直信じられないけどね。あんだけ言うなら嘘とは思えないけど・・・けどなぁ」
辰哉「そーいや、俺のばーちゃんもその現象に遭遇した言いよったな」
|黄瀬辰哉《きせたつや》が口を挟む。辰哉の祖母は、数年前に亡くなったばかりだった。
大和「たっつんのおばあちゃんも?それなら本当かもな・・・」
優亜「じゃぱぱは信じんの?すごい嘘くさい話なのに」
辰哉「なんかロマンあるやん?それにその妖怪人間に会ってみたいわ!」
優亜「相変わらず厨二だなお前」
乃愛「なんのお話してるんですか?」
たまたまリビングを通りかかった|桃井乃愛《ももいのあ》が、話に加わった。
大和「妖怪天生って言う伝承の話。知ってる?」
乃愛「あー、知ってますよ。大学の時に書いたレポートで、その伝承を調べたことがあるんです」
辰哉「わざわざ調べたんか⁉︎すごいなぁのあさん!」
乃愛「初めて知った時に、なんだか興味深いなって思ってたんですよ。あまり信じないタイプのゆあんくんには、まだ早い話かもしれませんね」
優亜「そういうもんなの?」
辰哉「まぁまぁ、もし結界石?を見かけたら、触らんようにすればええ話やん?単純なことやで」
優亜「その結界石がどんなのかわかんないんじゃん!」
大和「あはは・・・一旦静かにしようか?」
その時は大和に諌められ、話は終わった。
優亜は、どうしてもこの話に納得できなかった。
②
数日後。
夏コラの時期になり、優亜はいつものメンバーに妖怪天生の話をしてみた。
予想通りというべきか、誰もそんな伝承は聞いたことがないらしい。
優亜(だと思ったよ)
メンバーのるなが復帰したため、そっちの方が注目すべき話題だったのもあるだろう、誰も興味を持たなかった。
ところが、ある日突然それは起きた。
いつものように配信をしていると、地震が起きた。震度4程度だったため建物に被害はなく、震源地もからぴちハウスから少し離れた場所だったようだ。
どぬく「ゆあんくん大丈夫⁉︎怪我してない⁉︎」
優亜を心配して白石どぬくが走ってきた。
優亜「大丈夫。そっちは?」
どぬく「さっき外を見てきたんだけど、何ともなかったよ。庭石がちょっとずれてたくらい」
優亜はほっとした。でも、これがきっかけとなり、妖怪天生の伝説が再び始まった。
真弘「あれ?こんな扉あったっけ?」
恵麻「いや、なかったと思う」
からぴちハウスの廊下に、見たこともない古びた扉が現れた。
大和「・・・開けるの?」
真弘「気になるし」
恵麻「このメンバー、100枚の扉の世界から脱出したし?まぁ大丈夫だって」
大和「えぇ・・・」
|橙野恵麻《とうのえま》が、扉に手をかける。
ガチャ
扉の先には、虹色に光るトンネルが待ち構えていた。
バタン
|灰瀬真弘《かいせまひろ》はすぐさま扉を閉めた。
真弘「やっぱりやめとこ?」
恵麻「だね」
大和「はやっ」
3人は扉から離れていった。
3人が去った後、扉の奥から誰かの目がのぞいていた。
そして翌日。
里音「・・・ん?」
|宇野里音《うのりおん》は、廊下に知らない誰かの姿が見えた気がした。
誰かが向かったと思われる先に向かうと、やはり赤髪の女の子の姿があった。女の子は里音の方には気づいていないようで、そのままどこかに向かっていく。
しばらく追いかけると、見覚えのない扉が一枚。昨日真弘達が見た扉である。
女の子は扉を開けて入っていき、再び戻ってくることはなかった。
?「何してるんですか?」
里音「あっ、なお兄」
花瓶の手入れを終えたばかりの|朝霧直斗《あさぎりなおと》に声をかけられ、里音は我に帰った。
里音「さっきこの中に、からぴちのメンバーじゃない子が入っていってさ」
直斗「気になりますね・・・。ふうはやさんがこういうの詳しいと思いますよ。今日来ることになってますし、僕が調べて欲しいって言っておきます。__僕はこういう都市伝説には弱いので・・・__」
里音「助かる。んじゃ頼むわ」
③
隼人「なるほどねぇ・・・。もしかしたら、妖怪天生かもな。前にゆあんくんが言ってたんだけど」
里音「あぁ・・・あれか。イマイチ信じられねー」
直斗「どうします?中入りますか?」
隼人「何があるのか気になるからなぁ・・・。どうしよう」
3人でこそこそ話していると、扉が開いた。
3人「・・・」
女の子「・・・」
廊下に四つの悲鳴が鳴り響いた。
女の子「勝手に上がり込んで本っっっっ当に!申し訳ありませんでしたぁぁぁ!」
女の子は必死に土下座をして謝った。
大和「ちょ、待って待って!謝罪はわかったから顔上げて!」
女の子は|鬼頭涙華《きとうるいか》と名乗った。
涙華「まさか人の家に扉が繋がってるなんて、思ってもいなくて・・・。」
瑠奈「あの扉、一体なんなんですか?」
|水城瑠奈《みずきるな》が興味津々で尋ねる。涙華は言いづらそうだった。
襲「無理に言わなくてもいいよ。今すぐ知りたいわけじゃないしね」
|藤棚襲《ふじだなかさね》が慌てて付け足し、それを聞いて安心したのか、涙華は話し始めた。
涙華「・・・私、アヤカシビトって言う種族なんです」
優亜「アヤカシビト・・・妖怪天生の」
涙華「はい。私は生前、赤鬼だったんです。子供が好きで、よく村の子供達と追いかけっこをして遊んでました。力には自信があったので、村のお仕事を手伝ったりもしてました。自分で言うのもなんですが、村の人達の信頼は・・・大分得ていたと思います」
文彦「その頑張りが認められ、人間に生まれ変わることができた・・・と。そう言うことですね」
|森岡文彦《もりおかふみひこ》が簡単に話をまとめ、涙華はその通り、とでも言うように何度も頷いた。
涙華「村を流れる川に橋をかけようとして、足を踏み外して・・・。そのまま流され、滝壺に落ちてしまったんです。そして気がつくと、私は人間の赤ちゃんになっていました」
賢治「アヤカシビト本人が言うと、説得力すげえな」
|柴本賢治《しばもとけんじ》が感心しながら相槌を打った。
秋華「えーと・・・事情は分かりましたけど、あの扉の向こうって何があるんですか?」
信太「それ俺も気になった」
|登山秋華《とやましゅうか》の一言に、|小森信太《こもりしんた》も反応を示した。
涙華「普通に私達が暮らしてる町がありますよ」
辰哉「ドラゴンおるんか⁉︎」
身を乗り出して聞く辰哉に、涙華は冷静に答える。
涙華「ドラゴンのアヤカシビトはいないですけど、ヤマタノオロチのアヤカシビトならいますよ」
辰哉「マジすか⁉︎行きたい行きたい!そこ行ってみたいんやけど⁉︎」
涙華「うーん・・・お詫びになるかはわからないですが、皆さんを私の住む町にご招待します」
⑤
?「よってらっしゃい見てらっしゃい!ワタクシ・|招門金子《しょうもんかなこ》運営の|福来《ふくらい》商店街やでぇ!美味しいものも便利なものも、なんでも揃っとりまっせ〜!」
商店街の入り口には大きく『well come福来商店街』という看板がかかっている。そしてその前で、招門金子と名乗る女性が大声で客寄せをしていた。
涙華「金子さーん!」
金子「ん?おぉ、るいるいやんか!最近顔見てなかったけど、元気そうでよかったわ!」
涙華「すみません、金子さんがいる時間より前に出て、金子さんが客寄せやめた後に帰ってたので」
金子「なんや、アタシ嫌われとるんか〜笑?にしても、その金子さんって呼び方やめ!普通になーこって呼んでや!」
涙華「でも金子さん、招き猫の九十九神ですよね・・・?そんなすごい人にそんな呼び方できないですよ」
金子「ははは、そんな偉い人ちゃうねんから、もっと気楽に接してくれてええんやで!」
大和「あの、この方って・・・」
金子「んぉ、何やお前さん?この辺りじゃ見ぃひん顔やの」
涙華「この町の外から来てくださったんです。扉がまさか、人の家に繋がってるなんて・・・」
金子「ほーん、なるほど!事情はわかったで!アタシは招門金子、ここ福来商店街の管理人や!なーことでも呼んでくれ、よろしゅうな!」
大和「竜王大和です。友達の桃井乃愛、黄瀬辰哉、|田淵雛子《たぶちひなこ》さん、|小森信太《こもりしんた》さんです」
金子「よう来んさった!ささ、案内しますんでこちらへ!」
金子に促されるまま、5人は商店街の中へ。涙華も先頭に立ち、商店街を案内してくれた。
船幽霊の魚屋、雷神の電気屋、ピエロお化けの玩具屋、山姥の肉屋。確かに元お化け達が経営する店が並んでいるのに、不思議と不気味さや怖さは感じなかった。
涙華「ここ。このカフェの上が、叔父ちゃんの事務所です」
八尺カフェという店の横にある階段を登り、ドアを開ける。金子とはここで一旦お別れだ。
涙華「叔父ちゃん!ただいま!」
涙華叔父「おぉ、涙華!おかえり!その人達は?」
涙華「外の世界の人達です!」
涙華の話を一通り聞いた叔父は、大きく頷き、5人を椅子に座らせた。
竜瓦「改めまして、わが町にようこそ。涙華の叔父の|鬼頭竜瓦《きとうりゅうが》です」
竜瓦は涙華が外の世界に出てきていた理由、そしてこの商店街の歴史、金子のことを詳しく教えてくれた。
これを読んでる親友兼相棒へ
ごめん!書いてるうちに登場させたくなった!
たっつんとの絡み多くするから許して!
④
大和「お詫びになるかわからないっていう割には、すんごい楽しいよねここ・・・?」
涙華が暮らす町にやってきた大和達は、さっきまでの緊張感は一転、めちゃめちゃ楽しんでいた。特にこういう異世界ものには目がない辰哉、ホラー好きの直斗、隼人のはしゃぎっぷりは異様なものである。いやお前ら大人だろ。
涙華「結構不思議な雰囲気でしょ?私も大好きな町なんです」
涙華の町・アヤカシ城下町は、和洋折衷建築であった。日本の瓦や漆、漆喰などがふんだんに使われているマンションや一軒家が立ち並び、真ん中にあるアヤカシ城は、形は外国の三角屋根の城で、建材は日本のものが使われていた。洋風街なのか和風街なのか、どっちともいえない雰囲気だった。
襲「日本の雰囲気は感じるけど、でも英国っぽいんだよね・・・うまく言葉にできないな」
涙華「私の友達を呼んでます。そろそろ来ると思いますよ」
?「お待たせぇ」
涙華「あっ、天乃ちゃん!美波ちゃんにりさとちゃんも!」
美波「|河瀬美波《かわせみなみ》よ。種族は河童、涙華の友人なの」
天乃「同じく友達の|長花天乃《おさはなあまの》だよぉ!種族は天狗!」
りさと「|想田《そうだ》りさと、さとり妖怪のアヤカシビト」
涙華「この子達が私の友達です!」
涙華は町のことを色々教えてくれた。
涙華には両親はおらず、探偵事務所を経営する叔父のもとで暮らしているんだとか。町は大きく四つのエリアに分かれていて、涙華は商店街エリアに住んでいるらしい。美波は埠頭エリア、天乃は森林エリア、りさとは都会エリアに住んでいるとのことである。
涙華「せっかくなので、みなさん好きなとこに行ってもらって構いませんよ。この町はそこまで広くもないですし、よければ案内しますので!」
辰哉「ヤマタノオロチのアヤカシビト何処おるん⁉︎」
天乃「それなら森林エリアだよ〜!こっちこっち!」
辰哉は一目散に天乃に着いて行った。その後を慌てて里音、文彦、襲、|猫井玉《ねこいたま》が追って行った。
大和「涙華さん、俺君の叔父さんに会ってみたい」
涙華「わかりました。それじゃ、商店街エリアに向かいましょうか。誰かついていきたい方います?」
乃愛「商店街・・・美味しいお菓子売ってるといいなぁ」
賢治「のあさんそれしか考えてないやん笑、俺も行くけど」
雛子「気になる〜!あたし行きたーい!」
信太「じゃあ俺も〜!」
涙華「では行きましょう。着いてきてくださいね」
涙華の先導で、5人は商店街エリアに出発した。