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目次
鬼滅の刃 if
尽きるのは、鬼か、人か。
私は貴族だった。一人の兄を持ち、恵まれた環境で日々を過ごしていた。これからも、そんな日々が続くのだろうと、漠然と考えていた。…奴が生まれなければ。
「男の子…ですよね。」3人目の兄弟が産まれた。名前は、ない。死産を宣告されて産まれた男だからだ。私の家には、奇妙な風習がある。
昔から、死して産まれた者の魂を弔うために、その赤ん坊を喰う。今回、奴が死して産まれたがため、その役に抜擢されたのは、私と兄だった。死臭が漂う赤ん坊を、口を開けてかじったこと、今も忘れない。
あの時は、己が野生の動物になったような気がしていた。
そして兄と私のせいで腹が少しえぐれた弟は、火葬の場において、初めての産声をあげた。それが、私と兄の破滅の元凶であり、御家断絶の理由にもなった。
生まれてきたこと。それが、3人目の弟、鬼舞辻無惨の最初の罪であった。
書いてて楽しかった
鬼滅の刃 if 2
尽きるのは、鬼か、人か。
「うぐああああああああああああああああああああああああっ!!!」深夜、私は激しい痛みで目が覚めた。生後間もない鬼舞辻無惨を喰い、火葬場にて奴が目覚めたその夜のことだ。体の痛みが止まらない。なんだ。なんなんだ。泡を食って父親を呼ぼうとしたが、声がかすれてか細いものしかでない。身体中に血管が浮き出て、当時十歳だった私は恐らく死ぬ寸前だった。そのまま何時間も叫び続けただろうか。私は一週間の昏睡状態に陥った。一週間後、兄も同じ状態だったことが明かされる。
「咲桜(さおう)、俺たちは何であんなに痛くなったんだ?」
「時彦(ときひこ)兄様、おそらく、人を食べてしまったからです。」
私たちは、後に気付く。鬼へと変容していた無惨の血を大量に摂取したことによって、我々兄弟は鬼となっていたことに。
書いてて楽しかった。
鬼滅の刃 if 3
尽きるのは、鬼か、人か。
私が11歳の夏、私と兄は家を追われた。その後すぐ、鬼舞辻家が原因不明の事故で壊滅したとの報告を受ける。何故か、無惨の遺体だけなかったそうだ。理由は、分かるような気がする。そして11歳の冬、私と兄は決別する。私は鬼の力を嫌い、鬼を見つけ出し殺す道へ。兄は鬼の力に酔いしれ、人を痛める殺戮の道へ。兄は積極的に人を喰らう。私は、鬼になってから一度たりとも人を喰ったことはない。
私は、数百年のうち、みるみるやせ細っていき、弱体化していった。そして、ある雨の夜の日のことだった。「うぐっ…ぐおおおおお…」私は人の代わりに木の皮などを喰って生きながらえていた。正直に言おう。不味い、臭い、満たされない。私の頭髪は、元の紅色から、うすれて桜色になっていた。肌は異常な白であり、目は落ちくぼみ、はっきりほとんど死んでいた。後悔はしていない。いっそ死んでやろうかと夜明けを待とうとしたとき、後ろで逆巻く熱風の気配を感じた。
ハッと後ろを振り向くと、私の首に闇夜に光る刀身が添えられていた。その刀の持ち主は、私の生涯を決める指針となった人間。始まりの呼吸の使い手、継国縁壱だった。
書いてて楽しかった。
鬼滅の刃 if 4
尽きるのは、鬼か、人か。
「…何故、殺さない。」私は目の前の男に問うた。男…もとい、継国縁壱は淡々と答えた。
「私は、任務に反する殺しはしない。あの男でなければ」私は、それがだれかわかるような気がした。
「鬼舞辻無惨」その名を私が口にした途端に、縁壱の刀が熱を帯び始めた。首筋がじゅっと焼かれたような気がする。「何故その名を知っている」私は話した。兄がいること。無惨が生まれたこと。家が途絶えたこと。兄も自分も鬼であるということ。
語り終えた私は、疲れて岩にもたれた。朝日が目に眩しい。…朝日?私は気づいた。身体が焼けないのだ。いままでは燃えるような痛みに苦しめられていたと言うのに。まさか。
「克服した…?」数百年間、人間を食わずに生きていたことで、私は鬼ではなくなっていたのだ。一応、指をちょっとだけ切ってみたところ、再生なんてしなかった。しかし厳密には、完全に人間に戻った訳ではない。依然として私の身体には鬼の血が流れているし、身体能力も常人以上にある。
「お前は」縁壱の声で現実に引き戻される。
「兄がいるのか?」「はい。兄は鬼であることを誇りに思っているそうですが」
「家族も、奴に殺されたのか」「はい。」
縁壱は、何事か思案している様子だった。いつ切られるか、たまったものじゃない。
生殺与奪の権は、もれなく縁壱が握っているのだ。余計なことは喋れない。
「お前、私と修行の旅にでるつもりはないか」「はい?」
なんて言ったんだ、この人。自分から言うのもなんだけど、鬼ですよ、私は。
「私にも兄がいる。家族も、奴に殺された。同じ境遇の者を、放っておくことはできない。」
願ったりの提案だった。私にも、野望がある。
「私は、兄上を殺さなければなりません。それができるならば、どこまでもついてゆきます。」
こうして、私と縁壱の修行の旅が始まった。
日輪刀というものを縁壱の指導のもと扱い始めてから、3年が経過した。
「おお…これは…!」
「よくやった。それが全集中の呼吸。使い手によって様々な技があり、鬼に有効打を与えられる初歩の技。私は、己の呼吸を特性上、『日の呼吸』と呼んでいる。お前は、自らの呼吸に、何と名付ける」名前…。季節は、春。私達を囲む満開の桜の木を眺めながら、私は万感の想いを込めて応えた。
「『桜の呼吸』にします」
縁壱が、出会ってから初めての笑顔を見せた。
「良い」
そして、さらに1年後。私と縁壱は、鬼狩りの組織、『鬼殺隊』に入隊した。といっても、縁壱が正式入隊なのに対して、私は鬼ということで特例として、お館様の許可のもと、秘密裏に入隊することとなった。私の、人間としての再生の物語が始まった、ように思えた。
書いてて楽しかった。1章が終わった。2章も楽しみにしてくれると嬉しい。(しょっちゅう投稿)