ここは県ナンバーワンの高校1年10組。
そこである男子が一人の女子に恋をした。
20話ほどの予定のままで行けなさそうです。少し伸びますごめんなさい。
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目次
1.彼女は気高い…と思った
夜明様へ
途中で矛盾もありますが、目をつむっていただけると嬉しいです。もしよかったら、大学生編も読んでください。
ガラガラ。
その音が聞こえてオレは見た。美しい女の子を。なぜそう思ったのかは分からない。顔は不細工ではが美人というほどではない。しかしなぜか彼女は美しいと思えた。
その人は「おはようございます。」と少しためらいながらもはっきりと言った。
その声に気付いて顔をあげた人もいる。しかし大半が初対面の教室。誰も返事をしない。みんな井俊驚いた顔をし、けれど無視した。
しかし彼女はその事を気にせず、いや、「おはようございます。」と言ったことまで忘れたかのように普通に自分の席を探し、前の席に座った。それはあなたたちに興味はない、と言われても納得できるほどだった。
彼女は一人、読書を始めた。彼女にとっては周りはただの背景、オレを眼中に入れない人がいる。
そのことがこれからの学校生活を楽しみにさせた。
「皆さん、ご入学おめでとうございます。歴史あるこの|白明《はくめい》高校に入学した皆さんなら…」校長の話は長いけど、実体験が入ってて、つまらなくはなかった。
教室に戻った。
「1年10組の担任になりました、小野田|楓《かえで》です。担当は国語。趣味は読書です。お勧めの本があればぜひ教えてください。一年間、よろしくお願いします。」
お手本みたいに基本情報しかない、簡素な自己紹介だった。この先生に対する評価はまだ分からねえなと思う。
「西中学から来ました青羽夏目です。趣味はゲームです。仲良くしてください。」
「第二中学から来ました石橋咲です。友達をたくさん作りたいです。よろしくお願いします。」
そして、オレが美しいと思った彼女の番がやって来た。
「|檍《あおき》中学校から来ました|水無瀬《みなせ》|洸《ほのか》です。趣味は読書です。よろしくお願いします。」
短かった。少し自信なさげだったように見えた。彼女は自分の見られ方を自覚していないのだろうか?
しかし、それだけでも彼女の自己紹介は影響があるだろう。これからは読書をする人が増えるかもしれない。そう思った。
そして、その次であるオレの出番もまわって来た。
「北海道から来ました、|牟田《むた》|傑《すぐる》です。まだこっちには慣れていませんが、よろしくお願いします。」
オレくらいだと、これくらいで注目が来る。まず北海道というのが印象強め。そしてオレはもう顔を知られている。だからこれだけで十分だ。
…だから、同じように自己紹介が簡潔だった先生の評価をまだ決められない。
「「「さようなら」」」
今日はもう帰宅だ。しかし、友達はまだいないからしゃべる人もいない。とりあえずオレは自己紹介でゲームが趣味だったやつらに早速声をかけた。
「誰か今日一緒にゲームやんねえ?」
当然といえば当然だが3人ぐらい集まった。一人一人に声をかけたんだからそれくらいないと困る。そしてみんな友達は欲しい。だから誘われればのる。
前の席の水無瀬さんは、もう帰っていた。
そういえば、周りには興味がなさそうだったのに、なぜ彼女は挨拶をしたのだろう?
少し短いですが、これにて一話です。これからどうなるのでしょうか?私にもわかりません。そんな作品是非よろしくお願いします
2.彼女は人見知り
「部活決めた?」
ちなみにこの質問を投げたオレはもちろんまだ決まっていない。運動部には入りたいと思っているけど、別に帰宅部でもいい。
「俺サッカー部」
「僕は卓球部かな。」
どうやらみんな決めているようだ。
「何?前原はまだ決めてねえの?」
「そう。あ~あ、どうしよっかな…。」
「そういえばこの学校、確か百人一首部とバスケ部が強いらしいよ。」
「強いってどれくらい?」
「全国大会行くくらい。」
「横田、それ本当?」
「だから多分だって。」
「まあいいか、後で確認しよう。参考にはさせてもらうわ。」
ちなみにこの横田|翔《しょう》は、卓球部と言っていた男子だ。
入学式から一週間がたった。オレには話せるぐらいの人はたくさんでき、楽しく平和な学校生活を送っている。
初めのころは、北海道での暮らし、引っ越してきた理由、などなど色々聞かれたが、普通に答えてたら、みんな飽きてきたようだ。
最近の俺の趣味は人間観察だ。特に水無瀬さんの観察は面白い。
まあ…前の席だから観察しやすいというのもある。
というか、水無瀬さんしかまだ観察できていない。
———
水無瀬さんは、ずっと読書をしている。
中学校からの友達はいないようだ。
初めは他人に興味自体がないのかと思ったけれど、話しかけられれば答えるからどうやらそうではないらしい。
ただ、ちょっと詰まりながら話してる。しゃべるのが苦手なのかもしれない、と思っていた。
授業は真面目だ。先生にあてられても普通に答えるし、この県で一番の学校の中でもまあまあ高い位
置に相当していそうだと思った。直観だ。いいライバルになってほしいなと思う。
あと、彼女にもよくしゃべる人ができたようだ。
彼女の隣の席の山下さん。名前はまだ覚えていない。前の人の隣なわけで同じ班にあたるわけだが、、、
水無瀬さんはとても楽しそうだ。声も大きい。しゃべるのは苦手ではないと、そこで気付いた。
そうすると、初めの日に挨拶をしたことも納得できる。
そして、オレは納得した。《《彼女は人見知りなのだ》》と。
———
あと、これは観察には関係ないけど、水無瀬さんはどうやらもう男子に人気なようだ。
水無瀬さんを見て美しいと思ったのは俺だけではないらしい。
放課後、バスケ部と百人一首部に行ってみた。
バスケ部は練習がきつそうだった。が、一年生もちらほら見えた。
百人一首部は凄かった。まず、百首覚えて、試合になるとその場所を覚えて、その首が詠まれたらその歌の続きにあう札を取るのだ。
どちらがやりがいがあるのだろうと思った。
百人一首部のような気がした。
そこに前から興味のある水無瀬さんがやってきた。
もう彼女は入部しているらしい。
オレは百人一首部に入ることを決心した。
第二話です。少し長めに作ってみました!
これから学校も始まって、更新速度は遅くなると思われますが、ぜひよろしくお願いします。
3.彼女はお気楽さん
白明高校は3学期制だ。
これが何を意味するかというと、一学期中間テストがまもなく行われる、ということだ。
オレたちが入学してから、まだ一カ月もたっていないときのことであった。
オレも成績はいいが、なにぶん首席なもんで周りからの見えないプレッシャーが強い。
とはいっても、そんなものを気にするオレじゃないんだが。
テストなんてものは、二週間前に始めれば何とかなる。それがオレの持論であり、実際今までそうして過ごしてきた。
嬉しいことに今回のテスト範囲は狭い。一週間前でもなんとかなる…のだが、百人一首部に入ったくせにまだ百首覚えられていないため、それに時間を割こう、という算段だ。
今の時間は自習。先生はいない。前の中学だったらここでうるさくなるんだが、今のところまだ静かだ。さすが進学校。
ずっと勉強をしていても飽きるから、そんな時は前の席を観察する。
水無瀬さんは静かに読書をしていた。
**おい! 今は自習の時間だろ! テスト前なんだから勉強しろよ!**
最近気付いたが、彼女は変人だ。しかしどうやら本人には自覚がなさそうだ。
少し彼女に同情する。
ただ、前の席で本を読まれるのは気になる、が、この静かな空気を壊したくない。
大体、自分のことに集中しなかった俺が悪いといえばそうだ。
諦めて自分の勉強に戻る。
授業終了5分前。
教室がざわつき始めた。
**あと5分だろ! 真面目にやれよ!**
今日の放課後は部活があった。
部活のおかげで水無瀬さんとしゃべるようになり、人間観察(分析)は進んでいる。
「水無瀬さん、今日の自習中、本読んでたよね?」
直球に聞いてみた。彼女はオレに慣れてくれたのか、普通に明るい声でしゃべってくれる。他の男子から羨まれるが、悪い気はしない。
「え? 怒られるわけでもないから別にいいんじゃないの? ちゃんと自習課題終わらせてたし。」
「いや、読書は自習じゃないよ?」
「中学では私が本好きだとばれていたから、ちゃんとやるべきことやっていたら見逃してくれたよ?」
「けど、テスト前じゃん」
何言ってんだろう、オレ。突っ込むところそこじゃないでしょ。
見逃してくれてたってことは悪いことじゃん、なんでそっちを言わなかったんだろう。
「テスト勉強なんて一週間前にすればいいほうじゃない? 何?もうテスト勉強していたの?」
「そうだよ」
「そんなことする余裕があるなら、百人一首覚えたらどう?」
正論だった。しかも彼女はとっくに百首覚えている。
「百人一首を覚える余裕を作るために、2週間前からやってるんだ。」
しかしこちらも正論だ。
「ふうん。じゃあテスト後にはさぞかし覚えているだろうね。全部いけるかな~?」
「知らねえよ。未来のオレに聞け。」
「ん? ま、楽しみにしとくわ。テストの結果とともに。」
言い忘れてたが、彼女は毒舌だ。あとSっぽい。人が困っているのを見て楽しそうにしている。
「テストの結果に関しては楽しみにしておけ」
家に帰って、課題を開いていた、が彼女の楽しげな笑顔が頭から抜けない。
テスト勉強をしようとすると、彼女に言われたことを思い出す。
オレ、どうかしてるよなぁ…。
それと同時に自覚し始めている。最近、他人を分析するようになり、自己分析にまで手を出したおかげだ。
あぁ…オレ、彼女に恋をしているかも…
第三話、これにて終了です。
恋心が芽生えるの早すぎたかな?
次回は彼女視点で投稿したいと思います!
どうぞこの作品をよろしくお願いします。
4.私はまがい物
私の名前の|洸《ほのか》、という字は、「水が沸き立ち光る様子を指し、勇ましさや堂々としたさま、またはほのかでかすかな、はっきりしないさま」を指すらしい。
私はこの名前を結構気に入ってる。
だって、影響力はあるに越したことはないけど、影響が大きすぎると、動きづらくなる。ほのかでかすかに、けど影響力も少し持つ、それぐらいがいい。
はっきりしないというのもまた好きだ。二者択一でもはっきりさせずに過ごすことができる。正確にも一貫性がなくても良い。
これほど囚われることが嫌いな人(私)に合う名前はなかなかないだろう。
白明高校に入学して初のテストの1週間前、私は今日も部活に行っていた。
中間テストだから5日前からテスト期間なのだ。ちなみに、テスト勉強はまだ始めていない。テスト範囲は狭いから、何とかなると思っている。
一年生の部員は私を含め10人。1年10組からは2人だ。そのもう一人は、後ろの席の牟田…何っだっけ? まだ覚えていない。
彼は同じクラスということもあってよくしゃべっていたけど、ここ1週間、より話しかけられている気がする。まあ首席だし成績がよさそうだし、実際テストには自信を持っているようだ。話す内容にもどこら辺が重要だというテストに関する知識が入ってくるから損でもないし、まあいいか、と思ってる。
あと…そうだ、彼は反応が面白い。これは結構重要。成績いいけど、優等生って感じではないから話しやすい。私もたぶん成績いい方だけど、真面目っぽいからそこはうらやましいな、と思う。
「水無瀬さん、オレ、もうあと20首だよ」
え⁉ これには驚いた。
「20首? 50首までってこと?」
「ちげえよ、百首まで。」
うん、知ってる。
「は? あんたおかしいでしょ。一週間前でまだ30ぐらいだった人がテスト勉強と一緒にするようになったのに40首覚えたの? ありえないありえない。」
「テスト勉強の息抜きにしてたから…」
はあ!? 息抜きに暗記物するの? どんなけ真面目なんだか。
「つまり、今までもちゃんとしてれば一週間で40首行けたんだね? さぼってたんだ。」
あ~楽しい。反応も面白いけど、真面目に返してくるところとか新鮮で面白い。
「…」
詰まった詰まった!
牟田くんクラスでも人気者なのにそんな人が一般人に口論で負けるのを見るのって楽しいよね♪
しかもまわりの女子がイケメンイケメン騒いでる。
整った顔だとは思うけど…よくわからない。
戻るけど…さぼってるのは私も一緒。あんな風に言ってるけど私もまだ覚えていないのが数種ある。
しかもそれを覚えようとしていない。
私なんて、口からのでまかせをいっぱい言っている、思ってもないことは言えない時もあるけど、自分にできていないことを他人にさせている。
そんな私は、誰から見てもきっとまがい物だろう。
まがい物だからと言って、誰からも指摘されないうちに、私は私らしく過ごす。
こんな感じでどうでしょう?
これにて第四話です。
彼女の自分の見方と人の見られ方には大きな差があるようです。
読んでくださってありがとうございました‼
5.彼女は真面目?
百人一首豆知識
百人一首にはA級、B級、C級、D級、E級があり、A級が一番強い。
テスト結果が返ってきた。
一位をとれた。
水無瀬さんに点数を聞くと30点差ほどで4位だったという。
「水無瀬さん…本当に一週間前から勉強したんだよね?」
「え? 今回は5日前からだったよ?」
・・・自信喪失
「なんでそんなに点数いいの?」
「牟田こそ点数取ってんじゃん」
最近彼女は呼び方を変えた。
友達も前は名字に「さん」付けだったのに、最近は下の名前に「ちゃん」だったりあだ名だったりしている。
男子を呼び捨てにすることも増えた。
聞くと、本来はこっちだが、進学校だからと遠慮してたらしい。
本音を言おう。呼び捨てになって嬉しかった。
「オレは2週間前から勉強してたからいいの」
「その合間に息抜きと称して百人一首覚えてたのに?」
それは…早く水無瀬さんと試合がしたくて一生懸命覚えた…とはもちろん言えない。
結局は言われるがままなのだ。
まあ彼女が楽しんでるからいいのだが。
「で、なんでそんなに点数いいの?」
「あ、逃げた。」
「いいから答えろよ。」
「なんか書いてたら覚えられてきた?みたいな?」
書いているんだ。意外と真面目だった。しかしそれだけでは学年四位は納得できない。
「無理があるだろ」
「えー、あとは…特にないね。」
かわされた。彼女はいつも通りのらりくらりとしている。
「はいちょっとそこの二人、話聞いてる?」
パンパンと手をたたく音が聞こえた。部長さんだ。
「もちろんでーす。」
俺が答える前に彼女が答えてくれた。
百人一首部の部長は緒方日和先輩。A級というすごい人だ。
「あ、そうだ牟田くんは今日から練習に参加するのよね?」
「はい、そうです。」
「じゃあ今日は牟田くんは…水無瀬さん、いいかしら?」
「はい。大丈夫です。」
「じゃ、そういうことで。場所行って札並べて~」
百人一首部は25人。一年生が最も多い。
たぶん少しはオレと彼女の見た目による影響もあるだろう。
「じゃ、牟田、よろしく。目標は?」
「15枚差以内。」
「おぉ~。大きくいくね~。じゃ、こっちも頑張りますか。」
負けた…20枚差だった。(とったの50枚中5枚だけ)
「あっれー?」
格好のネタを見つけたみたいな顔をしてやがる。実際そうだが。
オレにもカッコくらいつけさせてくれよ。
「うるせえなあ」
「ま、5枚も取られちゃったのは私の失点だよね。」
「5枚とられただけで落ち度とまで言うのか…。どこまで強くなるつもりだよ。」
「うーん、理想は緒方先輩だけど…実際的にはB級まで行けたらもうけものかな」
はぁ。彼女と会話してると脱力するなぁ。
どんなけ無茶苦茶なんだよ。
まあ、こんな日常がこれからも続きますように。柄にもなくオレは祈った。
第五話です!
最後のあれ、フラグになっちゃったよね…回収した方がいいかな…と、今戦々恐々しています!
これからもよろしくお願いします。
6.彼女は人気者
オレがやけに水無瀬さんに話しかけていることは薄々クラスの人にばれるとは思っていた。
だから、聞かれても平常心を保つつもりだったのに…
「なあ、牟田って水無瀬さんのこと好きだろ?」
部活に行くために更衣室で着替えてると、こんなことを聞かれ、まず、水無瀬さんのところで反応してしまった。
この一瞬でもうばれる。
「本人には黙っててくれるよな」
大丈夫だとは思うが一応尋ねた。
「もちろん。オレもあの子結構いいなと思ってるのにお前みたいなイケメンに好かれてること知ったらそっちとくっついちゃいそうだもん」
「助かる」
「ジュース奢ってくれてもいいよ?」
「やらね。おまえにも、言わないことで利益が生じているなら必要ない。」
「チッ」
なんなんだよ。
「じゃあいいこと教えてあげたら奢ってくれる?」
「内容による」
「彼女、もう2回ほど告白されたことがあるらしいよ」
「ふーん」
ありそうだな。
「反応薄! で、両方断ったらしい。」
「で?」
まあ今話されているならそうなるだろうね。
「断った理由が、よくわからないから、らしい」
「何が?」
「恋愛が」
・・・
「お前、本当のこと言ってる? でたらめ言ってオレがライバルじゃなくなればいいと思ってるだろ。」
「本当のことだよ。けど牟田がこれでライバルから消えてくれればいいなとは思ってる。」
「ほらよ。」
まあ自分は全く知らなかった情報だったので、飴を二個あげた。
「えぇ~。これだけ?」
「悪いか? 手持ちがそれだけなんだよ。」
「ま、いいか。」
とりあえず。引き下がってくれたらしい。
けどこの調子だと、しかも今の会話も重なって、ある程度の人にはばれていると考えていいだろう。
しかし、恋愛がよくわからない…かぁ。
オレもよく分からないんだけれどな。これがオレの初恋だ。
これからもまあ今まで通りに接し、男友達ぐらいにはなれるようになりたいな。
そう思っていた。
次の日、2度目の席替えがあった。
席は真ん中らへん。
しかし、ペアじゃない方の反対側が、水無瀬さんだった!
これ程嬉しいことがあるだろうか?
ただ、周りの視線がオレにもくるわくるわ。まあこのクラスではたぶん彼女が一番キレイだからしょうがない。同様に水無瀬さんのペアにも視線がいってるだろうし、たぶん水無瀬さんにも女子の視線が来てるんだろうな。
迷惑かけてしまって申し訳ない。
移動中、女子に声をかけられた。
「洸と隣になれたらしいじゃん。よかったね~。」
どうやらみんなこの用件で話しかけてきたようだ。
しかしオレは困惑する。
「え? なんで君たちが知ってんの?」
「まさかバレてないとでも思ってた?」
はい、女子には。
「男子にはバレているとは思ってた。」
「鈍感やねぇ」
「協力はせんけど頑張ってね。」
「ありがとう?」
声が裏返ってしまった。
これにて第六話です。
フラグ回収できなかった…。まあ少しは荒波立ったかなーと思います。
これからもよろしくお願いします。
7.彼女は損得勘定で決める
毎日はあっという間に過ぎていき、5月も終わりに近づいてきた。
そんなとき、オレはとある情報を手に入れた。
この県で百人一首の大会が開かれるらしい。
腕を試す機会に飢えていた1年生は、出ることを即決した。
オレらはまだ段位を持ってないからE級で出る。
この大会でベスト4に入れば、D級になれる。
つまり、百人一首部一年生のうち、多くても4人しかD級になれないのだ。
実際になれるのは水無瀬さんだけだと思うけど…
ついでというべきか、LINEグループをつくることにした。
発案者はオレ。もちろん下心あり。
そんなかんだで当日。
E級には30人くらいが出場していた。ちょっと少ないな、と思った。
一試合目。
全員勝ち上がった。
二試合目。
五人負けた。ちょっと弱いな…と思っていた人もいれば、ぶつかると怖いな、という人もいた。
三試合目。
ぶつかると怖いな、と思っていた人に勝った人とぶつかって負けた。ほかにも二人負けた。
四試合目。
水無瀬さんだけ生き残った。
彼女は余裕で勝っているように見えた。
五試合目。
勝った! 水無瀬さんは優勝だ!
つまり…D級にあがったのは二人、水無瀬さんと如月さんだけ。
水無瀬さんは優勝。崎本さんは3位。
10人中男子が4人とはいえ両方とも女子なのは男子として悔しい。
けど水無瀬さんが勝ったのはうれしい。
複雑だ。
水無瀬さんを休日に誘う。それがオレがいまからしようとしていることだ。
「水無瀬さん!優勝おめでとう!」
「ん-ありがと。そっちはベスト8? あと一試合だったのにバカだね~。」
「仕方がないじゃん。でさ、今度お祝いもかねて一緒に出掛けない?」
「え~。お金と読書の時間の無駄。」
「お金はオレが持つよ。優勝のお祝いだし。」
「何?プレゼントもくれたり奢ったりしてくれたりするの?」
「物は1000円までなら払う。」
「え?」
「千円までならオレが持つ。」
「つまり、私はタダで一日時間を使うだけで、1000円分手に入るってこと?」
「うん…まあそうなる」
だいぶ意訳された気がするけど。
まあ彼女らしい。
「じゃあ連れてかれてあげる。時間と場所は?」
今彼女なんて言った? 連れてかれてあげる?
「え?」
「何驚いてんの? あんたが誘ったんでしょ?」
「いや、そうだけど…」
楽しまれているのがわかる。
けど仕方がないだろう。彼女は今まで誰の誘いに乗っても遊びに出かけたことがないらしいと、着替えてる途中にライバルだと言っていた飯島達也がそう言っていたからだ。
これはもしや脈アリ…とは行かないまででもチャンスはあるかもしれない。
「ま、とりあえず1日とか大丈夫か?」
「日にちによるね〜。」
「じゃ、後でLINEで一日大丈夫な日教えて、できれば行きたい場所も。」
「りょーかい」
…やったぞ! 水無瀬さんを遊びに誘えた!
こんな感じで7話となりました。
次回はもっぱら遊びでしょう。
読んでいただき、ありがとうございました!
8.彼女が眩しかった
家に帰ってしばらくすると、水無瀬さんからメッセージが送られてきた。
<「来週は土日両方空いてるよー。行く場所は特に希望はないけど、ショッピングはやめてほしい。」
だそうだ。
ショッピングはオレも男子だし好きではないが彼女が好きではないのは意外だった。
どうしよう…遊びに行くのは土曜日のほうがいいよな。明日も休みだし。
場所は…
手始めに彼女に遊園地、カラオケ、水族館、動物園、植物園、美術館ならどれがいいか聞いてみた。
<「wwどれも定番っぽいところだね。」
くっそー。オレが少し悲しんでると、
<「遊園地はあまり行ったことがないから行くならそこがいい。」
と返ってきた。良かった。お気に召すものがあったらしい。
それからの1週間は早く過ぎていった。
文化祭での合唱コンクールの指揮に立候補して、なることができたくらいだった。
当日。
20分前に集合場所に行くと、彼女はもういた。
「あのさ…普通男が先に来るものじゃない?」
「え? 牟田来るの早くない?」
どうやら彼女はまだオレに気づいていなかったらしい。
「いや、水無瀬さんこそ早いじゃん…」
「いや? 私はただ、本屋で立ち読みしようと早く来ただけで…」
「ここから本屋? 何分かかると思ってんの?」
「5分くらいでしょ? 10分は見れるじゃん」
10分のためだけに本屋に行くのか? 恐ろしい執念だ。
しかし、そうなると彼女は待ち合わせにかなりギリギリで来る予定だったっぽい。
なんかそれはそれで軽んじられている気がするな。
「…。」
「どうしたの?急に黙って」
自覚がないときた。
いや、まあただのクラスメイトとの約束だし、早く来る必要はないと思うよ? でも…なんかなあ。
「まあいいや。早く来たなら来たでさっさと行こうか。そのほうが空いてそうだし。」
「かもね。じゃ、行こうか。」
前を歩いてた彼女がそう言って振り返った瞬間、時が止まったような気がした。
振り返った彼女に木の葉から抜けてきた朝日が降り注いだ。
彼女が眩しくて、思わずドキッとしてしまった。
「うわ~。まあまあ並んでるね。ところでチケットは?まさか忘れた?」
心を落ち着かせてから言う。
「あるよ、ちゃんと。さすがにそんなに抜けてない。」
「ほおー。言ったな。」
何ニヤニヤしてんだか。
「はいはい言いました。」
「チッ。つまんねえの」
舌打ちされた。何もつまんなくないのに。
「アトラクションって何があるんだっけ?」
「えーと…観覧車と、」
地図を探してそれを見ながら言っていると、
「それ貸して。」
と奪われた。いいよとも言ってないのに。
「ふうん。ねぇ、牟田ってお化け屋敷怖がる人?」
「いや、違うな。楽しみはするけどあんま怖がったりはないと思う。」
「そっかー。じゃあ行けないね。絶叫系は?」
行けないって何が行けないんだろう?
しかし、次の質問によりその疑問は言えずじまいだった。
「いけるよ。」
「ホント! やったー!」
じゃあこれとこれとこれは絶対行こう、などと言っているうちに順番が回ってきていた。
受付の人が、
「彼氏さん、ちゃんとはぐれないようにしなさいね。」
などと言ってきたが、気にしないことにした。
水無瀬さんも気にしていないようだ。
ここまでで8話です。
長くなった割にあんまり進んでいない…ような進んでるような…。
次回は彼女視点で遊園地をお送りします。
これからもこのシリーズをよろしくお願いします!
9.私は感情が薄い 上
私は今までに恋、というのをしたことがない。
同年代にもこういう人は多いだろうけど、目立つのは誰かを好きになった!って人たちだから、少なく感じる。
けど、私みたいに恋をどうでもいいと考えている人はどれくらいいるのだろう?
そこに興味がある。
あと、不思議なこともある。
私は可愛い、というのはわかる。しかし、イケメンや美人がよくわからない。
みんなはイケメン、美人、かっこいい、とかをよく褒め言葉として言うけど、どういうふうな顔のことを言うのだろう?
そんなことを聞くと、イケメンは人によって違う。美人は顔が整っている人、かっこいいは…かっこいい。などと言われる。
美人はちょっと分かるような気がするけど、イケメンやかっこいいは相変わらず分からないままだった。
今日はそのイケメンと言われている牟田と遊園地に出かける。
カップルだと思われることもあって少し周りが気になる。カップルなんて私が釣り合うはずがないのに。しかし、遊園地に行くのは幼稚園以来のことだから、結構楽しみにしていた。
まず、ジェットコースターに乗った。
ここの遊園地は田舎の方にありながらも、ジェットコースターは怖いと評判らしい。
楽しかった。さすがに恥ずかしいし(本当は普段恥ずかしくてもこういうところでするべきなんだけど)、叫ぶことはなかった。
他にも2人でコーヒーカップを全力で回したり、ミラーハウスに行ったり、そこら辺で昼食をおごりで食べて、ウォーターアトラクションに乗ったり、ゴーカートで競争したり、いつの間にか5時になっていた。
私の家はだいたい6時に帰ればいいから、遊園地に行って遅くなるかもとは伝えてはいるけど、次がラストの乗り物だろう。
「じゃあさ、観覧車に乗ろう。」
確かに。最後の締めにはいいと思う。
「じゃ、行こっか。」
この観覧車には幾つかスケルトンがあるらしい。
それにあたればいいな、と思ってたけど、それには当たらなそうだった。
「ここの観覧車に男女で乗ると、幸せになれるんだって〜」
「へえー。そうなんだ。じゃあ、一緒に乗ろうか。」
そんなカップルの声が聞こえてきた。
ありがちだな、と思ったけど、牟田のことは特に何も思ってなかったし、聞き流しておいた。
牟田が驚いたかのように肩が動いたのが気になった。
「水無瀬さん、この観覧車、男女で乗ると幸せになれるらしいけど、オレと一緒に乗ってよかったの?」
へ? そんな話気にしてたの?
「そういやその話が聞こえてきたとき、牟田、驚いてなかった? どうしたの? そういう下心でもあったの?」
私は冗談めかして聞いた。
「いや、そういうわけではないから!」
そこムキになるところかなぁ?
しかしそういったあと、牟田は急にしおらしくなって、
「水無瀬さん、今から言うことは聞き流してくれていいけど、」
と、真面目な顔で言ってきた。
悪い予感がする。
「オレ、水無瀬さんに恋してるんだわ。」
続きます。
10.私は感情が薄い 下
「オレ、水無瀬さんに恋してるんだわ。」
私の嫌な予感を表すように牟田が唐突なことを言ってきた。
これには私も驚いた。
が、しかし、他の人だったらどういうふうな反応するんだろう? などと呑気に思っている。そこら辺に関する私の感情はよく分からない。
たぶん、おかしいのだと思う。
まあ実際牟田からも、聞き流してくれと言われたのだからいいだろう。
「ふ~ん。」
「反応薄!?」
「いや、聞き流してくれって言われたからそれを律儀に守っているだけですが?」
「いや、それでももう少し驚いてくれても…オレ、完全に恋愛対象外かよ…」
最後の方は聞こえなかった。
「で? 聞き流してくれってことはまだ言いたいことがあるんでしょ?」
「あぁ。告白しといて勝手なんだけど、これからもいつも通りでいてほしいな、って。」
「ああそう。別にいいんじゃない?」
今まで私に告白してきた人にも、同じような対応をとってるけど、みんな話しかけてこなくなったんだよね。気まずいのかなぁ?
「ありがとう…」
お!? 牟田が珍しく自分からお礼を言った。
「ねえ、いくつか聞いていい?」
「いいよ。オレの願いは聞いてくれたからそれくらいは」
「なんで私だったの?」
「へ?」
「だから、他の子に可愛い子多いじゃん。なんで私だったのかなーって。」
私は今まで可愛いも美人も言われたことがない。
「そりゃ可愛い子は多いよ。けど、水無瀬さんはなんていうか、初めて見たとき、美しいって思った。可愛いとは違うけど美しいじゃダメなの?」
「美しいってどういうこと?」
「それがわかんないんだよね…」
はあ…? 分からない?
「変なの」
「うん。変でごめん。」
今日はやけに素直だな。どこか体調でも悪いのか?
「じゃ次の質問。なんで聞き流してほしかったの?」
「え? いや?それは… 水無瀬さんが、恋がよくわからないからって理由で告白断ったって聞いて、それじゃあオレがしても無理だって思った。」
ふうん。そんな噂が回ってるんだ。
「まわりからイケメンって言われてるのに、一人の女子に対して弱気だねぇ。」
「仕方がないだろ、実際に無理だったわけだし。」
「あぁそっか、ごめんごめん。」
確かに今のは私の質問が悪かった。
外を見ると、日没に近づき空が赤く染まり始めている。
もうすぐ楽しかった一日が終わるのかぁ。少し感慨深い。
最後のコレさえなければもっとよかったんだけど…まあ相手が振られる覚悟で言ったものにはとやかく言いたくない。
「綺麗だね」
「だな」
人間は所詮、本当に綺麗な景色を見ると、口数が少なくなる。
今の私たちもそうだった。
あ、そうだ。
「ねえ、牟田が私のことを好きってことをからかいのネタにしてもいい?」
もしやれたなら面白そう。
「いいけど、水無瀬さんがオレに未練があるように思われるよ?」
えー。振った側なのに。理不尽な。
「ちぇっ」
このときちょうど一周した。
「じゃあね、明後日また学校で!」
「おう、またな」
そんなふうにいつも通り私たちはまた別れたのだった。
今回は題名が分かりづらいかもしれません。
感情が薄いというのは、好きとかを感じない、そのことを取り上げていったものです。ちょっと無理やりだったかもしれません笑
これからもこのシリーズをよろしくお願いします!
11.彼女は自分に厳しい
百人一首の常識
百人一首は自陣の札がなくなったら勝ち。
もし敵陣の札を取ったら自陣から一枚送ることによって枚数を調節する。
つまり、枚数さが小さいほど、実力が近いと言える。
いつもの日常が戻ってきた…と思う。
学校で水無瀬さんに話しかけてみたけど、本当にいつも通りだった。
彼女にとっては告白なんて特に何も思うことがないくらいありふれているのだろうか?
そう思うと少しショックだ。
なぜあの時オレは告白したのだろう?
この疑問が頭の中で渦巻いているような気がする。
けど、それもいつも通りに話しているときだけは考えずに済み、それから一時は忘れられる。
水無瀬さんのいつも通りでも問題ないというスタンスに、オレはきっと救われているのだ。
この前中間テストがあったような気がするのに、もう期末テストまで二週間だ。何で期末テストなのに期の末じゃなくてその一ヶ月も前に行うのだろう?
前もこんなことがあったような気がするが、今は自習の時間だ。
もちろん先生不在の、だ。
席替えで後ろの方になった水無瀬さんは相変わらず読書をしているし、周りは静かだが、最後の方できっとうるさくなるのだろう。
そう分かっていたから、始めに集中することにした。
結果。
案の定、5分前ほどからうるさくなったが、オレは満足していた。
**静かなところで勉強できるって何て集中できるんだろう…!!**
今度のテストもきっと大丈夫だろう。
テスト勉強を始めたばっかりなのに、そんな自信がみなぎってきた。
放課後、百人一首部にて。
最近はオレも百人一首の実力が上がったと思う。
2年生との枚数差が少し減った。
そんなことを水無瀬さんに言うと、
「はぁ? そんなので喜んでるの? そんなの始めが弱すぎて比べものにならないんだから差が縮まらないほうがおかしいでしょ?」
「ごもっともです…。」
こんな厳しいことを言う水無瀬さんだが、彼女はちゃんと自分にも厳しい。
最近は彼女は2年生にも勝てるようになって、どんどん上達しているのだ。
「凄いなぁ。」
「何が?」
つぶやいただけだったが水無瀬さんに聞こえていたらしい。
「水無瀬さんの百人一首の上達具合。」
「んーそうかな… 私としてはテスト勉強を2週間前から勉強を真面目にできる方がすごいと思うけど…」
そうだった。水無瀬さんは自分を下に見る傾向があるのだった。
告白した時も思ったけど、彼女は自分が何でよく告白されているのかさえ理解していないようだった。
何か対策をしてあげたいけど…。
「そうでもないけどね。」
「ん? 嫌味?」
「いや、そうじゃない。」
「じゃあ何?」
「謙遜」
「自分で謙遜と言っているうちは嫌味だし、いいこと教えてあげるけど、謙遜でも度が過ぎれば嫌味になるんだよ?」
その言葉、そのままあなたにお返ししたい。
ごめんなさい。今回が短いような気が…見逃してください。
自習の時間ってなんだかんだうるさくなりますよね。
このクラスの人は先生がいるというのにうるさくなるのですから大した度胸ですね。
今回も呼んでいただきありがとうございました!
12.彼女は心優しい。
テスト5日前。
今日も自習があった。
今日の水無瀬さんは珍しくテスト勉強をしているように見える。
開いてるのは漢字の教科書?もどきだ。
国語?あ、そうか、今が本来国語の時間で、この時間は担当の先生が教室にいるから真面目にやってるんだ。
納得できた。
授業終了5分前頃。
**え!? なんでお前ら静かなの!?**
ありがたいけど、先生がいるだけで静かにできるというのは、今までうるさい時にしていた勉強の苦労が無駄になったも同然で、少しムカついた。
そんなとき、立つ人が現れた。
あぁ、せっかく静かだったのにうるさくなるのか…、などと思っていたら、なんと水無瀬さんだった!
どうしたんだろう?と思っていたら、どうやら先生に質問しに立ったようだ。
なんだ。それだったらこれからうるさくなることはないだろう。
そう安心した。
3分後。うるさくなってた。どうやらさっきまで静かだったのは偶然らしい……
**いい加減にしろ! ここは県で一番頭のいい学校じゃないのか!?**
言ったらブーイングの的になるとわかるので言わなかったが、本当にそう叫びたい気持ちになった。
休み時間。水無瀬さんに珍しく勉強してたことを聞いた。
「いや、さすがに私でもテスト3日前の先生がいる自習中に読書はしないよ? あと、今日国語をしていたのは、分からない物があったときにすぐに聞けるからね。テスト勉強は効率的にしきゃ。」
なるほど、確かに先生がいる自習中にその教科をしておくとそういう利点があるな。
「参考にするわ。」
「成績一位の人に真似されるほどの方法ではないよ。どっちかって言うと成績下位の人に勧める方法だね。」
まあそうかも知れない。
「かもね。他にどんなふうにしてる?」
「え? 宿題と授業をまじめにしていたらある程度点数取れるでしょ?」
「かもな。」
あまり参考にならなかった…。
そういえば、水瀬さんは謙遜をあまりしないな。
自覚ないことは謙遜になることもあるけど、どうしてだろう?
放課後聞いてみよう。
「水無瀬さんってあまり謙遜しないよね。」
「あー、うん。ほら、だってこの学校とかで私の成績で謙遜していたら嫌味になるじゃん?」
苦笑い気味だ。
「私は自分の上にもっとたくさん成績がいい人がいるのを知っている。だから本心的には、ずっと謙遜していたいよ。事実だし。けど、周りはその成績いい人たちを基準にしていないし、その人たちと私を一緒だと言ってくることもある。牟田も成績いいんだし、分かるでしょ?」
「分かる。今も周りに人がいたらこの会話も嫌味に思われてそうで怖い。」
「ところで、牟田は勉強しなくて大丈夫なの?」
「大丈夫。だいたいはもう覚え終えた。」
「早いねー。」
「けど、ま、もうすぐ勉強始めようかな。」
「それがいいんじゃない? 成績楽しみにしてるよ〜」
水無瀬さんが離れていってから考えていた。
彼女は人に嫌味と思われるのが嫌で言葉を制限しているところがあると言っていた。
恋はときに主観を変える。俺はここに彼女は優しいな〜、と見いだしたりしている。
そうなってしまった自分にまだ慣れられないでいる。
あっ。
一つつながった。彼女が最初人見知りだったのは初めて会う人にどう接するのが相手の意に合うか分からなかったのではないだろうか?
強引かもしれない。けど、そうだといいなと思ったのもまた事実であった。
これが12話です。ここ、今までで一番進みが遅くなりました。
まあ、牟田と洸の会話があったからいいんです!進まなくても…
こんな感じですがこれからもこのシリーズをよろしくお願いします。
13.彼女はめんどくさがり
テストが返ってきた。1位だった。安心安心。
水無瀬さんに大体のことは覚えたと言っておきながら1位じゃないと恥ずかしいから本当に良かった…と思っていたんだけど…
**おい!** 彼女の成績がオレと10点差の2位まで上がっていた。
この学校のクラス分け大丈夫かな…10クラスもあって1位と2位が同じクラスにいたらまずいだろう。
まあ一応言っておくが、最下位と思われる人も1年10組にはいる。
そのため、全体的にみるとバランスは悪いわけではない。
しかし、成績上位者は成績上位者を探す習性というべきものがあるから、偏っているように見えるのだ。
今日は部活がなかったため、家に帰っていつものメンバーとネット上でゲームをしたり、LINEを覗いたりしていると、水瀬さんの誕生日が6月28日で、大体一週間後にあると気付いた。
これは誕生日プレゼントをあげるチャンスだ!!
急にテンションが上がった。
何をあげよう? 水無瀬さんは本が好きだからやっぱり本がいいのだろうか?
言っておくが、彼女の本好きは学年一である。
食事中も本を読んでいるし、自習中も本を読む。移動中も本を読んでいるし、オレとしゃべっている時も本を読んでいる。
オレは実際には見たことがないが、登校中も本を読んでいるらしい。
こんな風に考えると、本以外にいいプレゼントが思い浮かばなくなって来た。
こうなれば本は確定だ。他にもう一つ何かをあげよう。そうすれば工夫が見えるだろう。
それからの一週間は速く過ぎていった。
高校にあがってから、時がたつのを早く感じることが多くなった。
誕生日前日に、百人一首で2年生一人に勝つことができたが、心ここにあらずという感じだったと、後から水無瀬さんに言われた。
そして当日。放課後。
「誕生日おめでとう、水無瀬さん。」
声をかけた。
「ありがとう…なんで私の誕生日知っているの?誰にも言っていないのに」
「LINEに書いてあったよ。」
お手本通りの、あっ…という表情に一瞬でなり、
「そっか、迂闊だったな。」
あまり知られたくない事柄だったらしい。それだったら放課後で正解だった。実際は恥ずかしいだけだったけど。
「これ、プレゼント。」
といって、オレは本と工夫の産物であるものを渡した。
「え?何? 今開けていいの?」
「いいよ。」
「ありがとう。わあっ、この本この前賞を取っていた新作のラノベじゃん。牟田ってこういうの読むの?」
お気に召したらしい。それにしてもこの前賞を取ったって…その通りだけどやけに詳しいな。
「すこしエグいけど、布教の意味も込めて無料であげる。」
「ケチ。プレゼントに布教の意味を込めるって本好きじゃなきゃ絶対受け取んないでしょ。ていうかエグいって、戦闘ものだしそういうものじゃないの。」
「そう言われたらそうなるんだけど…もう一つもあけて。」
「せかさないでよ。本を堪能してるんだから。」
しょうがないなあ、そうおもいつつ頬がたるんでるのがわかる。
しばらくして、彼女はあけてくれた。
「ん? 文房具?」
少しは驚いてくれたようだ。
「そう。水無瀬さんって効率的なものを好むじゃん。だから安物の寄せ集めだけど、小さい文房具をまとめてみた。さすがに色系は難しかったからないけど…」
例えばひと穴パンチ、ホッチキス、テープのりにスティックのりも、ハサミもカッターも修正テープもある。
「いいね。よく私の性格分かってるじゃん。ねえ牟田、もしかしてあんた私のこと観察したりしてる?」
「してる。」
「牟田に引いていかな?」
「やめてよ。引かれたら心が折れる。」
「はいはい。見逃しててあげる。」
そんなこんだでオレは彼女にプレゼントを渡すことに成功したのだった。
以上です! 今回は長くなってしまいましたが、楽しい会話も前より増えました!
私の自己満足度はMAXです。
次回もこのシリーズをよろしくお願いします。
14.彼女はまだまだ人気者
ここはプール後の男子更衣室。
「なぁ、|傑《すぐる》? お前って確か水無瀬さんを好きなんだよな? どうだった? 水着姿?」
あんまり声は大きくできないが、大きいと思った。
まあ基準が他の女子だから、そんなこともあるだろう。
しかし、そんなことは言いにくい。
「ん? きれいだな、って思ったよ?」
結局、的外れなことを言うことで逃れた。
「そういうことじゃないって…」
なんか他にも言いたげだが無視だ無視。
好きな子についてそんなこと言えるわけないじゃないか。
「はぁ。まあいいや。ほかさあ、井上さんとかも…」
話題が他の人にズレていったのを確認し、一息つく。
今のうちに着替えてさっさと教室に戻ろう。
教室へ戻る途中、水無瀬さんが他の男子としゃべっているのを見た。
いいなぁ。
部活ではほぼ毎日喋っているというのに、そう思ってしまう自分がいる。
「あ~あ。」
最近教室で水無瀬さんとあまりしゃべれてない。
席替えで席が離れたというのもあるし、最近は水無瀬さんも前よりもいくぶん積極的に周りに声をかけてるというのもある。
特定というわけではないから、混ざろうにも混ざりにくい。
「難しいなぁ。」
思わずそんなことがつい口をついてしまった。
「何が難しいの?」
水無瀬さんに聞こえてしまったようだ。
「何でもない。」
「あ、そ。」
教室に戻ると、もう水無瀬さんはしゃべっていた。
あ~あ、人気者だなぁ。
はじめは孤独になりそうな感じがあったというのに。
その一方で、良かったと思う自分もいる。恋心って難しい。
体育は一時間目だった。
今日は長い一日になりそうだ。
2時間目、数学。
このクラスの担任、小野田先生だ。
小野田先生は、まあ普通の先生だ。完全に嫌われてるというふうでなければ、好かれているというわけではない。
よくいる普通の先生だと思う。
しかし、テストは難しい。数学で満点を取ろうにも全然取れないのだ。
いつか満点を取ってやりたいと思ってる。
水無瀬さんは、周りと楽しそうにしゃべっている。
その中には男子もいる。
この席替えのとき、みんなの妬みの視線をもらっていたやつだ。
幸運には不幸はついてくるに決まっているので何も思うまい。
3時間目4時間目昼休み5時間目6時間目。
…どこもしゃべる機会がなかった。
どうやら水無瀬さんは席が近くなった人とよくしゃべる傾向があるようだ。
次の席替えがもう待ち切れない。
部活。普段はここでしゃべるのだが…
彼女は先輩たちに好かれやすい。
「しつこいです。」「やめてください。」
などという言葉を今も放っているようだが、それでも好かれている。
たまに、「かわいい」とも言われているのをみたことがある。
彼女は心外だというような表情をしていたが、俺は同感だ。
その後少しだけ水無瀬さんとしゃべれた。
結果。今日、水瀬さんとしゃべれたのは2回だけ。
…あぁ、なんでプール後に会ったチャンスを逃してしまったんだろう…。
そんな一日だった。
これにて15話です!
いかがでしたか? 牟田はイタかった?
アハハ…気をつけます。
お読みいただき、ありがとうございました!
15.彼女は本に、釣られやすい。
今は7月の下旬、それが指差すものよ言えば?
答えは決まってる。終業式、そして、**夏休みだ!**
とのことで、もうすぐ夏休みが始まる。
相変わらず、水無瀬さんとしゃべる機会は少ないし、彼女はまだ恋愛感情を持ったことがないままだ。
そして、夏休みになると、水無瀬さんに会えない…。
というわけで、水無瀬さんを、家に誘うことにした。
今までの経験上、彼女は本やお金が関わると、動いてくれる可能性が高い事が分かっている。
だから、それを餌にすれば水無瀬さんはきっと動く。
アパートの方には本が少ない。なら、家の方に呼べばいい!
となって行き先が家になった。
「水無瀬さん。」
用事があるとなった途端に話しかけやすくなるのはどういうことだろう?
「どうした? 牟田」
「夏休みのどっかでオレの家来ない? 姉ちゃんがラノベ最近買いあさっているらしくて、水無瀬さんなら読みたくなるかと思ったんだけど…」
「 姉? 牟田って姉いるの?」
「あれ? 言ってなかったか?」
「んー、言ってたかもしれないし、言ってなかったかもしれない。」
「ま、姉ちゃんがいるんだけど、ラノベとか普通の小説とかいっぱい持ってんの。」
「え!? 何冊くらい?」
かかったかかった。目が輝いている。
「分かんない。200くらいは最低でもあると思うんだけど…」
「ふ~ん、牟田の家だっけ? 行ったらお姉さんにも会える?」
「予定が空いてるかは分からないけれど、会える日を選ぶつもり。」
「じゃ、行くわ。」
この瞬間、周りから妬みの視線が来ているような気がして、気が気でなかった。
「本当にいいの?」
「あれ? あんまり今回は驚かないね?」
「うん。もう慣れた。」
「慣れるの早!」
「不可抗力だからしょうがないよ。」
「うん…まあ早く慣れることができるのも特技っちゃ特技になっちゃうしね…。」
そこからは姉ちゃんに連絡したりしてなし崩し的に決まった。
1週間後の1日中。彼女はどうやら弁当を持ってきてくれるらしい。
楽しみだ。
水無瀬さんは姉ちゃんが持っていないラノベを持ってくるつもりもあるらしいから、手間だけをかけさせている気がする。
せめて、駅まで迎えに行く、ということで話がまとまった。
それからは部屋を掃除したりした。姉ちゃんは姉ちゃんで楽しみにしているようで、本棚をよくわからない順に並べていた。
母さんは、「女の子なの? 傑が連れてくるのは初めてねぇ」などと、オレが女子を連れてくることに対して喜んでいる。
そしてその日はやってきた。
15話、どうでしたか?
16.彼女は姉に気に入られる
今日は彼女が家にやってくる日だ。
オレの家の人はそれぞれで楽しみなところがあり、心なしかここしばらく、家も明るいように見えた。
「ちゃんと荷物持つのよ〜。」
「本は重いんだからできるだけあんたが持つんだよー」
母さんも姉ちゃんも同じ事を言っている。
自転車を漕ぎながら、少し笑いがこみ上げてきた。
オレの住んでいる家は近くの駅から自転車で3分。徒歩でゆっくりめだと15分くらいのところだ。
結構交通の便がいい。しかも学校も近い。この立地を気に入らないやつはなかなかいないと思う。
すぐに駅に着いた。まだ来ていない。よかった。今回は先にこれた。
1,2分後に電車が到着。
「おはよ~」
「おはよ~。朝早くからありがとう。 荷物ちょうだい。」
「いや、いいよ。家近いんでしょ?しかも重いし」
「母さんにも姉ちゃんにも持てと言われてるんだよ。」
「嘘?」
「本当のこと」
「じゃあいっか。ほい」
うっ…重い…。
「重すぎない?」
「本だもん、重いに決まってんじゃん。あ、そうだ本を痛めないように自転車のかごには乗せないようにね。」
「鬼畜だ。」
「持てって言われてるんでしょ? 持たせてあげてるんだから文句言わないでくれる?」
持たなかったらそりゃ怒られるけどさ、なんか違うよなぁ…。
「ただいま。」
「おじゃまします」
「おかえり。洸さん、どうぞ~」
「傑? これが水無瀬ちゃん? きれいな人じゃん。 あ、はじめまして、傑の姉の|流花《るか》です。今日はよろしくね。」
「あ、はい。こちらこそよろしくお願いします。」
あぁ、水無瀬さんまた周りを気にしすぎて人見知りっぽくなってる…。
本当は違うのに。
「水無瀬さん、まず何する? 姉ちゃんの部屋行く?」
「さっそく行っていいの? じゃあ行かせてもらう。」
「あ、じゃあ私案内するよ。 傑は飲み物でもお母さんと一緒に持ってきなさい。」
なんか癪だな、オレが連れてきたのに。
「はぁい。」
母さんの手伝いに渋々入る。
「じゃ、水無瀬ちゃん、行こっか。」
「にぎやかな家ですね。」
「水無瀬ちゃん、別に敬語じゃなくてもいいのよ?」
「慣れたら多分敬語じゃなくなると思います。」
「そっか。」
そんな会話が聞こえた。
いいな、姉ちゃん、オレよりも充実した時間を過ごしてるかも。
「おまたせ~」
「じゃ、母さん、戻ってよ。」
「何よ傑。私もゆっくりしたっていいじゃない。」
「母さん」
「はいはい、わかりました。」
すごすご戻っていった。
水瀬さんはもう本に夢中だ。
「あ、このシリーズ! 流花さん、これって面白いんですか? まだ完結してないし、そこまで刊行スピードが速くん氏から買えずにいるんですけど…」
「あ、それは結構面白かったわよ。主人公が…」
いいなぁ。結局家に誘ってもオレはしゃべれないのか。呪われてるかも。
これにて16話です!
牟田はもんもんしっぱなし。挽回の機会は訪れるのでしょーか?
お読みいただき、ありがとうございました!
17.彼女は器用
文字数を少なめにするために、空白が減っています。
見にくくなっていたらごめんなさいm(_ _;)m
姉ちゃんと水無瀬さんが本談議に夢中になっている間、オレはずっと横でゲームをしていた。
何が悲しくてこんなことをしなければいけないのか…
しかしもうすぐ昼食だ。そこではさすがにしゃべれるだろう。
そして12時になった。
「傑ー!流花ー! 洸ちゃん、昼ご飯食べないの?」
「「今から行くー!」」
ということで水無瀬さんは姉さんに続いて弁当を持って下に降りていく。
オレ、置いてかれてる…。
「「「いただきます」」」「いただきます…」
「あらー、美味しそうね。」
「そうですか…今日はまあ見目はいいんですけど、手が込んでるわけではないと思うんですけど…」
「それでも休みの日に作ってくたんでしょう? それだけでいいじゃない」
「それはそうかも知れませんが…」
「母さん、水無瀬さんが困ってるだろ。」
「あら?そう? ごめんなさいね。」
「いえ、大丈夫です」
今がチャンスだ
「面白い本あった? 水無瀬さん」
「うん。買おうと思って買ってないものとか流花さん結構持ってたから参考になった。 あ、そうだ、そのことで。」
「どうしたんだ?」
どうせ言われるとはわかってはいても思わず聞いてしまった。
「流花さんが持ってる本、今日で読み終わりそうにないから、いっそ借りれないかなーって思ったんですけど…」
「私はいいよ?」
「お母さんは関係ないけど、流花がいいって言っているんだしいいんじゃない?」
「本当ですか? ありがたいです。あ、流花さんも何か読みたい本ありました? あるなら借りる代わりに置いていきますけど…」
「え!? いいの? 助かる!」
「あ、それなら今日読む必要なくなりましたし、午後は遊びますか?」
「だね。おーい、傑!」
は! ボーっとしてた。
「何?」
「午後ゲームをやろうと思ってるんだけど何かオススメある?」
「オススメか…。ちなみに水無瀬さん、ゲーム経験は?」
「少し。家にはないけど、家族づきあいの家で少ししたりするし、いとこの家でもしたりするってくらい。」
「そっか、興味あるのはある?」
「うーん…音ゲーなら興味はあるけど、それ以外ならオススメがいいかな」
「じゃあ…マイクラとかどう? 結構楽しいよ。」
「じゃあそれでお願い。流花さんもしますよね?」
「もちろん。ここまで来て仲間外れにされたら悲しいもん。」
「良かった。」
「「「「ごちそうさまでした」」」」
「じゃあ俺の部屋行くか。」
「そだね。」
…となって夕方になった。時間たつの早! そして話に脈絡なさすぎる。笑
「じゃ、送ってくる。」
「はーい。洸ちゃんの荷物行きより増えてるんだからちゃんと丁寧に持つんだよー!」
「はいはい、行ってきます。」
「お邪魔しました」
「また来てねー。」
「ところで水無瀬さん。ゲームに慣れるの早かったね。」
あのあとマイクロだけでなくマリオもやったのだ。
水無瀬さん普通に強かった。まあオレも慣れている分、まだ強いけど。
「ん? かもね。 けど負けたのも普通に多かったからなぁ。」
「初心者なのに高望みし過ぎじゃないか?」
「あはは。そうかもね。」
彼女はけらけら笑った。
やがて駅に着いた。
「ね、今度音ゲーさせてよ。」
「音ゲー? うん、いいよ。」
「ありがとう。じゃあね。」
「うん、またね。」
彼女は帰っていった。
以上で17話でした。
楽しんでもらえましたか?
次回はこれに関する小話と別の話を入れようと思います。
次回もぜひ読んでみてください!
(もうすぐ終わりか…というすごく嬉しいコメントが送られてきていますが、25話くらいにはなりそうなので安心してください。)
18.彼女はすごい
傑の発言の目印として:
すべての会話はくっつけず、傑のだけ周りに1行おいているので、連続した会話だったらそれを参考にしてみてください。
家に帰ると、母さんが待ち構えていた。オレ、何かしたっけ?
「おかえりなさい。傑。それにしてもいい子だったわねぇ、洸ちゃんって」
「うん。彼女はすごいよ。」
「傑はあの子が好きなの?」
ゴフッ。これが母親の勘というやつか…? 恐ろしい。
「そうだよ。悪かったね。」
「? 何が悪いの? お母さんは息子の見る目の良さに感心してるのだけど…」
なんだ。そういうことか。
「まあ、よかったじゃない。あんなに可愛い子が同じ学年に、しかも同じクラスなんでしょ?」
「そうだね。」
「傑の嫁候補ね。」
ゲフッ。ゲフンゲフン。
「オレはそう思っててもあっちはそう思ってないの。」
「あらそう。」
「じゃあオレ、部屋で勉強するから。」
「頑張ってね。」
あぁー。母親と会話するって結構疲れるもんなんだな。
特に恋愛に関わってくるとよりめんどくさい。
これからは母さんの前では水無瀬さんの話はしないようにしよう。
3日後。
オレは友達と映画を見に来ていた。
名探偵コ◯ンの新作の映画だ。
商業施設の中にあるので、店をいくつか冷やかしてから見る予定でもいいように、早めに集まった。
「どこから行く?」
一応尋ねた。
「やっぱゲーセンじゃねえの?」
「だよな。」
「だよね。」
やっぱり。
「映画までずっとそこにいるつもり?」
「え?ちげえの?」
まじか…。まあ、結局はこうなるか。普段からよくゲームをしている奴らだし。
「じゃ、2人ともそれでいいって言うなら、そうするか。」
「僕はそれがいい」
「俺も」
「じゃ、行くか。」
ここからはいつも通り。というかここまでもいつも通り。
これからは上映開始時間20分前までここで過ごし、入り口に集合。
ゲーセンでの行動は自由。
コイツラと一緒なのは、気が楽だから結構気に入っているのだ。
ポップコーンを買って劇場に入る。
コ◯ンはやはり面白い。
「そういやさ、出てきた|東《あずま》さんって水無瀬さんに似ていたよな。」
「あー、わかる。作画だから当然だけど顔はいいし、何でも卒なくこなしている感じとかなんか似てるよな。俺、結構水無瀬さん気に入ってる。ないとは思うけど、告白されたら即決するくらいにはいい。」
ゲフッ。こいつら同じクラスではないから気付いていないのか…?
「ふうん、まあ似てたよな。」
「だよな? よくしゃべっている傑が言うんなら間違いない。」
うん、気付いていないっぽい。
それならそれでやりやすいし、普通に過ごそう。
「僕は…瀬田と同じだね。告白されたら即決するけど、自分から告白はしないかも。」
話蒸し返してきやがったこいつ。
「ふうん。」
「なんだよその反応。傑はどうなんだ?」
「え? オレ? そりゃ告白されたら即決するだろ。」
自分から告白するほどには好きだし。
もちろんこれは言わない。
最近彼女が人気すぎて困る。
※これは全くのフィクションです。コナンに東さんというキャラクターは出てきません。
というわけで18話です。どうでしたか?
どの小説でも母親って優しいキャラが多いですよね。
牟田が育つ環境を考えると優しい母親しか出てこなかったのでベタですがこうなりました。
これからもこの作品をよろしくお願いします!!
19.彼女は無自覚
こうして夏休みはつつがなく過ぎていった。
宿題は早々に終わらせ、夏休み明け2週間前には課題テストの勉強を始める。
友達と遊ぶときは遊び、盆には実家に帰ったりもした。
満足に過ごせた夏休みだったと思う。
しかし、悲劇は夏休み明けにやってくる…。
始業式で校長先生の話(今回はビミョーだった)を聞いたあと、早速テストが始まった。
今回も準備は完璧。満点とはいかなくても1位くらい余裕だと思った。
水無瀬さんと話したが、今回の水無瀬さんは3日前から勉強を始めたらしい。
ただし、それ以外の日も図書館に本を読みに通っていたらしいから侮れない。
そう気を張ってのぞんだ。
課題テストは教科が少ないため、3日間で終わる。
そして3日後。
オレは絶望していた。
テストの点数はどれも返ってきていない。
しかし、それでも、今回の普段より難しくなったテストの点数が低いことはわかる。
一方、水無瀬さんは、まあまあ満足だったようだ。
2位だった人が満足する結果…想像するだけで恐ろしい。
そして1週間後。テスト結果が返ってきた。
順位は…2位………………。え?
「牟田、どうだった?」
水無瀬さんが聞いてきた。
「2位。9割5分弱しか取れていない…」
「あ、やっぱり牟田が2位なんだ」
ん?
「やっぱり水無瀬さんが1位なの?」
「そうだよ。」
本当なのか……。
「私は9割6分いったよ。」
何だと…。
「3日前から勉強したんだよね?」
「うん。そうだよ。」
「なんでこんな難しくなったテストで前より点数上がってるの?」
「うーん…? 予備知識が増えたから…とかかな?」
「どこで?」
「図書館。夏休み中の図書館通いで、小説以外も結構読んでみたんだ! 読むのに時間はかかるけど、結構面白いんだよね。」
そっか…水無瀬さんはかなりの本好きだった…
けど、小説以外も読むなんて意外だ。
「そうなんだ。予備知識が増えてこの点数か…すごいね」
「全然すごくないよ。凡ミスもいくつかあるし。」
はぁ? 凡ミスがあってその点数?
「本当はもっと高かったってこと? なおさらすごいじゃん!」
「そんなことないと思うけどな。」
「そんな事あるよ。」
「だって夏は暑いでしょ? 涼むために図書館行くとするじゃん。そしたら宿題持っていくでしょ? そしてそういう宿題解いていたら疑問がわいてくるじゃん。図書館にいるならそれを読んでみようと思わない?」
彼女はそれが当然のことだ、と疑ってもいない口ぶりで言う。
「…少しはわかるかも。」
「でしょ? だったら私は普通の一般人。すごくなんかないでしょ?」
「いや…それは違うよ…」
「え? どこが?」
「水無瀬さんは普通にすごいよ。さっきの行動だって分かる人はいるとは思うけど、行動に移す人はなかなかいないと思う。その点でも水無瀬さんはすごいと思う。」
「さあ、どうだろうね?」
はぐらかされた。
褒めてるんだから受けっとってほしいのにな…。
こんにちは! 19話、いかがでしたか?
洸が覚醒しましたよ、みなさん。
これからどうなっていくのか、楽しみにしてくれていると嬉しいです!
お読みいただき、ありがとうございました!
20.私は普通な…はず
夏休み明けの課題テストで1位を取った。
なぜだか私にもよくわからない。
少し入り組んだ知識が必要そうだったが、基本的に問題は簡単なように思えた。
しかし、他の人からすると難しかったようだ。
先生たちも今回も問題は難しくした、だの、2位になった牟田を含むクラスメイトも難しかったねー、などと言い合っている。
全く理解できなかった。
「洸が課題テストで…」
もうみんなに知られているらしい。
1位を取るのもいいことばかりではない。
次からのプレッシャーがやってくる。
だからこそ…
「洸、一位って本当?」
ちょうど優美香ちゃんがやってきた。名字は田代。成績は言い方の子で、学級総務の一人だ。
「んー、とっちゃったねー」
こんなふうに曖昧に過ごすのだ。偶然だよ、と見せつけておくのだ。
もちろん本音ではある。
私が1位を取れちゃうところなんて、レベルが低めだとは思うけど、それでも優秀な人は居るはずだ。
それなのにとったから、とっちゃった感が満載である。
「すごいねー。」
「凄くないよ。優美香ちゃんはどれくらい取ったの?」
「よくぞ聞いてくれました! なんと9割を超えたのです!」
「ふうん。じゃあ25位くらいか。」
「反応薄いね…」
「うん、まあ頑張ってるとは思うけど…ね…」
ほら、私の点数が高すぎちゃって基準がバグってるから…とはもちろん言わない。言えない。
「ねえ、一つ聞いていい? どんな勉強をしたの?」
「勉強って言ったって…夏休みに図書館にこもってたくらいだよ?」
「ん? それがどう成績に直結するの?」
「普段小説ばっか読んでるからたまには他の本も読んでみよーって思って、小説以外から興味があるものを見繕って読みまくってた。」
「はぁ…」
あれ? まだ分からないかな?
「つまり、宿題とか解いたら少し疑問が出てくるじゃん、それを手短に本でかいけつさせていたの。そしたらテスト勉強になっちゃってた? みたいな」
「…すごいね」
「だから凄くないよ。」
私の上にはもっとたくさん成績がいい人がいるもん。
「いや、すごいよ。自信持って。」
「はぁ。」
なぜだろう? 最近すごいねとしか言われていない気がする。
「だって私が仮にそんなこと思っても実行できないもん。」
「あぁ~。三日坊主日なっちゃうんだね。」
「そうそう…って私のことけなしたでしょ?」
「あ、バレた? はじめ頷かれちゃったから、こっちが驚いたよ。」
「ひどいなー。まあ、少し参考にさせてもらうわ。ありがとー。」
「どういたしましてー。」
他の人ともたいてい会話の内容はこんな感じだ。
今は放課後、成績が悪い方の人たちが集まってきた。
「洸はすごいね」「洸ちゃんすごいじゃん」「洸はすごい」「すごい」「すごい」「すごい」・・・
「**私はそんなにすごくない!**」
思わず叫んでしまった。
いらだちを抑えきれず、さっさと教室をでる。
その際、少しドアを乱暴に扱ってしまった。
以上で20話です。
これから、どんな風なストーリーになるのでしょうか?
楽しみにしていてください。
これからもこのシリーズをよろしくお願いします。
21.彼女は孤独だ
水無瀬さんが、怒った。
あれを怒っているといっていいのかはわからないけれど、怒った。
時間は放課後。場所は教室。
水無瀬さんは声を荒げて、
「**私はそんなにすごくない!!**」
といった。
多分。
彼女の周りにいた女子がテストのことで「すごい」と、何回も言ったんだろう。
気持ちはすごくわかる。
オレも彼女に「すごいね」といってしまったから。
多分そういうのも積み重なってああなったのだろう。
「え、え?」「どうしたのかな?」
みんなまだ状況を理解出来ていないようだ。
彼女の家は遠かったはずだ。だからたぶん親と離れて住んでいる。
オレは、彼女が実家から離れて住んでいる家ってどこらへんだったかな、などと思いながら教室を出た。
そこからは走って靴箱まで行く。
たぶん彼女は歩きで帰ると思うから、まだ間に合う。追いつくはずだ。
確かこっちだったよな…といままでに得た情報をつなぎ合わせて、どっちの方向か見当をつける。
「あっ…!」
いた。水無瀬さんだ。この道がまっすぐでよかった。じゃなかったらもっと見つけるのが遅くなるところだった。
彼女は、走ってはいない。早歩きだ。手は大きく振られている。たぶんその怒り?の行き場を探しているんだろう。
急ぐ、急ぐ。
追いついた!
「水無瀬さん!」
「なんで来るの?」
突き放すような声だった。そして気付いた。彼女は怒っているのではない、いら立っているのだ、と。
「水無瀬さんが悲しそうに見えたから。」
「どこが?」
「どこがって…なんとなく」
「はぁ?」
「なんとなく、あの叫びが、なんでみんなはわかってくれないの?っていう風に聞こえた。」
「それだけで来たの?」
「そうだよ。ほっとけないだろ。」
「私は放っておかれててもいいんだけど?」
「無理。忘れてるかもしれないけど、オレ、まだ水無瀬さんの事好きなんだよ。」
「それが?」
「好きな人が悲しんでるなら、放っておけるわけないじゃん。」
「そうなんだ。じゃあ勝手にどうぞ。私は帰るから邪魔しないでね。」
「あ、ちょっと…」
追いかけようとするも、追いかけたら二度としゃべってくれないような気がした。
すごすごと家に帰る。
どうしたら、彼女は話してくれるのだろう。
初めのころ、彼女は孤高で、気高かった。
しかし、実は人見知りなだけであって、お気楽者で、そして、みんなそれを知るころには人気者だった。
彼女が嫌われることはなかった。
今も、一位を取ったことを喜ばれている。
彼女は、真面目で、優しくて、損があることをしなくて、本が好きで、自分に厳しくて、めんどくさがり屋で、器用で、オレは、彼女は自分に無自覚だと思った。
そして、今、理解者がない彼女は、孤独だった。
どうやったら、彼女の孤独により添えるのだろう。
どうしたら…
気付いたら寝てたようだ。朝だった。
学校に行こうと、布団からのそのそと這い出す。
今日、学校で何か進展はあるのだろうか。
俺じゃなくていいから、誰か一人でも、彼女に寄り添ってあげてほしい。そんなことを思った。
いよいよ終わりに近づいてきました…ように見えます!
実際はどうなるかわかりません。
次回も頑張ろうと思います。
お読みいただきありがとうございました!
22.彼女は吐き出す
学校に着いた。
みんないつも通りに見えるが、やはり噂はもう回っているらしい。
そんなことを思っていると、
「おはようございます。」
いつも通りに水無瀬さんがやってきた。
いや、違う。少し声は尖っている。どうやらまだ苛立っているようだ。
教室が一瞬静まり返ったような気がした。
彼女が席に着くと、彼女が叫んだとき、しゃべっていた女子たちが水瀬さんの方へ向かっていった。
「よくわかっていないんだけど、ごめん。洸が叫んだのってうちらに原因があるんだよね?」
「別に真由たちのせいだけではないよ。」
まあそりゃそうか。水無瀬さんが苛立っているのはオレを含めた「すごい」といった人全員が原因だ。
「何がだめだった? 」
「昨日の会話の話題全部」
「え…」
さすがに絶句しているようである。
「洸ちゃんって私たちのこと嫌い?」
「人の好き嫌いはよくわからないけど、昨日に関しては嫌わないほうがおかしい。」
「うちら悪いこと言ったっけ?」
「言ったよ。あなたたちが悪いと思っていないことでも私にとっては悪いことになったりすることもあんの!」
あ、苛立ちモードに入った。
「え? 私は学年一位ってすごいね、って言っただけだけど。」
「**だからそれだよ!**」
みんながぎょっとしたのがわかる。
「**だからその言葉が原因なの!**」
「え?うちは褒めてたつもりだけど?」
「私も」
「え?褒め言葉じゃないの?」
理解できていない様子だ。
「すごいすごいってそれ、ただの逃げじゃん! すごいって言って線引きして自分にはできないって思ってるんじゃないの!?」
確かに。
「私が夏休みにしたのは図書館通いとそこでいろんな本を読むだったけど、小説以外って読み進めにくいから結構大変なんだよ!? それなのにそれをすごいでまとめる?自分の努力を別に認めてほしいわけじゃないけど、努力をもともと持っていた頭の良さとかとして見られている感があって、これでも嫌な気持ちは感じてるんだよ?」
「あー…洸、ごめん。うちら、意識してなかったけど結構洸にひどいことしてたんだね。ごめん。」
「ごめんなさい。」
「私もごめん。」
「あのー…」
急に声が入ってきた…と思ったら小野田先生だった。
まああそこまで大声で喋ってたら先生に話がいかないほうが不思議だろう。
「えっと…今の口論って、水無瀬さんと藤田さんと|城《じょう》さんと石井さんの間で会ってますか?」
「口論というものでもないですけどだいたい合ってます。」
「えーと…一応みんなに迷惑がかかっているので少し来てもらってもいいですか?」
やっぱりそうなるか。
「「「「わかりました。」」」」
ひとつ、不機嫌な声が入っていたように聞こえたのは気の所為ではないだろう。
こんにちは。これにて22話です。あっという間でしたw
これからどうやってフィナーレに持っていくか考え中です。
楽しみにしてくださると嬉しいです。
お読みいただきありがとうございました!
23.私はズレている
「いったい何があったのですか?」
まず口を開いたのは小野田先生だった。
そこから私たちは事情を説明した。もちろん深入りする内容は言っていない。真由たちも言わないでくれた。
「分かりました。もう大丈夫ってことでいいんですね?」
「はい。」
本当は苛立ちはまだ残ってるけど頷いておいた。こういうことを隠すのは得意な方だ。
「なら、教室に戻りましょう。」
教室に戻る。ホームルームはもう終わっていて、もうみんなしゃべっていた。
良かった。これなら目立ちにくい。
こんな状態なのにそんなことを思う自分はどうかしている。
そこからはあまり良くはなかった。
先生方は私が大声で怒った?と思っているから、授業毎に聞かれ、毎回答えなければならない。
めんどくさい。
あぁ…早く帰りたいな…。
そんなことを思っているうちに放課後になり、帰っている…と、またしても牟田が追ってきた。はぁ…。
「何? ストーカー?」
「いや…違うけど…、違くないかも」
「どっちだ?」
「ストーカーじみてます。」
「正解。じゃあこの後するべきことは?」
「今すぐオレは引き返すべき。」
「なんだ、わかってるじゃん。じゃあ、そのとおりでお願い。」
「嫌だ。」
「はぁ?」
何いってんの? 正しい行動がわかるならそのとおりにしろよ。
「それは正しいけど、今の水無瀬さんには正しくない。」
「自分がどんなに変なことを言っているか分かってる?」
「わかってるよ。けど…本当にそう思うんだ。」
「はぁ…好きにして…」
急に顔が明るくなっている。こんな私についてくることを認められただけなのにどうしてそんな喜ぶんだろう?
そういえば牟田ってまだ私のこと好きなのかな?
最近の態度が普通だから考えていなかったけど。
「ありがとう。」
「はぁ…」
私はまたため息をついた。
「さすがに家は整理されてないからここでいい?」
そう言って指差したのは公園だ。かなり家に近い。
あーあ。これで家を特定されちゃうかもな…。
「いいよ。」
「で、何を言いに来たの?」
「え?」
「あれ? そうじゃないの?」
「いや…そうだけど…なんでわかったの?」
「追いかけてくるなら昨日の続きなのかなーって思うでしょ?」
「あ…そう…。」
そう言ってため息をつく牟田。
私はただの推察を言っただけなのに、しかもそれが偶然当たっただけなのに、なぜため息をつかれなければならないのだろう?
私も話を飛ばした感はあるけど、牟田には通じるぐらいかと思っていたけど…。
不思議だ。
「で、何を聞きに来たの?」
「え…いや…それは、」
言葉を濁す。言いに来たのにしゃべらないとは。それなら何をしに来たんだ?って感じだ。
「何があったか聞こうと思ってたけれど…今日の朝叫んでいたし…。」
「何?つまり、何も聞くことがないのに追いかけてきたってこと?」
「いや、違う。…あ、そうだった」
どうやら思い出したらしい。
「水無瀬さんって白明高校のことどう思っているの?」
ん? 今までにそんな話につながるような内容ってあったっけ?
以上で23話です!
次回は牟田ですが、その次にまた洸を持ってこようと思います!
今回もお読みいただきありがとうございました!
24.彼女の本音
「水無瀬さんって|白明《はくめい》高校のことどう思っているの?」
迷った末にオレが思い出した質問はこれだった。
ひねり出したのではない。普通にいつか聞きたいな、とは思っていた。ちゃんと!
水無瀬さんは首をひねっている。
「どうかって…普通にいい学校だ、って思っているよ?」
「そうじゃなくて…」
そんな当たり障りのない物言いましたって感じじゃなくて、
「本音…みたいなもの…が聞きたい。」
「本音? いや、普通に普通じゃないの?」
いや、県ナンバーワンの高校を普通というのは水無瀬さんくらいだと思うけど…
けど、この答えも違う。
「じゃあ勉強に関して言えば?」
「牟田。あんた一体何を聞きたいの?」
しまった。不機嫌になってしまったか。
「だから水無瀬さんが思ってること。今朝みたいに大声を出していいからさ。」
「言わないって言ったら?」
「家までついていく。」
「分かったよ。えっと…なんていうんだっけ? こういうの…ああ、そうだ、|自棄《やけ》っぱちだ。自棄っぱちに言うよ。」
「うん。ありがとう。」
じゃあ、と言って彼女は大きく息を吸い込んだ。
**「なんなのこの高校! 偏差値は県ナンバーワンじゃないのかよ!? 私が簡単に1位を取れちゃうなんておかしいじゃん! なめ腐っている! だいたい他の成績上位者も上位者だよ! もっと粘れ!こんなに勉強を全然していない人に簡単に1位を取らせんな!」**
そこまで言うと、彼女の声は一旦小さくなり、
「あぁ…他県のもっと頭のいい学校に行けばよかった…」
と言って終わった。
「で、こんなのでよかった?」
早い…切り替えが早すぎる…。
「あぁ…うん。いいよ。」
それにしても今の言葉には我が身にも思うところがあった…けど、
「この前の試験、オレいつも通り2週間前から勉強し始めていたんだけど…」
「へえ、そうなんだ。じゃあ勉強する場所でも間違えたんでしょ。」
「まあ…基本を重視していたから…間違っていたかもな…」
…。
「けど、これを言うと水無瀬さんは怒るだろうけど、水無瀬さんは普通にすごいよ。努力家だ。」
「うん、あの学校では、ね。」
晴れ晴れとした表情だ。いかにも今までうんざりしていた、ということを感じさせられる。
「全国、海外で見てみなよ。私より勉強できる人はたーくさんいる。それなのに私をすごいというの?」
スケールがでかかった…。
「言う。少なくとも県ではほぼ1位と言ってもいいくらいだ。いくら田舎といえども…ね…。考えてみてよ。スポーツだったら県で1位ってだけで凄いってなるんだよ? 成績も同じであるべきだろ?」
「うん…確かに…」
お、これは説得できるか?
「だから、水無瀬さんは頭のよさですごいって言われてもいいんだよ。」
「…かもね…。」
「もちろんオレも水瀬さんに勝てるように応用系まで頑張るからさ、水無瀬さんの勉強のモチベーションがなくならないように。」
「うん、それは助かる。」
そう言った水無瀬さんの表情は晴れ晴れとしていた。
いかがでしたか?これにて24話です!
最後まであと少し! ぜひお付き合いください!
このシリーズをどうぞよろしくお願いします!
25.私は思う
「水無瀬さんは頭の良さで凄いって言われてもいいんだよ。」
牟田がそう言った。少し意外だった。
けど、そう思うと、目の前が明るくなったような気がした。
「けど…白明高校が本当に県で一番か分からないよね?」
私がした反論はあまりにも弱くて、すぐ返されてしまった。
「けど、この県で一番合格実績があるのはここだ。」
「うん、そうだよね。」
もちろん私の上にはたくさんの頭がいい人がいる。
でも、とりあえず、この県では私はトップクラスでいい。
それは、スポーツで凄いと言われるように、すごいことなのだ。
「まあでも、だからといって自慢する気にもならないけどね。」
「それでいいだろ。」
「うん。ありがとう。」
感情が薄い私でも、牟田とだったらうまくいったりするのかな?
らしくもなくそんなことを考えてしまった。
「牟田。あんたまだ私のこと好きなの?」
「あたりまえじゃん。」
「なんでだったっけ? 遊園地でも一回聞いた気がするけど…」
「だから、まず初めて見たとき美しいって思って、興味をもって、で、いつの間にか…って感じ」
「あぁ~だっただった! 本当にその流れ変だよね。私牟田の事結構悪く言ったりからかったりしているのに?」
まあそれは牟田の反応が面白いから、という理由からの行動だけど。
「そうだけど…それでも、水無瀬さんといるのは楽しいの! 恋愛に理屈を求めるなよ!!」
「はいはいごめんごめん。」
「悪く思ってないだろ。で、なんで急に聞いてきたの?」
「なんとなく。恋ってどんなものなのかなーって思って、」
「ふうん。まあしたらわかるよ。」
恋愛に理屈を求めるなってねぇ。感情が薄い人はどうなるんだろう?
「結局よく分からないけれど…牟田とだったらうまくいくかもしれないんだよね…」
「水無瀬さん? 今…」
「え? 何?」
「付き合ってもいいって言ってくれた?」
「へ? 何かしゃべったっけ?」
「オレとだったらうまくいくかもって言ったじゃん」
え?
「そんなの言ったっけ?」
「言った。」
心の中で思っていただけのつもりだったけど、どうやら口に出してしまったようだ。
しかも内容が内容。これは恥ずかしいわ。
「じゃあそれはそうだとしても!付き合っていいとは言っていないよね?」
「意訳したらそうなる。オレとなら付き合ってもいいってなるから。」
「んー・・・確かに?」
「なら、水無瀬さん、俺と付き合ってください。」
「え!?」
まさかのいきなり?
「嫌とは言わないよね? さっき付き合ってもいいって言ってくれたんだから。」
あーあ。一本取られちゃったなぁ~。
「しかたがない。付き合ってあげる。」
「本当に!?」
「だからそう言ったじゃん。恋愛感情がなくていいなら、だけどね。」
「ありがとう! 水無瀬さん!」
「せいぜい私に嫌われないように頑張ってね。私が牟田を嫌いになったら解消。牟田も私を好きじゃなくなったら即解消すること。これが条件。」
「分かった。頑張る。」
頑張るって…いったい何を頑張るんだろう?
「あ、そうだ。学校ではまだいつも通りで。牟田に慰められて付き合うことになった、とかいう噂が広まったら死にたくなる。」
そんなの私のプライドが許すものか。
「分かったよ。いつも通りね。この前と逆だ。」
そう言って牟田は笑いながら帰っていった。
この前?あ、遊園地の時か。
私も思わず笑う。
うん、恋愛感情なしでもきっと私たちは大丈夫。
これにて25話です。
結局洸に恋愛感情を抱かせることは難しかったのでこうなりました。
まあ、現実にはよくある話ですし、そこまで悪くないかな、と思ってます。
最後にエンドロールを書いて、この話を完結にしたいと思います。
次回まで、どうぞよろしくお願いします!
終話 彼女との日々
今日は12月25日。クリスマスだ。
なのに学校がある。おのれ、進学校め…。
と呪っても仕方がないが、呪いたくなる。
今日は、オレの家に|洸《ほのか》さんをさそってクリスマスパーティーだ。
なのに学校があって(部活はない)長い時間一緒に入られない。
みんなに付き合っていることを言ったのは、体育祭の時。団ごとにダンスをするのだが、そのペアが男女でなくてはならなかったときだ。
オレと水無瀬さんは同じ団だったので、一緒にやることにした。
その時にみんなが騒いできたので、伝えたのだ。
みんな驚いていたけど、やっぱり、って感じが多く読み取られた。
まあ、その後質問攻めにあったんだけど…
「|傑《すぐる》? 帰らないの?」
「今行く。」
その時についでに呼び方も変えたのだ。
なぜか「さん」をつけてしまったが、それが自然な気がして変えていない。
「それにしてもクリスマスパーティーか。」
「初めて?」
「うん。私この県でも田舎の方に住んでいたから、あんまりそういうのなじみがなかったんだよね。流花さんも新しい本この前買ったらしいから、それも楽しみ。」
まったくオレのことについて触れないな。そこは別に楽しみというわけではないようだ。悲しい…
そんなこんだ話しているうちに家についた。
「ただいまー」
「おじゃましまーす」
洸さんももうオレの家に行くのに気負っていない。そのことがうれしい。
「あかえり。いらっしゃい、洸さん。」
「誘ってくれてありがとうございます。」
「いいえ~。」
「あ。お母さんずるい。私が洸さんを呼んだら、って傑に言ったのに。」
「どっちでもいいだろ。」
「だね、どっちでもうれしい。流花さんもお久しぶりです。」
「久しぶりー。帰る時でいいから、興味のある本持って帰ってね。」
「ありがとうございます。」
この後も会話が長く続く…
「「「「メリークリスマス!」」」」
「いただきまーす。」
「どうぞ。」
出てきたのはホールのイチゴケーキ。
最近物価上がっているのに… しかも去年は普通のご飯だったのに。
オレの家族はみんな洸さんに甘いのだ。
「傑、これプレゼント。メリークリスマス!」
洸さんがくれた。意外だ。まだオレに恋愛感情は持っていなさそうだけど…。
「オレもプレゼント。メリークリスマス。」
「初々しいわねぇ」などとどこかの誰かがしゃべっているのが聞こえたが無視だ無視無視。
「へぇー、栞だ! 結構かわいいじゃん。流花さんに手伝ってもらったの?探すの」
「違う。ちゃんと一人で決めた。」
洸さんからのものは…リスト?。
「なにこれ?」
「テストの最後の方の問題で役に立ったものが多く含まれている本の一覧。前々回は負けたけど、前回また私に1位奪われていたもんね?」
「あ、そう。ありがとう。」
意外とちゃんとしてた。けど、お金を使わないところも洸さんらしかった。
「どういたしまして。」
洸さんはみんなから好かれている。
そんな彼女の隣に今いられることがとても嬉しい。
栞は喜んでもらえたが、やはりそれではオレを好きにはならないようだ。
高校卒業までに好きになってもらいたいな。
そんなことを思い、彼女を想う、夜だった。
これにてシリーズ完結です!! バンザーイ!
こんな風に終話を書きましたが、まだまだこの話は広がりそうな気がしなくもないです。
こんなところを書いてほしい!というのがあればリクエストかファンレターで教えてください!
できるだけ叶えます!(そこまで読者が多いわけではありませんが)
ここまで読んでくださってありがとうございました!!
それから
凪の言葉は凪語を日本語に訳したものでお送りします
オレと彼女が付き合い始めて10年が経った。
結婚して4年経った。
彼女は意外というかやはりというか、研究者になった。化学の。
そしてオレは医者になった。
外科にもなろうとしてみたが、人を傷つけるのが心理的難しく、内科医として頑張っている。
お互い多忙だ。
しかし、そんな中でも子供がいる。
今は2歳(もうすぐ三歳)の、女の子だ。名前は凪。彼女の考案だ。
彼女も育休で休みを取ったが、研究者は頭とデータがあれば成り立たないわけではないので、彼女は休みながらも働いる。
人気の、いい教師らしい。
論文も発表はしているが、今までそこまで大きい発表はしてないから、普通の研究者という感じだ。
「凪ー、膝くる?」
「いく!」
凪は可愛い。
見ているだけでほおが緩む。
彼女は子作りには積極的だ。
「少子化なんだからお金もある私たちが作らなきゃでしょ?そして大学生に子どもの良さを教え込むんだー!」
などと言っていた。
そういうところが彼女らしく、たまらない。
「凪はさー、何かやりたいものある?」
「えーとね!凪はね!ママみたいになりたい!」
オレ無視されてる。
「本当?うれしいなー。どんなふうにママみたいになりたいの?」
「えっとね! かっこよくなりたい!」
「そっかー。それなら勉強しなきゃだね。お絵かき、する?」
どこからそうなったのか、よくわからない会話が続く。
「するー!」
ママとお絵かき♪ルンルン♪と聞こえてきそうなくらい機嫌がいい。
まあ彼女のほうが世話してるからな。
仕方がない。
「終わったー?」
「うん!」
「じゃあ、見せあおっか?せーの!」
「うわあ!ママ上手い!」
「凪も上手だよ!」
しばらくきゃっきゃきゃっきゃしている女子勢。
「あ、そうだ。凪、どれに興味がある?」
彼女は習い事の用紙を持ってきた。どうしても一つは習わせたいらしい。やっと3歳になるかってとこなのに…
「全部!」
「そっか…全部か。考えておくね!」
「うん!」
凪は頷いているが、多分理解していない。
「洸さん、もう凪に習い事させるの?」
「私は3歳の時にはピアノと水泳していたよ?」
「けど、凪は違う。」
「だね。凪は全部面白そうだって思った。」
「うん。だったら…」
「だから、探すんだよ。」
「何を?」
「それに当てはまるものを」
そこからはオレの不可侵領域だ。
洸さんはいろんなところに凪を連れて行った。
店行ってピアノを弾かせてみたり、バイオリンに少し触らせてみたり、コンサート行ったり、スポーツ観戦をしたり、アニメを見せたり。
その結果。凪はなりたいものを言った。
「私、女優さん?になってみたい!」
「そっか、協力するよ。」
彼女の行動は早かった。
芸能事務所に写真を送り、1社から入っていいと言われた。
さすが彼女の子だ。凪は母親似だからな。人目を引いちゃうんだ。
そして、未来の女優?水無瀬凪が誕生した、かもしれない。
ちなみに二人の苗字は水無瀬。
傑が洸の名前には水無瀬があっていると、強引にそうしたんだそうです…。