「死刑の決まった人間の思考データを取る」
これは、今最重要とされている課題であった。
全ての人間の救済を願う宗教団体、しかし裏の顔は脱獄のアシスト、指名手配者の国外脱走の手助けなどを行う団体「ハピネス・ピースズ」により、死刑囚の脱走率が70%を越えようとする今、ある心理学の研究者がこう言った。
「死刑の決まっているもの特有の脳波がわかれば、犯罪者の特定が可能である。」
脱走死刑囚による事件の数々、見つからないハピネス・ピースズのメンバー、その他もろもろにより治安が急激に悪化していた日本で、その案は唯一の希望だった。
これは、通称「貢献死刑人」に選ばれた、1人の少年の物語
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目次
1話 悪魔が悪魔を呼ぶ
20XX年、日本。
「ハピネス・ピースズ 人類の救済」
この団体が立ち上がったこと、それが地獄の始まりであった。
「教祖様は、全ての人をお救いくださる!」
この言葉が掲げられたこと、それが悪夢の始まりであった。
、、、
ハピネス・ピースズは、「全ての人類を救済する」ことを目的とした、宗教団体であった。
そう。全ての人類を。
「罪がなんだと言うのです!今、我々ハピネス・ピースズが立ち上がり、全ての人類を救済するときです!」
そう叫んだ「教祖」に、人々は忠誠を誓っていた。
罪の激しい自責に苛まれる人にとって、「罪がなんだと言うのだ、これからの行動で、それを覆せばいい」と言う言葉は、その言葉の主についていくことを決めるほどに、暖かかった。
、、、自分がつけ込まれているとも気づかずに。
ハピネス・ピースズ。
「救済」と言い、脱獄、国外脱走を手助けする団体。
この団体、元凶悪犯率がとても高かった。
別の方向から見ると、「凶悪事件を起こせるほど頭のいい人材が揃っていた」のだ。
凶悪犯の他にも、毒親の期待に応え損ねた天才、重大ミスにより大事故を起こした研究者など、
とにかく優秀な人材がごろごろいたのだ。
タチの悪い魔王軍を思わせる構図に、政府は頭を抱えていた。
2話 貢献
「死刑の決まった人間の思考データを取る」
ある心理学者が言った。
「死刑の決まった人間のデータをとり、死刑囚特有の思想データとして保存する。 容疑者にその思想データが確認できたかを調べれば、死刑囚の識別は可能である。」
この案はすぐさま取り入れることになった。
それは、「国民からランダムに選んだ100名に、死刑を言い渡す。そして、周りの人に決して死刑になったと伝えてはならないと警告する。死刑をバラした場合、その日すぐに死刑を執行する。」
この条件のもと、実験は、開始した。
人権保護団体からは批判の嵐だったが、「100人の犠牲で、全国民、いや、国外逃亡によるものを考えれば、全人類が救われる」と言い切り、それ以降、反対意見に一度も取り合わなかった。
、、、これが、「貢献死刑人制度」の始まりだった。