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目次
第一話 『禁忌魔術』
続かないことは分かっています。
けど、小説が書きたかったんですよ、私は。
召喚魔術は禁忌です。
何故かって?それらの禁忌魔術は、《《この世界の外》》にいる者を召喚・呼び寄せてしまうからなのです。
この世界の外は、まだ未開拓の地。
未確認の生物たちは、そこからやって来るとされています。
魔物・神獣。未解明の生命体たち。
それを、調べようとする人がいました。
かつて、私の祖父は研究者でした。
この世界でも五本の指で数えられるほどの有力な研究者。
彼は、この世界の外に可能性を見出した一人です。
そう、世界の外に行ってみようとして。
それから二度と彼を見たことはありませんでした。
噂を聞くことも。
でも時々、未知の空間から「電気信号」が送られてきているようです。
私には何も言い残さず、一人どこかへ行ってしまった。
二度と帰って来れないような、危険な世界に。
後に聞かされたのは、祖父が残したと思われるたった一つの言葉だけ。
【ミア、君の手で未完成の私の本を完成させてくれ。】
祖父が残した未完成の本。
父は遠い昔に亡くなり、それを果たすことはできませんでした。
なんて勝手な言葉だろう。と、初めはそう思っていました。
ですが、私はだんだん思いを変えていきます。
───人生には、必ず意味がある。それは、そう遠くない場所で見つかるの。
今は亡き母の、最後の言葉です。
これが私のやるべき、通らなければならない道。
そう決心して、今は外の世界を調べるという、とても難儀な研究に励んでいます。
《 ミア・リヅヤービア 》
***
中学生になると、小学生からは「お兄さん」「お姉さん」と呼ばれるようになる。
自分でも分かる。僕のような、こんな年上の先輩がいてたまるものか。
水崎 玲。僕の名前だ。
ようやく今年で十三になる。
小学生の最後の三年間をほとんど引きこもって過ごした僕は、多分学力はガク下がりの一方なのだろう。
というわけで、入学式はやたらと白い目で見られたような気がする。
「あいついんじゃん」
「まじかよ、ニートやめたのかよ」
てっきり忘れ去られた幽霊生徒になっていたかと思いきや、そうでもないようだ。
いや入学式に行かない生徒がいるかよ、あ、いるな。
新しい勉強になった、ありがとう。
何故引きこもりになったかと聞かれても困る。
でも、思い当たる節はいくつかはある。
五年生の頃に、学年発表会という授業があった。
その時はたしか、クラスの優等生たちの虐め対象になっていたか。
無理矢理代表として前に押し出され、学力がそんなに高くない、そして人前が大の苦手なか弱い生徒の僕はすぐに失神したのを憶えている。
いや、完璧に憶えているわけではない。
気が付いた時には医務室にいて、倒れたことを聞かされたのだ。
その後も、五年生の時に何かがあり、気が付いたら件の優等生に多数の切り傷があって、自分の手にはカッターナイフが握られている。など、トラウマになりそうなささやかな事件があった。
よって、トラブルメイカーは家にでもこもっておいた方がいい。そうして今に至るのだ。
「ずっと引きこもって、小卒って言う肩書きで就職したら良かったのに」
それは面倒だ。
小卒なんて前代未聞だと思うしいらない名誉は渡されそうだが、それは嫌味なのだろう。
「ねぇ、中学は休んだら内申点に影響するの知ってるっしょ?」
小学生時代から僕に対して嫌味を言い続ける女子生徒が、肩を叩いてニヤニヤ話しかけてくる。
余計なお世話です。
完全無視で、二度と声をかけられないような安全地帯を目指す。多分、校舎裏が一番安全だろう。
この中学校、制服は支給されない制度だ。
中学生といえば学ランとセーラー服なのだが、それが実感できず不満の愚痴を漏らす生徒もいる。
「はぁ…」
校舎裏には誰もいないことを理解すると、早速ため息が漏れる。
「学校とか、優等生が弱者を虐める場所でしか…」
そんな愚痴を吐きながら、スマホを取り出す。
この記憶は、多分この世界で過ごした最後の時なのだろう。
その後は憶えていない。
────────・・・
午後二時四十六分。
そこには、一つだけ。スマートフォンがぽつんと置いてあり、画面は割れていた。
「完了しました。」
そこに立っている一人の人物は、自分の手持ちのスマートフォンに耳を当てて話し始める。
誰かと電話でもしているのだろう。
少し待っていると、今度はスマートフォンの中から声が聞こえてくる。
『イェスイェス、よくやった!貴様は良き人材になるぞよ〜』
というような意味不明な褒め言葉。
散々話した後、スマートフォンの奧で声主は軽く咳払いをする。
『さて、改めて言う。よくやった』
これにはもう呆れるしかなかった。
『転送したのは誰だ』
「えー、十三歳の男子中学生。魔力は、私たちの世界に来ればあなた様をも上回ることでしょう。」
『ふむ、なるほど、なるほどな。』
「どうしますか?」
そしてしばらくの沈黙。
スマートフォンの奧の人物は、何やら考え込んでいる様子だ。
『…悟らせるか、転生したことに。』
「いいんですか?」
『いいから言っているんだろう?』
変なところで意見が相反する中、再び二人の間に沈黙が流れる。
どうやら、二人は気まずい関係のようだ。
『よし、おしまいだ!じゃあ、早いうちに戻って来いよ』
接続が切られ、ピッと音がした。
「…………死にやがれ」
ぽつりと、本人に言ったら首が刎ねかねない言葉を呟く。
三千文字は頑張ろうって…(๑•ૅㅁ•๑)
言ったじゃぁぁぁぁあん(泣)
第二話 『王国監視拠点/研究所(仮)』
「閣下ぁ、お連れしました〜」
ノックもなしに開けられた扉。
眠そうにあくびをしながら入って来たのは騎士のような制服を来た、歳の頃十六〜十八くらいの美少女であった。
薔薇園を思わせる赤い髪をしなやかにツインテールでまとめ、瞳はラベンダーの紫。
貴夫人を思わせるその顔立ちから、身分が貴族であることは明確だった。
だが、問題はその態度。
貴族にあるまじき、弱々しくふらついて半目で猫背。
「ふぁ〜………、閣下、聞いてまふぅ?」
「聞いている、何だその態度」
「いやあぁ、職場に束縛を求めないでくたさいまふぇ。人員が逃げていひますよぉ」
閣下と呼ばれた男は、しかめっ面を改めて彼女のかたわらに跪く少年を一瞥すると、不意に笑顔になる。
「よーく来てくれた貴殿は今日から俺に代わってカッカカッカ呼ばれる不愉快な生活を送ることだな!頼んだぞ〜」
彼は、そのように日頃の愚痴なのだろうことをぼやきながらも、一歩も王座的な椅子から動こうとしない。
「そんなこと言ってないで仕事してくださいよぉ」
「お前が用があるって俺を引き留めたんだろ」
「はぁ…あ。そうでしたね」
自分で引き留めたくせに、もう寝たいと言わんばかりの顔で話を始める。
「この子、玲くん。連れて参りましたよ」
「お前アイツと一緒によくここまで来れたなぁ…!よくやった!」
「あ、え、は、はい?」
「ちょーっと!何勝手に話進めてんのバカ───ッ!」
しばらく経つと、男の頬は傷と血だらけになっていて、赤髪の少女は満足そうに笑みを浮かべている。
「水崎 玲くん、えーとね…君を、私が、というか正確には私じゃなくて別の研究者さんなんだけど、その人が君をこの世界に召喚したの。理由は…」
急に意味の分からない小説の中のようなことを言われても信じられないよ、と言いたそうな顔で玲は首を傾げる。
「もう少し分かりやすく説明しろ。全く、頭の悪い奴は見た目で騙して笑う奇人ばかりだ」
「死ねッ!レウア!!《深淵から出でし闇の王よ》」
「ごめんて、ごめんて…!」
厨二病のような独特な呪文を唱えて、掌に光の粒を渦巻かせる。
それを制止しようと、謝るレウアと呼ばれた男。
「レウア様!!ちょっと来てください!」
勢いよく開け放たれる扉。
「何だ」
「ヤーナが──」
「ダメっ、言わないで!何でもないです閣下、失礼します…あれ?」
ヤーナが玲と、赤髪の少女ルリィを見やる。
「あら?レイくん、こんにちは!」
「…え?」
ヤーナは当たり前のように玲に微笑みかける。
「お姉ちゃんって?うふふ、可愛いね。私も弟に会えて嬉しいよ」
また当然のように頬に人差し指を当てて、〝乙女〟というようなポーズをしてみせる。
そう、ヤーナという少女、玲の姉なのだ。
玲が小学一年生の頃にどこかへ失踪してしまい、それ以来見つかることもなく今年で死亡認定されると決められていた。
その姉が、今ここにいるのだ。
当時五年生だった彼女とは、多少容姿は違って大人びているのだが、面影は姉と全く同じ。
「さて、話が脱線、…妨げられてしまったけど、ヤーナ、水崎 |夜那《ヤナ》、水崎 玲は魔力量がね、その…。別世界に生きているのに、この世界の人々とは段違いの魔力を秘めている。それで、未来で死ぬ運命にある。それが、私たちが二人を召喚した理由」
玲が目覚めたこの場所は、世間には「魔術理論研究所」として認知されているが、実際には違う。
〝リーディアル王国《偵察・監視拠点⑴》〟
ルリィによればこの様な偵察拠点は他国にも何箇所かあり、【禁呪導結社】という、魔術を悪用し時には国をも滅ぼすと言われる悪の組織を観察する施設だ。
「ここ、リーディアル王国偵察拠点⑴は[学園監視班]と王国騎士団監視班]に分かれてるんだけど、ヤーナは王国騎士団監視班にまわってて、レイくんは[学園監視班]にまわってもらおうかな!」
「い、いや、無理ですよ…、僕、まだほぼ小学生のようなものですし…、魔術も何か分かってないし…」
「大丈夫、大丈夫!!……大丈夫、だよ…」
乏しい語彙力で自信がなくなる顔をして、ヤーナは天を仰ぐ。
「あ、ああ…」
ルリィも俯き加減に、呟く。
「でもね、事件が起こりやすい学校には強い者が行った方が…、良いんだよ。───分かってる。私は知ってるよ?事件が起こりやすいんじゃなくて起こるってこと…」
まるで誰かに言い訳するような言動で、ルリィはぶつぶつ言う。
「いいな、それ。そっち、弱い奴しかいないしな…」
「一応編入生は大丈夫だよ!学園長が、あの研究者の子のお母さんだし」
こうして玲の介入なしに話は進み────。
学園監視班の無理矢理所属が決まった。
──────・・・
レーネァ王立魔導学園。
国内屈指の魔導士 × 魔剣士育成学校で、過去に何回か有力魔導士、魔剣士を輩出している。
伝説の魔女ネウナも、学生時代はこの学園に通ったとか。
宮廷魔剣士・魔導士団は必ずレーネァ王立魔導学園に通うし、一般科は魔導士の素質が無くても通える。
《【偵察進捗書・著者〔ミア・リヅヤービア〕】
❶
三月八日.宮廷騎士団・魔剣士団には怪しい動き無し。
魔導学園に過度の魔力反応あり。
六月二十九日.宮廷魔剣士団が女王毒殺未遂の犯人ヤーデスを確保。
学園に怪しい動き無し。前に起きた過度な魔力反応の原因は学園長の気まぐれ。
六月三十日.宮廷騎士・魔剣士団に怪しい動き無し。
学園(上記と同じく)。
~~~(以下略)~~~