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目次
校庭は海辺のにおい。
私は、海に行ったことがなかった。
田舎に住んでいるので、
海も近くなかったから、行く機会もほとんどなかった。
私の周りにも海に行った人はほとんどいなかった。
中学生になってもまだ、海に行くお金は貯まらなかった。
でも、私は海が大好きだ。
魚がいるところ、砂浜や海辺の近くはキラキラと輝いているのが好き。
でもそれは全て、写真や情報だ。
私はこの目で、この体で経験したいのだ。
今日は転校生が来る日。
教室に入ると騒がしくて、女子たちに私の席が勝手に座られていた。
「あ、ごめんね、椎奈ちゃん。」
「あ、いや、大丈夫だよ。ごめん。」
私は気まずくて謝ってしまった。
しばらく話し声が静かになっていたが、
ドッと笑い声が起きて、また大きな声で話し始めた。
こういう空気が好きだ。
誰が何を話してるのかわからないけど、
聞いてるだけで何故か落ち着ける。
そっと耳をすまして聞いていた。
チャイムと同時に担任の先生が来て、
さっきの女子たちも話題を切り上げて自分の席に座った。
「前に伝えた通り、今日は転校生が来ています。」
先生の合図ともに転校生が入ってきた。
「神奈川の江ノ島から来ました。竹永颯太です。これからよろしくお願いします。」
教室全体が一瞬ざわついた。
理由はすぐなら分かった。
顔がモデル並みに、綺麗だった。
ただ、私はそんなことはどうでも良かった。
江ノ島から来た。
私の頭の中はこの言葉がずっとループしていた。
江ノ島は私が一番好きな海だ。
海に行く時は絶対に江ノ島に行きたいと思っていた。
話したい。
海のことでたくさん話したい。
だけど、一日中誰かに話しかけられっぱなしで、話しかけられなかった。
彼はずっとニコニコしていたけど、次第に疲れた笑顔を見せるようになった。
誰かが話し終わると、次は誰かが話しかけた。
それの繰り返しで大変そうだった。
私はしょうがないと思っていた。
いつか、話しかけられると思って我慢をした。
今日は高校に入って初めて、
他校の剣道部での合同があった。
電車で他校の体育館まで向かった。
今の高校は前の中学よりかは都会だった。
だけどその高校に向かうにつれて、
前の中学の通学路に入って行った。
広前高校に着いて、体育館へ向かった。
練習が始まった。
私の高校と広前高校とは練習が違くて、広前高校の方がストイックだった。
私は途中貧血を起こして休んでいた。
私は剣道の竹刀がバチンと当たる音が好きだ。
元々生活音を聞くのが好きだったけど、
興味本位で入った剣道部は竹刀がバチンと当たる音がとても気に入った。
体育座りで竹刀の音を聞いていた。
「沢城さん?」
急に自分の名前を呼ばれでびっくりした。
「え、ごめんなさい。誰ですか?」
見覚えのある顔だが、名前が思い出せなかった。
その人は汗だくで顔が真っ赤だった。
「えっと、中学の頃同じクラスだった、竹永颯太。覚えてないかな。」
そうだ、竹永くんだ。
「あ、竹永くん。久しぶり。」
「中学ぶりだね。あんまり話さなかったけど、覚えてたんだ。」
覚えていなかった罪悪感に苛まれたけど、
竹永くんの笑顔で徐々に消えた。
「竹永くんは、バスケ部?」
「そうそう。さっき休憩入ったんだ。」
だから汗だくだったんだと納得した。
「そうだ、メール交換しようよ。」
思い出したように言われたので、私はリュックからスマホを出した。
「ありがとう。それじゃ、俺練習行ってくる。」
「うん、頑張って。」
私たちの会話は、これが最初だった。
メールのやり取りをしていたら、
颯太と仲が良くなった。
本当は、誰かに話しかけられるのが怖いこと、自分のことを理解してくれる人がいないこと。
私は全部を聞いて、ゆっくり話してあげた。
そういうこともあって、よく会うようになったり、遊ぶようになったりした。
そして、今日は江ノ島に行く。
待ち合わせの駅で私は待っていた。
水色のポロシャツに、白の薄いジャケットを羽織って、紺色のスカートを履いてきた。
「おまたせ。」
「颯太。全然待ってないよ。」
颯太は私のことをまじまじと見た。
「椎奈。めっちゃ楽しみ?」
颯太は少しニヤついて聞いてきた。
「え?めっちゃ楽しみだよ。」
「だろうな、顔がもう楽しそう。」
「楽しみじゃないわけないよ、すんごい楽しみ。早く行こう。」
私はとても楽しみだった。
スマホの充電はバッチリ。
写真を撮る準備もちゃんと出来ている。
電車に乗って、私は外を眺めた。
「江ノ島ってどんなとこなの。」
少し眠そうな颯太に聞いてみる。
「えー、なんだろ。サーフィンやってる人とか、あとたこせんべいが美味しくて、あと海の近くはやっぱお店がいっぱいあるんだよ。」
懐かしそうな顔で颯太は話した。
江ノ島についた時、私は最高に興奮していた。
「すごい、クラゲだ。ぷかぷかしてる。えっ?光った?颯太、今光ったよね?」
「おい、落ち着けよ。まだ時間あるだろ。」
颯太は嬉しそうに笑っていた。
私は江ノ島の街並みに釘付けだった。
海辺につく頃には私は心臓が破裂しそうなほど、感動していた。
「すごいすごい!綺麗!颯太見て、すごい素敵じゃない?」
颯太はニコニコしながら答えた。
「そうだね。もうちょっと近くに行ってみよう。」
海の近くに行って私は海に触った。
すごい。少し温かいけど、入ったら冷たそう。
「なんかしょっぱい匂いがする。海の匂い?」
「海の潮だね。」
「なんか、中学の時の校庭の匂いに似てる。」
漠然とそう感じた。
体育の時間で、持久走をやった時にこの匂いがした。
「たしかに。してたかもしれない。」
「してたよ、してた。不思議や匂いだと思ってたけど、この匂いと全く同じだよ。」
結局真相は分からなかったけど、私は海をたくさん楽しんだ。
手に海の水を乗せては、海に戻していた。
帰る前に夕日を見ようということになった。
ピンポンという卓球の漫画に、「この星の一等賞なりたいの、俺は」というセリフがあって、その聖地に向かった。
「すごい、ピンポンで見た場所だ。」
私はぴょんぴょん跳ねて写真を撮った。
夕日をゆっくりと眺めた。
「江ノ島、すごい楽しかった。」
私は満足していた。
もう、今死んでもいいくらい。
「そっか、良かった。」
颯太は私に散々付き合わされたので、疲れた顔をしていた。
でも満足げな顔をしている。
「颯太は、江ノ島好き?」
急に颯太は真剣な顔になった。
「どうだろう。普通かな。」
少し間を開けてぽつりと言った。
「江ノ島より、椎奈の方が好き。」
「え?」
海の音と、人の声で聞こえなかった。
「ごめん、聞こえなかった。もう一度言って。」
「いや、なんでもない。江ノ島、好きだよ。」
また颯太は笑っていたけど、疲れた笑顔だった。
あの顔だ。
中学の時に毎日していた、あの顔。
本当は、江ノ島のことは好きではないのかもしれない。
「颯太?なんで泣いてるの。」
颯太は泣いていた。
顔を少し歪ませて泣いていた。
颯太の顔は綺麗だったけど、泣き顔は似合わなかった。
「椎奈も、なんで泣いてるんだよ。」
「え?」
目元を触ると、湿っていた。
あれ、なんで私、泣いてるんだろ。
涙が止まらなかった。
私と颯太は泣いた。
私は必死に泣くのをやめたかった。
校庭のあのにおいがずっとしていたけど、
私にはどうでもよかった。
颯太に泣くのをやめてほしい。
颯太に泣き顔は全く似合わない。
颯太は笑っている顔が一番素敵だ。
海より、素敵だ。
砂浜に涙が落ちた。
砂浜は涙を吸い込んで、滲んで、消えた。
だけど、涙は止まらなかった。
私のポロシャツに涙が滲んだ。
その涙は、砂浜のように滲んで消えたりせず、染み付いて離さなかった。
ゐわのだよぉうう
小説投稿するたびにあとがきで本性が見え始めてるねやばいねやばいよ
小説は真面目(?)だからあとがきで壊れてしまうのかもしれない
あ言っとくけど鈍足は進んで、マス…汗
いやでも少しずつ書いてますけども
今描いてる小説でも3個書いてて、
それで短編も書いてますからね
一生終わんないよー宿題も終わんないよー
真面目にやばいので頑張るしかない
ちなみに部活終わりは2時間くらい寝て時間無駄にしてるせいでもありますよね
ゐわのは頭悪いですね帰ってきたら宿題をするか小説を書けってことですよ
そして寝るのは夜だけなんですお昼寝なんかしちゃダメですなんで18時にお昼寝するんですかね!?
なんか情緒不安定ですが大丈夫です…
マジで無理無理出してから私が頭おかしいことバレ始めそう!
とにかく私は鈍足を書いてきます
読んでくれてありがとうございました!
学校幻想曲
「広瀬、早く食えよ。」
「なんでだよ、食べない。寝る。」
「寝るなよ。」
俺と中嶋のやり取りはいつもと変わらない。
「中嶋ぁ、学校つまんないよな。」
「そんなこと誰だって分かる。素因数分解やら方程式やら、俺たちには少なくとも関係ない。」
俺たちみたいな陰キャは、隅で弁当を食べる。
絵に描いたような光景だ。
前では机をつなげ合って大盛り上がりの陽キャたちが大声で恋バナをしている。
到底俺たちには理解できない世界だ。
「わ、何そのだし巻き卵。緑のがついてる、カメムシ?」
「食う気失せるだろ。ほうれん草だよ、アホ。」
まあ、陽キャにも俺たちの世界は違う。
一つの教室に、二つの世界がある。
不思議なことだ。
「俺イチゴ牛乳買ってくる。」
中嶋が席を立った。
「え、じゃあ俺のも買ってよ、午後の紅茶。」
財布から小銭を出して中嶋に投げた。
中嶋はうわっと言いながら全部キャッチした。
流石野球部のエース。
「おっけ、ここで待ってて。」
そそくさに中嶋は出ていってしまった。
俺は黙々と弁当を食べた。
「はは、中嶋のだし巻き卵食べよ。」
俺は中嶋のだし巻き卵を指で掴んで食べた。
甘い。
俺の家のだし巻き卵はしょっぱいけど、
中嶋のだし巻き卵は甘い。
「美味しい。」
もう一つつまんだ。
やっぱり、甘くて美味しい。
「何してんだよ。」
「うわっ。」
急に声をかけられて驚いた。
中嶋だ。
「はい、午後の紅茶。」
中嶋は俺に午後の紅茶を投げた。
「えー、レモンティー?ミルクティーが良かった。」
「お前何も言ってないだろ、自分で買いに行け。」
中嶋は席に座った。
「は!?なんかだし巻き卵減ってね!?広瀬食べただろ!」
「あは、ごめん。」
俺は笑って謝った。
「ふざけんなよー、だし巻き卵が一番好きなのに。」
「また今度作ってきてやるから、許して。」
「お前家庭科苦手なくせに。」
やっぱり、こういう何気ない会話が好き。
毎日こんな日々が続くことを、切に願う。
ゐわのです!
最近投稿頻度がゴミみたいに遅くなってますが
私は期末テストがあります!(・∀<)☆キャピッ
ってことはこの空白期間は勉強してたんですよね!?
いいえしてませんけど???
逆になんでしてると思った!?
私はYouTube依存症だぞ!?
将来の旦那はYouTubeだからね
提出物が全く終わってません(´▽`*)アハアハ
そろそろ私の命日か……サヨナラ
投稿が2ヶ月途絶えたら死んだと思ってください多分死んでます꒰ঌ( ˆ꒳ˆ )໒꒱グッバイ
最近は学校生活が順調に悪い方向へ向かってるので- ̗̀ 𖤐 ̖́-
今回は平和な短編を書きました(◍︎´꒳`◍︎)
もうほんとにいつ不登校になってもいいってくらいやばいですよ
担任が生理的に無理すぎて泣ける𐤔𐤔
給食らへんになると汗臭いんだよねー
もうおっさんだからね(20代後半
てかやばいこんなこと書いてたら
先生にバレた時殺される
友達にもバレてんのに先生にバレたら死ぬんだけど
また私の生命の危機が…ザワ( ;゚д)ザワ(;゚д゚;)ザワ(д゚; )
読んでくれてありがとうございました!
リエ
「ナオー、いる〜?」
ドアが開く音がして、リエの声がした。
ドタドタと近づく音がする。
床が軋んだ。
「ねえちょっと!部屋汚いし、いるなら返事してよ!」
リエは腰に手を当て、俺を呆れて見た。
「早く布団から出てよ、もう」
そういうと、リエは布団を引き剥がした。
俺はブルっと震えた。
「うるさいなー、寝たいよ」
俺は大学のレポートで、一睡もできなかった。
だから、昼の3時に寝ていた。
リエから布団を奪い、潜り込んだ。
「だーめ。今日は泊まるから、一緒にご飯買いに行こうよ」
布団からリエが俺の顔を覗き込んだ。
リエは目元にシワを寄せてニンマリとしていた、
「ええ、あとでいいじゃん」
俺は不機嫌な顔を作った。
リエも真似して不機嫌な顔をした。
「なんでよ、もう3時だよ?不健康すぎる」
俺の生活は不健康そのものだ。
リエが家に来なきゃ部屋は汚い。
ゴミ袋が放置してあって、
小さなちゃぶ台にはエナドリや、参考書、コンビニ弁当のパックが転がっている。
リエが泣きそうな顔になった。
「んーん、分かった、起きる」
リエは満足そうに笑った。
「偉い、じゃあ着替えて」
よいしょと起き上がって、
俺は髭を剃って着替えた。
「よし、行こっか」
「ナオ、ほんっとに部屋汚い!掃除して!」
食べ物を買って帰ってきて早々、
リエが声を荒げた。
「うるさいよ、片付けるよ今すぐに」
リエはもう、と言って冷蔵庫に買ってきた食べ物を詰めていた。
小さな背なのにスタイルが良くて、
下ろしている髪が綺麗だ。
「リエ」
「なあに?」
俺はリエに近づいて唇を押し付けた。
リエは驚いたような顔をした。
その後すぐに顔を真っ赤にした。
「やめてよ、恥ずかしい」
でもリエは笑っていたので、ぎゅっと抱きしめた。
「もう、なんなの」
リエは俺を軽く突き飛ばして、
また食べ物を詰め始めた。
「ナオって変」
笑いながらリエが言う。
「なんで?」
「だって、私たち恋人でもないのにキスするんだよ」
ほんの一瞬空気が揺らいだ。
「私は、ナオのキス好きだけどね」
リエは冷蔵庫に詰めながら言った。
リエはこっちを見ずに、黙々と詰める。
「うん…」
俺は切なくなって、うんしか言えなかった。
「一番風呂、いただきまーす」
「はいよー」
そういうと、リエは風呂に入っていった。
俺は、高2の時にリエに告白された。
リエは小学校の頃からの幼馴染で、
家も近かったし、よく遊んでいた。
高2の春、リエが帰り道に告白した。
「私さー、ナオキのこと好きなんだよね」
あまりにさらっと言ったので、
普通にうんと言った。
「え?」
「だから、私ナオキのことが好きなの」
足を止めてリエを見た。
真剣な顔をしていた。
でもその時、俺は好きな人がいた。
それに、リエとの今の関係を壊したくなかった。
「ごめん、俺好きな人いるんだ。」
少し間を開けて言った。
リエは泣きそうな、少し顔を歪ませた。
でもまた、笑顔になった。
「そっかぁ、振られちゃったぁ」
リエは笑いながら、また歩き始めた。
でも、声が震えていた。
ああ、泣くのを堪えているんだ。
「じゃあさ、リエ」
俺は口を開いた。
「俺はリエと付き合えないけどさ、好きな人がリエに変わったら、付き合ってよ」
自分でも何を言ってるかわからないし、
理屈に合わない。
自分勝手すぎる意見だ。
でもリエは顔を少し明るくした。
「じゃあ、それまで待っててあげるね」
「おう、待ってて」
それから月日が経って3年。
結局俺は好きだった人とは結ばれず、
それをリエに言えずにいる。
リエは友達のままだけど、
俺と泊まったりしているし、
今の関係も不満はない。
でも俺はリエが好きだし、
付き合いたいと思ってる。
自分は今の関係を守りたいがために、
自分やリエの願望を無視している。
そんな自分が嫌だから、言えないのだ。
「出たよぉ」
リエがブラとパンツだけの、
無防備な身体で出てきた。
「パジャマ持ってないから、Tシャツ借りていい?」
「いいよ」
リエは何食わぬ顔で聞いてきた。
自分がどんな目で見ているのか、
リエは知りもしない。
「ナオ、お風呂入んないの?」
「あ、うん、入る」
急に我に帰って、風呂に入った。
「リエー、ご飯まだー?」
「うるさいなー、手伝ってよ!」
リエは俺の使わない台所で焼きそばを作っていた。
「ナオー、来て」
リエに呼ばれて俺はリエのそばに来た。
リエから、俺と同じシャンプーの匂いがする。
「あーんして」
口を開けてでいいのに、
あーんで表現するリエがなんとも可愛らしい。
俺は口を開けて、焼きそばを一口もらった。
「美味しい」
リエは泊まりのときは、いつも焼きそばを作ってくれる。
いつも美味しい。
「よかったぁ」
リエは満面の笑みで、焼きそばを皿に移した。
「いただきまぁす」
リエがマヨネーズをかけて、焼きそばを食べた。
「美味しい〜」
リエが可愛く笑った。
「マジで美味いな」
俺がそう言うと、リエは八重歯を見せて笑った。
「えへ、ありがと」
リエは笑った小さな口で焼きそばの麺啜った。
「ナオー、歯ブラシないよお」
リエが洗面所で騒いでいる。
「どうした」
「だから!私の歯ブラシがないの!捨てたの?」
リエはちょくちょく泊まるので、
ピンク色の歯ブラシを買っていた。
最近、ブラシがけばけばになっていたので捨てて、
そのまま買うのを忘れていた。
「ごめん、けばけばしてたから捨てた」
「なんで買い直さないのよ、もう」
リエは洗面所でうがいだけをして、
布団に入った。
俺も歯磨きをして、
リエと一緒に布団に入った。
「ナオの匂いがするー」
「やめろよ、恥ずい」
「だって、私はナオのシャンプーで頭洗って、ナオの服を来て、ナオのお箸でご飯食べて、ナオの布団で寝てる。私の中の細胞がナオで侵食されてるの」
リエが面白おかしく笑った。
「じゃあリエは、俺になるの?」
「バカなの?そんな真面目に聞いちゃってさ」
リエはまたクスクス笑った。
「笑うことないだろ!?」
俺はリエの脇腹をくすぐった。
「キャハハハハハ!やめてやめて、くすぐったい!」
リエは大声で笑った。
リエの笑顔は素敵で、太陽のようだ。
すると、隣の住民が壁をドンっと殴った。
やってしまったなと、俺とリエは察した。
「バカ、お前が大声で笑うから」
「くすぐった方が悪いよ」
二人で向き合って笑った。
「里江」
「なあに?」
俺は里江の頭を俺の胸に押し付けた。
「ナオ?」
「また、泊まりにきてよ」
里江は少し戸惑った顔をして、
笑った。
「バカだね、泊まりにくるよ」
里江がグリグリと頭を押し付けた。
「おやすみ、直樹」
「おやすみ、里江」
ゐわのじゃあ〜^
最近は泣いてばっかで
病んでましたが…((
無事三者面談が終わり、(二つの意味でネ)
勉強はついていけず、
夜更かしはする。
なんでやねん!!
なにがしたいねんわいは…
読んでくれてありがとうございましまた!
夏休みの間だけの自由
バリ、長編
「おねーさん何やってんの?」
やっぱり話しかけられたな。
そりゃそうだ。
自分の部屋に溜め込んでいたゴミを
一斉にマンションのゴミ捨て場に捨てている。
量は自分でもわからないくらいのゴミ袋だ。
ゴミ袋から13点の数学のテストが透けて見えていた。
ゴミ袋を、コンクリートでできたゴミ捨て場に放り投げた。
すると、駐車場全体にドサンッと音が響いた。
後ろを見ると、小5くらいの小さい子供がいた。
生意気なガキだな、と思いながら話しかけた。
「あんたこそ何してんのよ、今は朝の10時だけど。学校は。」
「行ってない。」
ガキはボロボロの自転車のハンドルを握りながら答えた。
行ってない?今日は学校休みか?
いや違う、今日は火曜日だ。
私は休み(サボりのね。)の連絡を入れたし。
特に祝日などでもない。
普通の七月だ。
「行ってない?なんで行ってないのよ。」
「うるせーな、関係ないだろ。」
なんだこのガキは。
自分から行ってないって言っておいて、
聞いたらキレるって、なんじゃそりゃ。
舐めやがって、クソガキ。
高校生の恐ろしさ、見せてやる。
私はガキの前に立った。
「てめえこそうるせーぞコラ、チビ。高校生舐めんじゃねえぞ。」
低く唸るように言った。
しまった、まずい。
ガキが泣きそうになった。
親や先生にチクられたらたまったもんじゃない。
「わかった、ごめんって。」
私は謝ったが、ガキは今にも泣きそうな顔をした。
まずいまずいまずい。
「ごめん、ほんとにごめんって。なんか買ってあげる。それで許して。何買って欲しい?」
私は怖くなって早口で聞いた。
ガキが口を開いた。
「…アイス。セブンティーンアイス。」
「セブンティーンアイスね。何味がいい。」
「ぶどう。」
「了解。ここで待ってて。親にチクらないでよ、奢りなんだから。」
私は急いで自分の家に戻った。
「おかえりぃ、遅かったけどどうしたのよ。」
「別に。ちょっと買い物行ってくる。」
「気をつけてよー。」
私は財布を取って、玄関から出た。
私は最高に不機嫌だった。
なんであんなガキのために、私がわざわざお金を出してアイス買わなきゃなんないのよ。
そもそも、セブンティーンアイスの自販機はどこよ。
見たことないわよ。
私はめんどくさくなったので、
近所のスーパーで安いぶどうの棒アイスを買った。
ついでに私の分のチョコチップも。
私は駐車場に着いて、ガキを探した。
いた。
ゴミ捨て場のコンクリートに寄りかかっている。
素直にいるなんて、見直したぞ、ガキ。
「おーい、買ってきたよ。」
ガキは眠たそうな顔をしていたが、
私に呼ばれて、ハッと目を開けた。
「セブンティーンアイスの自販機見当たらなかったからさ、ぶどうの棒アイス買ってきた。これでいい?」
ガキは不満そうな顔をした。
「ほんとに探した?」
「探しましたよぉ、色んなところ。」
ガキは呆れた顔をした。
私はムカついた。
「あのねぇ、買ってきてあげてんだからね?教えなかったあんたが悪いんだよ。これで我慢してよね。」
私はガキの太ももに棒アイスの袋を当てた。
「冷たっ!」
ガキは尻餅をついた。
それはそれは綺麗な尻餅なつき方だったので、私は大笑いをした。
「アッハッハ、面白い反応するじゃん。はぁー面白い。」
ガキは頬を膨らませた。
顔は真っ赤になっていた。
怒りで顔が沸騰しているのか、恥ずかしさで赤面しているのか。
「ほら、アイス。あー面白い。ねぇ、もっかいやってよ。」
「うるさい。」
なんとでもいうがいい。
だって私はあなたの恥ずかしい場面を見たからね。
いつだって引き出せるからね。
私は買い物袋からチョコチップアイスを取り出した。
「美味しい。」
ガキは小さく呟いた。
「ねえ、あんたなんて名前なの?」
「浅野聡一。」
「へぇー、聡一ね。かっこいい名前じゃん。何年生?」
「中1。」
私は驚いた。
確かに見た目で人を判断してはいけないとよく言うが、
聡一はとても背が低かった。
「わかってる、どうせ俺のこと小学生だと思ってたんだろ。」
正解です。思っていました。
「気にしてるんだよな、背が低いの。145㎝しかないんだよ。」
あぁ、だから聡一はチビと言った時に、
泣きそうになったんだね。
「大丈夫だよ、聡一みたいな子は中3くらいからめっちゃデカくなるから。私もそうだったし。」
聡一は少し自信を取り戻したような顔をした。
「おねーさんはなんて名前なの。」
「林美莉花、高校一年生。」
聡一は少し考え込んだ顔をした。
「高校生なのに、バカっぽい顔してる。」
「は?」
なんだこのクソガキは。
少しでも聡一に心を開いた私がバカだった。
こいつはクソだ。
「ちょっと、学校ちゃんと行ってるから。頭良いし。あんたと違ってちゃーんと授業を受けてんのよ。」
あー、なんて嘘つきだ。
私は高校の中でも特別バカな人間だ。
数学の点数が物語っている。
授業なんか受けてない。
毎回寝ているか妄想している。
聡一は黙った。
「聡一は、なんで学校行ってないのよ。」
聡一はもっと黙り込んだあと、
口を開いた。
「小学校の頃からいじめられてたから、私立の中学に入ったんだけど。特別頭がいいわけでもなかったから、勉強追いつかないし、馴染めないんだ。今は学校行ってない。」
お前もバカなんじゃないか。どの口が言ってるんだ。聡一のアホ。
…とは言えなかった。
いじめられていた、という言葉だけが私の中でモヤモヤしていた。
「ふーん、親はどうしてんのよ。ずっとここにいるけど。それに、自転車持ってどこ行くつもりだったの。」
「親いつもいないから…。お父さんは仕事で滅多に帰らないし、お母さんは一日中遊びに行っちゃうから…。」
なんて複雑な家庭環境だ。
聡一、お前大丈夫か。
聡一の言葉遣いや態度を正す大人がいないから、態度がデカかったり敬語を使わないんだね。
「ご飯どうしてんのよ。買ってんの?」
「うん。コンビニとか行って買う。」
聡一はきっとセブンティーンアイスが食べたくても、自分の必要最低限の食料しか買わなかったんだ。
その日を生きるために。
聡一は話していくたびに疲れた顔を見せた。
聡一はハァとため息をついて、駐車場のアスファルトに寝そべった。
「家にも学校にも居場所がない。親は俺のこと諦めてるし、先生から無断欠席の連絡も途絶えてきてるし。もう俺は誰からも必要とされなくなっちゃった。」
聡一は鼻をすすった。
そんな可哀想な聡一が、たまらなく可愛くて、愛おしいと思った。
「ねぇ、聡一んち入れてよ。ここあっつい。」
可哀想な聡一の家が見たかった。
聡一の物で溢れているのかな。
それとも聡一は綺麗に整頓しているのか。
「いいけど、部屋汚いよ。」
「全然問題なし。行きましょうか。」
二人は立ち上がって、聡一の部屋に向かった。
「何が汚いだよ、全然綺麗じゃん。」
聡一がやってんのか親がやってんのか分からないけど、全然部屋は綺麗だった。
「てかここも暑いし。早くクーラーつけて。」
私は床にあぐらをかいて座った。
すると、床に落ちていた聡一の何かしらのノートを見つけた。
聡一はお茶を淹れてる。
私は面白半分でノートを開いた。
開くと中には、必要な物、費用、電車の路線などが綺麗にまとめられている。
旅行にでも行くのか?
間のページを見ていたので、
最初のページに飛んだ。
そこには、『家出』と書かれていた。
「え?」
私は何度もその言葉を反芻した。
確かに家出と書かれている。
どういうことだ?
「あー…。」
後ろを見ると、聡一が諦めたような顔をしていた。
「何これ…どういうこと?」
聡一は机の上にお茶を置いた。
「こんなとこ…出ていきたくてさ。親も嫌いだし、この街も嫌い。出てってやろうと思ってた。」
聡一は全てを白状した。
聡一は、俯いて暗い表情をしていた。
ああ、聡一。
そんな顔したら、聡一のこといじめちゃうかもしんないじゃん。
「聡一…。」
私は決めた。
「聡一、夏休みいつ?」
「え…7月20日から…。」
よし、大丈夫だ。
「夏休み、家出しよう。」
私は聡一に会ってから、学校に行くのをやめた。
理由は、聡一に会いたかったから。
いつも登校時間に家を出て学校に行かず、
聡一の家に通った。
聡一の部屋のピンポンを押した。
「聡一ぃ、きたよぉー。」
そういうと、無言でドアが開いた。
ドアが開くと、ドアノブを弱々しく握った聡一がいた。
「ごめん…今日は帰って。」
声も弱々しいなんて。
お前は女の子か?聡子か?
実際、本当に聡一は女の子っぽかった。
髪を切っていないのか、顎の高さまであるのっぺりしてる、でもサラサラな長い髪。
手は小さくて、まつ毛が長い。
可愛い子だ、本当に。
「どうしたの…、なんかあった?」
「今日はお母さんいるから…。今寝てるから、今のうちに帰って。」
そうか、聡一のお母さんか。
どんな人か見たかったけど、
遊びに行っている、という人だから。
きっと会ったら怒るか、
酒で酔っているなら、欧米のおじさんのように陽気に向かい入れてくれるのか。
「ふうん、そっか。じゃあね。」
「ごめん、じゃあね。」
そういうと、聡一は静かにドアを閉めた。
「しゃーない、学校行くか。」
私は放り投げていたリュックを拾って、
学校に向かった。
10時だった。
「あ、美莉花ぁ。どうしたのぉ。」
休み時間に教室に入りたかったので、
時間を見計らって入った。
私の友達がわーっと私の周りを囲った。
「ごめーん、サボってた。」
「サボりぃ!?石原にいっちゃおー。」
言えばいいさ。
私は中1の友達がいてね、すっごく可愛いんだからね。
その子といつも遊んでんだから。
「あははー、石原はなんか言ってた?」
「林が来たら殴るって。あんた殴られちゃうじゃん。」
「えー、やだよぉ。」
私は席に座ってリュックの中身を出そうとしたが、
外に出て遊ぶだけなので、いつもリュックの中身は空にしていた。
なので筆箱も何もない。
「あ、りんりん〜、シャーペンと消しゴム貸してー。筆箱忘れた。」
「何しに来たのよ。はい、どーぞ。」
「はーい、席つけよー。」
そういうと、石原が出てきた。
次は数学か。
「おお、林。お前無断欠席だぞ。内申点下げるからな。」
「はーい、ごめんなさい〜。」
そして、授業が始まった。
あぁ、なんだこの方程式は。
石原はさっきから何を言ってんだ。
教科書は知的な話し方をするから見ても全くわからない。
黒板は石原の汚い文字で埋まっている。
全くもって集中ができない。
それも相まって、私の頭の中は聡一でいっぱいだった。
聡一と夏休みに家出をするのか。
別にいいな、私も守るものなんてない。
一緒に家出をしよう。
どこに行こうか。
自然と笑みが溢れる。
すると、教室中に笑い声が響いた。
「おい、林!何ニタニタしてんだ。」
石原は私を怒鳴りつけた。
私は妄想で何も聞こえていなかったので、
きっと石原に注意されたのに聞こえなかったんだ。
「林、なんでニヤニヤしてるか言え。」
「えーと…。」
聡一は私だけのものだ。
誰にも渡すものか。
「イッテQのことを考えてました…。」
「おーい、美莉花。」
聞き慣れた声だ。
「勇樹。久しぶり。」
「美莉花さー、最近学校来てなかっただろ。」
「めんどくさいんだもーん。素因数分解とか将来何に使うわけ?」
勇樹は八重歯を出して笑った。
勇樹のその笑顔が好きだから、付き合ったんだよ。
いい笑顔だよな。笑うだけで絵になっちゃう。
私の青春(アオハルって読むからね。セイシュンなんて読むなよ。)は、勇樹で始まって、勇樹で終わる。
絶対に勇樹と別れるものか。
勇樹が浮気をしていたら、
その女をパン粉でまぶして、熊一頭入る鍋に油をたくさん入れて、その中に入れてじーっくり揚げてやる。
そしてその女を、勇樹にふるまってあげるのだ。
「次はお前の番だぞ。」と言ってやる。
でも勇樹は簡単に女を変える人ではないので、
そんなことをする羽目にはならない。
そもそも、そんな鍋あるか。(そういう問題じゃないけどね。)
「美莉花、じゃあな。」
あぁ、もうそんな時間か。
勇樹と話していると、すぐに時間が経ってしまう。
「じゃねー、勇樹。」
「明日は学校来いよ。」
そういうと、勇樹はゆっくりと歩いていってしまった。
学校…。聡一…。
私は二つに揺れ動いた。
守るものはないと言ったけど、
私には勇樹がいるし。
…まあいっか。
夏休みの間は逃避行しちゃえばいいし。
それで、夏休み終わったら帰ってきてさ。
親と勇樹に怒られればいいじゃん。
聡一だって、きっと家出したら家が恋しくなるでしょ、きっと。
まだ中1だもんね。
私も学校なんて知らない。
勉強できないし。
勇樹は来なくても怒んないよ。
そう自分に言い聞かせながら帰った帰り道、
靴紐が解けて転んだ。
膝を見たら、血が滲んだ。
そこに私の涙がこぼれて、染みて痛かった。
また、聡一の家に行った。
すると、聡一の部屋から男の人と女の人が歩いて出てきた。
…あれ?
女の人は、聡一が言っていたとおり、
金髪で頭のてっぺんは黒く染まっていて、
顔の隅々まで化粧をしている。
聡一のお母さんだ。
お父さんはハゲてる(聡一から聞いた時、声出して笑った。お父さんに対してそういうこと言うなよ。)サラリーマン
と言っていたけど、
お母さんの隣を歩く男は、
二十代くらいの、ピアス開けて鼻の下に少し髭が生えているチャラ男だ。
濃い緑色のズボンにはチェーンがついていてとてもダサい。
お母さんはよろよろと歩きながら、
男の人の腕に自分の腕を絡ませて大声を上げながら笑っている。
お母さんたちはこっちに向かってきた。
「あらぁ?こんにちわぁ!」
お母さんは私にさくらんぼのように赤い顔を近づけて、
大声で挨拶してきた。
口から酒の匂いがする。
私は思わず身を引いた。
「え?こんにちは…。」
「あぁー、ごめんね。こいつ酔っててさぁ。なあ、幹子ォ、俺んち行こうぜぇ。」
男の人がそういうと、私の横を通ってエレベーターに乗って消えてしまった。
男の人からもお酒の匂いがしたので、
あんたも酔ってるじゃねえか。
と思ったけど、何も言わないでおいた。
そもそも、朝の10時にここにいるの、おかしいでしょ。注意しろよ。
私は聡一に合鍵をもらっていたので、
その鍵で聡一の部屋に入った。
待って、鍵開いてんじゃん。
何やってんの、ほんと無防備。
私は鍵をポケットに入れて中に入った。
「聡一〜。」
そう呼ぶと、うぅ、とうめき声のような声が聞こえた。
「聡一…?」
なんだか嫌な予感がしてリビングの方に走った。
「え…?大丈夫!?」
聡一はソファの下に転がっていて、
頬が殴られて腫れている。
本当にうめき声をあげていた。
「ちょっと…氷持ってきてあげる。」
私は急いでポリ袋と氷を入れた。
何回も来ていたので場所は分かっていた。
「ほら…ソファ座って。」
聡一は涙を流しながら過呼吸になっていた。
本当に心配だった。
いつも生意気な聡一が、
こんなことになってるなんて。
「聡一…何があったか教えて。ゆっくりでいいよ。息整えて。」
聡一にゆっくり深呼吸させた。
聡一は冷静になって話した。
「…お母さんはパチンコ屋の店員と不倫してるんだ。父さんはもちろん知らないし、俺も最近知った。それで…そいつが、暴力振るんだ。殴ったりとか…蹴ったり…。そいつとお母さんは俺と父さんが邪魔だから、身近な俺に八つ当たりしてる。お母さんは黙って見てる。」
そういうと、聡一は太ももの|痣《あざ》を見せた。
私は聡一の痣に薄く触れた。
可愛いなぁ…ほんっっとに。
息が震えた。
私は聡一の長い髪をちょろちょろと触った。
「聡一…あと1週間だよ。一緒に出て行こう。こんなところ。」
私は聡一を助けたかった。
正直なところ、聡一以外どうでもよかった。
聡一は私を暗く、凍った目で見つめた。
でも聡一の目が少しだけ、ほんの少しだけ光った。
今日から夏休み。
出て行くのは8月に入ってからのどこか。
今日は25日。
そろそろ8月だ。
ただ、一つ問題があった。
どこに行くにも、二人ともお金がない。
親の財布に手を伸ばす。
震えが止まらなくて、結局盗まなかった。
結局、私が辿り着いたのはパパ活だ。
勘違いしないでほしいのは、私はエッチなことはしたくはないので、するつもりはありません。
臆病な私はエッチをする勇気なんてありません。
ていうか、私勇樹いるから無理だけど。
私はSNSで、募集をした。
『千葉県市川市住みのJKのミリです。お金に困っています。えっちなことはできませんが、カラオケで歌ったり、ご飯を食べに行くことならできます。お時間あったらご連絡ください。』
『えっちができない』その言葉のせいか全く連絡が来ない。
…と思いきや、結構すぐに連絡がきた。
『ミリさん、こんにちは。28歳、サラリーマンです。僕は歌に自信があるので、ぜひ一緒に歌いたいです。僕は性交渉をする気はありませんので、ご安心ください。日程は、7月の28日の金曜日の6時からでもいいですか?もしよければ、ご返信ください。』
サラリーマンかぁ…お金持ってるかな。
私はすぐに連絡を返した。
『こんにちは。ご連絡ありがとうございます。その日程で大丈夫です。西船橋駅で待ち合わせましょう。』
私は28日、西船橋駅に中央総武線で向かい、駅の前で待った。
がっつり制服で来てしまったが、別にいい。
いつも下ろしてる髪をツインテールにして、
少しだけ化粧してみた。
「あの…ミリさんですか?」
スマホを動かしていた手を止めて、相手を見た。
眼鏡をかけて、腕時計を確認する仕草。
全てが、大人っぽい。
「そうです。こんにちは。」
「じゃあ、もうカラオケの場所は調べてあるから、行こう。」
そういうと、彼は歩き出した。
私は小走りで追いかけた。
「ミリちゃんは、高校何年生?」
「えーと、高2です。」
何故かわからないけど、少し大人ぶりたかったので年齢を上げる。
「そうかぁ、高2か。まだまだ現役だね。どこの大学行くかは決めてるの?」
大学ね…。
私的には行かなくてもよかった。
親はゆるいし、私も行きたいところなんてなかった。
心底、どうでもいい。
「えー…、私お金ないからさ…行けるかわかんないの。」
お金がない私を演じているので、
お金の話になると声をワントーン下げる。
「あー、そっか。ミリちゃんお金ないんだよね。」
ずっと気になっていたのだが、
何故彼から醤油の匂いがするのだろう。
ほんのりと、醤油の匂いがする。
ツンとして、なんか、やだ。
「今日は何も気にせずご飯食べたりとかしてね。僕がお金払うから。」
目にシワを寄せて彼は笑った。
「はい、ありがとうございます。」
「タメ口でいいよ。敬語なんて肩苦しい。」
優しい人だなぁ…。
まあ、私の勇樹には勝てっこない。
「ありがとう…。」
「ここ…だね。」
彼が指差した場所を見た。
廃墟みたいなカラオケだったけど、
チェーン店なので少しだけ安心できる。
ほんと、微分子レベルで。
中に入ると、店員がスマホを見てダラダラしていた。
すごく静かだし、綺麗なところはウォーターサーバーくらいしかない。
「あの、予約していたんですけど…。」
と、彼と受付の人が少しだけ話をした。
私は何が起きてるのかさっぱりで、
胸の辺りにあるツインテールをいじくっていた。
「じゃあ、行こうか。」
と、私の手を引っ張って強引に部屋に連れて行った。
爪が食い込んで、痕がついた。
私はずっと席に座りながら痕を眺めた。
私は性格が悪くて、
小さな傷がついてものたうち回って、
「見て!こんなところに傷が!」
と相手を非難する。
そんなやつに友達なんかできるはずもなかったので、
小さい頃は友達が全くいなかった。
中学に入ってからその性格を押し殺して、
どうにか友達を作った。
それが私の幸せなわけだし、
そうすれば勝てるし。
なにに?
あー……。
超つまんない…。
歌上手いって言ってたけど、そこそこだし。
ほら、60点じゃん。
何が上手いだよ。バーカ。
「ふー、歌った歌った。ミリちゃんは歌わないの?」
別に私はお金をもらいに来ただけなので、
歌う気は全くなかったし、
あったとしても、あの歌声を聞くとなんだか歌う気分になれなかった。
「えー…私はいいかなー。もっと歌ってよー上手だから聞きたい!」
「そうかそうかー。てか、その前にさ。」
彼はマイクを机に置いた。
「なんで、ミリちゃんはこんなことしてるの。いや、俺もそう聞かれたら困るけど…。なんで、お金が欲しいの。」
真剣な眼差しと声に圧倒されて少し黙ってしまった。
チャンスだ。
ここで、お金をたくさんもらうんだ。
でもなんて言えばいいんだろ。
「あのね…私、親が昔に出ていっちゃってね。叔母さんに預かってもらってるの。でも、その叔母さんは私が嫌いでね。元々私の家族と仲が悪かったから、預かる時もずっと嫌だって言ってたの。だから、叔母さんは私にご飯をあげなかったりとか…学校に通わせないとか、ちょくちょくあるの。それで…出ていきたいの。石川のお祖母様に引き取られたいの…。でもお金がないの…。」
私は涙を流した。
自分でも何を言ってるのか分からなかった。
なんで自分泣いてんの?
叔母さんとか、誰だよ。
私は彼の手の甲に私の手のひらを乗せて、
彼の顔に自分の顔を近づけた。
「お願い、おじさんしかいないの…助けて。」
子犬のような目で、弱々しく言った。
あの時の、聡一みたいに。
彼の醤油臭が強まった。
彼が近くにいるから?
いや、それもそうなんだけど…なんか醤油の匂いもするけど…もう一つ…。
なんか分泌してる…フェロモン?
もしかして発情してる…?
彼は私の手を握り返すと、
「そっか…。」
と、小さく呟いた。
顔が赤くなっている。
私は咄嗟に離れた。
「ちょっと、ここ出ようか。お金を出してあげる。」
そういうと、会計をそそくさと済ませて、
銀行についていった。
ホテルに無理矢理連れ込まれるんじゃないかと心配でしょうがなかった。
しばらくして、彼は銀行から出てきた。
「はい…10万。大事に使ってね。」
私は驚きすぎて声も出なかった。
中を見ると、本当に10万が入っていた。
「僕は趣味とかも特になかったし、無心で働いてたからお金に関してはどうでもいいんだ…。それに、僕の生活できる範囲内で出してるから、それは安心して受け取って。本当は石川に行くのに、こんなにお金はいらないけど。もし、家出が失敗した時のためね。でも、成功を願ってるよ。」
彼は優しく微笑んだ。
「それじゃ、じゃあね。お祖母さんちで、幸せに暮らせよ。」
「待って。」
私は彼の手を引っ張った。
「いつか…どこかで会えると思うの。だから、じゃあねじゃなくて、またねにしよう。また、会いたい。」
彼は少し黙ってまた微笑んだ。
「うん、またね。」
「またね。」
じゃあね。
私は聡一の家に急いで駆け込んだ。
朝の6時に。
「聡一!早く出て!」
聡一はドアを開けた。
眠そう…ごめんね、起こしちゃって。
私はセールスマンの如くドアの間に足を差し込んで閉じれないようにした。
「お金、手に入れた。10万。」
聡一は鼻で笑った。
「嘘だ、そんなにお金手に入れらんないよ。」
「マジだよ、ほら。」
私は封筒の中身を見せた。
「ほんとだ…10万。」
聡一は静かに驚いた。
「もう出て行く準備できてるよね?私はできてる。」
聡一は頷いて、小さなカバンを靴箱から取り出した。
そこに隠すとは、天才か。(私は普通に部屋に置いといてた。お母さんに聞かれた時は勉強道具って嘘ついたけど。)
「じゃあ、もう行こう。」
私は聡一の手を引っ張ってマンションの階段を駆け降りた。
なんだか笑えてきた。
こんなすぐ失敗するかもしれないことに、
無我夢中になって。
それは、聡一も思っていたことみたいで、
聡一と私はケラケラ笑いながら街を、
駆け抜け、駆け抜け、駆け抜けた。
二人ともすぐにバテて、公園の草むらに倒れ込んだ。
これが、自由。
「聡一。」
私は聡一の名前を呼んだ。
聡一は私に顔を向けた。
「どこ行くの。」
「どこでもいいよ。」
聡一は呆れたように笑った。
その笑顔が本当に、たまらなく好き。
私だけの、聡一の笑顔。
「もう誰もあんたのこといじめない、見捨てない!」
私は大声で叫んだ。
早朝6時の公園に私の声が響く。
「なんで叫んだの。」
「宣言だから。私と、聡一のね。」
聡一は笑った。
これからの自由。
考えると指先が凍ったように冷たくなる。
期限が限られている自由。
それは自由なのかな。
でも、聡一といられて、幸せなら。
それは、自由だよね。
ううん違う。
聡一の中では自由じゃないかも。
でも私の中では、それが私の自由。
それじゃあ、今度は勇樹も連れてこよう。
勇樹との自由もほしいから。
聡一は口を開いた。
「じゃあ、海行こう。海。」
「いいじゃん。ガキにしては。」
「はあ?うるさい、バーカ。」
「名前で呼んでよ。」
聡一の可愛い唇に指を押し当てた。
「美莉花。」
「それでよし。ほら立って。行くよ、海。」
私は海に行って自由を探しに行く。
私の、聡一の、自由を。
すごいすごい一万文字やで!?
今回は短編ではなく、長編を書いてみたかったんやー!
やったー!!、、!
みんな「おい、鈍足はどうした?」「日記で不登校の話をするんじゃなかったのか?」「投稿頻度おせえよ、まさかずっとこれ書いてたの?バカなん?」「どうせYouTube見てたんやろ、書けよ。」
…ごめんなさい(((
読んでくれてありがとうござました!
美莉花と聡一の海
リクエストありがとちゃーん!
「どうやって千葉から海に行くの。てか、どこの海行くわけ?」
私は駅に着いて聡一に聞いた。
「分かんない。何も決めてない。」
「バカか、あんたは。」
聡一と二人で立ち尽くしていた。
私は引きこもり(遊びに行く人がいないのよ。バカにしないでね)なので、どこに何の海があるのか特にわからなかった。
「じゃあデ○ズニー行こう。」
「すぐ金無くなるからやだ。」
マジでこいつ何も考えてない。
私は聡一の頭をゲンコツしました。
とりあえず私はスマホで調べて一番近い海、|稲毛海浜公園《いなげかいひんこうえん》(読みづらいのでこれからいなげ、と呼ぶことにしますね)に行くことにしました。
「てかガチで暑い。水買おう。」
私たちは水を買って、切符を買いました。
JR総武線快速で市川駅から稲毛駅まで。
7時電車でも人は何気にいます。
家族連れの人もいる中、
高校生と中学生(しかもおチビ…笑)が二人並んでる姿はよく分かりません。
しかも、いとこでもなんでもなく、普通に友達。
てかなんで私制服で来たんだろ。
そもそも私服がいつもジャージとかだからな。
癖で着てしまう。
まあ、私服ダサいからいいんだけど。
「美莉花。」
は!?何?
あ、聡一か。
急に名前で呼ばれるとビビるな。
「どした?」
「席、空いてる。座れば?」
聡一は新聞をこの世の終わりのような顔で睨めっこするおじさんとイヤホンして寝落ちしてる緑色の髪(細かく言えばピスタチオ色)のお姉さんの間にできた空席を指差しました。
「いいよ、聡一座りな。」
聡一優しいな〜。
聡一は座ったあとすぐに寝てしまった。
私も吊り革を握ったまま寝てしまいそうでした。
ガタンゴトンと一生鳴り止まない電車の揺れる音にぬくい電車の中。
あー、なんかウトウトしてきた。
立ったまま私はうっとりして少し寝た。
…と思ったら何気にすぐ着いてしまった。
「おい、聡一。起きろ〜。」
聡一はビクッとして起きた。
何驚いてんだこいつ。
聡一は不機嫌そうな顔をして歩きました。
「えー…と、稲毛駅1番のりば?に行くらしいよ。」
私たちは稲毛駅のバス停に向かった。
「多分時間かかると思うから、荷物持ってあげる。」
私は聡一の荷物を持った。
「ありがと。」
「どーいたしまして。」
私と聡一はただバスを待った。
「美莉花ー?」
「何?」
聡一は暑いのかぼーっとしながら言った。
「美莉花の親とか、友達とか、いいの?心配しないの?」
私はよーく考えてみた。
たしかに、警察に通報されるかもしれん。
聡一のバカ親は多分バカだから気づかないだろうけど、
私の親はゆるいけどさすがにこれはまずいかも。
でも、電話とか一通も来てないからな。
あと勇樹。
勇樹はあいつメンヘラじみてるから、
既読つけないとめっちゃ電話してきます。(一回通知切ったら30件も電話きてた。何事かと思ってメール開いたら宿題が分からないってメールだった)
「うーん、やばいかも。」
「バカじゃん。なんでついてきたの。」
ムカついたので私は聡一のお尻を叩きました。
「バカって何よ、一人じゃなーんもできないくせに。」
私は聡一の頭を掴んでグリグリしました。
「あと、ついてきたのは…。」
私はなんだか言えなかった。
聡一が好きだから、とか、心配だったから。
そんなこと言ったら、このガキは調子に乗るでしょう。
「分かんない。遊びに行きたかった…から?」
私はアハと笑った。
「俺の家出を遊びに行くと思ってたのかよ。」
聡一は呆れて言いました。
でも私がいなきゃ、どこに行くか決められなかったでしょ。
聡一のバカ、アホ、ドジ、間抜け、おたんこなす、かぼちゃ。(おたんこなすとかぼちゃはどこが悪口なの?なすとかぼちゃ可哀想)
とりあえずバスが来たので私たちは乗りました。
千葉海浜交通 高浜線【こじま公園経由]…長いです。読めませんし。
まあこのバスに乗って高浜南団地まで行きます。
聡一はまた寝てしまいました。
聡一の寝顔は子猫が寝ているように可愛いです。
私は周りの人のことを考えました。
私のダメ親父はきっと大丈夫だ大丈夫だと、
ゲラゲラ酒を煽りながら言うでしょう。
お父様とは呼びません。立派なお父さんではないから。
パパとは呼びません。パパと呼ばれる筋合いはないから。
親父なんて言葉使いたくないけど、
友達に紹介する時はいつも「ダメ親父」と言っています。
ダメ親父は何やっても失敗ばかりで、
無職で借金ばかりしています。(借金は自分のお母さん、いわば私のお祖母様に返済させました。どこまでダメなの)
お酒ばかり飲んでおつまみを食べながらテレビを一日中垂れ流してるジジイです。
お母さんが温厚で、寛大な人でなければ、
すぐに離婚に発展するでしょう。
私のお母さんは本当に頑張っています。
そんなダメ親父とバカ娘を養っている、
そんな母親を尊敬しています。(きっと作文にしたら花丸をもらえますね)
きっと母親はダメ親父に丸め込まれて、
多分大丈夫だとねじ伏せられてしまうでしょう。
ダメ親父には人一倍優しい母なので。
試しに電源を切っていたスマホを開いてみました。
つけると、親からのメールと着信はゼロ。
やっぱりダメ親父と甘母親だ。
勇樹からはメールが三件きてる。
既読をつけずにそーっと見た。
なーんだ、ゲームの招待かよ。
私はそっとスマホを閉じました。
さあ、ダメ親父と甘母親の話をしていたらすぐつきました。(行き方を丁寧に書いたから、行ってみてね)
聡一はすでに起きていて楽しみなのかそわそわしてました。
お金を払って降りました。
「なんかしょっぱい匂いがする!」
聡一はバスから降りるとそう叫びました。
「海だもん。潮の匂いでしょ。」
私たちは家族連れがたくさんいる人たちについていけば海にたどり着けるという寸法で、
家族連れに紛れて歩きました。
「うわぁー!海だ!」
「声でかいよバカ。」
聡一のテンションはいつもとは全く違います。
笑顔に満ち溢れてます。
私は海に着いても、ダメ親父と甘母のことを考えていました。
起きてないだけかもしれない。
起きて私がいなかったら、きっと私を心配するよね。
「美莉花…?どうしたの?」
聡一が私の顔を覗き込みました。
「あ、えーと、考え事してた。ごめん。」
「周りが心配なら帰っていいよ。」
聡一は声を低くして言いました。
私は慌てて聡一に言いました。
「ううん、大丈夫。」
私は聡一と一緒に裸足で砂浜を歩きました。
暑いです。とっても。
私は潔癖症なところがあるので、指の間に砂が入るのがとても気持ち悪いです。
海まで来ました。
私は水面に足をつけました。
生ぬるい…なんか表現が違うな。
表面は温かいけど、中は冷たい…それが生ぬるいなのか?
分かんないけど、とりあえず気持ちいいということだけは伝えます。
「聡一ー。」
聡一は振り返りました。
私は砂を思い切り投げました。
聡一は砂だらけです。
聡一は不機嫌な顔をしました。
あははあははと聡一で笑い合いました。
「おい!」
後ろから誰かに怒鳴られました。
見ると私につま先が向いている、顔を真っ赤にしたおじさんがいました。
鼻息が荒く、汗ばんでいて臭いです。
「何ですか。」
「うるっさいんだよお前ら!寝てるのに!太陽の光を遮るな!」
なんか、あん時の聡一に似てる。
態度悪い聡一。
なんかイライラしてきた。
聡一を見ると眉間にシワを寄せています。
おじさんもシワができています。
すると、聡一が私の前に出ました。
「うるせえよジジイ。別の場所で寝りゃいいだろうが。お前みたいな老害ゴミムシは海くんな。」
え、え、聡一?
そんなことしたらこのゴミムシ…ふふ。
このおじさんが怒りますよ。
老害なんて言葉どこで覚えたんですか。
一丁前に人を貶す言葉ばかり覚えちゃってね。
「そうだよしわくちゃ。家で新聞でも読んでろ。」
私も聡一と同じように言いました。
あん時の聡一が涙ぐんだ時の声で。
老害ゴミムシは黙り込んで、
レジャーシートを持ってどこかに行ってしまいました。
論破されてしまったみたいですね。
聡一と向かい合って大笑いしました。
そんなこともあって、20時になってしまいました。
夜の街並みは蒸し暑くて蒸し暑くて、
汗が服に滲んで気色悪いです。
スマホの電源を入れ直すと、
たくさん親から電話が入っていました。
「聡一、私ちょっと電話してくる。」
「親?」
「そう。そこで待ってて。」
私は聡一から離れて、何件も入っていた中で一番新しい留守電を聞いてみました。
お母さんの声です。
『美莉花、今あんたどこにいるのよ。連絡もなしに出ていくなんて。もう19時ですよ。早く帰ってきなさい。家に帰ったら説教ですよ。でもちゃんと帰ってきなさい。お父さんに代わるわね。』
ダメ親父?
ダメ親父とはあまり話したことがないけど。
『美莉花。お前がなんで出ていったか分からないけど、早く帰ってこい。あったかい飯も風呂も布団もある。俺たちは美莉花に尽くしてる。だから帰ってこ』
ここで、電話は切れてしまいました。
変なところで切れてる。
ダメ親父らしいや。
でも、その電話が愛おしいです。
説教は嫌だけど、私は帰ることにしました。
「聡一、私の親がバカ心配してるから、帰るけど、聡一はどうする?」
聡一は黙りました。
「俺も帰る。」
私たちはバス停に向かって歩き出しました。
自由って最高だけど、
縛られてるのも、案外悪くないかもね。
じゃー、帰ろっか。
リクエストガチありがとう!
これから低浮上になります!
だいたい夏休みいっぱいは休みます!
それでは!
トランクケースにゆみちゃん
電車ががたがた揺れる度、ゆみちゃんも一緒に震えてくれる。
ゆみちゃんは丸まってゆっくりと眠ります。
そんなゆみちゃんのふっくらした寝顔が可愛くて私まで眠くなる。
2月の冬に私はゆみちゃんと旅行に行きます。
どこに行くかは全然決まっていないけど。
人がいないとこがいいな。
ゆみちゃんと2人っきりになりたいな。
ゆみちゃんは旅行の前に怒っちゃったね。
でも機嫌直してくれてよかった。
旅行を中止したくなかったし、ゆみちゃんとやりたいことがたくさんあったからね。
ゆみちゃんの手を握るのは私には難しいや。
簡単なことだけど、きっと、きっと。
ゆみちゃんの手に触れるにはまだ私はきっと勇気を必要とするでしょう。
ゆみちゃんのそのネイルが可愛いな。
綺麗な綺麗な群青色のネイル。
ところどころ赤くなっているのもとっても可愛い。
私の爪は噛みグセがあるせいで歪だ。
そんな指でゆみちゃんの指を絡ませる事なんて出来ないでしょう。
ゆみちゃんのその髪も大好きだな。
金髪だけど、先っちょだけ桃色のインナーカラー。
髪は傷まずに、サラサラとしてる。
肩に少しついてるボブカットもとっても似合ってる。
ゆみちゃんは髪を染める前も、茶髪で日向に行くとキラキラ輝いていた。
20歳になるまでずっと髪を伸ばしていたんだよね。
ボブカットになる前も長い髪は腰まであって、まるでまるで、お姫様みたいで。
そんなゆみちゃんの髪とは違って私は染めていないものの、汚い黒髪にボサボサ。
すぐ毛玉ができちゃって、朝起きるとゴワゴワしている。
顔も可愛いゆみちゃん。
鼻と口がが小さくて、だけど目はおっきくて、二重線がまっすぐで、眉毛はシュってしてて、頬がふっくら薄桃色で、ニキビひとつないつやつやの肌で。
体も素敵だよね。
スラッとしたモデルみたいな体型で、怪我で象の足みたいに分厚い皮膚もない膝、雪に埋もればきっと見つからないくらいの色白の肌。
ゆみちゃんに足りないものは身長だけだけど、ちゃんと補えている。
なぜなら小柄なゆみちゃんも高身長のゆみちゃんも可愛いから。
中学の頃は列の後ろ側にいたゆみちゃん。
高校に入ってから身長が止まっちゃったね。
私に無いものばっかり持ってるゆみちゃんが大好きで大好きで大好きで大好きでたまんないよね。
ゆみちゃんはいつまで経っても寝たまんまで。
私はゆみちゃんとの旅行のためにトランクケースを買った。
ゆみちゃんのインナーカラーと同じ、ピンク色のトランクケース。
ゆみちゃんがすっぽり丸々入っちゃうくらい大きい。
私はトランクケースを指でなぞった。
とりあえず次の駅で降りることにしました。
窓を見ると雨が降っています。
私が乗っている電車が進む度に雨が強くうちつけてきます。
きっと出たらトランクケースの中身が濡れてしまうかもしれない。
私は折り畳み傘を取り出しました。
ゆみちゃんがお誕生日にくれたね。
駅に着いたので私は電車から降りた。
大事な大事なトランクケースを持って改札へ向かいます。
改札を通り抜けて出口に向かいます。
「|佐々木華蓮《ささきかれん》か?」
呼び止められて振り返ると、警察が立っていた。
「そうです」
「お前を殺人容疑で逮捕する」
私はトランクケースの持ち手を握って走ろうとしたけど、3人の警察に取り押さえられて手錠がはめられた。
警察がトランクケースを私から離していく。
ああ、ここでお別れだね、ゆみちゃん。
警察は何か言ってるけど、耳の中で木霊して聞こえないや。
私に聞こえるのはゆみちゃんの笑い声。
ゆみちゃんが入ったトランクケースが遠ざかってく。
これでゆみちゃんに会うのは最後かな。
私はきっと地獄に堕ちちゃって、ゆみちゃんは天国にいるよね。
もう会えないなんて寂しいな。
私、生まれ変わったらまたゆみちゃんに逢えたらいいな。
次はゆみちゃんか私が男になろうね。
絶対絶対結ばれようね。
じゃあね、来世で会おうね。
ゆみちゃん。
ゆりが書きたかっただけなのに…なんで…((
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あと短編のシリーズ作ろうかな
死にたくなった。
舌っ足らずのバカみたいな日記見つけてほんと死にたくなった。
いつのやつだろうな。
さっさと燃やしたい。
期末の点数の合計低くて死にたくなった。
164点。
0点の科目ばっかで最悪。
部活の大会ビリで死にたくなった。
最初フライングして気が散った。
自分が悪くても相手に殺意。
スマホ落として画面にヒビ入って死にたくなった。
割れたガラスが指に刺さって痛い。
キーボードがバカ打ちづらい。
朝寝坊して死にたくなった。
8時に起きた時の絶望感。
寝すぎて頭痛する。
イヤホン片方無くして死にたくなった。
バッチリ充電なくなってて探しようがない。
高かったやつなのにな。
塾の行きに転んで死にたくなった。
周りの人にバカ丸出し。
膝終わってる。
制服汚くて死にたくなった。
毛玉とかホコリとかついてる。
手で払っても落ちなくてうざい。
死にたくなっただけで、死にたいだなんてずっと思ってない。
電車のホームでぼーっとイヤホンして音楽聴いてても死ぬ気になれなくて。
通過する電車にふらっと落ちて人生フィニッシュさせちゃってなんて私に到底できないことなんだよ。
いつでも死にたくなってる私はいつ死ねるんでしょうか。
思ってるだけで、本当は生きてたいのかわかんないや。
ほんと、つまんねーことで悩んでんな。
バカか。
あー、死にたくなった。
暇つぶしにしては文字数少なくて何書きたかったのかわかんねーし
そもそも暇じゃないだろ宿題あんのにバカか
先生。
クラスに入ると、池田は自分の席に座って本を読んでいた。
放課後の静寂は、活気に溢れた生徒達の熱を逃してしまった冷たい教室だ。
俺は池田の斜め前の席に座った。
「池田、残ってくれてありがとうな。」
池田は返事もせず本を読み続ける。
池田の瞳は縦に並べられた文字を追っている。
「部活は大丈夫なのか?」
そういうと、本に付属しているしおりを本に挟んで閉じた。
自分のリュックの中からクリアファイルを取り出して中から紙を出した。
池田は突くように俺に紙を突きつけた。
俺が紙を受け取ると、また池田は本を読み始めた。
紙は部活の予定表で、今日の日付が書かれてる場所にはオフと書かれている。
「オッケー、ありがとう。」
俺は池田に紙を差し出した。
池田はパシンッと勢いよく紙を取った。
なのに紙をファイルに入れる時はとても丁寧に入れた。
「早く帰りたいのでさっさとしてくれません?」
本を読み進めながら池田は言った。
「あぁ、そうだね。」
「池田は…学校好きか?」
池田に問いかけた。
「好きでも嫌いでもないですけど。」
「そうか。勉強とか部活は?」
「別に。」
適当に答える池田に少し苛立ちを覚える。
「あのな、真面目な話だから一旦本閉じてくれないか?」
池田は俺を睨みつけて、しおりを挟んだ本を机の中に入れた。
「池田、お前いじめに遭ってないか?」
池田は爪を見ながら答えた。
「さあ、知りませんけど。」
池田は目の色変えず答えた。
「俺さ、見たんだよな。お前の机の中に悪口が書かれたメモ。」
俺はそのメモを提示した。
「死ネ!」「学校くるな」「クソ田」と書かれたメモが何枚もある。
池田は目も向けず爪を弄っている。
「そうですか。」
池田は気にしてないような、冷静に答えた。
「それに、池田の下駄箱にゴミとか、画鋲が入ってた。それも把握してるか?」
「まあ、してますけど。それが何ですか?」
池田は面倒くさそうに答えた。
「誰に受けてるとか言えるか?」
そう問いかけると、池田は立つと同時に机をバンと叩いた。
「誰にいじめを受けてるか把握できてない人が私に関わろうとしないでほしいんですけど。」
池田は俺をずっと睨みつけている。
「誰に受けてるか分からないから、今聞いてるんだ。それに池田と関わりたいなんて、生徒だから関わりたいに決まってるだろ。」
池田が言い返す。
「嘘つけよ。本当は誰に受けてるか全部分かってんだろ?私の口から出させようとか、そういうお節介うざいんだよ。生徒だから関わりたい?生徒と友達関係を築きたいってか?生徒と先生以上の友好関係をってか?私とあんたはただの生徒と先生。それ以上でもそれ以下でもねーんだよ。」
池田は一歩俺に大きく近づいた。
「知ったふうな口聞くなよ、何も知らないくせに。大人だから言ってるんだって言いたいのか?違うだろ、仕事だからだろ?教師って職業だから私たち生徒に寄り添わないといけないんだろ?俺はお前の味方だってほざくんだろ?」
池田は俺の胸ぐらを掴んで言った。
池田に何も返せない。
「もう私帰ります。金輪際私に関わんないでください。」
池田はリュックを持って教室のドアに手をかけた。
「い、池田。待って。」
俺は机をかき分けて池田に近づいた。
「俺はお前を助けたいんだよ。なあ、信用してくれよ。俺はお前の先生じゃないか。」
池田は俺に水筒の水をバシャッとかけた。
濡れて髪の毛から雫が落ちる。
「あんたと生きてる世界が違う。分かり合えない、信用できない。助け合えないんだよ。先生だからこそ。私が子供だからこそ。」
池田は俺を見下ろす。
「さようなら、先生。」
池田は教室から出て行った。
急いで廊下に出た。
廊下にはボロボロで傷だらけのリュックを背負って歩く池田しかいなかった。
この小説は私の自己満足か。
あ大丈夫よ病んでるよ?((
明日学校、宿題終わってない
あははははははははははははは^^
たぶんチューハイのせい
期末前にあげたよ!!!!!、
やくそくどーりにね?
とーじょじんぶちゅ
ノア
ヒロキ
「ノア、明日のダンス会準備できてる?」
いつものあほ面をしてお皿を洗う彼が大声を出して言う。
「言ったよね、私はダンス会なんて行かない」
指に力を込めてチューハイの蓋を開ける。
チューハイの缶がプシッと音を立てた。
「夫婦参加なんだよ。地区の行事だし、俺の仕事をアピールして収入が増えるチャンスの場なんだ。頼むよ」
そんなこと、知ったこっちゃないわ。
私は地区の人と仲良しこよしする気なんて全くないし、ヒロキの仕事なんてどうでもいい。
収入が入ったって、酒とご飯を買うだけじゃない。
お互い趣味もない、子供もペットも欲してないんだからお金なんて生活出来るくらいだけでいいんだし。
本音を口から出さないようにレモン味のチューハイで流し込む。
胃のなかに私の言いたいことがぎっしり詰まっている。
「私は行かないから」
私は冷蔵庫を開けてチューハイの缶をもう1つ取った。
また指を蓋にねじ込んで開けようとする。
「もうやめろ、ノア」
彼はあからさまに疲れた目をして言った。
水がバシャバシャ言って聞こえないフリをして私は4杯目を飲む。
彼は私の手を叩いた。
缶が床に転がって中身がこぼれている。
カーペットにかかった。
カーペットにかかった!!
「ねえ、カーペットにかかったじゃん。家汚さないでよ」
私は机の上にグチャっと置いてあるタオルを取って床を拭いた。
「お前は変わったね」
ヒロキは私を見下ろしてつぶやいた。
酷いくらいに震えて弱々しい声だった。
「ヒロキは変わんないね、そういうグズなとことか」
私はヒロキに目もくれない。
床を拭くのに精一杯。
カーペットを洗濯機のほうへ持っていく。
「この家…、不幸せだよ!」
うしろでヒロキが叫ぶ。
ほんとだね。
私は洗面所に向かった。
鏡に映った自分と目が合った。
マネキンくらい、無表情だった。
「お前は変わったね」という言葉が頭の中で繰り返される。
いつから、こうなったんだろ。
ヒロキに指輪を渡された時、頭の奥深くで安っぽいと思ったこと。
幸せだった?あのとき。
なんだか記憶が遠のく。
いつもお酒強いはずなのになんかクラクラ。
たぶん、チューハイのせい。
違うね、違うわ。
あたしのせいだわ。
目頭と鼻の先が変に熱くなった。
叩かれた左手の甲を見た。
全然、赤くなってない。
優しかった。
ヒロキ優しいよね。
変わんないね。
汚い嗚咽が洗面所に響いた。
ドアを開けるとヒロキはベランダでタバコを吸っていた。
私は窓を開けてベランダに出た。
頬に秋の割に冷たい風が当たる。
「1本、ちょうだい」
ヒロキは何も言わずに火をつけて渡してくれた。
「私は、ダンス会行かないよ。ヒロキはおばさんと踊って自分の会社宣伝し終わったらコンビニ寄ってチューハイ買ってきて」
ヒロキはふふと笑った。
「なんで俺、おばさんと踊る前提なの」
「ヒロキには近所のおばさんがお似合いだよ、こんなアルコール依存症のヒキニート女よりね」
私は夜中2時の夜景を長いまつ毛を伏せて言った。
ヒロキの顔が見れない。
「寒い、もう私部屋入るから。窓の鍵閉めとくね」
「おい!俺が入れないだろ」
ヒロキは笑いながら言った。
部屋に入った。
喧嘩なんかしてないけど、仲直りなんて絶対しないから。
許すのは私、ヒロキは許される側。
うちらがジジイババアになってもそれは変わらないからね。
ぜったいノアちゃんINFPだよねWWWWWWWWWWWWWWWWWWWWWWWWWWWWWWWWWWWWWWWWWWWWW
もう終わり
始まりと終わりがあって、それを承知の上で恋愛は成り立っている。
そもそも恋愛に限らず、全ての出来事に始まりと終わりがある。
それを分かった気がしてるように、私たちは生きている。
ほんとは分かっている気になっているだけで、きっと終わった時に文句を言ったり、泣いたり怒ったり。
受け入れるなんて、そんな容易いことなんかじゃない。
工程を踏んで踏んで、やっと受け入れられるんだと思う。
その期間が短いと、辛い時間だけが長くなっていく。
いつか、終わるって分かって生きていく。
終わるのは分かるんだ、本能で。
始まりは無意識のうちにだと思う。
でも終わりって、見えているのだけれどどうしても目を逸らしてしまう。
だけどちゃんと向き合えば終わりってすぐ目の前にある。
私たちは終わりに向かっていってるだけで。
じゃあ何のために生きてるんだろうって目を閉じた瞬間に考えて考えるのをやめた。
考えれば考えるほど、あいつのこと諦められてないんだって自覚していく。
分かってるけど、分かりたくないんだよ。
だから分からないふりしてる。
99.9%分かってる。
残りの0.1%は私が逃げている分かりたくない部分。
きっとその0.1%を理解した時、私はどう思うのだろう。
やっとあいつを諦められるのか。
いや、きっと諦めないだろう。
心のどこかであいつを追い続けて老いぼれていくんだ。
私に白髪が生え始めて、手の甲がしわくちゃになって、胸はしおれて、目のシワが深くなって、腰が低くなっても。
通知が鳴ってスマホを確認したって、あいつの連絡先は消したじゃないか。
スマホを投げつけた。
壁にスマホが当たって振動が背中をつたって小さく震えた。
汚い嗚咽をこぼして泣く私を、あいつは見たらきっと「きも」って言うよね。
心の底から、言うのかよ。
あいついつも、ごめんって言わなかったけど。
やっと言ってくれた時が、振られた時となんてね。
私、びっくりしたよ。
「言うのが、おせえよ」
あいつの胸を手で押して遠ざけた。
そんな目で、見んなって。
「ごめん」
言いかけたあいつの口を私は手で塞いだ。
あいつは目を伏せた。
だから、その目、やめろって。
「こっち向けよ…。おい」
あいつの、肩、胸、二の腕。
手で叩いた。
力がこもってない代わり、私の憎しみと悲しみをつめて。
「…ごめん」
「ごめんって言うな…。もう…黙れよ」
より一層、あいつの口を塞いでいる右手に力を込めた。
もう、喋んなよお前。
あいつの唇が震えているのを手のひらが感じ取る。
あいつの唇の温度は、冷めきっている。
あいつは私の右手を握って口から離した。
最後、手繋いでくれたのいつ。
私は手を振りほどいた。
「馬鹿だよ、お前は」
私は目を真っ赤にしている。
愛の色?違うわ。
今の愛の色は真っ黒でしょ。
「私のこと死ぬまで愛すって、言ったじゃん。嘘だったの」
あいつは目を合わせない。
涙が溢れてあいつの顔がよく見えない。
「私の愛をなんで分かってくれないの」
あいつに噛みつきたい前歯がうずいている。
あいつは私の頭に手を置いた。
気持ち悪くて頭皮まで鳥肌が立つ。
「俺のことを外側だけ見てたのは、お前も一緒だよ。だから分かり合えなかった」
「んだよそれ…一緒にすんなよ…」
不思議と騒いでいたのは自分だけだと気づいて言葉が詰まる。
「もうごめん」
あいつは私の部屋から出ていった。
暑かった部屋が一気に冷えていった。
私の手のひらが急速に血が引いていくのが分かる。
あいつが出ていって何時間経ったころだろう。
ポストにガタンっと音がしてドアに向かった。
中を見るとあいつの合鍵だった。
「こんなん、いらねえよ」
床に合鍵を叩きつけた。
この鍵は、私の部屋の鍵なんかじゃないよ。
こんなの、あったって開ける部屋はもうないよ。
時計を見るとお昼の12時で、あいつと喧嘩して半日以上が経ったのを知った。
なんだか涙も出てこない。
あいつの毒舌を聞いたら、泣いてしまうのかも。
声なんか今聞いたら、死んじゃうよ。
あいつの物処分しなきゃって、嫌だよ。
だってまだ…。
口に出すどころか頭の中で考えるのすら躊躇する。
冬のせいか床が冷たくて、靴下を履いた。
あいつの靴下が混ざってて、ムカついた。
懐かしいだとか、そんなんじゃない。
ふつふつと湧く怒り。
あいつのシワがよった笑い方が脳裏をよぎって、なんだか一瞬だけ笑えた気がした。
全部ありがとうの感謝の気持ちもない。
0.1%の中の0.01%を、理解できたような気がした。
願うまでもない、早く終わりが来ますように。
この1901文字の私の失恋をネットの誰かが見て、どう思うのだろう。
私はここまで書いて公開をクリックして、保存を押した。
小説の一覧を見ると、私の小説が載っていた。
なんだか今までの気持ちがスッキリしたきがして、冷たい床もいつしか春が巡ったのか暖かくなった。
私はパソコンと目を閉じてみた。
春の始まりがこちらに向かってゆっくりと歩いてきている。
短編カフェ超リスペクトの失恋話書いたった!
ちな書いてる時不登校かましてたよ✌🏻✌🏻((
ちなみに私失恋してませんからね?
なんなら今超絶好調ですよー!!!
あとこれは余談ですが誰か私とLINE繋ぎましょ🫶🏻🫶🏻🫶🏻🫶🏻🫶🏻
海の宝箱
カビの生えかかった海の近くにある小さな宝箱は、私が拾うとポロポロと砂とカビを落とした。
少し降ってみるとカラカラと音がする。
私は中身を見たくて、宝箱の錆びている金色の蓋をこじ開けようとした。
錆びて深く口元を閉ざした宝箱は二度と開くことなく、中に入った誰かの何かを見れなかった。
中のものはなんだろうか。
私は海に投げ捨てた。
タポンッと水が立って、広い広い海にすぐ消えていった。
風が吹いて砂が私のふくらはぎにパツパツと刺さって当たる。
ふいに嗚咽のない静かな涙が出てきた。
目元をゴシゴシと拭いた。
いつも涙を手で拭うと、涙は手の甲にみずみずしくつくことはなく消えていくのだろう。
たくさんの涙を出していないから?頬から流れ落ちているから?
どちらにせよ、そんなこと知れたって、あの宝箱の幸せよりかは到底どうでもいい。
海独特の気持ち悪い匂いが今は私に染みている。
鼻を熱くした私はまた歩き始めた。
「ハーフアップが一番似合ってる」
遠い記憶の誰かが私に言った。
髪、結びたい。
手の平で髪の毛を掴んだ。
随分と長い髪の毛だ。
ハーフアップをしようとした。
でもやっぱり結ぶのをやめた。
空を見上げると、飛行機がごうごうと音を立てて飛行機雲を作っている。
なんだかあの漫画に似ている。
その漫画のヒロインと同じ表情をしてみた。
長いまつ毛をカーテンに、目を伏せてみた。
口元は切ないゆるやかなカーブで。
どうだろう、私今可愛いかな。
馬鹿らしい。
私は止めていた足を回して歩道に出た。
前に母親とその子供が並んでいる。
男の子は幼稚園の話を、母親はそれを上の空で聞いている。
私は急いで海に戻って宝箱を探した。
海に入ると制服のシャツが重くのしかかって私は沈んでいく。
でも、宝箱が。
そんなに遠くに投げていない。
ああ、やばい、死ぬ。
足にザリっと感触がした。
潜って手に取った。
宝箱だ。
陸に、戻らなきゃ。
あぁ、戻れ、ない。
お、溺れて、る。
どうにか自分で陸に戻った。
髪がぼたぼたと音を立てる。
宝箱の蓋を落ちていた木の棒で叩いた。
あっけらかんにその蓋は開いた。
中はおはじきだった。
中は全く錆びていなくて、水すら入った形跡はなかった。
ふざけんな、おはじき。
私は走って親子のもとへ行く。
いた。
「はい、これ、忘れ物。落としてたよ」
私はおはじきを彼の手に乗せた。
男の子は顔に「?」が浮き上がっていると言わんばかりに戸惑っていた。
母親も困惑している。
「もう落とさないでね。綺麗なおはじきなんだから」
私は親子から逃げるように走った。
あの親子、今頃どんな話してるんだろ。
きっと私の話だよね。
可愛いって言ってくれるといいな。
あの漫画のヒロインに似てたって、言われてたらいいな。
私は髪をハーフアップに結んで、またあるきはじめた。
そこで目が覚めて体を起こした。
指にまだおはじきの感触があって、私は手を握りしめた。