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目次
笑
広い空を見ると、泣きたくなる。
あの子は今でも私を探しているのだろうか。
純粋で、健気で、あの儚い笑顔を思い出すだけで辛くなる。
あの子は外が好きだった。
青く涼しげな世界を愛していた。
曖昧な朝、草をかき分け進んでいくのが楽しそうだった。
雨上がりの土を踏みしめながら、さらさらという木々の音を聴きながら、太陽の方角を見て目の奥を輝かせていた。
空よりも大きな想いを広げていた。
宇宙に希望を見ていた。
綺麗だった。
澄みきった空気を目一杯に吸うあの子が、小さくもたくましい背中が、目を離せば届かなくなりそうなその手が、今も私のために縛られてしまっているのだろうか。
私を救おうとして、叫んでいるのだろうか。
あの子は私が好きだった。
私を信頼していた。
優しかった。
あの家に一人残してしまったことを、許してしまうだろうか。
「待って」
あの子と会って、謝らなくちゃ。
「行かないで」
あの子と会って、涙を拭ってあげなきゃ。
「ねぇ」
あの子と会って、笑顔を見せなくちゃ。
「待ってよ」
あの子と会って、さよならを言わなきゃ。
「 」
それまでは、私も広い空を見てる。
浅瀬にいる。
寒くても、辛くても、待つ。
久しぶりに綺麗だった。
蝶
「一枚の羽根」
今の私を例えるなら。
飛ぶには対となる者が必要なのに、私は失ってしまった。
でも、私は飛びたい。
ふと足を止めると、家から遠く離れた場所まで来ていました。
青暗い空が私を撫でました。
それなりに泣きそうで、会いたいと強く願い足を進めました。
私はあなたが大切だった。
無邪気な私を追ってくる足音に、いつも安心していました。
優しい声が、心強かった。
「待って」
だから叫んだ。
もう二度とあんな声を出したくない。
あなたと共に、飛びたい。
それでも、しばらく走っても空は青暗いままでした。
周囲の草木も黙って、目を合わせてくれませんでした。
どこに居るんですか。
訊いても凪でした。
あなたといた時、経験したことの無いものでした。
私の望みに、この世は気付いていない。
ただでさえ相手の居ない羽根なのに、随分と風穴が空いてしまいました。
一つの海にでました。
大きな信号機も、車や人が居なければ無価値。
空を映して顔色が悪く、私と同じく風穴が空いているようでした。
何かが泣いて、私の足元が濡れました。
雨も涙も見当たらず、ただ染みが大きくなっていきました。
そばで何か聞こえました。
私は安心しました。