えー、こちらはダンダダンの夢小説となっておりますー!
原作の内容はあんま出さずにオリジナルでやってこっかな、と思ってまーす。
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目次
音のまま演じ切れ #1
**設定**
広瀬#名前#
人見知り。演劇&怪異オタク。一人称が「おれ」で「っす」が口癖。カワボ。
**第一話 マジ無理ゲーっす**
今日、この学校に転校生が来る。
よくある物語なら、自分は在校生で不思議な転校生を迎えるんだろうけれど__残念ながら、おれがその『転校生』だ。
「__いや、無理無理無理無理無理無理。無理っすよぉ、初対面の陽キャ共の塊に割り込むとか……。レベル1の勇者がラスボスのいる城に飛び込むのと同じくらい無理ゲーっす!__」
ついでに言うと、めちゃくちゃ人見知りである。
喚きたいけど変な人だと思われたくないから小声にするという、このヘタレっぷりよ。
(我ながら情けないっす……まぁ、今に始まった話じゃないっすけど)
「呼んだら入って来てくださいね、広瀬さん」
「ぁ、はいっ」
(時よ止まれぇええええっ!)
「__入って来てくださーい__」
(もうっ?! 早過ぎっす!)
先生の合図の早さに内心絶叫しつつ、平静を装ってドアを開ける。
「ひ、広瀬#名前#っす! よ、よろしくお願いします」
「声可愛い!」「席近くがいいなぁ」「どこから来たんだろ?」
クラスのざわめきに思わず半歩後ずさる。
「……ひっ……」
(頼む、大人しい人の隣の席であってくれ!)
そう懇願していると、先生が早速それを口にした。
「席は……高倉の隣が空いてるな」
「えっ、ジブンですか?」
隣の席は、黒短髪に眼鏡の男子かぁ。
(__良さそうな人だぁあああああああっ!!)
命拾いした気分で席に着く。
「あっジブン、高倉健って言います」
「高倉さん、っすね。よ、よろしくっす」
そう返し、ふと彼の机を見ると、オカルト雑誌が置いてある。
(わ、同志だぁ……! 仲良くなれそうっす〜……!)
感動に耽っていると、いつの間にかHRが終わっていた。
あんましだな、って思った人!
続き見て! これから面白くなるのっ!(
お願いぃいいいっ!!
音のまま演じ切れ #2
**第二話 目撃、困惑、興味**
トイレを出て、小さく息を吐く。緊張の余り漏らしそうだったが、間に合った。何をとは言わないでおくが。
おれは教室に入ろうとして、不穏な空気に気づいた。反射的に隠れる。
「__なぁ、綾瀬さんとヤったんだろ?」
「……は?」
どうやら、高倉さんがチャラ男に絡まれているらしかった。
(うーわ、コイツ最低っすね。ドンマイっす、高倉さん)
とりあえず心の中で罵っておく。
「誰でもヤらせてくれるって噂じゃん」
チャラそうな男__以後モブAとしよう__の言葉に、高倉さんは目を見開いている。
「え、誰がそんなこと……」
「知らないけど、そうなんでしょ ねぇ頼むって!」
「……誰がそんな噂流してんですか?」
高倉さんにグッと胸ぐらを掴まれ、眉根を寄せるモブA。
「は? お前コレどういうつもり? やんの?」
「噂流してんの誰かって聞いてんだぜぇ……」
「__っ?!__」
突然現れた悪魔の様な男に、おれは息を呑む。
(えっ? た、高倉さん……? どーゆー状況?)
「モモちゃんはよぉ……そんなんじゃねぇんだわ。やめとけ、そーゆー噂流すの」
「オレじゃねぇって! わかったよ、わかったから放せって!」
凄む高倉さん(?)に怯んだのか、モブAは喚く。
すると、高倉さん(?)が高倉さんに戻った。
(あ、アイツはやっぱり高倉さんだったんすね。てか、人格変わってたくね? えっ、二重人格?)
高倉さんは咳き込むモブAに「ご、ごめんなさい!」と謝っている。
うん、さっきの大人しい高倉さんだ。
そんな彼を見て、おれは思わず呟いた。
「……彼、考察し甲斐がありそうっすね……!」
演劇好きとして、怪異好きとして、考察好きとして……興味が湧いてきたっす!
原作のシーンはあんまり出したくないんだよねぇ……。
やっぱり、原作は原作が一番じゃん? 基本的にさ。
おつみらーぁ。
音のまま演じ切れ #3
**第三話 そっくり**
彼を観察し始めて、気づいたことがある。
オカルトが好きなこと、気が弱いこと、虐められていることなどだ。
そして一番彼の中で大きいのが、『綾瀬モモを守りたい』という思い。
ちらっと彼女のクラスを覗いてみたけれど、ザ・陽キャという感じの見た目だった。
接点はなさそうだけど……一体、どんな関係が?
(うー、考えすぎて頭痛くなってきた……。一旦離れて、別のこと考えよ)
ノートのページをめくり、最近ネットで見たフラットウッズモンスターの絵を描いてみる。
……うん、いい感じだ。
夢中で絵を描いていると、授業が終わった。……流石に、内容は後で教科書で確認しよう。
そう思っていると、高倉さんから声をかけられた。
「あ、あのっ! それってもしかして、フラットウッズモンスターですか?」
「え? あ、はいっ。知ってるんすか?」
「はい。絵、上手なんですね。本物そっくりです!」
「あ、ありがとうございます……」
(……ん、《《そっくり》》?)
彼の言い方に少し引っかかりを感じる。
が、それよりもっと大事なことに気づいた。
(これって、友達になる大チャンスなのでは……?)
なら、善は急げだ。チャンスを逃さない様、食い気味に言う。
「っあ、あの、おれもオカルトとか好きで! これからも、その……話、しません?」
言ってから、タイミングミスったかも、と一気に焦る。
慌てて「いやっ、よかったらっすよ!」と付け加える。
「えっと……よ、よろしくお願いします」
高倉さんの返事を受け止め、ゆっくりと咀嚼する。
「……ほ、ほんとっすか? やったぁああ……!!」
思わずガッツポーズをかますと、高倉さんは少し照れた様に笑った。
これで晴れて友達かぁ!
こーゆーほのぼの系もいいよねぇー。
次回から怪異が出てくる(予定)だよ〜!
音のまま演じ切れ #4
**第四話 わたしを見てよ**
友達ができた喜びを噛み締めながら、家に帰る。
(いやぁ……ほんとよかったっす。断られたら挫けるとこでした……)
思わず頬が緩んでいると、ふと気配を感じた。
振り向いたが、誰もいない。
「……気のせいっすかね」
そう思うことにして歩みを進めるが、段々不安になってきた。
なので、なんかの本で読んだ、尾行を撒く常套手段を試してみる。
と言っても、ゆっくり歩いたり早足で歩いたり、突然止まったりを不規則に繰り返すだけなのだけれど。
……離れない。
「しぶといっすね……」
という呟きを、ため息と共にそっと吐き出す。
どうすっかなぁ、と天を仰ぐ。すると、時計が目に入った。
「待って、アニメ始まっちゃう! もういいや、走って帰ろ__」
そう言った途端、キィーンという金属が高速で擦れる様な、嫌な音が鳴り響いた。
耳を塞ごうとした刹那、頭が揺らされる。
「………ぅ、っ」
圧がかかる。重い。視界が霞む。意識が朦朧としてくる。
終わりを悟ったその時、なぜか圧がパッと軽くなった。意識もハッキリしている。
「大丈夫ですか?! 広瀬さん!」
「は、はい……何とか」
高倉さんが助けに来てくれたらしい。そして、隣にいる女子__例の綾瀬さんが目に入った。
「えっ、何? オカルン、知り合い?」
「はい。転校生で、ジブンの隣の席です」
彼女はどうやら、おれのことを知らないらしい。まぁ当然か、今日転校してきたばっかりだし。
「ちょっと、『友達』とは言ってくれないんすか? 高倉さん?」
軽口を叩いてみると、意外と効いたらしく「えっ、あっ、それは……」と焦っている。結構面白い。
「いやぁ、あのオカルンに友達ができるとはな〜……ふつつかなオカルトオタクですが、仲良くしてやってね」
張本人の高倉さんはというと、「何でそうなるんですか……」と呆れている。
平和な会話に和んでいると、先程のキィーンという音が聞こえてくる。
……ゎたし……ぉ……見て……ょ……!!
声と共に、姿を現した。
「……み……て……ゎた、し……ぉ……」
その容姿は、地面についている髪に4メートルはゆうに超える長身、という不気味なものだった。
それを見た瞬間、《《呑まれた》》。
「__広瀬さんっ!?__」
「__ちょっ、嘘!__」
遠くで2人の声が聞こえる。
おれは、そっと意識を手放した。
えっ、モモの口調クソムズいんだが。
後、怪異って書くの大変っすね……。
音のまま演じ切れ #5
書き溜め尽きたんご。
うぁあああああっ!!((
**第五話 綾瀬さん宅**
「ん……うわっ、ここどこ?」
目が覚め、辺りを見回す。そこはよくある体育館の中だった。
「もしかしておれ、死んだ? いや、にしては死後の世界ぽくないっすねぇ……」
するとパッと照明が落ち、即座に舞台にライトが当たる。
そして__劇が始まった。
---
「ちょっとどうすんの、消えちゃったじゃん!?」
「どどどど、どうします?」
---
夢中で見入っていると、いつの間にか劇は終わっていた。
拍手をしながら、逡巡する。
(多分、彼女は女優になりたかったんすね。けれど、貧しかったせいでできなくて……こんなにも演技が上手なのに、もったいないっす)
劇のストーリーは、恐らく彼女の人生を模したものなのだろう。少し、涙ぐむ。
ややあってから、彼女はおれに囁く様にこう言った。
「頑張ってね。わたしの代わりに__」
---
「ん……ぁ……」
「あっ、起きた!」
「大丈夫でしたか?」
目覚めた瞬間、2人に急接近される。
「っだ、大丈夫っすよ……特に何もなかったっす」
あったことを説明すると、「ほんとに何もないじゃん」「行った意味なかったですね」と返される。
「聞きそびれてたっすけど、ここどこっすか?」
「うちの家」
「後、おれはどーやってここへ?」
「うちとオカルンで担いだ」
「……マジすか?」
「マジマジ」「マジです」
すぅーっと大きく息を吸い、「すんません……」と謝る。
「いーよ、いーよ。夜遅いし、気をつけてね」
快活な笑みを見せる綾瀬さんに、少し安堵する。
「は、はいっす。じゃあ、えと……また、明日」
「また明日〜」「はいっ、また」
**オマケSS**
「そーいや、『オカルン』て呼び方なんすか? 高倉さんの名前は高倉健で__」
「あぁああああああやめてぇええええっ」
言い切る前に、綾瀬さんが叫んだ。突然のことに、おれは後ろに半歩引く。
「うわびっくりしたぁっ! どうしたんすか、持病かなんかっすか?」
悶える綾瀬さんに代わり、
「高倉健が好きらしいです、俳優の方の。なので、ジブンの名前を聞くとああなります」
と高倉さんが答えてくれる。どうやら発作ではなかったらしい。
救急車を呼ぼうとスマホを構えていたが、無用だったか。
「な、なるほど。だから、高倉さんを本名で呼ばないんですね……」
納得して頷くが、新たな疑問が浮かぶ。
「ところで、なぜに『オカルン』?」
「「オカルト好きだから」」
見事に2人の声がハモった。
「ちなみに、名付け親うち」
「……綾瀬さん、ネーミングセンス神ってません?」
「知ってた」
妖怪、ショボくね?((
強い奴ににしようか迷ったんですけど、流石に初回でそれはなぁ……ってことで、超平和になっちった。
てへぺろー。(
音のまま演じ切れ #6
タイトル変えました。
https://tanpen.net/novel/27893f84-db11-411c-b6cf-900652647fb7/
↑ここに夢主のビジュ載せた! 私が描いた奴もあるよ。
**第六話 珍しく、花を**
「……っふぅ……」
おれには今、超大事なイベントが待ち受けている……。
そう__挨拶!
(おれ、挨拶しようとするとなぜか声が出ないんですよね……もうこれは一種の不治の病っす)
でもまだ、勝機はある。
知り合いと教室に着くまでに出会わなければ、その間に(超絶小さい声で)発声練習できる!
「あっ、おはようございます」
(ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛っ!!)
【 #名前# は た か く ら さ ん に で あ っ て し ま っ た ! 】
「……っ……ぉはようございマス……」
緊張してカタコトになってしまう。
(あぁあ馬鹿っ! なんで挨拶すらできねぇんだおれはぁ!)
沈黙だけは耐えられないので、なんとか話題を探る。
「ぇっとぁ、き、昨日はありがとうございました……」
「あっ、いや……そのくらい当然ですよ」
なんでお礼を言っているのだろうか、と顔に書いてある。
(ヤバい、なんか泣けてきた……持つべきは心優しい友っすね)
「ところで、前に高倉さん、なんか変身してませんでした?」
「え? あぁ、あれは__」
高倉さん曰く、綾瀬さんと話してたら心霊スポット、UFOスポットに行く流れになったそうだ。
そしたら高倉さんはターボババアに呪われ、綾瀬さんはセルポ星人に服やスマホや諸々の所持品を壊された。
とりあえず綾瀬さんに行って着替えたが、今度はフラットウッズモンスターに出会う。なんとか倒した。
綾瀬さんのお婆さんと特訓をしてから、高倉さんの呪いの元のターボババアがいるトンネルに行き、倒した。
その後、高倉さんにターボババアが乗り移ってたことに気づいて叩き出した結果、ターボババアは招き猫に。
しかし余程頑張ってしがみついていたのか、ターボババアの意識だけが出て行ったのだそう。
つまり、力は高倉さんが持っている。それで、変身ができたらしい。
「へぇ……! そんなことが起こり得るんすねぇ」
目を見開くおれに、高倉さんは頷く。
「はい。それで今に至ります」
「あっ、だからおれが描いたフラットウッズモンスターの絵を見て、『そっくり』って言ったんすね」
「……?」
「あぁえと、『そっくり』って普通、実物を知らないと言わない言葉じゃないっすか。だから、ちょっと引っかかってたんすよ」
「あ、なるほど! 確かにそうですね」
「それと、ターボババア状態のときってどんな感じなんすか?」
「え? うーん……難しいですけど、強いて言うなら__」
「__あ〜。なるほどっす!__」
「__あのときも大変で__」
「__え、えぇ?!__」
「__結局、見られる羽目に……__」
「__……お疲れ様っす__」
それからしばらく、会話に花を咲かせていた。
音のまま演じ切れ #7
**第七話 ちょっとだけ可愛いっす**
昼休みに、綾瀬さんが来た。
「やっほーオカルン」
「あっ、綾瀬さん!」
「__と、こないだの子」
「こ、んにちは」
声は聞こえない前提で、会釈する。
というか、凄い後付けだったな。別にいいけど。
「そーいや、名前なんて言うの? 聞き忘れてた」
尋ねられたので、「広瀬#名前#っす」と名乗る。
「#名前#ね! よろしく〜」
「よ、よろしくっす」
パーにした手をかざす綾瀬さん。
数秒経って、ようやくハイタッチをしようとしているのだと気づく。
おずおずと手を合わせると、小さく音が鳴った。
(ハイタッチ、初めて親と以外でやったっす……)
感慨に耽っていると、綾瀬さんが可笑しそうに口元を押さえた。
「これでハイタッチだって気づかない人いるんだ……ふははっ」
「っちょ、酷くないすか?! 仕方ないでしょ、友達いないんすからぁ!」
必死に抗議するが、それすらも面白いらしく笑い声が大きくなっていっている。
「だって、高倉さんが初めての友達なんすもん! どうしようもないっす、これは!」
「えっ、そうなんですか?」
高倉さんが、おれの言葉に心底不思議そうにする。
「広瀬さん、結構話しやすいですよ」
「え、そうっすか?」
問い返すと、頷かれた。
(自分だとよくわからないっすね……)
綾瀬さんに「前の学校には友達、いなかったの?」と問われ、「あ、はい」と答える。
「話しかけてくれる人はいたんすけど……うわべだけというか、ただのクラスメイトとして、って感じだったっす」
一度、言葉を区切る。
「その点、お2人は話しやすいっす。ちゃんと、友達として扱ってくれている気がして。特に高倉さんとは、話も合うし」
へへっ、とはにかんでみせる。
(ちょ、やっばい羞恥エグ……!!)
ちらっと反応をうかがう。
「……あれ? 高倉さんの顔、なんか赤くないすか?」
綾瀬さんは当然とでも言うようにドヤっているが、高倉さんは無言で赤面している。
「もしかして、高倉さん……照れてます?」
「いやっ、別にっ! そんなことはっ」
声がやけに裏返っている。
「……ふふっ」
「ちょっと広瀬さん?!」
一度笑ってしまうと、止まらない。
「だ、だって……っふ……なんか、可愛いなぁって……ふはっ、いやっすんません……でも、高倉さんはピュア過ぎだと思うっす……っふふ」
「笑い過ぎですよっ!」
更に顔を赤くする高倉さんを見ていると、もっと笑いが込み上げてきた。
睨んでくる彼を気にせず、抱腹絶倒する。
しばらく笑いが止まらなくて、道ゆく人になんだコイツ、みたいな目で見られてしまった。
えっと、意味不&ほのぼの回!
いつの間にか文字数めちゃくちゃいってたので区切りました。
ほんとは下校シーンまで持っていこうと思ってたんだけどなぁ……w
音のまま演じ切れ #8
**第八話 萎えるぜ**
昼休みも終わり、残りの授業も終わり、放課後。
「よっ! オカルン、#名前#」
「「綾瀬さん!」」
手をひらひら振る綾瀬さん。
一拍置いてハモった気まずさが訪れたが、そんなこと知る由もない綾瀬さんは話し出す。
「今からゲーセン寄んない?」
「お、いいっすよ」「ジブンも大丈夫です」
ザ・青春な綾瀬さんの提案に、おれと高倉さんの陰キャ2人は目を輝かせる。
「でも、綾瀬さんの友達はいいんですか?」と念のため訊いてみると、「いーのいーの。バイトある子多いし」とのこと。
「それじゃ、行こー」
---
「そーいや、#名前#ってどっから引っ越して来たの?」
「隣の隣の県っす」
「思ってたより近くですね」
「前の学校でも今みたいな感じだったん?」
「まぁ、そんなとこっす」
---
「そこ! そこ! 右! あぁあ行き過ぎっ! 左! やっぱ右! 手前ぇえええ」
「綾瀬さん、指示が滅茶苦茶ですよ!」
「見てください、なんかめっちゃ取れたっすよ」
「広瀬さんは上手過ぎません?」
「実は一時期、週10で通ってたんすよ」
「限界突破してる……」
---
「いやぁ楽しかったねー。うわ、もう夕方だ」
「っすねー。つか、前が見えな……うわぁああっ?!」
「ちょっ、大丈夫ですか? 半分持ちますよ」
「っはは! 派手に転けてら〜。うちも持とっか?」
「あ、ありがとっす……」
大量の戦利品を少し持ってもらい、体制を持ち直す。
ボォオオオオオオオオオッ
「「「っ?!」」」
刹那聞こえた不気味な音に、思わず身構える。
「っな、なんすか……?」
戸惑いの声を漏らす。
そのとき、ゆらりと空に何かが浮かんでいるのが見えた。
「うわっ、なんかいる!」
ゆっくりと降りてくるのを見て、揃って悲鳴を上げる。
「ききき来ましたよっ!」
「うわうわうわうわうわうわっ! 激ヤバっす!」
その何かの姿が徐々にハッキリしてくる。その正体に気づき、俺は叫んだ。
「多分アレ、一反木綿っす!」
「「一反木綿っ?!」」
2人が声を揃えて驚く。
「一反って12メートル50センチくらいらしいんすけど、コイツもそれくらいっす!」
布みたいな容姿といい、完全にそれだ。
「一反木綿、って……有名だから知ってるけど、実在したのっ?」
「人々の恐怖が具現化することもあるらしいっす!」
「そうなんですか?!」
そうこうしてるうちに、一反木綿は目の前に降りてきていた。
「っゔ」
「「綾瀬さんっ!」」
即、吹っ飛ばされる綾瀬さん。超能力で防ごうとしたのか、痺れた手をさすっている。
高倉さんが変身しようとするが、その前に一反木綿が彼を縛り上げる。
「っ……が……」
苦しそうに呻く高倉さんを見て、おれは自分を奮い立たせる。
小さく息を吐き、逡巡する。
(おれにでも、できること……。なんだ……? おれは、どうすれば……)
“演じなさい”
声が、聞こえた。
いつかの劇で魅せてくれた、彼女の声。
“貴方なら、できるわ。彼に、なれる”
「……な、る……?」
“私の力をあげるから。守ってあげて”
脳に、雷が落ちた気がした。
「“……あぁー、萎えるぜ”」
突然雰囲気が変わった《《ジブン》》に、2人が目を見開く。
2人を、助ける。それ以外は考えない。
本気を使ってダッシュをする。
「“めんどくせぇ”」
一反木綿を千切り、高倉さんを抱える。
呆然とする2人を見て、《《おれ》》はハッとした。
「っだ、大丈夫っすか? お2人とも!」
「うちは大丈夫、だけど……」「ジブンも、平気です」
本当に平気そうで、安堵する。
「……っはぁ〜、よかったっすぅ〜……!!」
「……………ってか、今の何?! ビックリした! オカルンかと思った!」
「っじ、ジブンも、自分を見ている気分でした! アレ、一体なんなんです?」
沈黙の後、噛みつく様な勢いで問う2人。若干引きつつ、話し始める。
「お、おれもよくわかってないんすけど……この間の幽霊が、助けてくれたみたいっす」
続けて言う。
「おれ、演技とか好きで。プロファイリングとかして、色んな人の性格をパズルみたいに組み立てる、あの感覚が好きで……」
最初はアニメキャラなどでやっていたが、それだけでは飽きたので周りの人でもやる様になった、と説明する。
「高倉さんに少し興味があったので、色々考えてたんっすよ。だから、咄嗟に演じれたっていうか……。あの幽霊のお陰で、演じた人の力を自分のものにすることができるみたいっす」
俯きながら、そう締める。
「なんていうか……凄いっすね」
「ね! つか、演技得意なの知らなかったんだけど」
「い、言う必要ないかな、って……。なんか自慢みたいに聞こえるかな、って」
「そんなことないし! ねね、もっと演技の話してよ!」
「ジブンも気になります!」
「えっ、えぇ〜……? えっと、そうだなぁ……」
帰りながら、ずっと話をした。
めちゃくちゃ疲れたけれど、不思議とそれが心地よかった。
ついに! 力を発揮! だぁああああ!
いやぁ、大変だったよ〜。ここまで来ないと、まともに怪異と戦えないし……。
よく頑張った、私!((
音のまま演じ切れ #9
やっと……やっと書けたよぉお〜!!
**第九話 得意げホラーチック招き猫ババア**
一反木綿戦?を終え、次の日。
「1時間目から体育とか……終わってんなぁ! バレーなんて無理っ! というか、そもそも球技そのものがまず無理なんすけどぉ!?」
オマケに、昨日は興奮であまり寝れていない。
(1時間目を使って睡眠時間を稼ぐ算段だったのに……台無しっす)
「__広瀬さん、そっち行ったよー!」
「……うぇ? あっ、」
ギリギリでボールに触れはしたが、明後日の方向へ飛んでいく。
「あーぁ……すみませぇん……」
力なく謝ると、綾瀬さんだけが「ドンマイ!」と返してくれる。他の女子はそっぽを向いた。
(うぁ……ヤッベ、好感度鬼下がりっすね)
別に好いている訳でも好かれたい訳でもないのだが、やはりある程度は好感度は高い方がいい。
ふと横を見たら、高倉さんが似た様な状況で肩をすぼめていた。
それに思わず噴き出してしまう。
そしたら、周りの女子たちに何コイツキモ、みたいな目で見られてしまった。
うん……なんか、デジャヴを感じるっす。
---
2時間目の算数は無事に寝て、昼放課。
「あ、おはようございます。広瀬さん」
「おはようっす。……あれ、寝てるのバレてました?」
「そりゃあ、机に突っ伏して寝ていたので。熟睡していたので、起こしませんでしたけど」
「うわ、マジっすか……」
寝顔を見られた羞恥と先生にバレなかった安堵と……うん、複雑な感情っす。
そんなことを思っていると、
「随分と間抜けな面してたな」
と辛辣な声が。
それとほぼ同時に、高倉さんが「あっ」と声を漏らす。
「え? 誰なんすか?」
「そのー……ターボババア、です」
……ん? たーぼ、ばばー……。
「……うぇえ?! つ、ついてきたんすか?」
「はい、いつの間にかリュックに……」
高倉さんのリュックをちらっと覗いてみると、『してやったり』とでも言うように、得意げな顔をした招き猫が。
「うわっ。もうコレ、一種のホラーっすよ……」
「ジブンも気づいたときは心臓止まるかと思いました」
疲れ切ったように息を吐く高倉さん
一応「誰かに見えたらどーするんすか」と尋ねてみたが、「そんなんで正体がバレるほど未熟じゃねぇ。年上舐めんじゃねぇぜ」らしい。
ところでみんな!(
夢主の性別、知ってるかい?
せ〜かいは〜っ??((
どぅるるるるっ、じゃじゃん!
女の子で〜す!
いや、明言してなかったな、って思って。
それだけっす。じゃね!