「作ってる」同士の2人が、同盟を結ぶ——。
どこにでもいる普通な「天然系女子」こと式森すみれ(しきもりすみれ)と、その笑顔や行動で「完璧王子」と有名な由良京也(ゆらきょうや)。
「あること」によって、決して関わることのないはずだった2人の運命が、大きく狂いだす——!
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#作ってる同盟 第一条
久しぶりの小説ですね…
今回は(っていうか今回も)私の経験をもとに作りました(● ˃̶͈̀ロ˂̶͈́)੭ꠥ⁾⁾
ぜひ読んでね(๑>◡<๑)
いつどこで、何に対しても抜かりなく。
誰に対しても「完璧」な笑顔で。
本心を見せないようにして。
そうして俺/私は、生きてきたのに————。
---
「ね、由良くん。私たちで同盟を組まない?」
「へぇ、『外面作ってる同盟』?」
「そう。それで、2人で協力して内面を出せるようにするの!」
「ふっ、式森ってたまに変わってるこというよな。
でも、まあいいんじゃね?」
「じゃあ決まり!!」
「20××年◯月□日 私・式森すみれと由良京也は、外面同盟を結ぶことをここに誓いますっ!!」
この日は初夏の風が気持ちいい、爽やかな日だった。
---
「あっ!手ぇ切れちゃったあ!」
「えっ、大丈夫!?すみれちゃん、これ使って!」
「え、リンちゃんいいのぉ!!?」
「すみれってば、ほんと不器用なんだから。」
そう言われて、私の中で一瞬でもむっとした感情が湧き出たことに気がついた人はいないと思う。
「リンちゃんありがとう!!!」
「リンカ、こんなすみれのためにありがとうね。」
「ちょっとルリちゃん、それどーゆー意味!?」
「まあ、2人とも!」
気がついた人がいたら、その人に金一封でも差し上げたいぐらい衝撃的だ。
「あっ、絆創膏が貼れないっ!!」
「もぉ、すみれは不器用なんだから。」
「さっきとおんなじセリフをさっきとおんなじ顔で吐かないでくれる!!?」
「まあまあ、2人とも!」
だって、私は今、「傷つくという言葉を知らない、無邪気な天然系女子」の|外面《かお》だから。
私、式森すみれは|外面《かお》で生きている。
なぜかと問われれば、「嫌われたくないから」の一点に尽きるが、これにはもっと深いわけがある。
『あんたは今もこれからも、ずっと人に嫌われる運命なんだよ!!!』
思い出したくもない言葉が脳内に響き、私は気づかれないように顔を顰めた。
震える手で絆創膏を貼る。
何も、そう大したことじゃない、と自分に言い聞かせながら。
顔は、常に笑いながら。
この時私は全く気づかなかった。そこに人の視線があったことに。
---
「あとでテスト結果返すから、出席番号順に取りに来いよー」
————キーンコーンカーンコーン
「気をつけ、礼」
「「「さようなら」」」
号令とともに一気に騒がしくなる教室。
「はぁ、行きたくないっ〜」
「わざわざ紙にして渡す必要なくない?」
「それな〜、文字に残るもんね〜!」
人の流れに沿って、教卓へと向かう。
『20××年 前回中間試験 結果表』
いよいよ私の番だ。
まあ順位はだいたいわかっているから、そんなに必死になる必要はないのだが。
「はい、式森。」
『2−3 式森すみれ 総合495点 2/144』
ほらね。
また笑顔を貼り付けて、先にもらっていた友達の方へ向かう。
「リンちゃん、どうだったぁ〜?」
「82位!結構できた!」
「え〜、すごいじゃんっ!!ルリちゃんは?」
「ん?45位。」
「わっ、もっと上がいたわ…すみれちゃんは?」
「え〜、私はね、98位!」
「はい出た、安定のすみれ。」
「え〜っ、どう言う意味?!」
もちろん、98とかでまかせの嘘。
いつも他の2人より低く、それでいてギリギリ補習に当たらないような点数を適当に言って、その場を凌いでいる。
だって、これが私の|外面《かお》だから。
「きゃーっ、由良くん、また一位だよおっ!!!」
「しかも満点って凄すぎ!!」
女子のそんな黄色い声が聞こえ、私は思わず廊下に目を向けた。
そこに囲まれているのは、隣のクラスで「完璧王子」と囁かれる、由良京也だった。
「由良くーん!また一位なんてすごいねっ!」
「由良ぁ!お前イケメンで勉強もできて性格いいってもう完璧だろ!!」
「ふっ、ありがとう。僕でよければいつでも教えるからね。」
「おまっ、神かよ!!いやー、今回赤点だからさー、マジ助かるわ!!」
「すごいよねっ、由良くん!」
リンちゃんのそんな声で、ハッと我に返る。
「まあ、頭いい人は顔から何から違うのかね。」
「ねー、ほんと|王子《プリンス》だよねー!すみれちゃんもそう思うでしょ?」
「…っ、あ、うん!ほんとすごいよねぇーっ!!」
私は目が離せなかった。
彼の完璧な「笑顔」。
それが、いつもの私と同じような「|外面《かお》」だったから。