参加型企画にて参加された四名の方々のキャラクターを主役とした不思議の国のアリス×ミステリー
_瞼を開けば、そこは不思議の国。ちょっぴり狂気染みた国で〖アリス〗は何を思うだろうか?
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目次
参加型シリーズのキャラクター設定確認
自主企画にてご参加いただいた方々のキャラクター設定の確認です
サイド1 主人公、友人 サイド2 主人公、友人
の順にて記載しています
脇役一名追加しました
変更点、不記載な点等がありましたら、申しつけ下さい
サイド1
▪足立 様
名前 |足立結衣《あだちゆい》
年齢 15歳(6/9 誕生日)
性別 女
口調
敬語を主に使う。敬語が外れるのは痛い・辛いなどの時。
「どうも、こんにちは。私は足立と言います。貴方のお名前は?」
一人称 私
三人称 貴方たち
性格 人を慰める事が好きな物好き。自己肯定感が低い。(いえいえ私なんか)
外見
髪型 前髪は普通(?)、そしてこちらから見て左側に短い一つ結び。
髪色 黒色
顔立ち 誰もが見向きする美人。
瞳の色 黒色
体格 柔らかい感じ…?
▪その他設定
・コーンポタージュ、ココアなどの温かい飲み物が好き。
野菜が嫌い。
・特技はコラージュを作ることなど。
苦手は武器を使う事。
・骨が脆い。
・学生だが学校には通っていない。
・アレルギーはなし。
▪枠
サイド1の主人公(アリス)
▪雨鬼めけ 様
名前 |空才リリ《そらたか りり 》
年齢 23歳
性別 男
口調「~だから」「~です」「~ます」
一人称 ジブン
三人称 あの人
性格 冷徹な王子様みたい
外見 髪型はポニーテール。髪色は黒。顔立ちは、王子様みたいに整っている。瞳の色は右は青 左は緑 体格は中学生みたい
その他設定
・とても頭のよい学生
・コーヒーや食パンが好き
・甘い物も好き
・炭酸水は苦手
枠 サイド1の友人
サイド2
▪雪狸⛄ 様
名前 |神来社凪《からいとなぎ》
年齢 25
性別 女性
口調 優しいお姉さん「私は神来社凪よ」
一人称 私
三人称 貴方達
性格 優しく健気、常に冷静で気品にあふれてる
外見 黒髪の長髪(赤のカチューシャ)、黒い目、黒スーツで華奢な身体つき
その他設定
賢いが、虫が苦手 拳銃持ってる
枠 サイド2の主人公枠
▪Sui 様
名前:|濱田光流《はまだみつる》(偽名)
年齢:19歳
性別:男
口調:適当にあしらうような感じ「〜かも。」「〜じゃない?」
一人称:僕
三人称:あの子、その子
性格:ミステリアスで何を考えているかわからない不思議ちゃん、よく真顔でふざけたことを言う
外見:
・髪はアッシュグレイの爽やかショート、
・顔は大体真顔で目は死んでいる、
・瞳の色は鈍色にびいろ
・スラリとした体格で身長は175cmくらい
設定:
・連続殺人鬼として指名手配されている
・学校には通っていないし、仕事もしていない
・茹で卵が好き
・指が長く手先が器用
・紅茶には砂糖をドバドバ入れるタイプ
枠:サイド2の友人
〖脇役〗
雨鬼めけ 様
名前 |一条《いちじょう》イト
年齢 23歳
性別 男
口調「~だからね」「~ですから」「~です」
一人称 僕
三人称 あの人
性格 気弱 優しい 天然
外見 髪型はポニーテール。髪色は赤、顔立ちはモデルのように可愛い。 瞳の色は緑、体格は中学生くらい
その他設定 現役の学生 有名な大学を卒業している 炭酸とコーヒーがのめない リリと同級生
ルクス様
名前 |田村《たむら》ミチル
年齢 16歳
性別 男
口調 強めの上から「〇〇に決まってんだろ…。」
一人称 俺
三人称 俺ら
性格 生意気だが仲間思い。
外見 ボサボサロン毛を髪ゴムで結んだ感じ。赤みがかった黒。目の色は赤。というかオレンジ?小6くらいの身長、体重、見た目。)
その他設定 スッと現れては消える。
上記になります
次回からシリーズを開始するつもりですが、後の伝言があればご連絡下さい
〖鏡逢わせて瞼を開く〗
......夢、だったのか。それとも、現実だったのか。いくら考えても答えはでない。
ただ、何故かある言葉が脳裏に焼きついている。
--- 鏡は真実だけを対比して映す。夢か否かは逢わせれば自ずと答えは出るだろうね。 ---
---
顔立ちがかなり整った男女が二人して倒れこんでいる。
その横を白兎が急いで通り過ぎるが、これはまぁ、良いだろう。
女性はこれといって平凡な黒髪に短い一結び、濁った黒い瞳、女性らしい体格をしている。
男性は黒髪のポニーテールに右は青、左は緑のオッドアイの瞳、身体つきにはやや幼さが残る。
「これまた美男美女が二人も揃って......憎たらしいねぇ」
男女の近くから伸びをするような低い声。それは、やけに曲がりくねった木の上にいた。
痩せこけた身体に毛並みの悪い薄汚れた猫。顔も決して可愛いとは言い切れない。
「しかし、まぁ......そろそろ起きてもらおうかな」
例の猫はぴょんと木から降りると、ひとまず男性に雑にダイブし、女性には上に乗った。
それで起きるのが生きている証である。
「うっ...え、重......?」 (結衣)
「なん、痛...は?」 (リリ)
口々に述べた言葉は気にせず、
「やぁ、おはよう...〖アリス〗とその友人君」
何も知らなかったかのように挨拶した。
女性は|足立結衣《あだちゆい》、男性は|空才《そらたか》リリである。
---
ぴょんぴょんと踊り舞うキノコの跳び跳ねる小道を二人の男女が進んでいる。
赤いカチューシャを着けた黒髪の長髪に黒い瞳、黒スーツを着た華奢な身体つきの女性。
|寒色《アッシュグレイ》の爽やかなショート、|鈍色《にびいろ》...濃い灰色の真顔に死んだような瞳を貼りつけたすらりとした体格の男性。
|神来社凪《からいとなぎ》、|濱田光流《はまだみつる》である。
「おっと、その先はまだ行っちゃダメだよ」
不意に二人の後ろから大きくよく通る声が響く。
振り返れば、艶やかで美しい毛並みにふっくらとした身体つきの小綺麗な猫。顔はまぁ、中くらいの可愛さ。
「どうして、行ってはいけないの?」 (凪)
ふと、神来社凪、女性が訊く。それに勿論応えるのは猫。
「その先はまだダメと俺が今、決めたからさ」
「理由になってないわ」 (凪)
「じゃあ、そこの男が行きたくなさそうだったから」
「何も言ってないし、行きたくないと思ってない」 (光流)
三人、二人と一匹の会話が続く。
「そもそも、貴方は誰なの?」 (凪)
「〖アリス〗、君はもう知ってるはずだ」
「知らないわよ」 (凪)
堂々とした猫の言葉に凪が問うても意味がないと気づいたのか、光流が訊いた。
「じゃあ、僕は知らないから、教えられるよね?」 (光流)
「ふぅむ...確かに。俺はチャシャ猫だよ、あんたら白兎を見なかったかい?」
「いいや?気づいたらここにいて、この子と歩いてたんだよ」 (光流)
「へぇ、じゃあ白兎はあちら側に行ってしまったのか。困ったねぇ」
チャシャ猫は尻尾をぴんと立てて、くるくると回った後止まった。
「そうだな、じゃあこうしよう。あんたらはあの跳び跳ねキノコの生えた小道に行くんだ」
「その先に、何があるの?」 (凪)
「変な蛙たちが合唱してる、うるさ~い合唱隊の練習場さ」
〖聞き上手〗
「やぁ、おはよう」
「おはようございま......じゃなくて!」 (結衣)
曲がりくねった木々の森で女性の声が木霊する。
その声を聞いてか森の木々は太く青々とした葉が生えた枝で耳を塞ぐような真似をした。
「凄いですね、まるで人みたい」 (リリ)
感心するような声で言えば、薄汚ならしい猫も誇るかのように紹介する。
「凄いだろう?...彼等は他と違って聞き上手なんだ!植物ってのはお喋りで、自分は根を張って動くことも、動こうともしないくせ、水をくれだの我が儘でありゃしない!
でも、この〖木聞〗は何にも言わずに黙って人の愚痴だろうと自慢話だろうと聞き続けて、栄養にしちまうのさ!いやぁ、僕ならこれをあの子憎たらしい〖女王様〗に差し上げるね!
...ここだけの話、カエルの合唱隊の練習場付近の居酒屋で、あの女王様は話が長くて、心臓が止まるのが先か話が終わるのが先かで賭けができるからやってるそうだよ」
「あ~...私には貴方の話も長いように感じましたよ?」 (結衣)
「気のせいじゃないか?〖アリス〗、君は僕の話を聞いて心臓なんか止まっちゃいないだろうね?」
「止まるわけないじゃないですか」 (結衣)
「だろう?だから、僕の話は......」
「そんなことより、どちら様なんです?人が寝てる上を踏むだなんて...」 (リリ)
「なにさ、年上のくせに...。ま、いいよ、僕は寛大だからね。
僕は〖チャシャ猫〗。こちら側のチャシャ猫。でも、あれだなぁ。あちら側の〖チャシャ猫〗と一緒の名前だなんて!」
チャシャ猫と名乗った猫は尻尾を少し揺らした後、ふと言葉の続きを話す。
「うん、僕は...“ダイナ”だ。やぁ、よろしく。〖アリス〗の友人君」
「空才リリです。友人君って名前じゃない。そして、こちらは足立結衣。アリスじゃない」 (リリ)
「細かいね...じゃ、僕も“ダイナ”だ。いいだろう?」
「...分かりました」 (リリ)
それを聞いてチャシャ猫、“ダイナ”は満足そうに尻尾を立てる。
そして、周囲を見渡して言う。
「ところで、賭けに乗ってみるってのは好きかい?」
一度、ダイナの後ろに白兎が通った。
---
跳び跳ねキノコの小道を進んだ先、カエルのゲコゲコという声が聞こえてくる。
それは決して、人の耳には美しい歌声とは程遠く聞こえる。
やがて、そのカエルの声の出所が露になった。
|ああ、ほら、〖アリス〗が来るよ!《ゲコゲコ、ゲコゲコ、ゲコゲコ》
|ああ、ほら、〖アリス〗が来るよ!《ゲコゲコ、ゲコゲコ、ゲコゲコ》
|我等の美しい歌声に誘われて!《ゲコゲコ、ゲコゲコ、ゲコゲコ》
|女王様だって褒め称える!木聞だって口を開く!《ゲコゲコ、ゲコゲコ、ゲコゲコ、ゲコゲコ》
|我等の美しい歌声に心打たれて《ゲコゲコ、ゲコゲコ、ゲコゲコ》
|国中が涙を流す、我等の歌声!《ゲコゲコ、ゲコゲコ、ゲコゲコ》
|ああ、ほら、〖アリス〗が来るよ!《ゲコゲコ、ゲコゲコ、ゲコゲコ》
|ああ、ほら、〖アリス〗が来るよ!《ゲコゲコ、ゲコゲコ、ゲコゲコ》
|我等、カエルの合唱隊!我等、カエルの合唱隊!《ゲコゲコ、ゲコゲコ、ゲコゲコ、ゲコゲコ》
様々な色や形状のカエル達が綺麗に並んでゲコゲコと叫ぶ異様な光景。
その光景に口を挟まないものがいるだろうか。
「なんだ、これは?」 (光流)
「さ、さぁ......ゲコゲコって言ってるだけよね?」 (凪)
例のチャシャ猫はいない。だが、カエルはいる。
呆然と立ち尽くす二人の前に団体の中で一際大きいカエルが歓喜に満ち溢れた声で叫んだ。
「|我等、カエルの合唱《ゲコゲコ、ゲコゲ》...〖アリス〗!〖アリス〗だ!皆、〖アリス〗のお出ましだ!」
その瞬間、他のカエル達も歌うのをやめ、一斉に喋る。
「〖アリス〗!念願の〖アリス〗だ!」
「やっと、皆の歌を聞いてくれるのが帰ってきたな!」
「〖アリス〗よ!隣のは誰?」
「分からないよ、帽子屋に似てるけど!」
「帽子屋はもっとへんちくりんだぞ!」
「馬鹿言え、きっとあの時の〖アリス〗が言ってた好きな人だよ!」
「なわけなイーね!友達じゃなイ?でも、なんか...不思議ネ!」
「おぅい、皆、歌え!我等の美声を...」
「うるっさい!!!!!!!」
そのカエル達を制したのはその中で歌わず指揮をとっていたカエル。
そして、決壊したように、
「黙れ!黙って歌え!練習しろ!女王様に発表するまで、後3日しかないんだ!
ただでさえ、一人が休んでるってのにお前たちはお喋りか!
〖アリス〗がどうした!今は歌だ!女王様に気に入って貰えなかったら、今度こそ、み~んな首を跳ねられちまう!いいのか、晒し首だぞ!?
そら、分かったらさっさと歌え、出来損ないカエル共!!!」
罵声が続く。流石に堪えたのか再び、カエル達が歌い出した。
「また、ゲコゲコ?これは一体何なの?」 (凪)
「分からない。もう少し進んでみる?」 (光流)
「...そうね」 (凪)
その異様な光景を後にして、またキノコの小道を進む。やがて、道の先に一軒の家があった。
その家の近くで掃除をする先ほどより一番小さいであろうカエルがいた。
「ねぇ...貴方は、歌わないのね」 (凪)
「歌?歌ですか?」
「いえ...」 (凪)
「僕ら、さっきまでカエルの合唱を聞いてたんだよ。あれが何か知らない?」 (光流)
「ああ、それなら...この国で一番、一番、歌の下手くそな合唱隊ですよ」
「下手くそ、なの?」 (凪)
「ああ、〖アリス〗達にはゲコゲコとしか聞こえませんよね。実は、私もです」
カエルはふと、目を地面に落としてやがて顔をあげ、決心したように言った。
「...私の聴覚と歌声は人間と同じです。それが、他のカエル達には異質だと聞こえるらしいんです」
「それが、何の関係が?」 (光流)
「それが原因です。ちょっと話があれですから家の中で話しましょうか」
そう言って、二人を家へ招いた。
〖普通の定義〗
一人の男が薄暗い部屋の中で何かの資料を見ている。20代半ばで髪はボサボサだが、精悍な顔立ちをしていた。
男性はふと、|一条《いちじょう》イト、|田村《たむら》ミチルと書かれた名前のある二人の男性と男子の写真を見る。肌や背格好からそこそこの年齢差があるように感じられる二人の男である。
写真を見ていた男性はその資料から名前を探していく内に何を思いたったか携帯電話を触った。
そして、〖鴻ノ池詩音〗と印された人物に電話をかけようとして、手を止め、携帯電話をポケットへ入れた。再び、資料に目を通す。
この男性の名は、|桐山亮《きりやまあきら》。後の捜査担当刑事の一人、男性検事官である。
---
貧相な家の中で、小さなカエルがお茶を淹れる。そして、それを一人の男性が砂糖を大量に入れて呷った。それをやや訝しげに見ながら紅茶を持った手を下げた女性の手が腰に吊られた銃に触れた。
カエルはそのカツンとした金属音に顔をしかめたが、すぐに取り直し、口を開いた。
「さて、どこから話しましょうか」
---
キノコが跳ねない小道を進む男女。その隣にはダイナと名乗る薄汚れた猫がいる。薄汚れた猫は饒舌に話ながら遠くに見えた小屋に楽しげに走っていった。近くからカエルがゲコゲコと鳴くような声が聞こえている。
小屋からは楽しそうな声が聞こえ、奇妙な匂いが漂ってくる。
扉を開けると充満した奇妙な匂いが顔に浴びせかけられる。後ろにいたリリが少し咳き込んだ。
「この匂いは......なんです?」 (結衣)
「アルコール、っぽいですね」 (リリ)
二人の会話にダイナは、尻尾を立てて扉をカリカリと爪を立てる。やがて、結衣を見上げた。
「〖アリス〗、開けてよ。この先なんだ」
扉を開けてあげると、何重にも帽子を重ねた帽子を被る男性に花柄のティーポッドの頭をした細身の貴婦人、コック帽を被った二本足で立つトカゲがいた。匂いはよりいっそう強くなっている。
「おお、〖アリス〗か。ダイナ、賭けの結果はどうだったかね?ほら、あの、女王様の...赤薔薇を黒く塗った三月兎の件だ」
「やぁ、帽子屋。相変わらず帽子が多いね。非常食かい?...あの三月兎がすぐにへたっちゃったよ。心臓は止まってないけど、すぐに気絶したんだ。
女王様の一言目でね。耳が大きくって、普通のと違って音が大きく聞こえるんだろうさ」
「普通?なるほど、兎の普通か!確かに考慮するべきだったな...つまり、今回の賭けは...」
「|私《わたくし》の一人勝ちですわね!」
高らかに貴婦人が笑う。その横でコック帽を被ったトカゲが、
「...じゃあ、また尻尾を料理しなければなりませんねぇ」
少し残念そうに、悲しそうに自身のちょん切れたと思わしき尻尾を触る。尻尾には一部、骨が見えていて周りには赤い肉と血が見える。切ってから、さほど日が経っていないようだ。
「おや、君のご家族の尻尾はダメなのかね?」
「酷いこと言うなぁ、帽子屋さん。僕の家族の尻尾は皆、女王様がお食べになられたじゃないですか。生えてくるまで待って下さいよ」
「ああ、そうだった。失礼した。じゃ、尻尾料理はあと、10、20...1360品待たなきゃいけないわけだ」
「そうなりますね。生えてくるまでの期間でも皆さん賭けるものですから、予約があとを絶ちませんねぇ」
「まぁ、それはそれは......であるなら、リスの尻尾料理にしましょうか?一回きりなのが難点ですけれど」
貴婦人の提案。それを含めて、あまりにも異質な光景に理解しがたい会話。
「...ダイナ、これは一体なんですか?」 (結衣)
「賭けの報酬を話してるんだよ。このままだと、リスの尻尾料理になりそうだね」
「リスの...尻尾、料理......?」 (リリ)
「そう。ふわふわだけど、肉厚が良いんだよ。ま、そんなことは置いておいて、何か頼む?」
ダイナはテーブルに飛び乗って、メニューを口で挟むと二人の側へ持ってきた。
メニューには、『トカゲの尻尾切り逃走ステーキ』『シュワシュワ花の実のサイダー』『バチバチ蜂のハニーパンケーキ』『人面人参のソテーとゴロゴロじゃがいもスープ』『双子卵の茹で花』『あったか~いカカオの滝ココア』といった普通ではない変わった物がある。
ふと、下を見ると黒い触覚の生えた蟻のような小人が注文をとりにきていた。
「...『ココア』で」 (結衣)
「ジブンは、『パンケーキ』一つ」 (リリ)
「僕、温いミルクね。砂糖不使用のやつだよ」
そう伝えると、二人をテーブル席に促して、またテーブルへ飛び乗る。そして、これ幸いと毛繕いを始めた。それと同時に尻尾の切れたトカゲが厨房の奥へ引っ込んだ。
「まぁ、ダイナ。毛繕いをしていらっしゃるの?櫛でも貸しましょうか?」
「良いよ、ティー。猫の舌は、櫛より万能なんだよ」
そう聞いて、ティーと呼ばれた花柄のティーポッド頭の貴婦人は櫛を引っ込めて、リリへと向き直る。
その頭のティーポッドはよく見るとひび割れが酷く、欠片一つ一つ磨かれていて綺麗だが何ともひび割れが気になるものだった。
「あら、貴方、綺麗な瞳だこと。瞳に自然の色がありますわね」
「ああ、どうも...そちらも素敵な頭ですね」 (リリ)
「そうでしょう?そちらの連れの方も綺麗なお顔立ちでいらして...」
「えっ、いや...そんなことはないですよ」 (結衣)
「いいえ。本当に綺麗な...ええ、とっても......綺麗で......」
「......あの......」 (結衣)
「...そうね、とっても良いわね。ねぇ、貴女、今から私の家にいらっしゃらない?少し、モデルをして貰うだけよ」
「モデル、ですか?」 (結衣)
「へぇ、良いんじゃないです?」 (リリ)
「...ティー、〖アリス〗は...」
「ダイナ、これは必要なことよ。それで、〖アリス〗...良いかしら?」
「...私でよろしければ......」 (結衣)
その言葉を聞いて、一瞬ダイナが目を見開いたが誰も気に止めるものはいなかった。
「それなら、この男は私が貰ってもいいかね?」
気に止めるものはいなかったが、口を挟むものはいた。帽子屋である。何重にも重ねた帽子を揺らしてリリへと投げ掛ける。
「はぁ...君ら人気だね」
「顔がいいからでしょうね」 (リリ)
「君...どこぞの王族みたいで鼻につくねぇ」
「褒め言葉として、受け取っておきますね」 (リリ)
一方、帽子屋。
「ふむ、同意ということで...よろしいかな、貴婦人」
「ええ、どうぞ。壊さないようにして下さいね」
「それは君の方だろう」
二人と一人と一匹の会話。話さない一人だけが遠くから聞こえるカエルの声を聞いた。
---
「さて、どこから話しましょうか」
「何の話?」 (光流)
ドバドバと砂糖を入れた紅茶の二杯目を啜りながら光流が聞いた。
「私の、話です。聞いて下さいますか?なんなら、砂糖をもっと持ってきますけれど」
「...どうぞ」 (光流)
カエルが口を開いた。
---
カエルの歌声は、基本ゲコゲコである(この世界観でのみを指す)。他の住民にはそれが歌として聞こえる。それが普通。
しかし、稀にそれから逸脱した才能や他とは違って変わった特徴を持つ者が生まれることがある。例えば、足が極端に大きかったり、何を言っても一つのことに完結したりする。それを含めて“異端者”と呼ぶことがある。
その異端者は数が少ない為、時に迫害や差別を受けることがある。
仮にその異端者が何を受けようが、世間は何の関心も示さない。
ただ、可哀想だの、不便そうだのと言って周りから逸脱した存在であることを強調するのみである。
簡単に言えば、|障害者《異端者》。
それが、
---
「つまり、それが貴女だと?」 (凪)
「お恥ずかしながら、その通りです」
「へぇ。じゃあ、その声で番を見つける時、どうしてるの?」 (光流)
真顔でそんなことを聞く光流にカエルは黙り続けていた。
ただ、恨むように瞳に陰りを帯びて、睨んでいた。
「本気にしないでよ」 (光流)
「...そうですか。...前述の通り、これらが異質な原因そのものなんです」
「......迫害や差別を受けたことがあるんです?」 (凪)
「ええ、まぁ......詳しくはお話できませんが、言えるものなら、前の大会で女王様の怒りを買ったのは私の歌声のせいだと言い続けて、それはもう酷い嫌がらせを受けた後にお休みを出しました」
カエルはそう言い切って、ため息を洩らす。それを聞いてか光流が、
「何の抵抗も無しに言われ続けたの?」 (光流)
「えっ、いや...流石に抵抗はしましたけれど...」
「なら、何で泣き寝入りしてるみたいになってるの?」 (光流)
「...な、何を言っても異端の戯言だと言ってまるで相手にしてくれないんです!」
「?...それで、諦めたのが......」 (光流)
「貴女の落ち度ですよね?」 (凪)
何か美味しいところでも取られたかのように光流が凪を見つめる。それに伴い、凪が光流ににっこりと微笑んで見せる。直後に光流が吐くような仕草をした。
一方、カエルは肩を小さい身体なりに小さく震わせ、口をきつく結び二人の男女を睨む。
そして、おもむろに横にあった包丁スタンドのよく手入れのされた包丁を取り出して、二人に突きつけるが早く、一つの乾いた発砲音が響いた。
光流は何かをする気だったのか、置き場のない浮いた手を見つめていた。
凪の手には、薄く白い煙を立ち上らせる銃器(SIG P224 SAS)が両手で握られている。
その二人の前に胸元にぽっかりと小さな穴の空いたところから赤い血が流れ、身体が軽く痙攣している小さなカエルが無造作に横たわっていた。
刃物は、もう握られていなかった。
〖郷に入れば郷に抗え〗
跳び跳ねキノコの小道を赤い髪にポニーテールをした緑の瞳のモデルのような男性と赤い瞳に赤味がかった黒のぼさついたロン毛を無造作にゴムで縛った小学生高学年くらいの男子が歩いている。
その二人の目の前によく手入れされた艶やかな毛並みにふくよかな体型をした小綺麗な猫が通る。
猫は二人を見て、聞こえないように
「年齢差の激しいコンビだことで」
そう呟いた。そして、
「何か、聞こえなかったか?」 (ミチル)
「さぁ....気のせいじゃないです?」 (イト)
しっかりと耳に入っていた。
---
何十枚とも資料が積み上げられた薄暗い部屋でふと、顔をあげた。
時刻は午前2時をまわっている。窓の外もいつしか闇に包まれて、灯りだけが景色を描いている。
その窓の一つの中にぽっかりと穴の空いた丸い空間ができていた。
吸い寄せられるようにして男性_桐山亮はその空間へ手を入れてみる。その手がぶつかるような感触はない。しっかりとした空洞ができているようだ。
壁に吊られた黒いモノを取って、その空間へ入ったと共に身体が落ちていく不思議な感覚に包まれた。
---
手入れがされ、太陽に照らされ、輝くように咲き誇る薔薇園。その奥にて薔薇に負けんばかりの豪華な装飾をされたお城のような建物。何もかもが美しく彩られていた。
「何があっても、おかしくはない...ですか」 (結衣)
一度、言い聞かせるような結衣の声。
無理もないだろう。ここへ移動する前に飲んだ『あったか~いカカオの滝ココア』。
文字通り、滝のように金属製の支えに支えられた二つのコップを行き来するココアを見たのだから。
余談だが、『バチバチ蜂のハニーパンケーキ』は確かにバチバチと火花の散る花に雷模様の入った蜜蜂が蜂蜜のかかった、ふっくらとしたパンケーキを飛び回るスイーツだった。
それをリリがどう食べたのかは、定かではない。そして、リリが最後に話した帽子屋は「貴婦人の相手は長くなりそうだから」と言って、そこで別れてしまった。さて、話を戻そう。
しかし、結衣の言葉を諭すように、リリが応える。
「おかしくはないだろうけれど、現実的ではないですよ」 (リリ)
「...まぁ...そう、ですよね...」 (結衣)
「現実か否かはどうだって良いけど、本当にティーの誘いにのるつもりかい?」
二人の結論を否定するように薄汚れた猫のダイナがティーと呼ぶ、頭が花柄のティーポッドの貴婦人をやや横目にして見る。
「何か、気にすることでも?」 (リリ)
「...君は、君らは気づかないの?何か、ほら...いやに強調するものがあるじゃない?」
「...君の汚さ?」 (リリ)
「えっ」 (結衣)
「.........君さぁ......冷たいよね」
少し低くめの声に大きい瞳を細めて、尻尾を揺らすダイナにすぐさま結衣が顎を撫でる。その途端、ゴロゴロと鳴いて尻尾が立ったままになった為、気分は良くなったようだ。
その少々気まずい雰囲気を壊すように貴婦人の声がした。
「さぁ、お入りになって」
その貴婦人が指す先には煌びやかな空間が広がっていた。
まず、玄関扉は格式の高い装飾に装飾され、そこから世界の境目のように賛美な空間、椅子、燭台、階段、机、絵画...極めつけは貴婦人の巨大な油絵。全てが閑麗で〖美しさ〗のオンパレードのようだった。
「...これは...!」 (結衣)
「...見事なものですね」 (リリ)
「............」
二人がその空間に入っていく中、ダイナだけがそこから黙ったまま、離れていった。
飾られた絵画の女王やダイヤの兵士、花などの絵の中で白兎の絵だけが笑ったような気がした。
---
二人の前に胸元にぽっかりと小さな穴の空いたところから赤い血が流れ、身体が軽く痙攣している小さなカエルが無造作に横たわっている。
「なに、してるの?」 (光流)
光流が凪に訊いた。
「......刃物...持ってた、から......それで...」 (凪)
「.........」 (光流)
その返答に暫く、静寂が包まれる。
やがて、光流が口を開いた。
「......そう。じゃあ、次はどこに行く?それ、片付けないと、危ないかも、だけど」 (光流)
「別に危なくはないよ?」
光流の声から後ろ手に声がした。
「チャシャ猫?」 (凪)
「そうだよ、〖アリス〗。俺だよ」
「...!...これは...これは、違う!た、ただ...」 (凪)
「ああ、知ってるよ。でも、光流の方が似合ったかもしれないね」
「......かもね~...」 (光流)
「そのカエルさ、時期にその匂い嗅いで“蛇”が来るだろうから、そのままでいいよ」
「蛇...?」 (凪)
「いいから、もう出よう?〖アリス〗、まだ行くところがあるんだ」
そう言って、尻尾を揺らしながら歩くよう促したチャシャ猫に続けて二人が貧相な家を出ていく。
遠くからは仲間の死を知らないカエルの歌声が聞こえてくる。
|ああ、ほら、〖アリス〗が来るよ!《ゲコゲコ、ゲコゲコ、ゲコゲコ》
|ああ、ほら、〖アリス〗が来るよ!《ゲコゲコ、ゲコゲコ、ゲコゲコ》
|我等の美しい歌声に誘われて!《ゲコゲコ、ゲコゲコ、ゲコゲコ》
|女王様だって褒め称える!木聞だって口を開く!《ゲコゲコ、ゲコゲコ、ゲコゲコ、ゲコゲコ》
|我等の美しい歌声に心打たれて《ゲコゲコ、ゲコゲコ、ゲコゲコ》
|国中が涙を流す、我等の歌声!《ゲコゲコ、ゲコゲコ、ゲコゲコ》
|ああ、ほら、〖アリス〗が来るよ!《ゲコゲコ、ゲコゲコ、ゲコゲコ》
|ああ、ほら、〖アリス〗が来るよ!《ゲコゲコ、ゲコゲコ、ゲコゲコ》
|我等、カエルの合唱隊!我等、カエルの合唱隊!《ゲコゲコ、ゲコゲコ、ゲコゲコ、ゲコゲコ》
| 《ズリズリズリ...》| 《ズリズリズリ...》
| 《ズリ、ズリ...》
その跳び跳ねキノコの道の先に真っ暗なペンキを被った細長く巨大なものが向かいから蠢き向かってくる。
見たところ、蛇のようである。
「“蛇”、ね。確かに蛇だね」 (光流)
「そうね...」 (凪)
遠くで蛇が建物を壊すような音がする。蛇が暴れまわっているようだった。
やがて、何かを見つけたのか蛇がそれを、掴み...死んだカエルの身体が宙に舞った。
そして自分の目と鼻の先に来た瞬間、真っ暗な口を大きく開けて飲み込んだ。
その光景を見ながら、二人と一匹は立ち尽くす。
凪の持つ銃器はまだ、暖かった。
〖それぞれの邂逅〗
「なぁ、これ...どこに着くんだ?」 (ミチル)
キノコが跳ねる小道。ミチルの先をぐんぐんと進むイトは何も答えない。
やがて、ゲコゲコと聞こえてくる場所へ近づいていく。そして小さな家が見えてきた辺りでイトは振り返った。
誰もいなかった。
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どこから迷ったのかキノコの跳ねない小道を進むミチル。どんなに呼んでも誰も答えない。
その先に白兎に乗られたボサボサ髪の男性を瞳に捉えた。
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真っ黒な蛇が蠢く。こちらを眼中にもないようにただ、食べ物として認識したものを貪り続ける。
「〖アリス〗、もう行かないと」
チャシャ猫が急かす。
「〖アリス〗...これは必然だ、君はもう知ってるはずだ」
「...ねぇ、あの子が知ってるのは分かったけれど、僕は知らないよ?」 (光流)
チャシャ猫の言葉に光流が二度目の同じことを言うも、その問いは返されることなく
「お前は〖アリス〗じゃない」
低く声で断言するチャシャ猫の言葉が続いた。
よく見れば毛は逆立ち、尻尾は揺れている。機嫌が悪いのだと見て分かる。
「...〖アリス〗、〖アリス〗って...なんなのさ?あの子は別に名前があるよね?」 (光流)
「〖アリス〗だよ。向こうも〖アリス〗だ。〖アリス〗は二人で一つの形だ。
君だって、そうだ。二人で一つの〖アリス〗の友人だ」
「僕は一つで一人だよ。何言ってるの?」 (光流)
「だから...」
一人と一匹の喧騒が蛇を瞳に映す女性の後ろで続く。凪はふと、振り返ってその一人と一匹を見た。
腰を屈めて視線を合わす光流と毛を逆立てるチャシャ猫を見た。
遠くのモデルのような顔立ちをした男性を見た。
「...あれ、誰かしら」 (凪)
そう呟いた時から、言い争う二人がそれを見るのに時間はかからなかった。
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これまた優雅な客室へ誘導される。何もかもが美しく彩られ、飾られている。
まるでそれを強調するような作りだが、部屋に入った女性は負けず劣らず、馴染み切っている。
「その座椅子にお座りになって下さいな」
ひび割れの目立つ花柄のティーポッド頭の貴婦人が座るように促した。
「失礼します」 (結衣)
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「...何故?...は、分かりきってますね...」 (リリ)
優雅な客室から出た廊下に壁へ背をもたれるリリが虚空へ呟く。少し下を向き、かりかりとした音でふと顔をあげる。その顔は、やはり少々馴染めていない。馴染めていないというよりは、その顔が大きく周りが掠れて見えていた。
かりかりとした音は爪を窓に引っ掻く音のようで、音の主は間違えるはずもない薄汚れた猫のダイナがいた。
「...ダイナ?何してるんですか?」 (リリ)
窓を開け、顔が反射するほど磨かれた廊下にダイナが足を入れた。
「ティーはいないだろうね?」
「いませんけれど...玄関から入ってこなかったんですか?」 (リリ)
「僕がここへ正面から入ってみなよ、後で摘まみ出されるだけさ」
「...そりゃあ、どうして?」 (リリ)
「君さ、まだ分からないの?」
「...いえ、結衣が気づいているかは不明ですが...うっすらとは分かります」 (リリ)
「......ふぅん」
その言葉にダイナは背伸びをして、仕草だけは優雅に訊き返す。
「じゃあ、言ってみなよ。間違ってたら教えてあげる、ティーはこの廊下にいないから」
「...〖美しさ〗を強調している...のでは?」 (リリ)
「大正解...と言いたいけど、執着してるの方がいいかもね」
「なるほど...」 (リリ)
「正解が分かった君に教えてあげるよ。
ティー...貴婦人は〖完璧な美しさ〗を好む。周りが掠れて見えるほどの美人より、周りと馴染んで周りを武器にしてしまう美人を好む。
しかし、その美人でさえも脆かったりすると...作品としては成立しにくい為、再構築することがある。
それを聞いて、君はどう思う?」
「話が長いと...」 (リリ)
「............」
「いえ、とにかく危険なことは分かりました」 (リリ)
「そうだね。じゃあ、頑張ってね」
ダイナが尻尾をピンと立てて、リリの足元にすり寄った。
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「う~ん、俺も知らないなぁ」
チャシャ猫が遠くの人を見て、結論出した。
「嘘でしょう?てっきり、何でも知ってるものだと...」 (凪)
「俺は博識屋じゃないよ、〖アリス〗」
「だから、〖アリス〗って...」 (光流)
なんなんだ、と言おうとしたところで、その遠くの人が息を大きく吸い込むように口を開いた。
赤髪にポニーテールをした緑の瞳にモデルのような顔立ちが特徴的な男性だった。