私は東京の秘密を知っている
編集者:空欄
私、音無 表(おとなし おもて)は、東京の秘密を知っている_____
ある日、商店街の時計台が
“逆向きに動いている”ことに表だけが気づく。
カチ、カチ、カチ。
でも大人は誰も気づかない。
友達も「気のせい」と笑う。
その日から、
表には“消えかけているもの”が見えるようになる。
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目次
始まり・自己紹介
私、音無 表。東京の秘密を知っているの____________
ある日、商店街の時計台が
“逆向きに動いている”ことに表だけが気づく。
カチ、カチ、カチ。
でも大人は誰も気づかない。
友達も「気のせい」と笑う。
その日から、
表には“消えかけているもの”が見えるようになる。
自己紹介
|音無 表《おとなし おもて》
女
月夜小学生5年生 寮生
ある日から、消えかけているものが見えるようになる。
|音無 沙月《おとなし さつき》
女 16歳 彼氏持ち
月夜高校1年生 寮生
表の従姉。表のloveでとても可愛いがってる。消えかけてるものは見えてるようで…
|片原 京《かたはら きょう》先生
女 31歳 独身
表の保護者的な人。表に何か隠してるようで…
|雁弥 裕也《かりび ゆうや》さん
男 46歳 妻持ち
表の校内の掃除バイトの提案者でバイトの店長(?)優しい。
=あらすじ(?)=
表の両親は、表が6才の時に謎の死を遂げた。
表は、両親が死んでから、幼・小・中・高・大が一貫の学校、|都立聖東京月夜学校《とりつせいとうきょうつきよがっこう》略して月学の寮で暮らしている。生活費は、両親の遺産(10億)から、節約しながら使っている。校内の掃除バイト(月20万)もしている。電気ガス水道は、寮が払ってくれて、寮の利用費が一ヶ月で5000円。そして、食堂もある。兎に角、めっちゃいい生活をしてる。
こんな感じです。設定がばがばだけどよろしくね!
次回、一話目突入!
私は東京の秘密を知っている 一話
ある日、商店街の時計台が
“逆向きに動いている”ことに表だけが気づく。
カチ、カチ、カチ。
でも大人は誰も気づかない。
友達も「気のせい」と笑う。
その日から、
表には“消えかけているもの”が見えるようになる。
閉店予定の銭湯の湯気が、少しだけ薄い___
取り壊し予定のアパートの窓が、透けている____
それは幽霊じゃない。
「忘れられそうになっているもの。」
音無 表は、毎朝同じ道を通って散歩に行く。
パン屋の前を通り、八百屋の角を曲がり、古い商店街を抜ける。
その日も、いつもと同じだった。
——はずだった。
商店街のまんなかにある時計台が、目に入ったとき、表は立ち止まった。
カチ、カチ、カチ。
針が動いている。
でも、どこかおかしい。
秒針が、左へ進んでいる。
戻っている。
時間を巻き戻すみたいに。
表は目をこすった。もう一度見る。
やっぱり、逆だ。
「……」
周りの人たちは、誰も気にしていない。
スーツ姿の人も、買い物かごを下げたおばさんも、時計を見上げることすらしない。
表は胸の奥が、すうっと冷えるのを感じた。
——どうして、気づかないんだろう。
時間を気にしななきゃいけないのに、足が動かない。
カチ、カチ、カチ。
逆向きの音は、なぜか少しだけ小さい。
遠くから聞こえるみたいに、かすれている。
やっとのことで歩き出したけれど、頭の中は時計のことでいっぱいだった。
教室では、クラスメイトが遠足の話で盛り上がっていた。
「ねえ表、聞いてる?」
同じ班の女子が、机をつつく。
「あ……うん」
本当は聞いていなかった。
窓の外に、商店街の時計台が見える。
ここからだと、針の向きはわからない。
でも、表にはわかる気がした。
あの時計は、まだ逆さまだ。
放課後、表はひとりで商店街に戻った。
夕方の光が、シャッターの降りた店を長く照らしている。
時計台の下に立つ。
見上げる。
カチ、カチ、カチ。
——今度は、普通に動いていた。
秒針は右へ進んでいる。
「……え?」
さっきまでの逆さまは、夢だったみたいに消えている。
けれど。
時計の文字盤の端が、ほんの少しだけ白くかすれているのに、表は気づいた。
チョークでなぞったみたいに、うすい白。
そこだけ、時間に置いていかれたみたいだ。
「それ、気づいたの?」
不意に、声がした。
振り向く。
知らないおばあさんが、ベンチに座っている。
いつからいたのかわからない。
「時計のこと」
表は、うなずいた。
「逆に、動いてました」
自分でも信じられない言葉だった。
でもおばあさんは、驚かなかった。
「そう。まだ、完全じゃないのね」
「完全?」
「忘れられるのが」
風が吹いた。
商店街の旗が、ぱたぱた揺れる。
「この街はね、少しずつ忘れられてるの。人の記憶から。地図から。声から」
おばあさんは時計台を見上げた。
「忘れられたものは、最初に時間から消えるの」
表は、胸がぎゅっと縮むのを感じた。
「消えるって……なくなるってことですか」
「そう。誰も思い出さなくなったら、そこには何もなかったことになる」
時計台の白いかすれが、夕陽ににじんだ。
「でも」
表は、思わず言っていた。
「わたし、見ました。ちゃんと」
逆さまの針を。
小さくなった音を。
おばあさんは、ゆっくり笑った。
「それが大事なのよ、音無 表さん」
どうして名前を知っているのか、聞く前に。
「気づく子がいる限り、完全には消えない」
気づく子。
それが、自分?
カチ、カチ、カチ。
今度は、音が少しだけはっきり聞こえた。
表は、その日、はじめてノートを取り出した。
新しいページに書く。
【商店街の時計台。朝、逆向きに動いていた。夕方、白くかすれている】
書いた瞬間、風がやんだ。
時計の白い部分が、ほんの少しだけ、色を取り戻した気がした。
表は、ノートを閉じる。
胸の奥で、なにかが静かに決まった。
——わたしは、見たことを忘れない。
それが、音無 表の、最初の戦いだった。
次に異変に気づいたのは、三日後だった。
商店街のはずれにある古い銭湯——「夕焼け湯」。
表は、学校の帰りに沙月とよく通っていた。
煙突は少し曲がっていて、壁の富士山は色あせている。
けれど、湯船はいつも熱くて、番台のおじいさんは必ず「今日は冷えるね」と言う。
その夕焼け湯の煙突が、薄くなっていた。
空に溶けるみたいに。
立ち止まって見上げる。
煙は出ている。けれど、音がしない。
本来なら、ぼこぼこと湯をわかす音がするはずなのに。
——静かすぎる。
表はランドセルを背負ったまま、引き戸を開けた。
からん、と鈴が鳴る。
番台には、いつものおじいさんが座っている。
「こんにちは」
「ああ、表ちゃん」
ちゃんと、いる。
けれど——
番台の後ろの壁が、少し白い。
ポスターの端が、ぼやけている。
「今日、お湯……音、してますか」
表は思いきって聞いた。
「音? してるよ、いつも通り」
おじいさんは笑う。
「耳が遠くなったのはわしのほうだ」
脱衣所に入る。
木の床は軋むはずなのに、足音が軽い。
浴室の扉を開ける。
湯気はある。
水面も揺れている。
でも。
やっぱり、湯をわかす音がない。
しん、としている。
お湯のない銭湯みたいに。
胸がざわつく。
——ここも、消えかけている。
家に帰ると、表はすぐノートを開いた。
【朝日湯。煙突が薄い。湯の音が聞こえない】
ペン先が少し震える。
書き終えた瞬間、窓の外で遠くの車の音が響いた。
現実に引き戻されるみたいに。
食堂で夕食のとき、従姉の沙月がぽつりと言った。
「夕焼け湯、今月で閉めるらしいよ」
箸が止まる。
「どうして」
「利用者が減ったんだってさ。みんな家のお風呂で済ませちゃうからね」
閉める。
その言葉が、ノートの文字と重なる。
夜、表は布団の中で目を開けていた。
もし誰も行かなくなったら。
もし誰も思い出さなくなったら。
夕焼け湯は、白くなって、消えてしまう?
——忘れられたものは、時間から消える。
あの時計台のベンチにいたおばあさんの声がよみがえる。
翌日。
表は学校帰りに、従姉の沙月に声をかけた。
「ねえ、今日、銭湯行かない?」
「え? なんで急に?」
「ちょっと……あったまりたいなって」
嘘じゃない。
本当の理由は言えないだけだ。
沙月は少し考えてから笑った。
「いいよ。うち、今日は、ゆっくりするつもりだったし。」
夕方、ふたりで夕焼け湯ののれんをくぐる。
からん、と鈴が鳴る。
番台のおじいさんが、目を丸くした。
「おや、若いお客さんだ」
脱衣所で沙月が言う。
「なんかさ、ここ落ち着くね」
「うん」
浴室の扉を開ける。
湯気が立ちのぼる。
——ぼこ、ぼこ。
表は立ち止まった。
聞こえる。
小さいけれど、確かに。
湯をわかす音。
白かった壁の端が、ほんの少しだけ色を取り戻している。
沙月は気づかない。
でもいい。
湯船につかりながら、沙月が言う。
「なくなっちゃうの、もったいないよね」
「うん」
その言葉が、湯気の中であたたかく広がる。
帰り道。
煙突は、昨日より少し濃く見えた。
表は、夜、ノートを開く。
【夕焼け湯。まだ消えていない。音が戻った】
ペンを置く。
——やるしかない。
戦いは、大きくない。
でも確かに、街は少しだけ、鳴った。
__________________________________________________________________________________
「ふふっ…うまくいってよかった。」
「…ほんとね。これからも頑張って誘導してもらうわよ。―沙月」
次回、2話目!
私は、東京の秘密を知っている 二話
週末、表はひとりで下町を歩いていた。
目的は、散歩でもよく目にしていた、古いアパートだ。
壁はかびくさい色に変わり、階段はぎしぎしと音を立てる。
住人はほとんど引っ越して、空き部屋ばかりになっていた。
表は、アパートの前で立ち止まった。
——薄い。壁が、透けている。
角をのぞくと、階段の一段一段が空に溶けるように白く光っていた。
通り過ぎる人たちは気にも留めない。
でも表には見える。
透ける階段の向こうで、子どもたちの声がかすかに聞こえる。
「おーい、こっちだよ!」
「待ってー!」
幽霊でも怪物でもない。
——誰かが、遊んでいた音だ。
表はノートを取り出す。
【アパート。階段が透けている。子どもの声が聞こえる】
ふと、耳を澄ますと、ひとりの声だけ、少し悲しそうに聞こえた。
「……さよなら」
その声は、アパートの中で残されていた最後の子どものものだった。
表は息をのみ、階段をゆっくり上がった。
途中で、風に乗って古い紙くずが舞う。
紙には、落書きや名前が書かれている。
——ここには、人の思い出が積もっていた。
表は心の中で決めた。
——消させない。
アパートの最上階に着くと、窓の外が白く光っていた。
思わず手を伸ばすと、風が頬をなでる。
その感触が、街と時間をつなぐ糸のように感じられた。
帰り道、表はふと思った。
——時計台も、銭湯も、アパートも、消えかけていた。
でも、自分が気づいて、声にして、記録すれば、少しずつ取り戻せる。
その日、表は初めて笑った。
——小さな戦いは、確かに意味がある。
夜、布団の中でノートを開く。
【アパート。透ける階段、最後の子どもの声。白くならずに残った】
ページを閉じると、窓の外で風鈴の音がかすかに鳴った。
遠くの街の音が、少しだけ、戻ってきた気がした。
次の土曜日、表はいつものようにノートを持って商店街を歩いていた。
目的は、最近気になっていた小さな路地だ。
路地は、地図にもほとんど載っていないほど短く、いつも人通りもまばらだった。
でも表には、そこに異変があることがわかっていた。
歩いていくと、路地の入り口に立つ小さな看板が、半分だけ消えていた。
文字は白くぼやけ、「〇〇通り」と書かれていたはずの部分が消えている。
——消えかけている。
路地に足を踏み入れると、周囲の空気が変わった。
音が、極端に少ない。
遠くの車の音も、人の話し声も、かすかにしか聞こえない。
表は息をひそめ、ノートを開いた。
【路地。消えかけている。周囲の音も薄い】
歩いていると、ふと、古いアパートの扉がわずかに開いているのに気づいた。
誰も住んでいないはずなのに。
——誰かいる?
恐る恐る扉をのぞくと、小さな影が、ふわりとこちらを見た。
「……」
その子は、透けたような服を着ていた。
髪の毛も、肌も、少し光を通しているように見える。
でも目だけははっきりしていた。
「あなた……誰?」
表が声をかけると、影の子は小さくうなずき、消えそうな声で答えた。
「……ここにいたんだよ。ずっと……」
表はノートに書き始めた。
【路地の住人——記憶から消えかけた子ども】
影の子は、路地の音や笑い声、階段のきしみを、全部覚えているらしい。
でも、誰も思い出してくれないために、少しずつ消えかかっているという。
表は、息をのんだ。
——この街のほころびは、思ったより大きい。
路地の奥に進むと、壁や看板も半透明になり、まるで街全体が薄紙に包まれているように見えた。
忘れられた場所は、確かに存在しているのに、だれの目にも見えなくなりつつあった。
表はそっと、影の子の手を握った。
小さく震える手を、ノートに書きながら、自分に言い聞かせる。
——私は見たことを忘れない。
——だから、この街を守れる。
路地を抜けると、夕陽が長く商店街を照らしていた。
風が、遠くの銭湯やアパートの音をかすかに運んでくる。
表はノートを閉じた。
——街のほころびは、確かにある。
——でも、ひとりじゃない。
小さな戦いは、まだ始まったばかりだった。
ある朝、学校に行く途中、表はふと街の風景が変わっていることに気づいた。
いつもは賑やかな八百屋の角も、通りを行き交う人も、今日はどこか静かだ。
耳を澄ますと、風の音と自転車のベルだけがかすかに聞こえる。
——あれ、なんだろう。
商店街を抜けて、古いアパートのほうに向かうと、さらに異変が大きくなっていた。
アパートの壁は、昨日よりさらに白く、透けて見える階段も半分消えかかっている。
路地の角の小さな店も、シャッターが半開きのまま、音も光も失っていた。
表は立ち止まった。
胸の奥がぎゅっと締めつけられる。
——街全体が、少しずつ消えていっている。
慌ててノートを開き、見える限りの変化を書き込む。
文字にするたび、少しだけ街の白さが薄れていく気がした。
その時だった。
「……また、見えるのかい?」
背後から声がした。
振り向くと、あの商店街のベンチにいたおばあさんが立っていた。
「はい……。街が、消えそうです」
おばあさんはうなずき、手元の杖をトントンと地面に打ちつける。
杖先から小さな光が街に飛んでいき、半透明の建物や看板に触れるたび、かすかに色が戻る。
「これが、あなたの力よ、音無 表さん。気づいた者だけに見える。そして、記録できる者だけに、街を守る力がある」
表は息をのむ。
——力。
でも、自分ひとりで本当に街を守れるのだろうか。
考えながら歩くと、消えかけた路地の奥に、昨日見た影の子が立っていた。
透明に近いけれど、はっきりと存在を主張している。
「手伝ってくれる?」
表が小さな声で聞くと、子どもはうなずき、にっこり笑った。
その瞬間、風が吹き抜ける。
遠くの銭湯の湯気、アパートの階段の軋み、かすかな時計台の音が、わずかに戻ってくる。
——街は、生きている。
帰り道、表はノートを胸に抱きしめた。
——ひとりじゃない。
——少しずつでも、取り戻せる。
小さな戦いは、まだ続く。
でも、確かに意味がある戦いだと、表は思った。
私は東京の秘密を知っている 三話
月曜日の放課後、表は学校から商店街へ向かって歩いていた。
いつも通る道が、少し違って見える。
空気が薄く、遠くの車の音も、人の話し声も、かすかにしか届かない。
——やっぱり、街全体に異変が広がっている。
表は息をひそめ、ノートを取り出す。
足元の小さな白い紙くずも、いつの間にか消えかけている。
【通学路の路地。音も色も薄れる】
表は、記録を取りながら街を見回す。
どの店も、どの角も、白くかすれて、まるで忘れられた場所のようだ。
でも、知らない間に、通りの端で沙月が影のように立っている。
声も出さず、表の行動を見守り、安全な方向へとさりげなく導いている。
表は気づかない。
全て、自分の判断だと思って街を巡る。
古いアパートの前に来ると、透けた階段の上に昨日の影の子が立っていた。
表は微笑み、階段を上がる。
影の子は手を振り、表の後をついてくる。
——異変が広がっているのに、少しずつ取り戻せる。
そのとき、裏の通りから風が吹き、消えかけた看板やポスターがわずかに揺れた。
表は立ち止まる。
——あ、直った?
でも、それを助けたのは沙月だった。
通りの陰から微かな手の動きで、街の“戻るべき場所”に微調整をしていたのだ。
表はノートを開き、次々と書き込む。
【アパート。階段と壁の色が少し戻った】
【通りの看板、わずかに濃くなる】
夕陽が街を照らすころ、商店街の白いかすれは少しずつ色を取り戻していた。
でも、表には疲れが見えた。
夜、布団に入ると、表は窓の外の時計台を思い出す。
針は右に進んでいる。
——街は、まだ生きている。
——でも、私は、知らないうちに誰かに導かれている……?
沙月は、その夜も街を影のように見守っていた。
表の戦いを見守り、必要なときだけ導く。
——徹底して、誰にも気づかれずに。
金曜日の午後、表はいつもの商店街を歩いていた。
空気は静まり返り、遠くの車の音も、子どもたちの声もほとんど消えている。
時計台の針は止まったように見え、銭湯やアパートの白い壁は、昨日よりさらにかすれている。
——街全体が、消えかけている……。
表はノートを取り出した。
手が震える。
【商店街。色も音も薄れる。街の半分が白い】
歩くたび、足元のタイルが半透明に溶ける。
道行く人も、表の前から消えかかっている。
——ここまで来るとは思わなかった。
表は立ち止まり、深呼吸する。
——自分ひとりで、街を守らなきゃ。
その瞬間、角の奥で、微かに風が動いた。
扉が軽く揺れる。
——沙月だ。
表は気づかない。
でも沙月は、裏から街の危険を避け、表の行動が最も効果的になるよう導いていた。
通りの半分が白く消えかけた状態で、表は決断する。
「……やるしかない」
ノートを開き、ペンを握る。
今まで記録してきた街の音や色、思い出——全てを書き留める。
白い空白に文字を刻むことで、街の存在を少しずつ戻す作戦だ。
影の子も表の後をついてくる。
手を伸ばせば、半透明の壁や看板が少しずつ色を取り戻す。
沙月は遠くから見守るだけ。
表には全て自分の力だと思わせるため、完全に気づかれない。
商店街を抜け、公園や学校の周りも巡る。
白い空白の中で、表は何度も立ち止まり、息を整えながら文字を書き続けた。
夕陽が街を照らすと、かすれていた部分がわずかに色を取り戻す。
表はノートを閉じる。
——街は、生きている。
——私は、まだ戦える。
沙月はその影から、表の小さな戦いを見守り続けていた。
——知らぬうちに、街は守られている。
翌日、表は朝から街を歩いていた。
いつもの通学路も、商店街も、公園も、色が抜け、音が消えかけている。
時計台は静まり返り、銭湯の湯気も、アパートの階段のきしみも、かすかにしか感じられない。
——ここまで、広がるとは……。
表はノートを取り出す。
手が震える。
——でも、やらなきゃ。
通りの白い空白に文字を書き、記録するたび、わずかに色や音が戻る。
影の子も後ろで見守り、時折手を伸ばして表を助ける。
その時、表の背後に微かな気配。
——沙月だ。
表は気づかない。
でも、沙月は街の裏側から通行の安全を確認し、消えかけた店や看板を微妙に揺らし、表が自然に最も効率よく街を回れるよう導いていた。
表は全て自分の力だと思い込む。
でも、沙月の存在があるから、白い空白の中でも安全に行動できているのだ。
公園に着くと、半透明になったブランコや砂場の遊具が揺れている。
表は深呼吸し、ノートに書き続ける。
文字を書くたび、かすれた色が少しずつ戻る。
——まだ終わらないけど、少しずつ戻せる。
夕陽が街を照らすころ、商店街や路地の白い部分がわずかに色を取り戻した。
表は立ち止まり、息を整えながらノートを取り出す。
夜、窓の外で遠くの時計台の針が微かに動く。
——表には知られず、でも確実に、街は守られている。
土曜日の朝。
表が目にしたのは、ほぼ真っ白になった街だった。
時計台の針も止まり、商店街も路地も、公園も、音も色もほとんど消えている。
——街全体が、白い空白に包まれている……。
表は息を吸い込み、ノートを取り出す。
【街全体。白く、音も色も消えかけ】
歩きながら文字を書き、思い出や色を刻みつける。
影の子が後ろから見守り、手を伸ばして消えかけた部分を少しずつ戻す。
通りの端には、影のように沙月が立っている。
声も出さず、表には気づかれない。
でも沙月の存在が、街全体の微妙なバランスを守っている。
表は全て自分の力で街を取り戻していると思い込む。
だが、裏で沙月が安全や順路を誘導してくれているから、街の白い空白に迷わず立ち向かえる。
商店街、路地、公園、学校。
白くなった場所に文字を書き、思い出を刻むたび、少しずつ色が戻る。
風が通り、消えかけた音や笑い声も、微かに蘇る。
——まだ終わらないけど、戻せる……。
日が傾き、夕陽が街を赤く照らすと、かすれていた部分が色を取り戻し始めた。
街の一部は完全に白から解放され、色と音が戻る。
表はノートを閉じ、深く息をつく。
——街は、生きている。
——私が戦った、これは、私の力だ。
夜、窓の外で微かに時計台の針が動き、遠くの銭湯やアパートの音が戻る。
沙月はその影から、表の戦いを見守り続けていた。
——知らぬうちに、街は守られていた。
表は小さく笑った。
——街を取り戻せた。
そして、誰かに支えられていることにも、いつか気づくだろう。
月曜日の朝。
表が目にしたのは、昨日よりさらに薄くなった街だった。
商店街の看板も、アパートの壁も、空気も色を失いかけ、歩くたびに靴の音も消えていく。
——なぜ、街は消えていくんだろう?
表はノートを取り出し、白くかすれた街の様子を書き込む。
【商店街。半透明。音も色も消えかけ】
影の子が前を歩き、かすれた色を取り戻すように手を伸ばす。
表は全て自分の力でやっていると思い込んでいるが、知らないところで沙月が裏から導いていた。
——どうしてこんなことが起きるのか。
表はふと、街の中で奇妙なことに気づいた。
空にかすかな白い光の筋が走っている。
風に流される雲とは違う、不自然な光の帯。
その光の下にある建物は、より早く色が消えかけている。
——街の消え方に、規則がある?
表は考えながらノートに書き込む。
【光の筋の下。消失のスピード早い】
夕方になり、商店街の角で休んでいると、遠くでおばあさんが立っているのが見えた。
おばあさんの目は静かに街を見つめ、表に気づかれないように何かを操作している。
そして、通りの陰には沙月の姿があり、表が安全に進めるよう微妙に導いていた。
表はまだ、自分の力で街を守っていると思っていた。
でも、街が消えかける原因——白い光の筋、消える場所の規則——を感じ取ったのは、自分だけではない。
沙月も、おばあさんも、影の子も、すべてを把握しているのだ。
夜になり、表はノートを閉じる。
街の色や音は完全には戻っていないが、少しずつ取り戻せた部分もある。
——街の秘密を、少しだけ理解できた気がする。
——でも、この戦いは長く、まだ始まったばかりだ。
窓の外で微かに時計台の音が響き、遠くの銭湯やアパートの軋みが戻る。
沙月は影のように立ち、表の行動を裏で誘導している。
街の消失の秘密を知る者として、表を守るためだけに動く。
——街の白い空白は、まだ完全には消えていない。
そして、表の戦いは、これからが本番だ。
私は東京の秘密を知っている 四話
昼休み、表は寮に戻り、校内の掃除バイトの準備をする。
優しい店長、雁弥 裕也さんが手招きしてくれた。
「表ちゃん、今日は窓の掃除を頼むよ。天気もいいし、外の光が街を照らすからね」
表は頷き、バケツと雑巾を持って外へ出る。
掃除をしながら、光の筋に沿って街を見回す。
——この光の筋と街の白さは関係している気がする……
夕方、商店街を巡ると、白く消えかけた場所が増えていた。
でも、少しずつ戻る部分もある。
表が書き込み、影の子が補助する。
——これで少しずつ、街の秘密に近づいていく。
夜、寮の自室で表はノートを閉じた。
窓の外で微かに時計台の針が動き、遠くの街の音が戻る。
沙月は影のように立ち、表の行動をコッソリ誘導している。
——街はまだ完全には戻らない。
——でも、少しずつ、秘密が見えてきた。
表は小さく笑い、明日も街を見守ることを心に誓った。
火曜日の午後、表は商店街を歩いていた。
昨日よりも白い空白が広がり、通りの色も音も薄れている。
空には昨日見た光の筋が、細く揺れながら街を縦断していた。
——光の筋の下は、消えかけるスピードが早い……
表はノートを取り出し、白くかすれた場所を記録する。
【商店街中央。光の筋下。色が急速に薄れる】
【八百屋、パン屋、時計台周辺も白くかすむ】
影の子が手を伸ばして、少しずつ色や音を戻す。
表は、自分の力で街を守っていると思い込んでいる。
でも、沙月は裏で通行の安全を確認し、表が危険地帯に迷い込まないよう誘導していた。
——ここから先は、危険かもしれない……
表はためらったが、ノートを握りしめて前に進む。
光の筋が交差する場所、消えかけた公園の奥、古いアパートの裏路地。
色も音も消えかけたその場所は、街の秘密に近い匂いがした。
そこに差し掛かると、空気が冷たくなり、視界も少しぼやける。
——本当に、街が消えかけている……
影の子が近くで手を動かし、色と音を少し戻す。
表は気づかず、ひたすらノートに書き込む。
【古いアパート裏路地。光の筋交差。色が半透明】
【公園奥。砂場とブランコがかすむ】
夕暮れ、商店街に戻る途中、表はふと空を見上げる。
光の筋が少しずつ街の色を奪いながら動いているのが見えた。
——あの光の筋、ただの現象じゃない……規則的に動いている?
寮に戻ると、片原 先生が表を見守るように立っていた。
表は気づかないが、先生は少し眉をひそめ、何かを考えている様子だった。
——私の両親の死も、街の秘密も、きっと誰かが知っている……
夜、窓の外で時計台の針が静かに進み、街の音がわずかに戻る。
沙月は影から、表が危険地帯を通るたび安全を確認していた。
——表には気づかせない。
でも、街を守るために、今日も裏で導く。
水曜日の午後、表は街を歩きながら光の筋を見上げていた。
細く揺れる白い光は、昨日よりも複雑に交差している。
街の色も音も、光の筋が通る場所ほど早く消えかけている。
——規則がある……
表はノートを取り出す。
光の筋の動き、消える速度、場所ごとの色の薄れ方をひたすら書き込む。
【商店街中央。光の筋交差。消失スピード最速】
【公園奥。光の筋端。色と音が半透明】
【古いアパート裏路地。交差点近く。半透明】
影の子が近づき、かすれた色を少し戻す。
表は、自分の力で街を守っていると思い込む。
でも、沙月は裏側から表の動線を微調整し、安全に危険地帯を回らせていた。
——でも、どこから手をつけるべきか……
商店街の交差点に立つと、光の筋が重なり合い、白くかすれた範囲が広がっている。
表はノートに書き込む手を止め、深く息をつく。
——ここを通らなきゃ、街は戻らない……でも危険……
その瞬間、片原 先生が遠くから表を見つめているのが目に入った。
——先生も何か知っているのかもしれない……
夕方、表は決意する。
ノートを握り、影の子の補助を受けながら、光の筋が最も複雑に交差する地点へ向かう。
白くかすれた街の中、少しずつ色と音を取り戻す。
歩くたび、街の色が戻り、風が通り、音も少しずつ蘇る。
表は、街の秘密の一端に触れた気がした。
——私の両親のことも、関係している……?
夜、寮に戻ると、窓の外で微かに時計台の針が動き、街の音がわずかに戻る。
でも平和な夜はまだまだ先かもしれない。
土曜日の朝、表は月学の寮を出て、商店街へ向かっていた。
街はまだ白くかすれ、光の筋が空を走っている。
昨日よりも、光の筋がより規則的に動いているのが見えた。
——この光の筋……
——ただ消すだけじゃなくて、何かを狙っている……
表はノートを開き、光の筋の動きや消失のスピード、交差する地点を丹念に書き込む。
【市役所。光の筋交差。色がほぼ消失】
【古い本屋。半透明】
【遊園地後奥。観覧車がかすむ】
影の子が手を伸ばして、色と音を少し戻す。
表は全て自分の力だと思い込む。
でも、沙月は裏で、表が危険地帯に迷い込まないよう、微妙に誘導していた。
歩きながら、表はふと思った。
——光の筋の動きには法則がある。
——消える場所、残る場所、速さ……全部、計算されている……
そのとき、遠くの建物の屋上に、片原 京先生の姿が見えた。
表には気づかれないよう、先生は何かを調整している。
——……先生も、知っている?
夕方、商店街の交差点に立ち、表は決意した。
——光の筋の規則を理解したから、戦い方を変えよう。
——ただ追いかけるだけじゃなく、優先順位を決めて、街を守るんだ。
影の子がそっと手を動かし、かすれた色を補助する。
沙月は影のように後ろから表を誘導し、安全な行動を確保する。
表はノートに次の行動計画を書き込み、深呼吸した。
——街を守るための、新しい作戦。
——これで、少しずつ光の筋の核心に迫れるはず。
窓の外で時計台の針が静かに進む。
日曜日の午前、表は商店街の交差点に立った。
光の筋が空を走り、街全体の色や音を奪おうとしている。
昨日までの単純な追跡とは違い、表は新しい作戦を立てていた。
——まず、色や音が最も消えやすい場所から優先的に守る。
——そして、危険な交差点は影の子の補助と沙月の誘導で通る。
表はノートを握りしめ、ひたすら書き込みながら街を巡る。
【古いアパート裏路地。最優先】
【公園奥。砂場とブランコ。次に守る】
【商店街中央。交差点。最後の決戦ポイント】
影の子が手を伸ばし、色と音を少しずつ戻す。
表は全て自分の力だと思っているが、沙月は通りの裏から微妙に誘導している。
最初に古いアパート裏路地へ向かうと、白くかすれた壁や看板が急速に色を失いかけていた。
表はノートに書き込み、影の子が補助することで、少しずつ色と音を回復。
次に公園奥へ。砂場もブランコも白くかすみ、音も消えかけている。
表は慎重に書き込みながら進む。影の子が微かに補助し、沙月が裏で危険を回避させる。
最後に商店街中央の交差点。光の筋が交差し、最も危険な場所。
表は深く息を吸い、一歩ずつ進む。
——ここを守れば、街全体の回復に繋がる……!
足元の色が戻り、建物や看板が少しずつ鮮やかさを取り戻す。
風が通り、遠くの時計台の音や人の声も戻り始める。
表はノートを閉じ、少し息をつく。
——街は……生きている!
夜、寮に戻ると、沙月が影から見守っているのがわずかに見えた。
表は微笑み、明日も街を守る覚悟を胸に刻んだ。
私は東京の秘密を知っている 五話
日曜日の夕方、表は商店街の中心に立っていた。
光の筋はまだ空を走っているが、街全体の色や音はほとんど戻っていた。
建物も看板も道も、昨日より鮮やかに蘇っている。
——やっと……街が戻りかけている……
表はノートを取り出し、光の筋の軌跡や街の変化を最後まで書き込む。
【商店街中央。色・音ほぼ回復】
【公園奥。砂場とブランコ。回復済み】
【古いアパート裏路地。完全回復】
影の子が手を伸ばし、最後に残ったかすれた部分を補助する。
表は全て自分の力だと思っているが、沙月は裏から最後の調整をしていた。
——光の筋……ただ街を消すだけじゃない。
——街の規則的な色と音の流れを乱している……
そのとき、片原 京先生がゆっくりと歩いて表の前に現れた。
先生の瞳には、何かを伝えたいような光があった。
「表……街が戻ったけれど、まだ全てが安全ではないわ」
先生の声は静かだが、力強さを感じる。
——先生も、街と両親の秘密を知っている……
表は深く頷き、街を見渡す。
——街は戻った……でも、この光の筋や消失の原因を、もっと知る必要がある……
夕陽が街を黄金色に染め、風が通り、時計台の音も響く。
沙月は影から表を見守り、今日も裏で安全を確保していた。
表はノートを閉じ、明日からの新しい作戦を考える。
——街を守る戦いは、まだ続く。
——でも、少しずつ、光の筋の正体に迫れるはずだ。
月曜日の朝、表は寮の窓から街を見下ろしていた。
光の筋はまだ空に走っているが、街全体の色と音はほぼ戻っている。
しかし、表には違和感があった。
——あの光の筋……ただの現象じゃない。
——何か、誰かが操作している……?
そのとき、片原先生が表の部屋のドアをノックした。
「表、少し話があるの」
先生の声には、いつもより強い真剣さがあった。
廊下で二人きりになり、先生は静かに語り始めた。
「表……あなたの両親が亡くなったとき、街の異変と関係があったの」
表は息を呑む。
「光の筋……あれは街を消す力ではなく、街の記憶を整えるために動いているの。あなたの両親も、その研究に関わっていたのよ」
——両親……街の力と関わっていた……?
表の頭の中で、今までの出来事がつながる。
光の筋の規則、消える場所、影の子の動き……
すべて、両親の研究の影響が残っていたのかもしれない。
先生は少し微笑みながら続ける。
「だから、あなたが街を守れるのは、両親の力が少しあなたに残っているからよ」
表はノートを握りしめ、深く息を吸った。
——私……街を守る力を、両親から受け継いでいる……
その瞬間、沙月が影から表を見守り、微かに手を動かす。
——今日も裏で、表の行動を支えている……
表は窓の外に目をやる。光の筋はまだ動いているが、もう恐怖ではなく、解き明かすべき謎に見えた。
——両親の研究……街の力……
——私は、この街を守りながら、その秘密を解き明かす。
街の色と音が完全に戻るわけではないが、表の覚悟は固まった。
——長期の核心に、ようやく一歩近づいたのだ。
火曜日の午後、表はノートを胸に抱え、街を見渡していた。
光の筋はまだ揺れ動くが、街全体の色と音はほぼ戻っている。
——でも、まだ完全には安定していない……
片原先生が表の元にやってきた。
「表……そろそろ、両親の研究のことを本格的に知る時ね」
先生の声は静かだが、覚悟を促すような力強さがあった。
表は深呼吸し、うなずく。
——両親の研究……街の光の筋……
——私が解き明かす……
先生は表を街の古い研究施設へ案内した。
——両親が最後に残した、街の異変に関わる研究の痕跡が眠る場所。
施設の中には、色あせた書類、機械、光を制御する装置の模型が並んでいた。
表は一つずつ確認しながらノートに書き込み、光の筋の動きと照らし合わせる。
——光の筋は、街の記憶を守るためのシステム……
——でも、何かが狂ったから、街が部分的に消えかけた……
影の子が近くで色や音を微かに戻す。
沙月は影から、表が危険な装置や場所に近づかないようコッソリ誘導していた。
表は決意を固める。
——私は、この街を守りながら、両親の研究を完成させる……
——光の筋を理解し、街を完全に安定させるんだ。
施設の窓から見える街は、まだ光の筋に揺れているが、表の視線は確かだ。
——長期編の核心に、ようやく挑む準備が整った。
夜、寮に戻ると、沙月が微かに影から表を見守る。
——表はまだ知らないけれど、今日から本格的に街の秘密に挑むのだ。
表はノートを閉じ、次の一歩に胸を躍らせた。
——街の光も色も、私が守る。
——両親の想いも、一緒に。
水曜日の朝、表は街の中心に立っていた。
光の筋は空を網の目のように走り、街全体の色や音を再び奪おうとしている。
今までの戦いとは違う。今回は、街全体の異変に直接挑む時だ。
——私が……街を守る。両親の想いも一緒に。
表はノートを握りしめ、光の筋の軌跡と街の消失パターンを頭の中で整理する。
影の子が近くで色と音を補助し、沙月は裏から表の行動を微調整して安全を確保。
まず、光の筋が最も集中している商店街中央の交差点に向かう。
建物も看板も、色と音が半透明になり、街全体が揺れている。
——ここを守れば、街全体が安定する……
表は深く息を吸い、一歩ずつ歩きながらノートに書き込む。
光の筋が空で交差し、街の色を奪う速度が速まる。
影の子が手を伸ばし、かすれた色を少しずつ戻す。
表は全力で街を守ろうとするが、光の筋は強く、街の一部はまだ揺れている。
——でも、諦めない……
沙月は影から、必要なときだけ表を微妙に誘導し、危険地帯に入らないよう支える。
表は光の筋の流れを理解し、優先順位をつけて色と音を回復していく。
夕陽が街を赤く染め、風が通り、時計台の針の音が街全体に響く。
街の色が徐々に戻り、消えかけていた人々の声もわずかに戻った。
——やった……街が戻り始めた……!
表はノートを閉じ、深く息をつく。
——でも、まだ終わりじゃない。
——光の筋の正体も、両親の研究も、もっと深く理解しなきゃ……
夜、沙月は影から表を見守り、微かに手を動かす。
——今日も、街は少しずつ守られた。
表は窓の外の光を見つめ、胸を高鳴らせた。
——長期のクライマックスは、これからだ。
私は東京の秘密を知っている 六話
木曜日の朝、表は街の中心を見渡していた。
光の筋はまだ空を走り、街全体の色や音を微かに揺らしている。
しかし、今までと違い、表は光の筋の動きや規則を完全に把握しつつあった。
——これが……光の筋の核心……
表はノートを握りしめ、街の消失パターンと光の筋の交差点を照らし合わせる。
影の子が近くで色と音を少し戻し、沙月は裏から表の行動を微調整する。
片原先生が静かに表の隣に立ち、低い声で告げる。
「表……これが両親の最後の研究の成果よ。街の色と音を守るための……そして光の筋の正体」
——両親の研究……私が理解できる時が来た……
光の筋は、街の記憶を整えるための「調整装置」のように動いていることがわかった。
色や音が消えるのは、装置が街の情報を一時的に整理しているからだった。
表は息を整え、決意する。
——私は、この街を守りながら、両親の研究を完成させる……
商店街中央の交差点に立ち、表はノートに書き込みながら光の筋に沿って歩く。
影の子が補助し、沙月が裏から微調整。
一歩ごとに街の色と音が戻り、建物や看板も鮮やかさを取り戻す。
夕暮れ、街全体が安定し、光の筋もゆっくりと消えていった。
表は深く息をつき、街を見渡す。
——やっと……街は守られた……
——両親の想いも、少しだけ理解できた……
夜、沙月は影から表を見守る。
——今日も街は守られた。
表にはまだ知られないけれど、裏で支える役割は続く。
表は窓の外を見つめ、静かに心に誓った。
——街を守り、両親の研究を完成させる。
——これが、私の役目……
金曜日の朝、月学の寮の窓から表は街を見下ろしていた。
光の筋は完全に消え、街の色と音は安定していた。
人々の声も、子どもたちの笑い声も、道端の花の色も、以前より鮮やかに見える。
——やっと……街は平和になった……
表はノートを開き、光の筋の動きや街の変化、両親の研究について書き残す。
影の子は近くで微かに手を動かし、街の調整を続けていた。
沙月は影から表を見守り、今日も裏で微妙に誘導している。
——表にはまだ秘密だけど、街の安全は私たちが支えている。
校内の掃除バイトにも慣れ、表は街の回復状況を観察しながら日常を過ごす。
片原 京先生は相変わらず優しく見守りつつ、ときどき表に新しい研究のヒントを渡す。
——街も、私の生活も、少しずつ戻ってきた……
窓の外で時計台の針が静かに動き、街の音が風に乗って響く。
表は深く息をつき、微笑んだ。
——でも、戦いはまだ終わっていない……
——光の筋の謎、両親の研究……まだ全部解明したわけじゃない。
それでも、今日の街は守られた。
——沙月も影の子も、私を裏で支えてくれている。
表はノートを閉じ、明日も街を見守る覚悟を胸に刻んだ。
——これが、新しい日常……
春休み前のある日、表は月学の寮でノートを開いていた。
光の筋の事件は落ち着き、街は平和を取り戻している。
しかし、表の心には新しい目標があった。
——両親の研究……まだ全部解明していない。
——もっと深く知るには……
片原 先生が静かに表の隣に座り、封筒を差し出す。
「表……あなたに京都校への留学の話が来たわ。両親の研究をさらに深く学ぶには最適の環境よ」
封筒には京都校の正式な推薦状と学習計画書が入っていた。
京都校は、都立聖東京月夜学校の姉妹校で、研究施設や資料がさらに充実しているという。
——京都……新しい街、新しい環境……
——でも、両親の研究を進めるためには、行くしかない……
沙月は影から表を見守り、微かに微笑む。
——表はまだ知らないけれど、京都でも裏から支えるわ。
影の子もそっと近くで、微かに街の残りの調整を補助する。
——表の力をサポートし続ける。
表は封筒を握りしめ、深呼吸する。
——街も、両親の研究も、そして自分の成長も……
——京都校で、もっと進めるはずだ。
夜、窓の外に広がる東京の街を見下ろしながら、表は決意を固めた。
——よし……行こう。新しい日常と、新しい挑戦へ。
お終い
私は東京の秘密を知っているは、お終いですが、次、「私は京都の秘密を知りに行く」
が続編となります。