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目次
部隊スペードの決闘 第一話
「タバコねぇや」
小さく舌打ちした後、運転席の藤浪さんはそう言った。
「要ります?僕のタバコ」
「宮城くん、何吸ってんだっけ」
「僕メビウス吸ってます」
まずい、この話すると長いぞ。
「メビウス?じゃいいや。そもそもタバコってのは吸ってるやつの人柄が出るんだよ。俺も昔はよくわからん銘柄吸ってたんだが……」
あーあ。
---
忘れもしない、4年前のことだった。僕は大学にも行かず、ただ街を歩き回る生活をしていた。その日その時目に着いた路地をただ歩くだけ。そんな中だった。藤浪さんに会ったのは。その日路地裏へ入ると、前方に男が歩いていた。そいつは太っており、黒いジャージ、いわゆる「ヤンキー」なんて呼ばれるような人種だ。曲がり角を曲がり、完全に表の通りから見えない場所に来た時。
銃声が、目の前でした。それが藤浪さんとの出会いだった。
「こいつは大麻を売り捌いててな。ま、今日持ってるのは適当に雑草すりつぶしたやつらしいけどよ」
サプレッサーをつけた拳銃を持つ藤浪さんの顔は、薄笑いを浮かべていた。
「これを見られちゃったらおしまいだ。どうだ、うちで働くってのは」
これが、僕が殺し屋になった始まりだった。
---
「今日飯行くんだが寄るとこがいくつかあるんだ。付き合ってくれるか?」
どうせ買い物だろう。一応聞くか。
「どこ行くんですか?」
「実はな、俺の仕事仲間が随分前に怪我してな。今日退院なんだ。そいつのお迎えと、お前にやるプレゼント買い行くんだよ」
「プレゼントって…いいんですか?」
「何、“仕事道具”買い行くだけだ。そう期待すんじゃねぇ」
僕らは依頼を受けターゲットを殺害する部隊“スペード”の一員だ。その中で必須なのは携帯用の武器。例えばナイフや拳銃など。以前までは藤浪さんのお下がりの拳銃を使っていたが、ガタが来て壊れてしまった。新品の銃を買えるのは、かなり楽しみ。
「まあ、まずは俺のかわいい後輩のお迎えだからな。そろそろ着くかな」
藤浪さんはそう言って笑いながら、タバコの箱を片手でいじっていた。
---
駅に着くと、藤浪さんはその仕事仲間とやらに電話をかけていた。
「もしもし大葉ちゃん?もう着いた。え?そこにいる?どこだよ」
藤浪さんへ近づく女性がいた。髪は短く、先のほうだけ青色に染めている。
「藤浪さぁん!ここここ!!」
「ああいたいた。久しぶり。紹介するよ。今のパートナーの宮城祐輔くんだ。」
顔を見てわかった。彼女は右目に眼帯をしていた。むこう側を想像すると思わず口調が丁寧になる。
「こんにちは、はじめまして…」
「はじめまして、大葉誠です」
そう答えた彼女は「緊張してる?よろしくね」と答え笑った。
部隊スペードの決闘 第二話
前回のあらすじ
小さな殺し屋組織“部隊スペード”に身を置く宮城祐輔は、先輩でありバディである藤浪洋一郎と共に、過去に大怪我を負い入院したかつての藤浪のバディ、大葉誠を駅へ迎えに行った。
車内。藤浪さんは朝から切らしていたニコチンを摂取できて幸せな様子で運転していた。僕は後部座席で大葉さんの話をしていた。
「私はこの前まで本部の警備してたの。むっかしすごいイヤな人がいてさぁ。もうほんとにキモチワルくて…」
なんでこの組織の人はだいたい話が長いのだろうか。それにしてもすごい。本部の警備だからな…
---
部隊スペードは単体で活動してるんじゃなく、“JCIPA”という組織の小さな内部組織だ。アルファベット表記だが創立者は日本人、この国で起こる組織ぐるみの犯罪のことはここが加担していることが多い。その上警察はJCIPAのことを掴んでいない。かっこいい言い方をすれば影の便利屋というところか。本部の住所は僕らなんかに教えられることはない。つまり大葉さんは相当内部の人間の信頼を得ているということだ。
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「2人とも、もうそろそろ着くから降りる準備しろー」
藤浪さんの声で僕らはカバンを持った。そうだ。今から僕はキャリア初の仕事道具の購入だ。
しかし着いた場所は雑居ビルの地下。目の前には分厚いドアと、その前のコーンに「立ち入り禁止 管理者より」とあるだけ。そうすると藤浪さんがおもむろに電話をかけた。
「もしもし優佳ちゃん、今ドアの前だから鍵開けてくれ。頼むよ」
大葉さんが僕に「メリーさんかよ」と笑いながら耳打ちしたが聞こえていたらしく、ゲンコツを喰らった。なぜ僕まで…
ガチャリとドアが開く音がし、僕らは中に入って行った。
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中に入ると1人の女性、カウンターに座りパソコンの画面を見ている。髪は長く茶色がかり、女性にしては背の高い人だった。もう1人は奥におり、紙を読んでいた黒髪の男だった。
「久しぶり!藤浪さんに誠ちゃん!退院したと?大変やったね……そっちは新入り?」
画面から目を背けて、こちらを見ながら言った。
「はじめまして。宮城といいます。よろしくおねがします」
「はじめまして!木村優佳っちゃ!いやー、藤浪さんも二人目の部下かぁ。私も初めて石川と組んだ時、どげんやったっけなぁ。そういえばあん時はまだ大場ちゃんおらんでさ……」
はあ。話が長い人しか入れない組織に入ってしまったのだろうか。パソコンの画面が見えた。麻雀の途中だった。
部隊スペードの決闘 第3話
前回のあらすじ
宮城、藤浪、大葉の三人は木村優佳が経営する武器庫にて銃を購入する
木村さんの止まらぬ話を聞くフリをしながら話を聞いていた僕は棚を見つめながら品定めをしていた。
「これ…かっこいい」
鉛色の銃身にグリップに巻かれている包帯から木材が顔を覗かせている。
「あー、M1911?それね、ここに流れてきた時もう中古やったっちゃんねー。包帯は味があるけん外しとらん。問題なかと思うけど、試し撃ちしてみる?」」
「お願いします!」
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僕と大葉さんは奥の射撃場に案内され、奥で作業していた男、石川から銃の説明を聞いた。
「基本的な使い方はどれも同じです。大葉さんの銃は安全装置が付いていないので取扱には注意を」
大葉さんはトカレフという銃を選んだらしい。なんでもロシア発祥で、暴力団がよく使っている銃だとか。
「なんでまたそんなプロっぽくない…」
「プロっぽくないってなによー。元々これは軍で使われていた銃で、部品をすごく少なくしたから大量生産ができたわけ。でもそれが原因で北朝鮮とか中国から…」
また話が長いモードに入ってしまった。しかもちゃんと聞くとさっき車でも話してたような…
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2人について行こうとした時、優佳ちゃんから声をかけられた。
「藤浪さん、ちょっと残ってくれん?」
「何か話でもあるのかい?」
振り返ると彼女は神妙な面持ちだった。こんな顔を見るのは初めてかもしれない。
「実はね、藤浪さんに会いたいって言いよる人がおるとよ。笹本さんっていう、日犯団の人なんやけど」
「日犯団?」
自分の顔が曇るのがわかった。なんせ日犯団、“日本犯罪対策団体”の連中だ。警察でもないのに日本中の犯罪を防止しているらしい。JCIPAのライバル、というか天敵だ。
「なんで日犯団が?俺に?どんな要件で」
「要件はうちも聞いとらん。私が一緒について行くけん、安心して話聞いてほしか」
優佳ちゃんの顔を見ると拒否するわけにもいかず、俺は了承した。
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「あの5本を早く倒した方が勝ちね。負けた方は今日のお酒代を奢るでどう?」
大葉さんは5mほど先にあるジンジャエールの瓶を指して言った。俺はM1911、大葉さんはトカレフでこれから早撃ち対決をする。石川さんは呆れた様子でストップウォッチを持っている。
「じゃあ、私がスタートと言ったら銃を抜いてください」
まずは俺の番。「スタート」石川が口を開いたと同時に銃を抜く。狙いを定め、五発。まずい、一発外れた。慌てて照準を合わせ、なんとか撃ち終える。
「6秒13です」
だいぶいい方じゃないか。次は大葉さんの番だ。
「よーし、今日はいっぱい呑むぞぉ、今のうちにコンビニでお金おろしてきな?」
よほど自信があるそうだ。
「スタート」
彼女はすぐさま銃を抜くと一番右の端に照準を合わせ、引き金を引いた。すると、右の瓶の破片がドミノ倒しの要領で左側の瓶を倒していく。
「2秒44です」
あっさりと負けてしまった。
「どう?」
いや、どうと言われても。
部隊スペードの決闘 第4話
前回のあらすじ
宮城・藤浪・大葉の三人は武器を購入した。
次の日。
「初めて一緒に仕事するね」
大葉さんはそう言って笑った。今日は藤浪さんが諸事情で来られないとかなんとか。大葉さんの腕前はこの目で見ているけど、昨日初めて会った人との仕事はやっぱり心配だ。
「じゃ、行こうか」
彼女の声色が驚くほど変わった。
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店員に案内された椅子にはもう男が座っていた。
「こんにちは。木村さんに、藤浪洋一郎さんですね」
そう声が掛かったが、警戒しておくべきだと感じる。日犯団は敵対組織だし、優佳ちゃんはどっちの陣営ともつかないスタンスなのだ。
「藤浪です。今日はどういった要件で?」
「藤浪さん、やめてよ」
優佳ちゃんが制止する。ただこっちも何かされるわけにはいかないのだ。
「あなたの所属しているJCIPAですが、トップの浅野弘幸が危篤だそうじゃないですか」
「それが何かしましたか。私たちはあなたたちに同情されたいとはこれっぽっちも思っていない」
「…実は、うちのトップがあなたたちを買収しようとしています。一緒に悪事を働こうと」
初耳である。だがなぜそんなことを俺に?
「藤浪さん、私は日犯団に誇りを持っている。永年のライバルとして立ちはだかってきたあなたたちとグルになり金を手に入れるくらいなら、そんな組織潰した方がマシだ」
確かに、この塚本という男の言うことは一理ある。だが、浅野さんがこの要望に応えるわけがない。
「浅野さんはそんな誘いに乗るような人じゃありま」
「浅野修。浅野弘幸の息子だ。JCIPAの次期トップでもある」
俺が言い終わる前に彼は口を開いた。そうだ。
浅野修。どこまでも金に目がない男で、父のことなどどうとも思っていないという噂を聞いたことがある。彼なら買収の話に乗るかもしれない。
「それで…?」
「さっき私が言ったこと、覚えていますか?この組織を潰した方がマシ。なら、潰しちゃいましょう」
「は!?」
優佳ちゃんと俺は同時に声を漏らした。そんなこと思ったこともない。
「塚本さん、いくらなんでもそれはなかろうもん?」
「わかってます。だから藤浪さんにアドバイスを求めた。どうです?」
「いや…ええ?」
混乱で声が出てこない。
「返事は後でもいいです。次また別の用事があるので私は行きます。」
塚本が席を立ち、入り口に向かう。
「あ、そうだ。藤浪さんの後輩のふたり、狙われてるかもしれないので、お気をつけて。んじゃ」
まずい!!
部隊スペードの決闘 第5話
前回のあらすじ
藤浪は日犯団の塚本からJCIPAが買収されかけていること、宮城と大葉が狙われていることを知る。その頃2人は、任務に向かわされているところだった。
大葉さんは車に乗り込んだ後一言も喋らなかった。退院後初の仕事。かつ先日初めて会った人間と共にである。大葉さんは間違いなく今日の仕事がストレスに感じているだろう。
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「着いたよ。行こうか」
大葉さんが口を開いた。やはり顔は能面のように冷たく、生きた人間の感じがしない。
今日のターゲットはある大企業の社長。僕らは取引先の人間ということで彼と密会する、という設定。ビルは全面閉館らしいが、裏口から入れば僕らは入れる。
僕らはビルに入り、エレベーターに乗り込んだ。
8階のボタンを押す。そこで僕の携帯が鳴った。
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「もしもし宮城くん!今どこ!」
喫茶店を飛び出し、電話をかけた。
「どこって…例のビルのエレベーターですけど」
「今すぐ降りろ!逃げるんだ!」
死んでほしくない。ただでさえ大葉ちゃんの件は自分のミスなのに。また誰かが怪我をする。誰かが死ぬ。
---
エレベーターから降り、とりあえず階段へ向かった。1階へ駆け降りる。大葉さんはこの時も冷たい顔をしていた。
車へ乗り込み、今度はこちらから藤浪さんへ電話を入れる。
「もしもし、もうビルから出て車です。どこに向かえばいいですか?」
「よかった…じゃあとりあえず木村ちゃんのとこへ。気をつけて!」
なぜ藤浪さんはあんなに焦って僕らを止めていたのだろう。考えながら赤信号を待っていると、
「つけてきてる」
大葉さんがそう呟いた。
「へ?」
「つけてきてんの!後ろの車!黄色のあれ!!」
そういうと大葉さんは助手席から運転席へ飛び移って僕の膝へ乗り、猛スピードで右折した。
「ちょっと!どこ行くんですか!?そっちじゃないでしょ!?」
「当たり前でしょ!場所知られるわけにはいかないんだから!」
大葉さんは鬼の顔をしながら運転していた。彼女は黄色い車を撒けるならなんでもいいらしい。
---
撒いてからだいぶ経った後も車はとんでもない速さで走っていたが、ようやく木村さんのところへ着いた。
「すみません、大葉さん」
「なんで謝ってんの、あんたの所為じゃないよ」
大葉さんはそう言って笑ってくれた。今朝の笑顔とは随分と弱々しい笑顔だった。
部隊スペードの決闘 第六話
前回のあらすじ
敵組織である日犯団から狙われていることを知った宮城と大葉。罠の任務から逃げ出した後、木村と石川の武器庫へ着いたのであった。
地下へ行くと藤浪さんはもうそこにいた。
「遅かったじゃないか…まったく…」
今日はこのビルの最上階で一泊するらしい。
そして明日、長野のJCIPA本部へ浅野修に会うと言うことも伝えられた。
「三人とも頑張ってね」
木村さんは笑顔で励ましてくれた。その笑顔には不安が浮き出ていた。
---
「藤浪さん」
大葉ちゃんに名を呼ばれ目が覚めた。
「起きちゃった?タバコ吸いにいこ?」
「ああ」
短い返事をして上着を手に取る。
屋上へ行くと綺麗な三日月が見えた。今こそ彼女に謝るべきだ。
「大葉ちゃん、あの日はごめん」
「なんのこと?」
「俺が、別の部屋を見に行ってて、その間に…」
俺は泣いた。ひどい有様だろう。
「俺が…大葉ちゃんに…ずっとついてたら…目も大丈夫だったのに…」
ようやく怪我の話だと気がついたのだろう。彼女はどう言うだろうか。絶対に許さないと激怒するだろうか。
「怒ってないよ。あれはたまたまだったし。それよりさ、私が今話聞いてるのを喜んだら?」
---
「わかってます。木村さんには伝えてません。…今は…寝てます。ええ…明日、例の三人がJCIPAの方へ襲撃に行くと。…はは、ありがとうございます。それでは」
ようやく電話が終わった。準備は整った。
「石川、誰と話しとったん?」
ショットガンに弾を込める音が、後ろから聞こえた。
次回からグロ描写あるかもしれません。
部隊スペードの決闘 第七話
前回のあらすじ
JCIPAに襲撃をする前夜の三人。ビルの地下では石川が電話をしていた…
聞かれた。どうしよう。俺はもう終わりだ。
「いや…別に」
「言って?」
木村さんは流石に俺は撃てない。隙を見て反撃したい。だが、上にはこの騒動の発端がいる。
「私も、石川を撃ちたくないんよ。だけん、言って?」
その声には1000%の愛があった。
もう言うしかない。
「実は…日犯団に雇われてるんです。僕はもう木村さんを裏切るつもりでした。あなたなんていなくたっていいと。でも、気が変わりました」
木村さんは銃を置いた。
今なら反撃できるとは思わなかった。
「明日、僕と木村さんで、日犯団を襲撃しましょう。あなたに言ってしまったからには、それしか勝ち目がないです」
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翌朝。藤浪さんの声で目覚めた僕はいそいそと支度し、出発する準備を整えた。
もう覚悟は決まっている。
「行くぞ」
僕らはビルを出た。
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長い長いドライブの後、山の上に立つ建物が見えた。以前は総合病院だったらしい。
「あれが本部。みんな顔見知りだから、安心して浅野の部屋までパスできると思う」
正面入り口へ車を停め、僕らは非常階段を使って三階を目指した。
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「ここね」
木村さんと俺は日犯団本部へ入ると最上階を目指した。
「これが終わったら、商売できないですよ。木村さん」
「もうやらんでいい。結構楽しいかったけんね。特に、石川が入ってきた後は」
部隊スペードの決闘 第八話
前回のあらすじ
宮城、大葉、藤浪の三人はJCIPA本部へ、木村石川の二人は日犯団本部へ着いたのだった。
「着いた」
日犯団本部最上階、トップの男の部屋であった。
「開けます。木村さんは準備を」
木村さんが銃を取り出し、小さく頷くのと同時に、俺はドアを開けた。
「…いない?」
部屋には誰もいない。前に見えるのは大きなガラス越しの東京の街並みだけだ。
振り向き、木村さんと顔を見合わせる。その瞬間。
木村さんが、崩れ落ちた。
後ろには銃を構えた男が1人。トップの男である。
「石川くん、裏切ったんだぁ。俺はお前を信用して、金まで用意したのに」
木村さんは小さく呻き声を上げている。彼女はまだ助かるかもしれない。
「木村さん!!」
銃声がして、体にまた弾を撃たれる。
「これくらいしないと…石川くん反省してくんないでしょ?」
嘘だ。こんなの、あんまりだと思う。なぜ?俺のせいだろうか。彼女を裏切ったから?
途端、怒りが湧いてきた。
「…っ」
「なんだよ、なんか言えよつまんねーな」
俺の何かが壊れた。何かが死んだ。
「っ死ねぇぇぇぇ!!!」
男がこちらに銃を構える。構わない。突っ込もう。殺すんだ。
トリガーに男の指に掛かっている。間に合わない。俺は死ぬ。でもいいんだ。死ななきゃならない。
銃声。
トップの男が倒れた。
「遅かったか…」
男の後ろには笹本さんが立っていた。
「石川くん、大丈夫か」
俺は言葉を失った。トップはあっけなく死んだ。俺は何もせず、ただ木村さんを犠牲にして。
「石川くん?」
自分は死ねなかった。木村さんのために。
肩にかすり傷がある。トップの男が撃った弾だ。
「僕は…何もできなかった」
「彼女は、残念だったな」
「僕の責任です。僕は…」
体が窓ガラスへ近づいていく。銃身で叩き割る。
「石川くん、早まるんじゃない」
「お三方に、よろしく」
俺は死ななきゃならない。今は空の上の思い出に近づくために、俺は身を投げた。
部隊スペードの決闘第八話について
第八話を書いたのですが、グロテスクな描写があると判断したためR18のラベルを貼りました。
閲覧する場合はR18作品の表示を設定し、注意してお読みください。
部隊スペードの決闘 最終話
「浅野さんの部屋はここ。行くよ」
藤浪さんが勢いよくドアを開けると、浅野が銃を構えていた。
「まるで、ここに来るのを知ってたみたいじゃないか」
「ああ、もちろんだとも藤浪。内通者がいるんでね」
「言っちゃっていいのかい?」
「ああ。死人に口無しさ」
藤浪さんと浅野のやりとりが続く。でも僕らは発砲できない。
藤浪さんに撃つなと言われているからだ。
「宮城くん、彼にその銃を見せてやれ」
僕は頷き、彼に銃を見せた。
---
「そういえば宮城くん、その銃、包帯が巻かれてたよね」
行きの車内で藤浪さんがそう言った。
「巻かれてますね」
「それ多分、先代の銃だと思う」
そこで初めてこの銃の持ち主を知った。
「ねえ二人とも、これを浅野に見せれば油断するんじゃない?」
この提案をしたのは大葉さんだった。
---
「それは…親父の銃じゃないか!」
「そうだ。これはお前の父親から受け継いだ。『息子を止めてくれ』と言っていた。金に執着して何がいいんだ!父親を貶して、自分が率いてる組織を金で売って、僕らの血を浴びながら贅沢に暮らそうだなんて…もう少し人間らしく生きようとは、思わないのかっ!」
浅野が銃を落とした。今だ。
「藤浪さん!」
藤浪さんが銃を上に掲げ引き金を引いた。入ってきたドアからJCIPAの人間が流れ込んでくる。
浅野はすぐさま銃を拾い上げ、僕に向けて撃った。
その瞬間、大葉さんのトカレフ弾が浅野の手に当たった。
「痛ってぇ!」
標準がずれ、肩を掠めた。
浅野は大勢の組織員に押さえつけられている。
「お前は終わりだ、浅野」
---
「今日は呑みに行くか」
藤浪さんはいつもと変わらぬ声を出した。
「そんな気分じゃないですよ。もう帰って寝ますよ」
「いいじゃーん少しくらい私たちに付き合ってくれたってー」
大葉さんは完全に最初に会った時のテンションだった。
「まあ…一時間くらいなら…」
「よーし、俺らが堅気になった記念だ。ドンと飲もう!」
決闘が終わったことを、夕焼けが教えているようだった。