恋愛感情は、持っちゃだめだ――。
高校生になった主人公・七瀬拓実。
中学生の頃は、『同性愛者』というところで酷い扱いを受けていた。
そんな彼は親しげに話しかけてくれる八木間楓と仲良くなる。
だが、日が経つにつれ、恋愛感情が芽生え始め――。
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目次
把握。
『同性愛者....?ごめん、そういうの、無理....。』
『俺のこと好きになったりすんなよ〜?w』
『は...?俺のことそういう対象で見てたん.....?』
何度も否定されてきた。僕が同性愛者だって言っただけで。
何度も。何度も。
もう、いいや。こんなこと、誰にも知られたくない――。
高校生では、変わるって決めたんだ。
---
入学から約一週間。
クラスメイトの顔もだいたい覚えてきた。
「|七瀬《ななせ》!おはよ!」
「あ、|八木間《やぎま》君。おはようございます。」
僕の隣の席の|八木間楓《やぎまかえで》。クラスの中の一軍――いわゆる陽キャ、というやつだ。
「てか七瀬、そんな敬語使ってて疲れないん?」
「え。」
そんなこと気に掛けてもらったのは初めてだ。
「えっと、僕、昔から敬語を使っておりまして....中々タメ口、?というものが使えないんです...。」
「へぇー。可愛いね。」
「ふぁ!?」
可愛い。そう聞こえた気がする。
「か、かわ....?ぼっ僕は可愛くないですよ....!///」
「あははっ!そういうとこがかわいーじゃん!」
「は、はぁ...?」
この人ならこんな僕でも受け入れてくれるかもしれない――。
そんなことを考えながらお昼までを過ごした。
---
「七瀬っ!」
「うわぁっ!?」
心臓がバクバクする。僕は昔からビビりだ。
「あははっ|吃驚《びっくり》したっしょ!」
「そりゃしますよ、あんな急に話しかけられたら.....。」
八木間君は歯を出して笑っている。いかにも男子高校生という感じだ。
「で、本題なんだけど、一緒にご飯食わん?」
ご飯、という言葉が脳内で再生される。
「ご飯を、一緒に.....!?」
めちゃくちゃ高校生っぽい.....!ずっと誰かとご飯を食べるのに憧れていた。
「だめ?」
「いいえ!!とんでもなく嬉しいです!お|誘《さそ》いありがとうございますっ!!」
最初、八木間君はぽかーんとしていたが、途中から口を抑えながら、
「あははっ!七瀬おもろ!!」
思いっきり笑うその表情を見て、僕の胸の鼓動が速くなった。
(思うと、八木間君ってイケメンじゃん.....。笑ったときの破壊力すご....。)
恋愛対象にだけはしたくない。否定されたとき悲しくなるから。
「はぁー〜.....。....ふへっ。」
何故か面白い。笑いが抑えきれない。
「七瀬が.....笑った!!?」
僕はそんなにずっと仏頂面なのか....?
「僕も人間ですよ!普通に笑いますっ!!」
ごめんごめん、と笑いながら八木間君は言った。
そういえば、笑ったの久しぶりだなぁ.....。
八木間楓。――もっと、仲良くなれると良いな。
新しく始まった高校生活に、僕は久々に胸を弾ませた。
衝撃。
入学からおよそ一ヶ月。もうそろそろクラスメイト全員とも話せるようになった。
|八木間楓《やぎまかえで》、という人物とも、楓君と呼べるような仲になってきた。
|恋愛感情《れんあいかんじょう》を持つことだけは避けようとしている。|折角《せっかく》できた《《友達》》だ。幻滅や絶交はされたくない――。
---
「なーなせっ!」
八木間君――じゃなくて、楓君が僕に話しかけてきた。
「かっ楓君、!えっとどうしたんですか?」
「今週の日曜遊び行かん?」
遊び、遊び......。
「あっ遊び!?」
「あー、もしかして無理だった?」
「い、いえ!!!全然行けますっ!!」
「.....マジ?」
僕は全力で首を縦に動かす。
「良かったぁ〜....。断られたらどうしようかと......。」
「そんなに心配してたの、?」
うん、と楓君は呟く。
「ふ〜、じゃ、今週の日曜の13時に、学校の前待ち合わせで!二人で行くからね?」
二人.....!?やばいじゃんそれ、!
「わ、わかった、!あと連絡先交換してもいいでしょうか.....!」
「ん、俺も言おうとしてた。」
これメアドね、と紙を渡してきた。
「ありがとうございます!!もしなんかあったら連絡してください!」
「おけ。あとさ―――」
--- キーンコーンカーンコーン ---
「あ、授業始まっちゃう。」
「っ――、じゃ、じゃあまたあとで。」
僕はうん、と頷いた。
さっき言い掛けてたのってなんだったんだろう。あとで聞いてみよう。
---
放課後。
「楓君っ!」
「あ、七瀬。どした?」
「えーっと、さっきチャイム鳴ってて言えてなかったことあったじゃないですか。それのこと聞きたくて。」
「あー、うん。あのさ......」
楓君は周りを見渡し人がいないことを確認した。
「こんなこと言うの、七瀬が初めてなんだけど、俺さ....」
--- 《《同性愛者なんだ》》 ---
楓君が――?
「えっ.....。」
頭が真っ白になった。
同時に、僕の心には何故か安心感があったのは、何故だろう―――。