ここでは、皆「普通」の高校生―――
そんな世界が、どこかにあったのなら。
初の学園モノ。
略称はAbhsになると思う。
Abnormal High Schoolを直訳:異常な高校
↑上の通り少し(沙月の少しはかなりの意である)異常な高校の話。
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目次
Abnormal High School ✦001「私立泡沫高校」
初の学園モノ。
異能ってこんな感じでいいのか。
あとこれ作成日6月11日なのに投稿日遅すぎじゃね…?
視点主は透
突然だが、皆にとっての「普通」とはなんだろうか。
例えば統計では、平均とか中央値、あるいは最頻値とかをそう捉える人もいるだろう。
自分自身を基準にして考える人もいるかもしれない。
だが、
俺はその中のどの基準で測っても、
「普通」とは言えない。
俺……|九條透《くじょうとおる》は、超能力者だ、
断じて、厨二病ではない。
実際に、|発火能力《パイロキネシス》と|念能力《サイコキネシス》を使用できる。
だが、そのことは周りに明かしてはいない。
当たり前だ。
いくら現代だからといって、超能力が使えると名乗り出たら見世物になるか実験台になるか…どちらにせよ平和な未来は訪れない。
だから、この能力はほんとにヤバいとき(親友が誘拐されたときとか。あれはヤバかった)くらいにしか使わないことにしている。
話は変わるが、俺は学校に行っていない。
不登校とかではなく、中学校を今卒業したてだからだ。
だが、高校には行こうと思っていない。
小中学校は義務教育だが、高校からは任意。
俺みたいな「普通じゃない」ニンゲンは、あまり人と関わらないで生きていたほうがいい。
そう思っていた。
今日までは。
---
ピンポーン。
家のチャイムが鳴った。
今、家にいるのは俺だけだから、俺が出なきゃいけない。
「はい、今行きまーす」
そう言って家のドアを開ける。
見知らぬ男がいた。
???「あ、こんにち」
透 「○≧□¥≦〒&¶∨≪!!!???」
思わず意味不明な言葉を口走ってしまった。
急に玄関前に知らない男がいて、挨拶をしてきてこういう時の対応はスピード命。
すぐさまドアを閉め、ロックをかける。
燃やしたりサイコキネシスでぶっ飛ばしてもいいのだが、あまり大事にはしたくないからな。
それは最後の手段として、俺はスマホを取り出し、110番に電話をかける。
とりあえず、面倒事は警察に任せるに限る。
しかし、世の中にはどうにもならない事というのもあるようで…
男は当たり前かのようにドアを開けて入ってきた。
透 「○≧□¥≦〒&¶∨≪!!!???」
思わず、スマホを落としそうになった。
いや、まだピッキングとか合鍵で入ってきたならまだわかる。
だが、《《鍵を開ける音はしなかった。》》
鍵を開けずにドアを開けるなど、不可能だ。
つまりこの男は、俺と同じ「普通じゃない」存在。
???「はじめまして、九條透君。僕は|植草鈴人《うえくさすずひと》」
この男、俺の名前を…!?
「はじめまして」って自分で言っているのに、いろいろと矛盾が多すぎる。
でも、敵意はなさそう…
訳が分からない。
もともとわけのわからない能力を持って生まれたが、こんなに訳の分からない状況になったのは初めてだ。
そんな俺の考えを置き去りにして、鈴人…さんは続ける。
鈴人「僕は知っている。君が超能力者なことを。でも安心して、危害を加えるつもりはない」
…!
なんで、それを…!
でも、危害を加えるつもりはない…だと…?
いや、鍵を無視してドアを開けるような奴、明らかに普通ではない。
もしかしたら、この男は俺と同類の、超能力者…?
鈴人「いい線いってるけど、残念だけど違うね。僕は、最高神だよ」
…?
今、なんて…
鈴人「だから、最高神」
そのまま、一分ほど固まってしまった。
だって、目の前にいる普通じゃない男が、自身を最高神だと言っているのだから。
俺はスマホを手に持っているのを思い出し、近場の精神科病院に電話をかける。
透 「あのー、すみません。今俺の目の前にいる男が、自分のことを…」
ガチャッ。
ピーピーピー。
突然、電話が切れた。
鈴人「いや、精神異常者じゃないから…僕の頭は正常だよ?」
…もしかして、電話が切れたのはこの男の仕業…?
鈴人「まあ、突然目の前に現れた知らない男が、そんなことを言い出したら怖いか…でも、君は知っているでしょ?この世には、超常の力があるって」
確かにそうだ。
俺はそれを、身をもって知っている。
鈴人「君のほかにも、この世界にはそんな人達がいっぱいいるんだ。僕は、親としてそれを救いたいと思っている」
親…あ、神だからか。
透 「具体的には…どんな?」
鈴人「君はまだ普通に暮らせてる方だよ。君も想像したかもしれないけど、迫害とか、差別とか、魔女狩りみたいなことが行われてるとこもあるね。とある所では、問答無用で投獄&処刑」
うわあ…
想像したよりもエグい。
鈴人「だから、僕は皆を救いたいわけだ。でも、僕の管轄はこの世界全てだから、全部に気を配っていられるわけじゃない」
最高神さんも、いろいろ忙しいらしい。
世知辛い世の中だな。
それを作ったのが、最高神なんだろうけど。
鈴人「だから、僕は考えた。そして、思ったんだ。学校を開こうと」
透 「…学校?」
鈴人「そうだよ。君みたいな人…アブノーマルな人達を集めて、一つの高校にまとめる。そこでは、僕が担任をするから、見ていられるし。それに、君も相談できる人がいなくて辛かったでしょ?」
確かにそうだ。
俺は、この能力について、話したりできる相手はいなかった…
鈴人「どんなアブノーマルな人でも、その学校じゃ『普通』になれる。そんな|学校《Abnormal High School》を、作りたいと思ったんだ」
なるほど…
言ってることは筋が通る。
透 「でも、そんな皆が高校生なことなんて、あるのか…?鈴人さん」
鈴人「まあ、その辺は神様パワーで何とかするから」
神様パワー…
まあ、最高神も大変だろうしな。
鈴人「今は、人手も足りないし、一学級だけだけど、透君もぜひ来てみないかな」
俺みたいなアブノーマルな人間でも、普通になれる…
透 「わかった。行ってみることにするよ」
鈴人「よかった。何はともあれ、頓挫しなくてよかったよ…」
は?
頓挫?
透 「なあ、鈴人さん…いや、担任になるのか、鈴人先生。『頓挫』って…」
そう指摘すると、鈴人先生は「やべ」という顔をする。
鈴人「…今のところ、学級の人数、透君入れて三人なんだ」
はぁ?
透 「それは、学級じゃねぇ!」
しかし、さすがは最高神、逃げ足も速かった。
彼が去った後、彼のいたところには一冊の冊子が残されていた。
『私立泡沫高校 学校案内冊子 20XX年度』
鍵括弧の前にその人物の名前書くシステム採用したけど、これ三文字以上出たら詰むね。
二文字にそろえて奇麗にしたいんだけど…
みんなどうしてるか教えてほしい。
Abnormal High School ✦002「天使と悪魔」
うーん全然学校じゃなくて笑う。
あれから、泡沫高校の案内を読んだ。
どうやら特に変わったことはなく、学力も普通、全国クラスの強い運動部も特になし。
所謂「普通の高校」だった。
モチベも、まあ最高神に言われたんなら行くか…くらいのもの。
まあ、それが普通なのか。
あ、試験とかないのは普通じゃないかもしれない。
あの|植草鈴人《最高神》さんが来たのが面接判定になってる可能性もあるけど。
---
まあ特に変わったこともなく、普通に入学式の日を迎えた。
思えばこの「普通」にもいろいろな意味が込められてるのかもしれないが、今はこれを論議するのはやめておく。
案内に、学校周辺の簡単なマップもあったしよかった。
朝起きてから簡単に朝食を摂り、案内と筆記用具とか一式を持って外に出る。
家からは歩きで行ける距離で、割と近かった。
まあ案内とか読みながら、歩いていた時。
《《上から、一つの影が下りてきた》》。
そう。上からである。
そして、下りてきたその人物(といえるかは怪しい)は、俺のような見た目普通人外とは違い、明らかに人間ではない見た目をしていた。
まず、頭から二本の角が生えている。
さらに、肩甲骨のあたりに、蝙蝠の羽のような漆黒の翼(俺は中二病じゃない。断じて)がついており、さっき上から下りてきたのは飛んでたのかな、と考える。
いや、飛ぶなよ。
もう一回言う。
飛ぶなよ。
普通に一般人とかもいるんだよ。
見られたら騒ぎになるよ。
俺だってほとんど超能力使ってないのに。
まさかここまで隠す気がないとは。
そして、その人物は話しかけてきた。
いや、あんま関わりたくないんだけど…
???「よう、俺は|城ヶ崎黒夜《じょうがさきこくや》。涼人から聞いたんだが、お前も1ーAの生徒なのか?」
涼人…?
ああ、あの最高神のことか。
ってか、1ーA…?
透 「俺は九條透。確かにあの最高神から泡沫高校?に入学しないかって言われたけど、1ーAってのは…」
そう疑問を口にした時、天使が目の前にいた。
比喩じゃない。
本当に「天使」なのである。
滑らかな金髪に、輝くような青色の眼。だがその頭には、どんな原理で浮いてるのかがわからないあの金色のわっかがある。
黒夜…君とも同じように、肩甲骨のあたりから羽が生えている…ただしこっちは純白の翼で、形状も蝙蝠より鳥に近い形だが。
???「黒夜。あまり最高神様のことを呼び捨てにするのはよくありませんよ。それに、1ーAのことも彼は知らないんですから」
天使は黒夜君にそう言うと、此方に向き直ってきた。
???「申し遅れましたね、九條さん。私は|城ヶ崎琥珀《じょうがさきこはく》。あの黒夜の双子の姉にして、天使をやっています」
そう言って、琥珀さんは頭を下げた。
(…双子の姉?)
透 「あの、今双子の姉って…」
琥珀「はい、そうです。あの子は悪魔、私は天使ですが、れっきとした姉弟ですよ。私達は、普段はこの世の調停を保つ役割を最高神様から拝命されております。ですが、最高神様が学校を開くらしく、私達にもそこの生徒になれと。それで、今は泡沫高校に向かっている最中です」
へぇ…
黒夜「ああ。あと、1ーAってのは涼人…様が開く学級の組だ。『Abnormal』だから、A組だそうだ。まあ、まだ人数は数えるほどしかいないんだけどな。流石の最高神様でも、人外の説得には手こずるらしい」
琥珀「らしいですね。珍しく、愚痴を零されていました。…そういえば黒夜、貴方飛んでいたのですか
?」
黒夜「あっ」
あれ、なんか怒られてる…?
やっぱ飛ぶのは駄目なのか。
琥珀「はぁ…飛んでるところを一般人に見られたら大騒ぎになるって、何度も言ってるのに…」
悪魔の姉の天使様も、どうやら大変らしい。
琥珀さんは溜息をつく。
琥珀「すみません透さん、見苦しいものを見させてしまって…」
透 「あ、いえいえ大丈夫です。それより、1ーAのクラスメートに会えてよかった。涼人さんからもまだそこまで人はいないって言われてたんで、ここで接点を持つことができてよかったです」
琥珀「それはよかったです。この馬鹿弟はあとでしつけておくので、心配しないでください」
よかった。騒ぎにならないようにしてくれるらしい。
黒夜君が震えているのは、きっと気のせいだろう。
そう、気のせいだ。
世の中には、気づいてはいけないものがあるのである。
見た目普通人外ってなんだよ
あと「蝙蝠」って初見で読めなくないですか?
蜻蛉とか蛇舅母とか
(↑気になる人はコピペで調べてみてね)
雨虎とか読ませる気ないよね…
あとがきでこんなふざけてていいのかってよく思うんだけどどうですか?
Abnormal High School ✦003「1ーA」
俺は、黒夜君と琥珀さんと一緒に、泡沫高校へと向かった。
透 「てか、涼人さんは今のところ学級の人数は3人って言ってたんだけど、じゃあここにいる俺、黒夜君、琥珀さんで全員なのかな?」
黒夜「姉ちゃんと俺が聞いたのは4人だった。透が聞いたときから一人勧誘に成功したんだろ」
勧誘って…
そんな宗教みたいな。
琥珀「人外の者たちは交渉が難しいですからね。それに比べると、透さんのような特殊な人間の方が交渉は成功しやすいのかも知れません」
透 「…特殊な人間?」
黒夜「あぁ。透は超能力者なんだろ?涼人様から聞いたよ。透みたいな、特殊な能力だけ持った、素体は普通の人間もいるらしいんだよな。ベースが人間なだけあって、まだ話が通じるらしい」
プライバシー侵害教師。
琥珀「はい。暗殺者とかハッカーとか、色々な方面に異常に秀でた者も1−Aには呼ばれるそうなので。透さんも、判定上はそこに位置するそうです」
高校生の暗殺者怖いね。
世も末って感じだ。
黒夜「お、話してる間に着いたぜ。ここが、泡沫高校だ」
黒夜君が指さす方には、学校があった。
至って、普通の。
透 「…ここで合ってる?」
琥珀「えぇ、合っていますよ。人間社会に溶け込めるようにというのと、1−A以外の生徒は基本的に普通の人間ですからね」
…「基本的に」………?
黒夜「まあ基本的には、普通の学校と同じだ」
だから「基本的に」って何…?
透 「えっと、基本的って」
黒夜「よし行くか」
触れちゃダメな奴…?
琥珀「まずは1ーAに向かいましょうか」
スルーされた。
これはダメな奴か。
俺達3人は、玄関に入る。
黒夜「1-Aは組はAだが奥にあるからな。俺らみたいに見た目で人外だってバレる奴もいるから」
………………。
透 「…黒夜君と琥珀さんって見た目大丈夫なんですか?」
黒夜「あー、それは大丈夫だ。あの最高神のよく分からん権能で、俺らの姿は一般人からは普通の人に見えるからな」
琥珀「つまり、人外である1ーAの人たちにのみ見えるということです。__まあ、だから飛んでるところ見られたら大騒ぎになるんだけど…(ボソッ)__」
黒夜「__ゴメンナサイ__」
透 「…………えっと、じゃあ見た目が普通じゃない人たちも一般人からは普通の人って認識されてるってことで…?」
琥珀「はい、大丈夫ですよ」
流石に天使と悪魔の姿のまま学校に入るわけには行かないんだろうな。
「基本的には」普通の学校らしいから。
琥珀「おっと、着きましたね。ここが、1-Aです」
琥珀さんが立ち止まり、示した先は―――至って、普通の教室だった。
ただし、誰もいない。
透 「…今のところ4人じゃないの?」
黒夜「そうだが…来てねぇな」
琥珀「遅れているのでしょうか?でも、私達もそこまで早く来てないと思うのですが…」
そもそも来てなかったりしないか?
返答「行けたら行く」だったりしないよな…
とりあえず、教室に俺達は入ったが…
突然、背後から首に刃物を当てられた!
透 「ッッッッ!」
???「動かないで。貴方達は、誰?」
黒夜「あ?俺達は涼人様に勧誘されて1−Aに来た、超能力者と悪魔と天使だよ」
字に表すと超能力者・悪魔・天使って異質だなぁ。
???「…そう。私は|黒瀬沙耶《くろせさや》。最高神さんに言われて来た、暗殺者」
この人…沙耶さんが暗殺者か!!
背後から刃物を当てられているので、
透 「…クラスメートの首に刃物を当てるのって、どうなの?」
沙耶「貴方達が私に害を与えない保証がない」
琥珀「透さん…大丈夫ですか?」
透 「大丈夫、俺超能力者だし…『|念能力《サイコキネシス》』!」
ほとんど使ってこなかった、サイコキネシスを使って刃物を弾き飛ばす。
沙耶「!!」
当てられた手の感触から、驚いているのが伝わってきた。
だが、さすがは暗殺者。
すぐさま平静を取り戻す。
沙耶「…刃物がなくたって、貴方くらい殺せる」
そうして、沙耶さんは俺の首を掴む。
まるで、というか首を絞めるような形で…
透 「え?なんで俺殺す前提になってんの?」
沙耶「私のいた世界では、初対面の人に対して油断するのは、死と同義」
あ、暗殺者…
透 「…クラスメイトだし、殺さないでくれるとありがたいんだけど…」
黒夜「ああ。鈴人様も頑張ってるみたいだしな。せっかく勧誘した奴を殺さんといてくれ」
ちょっと待て。
理由…
琥珀「…まぁ理由はともあれ、無差別に人を殺すのはお勧めしません。鈴人様が選別された者なのだし、制裁が下るかもしれないですよ?」
だから理由…
沙耶「…わかった」
え?
わかったの?
でもどうやら本当の様で、沙耶さんは腕を下ろしてくれた。
助けられた理由が理由だから、あんま喜べないけど…
沙耶「…殺そうとしてごめん」
そう言って、沙耶さんは頭を下げる。
透 「…大丈夫」
殺されそうになって何が大丈夫なのか分からないけど、まあクラスメイトとの関係はいいものにしたいしな。
なんにせよ、今のところの1-Aの全メンバーと対面できた。
どこまで増えるかはわからないが、良好な関係を築けていけたらいいな…
そう思っていた時。
鈴人「お、みんな集まってる」
皆 「えっ、鈴人(さん・様 先生)!?」
鈴人「よかったよかった。新しいクラスメイトを連れてきたよ」
連れてきたって…誘拐?
鈴人「違うからね」
「行けたら行く」は「行けるけど行かない」です。
あと人名に「沙」ってつけるの私すき
あと念能力って完全にハンターハンター()
クラスメイトとクラスメートは使い分けが分からないし完全に気分
沙耶ちゃん登場後の黒夜君の心の中
(…『黒瀬』と『黒夜』で黒被るじゃん)
Abnormal High School ✦004「不老不死」
Today is my birthday
鈴人「新しいクラスメイトを連れてきたよ」
そう言って、鈴人先生の後ろから出てきたのは…少女。
それも、小学校高学年~中学一年生くらいの。
少女の髪は金色に近い茶色で、眼の色も同じような色だ。
体躯は小柄…高校生とは思えない。
透 「…え?」
沙耶「…何歳?」
俺と沙耶さんは首を傾げる。
少女は、どう見ても高校生ではない。
だが、俺達は失念していた。
ここが「人外を集めた教室」だと言う事を—————
黒夜「…お前、何者だ?」
琥珀「貴方は人間ではない。いや、もっと別の…」
黒夜君と琥珀さんの周りの空気がピリついている。
二人の取った姿勢は、まるで戦闘態勢のようで…
天使と悪魔である二人がここまで警戒すると言う事は、普通の人ではないのだろう。
いや、1-Aに「普通の人」はいないんだけど。
鈴人「はいはーい、そこまでー。二人も警戒解いてね」
鈴人先生が陽気に言うが、黒夜君と琥珀さんはまだ警戒している。
琥珀「鈴人様の命令とあれど、ソレが何かが分からない限り、警戒を解くことはできません」
鈴人「いや命令って……まあ、言うか。いいよね、|朔良《さくら》?」
どうやら、少女の名前は朔良というらしい。
朔良さんは小さく頷いた。
鈴人「朔良…|五十嵐《いがらし》朔良は…不老不死なんだ」
全員が、固まった。
不老、不死。
それは、勿論死なないと言う事。
俺だって、沙耶さんだって、殺せば死ぬ。
黒夜君や琥珀さんだって、普通の人間とは違うかもしれないが、「死」という概念自体ははあるだろう。
鈴人先生…は流石に神だし分からないが…
だが、全ての生物は死ぬ。
生きとし生けるもの、全てがいずれ死ぬのだ。
それはこの世の理。
不老不死というのは、その理を無視できる…理から外れた存在。
黒夜「…それは、本当か?」
鈴人「…僕が嘘吐くとでも思ってるの?本当だよ。まあ再生能力とかは常人よりちょっと高い程度だけど、朔良には『死』という概念自体がない。例えば心臓にナイフを突き立てても、首を刎ねても、業火を浴びせても、全身がバラバラになっても…というか、細胞レベル…それ以下までにバラバラにされても、彼女は死なない」
沙耶「………………」
あ、暗殺者だから…
絶対に殺せない|標的《ターゲット》がいるっていうのは面目丸つぶれなのか。
鈴人「まあ、朔良は体の特性上迫害されたり、こう…仲良かった友人を看取ったりも何度もしてるんだ。だから心を開いてもらうのは至難の業かもしれない」
黒夜「…人と仲良くなっても、いつかは死ぬわけだからな」
琥珀「いくら寿命の長い生物だとしても、不老不死と比べたら一瞬に過ぎません」
透 「何度も別れを繰り返した、と…」
黒夜「俺達と仲良くなったとしても、結局死ぬのは俺達だもんな」
透 「…黒夜君と琥珀さんって死ぬの?」
琥珀「えぇ。常人より寿命は長いし、肉体も頑丈ですが、死ぬときは死にます。死なないのは最高神である鈴人様だけです」
あ、やっぱ鈴人先生は死なないんだ…
鈴人「…彼女と仲良くなるのは難しいと思う。いや、難しい。透や沙耶、黒夜や琥珀と比べたって、考え方がまるで違う。特に、時間については…でも、そんな朔良とも仲良くしてあげて欲しいんだ。朔良に、本心で語り合える友人ができてほしい。それが、僕の願いだよ」
沙耶「…鈴人先生の…パワー?か何かで、不老不死をなくすことはできないの?」
あ、そうじゃん。
俺達って、鈴人先生がどこまで出来るのかも知らないな。
鈴人「…僕もそこまで万能じゃない。最高神っていうのは、あくまで現在存在している神の中での最高位だからね。持ってる権限・権能は神の中でも一番多いけど、この世界を創ったのは僕じゃない。もっと昔の神」
透 「…え?神って死なないんじゃ…」
鈴人「まあいろいろとあるんだ。最高神以外は不老ではあるけど不死ではないから。神の世界にも戦争っていうのはあって、クーデター?とかを起こされて、最高神の座から引きずり降ろされることもあるんだよ」
琥珀「…天界ってそんな荒っぽい場所だったんだ…」
透 「…天界?」
鈴人「神とか天使とかがいる場所のこと。まあ、そういうことで朔良を頼むよ」
そう言って、鈴人先生はどこかに行ってしまった。
透 「…朔良さん?」
俺は朔良さんの前に手をかざし、上下に振ってみるが反応はない。
暫くすると、後ろを向かれてしまった。
琥珀「親密になってしまうと別れるとき悲しいので、最初から心を閉ざしている…ということでしょうか」
沙耶「…多分、そう」
黒夜「…俺達も人外だから人外の奴とは仲良くなれるんじゃね~、とか思ってたけど、俺達でもいつかは死ぬんだもんな…」
1-Aの5人目のクラスメイト、「不老不死」五十嵐朔良。
彼女の存在は、後の1-Aに大きな波乱を巻き起こすこととなる。