お悩み★くっきんぐブック……
それは、悩みがある人に届くおかしのレシピ。
それをつくれば、気持ちも晴れるとか。
でも、失敗したら失敗した気持ちともともとある悩み……みたいに悩みが増える。
しかも、悩みが重いと作り方も難しくなる。
悩みのある子たち、うまくつくれるかな?
そして、レシピをつくる妖精・すいーとの正体は?!
1話完結(時々違うけど)の物語、開幕!
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目次
お悩みスイーツ★くっきんぐ!①いじめ禁止のクッキー
さあ、第一話!
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私、いじめを受けた。
目に見えない、大人にも見えない大きな問題。ネットいじめだ。
ネッ友に裏切られ、誹謗中傷を受けた。
保護者に秘密でネットをやっていたから、それを相談するのもやりにくい。
それに、他のネッ友もいるし……。
私・ミズハは誹謗中傷を受けたきり閉じこもり。
保護者であるおばさんに迷惑をかけているようで申し訳ない…。
けど、閉じこもり。
「私、今日は深夜まで帰らないから!ごはん適当に済ませてね!」
おばさんの声が一階からする。そのあと、ドアが閉まる音がした。
「……………」
こんなこと、日常茶飯事。静かなのも慣れっこ。
ごはんを昼だけ抜いてネットをするのだって……。
でも、この大きな心の裂け目はどうすれば………。
「じゃあ、お菓子をつくればいいんだよ」
声が聞こえた。ちょっと高い声で、かわいい。
「でも、こんなやつにお菓子なんか…」
つくれっこないよ、と言おうとした。横を向く。小さいゆるキャラが、浮いていた。本も持っている。
「!!!」
私はびっくりしてベッドから落ちる。いたいいいいいいいい!!
「鈍臭い……。こんな人にお菓子作らせて大丈夫かな?」
妖精はそう言いながら私の近くに来る。
体勢を直して、ベッドに座る。妖精も、私の肩に座る。
「私はすいーと!お菓子の妖精だよ!悩みのある人のために**悩みを解決するお菓子を作るお手伝い**をしているよ」
「…?」
「で、今日は君に作ってもらうわけ〜★じゃ、まずは君のプロフから行こう!」
すいーとは持っていた本2冊のうち、1冊を捲る。100ページは余裕でありそう。
「これはね〜。悩みを持っている人の数だけページがあるんだよ〜…あ、あったあった。
“一ノ瀬 ミズハ 女 12歳 閉じこもり ネッ友に裏切られ強度の誹謗中傷を受ける 悩みの重さは軽度 叔母と2人暮らし”
…ふーん」
すいーとは本を閉じる。
全部、その通りだ。性別はともかく名前も、悩みも、家族構成も。
「この悩みの重さなら〜……」
すいーとは、もう一冊の本を開く。さっきの本より分厚くて、“れしぴ”と書かれている。
「この中にあなたの悩みを解決するお菓子の作り方が書いてある。今回はクッキーを作ろう!」
すいーとはそう言って持っていた本を見せる。
すいーとの見せてくれたページは、クッキーの作り方が書いてあった。
「早速作ろう!」
---
まずは、生地をつくる。
卵や小麦粉や牛乳、バターをボウルに入れ、混ぜる。
「ちょっとちょっと!砂糖とバニラエッセンス忘れてるよ!」
「砂糖は必要!でも…バニラエッセンスいらなくない?」
「だーめ!このレシピに書いてある作り方に材料を足したり減らしたりアレンジしたりすると……失敗して作り直し不可!になるんだからな!!」
そっかぁ、と言いながら砂糖とバニラエッセンス投入!
その後、混ぜまくってかたまりにして冷やして………。
生地を円柱にして包丁で切る(生地の残りがなくて楽だよ!)。
それをオーブンで焼けば……
「かんせーい!!」**「…の前にすとおおおおおおっぷ!!」**
え?他に何かあるの…?
「次に…僕の魔法をかけて……とりゃあ!」
別に、なんの変化もなかった。
こんがりきつね色の、優しいクッキー。香ばしい香りがたまらない。
「いただきます」
私は1つクッキーを食べた。
甘い。サクサク。香ばしい。
そして、このなんとも言えない懐かしさと、切なさ。
つーと、涙が頬を伝った。
「…おいしい…お母さんの、味だ…」
お父さんとお母さんは、小さい時に死んでしまった。顔も覚えていないんだ。
でも、お母さんのクッキーの味は覚えているよ。
このおいしさ、なんだろう。
私は涙を拭き、いつのまにか帰っちゃったすいーとに向かって言った。
「ありがとう。なんとかなりそうだよ」
私、あのサイトを退会しよう!
私はパソコンを開いた。
もう、何も怖くないわけではない。
でも、なんとかなりそうだよ。
---
“お悩みピープルブック”のページが減った。
「つまり、ミズハちゃんは悩みを解決できたんだね!」
すいーとは本を閉じた。
あーーー!!楽しかった!
料理シーン少なかったですよね…次からちゃんと書きます…
お悩みスイーツ★くっきんぐ!②友情戻しのドーナッツ
さあ!料理シーン丁寧に書くと言ったのにデコレーションだけェ?!って思ったあ・な・た?!
ちゃんと出てきますからね!!
そして!今回お菓子を作る流羽ちゃんに軽めの危機…?
「あんたなんてタヒねばいい!!」
「あーはいはいそうですか!絶交!」
---
「終わった…」
私・|流羽《るう》は友達と絶交中。
いや待って。
林間学校で寝相が悪くて友達を蹴飛ばしたのは私じゃなくて別の子なんだってば〜!!
…と、林間学校で寝相が悪くて友達を蹴飛ばしたのは私、と決めつけられ大げんかに至った。
で、タヒねと言われて、絶交宣言をしたのは私。
「あ〜あ…。謝らないとなあ」
心についた、微かなかすり傷。どうすればいいのかな…?
今、両親は仕事中で家にいない。家の隣のケーキ屋にいるんだっけ…?
「そのお悩み、叶えてあげよう★」
**「ぎゃああああああ!!」**
1人きりの部屋で、声が聞こえた。高くて可愛い声だ。
「僕はすいーと。お菓子の妖精だよ!君の悩みを叶えるお菓子を一緒につくろーう★
まずは、君の悩みを把握しないとね〜」
そう言って妖精…すいーとは本をバッグから2冊、取り出した。
その中の一冊をすいーとは開く。
「じゃ、君のプロフを見よう!この本には悩んでいる人のプロフが書いてあって、解決すると消えちゃうんだ……
“|神月 流羽《かみづき るう》。両親は人気ケーキ屋店長。悩みは友達と誤解で大げんかした事”」
うわ。全部ドンピシャだ。さすが妖精(?)。
「この悩みはこの前やったのより軽度だね。お菓子のデコレーションかなぁ。それを絶交した子と食べれば解決すると思うよ!」
すいーとは息継ぎなしでそれらを言い切った。
「で、なにかお菓子ある?」
私はお菓子棚を探る。あ、隠していた駄菓子のミニドーナツ!
「これ…かな?」
「そうそれ!それを使ってデコレーションをしよう!」
---
ケーキ屋の厨房に紛れることは慣れていた。そこでよくチョコのつまみ食いをして逃げてたなぁ…。
今回、すいーとは“こっそりとチョコペン4色、チョコスプレー、アラザンを持ってくること。バレたら終わりだよ!”と言われた。
きっとバレたら…どうなるんだろ?
チョコペン3色、ザッとテーブルに置いてあったから取る。
そして、チョコスプレーの入った袋からチョコっと持ってきた袋に入れる。
あとはアラザン…って**ん?**
「アラザンが切れてるのよね〜…明日買いにいきましょう」
お母さんの声だ!この店の材料を管理しているのは、お母さん。つまり……
私は急いで家に戻った。
---
「アラザンが…なかったの…」
「じゃあ、僕の魔法で厨房からアラザンを取って見せよう!」
「え?」
「サイコキネシス!!」
え、魔法もっと可愛い呪文じゃないんだ。
と、思っていたその時!アラザンが机の上に落ちてきた!
「お約束どおり、アラザンは厨房から取ったよ★」
「え、でも在庫切れって」
「アラザンを実はママがエプロンに入れっぱなしだったんだよ。じゃ、つくっていこう!」
---
まず、チョコペンでドーナツにチョコをつけるところから。
半分だけつけたり、ぜーんぶつけたり。
ノーマル、ピンク、白のチョコペンを持ってきていたため、3個のドーナツ全部違う色に。
そのあとは乾かないように急いで上からチョコスプレーをかける。
アラザンはカラフルカラーのもので、穴に沿ってドーナツにつけた。
あとは冷蔵庫で冷やしちゃえば…
「か、完成!」
「OK!じゃあ、僕はもう帰るから友達のところに行っておいで!」
「で、でもどこに…」
「僕の予想だと、くっきー公園だよ!」
そして、すいーとの言った場所に行ってみる。すると…
ベンチに友達が1人で座っていた。私はそこへ走る。
「あ、あの………ドーナツつくったから食べて」
「絶交って言ったのはあんたでしょ?!なんで話しかけるの?!…ま、ドーナツくらいもらうわ」
友達はドーナツを食べる。
「…おいしい」
「だよね。美味しいよね」
「…ねえ、寝相が悪くて私を蹴飛ばしたのは…」
「私じゃなくて、|夢葉《ゆめは》ちゃんが蹴飛ばしたんだよ。私見たもん」
「え〜、マジ?!いっちょ叱ってやらないと!」
「ダメダメ!!!」
「あの…流羽。**ごめん**」
「こちらこそ、ごめん…」
私の心のかすり傷。それは、すっかり治ったのだ。
---
“お悩みピープルブック”のページが減った。
「流羽ちゃんは無事お悩みを解決できたんだね!」
僕はそう言ってパタン、と本を閉じる。次は、重大ななやみを持っている子がいるみたいで……
「ああああああ!その日はレシピ講習会だあああああ!!!」
仕方ない!その悩みを持っている子はお菓子作りが上手らしいから大丈夫だろう!!
次回★この物語でサブキャラとして登場した夢葉ちゃんが登場しまーす!
寝相が悪くて家族にも迷惑がられた夢葉ちゃんが抱える悩みは大きい。
ある日、キッチンに置いてあったレシピを見て作ろうとするのだけど…?