シリーズものではない短編を入れてゆきます。時系列はばらばら。
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目次
うさぎのまちのおおかみ(オリジナル童話)
こーゆーのが書きたくなってしまっただけです、ハイww
童話にしては重め&ネガティヴ、、、
楽しんで頂けると幸いです。
うさぎの町がありました。
うさぎが沢山住んでいるから、うさぎの町です。
ある日そこに、一頭のおおかみが移り住んできました。
そのおおかみはとてもお腹が減っていて、町のうさぎを食べに来た、、、のではありません。
おおかみはベジタリアンで、生き物を大切にする優しい心を持っています。
最近おおかみにもベジタリアンが増えていて、うさぎを食べ物とみなす狼が減っていること、そしてもうおおかみを怖がらなくてよいことを伝えにきたのです。
おおかみが引っ越してきた、という噂は町全体に広がりました。
「誰かが引っ越してきたみたいだね。お友達になりたいな~」
「よしなよ。おおかみだよ」
「おおかみなの!?そりゃ大変だ、近寄らないようにしないと!」
おおかみ「あの、みんな、、、」
「噂をすればおおかみだ~!!」
「きゃー、食べられちゃう!逃げろ!!」
おおかみ「みんな逃げていく、誰も話を聞いてくれない、、、」
おおかみは、悲しくてやりきれない気持ちになりました。
それでもみんなに分かってもらうために、ただ一人のよき理解者である町の長の力を借りて、おおかみは広場にみんなを集めてスピーチをしました。
おおかみ「みなさん、おおかみは最近変わってきています。むざんにうさぎをころして食べることのないおおかみが増えてきてるんです。みなさん、おおかみは平和に向けて動き出しています。みんなで仲良くしましょう。私たちは食べる食べられるの関係ではなく、等しい関係としてあるべきなんです!!」
うさぎたちがざわざわしています。
「みたいだよ、どうしよう?」
「いや、あのおおかみは後で僕らを食べるためにだましてるんだ!」
「え~!」
「でも、リーダーは意見に賛成していたよ。」
「きっと、賛成しなきゃ食べるぞー、っておどされてるんだよ。」
「そうだそうだ!!」
「嘘なんてばれてるぞー!!」
思いが変わってきていたうさぎも、思い込みの強いうさぎの言葉を信じておおかみにやじを飛ばしました。
おおかみ「、、、ぼくは、、、仲良くしたいだけなのに、、、」
その後。
おおかみは、おおかみの町に帰ることにしました。
何も、変えられませんでした。
これはおおかみのせいなのでしょうか?
いいえ。
うさぎの頑固な気持ちが、おおかみをはねつけたのです。
あなたのまわりにも、あのうさぎのような人がいませんか?
、、、もしかして、あなたがそうなのかも?
-1008文字-
閲覧ありがとうございました。偏見はよくないですね~。(呑気に言うことじゃない) 最後に「ACジャパン♪」って流れてきそうなテイストになりました、、、ww
色々受け付けております、ぜひいらしてください。
ありがとうございました。
メリーさんの電話
「もしもし、あたしメリー。今あなたのおうちに向かっているの。」
聞こえた声は、知らないものだった。電話が切れる。メリーさん、という人形が捨てられた恨みから電話をかけ、捨てた相手に復讐する、という都市伝説を思い出した。
、、、ナゼ僕に?人形なんて捨てたか?そもそもあれはあくまで「都市伝説」なんではないのか??遊び半分のいたずら電話、、、?夜遅くなのもあって、やり場のない怖さを覚えた。
と思っていたらまた電話がかかる。よし、もう吹っ切れて「メリーさん」と話してみようか。俺は電話に出ることにした。
「もしもし、あたしメリー。今あなたのおうちの前にいるけど。」
きた。お決まりのやつ。よし、「メリーさん」とやらの度肝を抜いてやろう。
「もしもし?メリーさん?インターホン届く?」
「、、、」
数秒間、何も聞こえなかった。
「大丈夫ですか?」
僕は沈黙に耐え切れず口を開いた。やばいぞ、このまま呪われるとかじゃないんだろうな。そう考えると、急に部屋の温度が下がったような気がした。
「、、、あれ?すいません、テリーの知り合いの方ですか??」
、、、え? 誰だよ、それ。
「あれ、番号違ったのか、、、?間違えてかけてしまったみたいです、すみません!」
電話が切れた。
、、、何だよ、それ。吹っ切れて自信に満ち溢れようとしていた自分が、プェ~~と間の抜けた音を立てしぼみ、跡形もなくなった。「未知の体験」という麻酔が切れ、急に恥ずかしさが戻ってくる。馬鹿だな。うん。
それにしても、、「メリー」さんは「テリー」さんとやらと約束をしていたのか??だとしたらちょっと心配だな、、、どうにかなるといいが。
まぁ、どっかで笑い話として喋ろうかな。そんなふわふわした気持ちになりながら、眠りについた。
---
次の日から、怪しい勧誘の電話が何度もかかってくるようになった。
ありがとうございました。まさかのヒトコワ(((
これって二次創作タグ付けなくても大丈夫そうですかね、、、?
霧雨の日、彼らは
ピロン、、、
間の抜けた通知音に、静けさが波打って逃げてゆく。
「彼」からのメールだろう。勿論、見ることなんてできない。気まずすぎるし。
---
【ねぇ、今日はどうだった?】
---
私だって嫌だ。彼を感じられない時間や、彼が残念がる事は。
でもしょうがないんだ。こればかりは、私にはどうしようもできなかった。
冷たく長い、霧雨の日だった。
あの日私は、彼と些細なことで言い合ってしまった。
「余計なお世話」だ、「喜ぶと思った」だ、今考えてみればくだらない。
彼は確かに、お節介な所はあるけれど。私にはすぐネガティブに考えてしまう所もあるし。私と彼は違う存在で、価値観も見える世界も違うのだということを、お互いに忘れていたのだろう。
今はもう痛いほどに、理解している。あの喧嘩は、八割方私のせいだ。
彼は謝ることも、謝られることも苦手なんだろう。
「「ごめんなさい」を聞くことじゃなくて、いつも通りでいられることの方が、僕はよっぽど「仲直りしたな」って気持ちになるなぁ」って、いつか言っていたっけ。
今の私には、どちらもできない。
何もしてあげられない。
怖すぎる。
ただただ彼を、遠くから見ていることしか、ほのかな彼の空気を感じることしか、できない。
それがただ、悔しくてたまらなかった。
ピロン、、、
間の抜けた通知音が、「お前考えすぎなんじゃね」とでも言うように響く。
考えすぎなのは分かってる。けど。メッセージには未だに、既読を付けられない。
---
【忙しいか、お疲れ様。いつでも来てね】
---
きっと彼は、気丈に振る舞っているのだろう。私のことを深く思いやりながら、次に会える日を待ち焦がれている。
怖くて動き出せない私とは、大違いだ。駄目だなあ、私。早く会いたいなら、そうすればいいのに。
喉がぐっと痛くなる。視界が揺らぐ。馬鹿だ、泣いているじゃないか。
思えば彼は、泣いたことなどなかった気がする。
もちろん、私は全てを見られる訳ではないけれど。私の前では、彼はいつも笑顔だった。決して偽物ではないと、思いたい。いや、思う。
あの時喧嘩を拗らせて、彼のことなんか大嫌いになって。そのまま別れてしまえば、幸せだったのかなぁ、と思う時がある。
そうしたらこんな思い、せずに済んだ。彼だって私の事を思うあまり、周りはどんどん離れている。孤独になっている事に、彼はみじんも気づいていない。
私が彼に会えるようになるまでは、、、きっと時間がかかるだろう。途方もない時間が。
彼は私がまだ、傍にいられる存在であると信じている。
そんないじらしい姿、見ていられない。早く気付いて。
私はもう、死んでいるんだよ。
喧嘩の後。仲直りもしないで慌てて用事に飛び出した私は、雨の石段で派手に転げ落ちた。彼に連絡もされた。葬式にも行ったはず。
なのに彼は、私の既読を待ち続けている。愛おしかった微笑みが、事実を通すと一気に狂って見える。
私の親からも彼の親からも友達からも、周りにいる全ての人から「彼女は亡くなったんだ」と言われてきた。のに、彼の中で私は生きていることになっている。彼らの言葉はいずれも、「もう諦めて」「馬鹿なのか」「正気じゃない」といったように冷たくなっていった。
堪えられない。
怒りや怨念すら覚えてしまう。何で、分かってくれないんだ。分かったところで、彼の泣くところを見るのはうんざりだが。じゃあ私はどうすればいい?
「僕は君と二人でいられれば、どんな所でだって、どんな時だって幸せだなぁ。」
ふと頭の中に、いわゆる「閃き」が下りてきた。私にしかできない、思いつく中では一番良い方法だった。
生きてはいないけど。確かに私は、いるんだ。それだけでいい。
ここまで彼に近づいたのは、死んでから初めてだった。彼の眠そうな瞳に、私は映らない。馬鹿だなぁ。私はここにいるよ。
彼の部屋も、姿も、振る舞いも、恐ろしいほどにそのままだった。いや、変われよ。靴下は脱ぎっぱなしにするなって、何度も言ったし、、、。
見れば見る程愛おしい彼の耳元に、囁いた。
「私に会いに来てよ。あの場所で待ってる」
彼の目が見開かれる。がばっと立ち上がり、糸に引っ張られたかのようにマンションを出た。きっとあそこに向かっている。私と彼が付き合うきっかけになった、歩道橋の端っこ。私が転げ落ちた所、でもあるのか。だとしたらなおさら好都合だ。
彼が走る。歩道橋を上る。昨日からの雨で滑りそうになりながら上まで来る。
階段のすぐそばで、彼があたりを見渡していた。
私と彼が出会ったあの時と、何も変わらなかった。
「久しぶりだね」
彼が振り向いた。足を滑らせて、バランスを崩す。雨に濡れた鉄の手すりが、掴もうとするその手を振り払う。為す術もなく体が横になる。重力に弄ばれる。
私が死んだあの時と、何も変わらなかった。
雨と一緒に、彼の額から血が流れてゆく。
もうじき、彼と会えるだろう。楽しみで仕方ない。
冷たく長い、霧雨の日だった。
三時間ぶっ続けでデスクに向かったら生まれました。ありきたりかもしれませんね、、、
涼しくなっていただけると嬉しいです。(決して意味深ではない)参加失礼いたしました。
-2082文字-
嘉
色んなものが切り替わって。
ちょっとすっきりとした時を、
全然綺麗になんかなっていない空気を、
誰かの待ち望んだ未来を、
誰かが怖いと形容した暗闇を、
無と有のはざま、いつもよりちょっと貴重な0時を。
身体と心いっぱいに吸い込んで、大事な人に送った。
--- 明けまして、おめでとうございます。 ---
--- 2025年、今年もどうぞよろしくお願いします。 ---
結
今日は街をゆく沢山の音も、テレビに映るひな壇も、僕の部屋も、妙にごちゃごちゃしている。
まぁ当然だった。だって今日は大晦日だもの。
それで今は、大掃除。この概念だけはちょっと納得いかない。いかなかったとしてそれは僕が掃除嫌いなだけなんだが。
大晦日だの集大成だの大掃除だの、この日はとにかく「大」が好きだな、、。
大晦日は何かと騒がしい。何かが溢れている。ごちゃごちゃしていない物と言えば、日めくりのカレンダーくらいだ。これだけは黒い枠と紙ペラ一枚だけ。まさにすっきりシンプル、といった感じだった。
そういえば、、、しょうもない事かもしれないが、何年も過ごしてきた中で、一度も日めくりカレンダーの「最後のページ」だけは破り捨てたことがなかった。
日めくりカレンダーの最後のページ、要するに「12/31」は、新年が明けて枠と共に捨てられるときにどう思っていたのだろうか。
最初は狭いと思うほど、紙で一杯だった。ぐっっと手をつなぎ合って、繋ぎとめ合って、僕らずっと一緒だからな、とか言っていたのが。日を経るごとに自由になって、自由になって、それを見送ることだけを繰り返して。いつしか自分だけが、ここに残っていると気づいたとき。
どんな気持ちになるのだろうか。何を望むのだろうか。頭上に残った、かつて仲間だったものたちの残滓を見て、何を心に抱くのだろうか。
「どうしたの? 手が止まってるけど。夜までに片付けられるようにね」
不意に母の声が響いた。
気づけば自分の手には、一枚だけ紙の残った日めくりカレンダーが握られていた。
破って、、、あげた方が、いいのだろうか。
破ったとて仲間のもとに帰る事は叶わないし、破ってしまったら元には戻らない。でもこの一枚は自由を望んでいるかもしれない。今年はうるう年だから、三百六十、、、五日間も、前の3年より1日分余計に多くの仲間を、毎日少しずつ失ってきたわけだ。自分もここから離れたいと思っているのではないのだろうか。
そうだきっと。今年はこの紙を、「12/31」を、破り捨ててみよう。
ぐっと紙をつまんで、枠に手をかけて、力を入れた。
そこまでしか、できなかった。
紙を切り離す事が、できなかった。
思い返せば、1月1日の朝に飾ったカレンダーは、毎日僕の手で破られていた。
その向こうにある「新しい日」を見ることで、「今日の僕」をしっかりと自分の手で、自分の心で確認できた気がしていた。
それじゃあ今手の中にあるこの紙を、最後のページを破り捨てて。
その向こうにあるのは、僕の手のひらだけ。
言い方を変えると、、、その向こうには、何もない。
その一枚をめくってしまえば。
「新しい日」は、もうやってこない。
僕に「新しい今日」などない。
もう進んでいい道などない。
、、、別に是非とも進みたいわけではないのだけれど、ああいう普段うっすらと抱いている不安が、一気に形となって襲ってくるのではないか。そんなことがあり得てしまうのではないか。
こう感じて、掴んだ紙をぴくりとも動かせなかった。
埃越しの空は、早くも橙色に傾き始めていた。
結果から言うと、最後の一枚を破り捨てることはしなかった。いや、できなかった。この表現の方が良い、、、自分の弱さを誤魔化すのは違う気がするから。
もう少し細かく言うと、「流石に考えすぎだろ」という結論になった。日めくりカレンダーに自分を重ねて勝手に追い込まれるその時間で掃除を進めろ。つまりはそういう事だ。
こんなに大袈裟で我儘な感性をしているにも、しょっちゅうよく分からない部分をよく分からない方向に誇大解釈するにもかかわらず、大好きな漫画のネタバレサイトは余裕で見るわ映画に行ったら号泣する家族のなかで一人悠々と入場特典を確認し会話をシラけさせるわで、、、もう一体何なのか意味が分からない。
ダメだこれ。言い訳にしかなってない。手を動かせ、怠惰の権化。
、、、ただ今はもうちょっとだけ、軽くなったカレンダーを眺めていてもいいかなと思った。365枚の、荒いちぎり跡をなぞる。
過ごしてきた日々が、ざらりとした感触になって、一枚一枚の欠け具合の違いまで指先に伝わる。そうだ、僕の毎日はざらりとしていて、一応だけれど同じ一日はなかった。
これもまた、考えすぎなのかなぁ。
そうこうしているうちに太陽は愛想を尽かしていた。丁度テレビが騒がしくなる。
どうか僕のもとに、明るい明日が来ますように。
そのためにまぁ、少しだけでも「よいお年」を過ごせたらいいな。
柄にもなく、そう思い浮かんだ。
-1884文字-
平熱によろしく
「起きなさい、遅れるよもう」
冷たい空気にさらされる前に、早くスイッチを押してしまいたい。そう思って、ぬるい頭をもたげた。
二日酔いでもないのに、視界が右へ左へと揺れる。
壁に二回程腕をぶつけて、やっとリビングにたどり着く。体温計は灰色の戸棚の小物入れ。もう手探りで掻きまわさなくても触れるようになった。
朝の空気がスウェットの隙間に入り込む。わきをつんっと刺すような冷たさが全身まで広がってしまう気がして、場違いなテーマの焦りが湧き出した。
「36.2」
平熱だった。
酷く気分が悪い。爽やかな朝日が、自分をからかっているようにすら見える。
熱は出ていない。そりゃそうだ。僕の平熱が35度台だったら別だろうけど。そんなことは無いので、至って元気なんだろう。ちょっと眠いだけ。寝起きで体がだるいだけ。
残念だ。
熱が出ていれば良かったのに。
何回やるんだろう、このくだり。タイムリープにでも巻き込まれているのなら、それはそれで良い方なのかもしれない。
別にどこさのウイルスの時みたいに体温を記録しなければいけない訳ではない。完全に自分の意思。ちょっとの願いからなる、すがる価値もないくらい小さな希望としてそこにあるだけ。
自分の意思で続けられた事といえば、これが生まれて初めてだった。
ただ、、、まず前提としてもっと早くから出来ていないとおかしいのだろうし、喜びは微塵もない。はたから見れば、動機が不真面目すぎる。きっと話したところで意味も利益もない。むしろ不都合だ。
言い訳など通じない。言えない。言わない。
でも叫びたい。できるならば、虚空に向かって。誰もいない山奥とかで。
学校に、行きたくない。
塾に行きたくない。
駅に行きたくない。
公園に行きたくない。
交差点に行きたくない。
外に行きたくない。
人と関わりたくない。
きっとこの願いは、寝たら無くなるちょっとした頭痛でもじわじわと薄れる喉の痛みでも断じてない。
言うなれば「死」なのだろう。
ずっとくっついている。気づいたらいつもいる。うっすらと、本当にうっすらと付きまとう。けど消えない。そうして、死ぬまで添い遂げる。
いや、添い遂げなければならない。
朝日がうるさい。
先生の優しさが痒い。
幼馴染の笑顔が苦い。
晴れ渡る青空が厭らしい。
おかえりの声が重い。
暖色の電灯がきつい。
何より、そんな風に感じてしまう自分が、何も変えられない自分が気持ち悪い。
心の底をぎりぎり無視できない程度で這いまわるその感覚に、幼いころからずっと付き纏われてきた。けれど不思議と慣れることはない。
「困った」と言えば面倒くさいことになるだろう。たとえ言いたくなっても後回しにせざるを得ない。そんなことの繰り返し。
どうして、何かやることを思い出したり心もちが行動を起こす方に傾いたりしたときに限って、それを見送らざるを得ない状況になっているんだろう。もしかそうなるのは僕だけ? だとしたらもう呆れるしかないのだろうか。
そう考える間、無意識のうちに朝食を食べて着替えていた。ふと考え事が途切れる。ベルトがない。
、、、と思ったらもうつけていた。本当にもう、一日一日、空っぽの形式をなぞるだけで過ごしてしまうようになるのを止めたい。
この感覚を放っておいたところで、苦しいだけで別に限界を迎えたりはしないというのがまた不思議でたまらない。もういっそのこと、どこかで限界を迎えてしまえば楽だろうか、とすら思う。そんなこと願うのが罰当たりなのは重々分かっているが。
平凡な人生、特に平凡で少し苦しげな人生を送っていると、希望はそこらにまぁまぁ見つかる。転がっている。ただそれは、縋ることはできても到底安心できるものではない。すぐに千切れはしなくとも、包み込んで嫌なことを忘れさせてくれるものでは到底ない。いつかは薄れて破ける。いろんな希望を欲張りなくらい掴んでも、日常を繰り返すことだけで精一杯なことだってある。僕がそうであるように。
いつの間にか、時計が八時を回っていた。
こんなことを考えておいて、こんなチャンスを突き付けられておいて。この気持ちを言うことはできないにしろ、だから何もしないというのは癪な気がして、体温計をもう一度掴み取った。
体温計の先がまた性懲りもなく、わきを冷たく刺す。「え、どうした」といった表情でこちらを見つめる母の視線をやり過ごしながら、体温計の音を聞くためだけに立ち止まっていた。
「36.3」
平熱だった。
もう満足だ。これ以上足掻く意味はない。むしろそんなことしたらかっこ悪い。
「行ってきます」
どうしようもない不安と手を繋いで、晴れやかな朝に背を向けた。
-1936文字-