英国出身の迷ヰ犬×文豪ストレイドッグス!(second)
編集者:海嘯
あれから月日が経ったある日のこと。ルイス・キャロルの電話に何度も着信が来ていた。依頼ではないが、仕方なくマフィアに協力することになり──?
ののはなさんとのコラボ小説で、「英国出身の迷ヰ犬」の番外編になります。
桜月ちゃんが「英国出身の迷ヰ犬」の世界にお邪魔しています。
前回同様、ののはなさんの小説では桜月ちゃん視点、此方の小説ではルイスくん視点です。
二つの視点から楽しんでいただけたら、と思います。
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目次
collaboration.1
これより始まるは、英国出身の迷ヰ犬が経験した夢のような現実の物語。
その者と再会するとき、彼らの物語は動き始める。
本編
https://tanpen.net/novel/series/dbc4b7a3-d5a6-4927-bd3f-8e75383d3519/
前回
https://tanpen.net/novel/series/a4894146-4c1c-4ce8-8e5f-93e98969370f/
No side
「お呼びでしょうか、|首領《ボス》」
マフィアビル最上階の執務机にいる森鴎外に向け、中原中也は云った。
いつもは窓から広い空が見えていたが、今日の部屋は薄暗い。
「よく来てくれたね、中也君」
中也は、資料を眺めている森の様子を見て不審に思った。
彼の異能力であるエリスに頭を抱えていることがたまに━━否、結構な頻度である。
最近はマフィアに刃向かう組織など無く、森が頭を抱えることはない。
|組合《ギルド》の一件は、まぁ大変だったが。
「実はある文書がマフィアビルに届いてね」
「文書、ですか?」
とりあえず、と森が一枚の紙を差し出す。
中也は紙を見るなり、目を見開いた。
「━━え?」
「一応彼に連絡したんだが、出なくてねぇ……。君からも頼んでいいかい?」
「あ、その、えっと……」
少し戸惑った後、中也はどうにか気持ちを切り替える。
「……了解しました、首領」
ルイスside
プルルル、と着信音が静かな店内に響き渡った。
僕とマスターしかいなかったのは、不幸中の幸いだろう。
一礼してから、僕は電話に出ることにした。
「やぁ、久しぶりだね」
そうでもないと云われ、記憶を遡る。
確かに、何度か会っているか。
「それで要件は? マフィアになら戻らないからね?」
電話先から聞こえてきた言葉。
僕は、それを聞いた瞬間に立ち上がってしまった。
無視していたけど、最近森さんから電話が来ていたのはそれが原因か。
とりあえず僕は直接話を聞きたかったので予定を聞く。
そして、一時間後に此処で会うことになるのだった。
「━━で、一体どういうこと?」
「俺も聞きたいですって!」
はぁ、と中也君はため息をついた。
どうやら話を聞いたのは今日らしく、彼自身もまだ理解が追いついていない。
「何をどうしたら《《君が二人になる》》わけ?」
中原中也が二人いる。
そして、どうやら今現在目の前にいる彼ではない方の中也君が、どこかの組織に拉致されているらしい。
目的は|マフィア《組織》の解散と、森鴎外の命。
まぁ、この街で裏社会の組織が商売をするのに、マフィアは邪魔だろう。
でも中也君を拉致した、というところが少し引っかかる。
普段から変わり身を用意しているわけでも無く、そうそう似ている人物なんていない。
「……まさか、ね」
僕は腕時計を見て、とある考えが浮かんだ。
だけど、中也君に話すわけにはいかない。
下手したらこの世界が終わるからね。
でも、この考え以外に思い浮かぶものはなかった。
「不可能ではない、か」
「ルイスさん、どうかされたんですか?」
僕はちょっとね、と微笑む。
携帯を取り出して森さんに電話をかける。
意外とあっさり許可を出してくれた。
どうやら、マフィアとしても早くどうにかしてもらいたいらしい。
まぁ、僕に任せるのが最適解だとか思ってるんだろうな。
「マスター、ご馳走様でした」
「またのご来店をお待ちしております」
そして、僕達は店を出るなり|異能空間《ワンダーランド》にやってきた。
中也side
「あの、全く話が読めないんですけど……?」
そう俺が云う一瞬の隙にルイスさんは椅子と机、そして紅茶を用意していた。
「君は此処で待っていて。多分一時間以内に戻ってくるから」
「え、ちょ、ルイスさん!?」
行ってしまった。
昔から少し、というか結構言葉足らずで困る。
俺が二人いると分かれば、色々と大変なことになるから此処を拠点にするつもりなのだろう。
そして、あの人は多分もう一人の俺について知っている。
「……とりあえず飲むか」
一口飲んだ紅茶は、すごく美味しかった。
ルイスside
あの世界に行くのは、そう難しくない。
何故なら彼がいるから。
「やぁ、元気にしてる?」
「……本当、最低な気分だ。俺を笑いにきたのか」
そんなわけないでしょ、と僕は彼と視線を合わせる。
「君の異能力は、穴に落ちた人を何処かへ転移させられるだろう? 一人、この世界に読んでほしい人がいる」
どうやら彼は気がついたらしい。
本来なら交わることのない僕達を出会わせたのは、彼自身だから。
「やってくれるなら、この|異能空間《ワンダーランド》内で自由にしてあげるよ。ほら、この通り」
指を鳴らせば、彼を縛っていたものが外れる。
僕が本気で頼んでいることに気がついたのだろう。
彼は少し考えてから、ため息をついた。
そして、上を指差す。
「……。」
あまりいい思い出はない、先の見えない筒状の穴が頭上にあった。
何とも云えない感情に悩まされていると、何か聞こえてくる。
僕は、ふと腕時計に刻まれている文字を読んだ。
「……Hope to see you again」
徐々に大きくなっていく声。
僕は足に力を込めておくことにした。
「うわぁぁぁあああああああ!?」
穴はその影を吐き出すと、何事もなかったかのように閉じた。
ダンッ、と音を立てて僕は影の元へと飛ぶ。
そしてお姫様抱っこという形で、彼女のことを支えてあげる。
「え、きしょ」
よし、彼は後で〆る。
「あれ? 私、落ちてた筈じゃ……」
恐る恐る彼女は目を見開いた。
ちょっと待って、気がついたら僕の腕の中って結構凄い状況じゃないかな。
ただ一つだけ謝罪しないといけないだろう。
「中也君じゃなくてごめんね、桜月ちゃん」
「……ルイスさん!?」
夢じゃない、と桜月ちゃんは頬をつねったりしている。
無事に着地した僕は彼女を下ろす。
あちらの世界ではどれぐらいの月日が経っているのかな。
どちらにしても、僕はとても懐かしく感じる。
「た、大変です! あの時のボスと同じ異能力で私落ちちゃって、もしかしたらボスはまだ私達のことを……って!?」
桜月ちゃんは僕の方を見るなり話すことを止めた。
まぁ、理由は検討ついている。
「痛い! ちょ、ギブなんだけど!? 俺はちゃんと転移してあげただろ!?」
「僕達の上に出口を作る必要あったかな? それに《《きしょ》》と云ったのはどの口だろうね」
僕がボスの首を絞めていたからだ。
この状況を見ても話を進めていけるのは多分だけど、魔人君だけ。
そんなことを考えながら、僕は桜月ちゃんの方を見た。
首から下げていたのは━━。
「……そのペンダント」
「今、中也が行方不明になってて……その、ルイスさんならどうするかな、って思って……」
矢張りか、と僕は心の中で確信を持てた。
もう一人の中也君というのは、桜月ちゃんの世界の中也君だったのだ。
僕も違いが分からないのに、例の組織とやらが分かるわけがない。
何故、そしてどのような方法でこの世界に来たのかは分からない。
でも一度、僕が彼らと出会っていることで世界が繋がりやすくなっているのだろう。
「そんなことより、ルイスさんも腕時計つけてくれてるんですね」
「……つけないわけないじゃないか」
これはあの時間が夢なんかじゃないと表明する、たった一つのものなんだから。
「さて、そろそろ本題に入ろう」
「もしかして俺、このまま?」
面倒臭くなったので、檻に入れておくことにした。
そして、僕達は彼女のよく知っているぬいぐるみのエリアへと移動する。
一度深呼吸をして、自分の中で何を云わなくてはいけないのかを整理した。
この世界と、君の世界の中也君のこと。
僕には桜月ちゃんの力が必要だ。
「少し長くなるんだけど、聞いてくれるかい?」
ののはなさんとのコラボだぁぁぁぁ!
ということで、海嘯です。
コラボ第二弾ということで、今回はルイスくんの世界に桜月ちゃんが来ちゃいました☆
あのボスが異能空間にまだいたのには驚きですが、そのお陰で桜月ちゃんと再会できたのでOKということで((
それでは、また次回お会いしましょう!
collaboration.2
英国出身の迷ヰ犬は再会した。
彼らが紡ぐ物語の行く末は、誰にも分からない。
前回
https://tanpen.net/novel/7bc6594e-934f-42b1-adce-cccbb9b731d1/
No side
「私の世界の中也がルイスさんの世界に来てるかもしれない!?」
「まぁ、あくまで僕の考察だけどね」
いつも通り、桜月は表情豊かだった。
変わらない様子に、ルイスは少し安心する。
「中也君は変わり身なんて用意しなくても十分強い。でも、写真付きで文書が送られてきたらしくてね」
「そんな……。あの、中也の写真とかありませんか?」
桜月曰く、自身の世界の中也君とお揃いのものをつけている。
少し、ルイスは悩んだ。
此方の世界に来たばかりの桜月。
自身はすぐに適応できたが、彼女がどうかは分からない。
誰も知らないというのは、少々心に来る。
「あの、ルイスさん」
「どうかした?」
「私、ルイスさんの世界の皆に会いたいです。お姉ちゃんも中也も、私のことを知らないのは少し……というか、結構辛いです。でもちゃんと向き合うべきだと思うので」
あぁ、とルイスは彼女の世界で過ごした日々を思い出していた。
16歳という、自身より10歳も年下の桜月。
(でも、僕より何倍も強い)
ルイスにとって、桜月はずっと強くてカッコいい女性だった。
「それに、私のことを誰も知らない訳じゃないじゃないですか」
ルイスは首を傾ける。
桜月の知り合いは、この世界にいない筈だ。
「私には、ルイスさんがいるので」
「……君って結構大胆だよね」
「何がですか!?」
アハハッ、とルイスは笑う。
彼氏である中也君が聞いてたら殺気を向けられていそうだな。
そう思いながら、ルイスが桜月に手を差し出す。
「この世界の彼らは君の世界の彼らと、対して変わらない。とりあえず一人だけ、会ってみようか」
「はい!」
そういうと、桜月はルイスの手を取った。
反対の手には、白い兎のぬいぐるみの手が握られている。
「え、ちょま、あの、え?」
「動揺しすぎじゃないですか、ルイスさん」
「それ持ってく|心算《つもり》?」
中也side
「……この女は?」
「もう一人の君を助ける手伝いをしてくれる人だよ」
「ぬいぐるみはルイスさんのです!」
えぇ、と俺は困惑した。
見た目は鏡花と変わらないか、少し年上だろうか。
ルイスさんに日本人の知り合いがいたことに少しだけ驚いた。
しかも、こんな子供の。
てかルイスさんのなんだな、あの白い兎のぬいぐるみ。
「初めまして、桜月と申します」
そう、女はペコリと頭を下げた。
「苗字は?」
「孤児なのでありません」
「ルイスさんとの関係は?」
うーん、と悩んでいる様子の女。
説明し難いことなのだろうか。
そんなことを考えていると、ルイスさんが椅子に腰掛けている。
「……あの」
「それ以上言ったらどうなるか分かってるね?」
ニコニコと笑っているルイスさん。
いや、普通に怖いですって。
「そうだ、桜月ちゃんに文書を見せてもらいたくてね」
俺は諦めて文書を取り出した。
じっと女は写真を見つめている。
何か、俺じゃないとはいえ恥ずかしいな。
「……ルイスさん」
女が小さく頷いた。
対して、ルイスさんは少し頭を抱えている。
「今から話すことは、あまり他言しないことを奨めるよ。推測も混ざっているけど、殆ど確定していることだから良く聞いて欲しい」
思わず、背筋が伸びた。
ルイスさんの言葉に圧なんてない。
でも、本能的に下手なことは云わない方が良いと思った。
「とりあえず、彼の正体から説明しようか」
彼、とルイスさんが持っていたのはもう一人の俺の写真だった。
「此方の中也君はただ似ているだけでも、ドッペルゲンガーの類いでもない。別世界の君だ」
「は?」
「ちょっとルイスさん!? それ云っちゃ駄目じゃ!?」
焦る女に対して、ルイスさんは冷静だった。
「大丈夫だよ。此方の世界に戻ってきて分かったけど、『白紙の文学書』によって生まれた可能世界とは少し違うからね」
「どういうことですか?」
「うーん、説明しがたいんだけど……」
暫く悩んでから、ルイスさんは口を開いた。
どうやら可能世界というのは、あらゆる選択によってこの世界とは違う道を歩んだ世界のこと。
ifの世界とも云うらしい。
「そして、可能世界は認識出来ても行くことは出来ない」
「……ボスの異能が、可能世界じゃないことを証明している?」
うん、とルイスさんはどこからか紙とペンを取り出した。
「この世界と、もう一つの世界。これらは枝分かれしたわけではなく、元から違う世界だった。だから越えられるんだろう?」
「……なんで知ってるんだよ」
後ろからそんな声が聞こえてきた。
ルイスさんの視線の先、俺が振り返るとそこには一人の男が立っている。
檻に入れられている理由は、聞かない方が良いだろう。
「確かに、俺の異能はあらゆる場所に送ることが出来る。可能世界以外ならな」
「じゃあ私達のどちらかが死亡するまで元の世界に戻れないのは、どうやったんですか?」
「……I don't know what the rat did」
女の質問に小さく英語で何か云った男。
ルイスさんは意味が分かったのか、ため息を吐いていた。
「とりあえず、もう一人の君の救出をしないとだね。この世界のマフィアがなくなると裏社会が大変なことになる」
「私の世界でも大変なことになります。主に私の心が持ちません」
「|手前《テメェ》の世界の俺、一体何をしているんだよ……」
「秘密です!」
ニコッと笑った女のことを、可愛いと思ってしまった。
「それじゃ行こうか」
「何処へ?」
情報収集、と笑みを浮かべるルイスさん。
何か嫌な予感がしたのは、云うまでもなかった。
ルイスside
その会社は、横浜のある場所にあった。
四階まで|昇降機《エレベーター》を使い、少しすれば会社の名前が掛かれた扉の前につく。
「桜月ちゃん、心の準備は大丈夫かい?」
「はい!」
「……本当にその白い兎のぬいぐるみを持っていくのかい?」
「はい!」
本当、返事だけは良いんだから。
そんなことを考えながら、僕は扉へと手を掛けようとする。
「ルイスさん、一つ聞いても?」
「どうかした?」
ドン、と中也君は扉を指差す。
「なんで俺ら探偵社に来てるんですか!?」
少しポカン、としてしまった。
何故って、普通に情報収集といったら探偵の仕事だろう。
森さん改めマフィアは例の組織に壊滅させられないように忙しい。
僕達が頼れるのは此処か、異能特務課しかない。
「君を特務課に連れていくのは止めたし、誉めてくれても良いんだよ?」
「優しいですね、ルイスさん!」
「手前、まさかのボケかよ……」
中也君は無視して、僕は扉を開くことにした。
「ということで、依頼したいんだけど大丈夫?」
「……構わない」
マフィア関連だと断るかと思った。
でも、あの猫の考える『三刻構想』のお陰か手を貸してもらえることに。
休戦中ということも、あるだろうけどね。
(※ギルド戦後ということにしてください。|海嘯《作者》の進行が遅すぎますね、はい)
「改めて確認ね。調べてもらいたいのは『帽子屋』を名乗る異能者集団。目的はマフィアの解散と森さんの命らしいけど、なーんか気になってね」
「貴君がそう考えるなら、何かあるのだろう。連絡は万事屋の方で構わないか?」
「いや、此方にして」
僕が指を鳴らすとカードが降ってきた。
そこには、僕のプライベートの番号が書かれている。
万事屋の方には森さんから連絡が来るかもしれないから、対応できないと少々面倒くさい。
「それじゃ、僕達は行くから」
中也side
「中原幹部と桜月だったか」
少し良いか、と探偵社の社長は俺らに声を掛けてきた。
ルイスさんは何を云いたいのか分かったのか、足早に退室する。
立っているわけにもいかず、俺達はとりあえずまた座ることに。
「ルイスさんには云えないことなんですか?」
「いや、そういうわけじゃない」
なら何であの人は退室したのだろうか。
そんなことを考えていると、社長が口を開く。
「今回、貴君らの為に動いていることは事前に聞いていた」
「……ルイスさんが?」
「彼奴は少々、というか結構視野が狭くなりやすい。何かを守る為なら特にだ」
知っている。
マフィアにいた頃のあの人は、いかに此方の被害を抑えるかを考えていた。
多分、隣に座っているこいつにも心当たりがあるのだろう。
「……彼奴を頼む」
「勿論です」
「心配しなくても、ルイスさんのことはそれなりに分かってるつもりなので!」
そうか、と笑った社長。
失礼かもしれねぇが、いつも睨んでいるイメージがあったから意外だ。
部屋から出た俺達は、ルイスさんの元に行くまで少し雑談をしていた。
「手前は別世界の人間なんだよな」
「うん」
「ルイスさんと付き合ってるのか?」
「……え?」
ピタッ、と其奴は止まった。
そして物凄い速度で首を横に振っている。
「私には彼氏がいますし、ルイスさんにはもっとお似合いの女性がいますって!?」
「……彼氏いるのか」
何故か、少し心が落ち込んだ。
もしかして俺、この女のこと──。
「……いや、これ以上考えるのは止めよう。それがいい」
それからは、ルイスさんと合流するまで一言も喋れなかった。
第二話!
桜月ちゃんと此方の中也の絡みが好きです(唐突)
社長はやっぱりルイス君のことよく分かってますね。
オリジナル設定詰め込みまくってるのは、特に理由ありません((
べ、別に本編の伏線貼ろうなんて思ってないんだからね!
うん、誰得のツンデレだ?
それでは、また次回お会いしましょう!
collaboration.5
焦りを表に出さないようにする英国出身の迷ヰ犬。
中原中也の痣が意味するものは、もちろん━━。
No side
「中也君、着替えられる?」
そのままの格好では流石に会いたくないだろう、とルイスは声を掛ける。
あまり中也の状況は良いものではなかった。
歪む視界に、何をしようにもふらつく体。
「……桜月ちゃん、一つ頼みたいことがあるんだけど良いかい?」
「私に出来ることなら、何でもやらせてください!」
それじゃあ、とルイスは真っ直ぐ目を合わせて云う。
「探偵社に行って、太宰君を待機させておいてほしい。福沢さんには先に話を通しておく」
桜月は静かに頷く。
中也のことがとても心配なのは分かっている。
でも、これが最善策だ。
そう自分に言い聞かせながら、ルイスは桜月を現実世界へと送るのだった。
福沢side
「……了解した」
私は電話を切って立ち上がる。
確か太宰はまだ社にいた筈だが━━。
「国木田、太宰は何処へ行った?」
「応接間のソファーで眠っているかと。どうかされたのですか?」
「ルイスが少しな」
そう私が云った瞬間、応接間から太宰が顔を出した。
「何故ルイスさんが私を?」
云われた通りに伝えると、太宰の表情が変わった。
中原幹部と痣、としか云っていないが一体何のことだろうか。
ルイスが教えるつもりがないなら仕方ない。
そう思っていると、探偵社の扉が勢い良く開いた。
「さ、桜月です! 太宰さんはいらっしゃいましたか?」
「あぁ。そこにいる」
しかし、異能空間にいると云っていたがどうするつもりなのだろうか。
太宰は異能力を無効化する。
つまりルイスの作った異能空間に滞在できない可能性がある。
「ルイスさん!」
片手に携帯を持っている桜月は叫ぶ。
その瞬間、何処からかルイスが現れた。
背には、先程まで元気だった中原幹部の姿が。
今はぐったりとした様子で、ルイスに寄り掛かっている。
「太宰君、とりあえず──」
「はい」
--- 『|人間失格《ニンゲンシッカク》』 ---
太宰が触れた瞬間、中原幹部の表情が幾分かマシになった。
とりあえず、医務室で寝かせることに。
ルイスは太宰に預けて、少し背伸びをしていた。
「……ヤバいな」
そう呟いたのを、《《俺》》は聞き逃さなかった。
何がヤバいのかは分からない。
ただ、ルイスの表情はいつもと変わらないが汗を流している。
緊張というよりは、何かに耐えている。
沢山の人と対峙してきた俺だからこそ分かる、些細な違いだった。
「福沢さん、少し桜月ちゃんを社長室に置いてくれません? 色々と説明するのは落ち着いてからが良いので」
「……あぁ、了解した」
「桜月ちゃん、それじゃあまた後で」
「はい!」
ルイスside
呟いたの、聞こえてたんだろうな。
そんなことを考えながら、僕は医務室の椅子に座っていた。
「……ここは」
「探偵社だよ、中也君」
ずっと魘されていた様子の中也君が目を覚ました。
「それにしても、どうして《《あの状態》》になりそうになってるわけ?」
「俺の方が聞きたいわ」
太宰君は未だに中也くんに触れている。
何かあってからじゃ遅いし、異能力を無効化しておく方がいい。
本人たちは仲が悪いから今すぐにでも離れたいだろう。
でも、こればかりは仕方がない。
「……一度手を離せ、太宰」
「暴走しないわけ?」
「多分大丈夫だ」
太宰君は僕の方を見てきた。
まぁ、離してみても良いんじゃないかな。
勘かもしれないけど、大丈夫という確信がある。
そんな目を、中也君はしていた。
僕が頷くと同時に、太宰君がゆっくりと手を離す。
「……暴走していない?」
「やっぱりな」
「中也、ちゃんと説明してもらっても良い?」
「簡単に説明するなら、荒覇吐が何かに反応した」
何か、については分からないという。
荒覇吐が反応するものは、そう多くない筈。
それこそ━━。
「ルイスさん、どうかしましたか?」
「いや、何でもないよ」
とりあえず僕は、社長室に待機している桜月ちゃんを呼んでくることにした。
「━━。」
あれ、何か話してるのかな。
福沢さんと桜月ちゃんの話し声が、微かに聞こえてくる。
しかし、詳しい内容までは聞き取れない。
もう少し聞き耳を立ててみようかな。
そんなことを思っていると、扉が開いた。
「盗み聞きは感心しないぞ、ルイス」
「あはは……」
邪魔するのも悪いかと思って。
そう笑っている僕を見て、福沢さんはため息をついた。
「中也、大丈夫そうでしたか?」
「太宰君が触れていなくても問題なさそうだったよ。異能空間にいてもらう必要もなさそう」
良かった、と桜月ちゃんは安心していた。
急に倒れたからな、中也君。
別世界とはいえ、彼のことを特に心配してしまうのは仕方ないだろう。
「今、国木田が『帽子屋』について分かった情報をまとめているところだ。あと数分もすれば貴君らに報告できるだろう」
「ありがとう、福沢さん。やっぱり僕が直接動くことは難しいからね」
「……全て自分でやる必要はない」
僕は笑って誤魔化しておくことにした。
「そういえば、二人で何を話していたの?」
「ひ、秘密です!」
「貴君のことを少しな」
「福沢さん!?」
僕の発言についてだろう。
本当にやらかした。
まぁ、詳しいことについては聞かないことにする。
僕からも詳しいことは話さない。
「あれ、ルイスさん……?」
そんな声が背後から聞こえてきた。
おっと、まさか彼女とこんなところで会うことになってしまうとは。
「福沢さんに用かな、鏡花ちゃん」
「うん。郵便に社長宛にきてたから持ってきた」
「……政府からか」
封筒を受け取った福沢さんは、完全に仕事モードになった。
とりあえず僕達は廊下に出ることに。
そして医務室に向かいながら、軽く自己紹介をすることにした。
「私の名は鏡花。年齢は14。好きなものは兎と豆腐。よろしく」
「私は桜月だよ。好きなものは可愛い物と甘い物! ……鏡花ちゃんは甘い物好き?」
「好き。特にクレープ」
そっか、と桜月ちゃんは笑っていた。
でも僕には、それが無理に作っている笑みのように見えた。
姉の年齢は違くて、自分のことを知らない。
ただでさえ中也君にも初対面扱いされて辛い筈なのに。
そんなことを考えていたら、医務室の扉の前に着いていた。
鏡花ちゃんは事務作業があるらしく、ここで別れる。
「桜月ちゃん━━」
「心配しないでください」
僕の言葉を遮るようにそう云った桜月ちゃんの瞳は、とても真っ直ぐだった。
でも、少し表情は硬い。
「……はい、これ抱いてなよ」
落ち着くだろうから、と僕はあの兎のぬいぐるみを異能空間から取り出した。
少しでも、彼女のストレスを減らさないと。
僕みたいに一人で抱え込む必要なんて、ないんだから。
第五話。
おい、桜月ちゃんを虐めるなよ。
自分は知っているのに相手は知らないとか可哀想だろ。
そんなことより(おい)社長と桜月ちゃんは何を話してるんでしょうね。
ここでクイーズ!
一体何について話していたでしょーか!
正解は…ののはなさんの小説で!
それでは、また次回お会いしましょう!
次回、帽子屋の正体が明らかに。
collaboration.3
探偵社に依頼をした英国出身の迷ヰ犬。
休息中に話すは、とても平和な話。
No side
「まぁ、予想通りの会話だな」
中也達が部屋を出る、ほんの少しだけ前。
ルイスは壁に寄り掛かりながら、社長室での会話を盗み聞いていた。
「……《《彼奴を頼む》》、ねぇ」
応接間に向かいながら、ルイスは顎に手を添える。
「まぁ、無理をする|心算《つもり》だったけど、彼らを僕の制御装置にする必要あったかな?」
本当に心配性だな、とルイスはため息を吐いた。
彼の表情は呆れかと思われたが、優しい笑みを浮かべている。
福沢の考えてることはよく分からない。
しかし、彼が自身のことを考えてくれていることはよく分かっていた。
「心配しなくても、僕はそう簡単には死なないよ」
ルイスside
「ということで!」
「どういうことだよ」
「帽子屋に潜入したい人はいますか」
ちょっと待てぇ、と中也君が勢い良く立ち上がった。
探偵社から|異能空間《ワンダーランド》に戻ってきて数分。
僕達は元のテーブルを囲んでお茶会をしていた。
「え、潜入? 普通に俺の奪還しようとしてます? いや、俺はここにいるんですけど──」
「中也、パニックしてるね」
「いつの間に呼び捨てなってやがる、|手前《テメェ》」
「え、駄目だった?」
「駄目じゃねぇよ!」
一人で叫んでいたからか、随分と疲れてるな。
まぁ、そんなの関係なしに僕達は話を進めていく。
「ルイスさんが行っても良いと思うんですけど、顔バレしてませんか?」
「確かにそうなんだよね。でも桜月ちゃんに何かあったら多分、僕殺されちゃう」
重力で潰されたくない。
僕の目は死んでいることだろう。
「そもそも潜入しない選択肢は無いんですか?」
「無いね」
「無いよ」
えぇ、と中也君は諦めることにしたらしい。
「それで君はいつまでぬいぐるみを抱いてるの?」
「……抱き心地が良くてつい」
いや、僕もその子お気に入りだから良く分かる。
けど社長の前でも抱いてる必要あったかな、と思ってしまう。
あれ、これって僕が悪いのかな。
そんなことを考えながら、僕は紅茶を一口飲むのだった。
「そういえば、今は自分達で行動しないんですか?」
「しても良いんだけど、情報収集は探偵社と特務課が向いてるからね」
それに、僕の勘ではむやみに動かない方がいい。
ある意味、僕は有名人だ。
相手が英国人だった場合は特に警戒されることだろう。
「中也は好きな人とかいないの?」
「唐突すぎねぇか?」
「暇だったから」
うーん、と頭を抱えた中也君。
そういえば長年一緒にいたけど、恋愛事情は全く知らないな。
太宰君なら勝手に調べて、悪戯に使ってそうだけど。
「高尚、というか礼儀作法がしっかりしていて格好いい女性」
「それって紅葉──」
「でも一番は、好きになった人だな」
「……中也、格好いいね」
僕の言葉が遮られちゃったんだけど。
悲しいけど、タイプの話は中也君らしくて良いと思うよ。
「そういう手前は彼氏いるんだろ? どんなところが好きなんだ?」
「え!?」
何これ、公開処刑かな。
別人とはいえ、中也君と云うことには変わりない。
助け船を出そうかと思ったけど、面白そうだからいっか。
「俺はちゃんと言ったぞー」
「……怖そうででも、実は優しくて紳士的で親切で、部下思い。それに、私の事を大事に思ってくれている」
ちゃんと見てるんだな、この子。
「あと小っちゃくて可愛いけどかっこよくて強くて──!」
「はーい、ストップ」
「へ?」
僕は桜月ちゃんの唇に指を当てる。
結構ヒートアップしてきたし、彼も察してきたらしいからね。
面白かったけど、僕は太宰君みたいに遊びすぎるのが好きな訳じゃない。
話を切り替えるために、僕は英国で人気のチョコレートを桜月ちゃんに薦めておいた。
「……ルイスさん、もしかして其奴の彼氏って」
「さぁね、僕はノーコメントでいかせてもらうよ」
あ。
この返事は、答えを云ってるようなものか。
まぁ、面白いから放置しておくけど。
「ほーいえはるいふはんは?」
「え?」
「ですから、ルイスさんは彼女とかいないんですか?」
思考が停止した。
「そういえばルイスさんの恋愛事情、全く知らねぇな」
「中也も気になるよね?」
あぁ、と中也はニヤニヤと此方を見てきた。
二人の恋愛事情を聞いてしまった手前、僕だけ無言を貫くわけにはいかない。
「……恋人はいないよ」
「じゃあ好きな人のタイプは?」
「タイプか……」
考えたことなかったな。
でも、もし付き合うなら──。
「──I like someone like you」
あまり思い出したくない記憶だ。
戦場にいて良かったことなんて一つもない。
それでも君と肩を並べられたことだけは、本当に良かったと思う。
会いたいなぁ、本当に。
もう一度、声だけでも聞きたい。
「僕の過去を責めない、優しい人がいいな」
「……ルイスさん」
「まぁ、僕は元々恋人は作るつもりないんだけどね」
その資格もないと思うから。
人を愛すことなんて、多分僕には一生出来ない。
「……そうだ」
何処に入れたかな、と僕は立ち上がって本棚を眺める。
このエリアはぬいぐるみのエリアと一緒で、僕の趣味を集めた場所。
まぁ、書斎として使ってるけど。
そんなことより、今は《《アレ》》を見つけないと。
しかし本棚には小説ばかりで、探しているものが全く見当たらない。
「本当にどこだっけな……」
「探し物ですか?」
「ちょっとね。確かこの本棚に入れてたと思ったんだけど、どっか行っちゃったかな」
無くしたかもしれない。
持ち出してはいないから、異能空間の何処かにあるはずだけど━━。
「━━ま、いっか」
諦めることにした。
「そういえば桜月ちゃん、この世界の横浜とか見て回りたくない?」
「え、横浜観光行きたいです!」
なんだかんだ、元の世界で忙しい日々を送っているらしい。
そっちの中也君ともゆっくり過ごせていないらしく、少し可哀想だと思った。
まぁ、僕にはどうしようもないけど。
「あ、でも中也が一人ぼっちになっちゃう……」
「俺のことは気にしなくていい。ルイスさんと楽しんでこいよな」
「それは良心が痛むというか……うーん……」
良いこと思い付いた、と桜月ちゃんはニコニコしていた。
普通の笑みなら良いんだけど、凄く見覚えがあるんだけど。
どこで見たんだろう、あの笑い方。
中也君も何か引っ掛かっているのか、悩んでいるようだった。
「ルイスさん、この空間に洋服とかありますか?」
「まぁ、正装が多いけど色々あるよ。和服とかも無くはない」
やっぱり、あの笑顔が気になる。
何を考えているのかさっぱりだった僕と中也君。
しかし、次の桜月ちゃんの一言で理解するのだった。
第三話。
桜月ちゃん何しようとしてるのぉぉぉぉ!?
でも考えてるの私なんだよなぁぁぁぁ!?
はい、落ち着きましょう。
いよいよコラボ三話ですね。
前回のコラボではもう色々起こってたのに展開が遅すぎる…
いや、せっかくのコラボだし色々やりたい。
言い訳じゃないけど普通にやりたい展開に繋がらないのもある。
ま、いつも通り頑張っていくので応援してくれると幸いです。
それでは、また次回お会いしましょう!
collaboration.4
英国出身の迷ヰ犬達の恋愛話。
どうやら、まだ平和な時間が続くようだ。
No side
「いやいやいやいや!?」
中也が椅子を倒すほどの勢いで立ち上がる。
ニヤニヤと、まるで太宰のような笑みを浮かべている桜月。
対してルイスは、特に動揺していなかった。
「ごめん、もう一回云ってもらっても良い?」
否、ルイスは内心とても動揺していた。
「だから女装すれば良いじゃないですか! 中也も、もちろんルイスさんも!」
「何でそうなるんだよ!?」
「女装すれば絶対にバレないかと思って」
「俺を置いて行くことに痛む良心は、今何ともないのかよ!?」
「うん」
即答した桜月。
中也は頭を抱えた。
そして、いつの間にかルイスは何処かへ行っている。
「私、中也と一緒に観光行きたいもん!」
「……手前、結構大胆なんだな」
「え?」
「彼氏持ちなんだから、言動には気をつけたほうがいいぞ」
中也side
心臓の音がうるせぇ。
耳まで真っ赤に染まってる気がする。
とりあえず帽子を深く被って誤魔化しておくことにした。
「変装するなら必要かと思って、服を整理してきたよ」
いつの間にか、姿の見えなかったルイスさんがいた。
「女性物ってあったり……」
「するんだよなー、これが。これでも戦後は色々としてたから」
「まさかハニートラップ!?」
「いや、あの、うん。……否定はしないでおくよ」
ルイスさんがハニートラップとか、正直想像できない。
でもやっぱり、女性物があるのは意外だった。
流石に趣味、とかじゃないよな。
「中也君、余計なこと考えてたら舞踏会用のドレス着せるよ」
「何でですか!?」
普通に心の声読まないでくださいよ、ルイスさん。
そんなことを思いながら、俺達は服のある場所まで移動するのだった。
「すっご〜い!」
ウォークインクローゼットのように、色々な服が辺り一面に掛けられている。
そういえば、この異能空間って広さどれぐらいあるんだろうな。
こんなに色々なエリアがあるし、一つの地区ぐらいあったりして。
流石にないと分かっていても、少し心配になった。
絶対に掃除とか大変だろ。
てか、異能力の限界超えてるんじゃねぇかな。
「中也はどんなのが似合うかなぁ……」
「僕達、桜月ちゃんの人形にされるの確定だね」
一体誰のせいで、と云おうかと思ったが止めた。
舞踏会用のドレスを着せられたくない。
「あ、これとか良いかも」
「普通にスカートを着せにくるね、君」
「だってこんな機会は中々ないですって! 中也はもちろん、ルイスさんにだって次いつ会えるかなんて分からないんですよ?」
確かに、とルイスさんは納得していた。
というか此奴、自分の世界の俺に着せたりしてねぇのかな。
もしそうならもう一人の俺、ドンマイ。
そうでないなら彼女の暴走を今すぐ止めてくれ。
「はい、中也はこれ」
「因みに拒否権は━━」
「こっちのミニスカでも良いよ?」
「ヨロコンデキサセテイタダキマス」
何で俺、こんな子供に脅されてるんだろう。
考えるだけ無駄なことは分かってたから、さっさと着替えることにした。
ルイスside
「ルイスさんはこっちです!」
桜月ちゃんが見せてきたのは薄い緑色のロングスカート。
そして、カジュアルなロゴ入りTシャツだった。
どうして僕も女装しなくちゃいけないのか。
その理由は分からなかったけど、桜月ちゃんが楽しそうだからいっか。
「何で俺がスカートなんか……」
「はーい、文句云わないのー」
「ルイスさんは何でそんなにノリノリなんですか?」
「あの子が楽しそうだからだよ?」
「逆にどこが楽しくないの、と云いたげな顔で圧をかけてくるのやめてくれませんか?」
そんなつもりなかったんだけどな。
僕達は桜月ちゃんには後ろを向いてもらい、早く着替えることにした。
「あの、ルイスさん。それって━━」
「その先は云わないことを強く進めるよ」
「……分かりました」
「どうかされたんですか?」
何でもないよ、と僕は鏡でおかしな所がないか確認をする。
うん、大丈夫そうだね。
中也君も、《《一応》》着れている。
「もう良いですか?」
「大丈夫だよ」
「え、俺まだ心の準備が……!?」
桜月ちゃんが振り返った。
僕は少し女の子らしく振る舞ってみせる。
「二人とも違和感なさすぎるんだけど、何で?」
「俺の方が聞きたいわ!」
靴や小物なんかも揃えれば、本当に女子にしか見えない。
身長のせいもあるだろう。
でも僕、結構中性的な顔立ちだからなぁ……。
「それじゃ、早速観光に行きましょう!」
「その前に君も着替えようか」
「へ?」
どれがいいかな、と僕は沢山ある服を見ていく。
「……。」
「君、こういうのがタイプなの?」
「え!? いや、ちがっ━━!?」
「桜月ちゃーん! 中也君がこれ来てほしいってー!」
僕は異能力を無駄に使い、桜月ちゃんのところまで一瞬で行く。
中也君はずっと遠くにいた。
「はい、良かったら着てあげてよ」
絶対似合うと思うけど、多分彼女の世界の中也君がいたら殺される。
何故って、今渡したのは猫耳カチューシャ付きのクラシックメイドセットだから。
中也君、ミニよりはロングスカートが良いんだね。
なんか意外かも。
年頃の男子はミニが良いのかと。
まぁ、僕もロングの方が好きだけど。
でも個人的には袴+メイドエプロンも良いと思う。
絶対似合うよね。
というか桜月ちゃんに似合わない服があるわけがない。
「こ、これを中也が?」
「着ない?」
「着ます!」
凄く食い気味だったけど、触れないでおこう。
「ど、どうでしょうか……」
少し頬を染めながら言った桜月ちゃんに対して、僕達は一言も発さなかった。
「あの、ルイスさん? 中也?」
「ごめん、可愛すぎて思考停止してた」
彼女みたいなメイドがいたら絶対毎日幸せだ。
「君が見てたメイド服を着てもらったわけだけど、どう?」
「……。」
「おーい、中也?」
「……凄く似合ってると思う、ます」
いや、敬語なのかタメ口なのかハッキリしようよ。
耳まで真っ赤に染めて、面白いな。
そんなことを考えながら僕は、一着の服を持ってくる。
似合ってるけど、あのまま観光に行くわけにはいかない。
「君に一番似合いそうな奴。まぁ、サイズが合うかは分からないけど」
シンプルな白トップスに、デニムのガウチョパンツ。
完全に作者の趣味だけど良いでしょ。
また後ろを向いている間に着替えてもらう。
「着替え終わりましたー!」
めっちゃ可愛い、と桜月ちゃんは鏡の前で回ってみたりしている。
シンプルな筈なのに、凄く可愛く見えるのは何故だろう。
あ、元が良いからだ。
「この服で観光行っても大丈夫ですか?」
「もちろん」
「やったー! それじゃ、今度こそ観光に行きましょう!」
「おー!」
「……おー」
中也君のテンションが低いのは、云うまでもなかった。
いや、もしかしたら可愛くて見惚れてるのかも。
中也side
「おぉ……ここが山下公園……」
「そこまで君の世界と変わらないでしょ?」
「でも何か、季節が違うせいで全く違う場所に感じます!」
そういや此奴の世界はもう少し日付が先なんだっけ。
(ルイスくんの世界はギルド戦後、桜月ちゃんの世界は共喰い後。多分)
結構違うのか、この世界と。
てか、まだ別世界の人間ってことが信じられねぇんだけど。
ルイスさんの云ってることを疑ってるわけじゃない。
ただ別世界なんてさっきまで知らなかった。
「あ、クレープ屋だ!」
「多分一緒だよね。買いに行く?」
行きたいです、と其奴は目を輝かせている。
「……可愛いな」
「ねぇ、中也もクレープ買いに行こうよ!」
「え、あ、俺は席取っておく。立ったまま食べるのはあまり良くねぇからな」
そっか、と少し落ち込んでいる其奴を見て少し後悔した。
てか、俺さっきなんて云った。
可愛いなんて、彼奴に聞かれてねぇよな。
「それじゃあ買ってくるね。中也は何がいい?」
「別に要らな━━」
「じゃあ私のおすすめ買ってくるね!」
「聞いた意味は!?」
俺のツッコミも届くことなく、ルイスさんと彼奴はクレープを買いに行ってしまった。
甘いの食べたい気分じゃねぇから良いのに。
まぁ、彼奴のおすすめは少し気になるな。
それにしてもルイスさん、何話してるのかな。
自分で残ることを選んだとはいえ、ちょっと仲間はずれ感があって寂しい。
いや、寂しいけど別に寂しくねぇし。
「……心の中で何云ってるんだ、俺」
「たっだいまー! はい、これが中也の分ね」
渡されたのは照り焼きチキンのクレープだった。
俺、甘いものじゃない方がいいって云ったか?
「おすすめにするって云ったけど、あまり甘いものの気分じゃないのかなーと思ってこれにしたんだけど……」
「……よく分かったな」
普通にすげぇ、と思った。
どうやら、甘い方がいいなら自分のと交換するつもりだったらしい。
探偵かよ。
というよりは、彼氏のことは分かってるんだろうな。
「そういや手前、支払いはどうしたんだ? 下手したら別世界の通貨は偽札扱いにされるんじゃねぇのか?」
「……ルイスさんに払ってもらいました」
「桜月ちゃんの世界に行った時に払ってもらったからね」
少し悔しそうに其奴はクレープを食べ進めた。
自分が払いたかったんだろ、多分。
まぁ、そういう日もあるよな。
俺だってカードしか持ってなくて払えない時は、部下に出してもらってる。
現金を持ち歩くようにはしてるが、忘れる時はあるんだよな。
「……うまっ」
「本当!?」
良かったぁ、と其奴は笑った。
俺の好みに合うか心配だったんだな。
やっぱり可愛い。
「━━!」
ふと、ルイスさんの方を見た俺は驚いた。
此方を見て、めっちゃ微笑んでる。
ルイスさんのことだ。
どうせ俺の考えてる事もお見通しなんだろう。
(ん、お見通し━━?)
ぶわっ、と顔が赤くなるのが自分でも分かった。
そんな俺を見て、ルイスさんはもっと楽しそうに微笑んでいる。
めっちゃ恥ずかしいんだけど。
「あれ……もしかして中也、熱とかある?」
「べ、別にねぇよ!」
顔近いんだが。
ルイスさんのせい、なんて云える筈もなく照れ隠しのためにクレープを食べる。
食べ進めるにつれて、何か違和感を感じた。
視界が歪んでいる。
まるでふらついているように、体の感覚がおかしい。
胸の辺りが、とても苦しい。
「る、いすさ……」
「中也君!」
俺は最期まで云うことが出来なかった。
ベンチから落ちるように倒れる。
「ルイスさん、とりあえず異能空間に!」
「分かってる!」
「しっかりして、中也!」
ふと見えた自分の腕。
俺は、思わず驚いてしまった。
絶対に見間違える筈がない。
腕には何故か《《あの痣》》が浮かんでいた。
第四話。
いやぁ、急展開ですね。
痣が浮かぶとか、誰が考えたんだよ。
これからの展開どうするつもりなんだろうね、私。
ルイスくんと桜月ちゃん、そして中也が中心となって進んでいく物語。
collaboration.5以降も、どうぞお楽しみに。
待って、自分でハードルあげてて笑う。
それじゃあ、また次回お会いしましょう!
collaboration.6
英国出身の迷ヰ犬は、探偵社に彼女を紹介した。
いよいよ、帽子屋の正体が明らかに━━。
No side
太宰「あ、ルイスさん。それに後ろにいるのは先ほど話してい……た?」
ルイス「紹介するよ。彼女は━━」
太宰「美しい!」
なに云ってんだ此奴、という目で太宰を見つめるルイスと中也。
そんな中、太宰は何処からか花束を持ってきた。
太宰「睡蓮の花のごとき果敢なく、そして可憐なお嬢さんだ」
おっと、どこかで聞いたことのある台詞だ。
ルイスはそう思いながら次に彼が云うことを予想する。
色々と通り越して無表情になった中也は、疲れたのかベットに横になる。
太宰はというと、片膝をついて花束を差し出す。
太宰「どうか私と心中していただけないだろうか!」
桜月「無理です。頑固拒否!」
太宰「えぇ! ちょっとでいいから!」
ちなみに桜月は初対面の時、元の世界でも同じ断り方をしていた。
太宰が不貞腐れていると、誰かに踏み潰される。
英国出身の迷ヰ犬episode.3を覚えている人なら、説明するまでもないだろう。
もちろん、踏んでいたのはルイスだった。
グリグリと踵で頭を踏んでいる。
ルイス「……。」
太宰「あの、重っ、ちょっと、痛っ、ルイスさ、ねぇ、何で無言なの?」
中也「普通に手前のせいだろ、|放浪者《バカボンド》」
太宰「私のせいなの!?」
反省していない様子を見て、ルイスは更に踏み付ける力を強くするのだった。
中也side
さっき聞いたのだが、樋口が邪魔した時も同じふうに口説いてルイスさんに踏まれていたらしい。
本当に何してるんだよ、この青鯖野郎。
国木田「先程は太宰が見苦しいところをお見せして済まなかった。探偵社員の国木田と申します」
桜月「桜月です。まぁ、慣れているので気にしないでください!」
慣れている、というのもおかしな話だろう。
そんなことを考えながら、俺達は国木田の報告を聞くことにした。
因みに太宰と二人で情報収集したらしい。
まぁ、半分ぐらい役立ってないと云っていたが。
国木田「とりあえず『帽子屋』のメンバーは三人しかいません。あとは雇われの兵でした」
ルイス「三人?」
国木田「リーダーであるマッドハッター、そして三月ウサギと眠りネズミ。全て二つ名で本名は不明です」
ルイスさんが、何故か顎に手を添えて考え込んでいた。
何か気になる点でもあるのだろうか。
因みに桜月は特に変わらない様子だったが、少し納得しているように見える。
国木田「目的は矢張りポートマフィアの解散と、|首領《ボス》森鴎外の命。しかし、花袋に電子機器の方を頼んだところ、このようなやり取りが」
国木田が資料を茶封筒から取り出す。
それを見るなり、俺達は戸惑いで言葉が出なくなった。
帽子屋と取引していたのは、シヴァを名乗る人物。
しかも、その内容は中原中也の身柄を渡すこと。
ルイス「シヴァ……。確かインド神話に同じような名がなかったかな?」
国木田「はい。ヒンドゥー教の神で《《再生の為の破壊》》」
桜月「……つまり破壊の神様ってことですか?」
ルイス「中原中也。破壊を司る神シヴァ。そして再生の為の破壊、ねぇ……」
分かってきたよ、とルイスさんは天井を仰ぐ。
ルイス「そいつの目的は中也君の異能力、正確には《《荒覇吐》》だろうね」
背筋が凍る思いだった。
荒覇吐のことを知っているのは、マフィアの中でも一部だけ。
そして俺が外に出された日に見ていたのは|蘭堂《旦那》だけの筈だ。
グルグルと、頭の中で思考が巡って止まらない。
ルイスside
国木田「その荒覇吐って何ですか?」
太宰「チビの意思も聞きたいところだけど、色々と考えてるっぽいから簡単にだけ教えてあげるよ」
国木田君の問いに、太宰君が云う。
ていうか、彼は今まで何をしていたんだ。
太宰「荒覇吐というのは中也の異能そのもの。まぁ、色々あって神を飼ってるんだよ」
国木田「神を飼ってる!?」
ルイス「正確には違うんだけど……ま、いっか」
僕も説明は諦めた。
此処から先は中也君の過去に関わってくる。
そういえば桜月ちゃんは荒覇吐を知っているのだろうか。
知らなかった場合、この説明で納得してくれるといいけど。
中也side
中也「おい、クソ太宰」
太宰「何?」
中也「荒覇吐を奪おうとしているのは分かった。だがシヴァとやらはどこで俺を知ったんだ?」
近くにあったものは、旦那を除いて全て無に返したはず。
そして、遠くからでは俺を視認できない。
太宰「君が羊にいた頃にも蘭堂さんの一件で色々と情報が出回ったし、その翌年にも色々あった。情報規制が敷かれたとしても、人の噂話までは規制できないからね」
対して暑くないはずなのに、汗が止まらない。
どうやって俺と荒覇吐を分けるつもりなのかは知らねぇ。
でも、もう一人の俺の中も荒覇吐がいれば大変なことになる。
分けた後に生きている保証もないし、荒覇吐が暴れたら横浜だけじゃなくて地球が滅ぶことだろう。
ルイス「──中也君、考えるのはそこまでだよ」
トンッ、と肩に手を置かれる。
横を見てみると、ルイスさんが真っ直ぐと何処かを見ていた。
ルイス「現在の状況が分かった。なら、今すべきことは最悪な事態を考えるんじゃない。僕達がこれからどう行動するべきか。それだけだよ」
中也「……はい!」
ルイスさんの言葉に、迷いが吹っ切れた。
ぐだぐだうだうだ考えていたのが、とても馬鹿らしい。
もう一人の俺を助ける。
それが今すべきことであり、俺に出来ること。
太宰「さて、これからどうしますか?」
ルイス「兵を雇ってるらしいし、そこに紛れ込むことにするよ。シヴァの方を頼んでもいい?」
国木田「勿論構いませんが……潜入はルイスさんが?」
ルイス「いや、僕は顔が割れてるからね。彼女が適任だよ」
桜月「任せてください!」
そう其奴は満面の笑みを浮かべて云った。
第六話。
少し書き方を変えてみました。
どちらが読みやすいでしょうか?
ファンレターなどで教えてくれると嬉しいです。
それにしても、冒頭の太宰さんは相変わらずでしたね。
桜月ちゃんに何してるんですか、全く…。
ルイスくんに踏まれて当然ですよ!
さて、いよいよ今回の敵(?)である『帽子屋』と『シヴァ』の名前が出てきましたね。
『荒覇吐』も関係してくるし、これからどうするんだろう。
ちゃんとオチつけろよな!
はい、それでは今日はこの辺で。
また次回お会いしましょう!
collaboration.7
いよいよ潜入開始。
英国出身の迷ヰ犬は一つの約束を交わす。
No side
マッドハッター「……鼠が引っかかったよ」
眠りネズミ「私ですか?」
三月ウサギ「違うってぇ。でも、見たことのない顔だよぉ?」
眠りネズミ「情報にない少女ですね」
三月ウサギ「マフィアの隠し駒だったりしてぇ」
眠りネズミ「伝説の殺し屋かもしれませんよ?」
マッドハッター「誰でも関係ないね」
眠りネズミ「まぁ、探偵社と特務課が動いたことには変わりないですし」
三月ウサギ「早く倒したいなぁ」
マッドハッター「残念だけど、僕らが直接動くにはまだ早いよ」
眠りネズミ「お茶会も飽きてきたんだけどぉ?」
マッドハッター「クッキーでも食べていて。出番が来たら暴れて良いから」
三月ウサギ「やったぁ!」
眠りネズミ「楽しみですね」
マッドハッター「……彼との約束も、早く果たさないとね」
ルイスside
ルイス「準備できた?」
桜月「はい! 忘れ物もありません!」
良い返事だな、と僕はリストにチェックを入れていく。
帽子屋。
すんなりと桜月ちゃんの潜入が成功しそうだけど、油断してはいけない。
異能力もあるとはいえ、彼女にはなるべく使わないで貰う。
特務課に未登録の異能者がいることがバレたら色々と面倒くさい、というのが本音。
中也「気をつけろよ」
桜月「うん! 中也も外出る時は女装してね!」
中也「しねぇわ!?」
相変わらず仲良いな、と思いながら僕はチェックを入れ終えた。
時刻も良いぐらいだ。
ルイス「……桜月ちゃん、君にこれを預けても良いかな」
僕は彼女の掌に懐中時計を乗せた。
兎の描かれている、とても可愛らしい時計。
愛用してきた、僕の宝物だ。
ルイス「暫く、僕らは会えなくなるかもしれない。ただ何かあったら、絶対に助けに行くから」
桜月「……分かりました」
それじゃあ、と僕が異能力を発動させようとすると桜月ちゃんは僕の腕を掴んだ。
桜月「無理はしちゃダメですよ。私を送った後はしっかりと睡眠を取って、異能力を使わないでください」
ルイス「……うん、ちゃんと胸に留めておくよ」
桜月「絶対ですからね! 約束ですよ!」
信用されてないなぁ、と僕は笑う。
君の方が、自分を犠牲にしそうなのに。
そんなことを思いながら、僕達は指切りした。
ルイス「指切りげんまん、嘘ついたら針千本飲ます」
桜月「指切りげんまん、嘘ついたら中也に舞踏会用のドレスを着せる」
中也「はぁ!?」
「「指切った」」
なんか途中、桜月ちゃんが凄いこと言ってたな。
まぁ、無視で良いか。
ルイス「気をつけてね」
桜月「はい!」
彼女を見送った瞬間、僕は倒れた。
中也「ルイスさん!」
視界が歪む。
体も重く、暫く身動きが取れなさそうだな。
中也「あの、大丈夫ですか……?」
ルイス「異能力の使いすぎだから、そんなに心配しなくて大丈夫だよ」
何かと、異能力を使う機会が多かった。
特に人を送るときは普段より集中力が必要になってくる。
こんな短期間のうちに多発したのは、英国軍にいた時以来か。
色々と落ちたな、僕も。
潜入を桜月ちゃんに任せて良かったと、改めて思った。
ルイス「中也君、僕は少し寝ようと思うから連絡来たら出といて」
中也「それは別に良いんですけど、動けるんですか?」
ルイス「……動けません」
僕はぬいぐるみのエリアまで運んで貰うことになった。
中也side
ルイスさんの道案内に従って、異能空間を歩いていく。
途中、様々なエリアがあった。
女装させられた服が沢山あるエリアに、武器が散乱しているエリア。
でも一番驚いたのはぬいぐるみのエリアだ。
手乗りサイズのものから、俺より大きなものまで沢山ある。
ルイス「それじゃあ、後はよろしくね」
一言だけ言って、ルイスさんはすぐに寝てしまった。
よほど疲れていたんだな。
中也「……ルイスさんの携帯置いてきた」
やべぇ、と俺は来た道を戻ろうとする。
しかし元いたエリアが何処にあるかなんて、俺に分かる筈もなく。
普通に迷ってしまった。
中也「え、どうしよ」
その時、何処からか電話の着信音が聞こえて来た。
連絡が来たかもしれねぇ。
急いで音の聞こえる方に急ぐが、視線の先には真っ暗な空間しかない。
こんなところ、通った覚えがねぇな。
もしかしたら近道だろうか。
そんなことを考えながら、俺はその空間に足を踏み入れた。
中也「……。」
携帯の着信音が、どんどんと大きくなっていく。
なのに、出口は全く見えなかった。
中也「……光?」
俺が走っていくと、そこには携帯が落ちていた。
プルルル、と光を放ちながら音を出している。
ルイスさんの携帯は、こんなだっただろか。
とりあえず手に取って見ることにした。
???「あら、それに触れない方がいいわよ」
中也「──ッ、誰だ!」
辺りを見渡したが、姿はない。
???「そんなに警戒しなくても、この空間にいる人物といったら限られてるじゃない」
ルイスさんの異能空間にいる人物。
一つだけ、心当たりがあった。
あの人の《《もう一つの人格》》。
???「もう分かったようね」
手、借りるわよ。
そう聞こえた瞬間、腕を捕まれた。
少しすれば、いきなり景色が真っ白になった。
#アリス#side
#アリス#「全く、何であんなところにいたのかしら?」
中也「元いた場所を探してたら迷いました」
だからって、あのエリアに入る必要はないでしょうに。
まぁ、中也君が無事だったから良かったわ。
それで、と私はルイスの携帯を差し出す。
#アリス#「探し物はこれでしょ?」
中也「すいません、ありがとうございます」
どうして彼が異能空間にいるのか。
私は最近ふらふらとしていたから何も聞いてないのよね。
ルイスも別に話しかけてこなかったし。
よし、脅してでも聞こう。
中也「#アリス#さんは今まで何を?」
#アリス#「え、ふらふらしてた」
中也「……なるほど」
じゃあ今起こってることも知らないですよね。
そう云って、中也君は色々と教えてくれた。
#アリス#「なるほど……教えてくれてありがとう。ウエディングドレス着せると脅すところだったわ」
えぇ、と中也君が何とも云えない表情をしていた。
私、何か変なこと云ったかしら。
とりあえず、と私達はルイスの眠るぬいぐるみのエリアに向かうことにした。
第七話。
いやぁ、別行動開始しちゃったよぉ。
どうしよう本当にぃ。
桜月ちゃん潜入頑張ってぇ。
あとがき雑だってぇ?
仕方ないじゃん疲れてんだよぉ。
うわぁ。
はい。
てことで、別行動を開始したのでののはなさんの方も見てください!
マッドハッターと三月ウサギが出てきます!
うちも出てきたけど、うん。
それじゃまた次回お会いしましょう!
collaboration.8
赤の女王は過去を思い出す。
帽子屋の新情報も明らかに──!?
No side
ぬいぐるみの部屋に着いた#アリス#と中也。
#アリス#は色々と話を聞いた中で、一つ気になるところを見つけた。
#アリス#「ルイスは帽子屋について何か知っていたかしら?」
中也「え、いや特に何も……」
そう、と#アリス#は含みのある言い方をした。
もちろん中也はそれが気にならないわけがない。
少し悩んでから、#アリス#は衝撃の事実を告白するのだった。
中也side
#アリス#「帽子屋について知っている!?」
えぇ、と#アリス#さんは欠伸をした。
ルイスが知らなかったことに首を傾けていたが、そこまで驚いている様子はない。
#アリス#「あの子も色々あるからまぁ、知らなくてもおかしくはないけれど」
中也「色々、ですか?」
#アリス#「……ルイス・キャロルという人間について、貴方はどれぐらい知っているかしら?」
暫く、俺は悩んだ。
唐突だったこともあるが、急に言われてもパッとは出てこない。
中也「誕生日は1月27日、26歳の男性。異能力は『|不思議の国のアリス《Alice in wonderland》』で、異能空間に物を出し入れできる。あとは元英国軍、ってことぐらいですかね」
#アリス#「因みに、今の説明に間違いは二つあるわ」
え、と目を見開いてしまう。
全て本人から聞いた情報の筈なのに、間違いが二つもあるという。
もしかして元より嘘を教えられていたのか。
そんなことを考える俺を横目に、#アリス#さんは机と椅子をどこからか持ってきていた。
#アリス#「そういえば、帽子屋は三人と云っていたわよね」
中也「あ、えっと、はい!」
#アリス#「あの男達は英国でも有名でね。でも、私が知っている帽子屋は《《二人組》》なのよ」
もう衝撃過ぎて、驚くこともできなかった。
#アリス#「緑色の帽子が特徴的な銀髪の男“マッドハッター”、そして赤色の帽子が特徴的な金髪の女“三月ウサギ”。その“眠りネズミ”って、一体何者なんでしょうね」
中也「……其奴が“シヴァ”の可能性は?」
#アリス#「多分だけれど、シヴァは|荒覇吐《貴方の力》に惹かれた一般人。眠りネズミは帽子屋にマフィアを潰させようとしてる、という方が合ってるかもしれないわね」
中也「それ、どういうことですか」
うーん、と#アリス#さんは顎に手を添える。
暫くして放った一言は、今までの会話の中で一番予想外だった。
#アリス#「帽子屋の二人は、元《《英国軍》》よ」
中也「……え?」
一瞬、思考が停止した。
元英国軍ということはルイスさんの同僚ということになる。
つまり異能力を使わなかったとしても十分強いだろう。
もし、彼奴が戦うことになったら。
ルイスさんが向かわせたとはいえ少し心配だ。
中也「……。」
あの人は、俺達に隠していたのだろうか。
否、#アリス#さんは「知らなくてもおかしくない」と云っていた。
本当に知らなかったのだろう。
中也「マッドハッターと三月ウサギって、どんな奴なんですか?」
#アリス#「良い人達よ。戦争で変わってしまったけれど」
#アリス#さんは少し悲しそうに笑った。
#アリス#「そもそも帽子屋っていうのは、マフィアを潰そうとするような組織じゃないのよ。灰色の人間、この国でいう擂鉢街に住んでいるような人を保護&支援するのが主な活動内容ね」
中也「さっき云ってたように、やっぱり眠りネズミが──」
#アリス#「……戦争でマッドハッターは仲間を守れなかった罪悪感で病み、三月ウサギは戦うことを強制されたことで狂ってしまった。でも、あの二人が人助けをし続けたのは、心の奥底にある想いを大切にしてきたから」
想い、か。
ルイスさんも、想いを大切にして生きているのだろう。
#アリス#「二人は良い人達なのよ。無駄な争いを好まず、いつも誰かを助けるために行動している。……だから、私はそんな二人の想いを踏みにじるような行動をさせている奴を許さない」
本気で怒っている目をしていた。
辺りの空気も数度下がったような気がする。
#アリス#「中也君」
ふと、#アリス#さんは俺の名前を呼んだ。
思わず背筋が伸びる。
その先の言葉を云った#アリス#さんの瞳は、とても真剣だった。
#アリス#「もしもの時は、二人のことを本気で|殺して《助けて》ほしい」
中也「……#アリス#さんは?」
#アリス#「私じゃ二人相手に本気で戦えないもの。どうしても手加減するだろうし、まだ出会って日の短い桜月ちゃんには頼めないわ」
それで本当にいいのか、なんて聞けなかった。
過去、仲間だった奴を殺してほしいと頼むことがどれだけ苦しいことか。
俺は完全に理解できないが、とても勇気のいることだと思う。
深呼吸をして俺は──。
#アリス#side
中也「出来ません」
そう、中也君は一言だけ告げた。
#アリス#「っ、何で──!」
中也「#アリス#さんがマッドハッターと三月ウサギの為を思っていることはよく分かります。だから出来ないんです」
思わず中也君の胸ぐらを掴んでいた。
どういうことか、理解できなかった。
あの二人が想いを思い出したときにどれだけ後悔するか。
中也「確かに殺すことが助けることかもしれない。でも俺は、貴女に|救って《助けて》ほしい」
#アリス#「──!」
中也「大切な仲間なら、何をしてでも救ってやってくださいよ! |桜月《彼奴》は誰も自分のことを知らない世界で、もう一人の俺を助けるために頑張ってるじゃないですか!」
もう私は、何も云うことができなかった。
|殺してほしい《助けてほしい》なんて、逃げてるだけ。
最低だ。
本当に最低だ。
二人に向き合うことすら諦めていることも、中也君に云われるまで気づかないことも。
#アリス#「……ごめんなさい」
謝ることだけで、精一杯だった。
No side
#アリス#と中也の頭上に、穴が開いた。
少し声が聞こえて、二人は空を見上げる。
???「何でまたぁぁぁあああああああ!?」
声の主は、なんと桜月だった。
第八話。
やったぁ
合流できたぁ
嬉しいなぁ
雑だぁ
それでは、また次回お会いしましょう!
collaboration.9
今回も英国出身の迷ヰ犬はおやすみ。
赤の女王の目は、少しだけ赤かった。
No side
ルイス•キャロルの異能力で生成されている|異能空間《ワンダーランド》。
空間の中でも中也や#アリス#と遠く離れた場所に、その男はいた。
何度も舌打ちをしながら、パソコンとにらめっこをする。
画面には横浜の地図が映し出されていた。
隅の方には『sound only』という文字。
ヘッドホンからはある人物の話し声が聞こえてくる。
???「……。」
男は数分前の会話を思い出す。
『多分、僕はもう一度でも異能力を使ったら倒れる。だから、君に桜月ちゃんのことを頼みたい』
『……はぁ!?』
『君の異能力は座標さえ判れば転移することが可能だろう。もし彼女の身に危険が起こった場合は、すぐに中也君の元へ送って欲しいんだ』
『何で俺が……そもそも潜入とやらはバレないんじゃねぇのか?』
『帽子屋の動きをリアルタイムで知りたいのも一つの理由だよ。もちろん頼まれてくれるだろう?』
上から目線なことにイラついたが、最終的にルイスは土下座までした。
どうしてそこまでするのか、男には判らなかった。
でも真剣なことはしっかり伝わってきた。
ルイス『任せたよ──」
ボス「チッ……何で俺の本名知ってるんだよ、彼奴」
男が異能力を発動させると、何処かで少女が落下するのだった。
中也side
何とも云えない空気になって数分が経とうとしていた、その時のことだった。
何処からか、叫び声が聞こえてくる。
声はどんどん近づいてきて、思わず見上げてしまった。
???「何でまたぁぁぁあああああああ!?」
うーん、デジャブ。
もちろん空から落ちてきたのは|桜月《彼奴》。
気づけば体が動いていた。
桜月「ちゅ、中也!?」
中也「大丈夫か?」
桜月「だっ、だだだ!?」
大丈夫じゃねぇな、うん。
とりあえず地上に下ろして#アリス#さんに紹介する。
さっきまで泣いていたのに、全くその様子はなかった。
いや、ちょっと目が赤いか。
桜月「中也、この美人な方は?」
中也「#アリス#さん。簡単に云うならルイスさんの人格だ」
#アリス#「初めまして、で良いかしらね。私の方は此処で色々と見させてもらってたから、勝手に知ってる気になっていたわ」
美人と云われた点に関しては触れないんだな。
#アリス#「中也君、余計なこと考えてたらウエディングドレス着せるよ」
中也「何でですか!?」
まさかの#アリス#さんも、か。
ルイスさんといい、何で普通に心読んでくるんだよ。
中也「てか手前、帽子屋に潜入していた筈だろ? 何で戻ってきたんだよ」
桜月「えっと━━」
???「俺が転移させたんだ」
あ、と其奴は声のした方を見る。
桜月「私の世界にルイスさんが来た時もそうだけど、謎に私とか皆のことを転移しまくってる、例の組織のボスで、名前知らないけど、とりあえず私はアンタのことが嫌い」
ボス「えぇ……」
中也「嫌われ過ぎじゃないか、彼奴」
#アリス#「まぁ、色々あったから仕方ないのよ」
気になるけど、話を聞くと時間かかりそうだから止めておこう。
とりあえず、此奴があの男のこと嫌いなのは分かった。
ボス「其奴が頼んできたんだよ。《《自分が倒れたりした時には桜月ちゃんを頼んだ》》ってな」
男はぬいぐるみに埋もれているルイスさんを見て、怠そうに云った。
桜月「……それ本当ですか」
ボス「急に敬語になるじゃん」
確かに、と思った。
信用してないんだな、此奴のこと。
というよりは、色々あった時に嫌われることしすぎなんだな。
#アリス#「一つだけ聞かせてちょうだい。桜月ちゃんを何故、さっきのタイミングで転移したのかしら?」
ボス「危ない状態だったからだよ。まぁ、其奴が一番分かってるんじゃねぇか?」
桜月「……帽子屋に潜入しに来たと即バレして、人質にされそうになりました」
中也「はぁ!? 大丈夫だったのか!?」
とりあえず酷い怪我ではないらしい。
#アリス#さんが診ていたし、信用はできる。
あと、もう一人の俺がいる場所も判ったと云う。
中也「まだ一時間経ってねぇよな?」
凄すぎねぇか。
マフィアの情報員も顔負けだわ。
こういう仕事に向いてるだろ、此奴。
あれ、そういえば元の世界で何してるか聞いてねぇな。
彼氏が多分、此奴の世界の俺なんだよな。
それしか知らねぇ。
#アリス#「中也君?」
中也「あ、えっと、すいません。考え事してました」
そっか、と#アリス#さんは微笑んだ。
今頃だけど、やっぱりルイスさんに似てるな。
桜月「そういえばルイスさんは寝てるんだね」
中也「手前を送った直後にぶっ倒れたぞ」
桜月「えぇ!? 大丈夫なの!?」
大丈夫、ではないよな。
まだ寝てるし。
探偵社から特に連絡来てねぇし、無理に起こす必要はない。
桜月「……でも、ちゃんと休めてそうなら良かった」
#アリス#「それで、これからどうするつもりなのかしら」
#アリス#さんは俺達に問い掛ける。
#アリス#「桜月ちゃんの世界の中也君がいる場所は分かった。でも、正直貴方達三人で相手できる人間じゃないわよ」
マッドハッターに、三月ウサギ。
元英国軍で桜月もやられそうになっていた。
#アリス#さんの云う通り、俺達だけで勝てるとは到底思えなかった。
中也「……ルイスさんが動けない今、俺達だけで動くのは危険だ。シヴァについての情報もないからな」
俺がそう云うと彼奴は心配そうに、そして少し苛立ちながら下を向いた。
何かあった場合の避難は、ルイスさんが色々と考えている筈。
普通に戦力としても、あの人はいた方がいい。
桜月「待機、しか無いんですか……?」
今すぐにでも消えてしまいそうな程、小さな声だった。
どう声を掛けるべきなのか、俺には判らない。
???「探偵社の報告を待っている暇はない。今ある情報だけで動くよ」
第九話。
最後の声誰だろう。
いや、私は知ってるけど。
というか話の流れでわかるだろうけど。
ボスの扱いが話数を重ねるごとに雑になってきているような気がするのは気のせいでしょうか。
いえ、多分気のせいではないでしょう。
にしても、ボスって何者なんでしょうね。
勝手にレギュラー(?)基礎メン(?)にしてるけどこの先どうしようね。
桜月ちゃんに嫌われてるし、横浜湾にでも沈めようかな。
アハハ。
うん、疲れてるかもしれない。
それじゃまた次回お会いしましょう!
collaboration.10
彼の復活は、物語が進むことを意味する。
様々な想いが交差する中、赤の女王は何を想う──。
#アリス#side
#アリス#「……その状態で行くつもりかしら」
ルイス、と私は桜月ちゃんの肩に手を置いたあの子に問い掛ける。
結局、あまり睡眠は取れてなさそうね。
横になっていたから少しはマシでしょうけど、まだ回復していない。
#アリス#「私がそんな状態で行かせると思ってる?」
ルイス「分からない。でも、君は無理させたくないのと同時に、僕の意見を尊重させたいと思っている」
#アリス#「……。」
否定は、出来なかった。
ルイスが主人格だからじゃない。
私はずっとルイスの味方でいたい。
ただ、それだけだった。
ルイス「僕のせいで桜月ちゃんの世界の中也君が死ぬだなんて、許せないよ」
#アリス#「……全く」
私は優しく笑った。
#アリス#「貴方はいつでも誰かのために一生懸命なんだから」
ルイスも笑う。
やっぱり貴方は誰かを守る為にいつも戦ってるのが似合ってるわ。
ルイス「というか、桜月ちゃんのこと助けてくれたんだね」
ボス「お前が頼んできたんだろ。俺がすぐに送れるように色々と渡しやがって」
桜月「どういうことですか?」
ルイスは桜月ちゃんに預けた懐中時計に発信機、そして盗聴器を仕掛けておいたらしい。
色々と準備がいいわよね、ルイスって。
ルイス「さて、そろそろ話を進めようか。桜月ちゃん、中也君の居場所について詳しく聞いても?」
桜月「は、はい!」
どうやら彼方の中也君がいるのはアジトの最深部。
コードが沢山ついていたらしく、後ろには大きな箱があったと云う。
桜月「あ、あと帽子屋なんですけど──」
そこで桜月ちゃんは言葉を止めた。
迷っている。
何か情報を掴んだのかもしれないけど、話しにくいことなのね。
どんな些細な情報でも今は欲しいところ。
ルイス「無理して話す必要はないよ」
桜月「え?」
ルイス「話しにくいと思うなら、話さない決断をしてもいい。だって僕も君に隠し事してたんだから」
この世界がよく似ていたことも、彼女だけがいないことも。
戦神についても話していなかったし、私についてもね。
桜月「いや、話します」
そう、桜月ちゃんは真剣な表情で云った。
桜月「こんなこと云うのはおかしいと思うんですけど、本当に帽子屋は《《悪人》》なんですか?」
#アリス#「──!」
桜月「マッドハッターと三月ウサギと交戦した時、瞳の奥に悲しそうな光が宿っていたんです」
見間違えたわけじゃない、と桜月ちゃんは確信しているようだった。
桜月ちゃんと交戦したと云うことは、普通に潜入者を潰そうとしている。
でも、二人の想いは完全に消えていない。
涙が溢れそうになる。
桜月「多分、何か事情があると思うんです。マッドハッターが無理に話を終わらせてました」
中也「話を聞いてみても良いかもしれねぇな」
ルイス「……桜月ちゃん、眠りネズミとは会えてない?」
桜月「え、あ、はい。帽子屋の二人と、何度か傭兵とすれ違ったぐらいですね」
そうか、とルイスは少し残念そうにしていた。
でも、私は気づいてしまう。
あの子が今、《《嘘をついている》》ということに。
何を隠しているのか知らないけど、本当に無理はしないでほしいわね。
ルイス「さて、異能力を分離する方法はある。僕が知っているものだと高電力を流し続ける、とかね」
中也「……普通の奴より丈夫だろうが、そんなに耐えられねぇぞ?」
#アリス#「彼方の中也君も同じと考えたほうがよさそうね」
桜月「やっぱりあの機械──」
桜月ちゃんの考えは、残念ながらほとんど当たっているでしょう。
二回──否、三回かしら。
一度中也君が倒れてしまったのは、電流に当てられたから。
自身と同じ存在がいつだけで嫌でしょうに、実体化しそうになったら暴走しそうになって当然よ。
ルイス「……。」
あ。
あれは情報が多すぎて頭が痛くなってきた時の表情ね。
とにかく、荒覇吐が分離する前に中也君が死ぬ前に助け出せば、何も問題はないでしょうに。
#アリス#「……中也君」
そう云うと、着信音が鳴り響いた。
鳴っていたのは、ルイスの携帯電話。
相手は福沢さんね。
シヴァのことを頼んでいたらしいし、その連絡でしょう。
何か進展があったら良いけれど。
中也「……すいません、俺も電話です」
二人が電話のため、少し遠くに離れた。
私の近くにいるのは桜月ちゃんだけ。
桜月「あの、#アリス#さん」
#アリス#「ん? どうかしたのかしら?」
桜月「ルイスさんって、どうして自分のことを犠牲にするんですかね」
自身を転送させた後に、ルイスは倒れた。
そう、確か中也君が云っていたわね。
気にしてる、と考えるのが妥当かしら。
#アリス#「そういう貴女こそ、仲間の為に死のうとしてたじゃない」
桜月「──!」
#アリス#「云ったでしょ。私はずっとあの子を見てきてるから、貴方のことも知ってるって」
桜月「……中也を助ける為に、私もルイスさんも無理をする気がするんです」
桜月ちゃんはそう、小さく呟いた。
この子達は、自分をすぐ犠牲にする悪い癖がある。
だから、ストッパーが必要なのでしょうね。
ルイスにとっての私みたいな子が、いれば良いのだけれど。
桜月「ふにゃ!?」
ギュー、と私は桜月ちゃんの頬を掴む。
もちもちでいいなぁ、という私の感想は置いておこう。
#アリス#「貴女はまだ子供なんだし、グダグダ考えなくて良いのよ。もしも自己犠牲しそうならルイスが止めるわよ」
桜月「で、でも……」
#アリス#「待って。自分で自分を撃つほどの馬鹿だったわ。逆に、桜月ちゃんに見てもらわないと駄目じゃないかしら?」
そういうと、彼女は笑った。
#アリス#「ま、私から云えることは大したことじゃないわ」
私は彼女から離れて笑ってみせる。
#アリス#「自己犠牲をする前に、未来を見なさい。|中也君《囚われの姫》は助かっても|桜月ちゃん《姫を助けに来た王子》がいなければ悲しみ、一緒に過ごせたはずの未来がなくなる」
桜月「……経験されたんですか?」
#アリス#「顔に出てたかしら」
囚われの姫に私達が当てはまったことはある。
あの時は、あれしか選択がなかった。
そう、分かっていても彼女は戻ってこない。
桜月「#アリス#さんのお陰で、少し緊張がほぐれたような気がします。ずっと中也のことで頭がいっぱいだったので」
#アリス#「……頑張ってね」
私は多分、帽子屋を相手に戦えないから。
第十話。
あー、好き。
ルイスくんカッコいいよー!
いよいよ戦闘かな、次。
なんかね、最近色々と飛ばし飛ばしで書いてるんだよね。
本当に何でだろう(-ω- ?)
だから中也を助け出すシーン書いてます。
飛ばしすぎー
はい、この辺で終わります。
それじゃ、また次回お会いしましょう!
…桜月ちゃんファンクラブないのかな。
collaboration.11
英国出身の迷ヰ犬たちは、いよいよ奪還作戦を開始する。
シヴァはまさかの──。
No side
帽子屋のアジトである廃墟。
その入口には二人の大柄な男が立っていた。
見張りだ。
???「すみませーん、お届け物を持ってきたのですが──」
帽子を深く被った郵便屋の少年が辺りを見渡す。
男1「何か届くなんて聞いていたか?」
男2「いや、聞いてねぇ」
少年「ほぇ!?」
受け取って貰えないと困ります、と少年は慌てる。
仕方なく、男達は郵便物を受け取ろうとした。
ふと、片方の男が問い掛ける。
男1「一体届け物はなんだ?」
少年「そりゃあ勿論──」
カチャ、と|安全装置《セーフティ》の外された音が廃墟に吸い込まれるようにして消えた。
少年「──君達が外の空気を吸える、最後の時間だよ」
帽子を放り投げた少年の髪は金色。
若葉のような緑色の瞳は、しっかりと眼前の相手を捕らえている。
少年──ルイスが二人を戦闘不能にすると同時に、背後に沢山の人が現れた。
──帽子屋のアジト制圧開始から、約30分前。
ルイスside
僕達は探偵社にいた。
福沢さんからの電話で、シヴァについて色々と判ったことがあるらしい。
仕事が早いな、本当に。
その情報を元に、僕達は中也君の奪還作戦を立てるのだった。
国木田「お手元の資料をご覧ください」
いつもより人が多い会議室は、椅子が足りなくて僕とボスは後ろで立っていた。
前では国木田君がホワイトボードに色々と書いている。
国木田「シヴァの正体は《《一般人》》でした。特務課に協力してもらい指名手配してもらってますが、未だに捕まっていません」
中也「……シヴァの目的は俺でいいんだよな」
太宰「中也改め、荒覇吐。荒神と呼ばれた彼奴が顕現することで世界をやり直そうとしてるんだろうね」
さて、色々と面倒くさそうだな。
シヴァの異能力は不明。
中也君から荒覇吐を引き剥がすことを考えるに、電気を操るのかと思っていた。
しかし機械があったから違う。
ルイス「協力者の件はどうなった?」
国木田「そちらも指名手配していますが、まだ情報は……」
帽子屋の眠りネズミについても、まだ何も分かっていないらしい。
この状態で作戦を立てるのは少し不安が残るけど、太宰君と乱歩がいるなら良いか。
ルイス「僕達の目的は二つ。中也君の救出と、帽子屋とシヴァの捕縛。優先順位は云った通りだね」
情報を整理しよう。
中也君は現在、異能力が分離されそうな状態。
荒覇吐が顕現すれば世界が終わる。
唯一、対抗できるのは中也君の『汚濁』と太宰君の『人間失格』。
僕の異能空間に入れてもいい。
ま、全てが終わる前に助け出したら良い話だけど。
ルイス「警備の強化はしただろうけど、アジトの場所は変わっていない。なら、其処で決着をつけよう」
桜月「中也は最深部にいました」
太宰「それなら、もう一人の中也を助けに行く人以外が傭兵に対応した方がいいですかね」
太宰君の作戦をそのまま採用することにした。
傭兵の相手はもちろん、乱歩が指示を出す拠点も必要となってくる。
与謝野さんの治療場所も必要かな。
まぁ、それはそれでいいとして──。
ルイス「──誰が行くべきかな」
僕一人で行った方が良いかもしれない。
今からそれを相談しないとか。
乱歩「助けに行くのはルイスと桜月を中心に、太宰と素敵帽子君とかが良いと思うよ」
中也「素敵帽子君って」
桜月「え、双黒(小)じゃないの!?」
中也「はぁ!?」
太宰「あははっ、桜月ちゃん最高だよ!」
ふざけている彼らは無視して、乱歩は指を指す。
乱歩「あと君もだ」
ボス「……俺?」
乱歩「君の事はルイスから色々聞いたよ。異能力とか色々、ね。僕の推理だと、君は絶対にルイス達と行動を共にした方が良い」
乱歩が断言したのを聞いて、却下しようとは思わなかった。
でも、桜月ちゃんがどう考えるかだけ不安だ。
とりあえず乱歩の云った五人を中心に最深部へ向かうことにしよう。
国木田「傭兵は全員異能力者ではないことが分かりました。なので警戒するのは帽子屋の三人だけで良いかと」
ルイス「ありがとう、国木田君」
それじゃ、と僕は机に置いていた携帯電話に話しかける。
ルイス「これから迎えに行くから。あと、裏ルートの監視を引き続きよろしくね」
???『……構わないけど、本当に《《あれだけ》》で良かったのかい?』
ルイス「それは此方の台詞だよ。幹部一名と、構成員約50名。僕が貸して欲しいと頼んだとは云え、よく許可だしてくれたね」
君の考えを否定しない、と森さんは呟く。
そして笑いながら──。
森『今日中に決着をつけてくれるのだろう?』
──と云った。
僕は少し目を見開いてから、笑う。
ルイス「勿論ですよ、|首領《ボス》」
森『え!?』
それでは、と僕は電話を切ろうとする。
森『もしかしてマフィアに入ってくれるのかい? それなら五大幹部を六大幹部にするよ。というか、裏幹部みたいなのを──!』
桜月「き、切ってよかったんですか……?」
ルイス「あの状態の森さんを相手することほど面倒くさいものはないよ」
桜月「……否定しないでおきます」
太宰や中也も頭を抱えていた。
振り回された時のことを思い出すだけで、思わずため息が出てしまう。
中也side
ルイス「さて、作戦をもう一度確認するよ。まず今の騒ぎを聞き付けた傭兵の相手を黒蜥蜴」
広津「任せておけ」
ルイス「国木田君、谷崎君、賢治君。君達三人は細雪を上手く活用しながら屋上を目指して」
谷崎「はい!」
ルイス「乱歩と与謝野さんの護衛を福沢さん、紅葉、鏡花ちゃん。桜月ちゃん用に振り分けられた部屋を拠点にするよ」
福沢「あぁ、任された」
ルイス「残りのメンバーは中也君のところへ向かうよ」
桜月「……はい」
少し、彼奴の様子がおかしい気がした。
緊張してんのか。
ルイス「もう一度云うけど、最優先事項は中也君の救出。次に帽子屋の三人とシヴァ。何かあったらすぐに連絡を取ること」
いいね、とルイスさんはこの場にいる全員に問い掛ける。
あまり声は出せないので、静かに頷いておいた。
最深部までは結構距離があるだけでなく、傭兵の待機部屋も結構多い。
例の五人に敦と芥川を追加した俺達は、もう一人の俺がいるところまで真っ直ぐ向かうことにした。
桜月「此方です」
彼奴に俺達はついていく。
途中、傭兵と何度か戦闘したものの、そこまで人数は多くなかった。
探偵社とマフィアがちゃんとやってくれてるんだな。
桜月「次はこの角を右で──」
曲がろうとした瞬間、敦が其奴の腕を掴んだ。
そして芥川が一瞬で前に出る。
芥川「空間断絶」
ルイス「……中也君の方の警備を固めていたか」
桜月「あ、ありがとう、っ」
敦「ううん、大丈夫。」
芥川「…あぁ。」
どうしようかな、とルイスさんは顎に手を添える。
狭い廊下に鳴り響く銃声。
来た道を戻ろうにも、彼奴は全体を把握しきれていないという。
ルイス「太宰君」
太宰「まぁ、強行突破ですね。少し廊下が狭いのであれですけど、|閃光弾《フラッシュボム》などを使えば問題ないかと」
ルイス「じゃあ、その作戦で行こうか」
ルイスさんは異能空間から|閃光弾《フラッシュボム》を持ってきて、ピンを抜く。
芥川が一瞬だけ空間断絶を解除して、投げ入れた。
ルイス「耳も塞いで!」
目を閉じていたのに、一瞬視界が明るくなった。
光が収まった瞬間、俺達は即座に敵を倒す。
やっぱり太宰の作戦が間違うことはない。
そう、再認識させられた。
ルイス「……今ので人が寄ってきたか」
芥川「僕達が対応します。ルイスさん達は進んでください」
中也「二人で大丈夫か?」
敦「大丈夫です。倒したらすぐに追いかけますね」
桜月「……死なないでね、敦君、芥川」
第十一話。
シヴァ、真逆の一般人。
あと、地味に協力者と言う奴らがいることも明らかになりましたね。
やっぱり前回のコラボより長くなりそうです。
私がやりたいこと多いのが一番悪いところなんですけどね。
まぁ、ののはなさんに迷惑をかけない程度で遊べたらと思っています。
そういえば昨日、ファンレターくれた人がいたんですよ。
コラボ、読んでくれてるって。
めっちゃ嬉しかった!
またファンレターもらえるようにちょっと頑張ろうかな。
それじゃ、また次回お会いしましょう!
collaboration.12
いよいよ戦友と対面した、赤の女王。
帽子屋の二人を相手に下した決断とは──?
ルイスside
あれから僕達は結構奥に進んでいた。
敦君達の方に流れてくれたのか、あまり敵に会うこと無く順調と云えるだろう。
しかし、こういう時は大抵面倒くさいことが起こる。
ボス「俺は冗談とか、そういう類いが嫌いだ。特に嘘や裏切りだな」
本当に唐突のことだった。
ボスから話し出すことなんて殆ど無いし、内容も少し引っ掛かる。
ボス「お前ら、一体何を隠してる?」
桜月「……別に隠してなんか」
中也「俺は隠してるぞ」
へ、と僕は振り返ってしまった。
最後尾にいた中也君。
彼は今、何と云っただろうか。
太宰「はぁ……やっぱりか」
桜月「え、やっぱりって、え?」
ふと、気がついた。
中也君は作戦開始してから異能を使っただろうか。
僕は多分、いや絶対に一度も見ていない。
ルイス「……まさか荒覇吐が」
中也「正確には、異能の細かい制御が難しくなっています。もう一人の俺が、危ないかもしれません」
ルイス「少し、急いだ方がいいかもね」
太宰君が気が付いたのは、元相棒だからだろうか。
確かに相棒のことは、誰よりもよく知っている。
些細な変化にも気付きやすい。
僕達の足は、先程よりも少し速くなっていった。
太宰「……一寸待ちたまえ」
桜月「どうかしたんですか?」
太宰「少しおかしいと思わないかい?」
あれから少しして、僕達は開けた空間に出た。
戦闘に向いているのだが、傭兵は誰一人いなかった。
隠れる場所がないからかと思ったけど──。
#アリス#side
#アリス#「そんなこと無さそうね」
いきなり桜月ちゃんの目の前に現れたナイフ。
キーン、と鏡に鋭利なものがぶつかる音が響き渡った。
ルイスと変わってすぐ、桜月ちゃんの前に鏡を出した。
ぶつかったのはもちろん、ナイフだ。
ボス「……一体何処から」
???「そりゃあ、君達の行き先からさ」
振り返ると同時に蹴りを入れた。
でも私に躊躇いがあったせいで、簡単に受け止められてしまう。
#アリス#「──ッ」
マッドハッター「こんな蹴りじゃ誰も倒せないよ、#アリス#」
すぐに太宰君が間に入ろうとしてくれて、何かされることはなかった。
私は、嫌な汗を流す。
やっぱり彼等とは戦えない。
そう再認識した。
マッドハッター「それにしても、流石と言ったところかな。三月ウサギの攻撃に反応できるんだから」
三月ウサギ「流石は#アリス#ちゃーん!」
えへへっ、と三月ウサギは笑う。
三月ウサギ「久しぶりぃ! 鏡月ちゃん元気だったぁ?」
桜月「……貴女達に受けた傷ならもう治りました」
三月ウサギ「そうなんだぁ! 凄いけどそれはぁ──」
気がつけば一瞬で距離を詰められていた。
三月ウサギ「あんま嬉しくないかなぁ」
狙いは、やはり桜月ちゃんね。
対応しようと思ったけど、私は動けなかった。
懐に潜ませているナイフを、彼女に振るうことが出来ない。
《《仲間》》を傷付けることなんて、出来ない。
中也「──重力操作」
三月ウサギ「はわわっ」
桜月「中也!」
中也「これぐらいなら問題ねぇよ」
彼女の大剣が床に突き刺さる。
重力を何倍にも掛けられたのね。
三月ウサギ「それならぁ!」
ボス「何もないところから剣が!?」
太宰「異能力なら──!」
そう、前線に立つ太宰君。
しかし桜月ちゃんがナイフで受け止めていた。
すぐに中也君も対応する。
三月ウサギ「残念。鏡月ちゃんが守らなければ血が飛び散ったのになぁ」
文句を言いながらマッドハッターの隣へ戻る三月ウサギ。
私の体は震えていた。
太宰君は、此方側の人間はもちろん仲間だ。
でも彼等だって大切な仲間ということは変わりない。
どうするべきなのか、分かっている筈なのに体が動かない。
マッドハッター「良かったね、そこの包帯だらけの君。残念ながら三月ウサギの武器は全て本物だよ。異能無効化の君じゃ、血だらけになっていただろうね」
太宰「……物質転移系の異能力者か」
桜月「いや、多分あれは大きさを変えてます」
三月ウサギ「正解だよぉ! でも、気づいたとしても貴方達には止められないよねぇ?」
小さくしたナイフを、対象に当たる直前で元の大きさに戻す。
そうすることで、気づかない内に攻撃されている。
それが昔から三月ウサギの戦闘法。
小さくすることで沢山の武器を持ち歩くことも出来て、戦闘中に武器が手元から無くなることはない。
中也「見えねぇ攻撃は防げねぇぞ!」
ボス「……チッ」
足元に穴が開く。
気がつけばあの空間に出る少し前の廊下にいた。
ボス「とりあえず後退したのはいいが……」
太宰「この一本道での戦闘の方がツラいだろうね」
桜月「#アリス#さん、大丈夫ですか?」
こんなに自分が動揺するとは思っていなかった、というのが正直なところ。
でも、今ルイスに変われば三月ウサギの攻撃を防ぐことは難しくなる。
|不思議の国のアリス《Alice in wonderland》では、物を転移できるけど連続で対応できない。
それに、こんなところで異能力を使って後で倒れたら元も子もない。
乱歩『今、どういう状況?』
太宰「乱歩さん」
ふと、乱歩からの通信が入った。
道を戻ったから気にしてくれたのね。
太宰君が状況を説明してくれている間に、私は思考を巡らせる。
この状況を打開する為の最適解は何かしら。
乱歩『一番の目的は素敵帽子君だ。誰かが残って相手するのが良いだろうね』
ボス「……やっぱりそうか」
桜月「でも、誰が残ったら──?」
中也side
「私達が残ります」
「君達に頼みたい」
太宰と、もう一つの声が重なった。
桜月「ルイスさん!?」
乱歩『理由を聞いても?』
太宰「ルイスさん達は先に進むべきだと思ったからです。それに、中也と私なら戦力としては十分かと」
乱歩『ルイスは?』
殆ど同じだよ、とルイスさんは云う。
そして小さく付け足していた。
ルイス「二人を止められるのは太宰君だけだ」
その真意は、判らない。
敦『太宰さん、全員倒せたので今からそちらに向かいます!』
中也「芥川達も来るならすぐ片付くだろ」
ナイスタイミングだな。
名探偵も異論はないらしい。
ルイス「今のところ味方の負傷者は?」
乱歩『大怪我はいないよ。ここにも何人か傭兵が来たけど、特に問題はないね』
名探偵のところには結構な実力者が多いからな。
探偵社の社長に鏡花、あと姐さん。
あと、黒蜥蜴も問題ないだろうな。
一番気になるのは探偵社員達の屋上組か。
桜月「敦君たちの合流を待った方がいいですかね」
ボス「いや、そんな時間はくれないってよ」
ルイス「──。」
ルイスさんが太宰に何か云うと同時に、銃声が響き渡った。
しかし、私達に当たることはなく床に転がる。
マッドハッター「……君、動けたんだ」
#アリス#「いつまでも震えてるわけには、いかないでしょ」
ボス「走り抜けるぞ、泉桜月、赤の女王」
桜月「云われなくても!」
彼処は広い空間だ。
珍しく、太宰が不安そうな表情をしていた。
それを見て、俺は笑ってやる。
中也「珍しく弱気じゃねぇか」
太宰「……なんで分かるの、気持ち悪い」
俺を無視して、太宰は真っ先に飛び出した。
三月ウサギの相手をいる。
だが、太宰の方が身長あるのに圧されていた。
俺はマッドハッターの相手をするか。
マッドハッター「行かせないよ」
中也「それは此方の台詞だよ、狂人」
マッドハッター「狂人、は心外だなぁ」
彼奴にナイフを振るうマッドハッターに蹴りを入れる。
中也「|桜月《アイツ》を傷つけるなら、俺を先に殺すんだな」
桜月「中也……!」
中也「早く行け。手前の世界の俺を、助けに行くんだろ」
桜月「……ありがとう」
また後で、と彼奴は#アリス#さん達に着いていった。
異能なしでどこまでやれるか。
太宰を相手にしてきたのが、こんなところで役立つとはな。
第十二話。
先に言っておきます。
今回の後書き長いです((
前回のコラボなら次の話で終わってましたね。
下手したら20話いくかも((
いや、言い訳をしよう。
1.書きたいシーンが多すぎる
2.伏線張りすぎた
3.コラボ終わりたくない
結構なわがままでワロタ。
次に三月ウサギについて。
あとで小説以外とかでまとめようかと思ってるんですけど、ちょっとだけ話したい。
三月ウサギって、まぁ、不思議の国のアリスの登場人物(?)なんですよ。
で、異能も頑張りたいなーと思いまして。
最初の方でアリスが大きくなったり小さくなったりするじゃないですか?
それをちょっと変えて、物の大きさを変えられるようにしました。
マッドハッターの異能は──。
あと、一番話したいのが冒頭のシーンですね。
「お前ら、一体何を隠してる?」のところです。
ののはなさんの方を読んでいただくと分かるように、桜月ちゃんも隠し事をしてます。
そして中也もしていました。
でも、お前らに含まれるのはまだ居るんですよ。
こうやって伏線を張りまくるから長くなるんですよねぇ…。
私、やっぱり馬鹿だわ。
それでは、また次回お会いしましょう!
collaboration.13
敦達と合流した太宰と中也。
英国出身の迷ヰ犬たちは、いよいよ最深部へ──!
太宰side
太宰「二対一で卑怯だとかは思わないのかい?」
三月ウサギ「卑怯ぅ?」
太宰「私と中也で君のような女性に寄って集るなんて、卑怯以外の何でもないと思わないんだね」
もちろん、と女性は笑った。
三月ウサギ「遊ぶなら大勢の方がいいもん」
気がつけば、目の前に彼女がいた。
ギリギリのところで中也が蹴り飛ばしてくれたけど、私一人では対応できない。
異常な速度。
身体的なものはもちろん、頭の回転も早い。
シヴァへ引渡す約束もあるのだろうが、確実に戦闘能力の低い私から潰そうとしている。
太宰「……やはり完全にイカれてはない、か」
中也「どういうことだ?」
三月ウサギ「あー、やっぱり気づいちゃうかぁ」
はぁ、と彼女はため息をつく。
三月ウサギ「人を殺すことに罪悪感はあるよぉ。私の、私達の《《想い》》に反する行動だからぁ」
中也「なら、なんで俺達と戦ってる? マフィアに喧嘩を売った?」
三月ウサギ「……さぁ、どうしてだろうね」
何処か一点を見つめながら、悲しそうに彼女は笑う。
しかし、次の瞬間には私へ手に握られているナイフを振りかざしていた。
もちろん敵だから躊躇がない。
太宰「中也、懐かしの方法でいこう。作戦コードは──」
「「桜と紅月」」
太宰「……君と意見が合うなんて、明日世界が滅ぶんじゃないかな」
中也「安心しろ。ルイスさん達が今、そうならないように戦ってるからな」
そんなの、中也に云われなくても重々承知だ。
彼女達を行かせないために私達は残る選択をした。
ルイスさん達が、本当の敵と戦えるように。
太宰「行くよ、相棒」
そして#アリス#さん。
貴方の仲間は、私が必ず取り戻します。
ルイスside
桜月「此処です!」
勢いよく扉が開かれる。
その先には大きな箱のようなものかあり、沢山の管をつけられた中也君が椅子に座っている。
あれが、異能を分離する為の装置。
早めに機械から外してあげないといけないな。
ルイス「──!」
闇の中で何かが輝いた。
僕が桜月ちゃんを押すと、左腕に痛みが走る。
じわっ、と血が服に滲んでいった。
ルイス「君は《《シヴァ》》かな?」
???「……いえ、違いますよ」
銃口を此方に向けながら、その人物は笑みを浮かべていた。
機械の後ろから現れたのは紫色の帽子を被った、見覚えのある黒髪の男。
眠りネズミ「僕は眠りネズミ。帽子屋の一人……と傭兵の人には自己紹介してましたね」
ボス「フョードル・ドストエフスキー……!?」
ドストエフスキー「先刻ぶりですね、桜月さん」
眠りネズミの正体は、魔人君。
桜月ちゃんは知っていたのかな。
多分、これも話すか迷っていたことなのだろう。
桜月「ルイスさん、あの、ごめんなさ、」
ルイス「謝る必要はないよ。僕は大丈夫だから、ね?」
太宰君と同等の頭脳。
中也君を助けないとだけど、今は相手にしたくないな。
ドストエフスキー「早く止血した方が良いですよ。いや、毒抜きですかね」
ルイス「……!?」
視界が歪む。
先手を取られたか。
桜月「ルイスさん!」
ドストエフスキー「敵を前によそ見は感心しませんね」
ボス「それはお前の台詞だ」
次の瞬間、銃声が響き渡った。
撃っていたのは、もちろんボスだ。
見事、魔人君の拳銃へと当たって、カランと音を立てて床へ落ちる。
流石は例の組織の長をしてただけあるな。
ボス「お前じゃないお前に結構な恨みがあってな」
ドストエフスキー「言葉遊びですか?」
ボス「いいや、言葉の意味はあっているんだよ。まぁ兎に角、大人しくやられてろ」
ドストエフスキー「それは難しいですねぇ……」
拳銃を回しながら、ボスは僕と桜月ちゃんの方を見た。
ボス「解毒できるか?」
桜月「ふ、不死鳥ならできるかもしれないけど……」
曖昧な返事に、桜月ちゃんはため息をつかれていた。
解毒する時間を魔人君がくれるとは思えない。
僕が自分で毒抜きするしかないか。
ルイス「桜月ちゃん、君はサポートに入って。僕のことなら心配要らないから」
桜月「でも……」
ルイス「大丈夫。早く中也君を助けてあげて」
僕は精一杯笑って見せた。
すると、桜月ちゃんは何か云いたそうにしながらもボスの隣に並んだ。
桜月「……完全に信用した訳じゃないから」
ボス「へいへい」
さて、僕は早く毒抜きしないとだな。
結構痛いのは間違いないけど、仕方ない。
ドストエフスキー「二対一は此方が不利ですね」
なので、と魔人君は両手をあげて笑った。
ドストエフスキー「僕はこの一件から手を引くことにします。彼のことはお好きにどうぞ」
桜月「は?」
ドストエフスキー「高電圧を一度流されているので少し火傷してたりしてますけど、《《まだ》》命に別状はないと思いますよ」
ボス「……何が目的だ」
目的なんてありませんよ。
そう、魔人君はずっとニコニコしていた。
流石に信じられず、ピリついた空気が消えることなどない。
ボス「……あぁ、なるほどな」
桜月「何か分かったの?」
カチャ、と魔人君から僕へと銃口が向けられた。
ルイス「君、冗談とか好きなの?」
ボス「さっきの話をもう覚えてないのか」
ルイス「……ははっ、本当に笑えない冗談だね」
僕は乾いた笑いを溢すことしか出来なかった。
ボス「今回の事件について全部、洗いざらい話せ。そうすれば撃たないでやる」
桜月「待って! 裏切りってまさかルイスさんのこと!?」
何も答えることなく、彼は僕の方へ歩みを進めてきた。
桜月ちゃんが必死に止めようとしている。
ルイス「本当に撃つ気かい?」
ボス「……。」
桜月「待って、ねぇ、なんでルイスさんを──!」
僕が目を閉じると同時に、発砲音が聞こえた。
同時に感じる、浮遊感。
目を開いた僕はうまい具合に着地する。
僕がさっきまでいた場所。
今は何もなく、誰もいない筈だ。
なのに、ポタポタと血が流れていた。
ボス「俺の異能力は『対象を|穴《ホール》を通して空間を越える』だけだ。でも、この異能力を使うに当たって人の気配には敏感になってるんだよ」
残念だったな、とボスは黒い笑みを浮かべていた。
うーん、太宰君と良い勝負じゃないかな。
笑顔はもちろん、煽りスキルも。
ボス「失礼なこと考えてたろ」
ルイス「ナンノコトカナー」
ボス「で、お前は何を隠してるんだ」
あー、と僕は少し目を泳がせる。
ルイス「実は魔人君、味方なんだよね……」
第十三話。
なんか、ボスが回を重ねるごとにイケメンになってる気が…
というか何で隠し事してるの気がつくんだろうね!
中也と桜月ちゃんと、ルイスくん。
みんな、隠し事しすぎだろ。
え、私のせいだって?
そんなの知らねぇ((
で、みんな大好きドス君が登場☆
ヤッタネ☆
すぐに味方だって発覚したけどね☆
ついでに補足。
帽子屋の二人+ドス君はみんな同じ格好(色違い)です。
イメージとしては、不思議の国のアリスのマッドハッターの服。
小さいトップハットにカラースーツ、かなぁ…
因みに帽子屋のイメージカラーは
マッドハッター/緑
三月ウサギ/赤
眠りネズミ/紫
です。
はい、後書き長くなりそうなのでここで終わります。
それじゃ、また次回お会いしましょう!
collaboration.14
英国出身の迷ヰ犬による、衝撃的な告白。
そして彼らは、いよいよシヴァと対面する──!
ルイスside
桜月「え?」
ボス「は?」
ドストエフスキー「もうネタバレですか。つまらないですね」
そう、魔人君は僕に解毒剤を渡してきた。
本気の毒にする必要あったのかな、と僕は少しだけ魔人君を睨む。
ドストエフスキー「演技じゃ面白くないじゃないですか」
悪魔め。
ドストエフスキー「悪魔ではなく、僕の通り名は魔人ですよ」
ルイス「いや、心を読まないで?」
そんなことを話していると、殺気を感じた。
振り返ると、そこには白髪の青年が血を流しながら立っている。
ルイス「姿を消すことができるが、気配までは消せなかったようだね」
???「アンタ、いつから裏切ってた」
ドストエフスキー「初めから、でしょうか。僕の方は元から貴方の仲間ではなかったので」
舌打ちをしながら、青年は右肩を抑えて止血している。
今のうちに、一応僕も戦闘態勢に入っておこうかな。
そんなことを考えていると、ふと桜月ちゃん達と目が合った。
まだ頭の整理がついていないんだろうな。
桜月「あの、えっと、とりあえずフョードルは味方ってことで良いですか?」
ルイス「今のところはその認識で構わないよ。いつ、裏切られるか分かったものじゃないから」
ドストエフスキー「信用されてませんね、僕」
ボス「どの世界でも裏切ってるから仕方ないだろ」
とりあえず、と僕は拳銃をシヴァへ向ける。
ルイス「大人しく捕まるなら何もしない。戦う気があるなら、相手になるよ」
シヴァ「あの力は、荒覇吐は|器《中原中也》によって制限されて良いものではない! 僕は世界を一からやり直すんだ!」
ルイス「……後悔しないことだね」
怪我してるとは思えないほど、シヴァの動きは早かった。
応戦しようと構えるが、彼は真っ直ぐ中也君の元へ向かっていた。
ドストエフスキー「っ、前回から十二時間経ってます。不安定なところに電圧を掛ければ──」
ルイス「荒覇吐が顕現する……!」
すぐに走ろうとしたが、足に痛みが走った。
太腿にナイフが刺さっている。
思わずバランスを崩して倒れてしまった。
機械の電源が入れられたら、一番最悪な事態になる。
異能力改め荒覇吐の分離に、中也君の死。
下手したら此方の中也君の荒覇吐も共鳴して、強制的に汚濁形態になるかもしれない。
太宰君が近くにいるだろうけど、二つの荒覇吐にこの建物が耐えられるわけがない。
ルイス「──!」
グダグダ考えている僕の横を何かが通り過ぎた。
彼女は先回りし、シヴァに蹴りを入れる。
しかし、後ろへ飛ぶことで簡単に避けられてしまった。
桜月「避けないでよ」
シヴァ「それは聞けないお願いだね」
ふと、桜月ちゃんが此方を見た。
視線の先にいたのは──。
ボス「泉桜月にだけ集中していると痛い目を見るぞ」
--- 『|不思議の国の入口《welcome to the wonderland》』 ---
ボス「──ははっ、振り出しに戻ったな」
シヴァside
男が手を伸ばした瞬間、さっきルイス・キャロルを転移した穴が僕の足元に開いた。
《《やはり》》彼奴──。
桜月「普通に異能名がかっこよくてイラつくんだけど」
ボス「えぇ……俺、助けてやったよな?」
桜月「誰も頼んでない」
ボス「はぁ!?」
仲が良いのか、悪いのか。
よく分からないが、呼吸はぴったりだった。
互いが互いの隙を埋め、決して邪魔しないように動いている。
シヴァ「これじゃ中原中也に近づけない……!」
ルイスside
ルイス「──っ、いきなり転移しないで貰いたいな」
ドストエフスキー「あの場にいる方が危険だと思いますが」
魔人君の云う通りだけど、普通に許せなかった。
足が痛いのに着地するように転移させないでほしい。
ドストエフスキー「怪我はどうですか」
ルイス「……応急手当ならすぐ終わる。多分、毒とかは塗られていない」
ドストエフスキー「それなら良かったです」
こういう時は傷口を焼いた方が良いけど、流石に火はないからな。
そんなことを思いながら、とりあえず圧迫しておいた。
与謝野さんに後で見て貰おう。
ドストエフスキー「それでは、僕はこの辺で失礼しますね」
ルイス「……どうして僕がネタバレした時点で引かなかった」
少し瞠目した魔人君。
しかし、すぐにいつもの笑みを浮かべていた。
ドストエフスキー「ただの暇潰しですよ」
それでは、と今度こそ魔人君は何処かへ姿を消した。
僕は壁に手を添えながら立ち上がる。
ボスには、色々と見抜かされていたのだろう。
中也君の近くに送ってくれたお陰で、すぐ作業に取りかかれそうだ。
早く救出して、シヴァを捕らえないと。
ルイス「……。」
シヴァは僕が転送できないように傷を負わせたのかな。
流石に中也君を機械ごと|異能空間《ワンダーランド》へは送れなさそうだ。
仕方がないので電源を切るしかない。
でも機械は想像以上に厄介な作りだった。
それに、中也君を椅子から引き剥がすのが一番苦労しそうだ。
あんな鉄の枷とか、外させるつもりないでしょ。
コードも適当に抜くわけにはいかないし──。
ルイス「少し手を貸して、#アリス#」
#アリス#『えぇ、分かってるわ』
ボスside
どうやらルイス・キャロルは作業を始めたらしい。
中原中也はこれで良いとして、問題は──。
シヴァ「その程度の攻撃じゃ当たらないよ」
コイツだな。
一般人にしては強すぎる。
ナイフをルイス・キャロルに命中させたのはもちろん、俺の不意打ちも当たらない。
異能力で姿を消されたら泉桜月は対応できねぇし、やけに戦闘慣れしてるじゃねぇか。
一体どうなっていやがる。
乱歩『……ぇ……こ……てる……』
桜月「乱歩さん?」
ボス「最深部で電波が悪いんだろ。シヴァは俺が相手するから聞いてこい」
桜月「でも、」
はぁ、と俺は背中を任せていた泉桜月の肩を押す。
少し倒れそうになりながら、其奴は扉の方まで行った。
ボス「その際だから云わせて貰うが、普通に邪魔だ」
桜月「はぁ!?」
ボス「お前は異能力を使ったシヴァが見えない」
だから、と俺は何もない背後に蹴りを入れた。
シヴァ「──ッ!」
ボス「連絡を聞いてこい。お前には勝てないが、あの組織の長を出来るぐらいには強いんだよ」
あと、普通に名探偵と話したくない。
色々と知られてるらしいし、俺のこと。
何か云いたそうにしながら泉桜月は走り出した。
扉を抜けた彼奴を見送る暇もなく、俺は眼前に迫っていたナイフを避ける。
気配が分かるとはいえ、|武器《エモノ》の大きさとか分からねぇんだよなぁ。
まぁ、そんなこと関係ないか。
ボス「ひとつ聞いていいか」
シヴァ「……何だ」
ボス「何故、彼方の世界の中原中也を選んだ?」
シヴァ「──知らない」
嘘をついていない、か。
シヴァ「《《彼奴》》が悪いんだ。全部、彼奴が《《この世界じゃない中原中也を送ってきやがった》》から計画がずれた。魔人との約束だったマフィアの壊滅も出来ないし、彼奴が──《《テニエル》》が別世界の中原中也なんて連れてきたから……!」
ボス「……あぁ、なるほど」
やれやれ、と俺は頭に手を添えた。
よくシヴァは冷静でいたな。
まさか、そういうことだとは思わなかった。
ボス「お前も大変だな、色々と」
シヴァ「……通信?」
シヴァが懐から機械を取り出した。
通信機なのだろう。
誰かと連絡を取っているようだった。
その時、ふと思った。
泉桜月が帰ってくる気配がない。
連絡が取れたのなら、さっさと帰ってくればいい。
シヴァ「──よくやった、マッドハッター」
笑みを浮かべるシヴァ。
全く来そうにない中原中也達。
名探偵からの連絡。
帰ってこない、泉桜月。
最悪な可能性が頭に浮かんだ。
シヴァ「アンタ達の仲間、全員死んじまったってよ」
第十四話。
うわぁ…情報量多すぎでしょ…。
てか、何だよこの終わり方。
ボスの主人公感www
展開は決めてるけど、改めて書き出すと面白いんですよねぇ…。
グダグダで((
シヴァがいよいよ登場。
ちょこちょこ名前だけ出てきたんだけどね。
あと、ドス君は裏切りすぎ。
そして全部あなたの掌の上で転がされ過ぎ。
ドス君、もう登場しないのかな…。
それじゃ、また次回お会いしましょう!
collaboration.15
本当に、新旧双黒は死んでしまったのだろうか。
ボスはシヴァの発言に笑みを浮かべる。
ボスside
ボス「……ははっ」
シヴァ「なぜ笑う?」
ボス「お前が莫迦だからだよ。泉桜月を見逃した時点で、詰んでる」
俺は大きく息を吸った。
ボス「ルイス・キャロル!」
ルイス「うるさい! というか桜月ちゃんは!?」
ボス「中原中也は後回しにしろ。早くしねぇと──」
--- ──残った奴等が本当に死ぬぞ ---
ルイス「それってどういうこと!?」
いいから、と俺は隙だらけのシヴァへ攻撃を仕掛けると同時に異能力を発動させた。
中也side
彼奴が帽子屋と戦っているのに、俺は何も出来なかった。
それが、少し悔しい。
太宰「……中也」
中也「何だよ」
太宰「どうにか、マッドハッターと三月ウサギに隙を作れないかな?」
隙、だと。
俺も太宰も、敦と芥川だって深手だ。
下手に動けば出血多量で本当に命に関わるぞ。
太宰「君も気づいているだろう? マッドハッターは『…あぁ、全員死んだよ』と報告した。でも、私達はこうして生きている」
中也「──!」
太宰「彼らは抗っているんだよ。洗脳されても尚、本当の想いを決して忘れてはいない」
中也「ルイスさんが手前にだけ云っていたのは、その事についてか」
仕方ねぇ、と俺は立ち上がる。
異能で無理矢理動くとするかな。
中也「……にしても」
いつか云っていたが、彼奴は異能力を使わないようにしている。
だからか、戦闘は体術が中心になっていた。
重心の置き方や、技の繰り出し方に凄く見覚えがある。
中也「俺に教わってるのかも知れねぇな、彼奴の世界の」
桜月「中也! 動いちゃ駄目!」
三月ウサギ「よそ見は感心しないねぇ……って、ぇ?」
マッドハッター「っ、莫迦!」
横に重力をかければ、何倍もの速度が出せる。
そのまま三月ウサギを殴ってやった。
中也「おぉ、飛んだ飛んだ」
すぐにマッドハッターがサポートに入りやがったから、そんなにダメージは入ってないだろうな。
ま、彼奴から離れさせられたから良いか。
桜月「中也の莫迦! 怪我酷くなってるじゃん!」
中也「手前も鳩尾殴られたりしてるだろ。対して変わらねぇよ」
桜月「変わるからね!?」
文句を云おうとする其奴を守るように、俺は抱き寄せる。
そして異能力で銃弾を止めてやった。
マッドハッターは舌打ちしている。
マッドハッター「せっかく殺さなかったのにどうして動くのかなぁ……本当に死ぬよ?」
中也「生憎と、俺は相棒に良いように使われる《《牧羊犬》》らしいからな。仕方なく羊の相手をするしかねぇんだよ」
マッドハッター「僕は羊じゃ──!」
その瞬間、マッドハッターはなにか気づいたらしい。
マッドハッター「待て、太宰治は何処だ──」
三月ウサギ「──マッドハッター?」
マッドハッターが振り返り、俺達はその先の景色を見た。
太宰の隣で座っている、三月ウサギ。
彼奴の瞳には光が宿っていた。
先程までと、明らかに雰囲気が違う。
三月ウサギ「何で貴方、銃なんか持って……いや、それ以前に此所は何処……」
マッドハッター「何を、云って……?」
桜月「え、太宰さん、中也、どういうことですか?」
簡単なことさ、と太宰はいつも通り笑おうとしていた。
だが、怪我のせいか少しひきつっている。
太宰「彼女も、彼も、《《洗脳》》されていたんだよ。シヴァとは違う異能者にね」
--- 「太宰君、どうにかマッドハッターと三月ウサギに触れて異能を解除してほしい」 ---
太宰「そう、ルイスさんがあの時云っていたんだ」
中也「だから手前も大人しく触れられてろ、マッドハッター」
戸惑っているマッドハッターに触れることは、差ほど難しくなかった。
深手の太宰がゆっくり歩いても問題はない。
マッドハッターを、青い光が包み込んだ。
桜月「ねぇ、中也」
中也「何だ?」
桜月「そろそろ離してくれない?」
あ、と俺は思考停止した。
守るために引き寄せて、そのままだった。
中也「わ、悪ぃ……」
さて、と太宰が洗脳が解けた二人どう説明しようか迷っていると頭上に穴が開いた。
何度か見たことがある。
俺はとりあえず桜月を移動させることにした。
ボスside
やって来たのは中原中也たちが残った、少し開いた空間。
適当に着地していると、何故か顔が真っ赤になっている中原中也と泉桜月がいた。
リア充め((
ルイス「っ、これは……」
太宰「あ、ルイスさん。約束は果たしましたよ」
ルイス「……ごめん、僕の判断ミスだ。君達がこんなに怪我してしまうなんて」
ルイス・キャロルは、そう下を向いた。
そんな彼奴に寄り添ったのは──。
三月ウサギ「まーたルイスはそうやって自分を責めるんだからぁ。いつも駄目だって云ってるでしょ?」
ルイス「……っ、ごめん」
俺はそんな奴らを横目に通信機を使う。
ボス「おい、重傷四人をどうにかしたいから指示をくれ」
乱歩『悪いけど、今は無理だ。僕らもそうだけど、増援が来て黒蜥蜴も国木田達も大変なことになっている』
桜月「増援!?」
中也「何処かに潜んでやがったのか……」
敦「僕はまだ動けそうですけど、芥川が……」
芥川「問題などない……僕はまだ戦え((ゴホッ」
ちょ、禍戌が吐血してるんだが。
急いで探偵社の女医に見せねぇとヤバいぞ。
その時、通信機から銃声が聞こえた。
彼処にいた奴らは銃を使わない。
そして、銃が使われる前に倒す筈だ。
桜月「乱歩さん!」
乱歩『……大丈夫。やられたのは《《敵》》だよ』
でも、と名探偵は少し声を低くした。
乱歩『どうして君が僕達を助けるんだい?』
???『今、貴方達を失うのは違う気がしましてね』
その声を俺は聞き覚えがあった。
もちろん、泉桜月もあるだろう。
ボス「……フョードル・ドストエフスキー」
フョードル『心配しなくても、他の二ヶ所にも僕の仲間が行きました。誰も死んでないですよね?』
???『勿論だよー! ドス君もギリギリ間に合ったようで何より!』
???『……此方も問題ない。差ほど援軍はいなかったしな』
???『それじゃまた後でねー!』
泉桜月が、何か云いたそうな表情をしている。
片方は変声機を通していたが、ふざけてる方の声に聞き覚えがあるのだろう。
俺はないが、こいつの世界は俺がいない間にも進んでいるからな。
俺の知らない未来で出会ったのかもしれない。
フョードル『それでは、シヴァさんによろしくお伝えください。では、またお会いしましょう』
一生会いたくねぇ。
桜月「あれ、そういえばシヴァは?」
ボス「え、そこにいるぞ」
俺は上を指差した。
天井にぶら下がっているシヴァ。
泉桜月を始めとした数人がポカーンと口を開けている。
中也「これは一体どういうことだ?」
ボス「頑張った」
敦「いや、その説明だけじゃ分かりませんよ!?」
芥川「あまり大きな声を出すな、人虎……腹の傷に響く……ゴホッ」
敦「ちょっ、芥川喋るなって、吐血しすぎだぞ、死ぬぞ、」
仕方なく俺は説明することにした。
といっても、そんなに難しいことじゃない。
俺の異能力で作られた|穴《ホール》を通る間に縄で縛って、気絶する方へ移した。
あまり変化は見えないが、一応アルビノみたいになってる筈だ。
桜月「ほへぇ……」
中也「よく判らねぇが、凄いな」
そんなことより、と俺はルイス・キャロルの方へ向かう。
ボス「シヴァは捕らえて、援軍も対応できた。其奴らはどうする?」
ルイス「今、全部説明したよ。洗脳されていた頃──つまり、僕達と戦ったりした時の記憶は断片的にしかないらしい」
ボス「洗脳の異能者は何処にいるんだ?」
ルイス「判らないけど、多分問題ないと思うよ」
そう、優しく笑ったルイス・キャロルが少し怖かった。
だが、そんなことより気になることがある。
三月ウサギは泉桜月の方に行っているが、マッドハッターが全く動かない。
死んではない、よな。
ルイス「……マッドハッターは、放っておいてあげて」
ボス「気絶してるのか?」
ルイス「いや、まだ気持ちの整理がついてないだけだよ。彼は、誰よりも優しいから」
その時、何か嫌な予感がした。
どうやらルイス・キャロルも同じ気配を感じたらしい。
その気配を放っているのは──。
第十五話。
もうこれ、ルイス君主人公じゃないでしょ((
いやぁ、どの視点で書くのが良いか悩むとボスになるんですよね。
なんか第三者視点じゃないけど、状況の表現がしやすいと言いますか、うん。
???が途中二人登場しましたよね。
片方はみんな大好きゴーゴリです。
え、別に大好きじゃない?
私が好きなんだよ((
鏡花ちゃんと、織田作と、ルーシーの次に好き。
時々真面目(?)になるギャップが良いよね。
というか、私の自己紹介見てもらったら分かると思うんですけど結構イカれてる人好き。
本編に関係なくなってきたので話を変えましょう。
帽子屋の二人は、シヴァとは違う異能力者に洗脳されていました。
だから桜月ちゃんがいつか「悪い人には思えない」的なことを言ってたんです。
だって、本当はいい人だもん。
いつかアリスが言っていたように「想い」を大切にしている二人だもん。
ルイス君の中から見ていたアリスが嬉しくて泣いていたのは、ここだけの話です。
良かったね、アリス。
どんどん登場する新キャラ、というかオリキャラ。
・シヴァ
・マッドハッター
・三月ウサギ
・洗脳の異能者←new
まぁ、最後の奴はあと一回ぐらいしか出てきません。
多分だけどね。
あともう一人、多分名前だけ出てくる奴もいます。
次回に早速出そうかな。
それじゃ、また次回お会いしましょう!
collaboration.16
重傷の新旧双黒、
洗脳の解けた帽子屋の二人、
何考えてるんだドス君、
天井に吊るされてるシヴァ、
説明がダルいボス、
涙を流すアリス、
異能力を使いたい桜月、
仲間を想うルイス。
そして、嫌な気配を放っているのは──。
ルイスside
三月ウサギ「……マッドハッター?」
ルイス「テニエル! 何処でも良いから全員逃がせ!」
ボス「はぁ!?」
これは、本当にヤバイことになった。
ボス「重傷者優先で構わないよな!?」
即座に太宰君、敦君、芥川君、中也君を送ろうとしてくれた。
でも、誰かが送られることはない。
ボスの方を見ると、指一本動かせなくなっている。
ルイス「#アリス#──」
#アリス#と入れ替わろうとしたが、無理だった。
腹部に入った、マッドハッターの蹴り。
僕が理解する頃には水平に飛び、壁に打ち付けられていた。
骨は、問題ない。
でも今すぐに動けそうにはなかった。
マッドハッター「いやだ、そんなめでみないで、ぼくは、おれは、ただみんなを、まもりたかっただけなのに、」
桜月「ルイスさん!」
ルイス「僕は大丈夫……それよりボスを助けない、と……」
頭が痛いな。
強く打ったのかもしれない。
視界も、少しばかり歪んでいる。
マッドハッター「あはは、とけいがこわれちゃった、きみのじかんも、とまっちゃった、」
やはり、ボスは動けない状態か。
マッドハッター「みられたくない、なら、めを、かおを、あたまを、なくせばいい、」
マッドハッターは三月ウサギの使っていた、大きな剣を手に持っていた。
まさか、マッドハッターはボスを殺す気か。
与謝野さんでも治せない、即死。
マッドハッター「くびをはねたら、もう、だいじょうぶ、」
ルイス「駄目だ、彼が死んでしまったら……君が殺してしまったら……」
全てが、終わってしまう。
ボスside
完全にイカれてる。
俺、こんなところで死ぬのか。
走馬灯が見えてきたが、ろくな思い出がない。
人に良いように使われて、騙されて。
本当、最悪な人生だったな。
誰も近くにいないし、ルイス・キャロルは異能力が使えない。
死を覚悟した俺は目を閉じることも出来ず、その瞬間を待つのだった。
--- 奇獣『朱雀』 ---
刃が当たる瞬間、俺は何かに体当たりされた。
そして、そのまま運ばれる。
桜月「すみません、異能使っちゃいました」
ルイス「……いや、謝らなくて良いよ」
ルイス・キャロルは真剣な表情で感謝を伝えていた。
いつの間にか、体は動くようになっている。
一体何が起こったんだ。
桜月「怪我はない?」
ボス「……お前、何で俺を助けた?」
桜月「死にそうな人を助けるのに、理由なんて要らないでしょ」
その言葉に、俺は何も返せなかった。
三月ウサギ「私も一緒に洗脳されたのが問題だから、ルイス君達は逃げて良いよぉ」
ルイス「君との共闘は久しぶりだね、三月ウサギ」
大戦以来かな、とルイス・キャロルは笑う。
その表情は嬉しそうにも、辛そうにも見えた。
三月ウサギ「……私の話、聞いてたぁ?」
ルイス「もちろん。でも、少なからず僕にも責任はあるからね」
桜月「私にも手伝わせてください。お二人と、ちゃんと友達になりたいので」
三月ウサギ「桜月ちゃん……」
ボス「流石にルイス・キャロルでも二人のサポートは無理だろ。俺も手伝ってやるよ」
そう、俺は泉桜月の隣に立った。
嫌な顔一つでもされるのかな、と思っていたがそんなことなかった。
泉桜月は、俺のことが大嫌いだろう。
でも背中を預けられるぐらいには、俺は信用している。
彼奴がどう思ってるかは判らないけどな。
ルイスside
三月ウサギ「……時を操る。それがマッドハッターの異能だよぉ」
桜月「え、時間!?」
ルイス「正確にはちょっと違うんだけど……ま、いっか」
ボス「いや、良くねぇよ」
問題はさっき送れなかった中也君たちだ。
敦君は虎の自然治癒能力があるからまだ良いけど、全員を連れて逃げることは難しい。
ルイス「桜月ちゃん、一度僕の傷を治してもらってもいいかな。その後は、自分の鳩尾をどうにかするといい」
桜月「え、あ、はい!」
ルイス「……中也君たちは、心配しなくて大丈夫だから。絶対に守るから」
何に変えても。
#アリス#『ルイス』
ルイス「……。」
#アリス#『莫迦なこと考えてるんだったら、強制的にリタイアさせるから』
ルイス「……判ってるよ」
久しぶりに脅されたな。
そんなことを考えながら僕は不死鳥に腕やら足やらの傷を治してもらっていた。
あれ、もしかしなくても結構怪我してたのかな。
こりゃ応急手当しても異能力が使えなくて当然だ。
ルイス「ボス、タイミングを見て四人を|異能空間《ワンダーランド》へ送れる? あと、彼方の中也君も」
ボス「……マッドハッターの邪魔がなければ」
ルイス「じゃあ、僕らで隙を作るから──」
#アリス#side
#アリス#「──任せたわよ」
そう告げると同時に私は走り出した。
地を蹴る度にジャラ、と何かが揺れる音が聞こえる。
#アリス#「鎌」
三月ウサギ「はぁーい」
洋服の飾りを取ると同時に、私は飛ぶ。
手の中にあった小さな鎌が一瞬にして大きくなる。
そのまま私は振り下ろした。
桜月「え!?」
ボス「……三月ウサギの異能力は触れていなくても発動できることは判っていたが、まさか赤の女王の手元にあるものもいけるとは」
マッドハッター「い、のうりょく」
#アリス#「──!」
桜月「#アリス#さん!」
ピタッ、と体が動かなくなる。
しかし私は一ミリも焦っていなかった。
#アリス#「……。」
ボス「……異能力」
--- |不思議の国の入口《welcome to the wonderland》 ---
三月ウサギ「よく判ったねぇ。今なら邪魔されないのぉ」
ボス「……彼奴が目で訴えてきやがったから。てか、彼奴は助けなくていいのか?」
三月ウサギ「うん、問題ないよぉ」
何故なら、と三月ウサギは私を見て微笑んだ。
それを最後に景色は不思議なものへと変わる。
ルイスside
三月ウサギ「あの二人は強いからね。本気を出すことは、もう無いだろうけどね」
僕は変わった瞬間に、手にある鎌でマッドハッターの剣を防ぐ。
金属の交わる音が空間に響き渡った。
三月ウサギ「さーて、私達も頑張るよぉ!」
桜月「……ねぇ、ボス」
ボス「質問は後だ。全部終わってからでも、遅くはないだろう」
本気、か。
確かに僕がもちゆる全てを使って戦うことは、絶対にない。
世界が崩壊するとしても。
まぁ、今はマッドハッターに集中しないと。
とりあえず作戦会議をしたいから蹴りを入れておく。
この程度じゃ、彼は気絶しないだろう。
本当、軍人っていうのは何かと面倒くさいな。
三月ウサギ「怪我は?」
ルイス「刃が少し掠ったけど問題ないよ」
さて、と僕は警戒しながら話し始める。
ルイス「マッドハッターの異能力は時を操る。正確には《《対象の時の流れを遅くする》》んだけど、判りやすく云うなら動こうとしても通常の約31,536,000倍の時間が掛かる」
ボス「そりゃ、一ミリも動いてないように思うわ」
ルイス「この異能の唯一の弱点は、その対象に誰かが触れたら解除されてしまうこと」
その誰かに、桜月ちゃんの奇獣が含まれるとは思っていなかったけど。
完全に人しか駄目だと思ってた。
そういえば異能生命体、で良いのかな。
まぁ、今すぐに答えを出さなくちゃいけないことじゃないから置いておこう。
三月ウサギ「だから、動きが止められたらすぐに助けに行ってねぇ。因みに止められる対象の数に制限はないけど、異能効果の及ぶ範囲はあるからぁ」
桜月「遠距離でどうにか出来たら一番いいかな」
三月ウサギ「まぁ、気絶させないとだからリスクを冒してでも近距離になるけどねぇ。あ、そうだぁ!」
桜月「……これは?」
三月ウサギ「桜月ちゃん、多分だけど武器あんまり使わないでしょ? 一番|小刀《コレ》が使いやすいだろうから、持っておいてよぉ。必要になったら私が異能力で大きくしてあげるから云ってねぇ」
ありがとう、と桜月ちゃんは小さな小刀を受け取っていた。
なんか、鏡花ちゃんを連想するな。
ルイス「……さて」
壁に打ち付けられていたマッドハッターが、起き上がってきた。
情報の共有は出来たし、本気で気絶させにいかないと。
僕も、#アリス#のように仲間を傷つけたくないという想いがある。
だけど、やらなくちゃ。
マッドハッターを助けられるのは、僕達だけだ。
第十六話。
あとがき☆
名前だけ出てきたね、うん。
こんなすぐ出すとは思ってなかったけど。
前書きがこの話だけちょっと違います。
それぞれの状況の整理──的な。
ここで海嘯の裏話(唐突)
マッドハッターの異能は時間に関係しています。
これは、不思議の国のアリスのお茶会のところから引っ張っています。
時計ウサギの時計を直そうとして、壊してるんですよね。
時計が壊れる→時を刻めない→時を止める。
まぁ、時を止めるとか強すぎなんで調整した結果ああなりました。
「31,536,000倍ってどういうこと?」と思った人いますかね?
私は書いていて頭おかしいと思いました((
えーっと、何か一秒かけて動こうとします。
マッドハッターの異能が使われていたらそれが一年かかります。
で、一年は31,536,000秒なんですよ。大体。
だから31,536,000倍です。
次に「くびをはねたら、」のところです。
まぁ、想像がついてる人もいると思いますけど一応。
不思議の国のアリスに登場する“赤の女王”。
彼女の有名な台詞である「彼女の首をはねろ!(Off with her head!)」をイメージ、というか元ネタになります。
因みに少し遡って「みられたくない、」のところは全く不思議の国のアリスと関係ないところから引っ張ってきています。
それは、殺戮の天使です。
まぁ、知らない人へネタバレになるのでちゃんと説明しません。
場面的にはキャシーのところです。
一人でも「あれか」と気づいてもらえたらいいな、程度に思ってます。
てか、最終決戦がオリキャラだけになっちゃった☆
なんでだろう☆
それじゃ、また次回お会いしましょう!
collaboration.17
彼らはいつでも迷い、抗い続ける。
その先にある結末が必ずしも良いものとは限らない。
No side
ルイス「──始めようか」
桜月「四季『夏・五月雨』」
ルイスの言葉をきっかけに、戦いの火蓋が切られた。
始めに仕掛けたのはルイスと桜月。
雨は少しずつマッドハッターに傷を負わせていく。
桜月「四季『夏・花火』!」
目を開けられないほど明るい中、ルイスは足を止めない。
戸惑うマッドハッターへ、しっかりと蹴りを入れた。
桜月もそれに続く。
世界が違うのに、息はぴったりだった。
マッドハッター「いのうりょく──」
ボス「残念、遅かったな」
マッドハッター「な、んで……さっきまではんいないに……」
悪い笑みを浮かべるボス。
ルイスと桜月は、マッドハッターの異能力の範囲から出ていた。
三月ウサギ「ちゃんと背後も見ないとダメだよぉ」
一連の間に三月ウサギは背後に回っていた。
マッドハッター「もちろん、みているさ」
三月ウサギ「……わぁ」
ピタッ、と三月ウサギの動きが止まる。
マッドハッターの異能がきちんと発動したのだ。
三月ウサギの首へと刃が近づいていく。
即座に飛び出した桜月。
しかし、マッドハッターはそれを読んでいたのか振り返る。
桜月「奇獣『四神・玄武』!」
マッドハッター「……かたい」
桜月「玄武の甲羅が……」
マッドハッターが蹴りを入れたが、桜月との間に玄武が入る。
簡単には傷つかない玄武の甲羅が欠けた。
それほど、マッドハッターの蹴りは洗練されていたのだ。
ルイス「……僕は彼ほど足技の優れた人を見たことがない。絶対に喰らっては駄目だよ」
一番早いときは、ルイスでも対応できない。
桜月もカウンターを警戒していなければ、重傷だっただろう。
この間にボスはナイフを投げて、マッドハッターに掠り傷を作る。
三月ウサギの救助も同時に進めていた。
一度、距離を取って息を整える。
三月ウサギ「ありがとねぇ」
ボス「とりあえず助けたのは良いが、強すぎやしねぇか?」
桜月「気絶させるのは難しい、ですかね」
ルイス「最終手段としては、気絶するほどの傷を負わせる。でも下手したら──」
その瞬間、カキンと金属音が響き渡った。
桜月の目の前に大きな盾が現れている。
とっさに三月ウサギが異能力で小さな盾を投げ、元の大きさに戻していた。
盾を挟んだ反対側には、ナイフが転がっている。
三月ウサギ「大丈夫だったぁ?」
桜月「ありがとう、三月ウサギさん」
作戦開始から、軽く一時間は経っている。
四人に疲労が見え始めてきた。
ボス「短期決戦で行くぞ」
肯定も否定もする間なく、四人は落ちた。
そして出たのはマッドハッターの四方。
一気に攻めれば誰かが気絶させることができる。
安直な考えだが、早く終わらせるにはこれしかない。
桜月「動けなっ……!?」
三月ウサギ「今まで四人同時に止めたことなんてなかったのに……」
でも、とルイスは気がつく。
先程までは話すことも出来なかったが、今は会話ができる。
四人同時に止めることは、普通に止めるより弱い。
ボス「どうする! このままじゃ全滅するぞ!」
ルイス「そう言われても今、#アリス#は手が離せないんだよ!」
考えても、答えはでない。
全員が動けないなら、このまま首を刎ねられて終わりだ。
しかし、誰も諦めていない。
何か打開策がある筈と最後まで考えようとする。
桜月「……ぁ」
先程も説明したが四人は話すことが出来る。
そして、誰かが触れれば異能力は解除される。
桜月「奇獣『オオカミ』……!」
マッドハッター「なっ!?」
オオカミが咆哮をあげた。
次の瞬間には、その速さで四人に触れて解除している。
マッドハッターはすぐに距離を取った。
マッドハッター「おおかみは、むり、こわい」
三月ウサギ「……そういえばマッドハッター、オオカミ嫌いだったなぁ」
ルイス「あー、そうだったね」
桜月「もしかして、オオカミ出してたら勝てます?」
ボス「いや、それで勝てたら苦労しないわ」
そっか、と桜月はオオカミを撫でる。
ルイス「……あれ、そういえばシヴァは?」
ボス「縄で縛って吊るしてる。ほら、彼処に──って」
ボスが指差した先は、マッドハッターの頭上。
ルイス達はもちろん見上げるのだが、それはマッドハッターも一緒だった。
そして、運悪く目覚めるシヴァ。
桜月「え、これヤバいんじゃ!?」
三月ウサギ「……っ、マッドハッター!」
三月ウサギの声が届くことはなく、近くに落ちていた剣で頭上のシヴァへ襲いかかる。
どうにか逃がそうとするシヴァだったが、縄はちゃんとしているので抜けられない。
ルイスも桜月も、誰もが敵であった筈のシヴァを助けようと行動した。
しかし、刃の当たるスピードの方が確実に速い。
マッドハッター「ぼくを、みないで」
その時、パリンと何かが割れた。
粉々になった鏡がキラキラと、そして真っ赤な血がポタポタと地面へ落ちる。
シヴァとマッドハッターの間に長い金髪が揺れた。
#アリス#「……っ」
鏡が耐えきれなかった剣を、アリスが手で掴んで止めている。
剣を伝い、地面へと血だまりが広がっていく。
マッドハッター「くびをはねなきゃ、じゃないと、おれは、」
桜月「#アリス#さん! 逃げて!」
剣を押し返した#アリス#は、シヴァの縄を切ってボス達の方へ投げ飛ばした。
着地を狙われているのか、マッドハッターは剣を構えている。
桜月の言葉に、優しく笑った#アリス#。
その場にいた誰もが、嫌な予感を感じ取った。
#アリス#は、ほとんどの攻撃を鏡で防ぐことが出来る。
でも、そうはしなかった。
鮮血が舞う。
辺りを赤く染めていき、マッドハッターへも血が掛かっていた。
#アリス#は先程と変わらず、優しく笑っている。
赤の女王と呼ばれるようになった由来は圧倒的な指揮能力、そして返り血で服が赤く染まったから。
#アリス#「……自分の血で染まったのは、初めてね」
そう呟きながら、#アリス#はマッドハッターに倒れかかった。
マッドハッター「#アリス#……?」
#アリス#「えぇ、私は#アリス#よ」
マッドハッター「ぼく、いったい、いや、それよりも……!」
あぁ、と#アリス#はまだ笑みを浮かべていた。
痛みは尋常じゃないのに、だ。
#アリス#「これぐらい問題ないわよ。もっと大変なことは戦場で経験してきたわ」
マッドハッター「僕、きみを、傷つけて、」
#アリス#「貴方が想いを壊すのと比べたら大したことないわ。本当に貴方、話を聞かないわねぇ」
マッドハッター「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、」
#アリス#「……謝って欲しい訳じゃないのだけれど」
血塗れた手で#アリス#はマッドハッターの頭を撫でる。
#アリス#「悪いけど、後は任せたわよ。ルイスが|異能空間《ワンダーランド》で待っている、から……」
桜月「#アリス#さん……」
ボス「さっさと転移するぞ。それと、お前は逃げれると思ってるのか?」
シヴァ「──!?」
ボスがシヴァの肩を掴み、満面の笑みを浮かべていた。
あ、とシヴァは何かを察した表情をする。
ボス「|不思議の国の入口《welcome to the wonderland》」
第十七話。
可愛いものが大好きなルイスくん。
もちろん、オオカミを撫でたいと思っていました((
『その先にある結末が必ずしも良いものとは限らない』
ルイスくんと桜月ちゃんが自己犠牲しないように、と思っていたアリス。
でも、大切なものを守るためには命をかけてしまう。
誰よりも優しいマッドハッターが、一番傷つかない方法を選んだアリスを貴方はどう思いますか?
ボスの扱いが雑だったはずなのに、いつの間にかシヴァの方が雑になってるというね。
いやぁ、オオカミのくだりを書いてるときに思い出したんですよ。
あ、シヴァ忘れてた。どうしよう。
前回の話でも放置だったしね。
で、考えた結果こうなった。
それじゃ、また次回お会いしましょう!
collaboration.18
異能空間に転移するなり、治療が始まった。
殆どの人が無傷の状態で集まっていたが、唯一姿が見えないのは──。
No side
桜月「あれ、太宰さんがいない?」
敦「人間失格のせいで与謝野|女医《せんせい》じゃ治せないから大きな病院に行ってるよ」
中也「……終わったのか」
桜月「あ、中也」
中也「怪我してなさそうだな」
桜月「うん」
中也「……手前は無事で良かった、桜月」
え、と桜月は瞠目する。
桜月「名前! やっと呼んでくれた!」
中也「……うるせぇ」
桜月「あははっ、顔真っ赤だよ~」
中也「赤くねぇ!」
ボス「うわ、リア充うぜぇ……」
中也「誰がリア充だコラ」
ボスに掴み掛かろうとする中也。
それを見て笑う桜月の肩が不意に叩かれる。
桜月「ふにゅ」
振り返ろうとすると、桜月の頬にその人物の指が当たる。
中也「心配かけたな。ルイスさんから色々聞いたが──」
桜月「中也ぁ!」
中也「ちょ、泣くことねぇだろ!?」
桜月「だって、私、中也が死なないか、ずっと不安で、」
号泣する桜月の頭を優しく撫でる中也。
ちょっと待って、どっちも中也でややこしくなってない?
ボス「せっかくの再会なのに邪魔すんなよ」
いや、こっちに話しかけないでくれるかな。
ボス「うるさい黙れ」
ルイスside
与謝野「一応、治療は終わったよ」
ルイス「……ありがとう」
僕は感謝を伝えて、ベットの近くに椅子を持ってくる。
全部終わった、よね。
治療が終わってすぐに目覚められる状態じゃないのは判っている。
でも、もしものことを考えてしまう。
目覚めなかったら、せっかく解決したのに笑えない。
ルイス「君も結構自己犠牲するよね、#アリス#」
#アリス#が帽子屋と戦えないことは予想できていた。
でも、マッドハッターを救うためにわざと攻撃を受けるなんてね。
あれが最善策なのは、僕も判っていた。
短期決戦は難しく、気絶させれるほどの攻撃を与えられるとは限らない。
ルイス「仲間を守れなくて病んだから、同じ状況を作り上げる。そこまでは僕も思い付いたけど流石に実行には踏み出せなかったね」
全部が僕と魔人君の思い描いていたシナリオ通りに進んだわけではない。
この結末で、本当に良かったのかな。
マッドハッター「……ルイス」
ルイス「あ、服のサイズ大丈夫そうだね」
三月ウサギ「普通に疑問なんだけど、なんでワンピースあるのぉ?」
ルイス「万事屋で色々使ってたんだよ」
マッドハッターはシャツにデニム。
三月ウサギは薔薇の刺繍が施されたワンピースを着ていた。
僕は椅子を持ってきて、座るように促す。
三月ウサギはすぐに座ったけど、マッドハッターは躊躇っているように見えた。
はぁ、と僕はため息をつく。
ルイス「先に言っておくけど、今回の件で君に非はない。シヴァの協力者であった洗脳の異能者が君達の記憶を改ざんして、中也君を傷つけたり僕らと戦うように仕向けた」
マッドハッター「でも洗脳を防ぐことが出来た筈だ」
ルイス「可能性の話なら何とでもいうことが出来るよ」
言い方が、キツくなってしまう。
ルイス「僕が云えたことじゃないけど、起こったことはなかったことにはできない。過去に縛られて、後悔で足を止めるぐらいなら、がむしゃらでもいいから前へ進んだ方がいい」
三月ウサギ「本当にルイスが云えたことじゃないじゃん」
ルイス「……自分にも言い聞かせてることでもあるんだよ」
マッドハッター「ねぇ、ルイス」
僕はずっと、マッドハッターの方を見れていなかった。
自分がどれだけ酷いことを云ってしまうか、怖い。
でも、ちゃんと向き合わないといけない。
マッドハッター「ありがとう」
ルイス「──!」
マッドハッター「俺、アンタを追い越すぐらい頑張るから覚悟してろよ」
ルイス「……じゃあ、僕も頑張らないとね」
三月ウサギ「二人とも仲良しに戻れて良かったぁ」
ニコニコと笑う三月ウサギ。
別に喧嘩してたわけじゃないんだけどな。
桜月「あ、ルイスさん見つけた!」
ルイス「どうかしたの?」
桜月「中也に|首領《ボス》から連絡が来て、太宰さんも問題ないそうです」
携帯を見ると、めっちゃ着信が来てた。
普通に通知切ってたから気づかなかったな。
まぁ、森さんだし良いや。
桜月「三月ウサギさん可愛い!」
三月ウサギ「ありがとぉ。あ、一応マッドハッターも自己紹介したらぁ?」
マッドハッター「え!?」
三月ウサギ「桜月ちゃん、友達になってくれるってぇ」
マッドハッター「いや、普通に迷惑じゃ……」
桜月「迷惑じゃありません! 私は泉桜月。好きなものは可愛いものと甘いものです!」
えぇ、とマッドハッターは僕に助けを求めてきた。
いやこっち向かれても困るよ。
君が仲良くしたいと思うなら返してあげればいい。
マッドハッター「僕はマッドハッター。好きなもの、は……」
三月ウサギ「何で照れてるの?」
マッドハッター「ちゃんと自己紹介する機会なんてないからだよ!」
ルイス「それで、好きなものは?」
マッドハッター「……紅茶です」
ぽつり、とマッドハッターは呟く。
桜月「良いですね!」
中也「あ、桜月こんなところにいたのか」
桜月「中也!」
中也「この世界の|首領《ボス》からの連絡伝えたら帰ってくるって云ってただろ」
色々と大変だったけど、あちらの中也君も大丈夫そうだな。
もしも電流を流すのを阻止できなかったら。
そう考えるだけで頭が痛くなってくる。
これだけ大掛かりなことやって作戦失敗、からの世界滅亡とか笑えないよ。
さて、そろそろ落ち着いてきたし後始末をしないとかな。
ルイス「安吾にはこっちから話を通しておく。まぁ、彼のことだから色々手を回してくれるとは思うけど……」
マッドハッター「大丈夫。覚悟は出来てるよ」
三月ウサギ「マッドハッターの言う通り! もし牢屋に入れられても私達は問題ない。だから、そんな悲しそうな顔しないで?」
ルイス「……うん」
もう一度会える。
僕はそう、信じて待つことにした。
ルイス「中也君、今回は巻き込んで申し訳なかった。僕に理解できるとは言わないが、大変だっただろう」
中也「謝らないでください! この世界へ来る異能に巻き込まれた俺の落ち度でもありますから」
桜月「中也、この世界に来たときのこと覚えてるの?」
中也「え、あぁ……。普通に歩いてたら足元に穴が開いて、気がついたら捕まってた」
桜月「……穴?」
まさか中也君がこの世界に来たときのことを覚えてたとは。
穴に落ちて別の場所に移動する異能。
もちろん桜月ちゃんは気づいてしまっただろう。
中也「おい桜月!?」
桜月ちゃんが走り出す。
行き先は、もちろん《《彼》》のところ。
中也「ルイスさん、もしかして例のことは……」
ルイス「……まだ伝えられてない」
三月ウサギ「例のことぉ?」
マッドハッター「シヴァの協力者についてだね」
うん、と僕は頷く。
シヴァには協力者が二人いた。
一人はマッドハッターと三月ウサギを洗脳した異能者。
そして、もう一人は中也君をこの世界に連れてきた転移の異能者。
その転移の異能者の名前はジョン・テニエル。
異能名は『|不思議の国の入口《welcome to the wonderland》』。
この世界のボスだ。
ルイス「……僕のミスだ」
三月ウサギ「ルイス、今すべきなのは|後悔《それ》じゃない。早く桜月ちゃんの元へ」
ボスside
ボス「……。」
カキン、と刃の交わる音が辺りに響き渡った。
小刀とナイフで、小さく火花が散る。
ボス「急に何だ」
桜月「……んで」
ボス「は?」
桜月「何で中也をこの世界に連れてきたの! 出会いは最悪だったけど、信用してたのに……!」
意味が判んねぇ。
俺は中原中也をこの世界に連れてきてない。
まさか、ちゃんと説明を聞かないで俺のところまで来たのか。
おい、ルイス・キャロル。
絶対に許さないからな。
ボス「……てか」
普通に泉桜月が強いんだが。
俺が倒されてから何があったらこんなに強くなるんだよ。
奇獣も知らないのいるし。
ボス「このままだと──」
桜月「謝っても、許さないから」
気がつけば蹴り飛ばされて床を転がる。
本当にこのままじゃ死にそうだな。
ゴホッ、と体の奥から上がってきた血が地面を赤く染めていく。
あー、頭もクラクラしてきた。
探偵社の女医に治療してもらったとは云え、精神的な疲れはまだ取れていない。
そんな状態で泉桜月の相手とか、無理に決まってんだろ。
ボス「……おい、少しは話を」
桜月「中也を傷つけた人の話を聞くつもりはない」
ボス「……こりゃダメか」
泉桜月は話を聞いてくれない。
でも、このまま殺されたら彼奴は後悔する。
--- |不思議の国の入口《welcome to the wonderland》 ---
逃げるのが得策。
そう思ったが、俺は何かに捕まれた。
桜月「奇獣『四神・朱雀』」
ボス「流石に無理か」
仕方ないから異能力を解除すると、目の前に泉桜月がいた。
小刀が迷うことなく俺へ向かってくる。
諦めるしかない。
色々あったことを考えたら、迷惑料にしては俺の命は安いかもしれないな。
今まで殺されていなかったことの方が奇跡だ。
ボス「……後悔はするなよ」
桜月「──!?」
一瞬、泉桜月の動きが止まった。
マッドハッター「異能力!」
遠くから声が聞こえてくる。
この声は、マッドハッターだろう。
泉桜月の動きでも止めたのかな。
ルイス「テニエル!」
そんなことを考えるぐらいには、余裕があると思っていた。
倒れた俺の腹部を、ルイス・キャロルが押さえている。
生暖かいものが床に広がっていく。
あぁ、そうだ。
俺、刺されたんだった。
それで立ってられなくて倒れた。
生暖かいものは、俺の血か。
これだけ出血してたら、助からない。
痛みを感じないほど、死に近づいてきている。
テニエル「……。」
泉桜月は後悔しないだろうか。
忠告はしたけど、俺の話なんて聞いてもらえるわけがない。
だから俺は刺されて、こんなことになってる。
まぁ、そんなこと、どうでもいいか、
第十八話。
ボスゥゥゥゥゥゥゥゥ!?
はい、ヤバいね。
いつも通りのナニコレ展開が続いております。
後書き恒例(?)の雑談に入りましょうか。
元英国軍組が好きなんだけど((
いや、自分の作ったキャラが好きって言うのもどうかと思う。
でもルイスとアリスとマッドハッターと三月ウサギ可愛くないですか???
強さ的には 泉桜月>テニエル なんですよね。
だから、どうやっても桜月ちゃんにボスは勝てない。
それを判っていながら戦うボスにウッ涙が…
最後に桜月ちゃんのこと心配してるのが個人的に一番オススメ。
軽く説明のコーナー。
ボスの本名は「ジョン・テニエル」です。
そしてシヴァに協力してた異能者も「ジョン・テニエル」です。
中也たちのように、彼もこの世界に二人います。
軽く説明のコーナー。其の弐。
マッドハッターが好きなものは紅茶。
何でもない日のパーティーから引っ張ってます。
因みに、ケーキを作るのが得意です((誰も聞いてない
ののはなさんの小説も絶対見てね。
それじゃ、また次回お会いしましょう!
collaboration.19
諦めた者と、諦めない者。
間違えたとしても強く生きていきたいと、そう思う。
ルイスside
ルイス「クソッ、全然血が止まらない……!」
この量の出血だと、与謝野さんの治療が間に合わなくなる可能性がある。
一度、外に出すべきか。
そうしたらテニエルの状態は今のまま停止する。
否、ダメだ。
僕の身体の主導権を握っているのは、#アリス#。
テニエルを外に出したとして、|異能空間《ワンダーランド》に戻す術がない。
桜月「──ねぇ、どうして?」
ルイス「──!?」
マッドハッター「いつもなら話すことも出来なくなるのに……!」
疲労が消えていない。
だから桜月ちゃんが話せている。
心の声が漏れている状態なのか、その言葉が僕達へ向けられている様子はない。
もし、話せることに気づかれたら。
その時は彼女の異能力達と──。
桜月「何で、どうして庇うの? そんな奴の味方するなんておかしいよ。中也はそいつのせいで傷付いて、なのに、」
こうしている間にも、テニエルの体温はどんどん低くなっていく。
死がすぐそこまで迫っているのか、テニエルの瞳に光が宿っていない。
このままじゃ、本当に死んでしまう。
三月ウサギが与謝野さんを呼びに行ってるけど、距離がありすぎる。
一人になりたいからと、皆から遠く離れた此所にいるよう云った僕のミスだ。
そもそも彼のことをちゃんと桜月ちゃんに説明していれば、面倒な方法を取らないでシヴァを殺していれば、マッドハッターと三月ウサギが洗脳されないようにすれば、#アリス#の体も心も傷付かない方法を選んでいれば、あれだって、この時だってああしていれば、そうしたら──。
ルイス「もしかして僕はまた……」
--- 間違えた? ---
ルイス「……ぼ、くは」
テニエルの傷口を押さえる手が震える。
後悔は今すべきじゃない。
なのに闇に引きずり込まれるような、そんな感覚に襲われる。
ダメだ、このままじゃ、
そう判っていても、堕ちていく。
桜月「ねぇ、皆」
マッドハッター「ルイス!」
桜月「ボスを殺して。邪魔する人も、中也を傷付ける奴を守る人も──!」
獣の唸り声が聞こえた。
顔を上げると、もう目の前に奇獣達がいる。
桜月「……さよなら」
???「させねぇよ」
桜月「──!?」
奇獣が、平行に飛んだ。
目の前で揺れる外套。
僕と背丈は変わらない筈なのに、その二つの背中はとても大きく感じた。
中也「……すいません、遅くなりました」
中也「大丈夫ですか、ルイスさん」
桜月「……どうして中也達もそんなやつ庇うの? 判らないよ、ねぇ、なんで?」
中也「……彼奴のことは俺に任せろ」
中也「あぁ。ヘマすんじゃねぇぞ」
そんな会話をしたかと思えば、桜月ちゃんの世界の中也君は彼女の元へ。
マッドハッターが桜月ちゃんに異能を使うことを止めて、此方へ来た。
そして、テニエルへと異能力を発動する。
中也君達は僕がやられそうなのを見て、異能力を使って先に来てくれたのだと云う。
だから、与謝野さんと三月ウサギはもうすぐ来る。
でも、時間が遅くなってるなら心配はいらない。
ルイス「僕は誰も救えない」
中也「……ルイスさん」
ルイス「テニエルを守らなくちゃいけないのに、身体が動かなかった。桜月ちゃんに説明することも、テニエルを殺さないように立ち塞がることも出来なかった」
間違えるのが怖い。
誰かが傷付くところなんて見たくない。
やっぱり僕は、弱い。
中也「──!」
ドンッ、と鈍い音がして僕は顔を上げる。
地面に横たわる中也君。
マッドハッター「まさか死んで……?」
中也「勝手に殺すな」
中也「……その感じだとちゃんと話せてねぇのか」
中也「彼奴の異能力が厄介すぎる。全く近づけさせてくれねぇんだよ」
中也「手伝うぜ」
中也「……ルイスさんの側にいなくて良いのか」
中也「手前一人で話が通じねぇのに放っておけるかよ。それに、ルイスさんは大丈夫だ」
中也「信用してるんだな」
あぁ、と中也君は僕の方を見た。
中也「貴方は間違っていないし、弱くねぇ。俺がそれを証明してみせます」
中也side
さて、どうしたもんかな。
桜月の異能力は予想より厄介らしい。
別世界とはいえ、俺が苦労するなら多少は考えて動かないとな。
桜月「……。」
彼奴は今、何を考えてるんだろう。
もう一人の俺が傷つけられて怒っているのか、裏切られたと思い苦しんでいるのか。
どちらにしても、目を覚まさせてやらねぇとな。
今、話が通じるのはもう一人の俺しかいない。
それなら、道を作るのは俺の仕事だ。
中也「重力操作」
身体への負荷を減らすと同時に、三月ウサギから預かったナイフも構える。
そして向かってくる奇獣をぶん殴っておいた。
鏡花や|首領《ボス》のような異能生命体を創り出す異能なら、完全に破壊してもいつかは復活する。
でも復活しない場合も考えて、手加減をしなくちゃいけねぇ。
桜月「……残念」
中也「幻覚か──!」
ぶっ飛ばした筈の奇獣が消えた。
そして目の前に桜月が小刀を構えている。
流石、鏡花と姉妹なだけあるな。
この距離まで気配も、音も、殺気も、何も気づかなかった。
距離を取るか、否か。
真正面から相手して勝てる相手じゃない。
でも手数で此方が負けていることもあって、不意打ちは効かない。
中也「……正面から戦ってやるよ」
多分、もう一人の俺を傷付けるつもりはない。
だから奇獣に相手をさせて、本人が俺を殺しに来てる。
桜月「じゃあね、中也」
背後から、声が聞こえた。
目の前の桜月も幻だと気がつき、後ろを振り向く。
でも、もう遅かった。
重力で守ることも間に合わない。
桜月「──!」
中也「……っ、捕まえた」
俺は不器用に笑う。
痛ぇが、これぐらい我慢しねぇと。
桜月「いやっ、離してよっ!」
それは出来ない。
ちゃんと話を聞いて貰わねぇといけないから。
でも、流石に限界か。
桜月が暴れるから傷口が開いてきた。
結構な傷で笑えるわ。
後は頼んでもいいですかね──。
ルイスside
与謝野さんが到着して、テニエルの治療が始まった。
マッドハッターが時間を遅くしてなかったら、もう死んでいただろう。
桜月「いやっ、離してよっ!」
ふと、そんな声が聞こえた。
あれはどっちの中也君だろうか。
桜月ちゃんの腕を掴んで、無理矢理にでも話を聞いて貰おうとしている。
ルイス「……!」
蒼い瞳は、真っ直ぐ此方を見ていた。
僕に、何をしろと云うんだ。
その時、僕の背中が誰かに押される。
座っていた僕は、前に倒れた。
マッドハッター「後悔で足を止めるぐらいなら、がむしゃらでもいいから前へ進んだ方がいい。そう云ったのは君だよ、ルイス」
三月ウサギ「貴方は私を、みんなを救ってくれた。間違ってなんかない。弱くなんてないよ」
ルイス「二人とも……」
いつか、桜月ちゃんと話したことを思い出した。
僕の異能は彼女の異能を止められる。
だからテニエルは彼女の世界に僕を呼んだ。
ルイス「……少し、手伝ってほしい」
マッドハッター「もちろんだよ」
三月ウサギ「えへへっ、任せてよぉ!」
ルイス「与謝野さんはテニエルを頼みます」
二人に作戦を話して、僕は桜月ちゃんの元へ向かう。
手にはしっかりと握られている。
桜月「四季『春・蝶蝶』」
中也「っ、毒か……」
中也君は毒とかに弱い。
だからすぐ効いて、桜月ちゃんの腕を離してしまった。
奇獣を近くに呼ぼうとする桜月ちゃんへ、僕は《《それ》》を投げる。
桜月「この、腕時計は──」
少しでも気が逸らせたら、此方のものだ。
主人の強い感情が揺らいだ場合、奇獣たちの動きに影響が出る。
ほんの0.1秒しか隙が出来ないとしても、マッドハッターと三月ウサギなら充分だ。
全部範囲内に集めて、動きを止められる。
ルイス「……少し、話をしよう」
僕は中也君に肩を貸しながら、優しく笑いかけた。
二人に説明を聞いた彼方の中也君も僕の隣へ来てくれる。
桜月「話すことなんてありません。裏切り者を庇う人達の話なんて聞きたくない」
ルイス「その気持ちはよく分かるけど、聞いてほしいんだ」
桜月「分かるわけないでしょ! 私の気持ちなんて!」
ルイス「……そうだね。簡単に分かるなんて云ってごめん。でもちゃんと理解してほしいんだ。ボス……テニエルは君と本気で戦っていたかい?」
桜月「──!」
テニエルは、桜月ちゃんに勝てないと云っていた。
でも傷一つ負わせていないのはおかしい。
桜月ちゃんが不死鳥で治した可能性もあるけど、今の精神状態では攻撃しかしない筈。
中也「桜月、俺の話を聞いてくれ」
桜月「……。」
中也「俺がこの世界に来た時、確かに穴を通った。でも、その異能力はボスじゃなかったんだよ。穴を出たらボスとよく似た、違う奴がいたんだ。そして其奴はとっくに死んでいる」
桜月「死んで……?」
中也「あぁ。穴の先には帽子屋の二人と、魔人と、シヴァ。あともう一人いたな。でも其奴はこの世界のボスと一緒に殺されてんだ」
やっぱり、ね。
足取りが掴めないと思ったら、シヴァが消していたか。
てか、その場に魔人君いたなら報告してくれよ。
中也「だから、俺達の世界のボスが呼んだわけじゃない。俺や太宰だって二人いるんだ。この世界のボスがいてもおかしくないだろ?」
桜月「それじゃあ、私は……」
中也「……悪ぃ。ちゃんと説明してなかった俺に落ち度がある」
ルイス「いや、僕が確定していない状況でも伝えなかったのが悪かった。とにかく、僕達と一緒に戦ったテニエルは味方だ」
桜月ちゃんの深海みたいに暗い瞳に、光が戻った。
そしてボロボロと涙が床を濡らしていく。
桜月「わ、たし、ボスの話も聞かッ、ないで、後悔しないで、って、最後まで私の、ッことを考えてくれて、たのにっ、」
中也「……桜月」
桜月「ボスも、ルイスさんも、中也のことも、傷つけて──!」
次の瞬間。
優しく、中也君が桜月ちゃんを抱き締めていた。
僕から彼の表情は見えない。
中也「まだ誰も死んでねぇ。大丈夫だ、ちゃんと謝れば許してくれる」
桜月「そんな、わけ……」
中也「何だ? 彼氏の言うことは信用できねぇか?」
桜月ちゃんは中也君の胸で泣いた。
これで、一件落着かな。
暫くそっとしておいてあげよう。
ルイス「……ありがとね」
中也「え……?」
ルイス「君は、最後まで僕を信用してくれた」
昔から変わらないな。
でも、だから救われたんだろう。
ルイス「そういえば中也君、大丈夫?」
中也「……正直なところ、腹の傷がすげぇ痛いです」
ルイス「与謝野さんに治療してもらおうか。瀕死状態にさせられるけど、まぁこのままよりは良いでしょ?」
中也「またあの治療か……」
少し憂鬱になる中也君を見て、僕は笑った。
今回は、凄い助けてもらっちゃったな。
与謝野「ルイスさん! 大変だ!」
大声を上げる与謝野さん。
その先の言葉を聞いて、僕は足を止めずには入れなかった。
ルイス「テニエルが……」
桜月「何度治療しても瀕死のまま……?」
桜月ちゃんの異能にはそんな効果がない筈。
治療しても瀕死状態なんて、普通はあり得ない。
まさか、人外の類いが関わってきてるのか。
とりあえず中也君を任せて、テニエルのところへ急いだ。
第十九話。
W中也わかりにくい((
あの小説みたいに🕰️と🌸付けたら良かったかな。
で、問題はボスですよね。
寝たまま一話終わっちゃったよ。
しかも与謝野さんの異能が効かないだって?
誰だよ、これ考えたの←お前だよ
あのさ、中也さ、無理しすぎだって、
何でうちの中也も桜月ちゃんの為に頑張ってるんだよ!
良いんだけどね!
やっぱり好きになる人は一緒だって!?
私の方が桜月ちゃんのこと好きですし!?
……テンションがヤバいね。
おい、ルイス・キャロル。
なに桜月ちゃんからのプレゼント投げてるんだよ!
ふつーに物を大事にしろ!
親に習わなかったのか!?
……あ、いや、うん、ごめん。
そういえばルイスくんって((ネタバレやめようねby.lewis
それじゃ、また次回お会いしましょう!
間違えたとしても、強く生きていきたい。
それは、海嘯が日々思っていること。
それは、ルイス・キャロルが思ったこと。
誰もが『想い』を持っている。
『想い』の先を、どうか見守ってください。
collaboration.20
その命の灯火は消えるべきではない。
最後まで諦めなければ道は開くのだろうか──?
ルイスside
僕はテニエルへ駆け寄って状況を確認する。
息はあるけど、呼吸が浅い。
そして傷も全く塞がっていなかった。
下手したらこのまま死ぬ可能性がある。
ルイス「何が原因だ、桜月ちゃんの異能じゃない、なら魔人君が、いや、彼は|異能空間《ワンダーランド》に干渉できない、だったらどうして、」
焦りは最大の敵。
どうにか助ける方法を考えていると、鳴き声が聞こえた。
優しい猫の声。
これは奇獣じゃない。
でも、桜月ちゃんの異能である奇獣以外がこの空間にいるわけ──。
桜月「……え?」
純白の、綺麗な毛並み猫が僕の前に座っていた。
ふわぁと欠伸をして、首を掻いている。
猫「……。」
猫は、何かを伝えたいのか僕をじっと見てくる。
あの時から僕は猫の言葉が判る。
ルイス「喋ってくれないと、判らないよ」
猫「……。」
ルイス「君は、何を伝えたいの? 僕にどうしてほしいの?」
猫に話し掛けるなんて馬鹿げている。
こんな暇があるなら、テニエルを助ける術を考えた方がいい。
猫「にゃあ」
ルイス「──!?」
猫「みゃーお」
ルイス「……そうか。君も桜月ちゃんのことが大切なんだね」
猫はテニエルの額を叩くと、僕へすり寄ってきた。
ルイス「……ありがとう」
猫「にゃーん」
中也の傷を治し終わった与謝野さんが此方に来る。
僕は、テニエルを治療してもらうように頼んだ。
綺麗な蝶が、辺りを飛んでいる。
桜月「ルイスさん、ボスは──!」
ルイス「大丈夫。もう、大丈夫だよ」
そう、僕は彼女に笑いかけた。
ボスside
気がつくと、目の前が真っ白だった。
俺、死んだのかな。
猫「にゃん」
視界の端に見えた猫。
白い毛並みがとても綺麗だ。
そんなことを思っていると金髪も見えた。
ルイス「やぁ、気分はどうだい?」
テニエル「手前も死んだのか?」
ルイス「残念ながら、そう簡単には死ねないんだよね」
ははっ、と其奴は笑う。
ルイス「おはよう、ジョン・テニエル」
俺が起き上がると、ベットの上だと云うことが判った。
隣には赤の女王が寝ている。
まだ目覚めねぇのか。
テニエル「あれから何日経った」
ルイス「一週間」
テニエル「……流石に寝過ぎたな」
ルイス「それにしても、よく桜月ちゃんを傷つけなかったよね。自分が負けることを判っていたとしても、多少は抵抗するものじゃないかい?」
抵抗、か。
別にどっかの包帯と違って死にたがりな訳じゃない。
でも元の世界のヨコハマを手に入れられなかった時点で、やりたいことはなくなった。
そして俺は罪に値する罰を受けていない。
テニエル「……それが罰だと思った。この答えじゃ満足できねぇか?」
ルイス「いいや、充分」
それで、とルイスは薬品棚の方を見た。
ルイス「まだ隠れているつもりかい?」
桜月「いや、その、えっと……」
中也🌸「今行きまーす」
桜月「中也!?」
中也🌸「元よりルイスさんに声が掛けられたら出る予定だったろ。ほら、棚にしがみつくな」
桜月「でも、心の準備がぁ~」
中也🌸「重力操作」
こいつ、棚ごと泉桜月を持ってきやがった。
過去一の異能の無駄使いじゃないか。
ルイス「棚、戻しておいてね」
中也🌸「判ってます」
桜月「中也、私が戻すよ」
中也🌸「手前そのまま逃げるつもりだろ」
はぁ、と俺はため息をついた。
テニエル「何でそんなによそよそしいんだ」
桜月「いやぁ、あの、そのですねぇ……」
テニエル「俺を殺しかけたこと、後悔してるなら一言だけ云わせてくれ」
俺は深呼吸をする。
そして全力で笑いながら云ってやった。
テニエル「莫ァ迦」
桜月「……はぁ!?」
テニエル「俺はちゃんと『後悔するな』と云ったし、話を聞かなかったのはお前だ。後悔してる暇があるなら過去の自分ぶん殴ってこい」
桜月「殴れるわけないでしょ!? 過去に戻る方法があるならとっくに全部やり直してるよ!?」
テニエル「じゃあいつもみたいに莫迦やってろよな!? 何か俺が悪いみたいじゃねぇか!」
桜月「いや悪いからね!? この世界のボスがシヴァに協力してなかったらこんなことになってないからね!?」
テニエル「うるせぇよ! 俺のせいにするんじゃねぇ!」
ルイス「仲直りできて何より」
中也🌸「俺には喧嘩してるようにしか見えないんですけど」
ルイス「よく云うでしょ? 喧嘩するほど仲が良いって」
泉桜月との言い合いが終わり、俺は凄く息が乱れていた。
まぁ、病み上がりにすることじゃないよな。
気づくのが遅すぎた。
これじゃ泉桜月と同じ莫迦だ。
桜月「私は莫迦じゃないもん!」
テニエル「心を読むんじゃねぇ」
はぁ、と俺はため息をつく。
テニエル「疲れた。寝る」
桜月「はぁ!?」
ルイス「桜月ちゃん、少し落ち着こうか。ボスも起きたばっかだから。ね?」
桜月「絶対起きたばかりじゃないですって。喧嘩売るぐらい元気ですよ、この人」
俺、よく死ななかったな。
もし死んでいたら、泉桜月は後悔してただろう。
そして元の世界へ帰ることもできなくなる。
彼奴に背中を預けて戦うのは悪くない。
そう思っていたのに、何で罰を受けようだなんて思ったんだろうな。
喧嘩売ったが、これはちゃんと伝えておかねぇとな。
テニエル「悪かったな、桜月」
ルイスside
ルイス「これは……ツンデレって奴かい?」
テニエル「うるせぇ」
桜月「……フルネーム呼びじゃなくなってる」
本当、素直じゃないんだから。
耳まで真っ赤にしてるの面白いな。
後で全力で弄ろう。
桜月「そういえばルイスさん、この子のことなんですけど……」
ルイス「あぁ、ちゃんと説明してなかったっけ」
桜月ちゃんが白い猫を持っていた。
あくびしていて可愛い。
ルイス「──じゃなくて」
僕は首を全力で振った。
今、考えることはそれじゃない。
一瞬、首がどこかに飛んでいくかと思ったのはここだけの話。
ルイス「それは君の異能だよ。というか君、異能持ちすぎじゃない?」
桜月「ルイスさんだって二つ持ってるじゃないですか! というか、やっぱり『幸運の招猫』だった……。澁澤のときに一度会ったよね?」
猫「にゃ!」
うっ、可愛い。
ルイス「それで、テニエルの傷が治らなかった理由なんだけど、その子が関係していたみたい」
桜月「え?」
簡単に云うと『幸運の招猫』は桜月ちゃんに幸運を招く。
その異能が発動していて、決して治らない傷となったらしい。
テニエルが死ぬことが、桜月ちゃんにとっての幸せ。
元々、奇獣達は実体の生物と異能生命体の狭間に位置するから傷自体も治りにくい。
そんなこんなで色々作用して、与謝野さんの異能が効かなかった。
え、途中雑だって?
これ詳しく説明するの大変なんだよ。
中也🌸「テニエルの傷が治るようになったのは、『幸運の招猫』が本当の桜月の幸せを知ったからか」
ルイス「そんなところだね」
桜月「……やっぱり私のせい、だったんですね」
桜月の表情が暗くなる。
彼女がすべて悪いわけではない。
そう伝えようかと思ったけど、僕は思い止まった。
中也君が桜月ちゃんの頬を引っ張っている。
中也🌸「手前は何でもそうやって自分のせいだと思い込みやがって!」
桜月「ひはい! ちゅーやひはいっへ!?」
中也🌸「全部が手前のせいなわけないだろうが! 次自分のせいだって云ったら一日話さねぇからな!?」
桜月「へ!?」
それは嫌だぁ、と中也君🌸にしがみつく桜月ちゃん。
不覚にも可愛いと思ってしまった。
ルイス「いいなぁ、若いなぁ」
中也🌸「ルイスさんだって若いですよね!?」
ルイス「一応、桜月ちゃんより10歳上だからね?」
桜月「そういえばそうでした……」
中也🌸「|首領《ボス》とそんなに変わらないと思ってました。話し方とか、振る舞いで」
桜月「中也、それは流石に失礼だよ。そしたら|首領《ボス》がルイスさんと違ってめっちゃ老けてるってことになるよ?」
ルイス「まぁ、結構なおじさんだよね。桜月ちゃんの世界の森さんも、この世界の森さんも」
桜月「あ、私この世界の|首領《ボス》に会ったことありません!」
ルイス「そういえばそうだったね。今度会えるか聞いてみるよ」
第二十話。
いや、うん、20話なっちゃったね。
私自身もびっくりしてます。
ここだけの話、テニエルは殺そうとしてた((
でも話の流れ的に桜月ちゃん達が帰れなくなる。
それはダメだ。
ということでテニエルは死を免れましたwww
…笑うところじゃないか。
現在の状況に関しては次回の小説の頭にでも書こうと思います。
まぁ、簡単に説明だけします。
シヴァ、マッドハッターや三月ウサギは特務課に捕まってます。
帽子屋の二人は自首。
シヴァは強制的に連れてかれた。
ルイスはワンダーランドから出ることができず、鏡を通じて安吾へ情報提供。
桜月ちゃんや中也🌸のこともちゃんと説明しました。
最初の幸運の招猫のシーン。
ルイスが猫と喋れる理由、覚えてる人いますかね?
そうです、GW企画です。
猫になってしまったんですよね、ルイスくん。
あの時、猫の話していることが分かるという謎の後遺症が残りました。
で、もちろん桜月ちゃんの『幸運の招猫』も猫な訳で。
よくルイスくん話しかけにいったよね。
最後にどうでもいい情報を一つ。
首領は執務室で一人くしゃみをしています。
それを見たエリスちゃんは心配せずに無視しました。
それじゃ、また次回お会いしましょう!
collaboration.21
シヴァの事件から2週間。
まさかのルイスが──!?
No side
ポートマフィア壊滅を目的とした帽子屋の最初の犯行である“中原中也の捕縛”。
それはシヴァ改め***との契約だった。
シヴァの目的は“荒覇吐”であり、現場には異能を分離させるための機械が揃っていた。
救出に向かったルイス・キャロルと探偵社、マフィアの尽力によりシヴァと帽子屋の二名の身柄を捕縛。
死者は百近いが、全員帽子屋によって雇われた傭兵であった。
首謀者であるシヴァは特務課に身柄が拘束された。
又、帽子屋のマッドハッター改め***と三月ウサギ改め***は、シヴァに利用された異能者(数日前に死亡)によって洗脳されていたことが分かった。
事実確認の為の一時的な身柄の拘束はあったものの、現在は釈放されている。
眠りネズミ改めフョードル・ドストエフスキーについては逃走された為、詳しい情報が分からない。
フョードルが仕組んだことなのか、はたまた別の者なのか。
真相は闇の中である。
ルイスside
殆どの後始末は終わり、平和な日常が戻ってきた。
桜月ちゃんやテニエルは外の世界で、探偵社に色々とお世話になっている。
僕が|異能空間《ワンダーランド》から動けないのが一番の理由。
まだ、#アリス#は目覚めていない。
テニエル「また此所にいたのかよ」
テニエル、と僕は振り返る。
唯一、|異能空間《ワンダーランド》に来れる彼が鏡以外で僕と外の世界を繋いでいる。
テニエル「はい、これ眼鏡から包帯が預かったやつ」
ルイス「安吾から太宰君が貰ってきたんだね」
ありがとう、と僕は書類を受け取った。
これが表向きの報告書か。
此所には桜月ちゃんを初めとした、もう一つの世界のことについては書かれていない。
書かれているのは重要機密にされた書類の方。
それは種子田さんや安吾しか見れないから、心配はいらない。
桜月ちゃんが異能力を使った件もいい感じに誤魔化してくれた。
テニエル「もうシヴァの事件から二週間だぞ。泉桜月達は帰さなくて良いのか?」
ルイス「もちろん帰そうとしたよ。でも──」
「「#アリス#さんが起きるまで帰れません!」」
え、と僕は振り返る。
重なった声は桜月ちゃんのものだ。
桜月「まだ帰れるわけないじゃないですか。#アリス#さんと話したいこと沢山あるんですよ!」
中也🌸「俺も。まだ感謝を伝えられてねぇし」
テニエル「ま、もう一週間ぐらいはいいんじゃないか?」
ルイス「……君、結構桜月ちゃんに甘いよね」
テニエル「元は敵だが、共闘したり殺されかけたりしたからな」
普通、それで甘くはならないんだよな。
そんなことを考えていると、視界の隅で何かが動いた。
桜月ちゃんの異能力である『幸運の招猫』が歩いている。
そのまま僕の膝に乗ったかと思えば──。
#アリス#「ん……」
#アリス#の枕元で白猫は眠り始めた。
そして、#アリス#がゆっくりと目を開く。
#アリス#「あ、るいす……」
ルイス「#アリス#!」
莫迦、と僕は#アリス#に抱きついた。
ルイス「どれだけ僕が心配したと思っている! もし目を覚まさなかったらと、本当に僕、君も失ったら──」
それから僕は、周りを気にせずに泣き続けた。
#アリス#side
ルイス「そのッ、お見苦しいところを、お見せして、すみませんでしッ、た」
#アリス#「まだ泣いてるじゃない」
ペシ、とルイスの頭を私は叩く。
そしたら号泣し始めた。
いやまぁ、彼女だけじゃなくて私も失ったら嫌よね。
桜月「ルイスさん、そんな風になるんですね……ちょっと意外……」
テニエル「てか、俺の時みたいに招猫が触れて目覚めるなら変に外でなかった方が良かったんじゃないか?」
ルイス「……また僕間違えた?」
桜月「ボス!? ちょっと黙って!?」
テニエル「いや、すまん」
ルイスは間違うと病みかけること、桜月ちゃん達に知られてるのね。
私が眠っている間に何があったことやら。
でも──。
#アリス#「大切な人が増えたようで何より」
ルイス「すやぁ……」
#アリス#「あら、寝ちゃったわね」
桜月「え、ルイスさん可愛い」
テニエル「泣くだけ泣いて寝るとか|子供《ガキ》かよ」
桜月「ちょっとボス!」
二人も仲良さそうで何より。
それから私はルイスが起きないように眠っている間に何があったのか聞いた。
#アリス#「……殺し合い?」
中也🌸「テニエルが死にかけたな」
桜月「いや、その、私が皆の話を聞かなくて……」
テニエル「結果こいつは莫迦だってことだ」
桜月「私、莫迦じゃないもん!」
それから私は二週間も眠っていたのでリハビリを──。
桜月「え、なんでそんな動けるんですか?」
──するわけではなかった。
#アリス#「あくまで私は異能生命体と変わらない存在だから、かしらね。詳しい説明してあげましょうか?」
テニエル「いや、ダルいからパス」
ふふっ、と私は微笑んでおいた。
#アリス#の詳しい説明はまた今度でもいいかもしれないわね。
中也🌸「#アリス#さん。俺を助けるために色々と動いてくれてありがとうございました」
桜月「私、ちゃんと助けれました! 本当にありがとうございました!」
#アリス#「……貴方達は上手くいって良かったわ」
桜月「でも自己犠牲はダメって云ってましたよね!? なんで#アリス#さんがしてるんですか!」
#アリス#「あれしか方法がなかったから」
マッドハッターに殺しをさせるわけにはいかない。
大切な人を守りたいという想いは私もルイスと一緒だから。
#アリス#「でも、こんなに眠ることになるのは完全に予想外だったわ。マッドハッターは大丈夫? 病んでない?」
桜月「ちゃんとルイスさんと仲直りしてますよ。今は特務課のところですけど……」
テニエル「ん? もう彼奴ら釈放されてるぞ?」
暫く桜月ちゃんは固まって、大きな声を出した。
桜月「え、マッドハッターさんも三月ウサギさんも釈放されてるの!? 何で!?」
テニエル「いや、普通に洗脳されてたことが分かったんだよ」
中也🌸「この世界の特務課にも|坂口安吾《記憶を読む異能者》がいる。彼奴らには洗脳されたときの記憶があるらしいし、多少牢に入ることはあってもすぐに釈放されるだろ」
桜月「な、なるほど……」
中也🌸「ま、流石に今なにしてるかは知らねぇけどな」
#アリス#「帽子屋として活動してると思うわよ。想いを、今度こそ護るために」
そう、私は優しく微笑んだ。
ルイスside
ルイス「お見苦しいところをお見せして誠に申し訳ございませんでした」
桜月「だから謝らないでいいですって!?」
数時間後、僕は起きて謝っていた。
桜月ちゃんと#アリス#の説得によって謝罪はやめ、帰る前にこの横浜を見て回ることにする。
桜月「まずは何処から行きますか?」
ルイス「僕に付き合わせることになっちゃうんだけど、ずっと待たせてるし彼処に行きたいんだよね」
中也🌸「彼処?」
そうして僕達がやって来たのは──。
森「君達が別世界の人達だね」
ポートマフィア本部最上階、首領執務室だった。
三人は、少し緊張している様子。
森「そんなに緊張しなくていいのに……しくしく」
中也🕰️「|首領《ボス》、ふざけないでください」
エリス「リンタロウの嘘泣き、気持ち悪い」
紅葉「あまりふざけてると口を縫い合わすぞ」
桜月「……もしかして、私の世界より仲良い?」
中也🌸「いや、そんなわけ……。でも、|首領《ボス》が虐められてるようにしか見えねぇ……」
テニエル「お前達の世界の方がカッコいいんじゃねぇか、ポートマフィア首領」
ルイス「僕もそう思うよ」
森「嘘でしょ!?」
さて、と僕は森さんに資料を渡した。
ルイス「これ、今回の件の資料。特務課から預かってきました」
森「ありがとう」
ルイス「詳しいところは省かれてるので、直接答えに来たんだけど……聞きたいことある?」
森「君がどれぐらいこの件に関わっていたのか」
ニコニコと、森さんは僕を見て云った。
いや、そう来ることは予想していた。
だけど説明面倒くさいんだよな。
ルイス「云っておくけど、ポートマフィアを潰そうとしたのは僕じゃないよ。シヴァをどうにかするついでに、彼が自分の作戦を進めようとしただけ」
そもそも大前提として、シヴァが中也君の中の荒覇吐を使って世界をやり直そうとした。
ルイス「ま、真犯人が誰かと聞かれたら──」
--- 魔人君と僕だね ---
紅葉「それは、どういうことかえ?」
ルイス「別に、そのままの意味だよ。シヴァを止める為に僕は魔人君と一時的な協力をしていた」
ここまで大事にする予定はなかったんだけどね。
そう、僕はため息をつきながら頭を抱えた。
ルイス「だから森さんの質問の答えは《《最初から最後まで》》だね」
森「……なるほど」
ルイス「他に聞きたいことは?」
中也🕰「質問、とは違うんですけど結局シヴァの犯行動機は何だったんですか?」
簡単なことだよ、と僕は笑う。
ルイス「破壊したいほど、この世界に絶望していた」
そして世界を変える力をシヴァは見たことがあったのだろう。
多分、8年前。
魔獣vs荒神なんて、忘れられるわけがないだろう。
ルイス「さて、僕達はこの辺で──」
森「ルイス君。この後は暇かい?」
紅葉「そう嫌な顔をするでない、ルイス」
うげぇ、と僕は眉をひそめていた。
こういう時の森さんの提案って最悪なことが多いんだよ。
僕一人なら強制的に話を終わらせて|異能空間《ワンダーランド》に逃げるんだけどな。
流石に桜月ちゃん達を置いていくわけにはいかない。
《《仕方なく》》、僕は森さんの提案を聞き入れることにした。
第二十一話。
ルイスくん、まさかの大号泣。
アリスが目覚めて本当に良かった。
いやぁ、情報がごっちゃしてきたねぇ…
なんか小説以外でまとめたりしたほうが分かりやすいかな。
シヴァとかの情報もまとめる予定だから、そこにぶち込もうと思いまーす。
ここでクイーズ!
森さんの提案とはなんでしょーうか!
正解はー?
もちろん次回までのお楽しみでーす((うぜぇ
後書きが雑なのは気にするな☆
それじゃ、また次回お会いしましょう!
collaboration.22
仕方なく森の要求を受け入れたルイス。
しかし、無言の笑みを浮かべており──?
ルイスside
ルイス「……。」
桜月「あの、ルイスさん……?」
ルイス「何かな、桜月ちゃん」
桜月ちゃんが僕を見て小さく悲鳴を上げた。
仕方なく受け入れた。
とはいえ、握り締めていた拳が緩まることはない。
表現しがたい空気の中、満面の笑みを浮かべているのは|幼女趣味《ロリコン》とエリス。
あの中年に関しては一眼レフを構えている。
エリス「凄く似合ってるわよ、ルイス!」
森「桜月ちゃん可愛いよ! あ、もちろんエリスちゃんもね!」
僕と桜月ちゃん、そしてエリスは森さんが渡してきた服を着ていた。
その服というのが何と《《ロリータ服》》。
もちろん桜月ちゃんとエリスは似合ってるんだよ。
でも、どうして僕まで着させられたのだろうか。
断れば良かった。
でもマフィア加入と天秤に掛けられたら、ねぇ?
中也🕰️「違和感が仕事してねぇ……」
ルイス「中也君?」
中也🕰️「ア,ナンデモアリマセン」
桜月「ルイスさん、そんなに怒らないでください! あの、もしかして、私が選んだ服も着るの嫌でしたか?」
ルイス「そんなことないよ! 普通に森さんが選んだという事実と、こんなゴスロリを成人男性に着せて喜んでいる森さんに吐き気がするだけだよ!?」
紅葉「ルイス、事実とはいえ云いすぎじゃ」
森「じじつ……?」
ヤバい、桜月ちゃん泣かせる。
普通に森さんが嫌いなだけなのに桜月ちゃん傷つけるのは違うだろ、ルイス・キャロル。
森「ルイスくん、君に依頼をしたい」
ルイス「無理です」
森「即答……」
しくしく、とまた泣き真似をする森さん。
本気で一回殴ってもいいかな。
紅葉「|私《わっち》と|首領《ボス》は今から会合がある故、エリスの行きたい喫茶店に行けなくてのぉ……ルイスに付き添ってもらいたいんじゃ」
ルイス「なんで僕が──」
エリス「今日限定のパンケーキがあるのよ。ほら、美味しそうじゃない?」
桜月「美味しそう……」
ルイス「あの、僕まだ良いとは……」
中也🌸「確かに美味そうだし、可愛いな」
エリス「良く分かってるじゃない!」
ルイス「だから僕は──」
中也🕰️「お願いします、ルイスさん。そのパンケーキが実は……」
テニエル「ブフォッ」
え、何でテニエル笑ってるの。
僕は嫌な予感がしながらも中也君🕰️の持っているチラシを覗き込んだ。
ルイス「……。」
僕は無言のまま異能空間から銃を取り出した。
そして|安全装置《セーフティ》を外して|首領《ボス》へと向ける。
引き金を引けば、銃弾が森さんの頬をかすって後ろの本棚に着弾した。
僕はニコニコと笑っているけど、目が死んでいることだろう。
テニエル「何だよこの条件! カップル、それにロリータ服じゃないといけないって! 馬鹿じゃねぇの!」
桜月「パンケーキは三種類あるのに一組どれか一つまで……?」
エリス「本当、酷いわよね」
頬を膨らますエリス。
少し悲しそうな桜月ちゃん。
まだ笑っているテニエル。
中也🕰️「あの、ルイスさん……」
ルイス「行けば良いんでしょ、行けば。でも森さんは後で絞める」
森「え?」
ルイス「よし、早速行こうか」
森「ねぇ、ルイスくん、絞めるって何、」
紅葉「ほら早く会合に行くぞ」
それから僕と桜月ちゃん、エリス、テニエル、ダブル中也は例の喫茶店にやってきた。
中也🌸「で、どうするんだ?」
ルイス「普通に君は桜月ちゃんとで、エリスは中也君とでしょ?」
テニエル「ちょっと待て、俺もメンバーに入れられてるのか?」
桜月「逆にボス入らないと三種類ならないじゃん」
エリス「そうよ! 早速入りましょ!」
エリスの行動力のせいで、心を決める前にこの格好で店に入ることになってしまった。
まぁ、街を歩いてきたから別に良いけど。
店員「いらっしゃいませーご注文をどうぞー」
エリス「カップル限定パンケーキの苺!」
桜月「私はカップル限定パンケーキの桃で!」
ルイス「……カップル限定パンケーキのチョコバナナお願いします」
テンション低、とか思ってるんだろうな。
満面の笑みで云ってもヤバい奴だろ。
一生あの|幼女趣味《ロリコン》許さねぇ。
???「カップル限定パンケーキのチョコバナナお願いします」
ふと、聞き覚えのある声が聞こえた。
隣のテーブルも注文しているようだ。
桜月「お姉ッ……鏡花ちゃん!?」
鏡花「……桜月?」
中也🕰️「似合ってるじゃねぇか、鏡花も」
桜月「中也の言うとおり! 和服じゃない鏡花ちゃんも可愛い!」
鏡花「桜月も可愛い」
敦「……今日もルイスさんはいないんですね」
鏡花「敦、いる」
敦「え?」
ルイス「……ドーモ」
驚きながら、敦君は色々と弁明を始めた。
いや、別に怒ってないよ。
ただ敦君から見て普通の女子に見えたことが少し悲しいだけだよ。
店員「お待たせしました!」
テニエル「早ッ」
運ばれてきたパンケーキはどれも美味しそうだった。
でも、僕は正直お腹が空いていない。
なのでエリスにあげることにした。
ま、僕が出資者じゃないし何でもいいや。
エリス「ここの喫茶店、ティーカップも売ってるのよ。ルイスが好きそうなのもね」
ルイス「……そうなの?」
エリス「えぇ。それにクッキーとか紅茶も美味しいから後で見てみたら?」
紅茶はマッドハッターが好きだし、見てみようかな。
ティーカップとか、可愛いのは三月ウサギも好き。
クッキーも買ってみんなでお茶会でも出来たら──。
鏡花「ルイスさん、何か楽しそう」
桜月「そうだね。多分、大切な仲間のことを考えてるんだと思う」
中也🕰️「……寂しくなったか?」
桜月「ちょっとだけ。ほんのちょっとだけ、ね」
テニエル「……今頃だが、そっちの中原は何でライダースーツなんだ?」
ふと、テニエルがそんなことを云った。
彼方の中也君は深い暗緑色のライダースーツを着ている。
というか、僕と桜月ちゃんで選んで着せてるんだけど。
桜月「趣味嗜好が一緒で私服が被るから。女装してくれないし」
中也🌸「普通に女装とかしたくねぇよ!?」
ルイス「……中也君が着てくれたら僕は女装しなくて済んだ説ある?」
テニエル「あるな。まぁ、その場合俺かお前が中原の彼氏になってたわけだが」
桜月「ルイスさんが彼氏役……」
中也🌸「なに顔赤くしてるんだよ。ルイスさんが格好いいのは否定できねぇけど」
桜月「中也の方が格好いいよ!」
テニエル「うわっ、リア充ムカつくわ……」
と云いながらも、テニエルは楽しそうに笑ってるんだよな。
前まで本気で云ってたのに。
ちゃんと反省して、彼女と仲間になった。
ふと、僕は思う。
魔人君と考えていたことより、シヴァの件は大事になってしまった。
それこそ、世界を越えるほどに。
でも、僕はもう後悔していなかった。
色々と思うことはあるけど、結果こうやって僕達は笑えている。
前と違って、僕達は最後まで楽しめている。
前みたいに、別れを急ぐ必要はないんだ。
それから僕達は一度エリスと中也君と別れ、街を散策することにした。
服はくれるらしい。
いらない、というのが正直な感想だけど云わないでおいた。
何か使うことがあるかも──。
ルイス「いや、無いな。あるわけがない」
桜月「ルイスさん、着替え終わりました!」
ルイス「……ロリータも良かったけど、いつもの服も似合ってるね」
素直な感想だった。
しかし、桜月ちゃんは耳まで真っ赤に染めている。
正直に云いすぎるのも良くないな。
多分、彼方の中也君に殺される。
ルイス「とりあえず敦君達のところへ行こうか」
桜月「は、はい……」
現実に戻ってきて、僕達は散策を開始した。
途中、買い物もしたりして凄く楽しい。
今はクレープの移動販売車に並んでいた。
未成年組には近くのベンチに座って待って貰っている。
相変わらず鏡花ちゃんはクレープが好きだな。
桜月ちゃんが隣に座っていると、本当の姉妹に見える。
彼女の世界では本当に姉妹なのもあるだろう。
未成年組を見守りながら、僕は缶珈琲を飲んだ。
中也🌸「……ルイスさん、様々なところで会計任せて済みません」
ルイス「気にしなくて良いって。僕もクレープ奢ってもらったし」
中也🌸「いや、俺達の方が奢ってもらってるんですけど……?」
テニエル「心配しなくても、ルイス・キャロルの方がお前より稼いでるぞ」
中也🌸「マフィア幹部より稼いでるってどういうことだよ!?」
ルイス「あははっ、色々とあったからね」
ニコニコと誤魔化しておくけど、質問攻めしたいんだろうな。
中也君、凄く困惑してるし。
ルイス「てか、どうして僕の方が稼いでるって知ってるの?」
テニエル「お前を泉桜月の世界に呼ぶ前に調べてたからな。今は休業中なのにどうなってるんだよ、お前の収入」
ルイス「株が上手くいってるのと、この前宝くじ当たった」
テニエル「運が良すぎるだろ」
中也🌸「運が良いとかで完結しちゃダメだろ」
???「おや、ルイスさんではないですか」
ふと、そんな声が聞こえて僕は振り返る。
太宰「それにテニエルさんと別世界の蛞蝓」
中也🌸「うるせぇよ、青鯖」
太宰「あぁ、気持ち悪い。中也一人でも嫌なのに、もう一人いるなんて耐えられない」
中也🌸「それは此方の台詞だ。せっかくの珈琲が悪くなる」
テニエル「別世界でも仲悪いんだな、お前ら」
確かに。
まぁ、太宰君と中也君の関係は何処でも変わらないということだろう。
太宰「そういえば桜月ちゃんは?」
中也🌸「鏡花や敦とそこのベンチに──」
太宰「じゃあ心中してくれないか聞いてくることにしよう!」
ルンルン、と太宰君は未成年組の方へ行った。
中也🌸「オイ、太宰手前──」
ルイス「心配しなくても、すぐ戻ってくるよ」
ねぇ、と僕はテニエルの方を見て微笑む。
No side
ルンルンと軽いステップで歩く太宰の手には、いつの間に買ったのか花が握られている。
太宰「やぁ、桜月ちゃんに敦君に鏡花ちゃん。良い天気だね」
敦「あ、太宰さん」
太宰「一体何の話をしてたんだい?」
桜月「ひ、秘密です!」
鏡花「恋バナ」
桜月「鏡花ちゃん!?」
なるほど、と太宰は顎に手を添える。
そして悪戯っ子みたいな笑みを浮かべた。
太宰「因みに二人から見て私は彼氏としてどうだい?」
「「ない」」
太宰「ない!?」
敦「ふ、二人とも即答したね……しかも息ぴったり……」
鏡花「自殺癖のある人は、普通に嫌だ」
桜月「私には中也がいるから!」
見事に振られた太宰が膝をつくと同時に、足元に穴が開く。
そのまま太宰は逆さまに落ちていった。
桜月達がルイスの方を見ると、手を振りながら微笑んでいる。
ルイスside
ルイス「おかえり」
太宰「戻し方、もう少しありませんでしたか?」
テニエル「残念ながら、俺はこれしか出来なくてな」
悪い笑みを浮かべる僕とテニエル。
対して太宰君は外套を払いながらため息をついた。
中也君は少し僕を見て感心しているようだった。
中也🌸「クソ太宰をよく手懐けられますね」
ルイス「そこまで付き合いは長くないけど、色々経験してきてるから」
戦争もそうなんだけど、万事屋始めてから変な人と絡むことが多くなった。
太宰君もその中の一人、と思うことにしている。
さて、次はどこに行こうか。
第二十二話。
あ・と・が・き・だ☆
ということでやって参りました、後書きのコーナー。
司会進行は私、海嘯が務めさせていただきます。
それにしても平和回って良いですよね。
心が穏やかになると言いますか、何というか。
個人的にはネタとかが上手く書けないんで戦闘シーンの方が書いてて楽しいですけど((
相変わらずうちの太宰さんは桜月ちゃんをナンパしまくってますね。
別に私の中の太宰さんのイメージが女たらしとか、そういうわけじゃないんです。
さっきも言ったけど、上手くネタに走れないんですよ。
頑張った結果がこれなんです。
ルイスくんの面白い小説が読みたいそこの貴方。
貴方が書いてください((
そしたら海嘯とルイスくんからファンレターが来ることでしょう((
興味ない人が殆どだと思いますけど、三人に着てもらいたいロリータ服について。
どうやってURL貼るか分からんかったんで、言葉で説明します!
エリスはやっぱり王道のピンクとか白のふわふわ系かな…。
いや、ゴスロリもいいかも。
何でも似合うよね、多分。
桜月ちゃんも王道だと思う。
でもね、和風か中華風のもいいと思う。
黒が基調で、赤とか入ったかっこいいやつとか。
和傘持ってたら最高。
そして問題(?)のルイスくんですね。
やっぱり水色系のアリスモチーフ一択でしょ!
でもね、黒のアリスモチーフも調べたら可愛かったんだよな…。
うさぎのぬいぐるみ持ってて欲しい。
大きいリボンもつけて欲しいな。
兎に角可愛くしたい((やめてくれby.lewis
なんか今回、話しすぎじゃね?
ま、いっか。
それでは、また次回お会いしましょう!
次回、最終回カモ。
collaboration.23
日が沈み、街に明かりが灯っていく。
刻一刻と迷ヰ犬たちの別れは近づいてきていた。
ルイスside
扉を開くと、そこには全社員がいた。
今日は特に依頼などもなく、外回りと事務作業が中心だったのだろう。
国木田「太宰! 貴様は毎度仕事もせずに社を抜け出して──!」
太宰「怒りすぎは禿げるよ」
禿げッ、と国木田君は一瞬固まる。
しかし次の瞬間には太宰君を引き摺り、自席に座らせていた。
相変わらず太宰君の扱いに慣れているな。
乱歩「桜月ちゃんに彼氏君、そしてテニエル。この世界のヨコハマはどうだった?」
桜月「私達の世界と変わらないな、と思いました。あとはパンケーキとクレープが美味しかったです!」
テニエル「ま、楽しかったぞ」
乱歩「それは何より」
彼氏君「なぁ、名探偵。もしかしなくても彼氏君って俺のことか?」
乱歩「君以外いないでしょ。ちゃんと名前も変わってるし」
彼氏君「本当じゃねぇか!?」
驚く中也君は置いておいて、僕は探偵社に来る前に買った駄菓子を差し出す。
わーい、と乱歩はすぐに封を開け始めた。
そして桜月ちゃんにお裾分けしていた。
なんか珍しいな。
福沢「済まない、ルイス」
ルイス「別に気にしないで良いよ。いつものことだし」
テニエル「いつものことなんだな」
福沢「……桜月、始めてあった時に云ったことを覚えているか」
桜月「はい! あ、でも全然ルイスさんのこと守ったりは……」
福沢「いや、充分だ。ルイスと共にいてくれたこと、感謝する」
そう云った福沢さんの表情は、とても柔らかかった。
ルイス「……僕、別に無理してないんだけど」
福沢「銃で撃たれ、毒を盛られ、足にナイフを刺され、蹴り飛ばされ、自ら剣に刺されにいったと聞いたが?」
ルイス「ちょっと待て、最後のは#アリス#だ。僕じゃない」
誰だ、偽情報を流したの。
ふと後ろを振り返ると、桜月ちゃんとテニエルが視線を逸らした。
あ、絶対この二人だ。
ルイス「桜月ちゃんはともかく、君は後で絞める」
テニエル「嘘だろ」
桜月「|首領《ボス》の時も気になってたんですけど、絞めるって何するんですか?」
ルイス「あー……」
桜月ちゃんをはじめとした、その場にいる全員の視線が集まる。
知ってる人がいないなら、黙るが勝ち。
太宰「縄で縛って身動きを取れなくして、屋上から命綱なしのバンジージャンプだよ」
知ってる人いたわ。
太宰「こんな風にね」
そう云った椅子に縛り付けられていた太宰君は立ち上がる。
ちょっと待て、椅子に縛り付けられていた太宰君ってなんだ。
どうせ国木田君あたりがやったんだろうけど、まぁ放置で良いか。
太宰君はというと、窓を全開にして落ちた。
国木田「太宰!?」
ルイス「あの馬鹿ッ──!」
僕はすぐに動いて異能力を発動させる。
すると、上に投げ出された太宰君が事務室に落ちた。
ルイス「馬鹿じゃないの!?」
太宰「失礼な。私は馬鹿じゃありませんよ」
ルイス「助けが間に合わなかったらどうするつもりだった!」
太宰「……DEATH?」
桜月「カッコよく云っても面白くないですからね?」
太宰「DEATHだけに?」
「「……。」」
福沢「……国木田」
はい、と返事をした国木田君は頭を抱えながら太宰君を奥へと引き摺っていった。
いつも以上におかしくないか、太宰君。
変なキノコでも食べたのかな。
福沢「さて、貴君らはそろそろ元の世界に帰るのではないか?」
彼氏君「そうだな。#アリス#さんにも感謝を伝えられたし、探偵社もマフィアへも挨拶が済んだ」
桜月「後は特務課かな?」
中也君は何とも云えない表情をしていた。
多分、安吾君のことあまり好きじゃないんだろう。
ルイス「改めて、今回はありがとう。特に、太宰君のお陰で仲間を救えた。お礼をしてもしきれないよ」
福沢「貴君は探偵社の一員だ。仲間を助けることなど、当然だろう」
僕は少しの間、固まっていた。
仲間、か。
今の仲間は探偵社の皆。
もしも探偵社に何かあった時は、僕が彼らのことを──。
ルイス「じゃあ、そろそろ行こうか」
僕は微笑む。
敦「また会いましょうね」
太宰「元の世界に戻る前に私と心中してはくれないだろうか!」
国木田「貴様、それが別れの言葉で良いのか? 元の世界の太宰にも気を付けろよ!」
乱歩「バイバーイ!」
福沢「無理はしないようにな」
鏡花「またクレープ食べに行こうね、桜月」
それぞれが別れの言葉を述べる。
太宰君はぶれないな。
桜月「うん、またね!」
彼氏君「世話になったな」
テニエル「異能使うぞ」
そうして僕達は、テニエルの異能を使って異能特務課の出入り口へとやってきた。
安吾「……いきなり落ちてこないでくれます?」
ルイス「しょうがないでしょ。それがテニエルの異能なんだし」
はぁ、と安吾君は判りやすいため息をついた。
何徹目なのかな。
普通に目の下の隈が凄い。
安吾「とりあえず中に入りますか?」
ルイス「大丈夫なの?」
安吾「長官に許可は取ってあります」
用意周到だな。
種田「待ってたぞ、ルイス」
ルイス「……本人がいるのは聞いてない」
安吾「云ってないので」
種田「今回の件は大活躍だったな。もう会えないかもしれないと知ったときは驚きを隠せなかったが」
ルイス「#アリス#が起きなかったからね」
そんなこんなで、僕は今回の件について話すために種田さんと席を外すのだった。
まぁ、四人だけにしても大丈夫でしょ。
ルイス「──大丈夫かなぁ」
種田「そんなに心配か?」
ルイス「さっきも説明したけど、あの中原中也も君の知っている中原中也と変わらない。安吾君のことが嫌いだからね」
そうか、と種田さんはお茶を飲む。
種田「改めて、今回は力を貸してくれたこと感謝する。良かったら特務課の手伝いをしてくれないか?」
ルイス「返事はいつもと同じですよ。それじゃあ」
テニエルside
テニエル「……。」
ルイス・キャロルが居ないというだけで、此処まで空気は最悪になるものだろうか。
誰も口を開かず、五分が経過しようとしていた。
あの桜月も話さないとか、本当に気まずいのだが。
安吾「……お二人はいつ元の世界に帰られるのですか?」
桜月「今日……だよね?」
中也「あぁ」
はい、会話終了ふざけんな。
桜月「あ、あの……私と中也のことを誤魔化してくれてありがとうございました」
安吾「政府関係者としては絶対に駄目なのですが、ルイスさんとの約束でしたので」
テニエル「約束?」
安吾「……いえ、何でもありません」
眼鏡は一息おいてから、話し始めた。
安吾「ルイスさんから説明があったかもしれませんが、登録されていない異能力者というのは中々に面倒なんです。中原さんやテニエルさんはまだ良いのですが、泉さんの場合は同じ人物がいない」
中也「つまり、もう一人がやったことに出来ないのか」
テニエル「俺に関しては、もう死んでるんだろ? どうしたんだ」
安吾「……泉さんとテニエルさんの異能を見たのは誰でしょうか」
桜月「えっと、最後の方に戦った人達だから──」
マッドハッターに三月ウサギ。
そして主犯のシヴァ。
それ以外は桜月のことを見ているが、異能者ということを知らない。
テニエル「……なるほど」
桜月「え?」
テニエル「帽子屋の二人は俺達の味方だ。俺達三人なんて居なかったことにしたのだろう。シヴァの方は虚言として特務課は判断した」
中也「表向きにはルイスさんと探偵社、マフィアの一部のみで対応したことにしたのか」
安吾「はい。お三方の活躍を消すようなことなってしまい、本当に申し訳ありません」
桜月「謝らないでください! 安吾さんのお陰で助かったこともありますから」
中也「桜月の言うとおりだ」
テニエル「でも、異能を使わざるをえない状況にしたルイスが悪いよな」
ルイス「はいはい、僕が弱かったせいですみませんねー」
あ、と俺達は振り返る。
部屋の入り口にルイスが立ち、ため息をついていた。
種田「ほら、大丈夫だっただろう?」
ルイス「喧嘩とかはしてなかったけど、僕の悪口で盛り上がってたね」
ニコニコと笑っているが、多分怒ってるのだろう。
ごめんて。
そんなことを思ってると眼鏡がルイスに資料を渡していた。
安吾「此方、僕や長官しか閲覧できない方です。一応ご確認よろしくお願いします」
ルイス「ありがと」
種田「安吾が担当したし、不備はないと思うが大丈夫そうか?」
ルイス「……何徹したの?」
苦笑いを浮かべる眼鏡。
あれ、もしかして特務課ってブラックだったり──。
ルイス「ま、此方の資料も貰っておくよ。三人とも何かやり残したことない?」
中也「特に思い付きませんね」
桜月「中也に女装してもらってないです! ついでにボスも!」
テニエル「何で俺まで」
中也「絶対しないからな」
ルイス「それじゃ、僕達は行くね」
ルイスside
指を鳴らせば、見慣れた景色が広がっていた。
|異能空間《ワンダーランド》に戻ってきた僕は、真っ先に資料をしまう。
#アリス#「あら、おかえりなさい」
桜月「アリスさん!」
ただいま、と#アリス#に駆け寄る桜月ちゃんの姿を見て何だか落ち着く。
同時に、少し寂しさもあった。
やり残したことがないとはいえ、ここ数日みたいに傍にいれることはそう無いだろう。
桜月「あ、そういえば帰る方法は……」
ルイス「予想通り、テニエルの異能力だよ」
中也「あの落ちる感じ少し苦手なんだよな。まぁ、仕方ねぇけど」
テニエル「忘れ物とかないならすぐ送るぞ」
桜月「ちゃんとお別れさせてよ!?」
ルイス「最後まで楽しそうだね、君達」
そう、僕は笑う。
視線の先には桜月ちゃんがいて──。
???「だーれだぁ!」
桜月「え、三月ウサギさん!?」
???「声に騙されたね、桜月ちゃん」
桜月ちゃんの背後に立っている二人。
桜月「マッドハッターさん!?」
三月ウサギ「ドッキリ大成功だねぇ」
マッドハッター「これ、ドッキリなの?」
#アリス#「思ったより嬉しそうじゃないわね」
桜月「いや、会えると思ってなくて吃驚が勝っちゃいました……」
マッドハッター「元の世界に帰るなら見送りに来るさ。迷惑も掛けたしね」
三月ウサギ「えへへっ、ヨコハマ観光は楽しかったぁ?」
桜月「はい!」
思い出話の途中に僕のロリータ服が出ている。
まぁ、うん、もう良いや。
桜月ちゃんが楽しそうだから諦めることにする。
桜月「これ、さっきこの世界の|首領《ボス》から貰ったんです!」
三月ウサギ「これはぁ……」
マッドハッター「まぁ……うん、似合ってるんじゃないか?」
ルイス「ちょっと待てぇ!?」
何で写真持ってるねん。
#アリス#「良いじゃない、ルイスちゃん?」
ルイス「ここぞとばかりに弄らないでくれるかな?」
三月ウサギ「今度、一緒に可愛い服着ようねぇ」
ルイス「嫌だよ!?」
マッドハッター「僕は良いと思うよ。カメラマンは任せてくれ」
ルイス「なに勝手に話を進めてるのかなぁ?」
中也「エリス嬢巻き込んだら、|首領《ボス》が洋服代とか出してくれそうだよな」
桜月「絶対出してくれるね。あ、その時に中也も女装──」
中也「しねぇからな!?」
そんなに女装させたいか、僕に。
ルイス「そういえば、君はどうするの?」
テニエル「……俺?」
ルイス「元々彼女達の世界の住民でしょ。帰るなら、このタイミングがいいと思うけど」
少し考え込むテニエル。
しかし、答えは決められているようなものだった。
桜月「一緒に帰ろう」
テニエル「……え?」
桜月「ボスは悪い人じゃないし、説明すればみんな判ってくれるって!」
ルイス「まぁ、僕としても架け橋になってくれると嬉しいかな。|異能空間《ワンダーランド》ならいつ来ても構わないし」
変なエリアに行きさえしなければ、だけど。
テニエル「……良いのか?」
桜月「うん!」
中也「桜月を傷つけたら許さねぇがな」
仲良くできそうでよかった。
やっぱり、別れはこうじゃないと。
桜月「ルイスさん、本当にお世話になりました!」
ルイス「此方こそ、色々ありがとね。……巻き込んで申し訳ない」
桜月「謝らないでください。またこうやって会えたから±0ですよ」
ルイス「……そっか」
僕、うまく笑えてるのかな。
別れが惜しいなんて、まだまだ子供だ。
そんなことを考えていると、ふと思い出した。
あの時渡そうと思って探すのを諦めたもの。
#アリス#が眠っている間に見つけたんだった。
ルイス「本当はもっと早くに渡したかったんだけどね」
僕が渡したのは、一冊の本だった。
正確には──。
桜月「あ、中に鏡……?」
ルイス「これは面白い鏡でね。どこでも通信できるんだ。それこそ、世界が違くてもね」
桜月「へぇ……って、え!?」
テニエル「お前の異能力か?」
#アリス#「正確には私達の異能、だけどね。異能力で創ったものだから太宰君に触れられたら消滅してしまうわ」
桜月「絶対太宰さんに触らせないようにしよう……」
異能力で作った鏡はどこでも繋ぐ。
ルイス「中也君と喧嘩したら気軽に連絡して良いからね!」
中也「何でそんな満面の笑みで云うんですか!?」
冗談だよ、冗談。
そう、僕は中也君に笑いかける。
何処かの時間では告白まがいなことしてたし、此処でやっても良いよね。
ルイス「ほら、僕が引き留めてたけどあまり遅くなると君の世界のみんなが心配するよ」
桜月「あ、二週間ぐらい開けてたんだっけ……」
中也「……|首領《ボス》に報告書を出した方がいいな、これ」
#アリス#「また会いましょうね、二人とも」
三月ウサギ「あ、そうだぁ!」
ふと、三月ウサギがマッドハッターと内緒話を始めた。
そして桜月ちゃんへと伝える。
桜月「あの、それって……!」
三月ウサギ「私達の本名。この名前は英国軍にいた頃を思い出しちゃうからあんまり使いたくないんだけど──」
マッドハッター「君と友達になるなら、僕達自身のことを知ってもらいたいからね」
なんか二人とも楽しそうでいいなー。
三月ウサギ「あ〜、ルイスが話に入れなくて拗ねてるぅ!」
ルイス「ちょ、拗ねてなんか──!」
マッドハッター「拗ねてるな」
中也「あれは拗ねてるだろ」
桜月「拗ねてるね」
#アリス#「話に入れなくて残念だったわね」
テニエル「顔真っ赤にして面白いわ」
ルイス「皆して馬鹿にするなぁ!」
そんなこんなで、三人は元の世界に帰ることになった。
話しているうちに日付が変わろうとしている。
ルイス「……またね、桜月ちゃん」
桜月「はい! また会いましょうね、ルイスさん!」
瞬きをした次の瞬間、三人の姿はなかった。
彼女達がいた場所には穴が空いている。
最初から最後までテニエルの異能に振り回されているな、桜月ちゃん。
ルイス「さて、来てくれてありがとね。マッドハッター、三月ウサギ」
三月ウサギ「どういたしましてぇ」
マッドハッター「また桜月ちゃん達が来たときは連絡をくれると嬉しいかな」
#アリス#「もちろん。ねぇ?」
ルイス「あぁ」
そうだ、と僕は思い出して指を鳴らす。
僕の後ろにお茶会のセットが用意されていることだろう。
ルイス「暫く会えなくなるだろうし、色々話したいこともあるんだ」
--- アーサー、エマ ---
--- 少し付き合ってもらえないかな? ---
二人は少し驚いた表情を見せた。
次の瞬間には、優しい笑みを浮かべている。
エマ「もちろん良いよぉ。ね?」
アーサー「……仕方ないなぁ」
そうして僕達は、遠い昔に夢見ていたような何でもない日を祝うお茶会を開くのだった。
--- fin ---
『英国出身の迷ヰ犬×文豪ストレイドッグス!』のコラボ第二弾をここまで読んでくださり、ありがとうございました。
これで完結になります。
伏線や今回の裏事情などはこの小説の少し後に投稿されていると思われます。
そちらにちゃんとした後書きもあるので、ここでは簡潔に。
二度目のコラボ小説に付き合ってくださった、ののはなちゃん。
そして「英国出身の迷ヰ犬」の世界に来てくれた桜月ちゃん、中也。
最後にこの物語を最後まで読んでくださった貴方へ。
心より感謝を申し上げます。
これからもルイス・キャロルを始めとしたキャラクター達の物語を、ののはなさんの小説を応援してくださると幸いです。
また別の作品でお会いしましょう。
collaboration. after talk
ののはなさんとのコラボ小説第二弾の振り返りなど色々ネタバレの多い作品になっています。
是非、本編を先に読んでください!
もちろんののはなさんの方の小説も!
--- 初めに ---
---
海嘯です。
前書きは読んでいただけたでしょうか?
まぁ、色々と謎の多かった部分が多いと思うので、一つずつ説明できたらと思ってます。
解説忘れとか、詳しく聞きたい部分があれば気軽にファンレターをください。
目次的な何か
初めに←イマココ
このストーリーになった理由
ストーリーを簡単にまとめてみた
オリキャラ紹介
1-ルイス・キャロル
2-アリス
3-ジョン・テニエル
4-マッドハッター
5-三月ウサギ
6-シヴァ
7-洗脳の異能者
語りたいところだけ語るコーナー!
1-二つの世界について
2-ルイスの探し物
3-女装de観光
4-アリスの登場シーン
5-ルイスはどこまで覚えていたのか
6-乱歩は全て視えている
7-首領と呼んだルイス
8-ルイスが太宰に伝えた事
9-フョードルは誰の味方?
10-シヴァの協力者について
11-増援を倒した三人
12-vsマッドハッター
13-アリスの覚悟
14-テニエルの覚悟
15-猫とルイス
16-首領の提案
17-ボスの選択
帽子屋の外見
元英国軍組の想い
最後に
書き方は「色々話すよ☆」みたいな感じです。
そして、目次から分かるようにめっちゃ長いです。
読みたいところだけ読む、又は時間があるときに読んでみてください。
では本編どうぞ!
---
--- このストーリーになった理由 ---
---
ののはなさんとの二回目のコラボという事で、負けられないという謎の対抗意識((
こっちの世界でも問題を起こそうと思って、やっぱり彼氏君(中也🌸)を出したいという事でこんなストーリーになりました。
一応これ、昔書いていた文スト二次創作のアレンジなんですよ。
その原案は消したけどね。
荒覇吐が暴走する、やべぇ、って話です。
それを上手い具合に変えたらこうなった感じ。
意外とちゃんとまとまっていて、自分でもびっくりしてる。
---
--- ストーリーを簡単(?)にまとめてみた ---
---
頑張って時系列順に整理してみた。
(数年前)
シヴァが破壊したいほど世界に絶望。
破壊する方法を荒覇吐に決め、行動開始。
(本編直前)
ドス君がシヴァの存在を知った。
彼の思想をどうにか止めたいのでルイスと連絡を取り、利害の一致から一時的な協力を約束。
ドス君がシヴァと接触。
シヴァはルイスに邪魔されないようにドス君の入れ知恵で二人の異能者に協力してもらう。
また、帽子屋を洗脳して仲間にした。
五人は日本へ移動。
テニエル🕰に頼んで中也を拉致してもらおうとする。
世界をやり直すとか本当はどうでもよかったテニエル🕰は中也🌸を連れてきた。
彼もテニエル🌸と同じで世界を越えたりできる。
だから「これで桜月も来てシヴァをどうにかしてくれたら良いのに」と思っていた。
用済みになったテニエル🕰と洗脳の異能者はここで死亡。
テニエル🕰殺して海外に転移できなくなったから、日本で異能の分離を始めた。
ここでマフィア潰したら楽だよな、と思ったドス君。
シヴァに相談して、ついでにマフィアを潰そうとする。
マフィアへ文書を届けたシヴァだったが、中也🕰がいて大混乱。
テニエル🕰のせいやん、と激怒。
(本編)
首領が文書見て混乱。
ルイスに相談しようにも出ないから中也🌸に任せることにした。
テニエル🌸の異能で桜月ちゃんが来た。
中也🌸と分かって、ルイスは探偵社&特務課に「帽子屋」について調べてもらった。
女装してヨコハマ観光。
中也🌸に電流が流されると同時に、中也🕰に痣が出現。
太宰さんの異能で痣を消して、帽子屋の情報を入手。
シヴァの存在と、荒覇吐が目的と判明。
桜月ちゃんが潜入任務開始→情報漏れによる失敗
同時にルイスが倒れて、アリスが登場。
テニエル🌸のお陰で桜月ちゃんが生還。
ルイス起床。
中也🌸の救出&帽子屋の捕縛のために作戦会議開始。
四手に分かれて作戦開始。
新双黒vs傭兵。
双黒vs帽子屋→新双黒が来るも惨敗。
最深部に到着したルイス、桜月ちゃん、テニエル🌸。
マフィアを潰すのはまた今度でも良いかな、とドス君がルイスの方についた。
テニエル🌸vsシヴァ→圧勝。
桜月vs帽子屋。
太宰の異能で洗脳が解ける。
応援が来て大変なルイス達以外の三チーム。
ドス君をはじめとした第三陣営の協力で特に問題なし。
苦しいながらも前を向く三月ウサギと、受け止めきれなかったマッドハッター。
vsマッドハッター。
アリスのおかげで正気になって事件は終了。
与謝野さんのおかげで死者はゼロ。
重症者も治療済み。
結局中也🌸を連れてきたのは誰か、という話になる。
テニエル🌸vs桜月→テニエル🌸死にかけ。
W中也vs桜月→誤解が解くことで解決。
シヴァと帽子屋二人は特務課に引き渡された。
幸運の招き猫のおかげでアリスもテニエル🌸も助かった。
ヨコハマ観光再開したけど、最初からロリータ服を着ることになったルイスと桜月。
マフィア→探偵社→特務課の順で挨拶。
テニエル🌸が、桜月と中也🌸と帰ることに。
ルイスが鏡をプレゼント。
帽子屋の二人から本名が明かされる。
「……またね、桜月ちゃん」
(本編後)
原作組&ルイスとアリスは共喰いへ。
帽子屋の二人は引き続き灰色の人たちを救う。
シヴァは多分ムルソー行き((
---
--- オリキャラ紹介 ---
---
いつもの二人は雑です。
ごめんね。
1-ルイス・キャロル
はい、今作も勿論主人公です。
ボスの方が主人公感あったけどね((
2-アリス
重症者①
マジであの行動は勇気いるし、強すぎだと思う。
3-ボス(ジョン・テニエル)
ジョン・テニエル。
異能名は『|不思議の国の入り口《welcome to the wonderland 》』。
効果は転移系で、穴を通じて色んなところへ行ける。
元ネタ(?)はアリスが穴に落ちるところ(※考えたのは私じゃなくて|神様《ののはなさん》です)
見た目は…どんなだろうね。
(ののはなさんの方でめっちゃ詳しく考えてくださってた…Another storyにあるので是非!)
重症者②
ここまで重要キャラになる予定じゃなかった。
そしてここまでイケメンキャラでもないはず。
個人的には桜月ちゃんと戦ってるところが好き。
4-マッドハッター
本名はアーサー・ラッカム。
異能名は考えてません。
効果は対象の時の流れを遅くする(約31,536,000倍)。
対象数に上限はないが、自身を中心とした数メートル内しか範囲は及ばない。
また、誰か別の人が触れれば異能は解除される(太宰治ではなくても解除可能)
元ネタはマッドハッターが時計ウサギの時計を壊すところ。
時計が壊れる→時を刻めない→時が止まる。
見た目は銀髪で、緑色のハットとカラースーツ。
軍人時代を思い出すから本名で呼ばれたくない人①
マッドハッターは三月ウサギがつけた。
由来は戦争で狂ったのと帽子が好きだから、らしい。
真面目っぽいけど精神的に弱いイメージ。
5-三月ウサギ
本名はエマ・マッキーン。
異能名は考えてません(二回目)
効果は対象の大きさや重さを操作する。
操作数に制限がなく、触れていなくても操作することが可能。
しかし、一度は触れていないといけない条件がある。
因みに人は対象外。
元ネタはアリスが小瓶を飲んで大きくなったり小さくなったりするところ。
見た目は金髪で、赤色のハットとカラースーツ。
軍人時代を思い出すから本名で呼ばれたくない人②
三月ウサギは自分でつけた。
由来は三月生まれでうさぎが好きだから。
本当はちゃんとしてる系の人。
6-シヴァ
本名は不明。
異能名も不明。
効果は自身の姿を消す。
正確には奥の光景を自分に映している。
ボスみたいに気配に敏感な人には気付かれてしまう。
元ネタは特にない。
正直、この人適当((
世界に絶望しても死ななかった人。
だからって、一回破壊して創り直そうとするのもどうかと思うけど。
7-洗脳の異能者
洗脳することができるモブ異能者、以上。
そういや気づいている人いるのかな、ボス達の名前の由来。
適当に考えたわけじゃないからね?
良かったらボス、マッドハッター、三月ウサギの本名で調べてみてください。
文豪じゃないけど、ちゃんと考えてつけてるから。
---
--- 語りたいところだけ語るコーナー! ---
---
一つ一つはそんなに長くならない。
内容にもよるけど。
1-二つの世界について
本編でも説明した通りの関係です。
ifの世界と、可能世界。
どちらも同じような意味だけど、私は別で考えることにします。
簡単に表すならif=別の方が書かれている文スト二次創作。
可能=あくまで英国出身の迷ヰ犬が元になっている。
ま、個人的な話なんで無視で大丈夫です。
2-ルイスの探し物
3話でルイスが探していたもの。
23話(最終話)でやっと伏線回収されましたね。
いや、長すぎだろ。
3-女装de観光
完全なお遊びです。
因みにルイス君と中也の服はののはなさんに考えてもらいました〜
4-アリスの登場シーン
あのエリアは面倒くさいものを色々しまってます。
英国軍時代に対峙した異能者とか。
因みに中也が拾おうとしたのは元人間の携帯です。
電話に出た一週間後に呪い殺されるという、ガチで謎な異能です。
触れるだけでもアウトだし、アリスが止めていなかったら──。
5-ルイスはどこまで覚えていたのか
全部覚えてたよ☆
6-乱歩は全て視えている
ルイスは普通に戦力としても、指示役としてもいないといけない。
敦と禍犬は太宰が仕組んでいるし、フィッツジェラルドを倒したことから実力的にも問題はない。
太宰と素敵帽子君は、もし間に合わなかった時のためにルイスと確実にいた方がいい。
桜月は|彼氏君《救助対象》を誰よりも大切に思っているし一番知っているルイスといた方がいい。
テニエルは、何かあった時の緊急避難にも使える。
それに根はいい奴だ。
7-首領と呼んだルイス
ルイスは3年ほどポートマフィアに在籍していた。
その時は首領が無理やり呼ばせていて、組合戦の時に森さん呼びにしてしまった。
久しぶりに首領呼びでテンションあがっちゃった中年なのであった。
8-ルイスが太宰に伝えた事
「すぐに明かされたけど「太宰君、どうにかマッドハッターと三月ウサギに触れて異能を解除してほしい」って言いました。
9-フョードルは誰の味方?
気分と戦況を見て変えてる。
今回はマフィアを潰せそうにないし、ルイスを裏切ると大変そうだから味方についた。
10-シヴァの協力者について
うちの世界のテニエルと、洗脳の異能力者です。
11-増援を倒した三人
乱歩チーム→ドス君
国木田チーム→ゴーゴリ
黒蜥蜴チーム→神威
つまりは天人五衰((
12-vsマッドハッター
シヴァがあっさりやられるの良いなぁ。
マッドハッターの狂ってる要素なかったなぁ。
あれ、ラストバトルにいいかも。
──で、あぁなった。
13-アリスの覚悟
帽子屋相手に戦えないとあれだけ言っていたのに、こういう結末を迎える。
個人的に好きなシーンTOP.5に入るわ。
14-テニエルの覚悟
マージでかっこいい。
自分で書いていてあれだけど「後悔するなよ」が好きすぎる。
これも個人的に好きなシーンTOP.5に入るわ。
15-猫とルイス
幸運の招猫も猫だからね!
そりゃ話せるよね!
16-首領の提案
何でルイス君にロリータ着させたんだろうね。
アリスでも良かったのでは、ってのはルイスの前で言っちゃダメだよ?
17-ボスの選択
|選択した《半ば強引に決められた》未来。
テニエルがまたルイスと桜月ちゃんを繋いでくれることを願ってます。
みんなの好きなシーンも教えてくれると嬉しいな。
人気場面投票とかしてみたい。
---
--- 帽子屋の外見 ---
---
海嘯的帽子屋のイメージです。
自分の考えていた三人のままでいたい人はスキップしてね。
マッドハッター/アーサー
https://picrew.me/share?cd=dnJDn50CMB
三月ウサギ/エマ
https://picrew.me/share?cd=7ClDFBe2Et
眠りネズミ/フョードル(本当は紫だけど)
https://picrew.me/share?cd=fCAHQLhIiR
因みに、二人が帽子屋にいたら──
ルイス
https://picrew.me/share?cd=D7ugFQrSQj
アリス
https://picrew.me/share?cd=zcd93XR5Cj
お借りしたのは「シルクハットキャラメーカー」です!
---
--- 元英国軍組の想い ---
---
ルイス・キャロル。
アリス。
アーサー・ラッカム。
エマ・マッキーン。
何のために戦って、何を守りたいのか。
想いを考えて書いてみたけど、難しかったです。
全然書けてない部分もある。
これは過去編で頑張るしかない((
---
--- 最後に ---
---
ここまでお付き合い頂き、本当にありがとうございます!
完走して思ったんですけど、ののはなさん凄くね???
私の方が全然投稿頻度遅いし、矛盾とか多いし…
やっぱりののはなさん神だった?
小説の感想としては、結構伏線張りすぎたような気がします。
オリキャラを作るのが楽しすぎて、最後とか原作キャラが中也しかいないというね。
そこは反省ポイントかなぁ。
次オリジナルストーリー書く時は気をつけようと思います。
でもやっぱ楽しいな、創作活動は。
二次創作だけど、完結するとめっちゃ嬉しい。
ファンレターくれた方、本当にありがとうございます!
励みになりますし、モチベーションにもなりました。
他の作品にもくれないかな((
改めまして、二度目のコラボ小説に付き合ってくださったののはなちゃん。
「英国出身の迷ヰ犬」の世界に来てくれた桜月ちゃん、中也。
この物語を最後まで読んでくださった貴方へ。
心より感謝を申し上げます。
これからもルイス・キャロルを始めとしたキャラクター達の物語を、
ののはなさんの小説を応援してくださると幸いです。
それでは、またお会いしましょう!
ルイス「また別の作品で会おうね。待ってるよ」
アリス「この下はなんか恒例になりつつあるオマケよ」
マッドハッター「少し内容がグロテスクだから苦手な人は気をつけてね」
三月ウサギ「まぁ、いつもの小説とそんなに変わらない程度だよぉ」
ルイス「無理そうだったらブラウザバックするんだよ。それじゃ、今度こそまた別の作品で会おうね」
---
--- オマケ ---
---
痛いのは嫌いだ。
でも、昔は何とも思っていなかった。
感覚がイカれていたんだと思う。
どれだけ銃で撃たれても、
どれだけ刃が体に突き刺さっても、
どれだけ動けないほどの重症だとしても。
一ミリも表情は動かなくて、
いつしか、味方からも恐れられていた。
戦場で生まれたのは、ただの異常者だけ。
何も感じず、ただ命令された通りに敵を消す。
まるで機械だ。
でも、戦場に立って良かったこともある。
この身体能力も、戦闘センスも、
戦争がなければ磨かれることがなかった。
あの出会いが無駄だったなんて、思えなかった。
残念ながら、彼らみたいな“想い”は持ち合わせていない。
この感情すら、本物なのか判らない。
「自分は何者なのか」
ふと、その質問が頭に浮かんだ。
答えはもちろん、自分が一番理解している。
鏡に写った自分を見て、深呼吸をする。
この方法しかあり得ない。
でも、自分にできるのだろうか。
そんな疑問ばかりが頭の中をグルグルと廻り続ける。
この感情が偽物だというのならば、
胸が、こんなに苦しくはないはずなんだ。
覚悟は、決まった。
ココロがなかったとしても、
ヒトじゃないとしても、
この覚悟だけは、本物だから。
目を閉じると同時に、全力で足に力を込める。
地を蹴ると同時に、異能力で鏡を出す。
「……っ」
鏡で抑えきれなかった剣を、素手で掴む。
シヴァに当たるギリギリで刃は止まっていた。
私は今、生きている。
手が痛くて、血は剣を伝って床を赤く染めていく。
アーサー「くびをはねなきゃ、じゃないと、おれは、」
桜月「アリスさん! 逃げて!」
優しい、私を想う声が聞こえた。
その言葉に、優しさに、
思わず笑みがこぼれてしまう。
剣をどうにか押し返して、懐の短刀でシヴァの縄を切る。
私は上手く鏡を利用して、シヴァを彼らの方に投げ飛ばした。
ちゃんと受け取ったのを確認して、私は落下する。
下では、アーサーが剣を構えていた。
着地を狙っているんだろうな。
鏡を使えば、絶対に防ぐことができる。
そんな読みやすい太刀筋。
「──でも、ごめんなさい」
まるで映画のようだった。
全てが遅く見えて、想像していた数倍もの鮮血が舞う。
痛みは昔のように感じなくて、何故か頭が冴えている。
まだ優しく笑うことは、出来そうだった。
赤の女王と呼ばれるようになった由来は圧倒的な指揮能力。
そして、返り血で服が赤く染まったから。
「……自分の血で染まったのは、初めてね」
そう呟くと同時に、私はマッドハッターに倒れかかった。
アーサー「アリス……?」
声で判った。
もう、この子は大丈夫だ。
「えぇ、私はアリスよ」
アーサー「ぼく、いったい、いや、それよりも……!」
あぁ、と私は笑う。
少しずつ、痛みが襲いかかってきていた。
話せるうちに、伝えないと。
「これぐらい問題ないわよ。もっと大変なことは戦場で経験してきたわ」
アーサー「僕、きみを、傷つけて、」
「貴方が想いを壊すのと比べたら大したことないわ。本当に貴方、話を聞かないわねぇ」
謝って欲しい訳じゃないんだけれど。
そんなことを考えながら、血塗れた手で私はマッドハッターの頭を撫でる。
綺麗な銀髪を赤くしちゃったな。
でも、撫でずにはいられない。
大丈夫。
貴方は誰も殺してない。
「悪いけど、後は任せたわよ。ルイスが|異能空間《ワンダーランド》で待っている、から……」
耐えられなかった。
急に体から熱が消えて、
急に力が入らなくなって、
もう、アーサーに寄りかかることも難しい。
エマ「お疲れ様。……ありがとう」
地面に直撃する寸前に、誰かが支えてくれた。
もう、声も聞こえない。
目も開けられない。
でも何故か胸が温かいような、そんな気がした。
最後に平和なオマケ。
ルイスとアリスで海に行きました((絶対あり得ない
いつもの二人
https://picrew.me/share?cd=AGtzGYWmZq
ちょっと違う二人
https://picrew.me/share?cd=xXN3XCPjSX
本当はアリスをサイドテールにしようと思った。
けどルビーにしか見えなくてやめた(笑)
タイトルを入力してください
Bメロとサビ
過去の痛みも忘れずに
振り返りながら歩いてきたけど
今は少しでも受け入れて
大切な人を守りたい
ワンダーランドで会いましょう
この傷は消えないけど
過去から未来へと繋いでいく
この想いを胸に歩け
ワンダーランドで会いましょう
君と僕で紡ぐ物語
世界と世界を繋いでいく
この鏡が僕らを結んでいる
---
「過去の痛みも忘れずに 振り返りながら歩いてきたけど」
本編でのルイス(episode.17まで)は過去に縛られている感じ。
戦争で負った心の傷がまだ癒えていない。
「今は少しでも受け入れて 大切な人を守りたい」
アリスのお陰で前を向けた(episode.18以降)
大切な仲間を守りたいという想いを抱き、探偵社に入ることを決意。
少しずつ前を向いていく。
いつか、ちゃんと過去と決着をつけたい。
「ワンダーランドで会いましょう」
ワンダーランドには二つの意味がある。
“異能空間”と“英国出身の迷ヰ犬”。
異能空間は、想像通りの意味。
英国出身の迷ヰ犬というのは、小説のこと。
ルイスは可能世界(本の中の世界)についても知っている。
だから、現実世界(私達のいる世界)についても理解している…という設定((
「この傷は消えないけど」
まぁ、過去の痛みと一緒です。
「過去から未来へと繋いでいく この想いを胸に歩いていけ」
手の届く範囲でいい。
ただ大切な仲間を守りたい。
そんな、戦争から現代に繋いでいく想いを胸に抱くルイス。
「ワンダーランドで会いましょう」
以下略。
「君と僕で紡ぐ物語」
この“君”は作者か読者です。
そして、このシリーズに入れたこと分かるように桜月ちゃんをイメージしてる((
てか、二番自体そうなんですよね。
「世界と世界を繋いでいく」
世界というのは“英国出身の迷ヰ犬”と“現実”。
そして“英国出身の迷ヰ犬”と“文豪ストレイドッグス!”。
「この鏡が僕らを結んでいる」
現実の場合、アリスの鏡とスマホとかの画面。
画面って消したら暗くなるじゃないですか。
そしたら自分の顔が映る⇨鏡と一緒じゃん(一緒ではありません)
コラボで考えた場合、二回目の方で渡した鏡が結んでくれます。
何かあった時も一人じゃない。
そんなイメージです、はい。
これ、解説入れなくてもよかったな((
if story
設定が色々と違うよ☆
因みに、これが元々やろうとしていたやつ((
違う点
・太宰と中也は帽子屋に勝利し、洗脳解除に成功
・シヴァが異能分離装置を起動
小説スタート☆
ルイスside
桜月「……ぁ」
シヴァの笑い声と、中也君の叫び声。
助けに行こうものなら、自分の命が危険に晒される。
桜月「中也! 嫌だ、こんなところで死んじゃ駄目だよ!」
ルイス「桜月ちゃん、駄目だ。中也君に触れたら君まで──」
桜月「でも中也が!」
僕の言葉は、彼女に届かなかった。
呼び出された四神に飛ばされ、床を転がる。
桜月ちゃんは中也君の元へ駆けていく。
止められなかった。
起き上がろうにも、受身が取れなかったせいか息が乱れている。
痛みもあるし、動けそうにもなかった。
ボスも四神に圧倒されている。
彼女が中也君まであと数メートル。
そんな、ギリギリでのことだった。
???「──異能力」
僕の真横を通り過ぎた二つの影。
一つは真っ直ぐ中也君の元へ行き、一つは桜月ちゃんの前に立ち塞がる。
桜月「退いて!」
何処に隠し持っていたのか、桜月ちゃんは銃で撃った。
しかし当たることはない。
大きな鎌が銃弾を切り裂いたのだ。
桜月「──っ」
シヴァ「良いところに来た。荒覇吐の顕現を邪魔する奴等を殺せ」
ルイス「……?」
ふと、マッドハッターと目が合った。
何故か彼は笑みを浮かべている。
三月ウサギ「ねぇ鏡月ちゃん──いや、桜月ちゃんだっけぇ?」
桜月「……なに」
三月ウサギ「心配しなくても、中原中也のことは私達が責任をもって助ける。だから、そこで大人しくしていて」
シヴァ「は?」
気がつけば、シヴァへと鎌が振り下ろされていた。
三月ウサギ「すごいすごーい! 私が云うのもおかしいけど、避けれると思ってなかったぁ」
あはっ、と三月ウサギは笑っていた。
その場にいた誰もが目を見開いた。
いや、驚いていない人はいる。
僕達の中で笑みを浮かべているのは──。
ルイス「やっぱり君をあの時残して良かった」
太宰「次からはちゃんと理由を説明してくださいよね、ルイスさん」
ごめん、と僕は笑っておいた。
その間にも三月ウサギとシヴァの戦闘は続いていた。
シヴァは多少戦えるのかもしれない。
でも彼女に叶うわけがなかった。
三月ウサギ「あははっ! 楽しいねぇ!」
シヴァ「狂人め……!」
今のうちに、と僕は桜月ちゃんの元へ。
桜月「ルイスさん、一体何がどうなって……?」
ルイス「マッドハッターと三月ウサギの洗脳を太宰君が解いた。そして中也君は彼女の云う通り──」
マッドハッター「これで終わりだよ」
中也君の叫び声が途絶えた。
桜月ちゃんは振り返る。
電流はもう流れていないようだった。
マッドハッター「とりあえず一命は取り留めたよ、ルイス」
桜月「っ、中也!」
ゆっくりと中也君は目を開く。
ボロボロだが、記憶の混濁などは見られない。
これで目標の一つは達成かな。
ボスside
三月ウサギ「出てきなさーい!」
シヴァの異能力で姿が見えなくなってしまった。
どうやら三月ウサギは気配などは分からないらしい。
ボス「……おい」
俺は其奴に話しかける。
そして有無を言わせずに転移させた。
三月ウサギの背後に開いた穴から落ちてきたのは──。
太宰「はーい、異能力禁止ね」
シヴァ「異能無効化──!?」
太宰「どうやら彼方の中也の救出も終わったらしいし、大人しく捕まった方が良いよ」
先に作戦を伝えたとはいえ、対応力高すぎだろ。
唯一シヴァの居場所が分かる俺が、あの包帯を転移させて触れさせる。
そうすれば姿を消す異能力も解除されるという、物凄く簡単な作戦。
シヴァ「僕は、この世界を……」
ボス「まぁ、別世界とはいえ|魔人《彼奴》に騙されてるから情が沸かないわけではない。だが相手が悪かったな」
この世界にはルイス・キャロルがいる。
戦神と呼ばれ、赤の女王と共に歴史に名を刻んだ俺の知ってる中で最強の男がな。
それに、今回は泉桜月もいた。
あの二人に勝てる奴なんていねぇだろ。
ボス「……ま、ちゃんと罪を償うんだな」
桜月「それ、貴方が云う?」
太宰「そっちも終わったんだね」
ルイス「うん。特務課に引き渡したら今度こそ終わりだよ」
ふぅ、とルイス・キャロルは力が抜けたように床へ座り込む。
マッドハッター「大丈夫?」
ルイス「……うん、問題ないよ」
赤の女王の話では、英国軍にいた頃の仲間。
過去を嫌う彼奴にとって、あまり関わりたくないのかと思っていた。
ボス「……。」
あんな風に笑うんだな、彼奴。
桜月「あの、ルイスさん。異能力を使ってすみません、怪我とかは……」
ルイス「大丈夫。謝らなくて良い。シヴァにバレたら色々と面倒くさかっただけだから」
桜月「……特務課は?」
太宰「安吾なら適当に誤魔化してくれるよ。だから桜月ちゃんは何も心配しなくて大丈夫!」
そんなことより、と包帯は満面の笑みを浮かべていた。
ルイス・キャロルとこの世界の中原中也は呆れているのか、ため息をついている。
太宰「一段落したことだし私と心中してはくれな──」
桜月「無理です」
太宰「またまた~、そんなこと云って本心は──」
桜月「しつこいです。いい加減にしないと全力でビンタしますよ」
ルイスside
彼氏君「……ルイスさん」
ルイス「色々と聞きたいことはあるだろうけど、今はゆっくり休んだ方が良いよ」
はい、と彼女の世界の中也君は目を閉じた。
災難だったね、としか云いようがない。
桜月ちゃんの不死鳥のお陰で、殆どの火傷は治ったのではないだろうか。
命を落とさなかったことが、本当に不幸中の幸い。
ルイス「……。」
何かが抜けている気がする。
中也君を救出し、マッドハッターと三月ウサギの二人の洗脳も解けた。
シヴァだって捕縛できた。
あとは、一応中也君が回復するまで待つ。
最後に桜月ちゃん達を送って終わりの筈だ。
此処で何かが引っ掛かる。
何故、どうして。
送ることは簡単だ。
彼が異能力を発動させれば良いだけ。
この世界に来たときと同じように、彼女達を元の世界へ──。
ルイス「──来たとき?」
桜月ちゃんは、彼の異能力で僕の世界へやってきた。
それなら、中也君はどうやって。
ルイス「ごめんね、中也君。一つだけ聞かせて貰っても……」
そこで僕の視界は暗転した。
太宰side
三月ウサギ「おっと……」
中也「ルイスさん!」
三月ウサギ「大丈夫だよぉ、気絶してるだけだからぁ」
お疲れ様、と三月ウサギは優しくルイスさんの頭を撫でた。
倒れたときは驚いたけど、すぐに受け止めてくれて良かった。
にしても、ルイスさん無理しすぎじゃないですかね。
傷だらけじゃないですか。
マッドハッター「#アリス#、出てこれるなら指示だしてくれない? 多分、僕の話は聞いてくれないだろうし」
三月ウサギ「えー、まだ無理させるつもりぃ?」
マッドハッター「仕方ないだろ。まだ解決してないんだから」
三月ウサギ「でも──」
???「その必要はないですよ」
その声は、とボスが顔を上げる。
黒髪に紫色の瞳。
桜月「……フョードル」
ドストエフスキー「此方で傭兵の片付けは済ませておきました」
太宰「何故君が此処に?」
フョードルは相変わらず胡散臭い笑みを浮かべていた。
え、ブーメラン?
そんな、私はいつも素直で真面目な良い人間ダヨー
ドストエフスキー「おや、何も聞いてないんですか?」
ボス「其奴は眠りネズミだったんだよ。ルイス・キャロルと手を組んでいたらしい」
信じられない話だが、彼がそう言うのなら本当なのだろう。
桜月ちゃんも何か訂正したりする様子はない。
桜月「傭兵は結構な人数いた筈なのに、こんな数分で片付けられる筈がない」
ドストエフスキー「鼠は街の何処にでもいるものです。僕の仲間の手に掛かれば、それほど時間は必要ありませんよ」
仲間、というのは死の家の鼠のことだろうか。
それか、もっと別の──。
そこで私は考えることを止めた。
今は優先すべきことがある。
ドストエフスキー「シヴァはお任せします。まぁ、特務課に引き渡すのが良いでしょうね」
それでは、とフョードルは姿を消した。
転移の異能力だろうか。
でも、フョードルのものではない。
何となく、そんな気がした。
No side
今回の一件で、味方には死傷者がいなかった。
しかし、黒蜥蜴の相手した入り口付近の傭兵を中心に、敵は死者が結構出ることになった。
首謀者であるシヴァ改め***は特務課に身柄が拘束された。
又、帽子屋のマッドハッター改め***と三月ウサギ改め***は、シヴァに利用された異能者(数日前に死亡)によって洗脳されていたことが分かった。
事実確認の為の一時的な身柄の拘束はあったものの、現在は釈放されている。
眠りネズミ改めフョードル・ドストエフスキーについては逃亡の為、詳しい情報が分からない。
フョードルが仕組んだことなのか、はたまた別の者なのか。
真相は闇の中である。
ルイスside
ルイス「あー、やっと終わったー」
そう、僕は探偵社の応接間のソファーに飛び込む。
与謝野女医による治療に、特務課の事情聴取。
物凄く疲れた。
国木田「ルイスさん、行儀悪いですよ」
ルイス「でも疲れちゃって」
福沢「そっとしておいてやれ。たまにはいいだろう」
桜月ちゃんやもう一人の中也君については、最高機密として扱われることになった。
正直なところ、上手く誤魔化したとは言えない。
でも、安吾や種田さんクラスじゃないと彼女達の情報は閲覧不可能らしい。
誰も死なず、みんな元気な状態で帰ってこれたのは探偵社にマフィア、それから魔人君がいる組織。
桜月ちゃんとボス、そして帽子屋の二人のお陰だ。
中也「それにしても、異世界の自分なんて信じられねぇな」
中也「本当だよな。しかも|手前《テメェ》もマフィアやってるんだろ?」
うーん、どっちがどっちが分かりにくいなコレ。
ま、仕方ないけど。
ルイス「ねぇ、中也君」
「「はい」」
ルイス「あーごめん、桜月ちゃんの方。この世界に来たときのこと教えてくれる?」
ボス「その前にどっちか区別つくようにしろよ」
確かに、ボスの云う通りだ。
でもどうしたら良いのだろうか。
太宰「良いじゃん、蛞蝓と帽子置き場で」
「「良くねぇわ!」」
太宰「わーお、息ぴったりで気持ち悪い。そんなことより桜月ちゃん、私と心中──」
太宰君が誘い終わる前に踏む。
そして国木田君に連行してもらった。
桜月ちゃんは苦笑いを浮かべていた。
桜月「此方の太宰さんって、すぐに心中申し込んできますよね。あと結構辛辣」
ルイス「そうかな? そっちの太宰君のイメージが桜月ちゃんに怒られてるところしかないからな……」
あれは面白かったな。
|桜月ちゃん《十六歳》に怒られている|双黒《二十二歳》の図。
今回は流石に見れないか。
敦「あれ、結局中也さんの呼び方決まってないですよね?」
乱歩「良いじゃん、彼氏君で」
桜月「乱歩さん!?」
彼氏君「ちょ、名探偵なに言ってるんだよ! そして文章も適応すんな!」
まぁ、中也君のメタ発言は置いておこう。
でも乱歩の案が一番良いかもな。
普通に反応が面白いし。
鏡花「彼氏君……さん?」
ルイス「普通に彼氏君で良いと思うよ」
彼氏君「良くねぇ!」
ここでグダグダやっていても仕方がない。
僕は桜月ちゃんと彼氏君の文句は聞き流すことにした。
ルイス「君がこの世界に来た方法について、聞かせてもらっても良いかい?」
彼氏君「……正直、覚えていない。気がついたら何処かの裏路地にいた」
知っている筈の場所だが、違和感があったという。
ルイス「……同じ、か」
桜月「同じ?」
ルイス「僕が君の世界に行った時も、中也君と同じように違和感があったんだよ」
これでやっと、今回の事件の全貌が掴めた。
どうやら、太宰君も殆ど分かったらしい。
この場にいる全員が気になっているらしく、説明は面倒((
ゴホン、大変だから太宰君に任せることにした。
太宰「シヴァには協力者がいたことは、|安吾《特務課》からの報告で分かっているだろう?」
敦「はい。確か二人いたんですよね? 洗脳の異能者しか資料には書いてませんでしたけど……」
太宰「もう一人が転移の異能者なのだよ。世界を越えることが出来る異能を、君は知っているんじゃないかい?」
桜月「……まさか」
はぁ、とボスはため息をついた。
桜月ちゃんはナイフをボスへ向けている。
喉元寸前で防いでいたのは──。
中也「落ち着け。太宰がこういう風に云う時はなんか意味が含まれてるんだよ」
太宰「わぁ、流石は元相棒の双黒(小)wだね」
中也「はぁ!?」
いつも通りで何より、と僕は笑う。
すると二人はピタッと喧嘩を止めた。
ルイス「どうしたの? 僕、別に怒ってないよ?」
ニコニコ笑う僕に対して、アハハと苦笑いを浮かべる太宰君と中也君。
ルイス「ほら、君の予想を聞かせてよ」
太宰「は、はい。桜月ちゃんの世界の蛞蝓──彼氏君を転移させたのは多分、この世界の彼では?」
桜月「もう一人の……ボス?」
僕は、元英国軍。
だから英国を始めとした欧州の異能事件について、特務課と共有している部分がある。
今回の事件にボスが関わっていることは、中也君が倒れた時に知っていた。
でも、彼はずっと僕の異能空間にいる。
この世界のボスであることは、容易に想像できることだろう。
太宰「探偵社には情報があまり流されていないんですけど、ルイスさんは違いますよね?」
ルイス「まぁ、今回の一件は帽子屋──元、仲間が関わっていたからね。魔人君にもシヴァ関連で情報を貰ってたし」
僕はやっと起き上がって、少し背伸びをする。
ルイス「最後の仕事だよ、テニエル。この一件に終止符をつけないとね?」
テニエル「……そうだな」
その場にいた殆どの奴が、理解した。
もう、帰る時間なのだ。
ルイス「個人的には全然構わないんだけどね。《《今回は》》ちゃんとお別れしたいだろう?」
桜月「……はい」
彼氏君「俺、まだ何も返せてないんだが」
大丈夫、と僕は笑う。
半端ぁぁぁぁ‼︎
はぁい、てことでifでしたぁ
先のこのシーン書いてた。
でも、本編書き進めると繋げられなくなった。
だからここで消費。
それじゃまた!
…コラボ、本当に楽しかったなぁ