なとり様「Overdose」の曲パロ二次創作です。
下手ですが読んでくださると嬉しいです。
☑︎ #1 2023.12.13 公開
☑︎ #2 2025.8.5 公開
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目次
Over #1
1年以上ぶりの新作連載......!?
暗い話ですがどうか温かい目でお読みくださると幸いです。
【注意】暴力表現あり
本当は、いけないことだとわかっていた。
それでもストレスが溜まると、いつの間にか手には大量のカラフルなカプセルや錠剤。風邪薬に、痛み止めの薬、花粉症の薬......もちろんどこも痛くないし、風邪もひいていない。
市販薬を口に放り込んで、水をがぶ飲みし喉へ通す。
このとりとめのない快感とどうしようもない虚無感がもはや癖になって、浸ってしまう。
最近は色とりどりの薬達を見て「綺麗だ」とさえ感じる俺は、いかれているのだろうか。
父親は仕事のストレスで酒に溺れていた。その上ヘビースモーカーで、タバコの臭いが体に染み付いている。不健康街道まっしぐらな父親のストレス発散道具は俺だった。
母親は水商売で帰りは毎日明け方。俺に興味はなく、朝起きれば机においてあるのは決まって「これで何か食え」という意味合いの1500円だけだ。
こんな両親だから、俺は愛情なんてものを与えてはもらえなかった。むしろ俺以外の全てに向けられるものこそが“愛”だと思っていた。
「生まれてきたのは間違いだった」。これを確かめていくような人生。前進も後退もない。
スッカスカの心の埋め合わせをするかのように始めたのが、市販薬の過剰摂取、いわゆるオーバードーズだった。薬は、バイトをしたりしてコツコツ金をためちょっとずつ買い足している。
オーバードーズが危険なことは知っていた。でももう手遅れだ。飲まないとやっていられない。
これを普通の人は依存だと言うが、俺にとっては人生に必須の精神安定剤だ。取り上げられたらそれこそおかしくなってしまう。
憂鬱な気分で時計を見やる。
深夜零時。今日も親父が帰ってくる時間になってしまった。
なんとなく学校には最近行っていない。特に誰かから文句を言われるわけでもないので、家に籠もっている。
家にいる間はもちろん暇だ。唯一の特技のギターを少しだけ練習したり、絵を描いたりして時間を有意義に潰す。
弾いて、描いて、夜が来ることに必死に抗っている。
夜が来てほしくないのは、単に親父に会いたくないから。親父は機嫌が悪いと、帰宅直後から俺への暴力を開始する。殴る、蹴る、踏む、投げる。酷い時は水責め。
それにはもう慣れた、と強がりたいが、慣れるわけもなく俺は毎晩恐怖と戦っている。
これからまた《《いつも通り》》、意識が飛ぶまで殴られる──
衝動的に棚から風邪薬を乱暴に掴み取り、コップの水と一緒に10錠ほど口に流し込んだ。
流石に苦しくなって、台所の流しで全部吐き出す。
こうやって飲んだり吐いたりしている時だけは、一瞬でも何もかも考えず忘れられるから楽だった。
真っ白になった思考が、家の鍵が開く音で急速に働き始める。親父、もう帰ってきたんだ。今すぐ逃げ出したいくらいなのに、足は|竦《すく》んで動かない。
「......|愁介《しゅうすけ》。」
名前を、呼ばれる。
---
気がつけばリビング中央に横たわっていた。いや、倒れていたのか。はっとして立ち上がろうと力を入れるが、頭に鈍痛が走って上手く立てない。
親父はいつも外傷はつけず攻撃する。今回も例によって、顔にも身体にも傷一つついてはいなかった。だから警察に駆け込もうが証拠がないので、相手にはされない。
「あーあ」
痛い。今日は頭をガンガン何か長いもので殴られた。まだ少し意識は朦朧としているが、やっとのことで立ち上がり、再び棚の風邪薬を掴み取る。
5錠。
「しんど」
──堕ちまくった俺を、誰か救ってくれないか?
くれないか。どうせこのまま朽ちていくんだろう。
有線イヤホンをスマホに接続して、耳にはめる。適当に流すのは、最近流行りの、狂った歌詞の曲。
億劫な気分を吹き飛ばすように聴き入った。
ヽ(^o^)丿ヒャッホイ
(/・ω・)/ ウェイウェイ
......おっと、取り乱してしまい失礼しました。日桜宵という者です。お読みいただきありがとうございます!
約1年前に何作品か投稿していましたが、見事に(?)失踪。つまり1年ぶりに復活したということですね〜。おかげでお友達も少ない私ですが、この作品頑張って連載していこうと思います。
ぜひ なとり様の原曲「Overdose」も聴いたことない方聴いてみてくださいね〜!!
読者の皆様(いるのかな......?)に感謝です! それではーっ!
Over #2
僕は、カラフルなものが好きだ。
色鉛筆、虹、マカロン、お花、飴玉に傘。見ると心がなんとなく弾む。
でも、カラフルなのに目にしても興奮しないものが1つだけある。
「はぁ......美味しくないなぁ」
それが、薬だ。
いくつか持病がある僕は、毎日複数の薬を飲まないといけなかった。
幼いときから服用してはいるけど、未だに薬は嫌いだ。
赤、薄黄色、白、茶色、水色。カラフルではあるけれど、テンションはむしろ下げ下げ。
しかも全部苦い!
いくら水で流し込もうとも、この不味さは誤魔化せない。薬は非情だ。
今日も今日とて、僕は薬を飲みに移動していた。
高校生の僕は、当たり前のように友達と昼休みに昼食を取るのだが、その前で薬を飲むことはできない。
理由は単にドン引きされるから。
「え、その量飲むの?」「大丈夫なのかよそれ」「大変だね〜」「薬の色可愛い!」「......」
今までやらかしてしまったときの反応はみんな多種多様だったけど、まぁ大体が共通してドン引きだった。
自分にとっては至って日常のことなのだが、やっぱり傍から見ればちょっと変。いや、かなりやばい。
人生経験でそう学ばされた僕は、人前で薬は飲まないと決めたのだ。
というわけで僕は今日も、そそくさと友達の輪を離れて|人気《ひとけ》の少ない校舎の空き教室へ。
──ってあれ、誰かいる!?
入ろうとしてようやく気付いた僕は、咄嗟に引っ込んでドアの陰に隠れる。
そこにいたのは、暗い雰囲気の黒髪男子。
上靴のラインが青色、つまり僕と同じ1年生だ。といっても見覚えはない。
乱雑に机や椅子が置かれている室内。隅の椅子に、その子は座っていた。机には、何かの包装のゴミが広がっている。
食後かな、と思っていると、その子はおもむろにポケットへ手を入れ、何かを出した。
「......!」
薬だった。
僕と同じように、色とりどりの薬を大量に口に放り込んでいく。
──この子も持病で薬飲んでるんだ!!
そう思うと居ても立ってもいられず、飛び出してしまった。
「ねぇっ!!」
「うぉ、っ」
案の定驚いたらしく、目を見開いて固まってしまった。
「あ、ごめん! びっくりさせたよね」
「な、何だよ......!?」
思いのほか低い声だ。
僕が近づいていくと、彼は避けるように椅子を引いて立ち上がる。
「えーっと、僕、|天白《あましろ》。名前は?」
「──|常盤《ときわ》で、す……」
「常盤くんね!」
僕の無駄に明るい声が荒廃した箱に響く。
数秒経って気付いた。
あれ、これめっちゃ気まずくない?
「俺に何か、用事があるのか……?」
「い、いや? ない、かな」
「??」
いやいや、話しかけた理由があったはず。
常盤くんの右手に乗っている錠剤を見て、僕は本来の目的を思い出した。
「っあ、そうそう! 薬、僕も飲むんだよね」
僕はポケットから、袋に入った薬たちを出して机に並べた。
常盤くんは一瞬ぽかんと僕を見ていたが、やがて俯いた。
「僕、病気でいっぱい飲まなきゃいけなくて」
「……ああ、なるほど」
「一緒かなーって思って、声かけちゃった」
隣座っていい? 聞くと常盤くんは曖昧に返事をした。隣の席に座ると、常盤くんもゆっくり座った。
「人前で飲むとドン引きされるよね〜」
若干の気まずさも気付かないふりで、僕は薬をプチプチと出していく。
いつもの3種類の錠剤4錠、カプセル1錠。
「毎日、飲んでるのか」
「あ、このカプセルは週に3回だよ」
薬は自動販売機で買ったお茶で、2回に分けて流し込む。喉をごろごろと通る感覚が不快だ。
「うーん……まずい」
常盤くんの顔を覗き見る。なんだか深刻な面持ちに見えた。
後になって思えば。
「持病だ」なんて、彼は一言も言っていなかった。
#1からなんと1年半以上経ってしまいました……!!
めっちゃお久しぶりな日桜です。
今回あまり歌詞の要素なかったですね。
読んでくださった方に感謝です!!