青春がしたいJC、DC3人が主人公の短編集です。全3作作る予定。
続きを読む
閲覧設定
名前変換設定
この小説には名前変換が設定されています。以下の単語を変換することができます。空白の場合は変換されません。入力した単語はブラウザに保存され次回から選択できるようになります
1 /
目次
脱ぼっち
私は小宮 美青(こみや みお)。中学2年生。友達は…一人もいない。
一人ぼっち…私の事だ。
確かに、友達にいつも囲まれてる人には憧れがある。
だけど、私は永遠になれないと思う。
私には、思いやりとか優しさとかがないから。
小学校の成績表にも
【美青さんは真面目ですが、思いやりが足りないようです。これからの学校生活で培っていきましょう。】
…と書いてあった。
それも、一理あるなと思って努力してみたこともあるけど…私には出来なかったんだよね…。
でも、中学では環境が違うんだ。
あと少ししかないけど、やってみるんだ。
---
「小宮さん!ドリブルの練習してきたの?上手くなってきてるよ!」
「う…うん!土日に、公園で」
私は女子バスケ部に入っている。
運動は苦手だけど…背を伸ばしたくて。
見学のとき、先輩も優しかったから…。
「小宮ぁー!パス練あたしとやらん?」
飛鳥(あすか)先輩だ。
ハキハキしてて、カッコいいこのチームのキャプテン。
私の憧れ。
「はーい!」
実はもうすぐ私が入ってから初めての大会。
みんなの中に緊張感がある。
すごいなぁ…。
私はこれに人生かけてる訳ではないから夢中にはなれない。
他の部員の子は選手になりたいと思っている子ばかり。
その子たちからしたら、私の入った理由は…きっと嫌なものだろうな。
私は先輩とパス練しながら考える。
「よーし…今日は解散!」
「あー!」「終わったー」「一緒に帰ろ~」「いいよ!」
先輩の鶴の一声にみんなザワつく。
「もうすぐ大会だからなー。生活リズムと食事、気をつけてな!明日、メンバー発表するぞ!」
そっか…そろそろメンバー決めないとね。
メンバーによく選ばれるのは頑張ってる子、夢がプロ選手の子、才能がある子…私は選ばれないんだろうなぁ。
私には一喜一憂する理由はないけど。
「そーだ!小宮一緒に帰らない?ジュース奢るわ、先輩として」
「えっ…は、はい」
先輩に誘われたぁ…。
なんか嬉し。
私は荷物をまとめて小走りで先輩のもとへ走った。
「そーだ!やっぱハンバーガー食べに行かん…ってまぁ、晩飯あるよな。親に怒られる?」
「い、いえ!連絡してもいいですか?」
はわぁあ…先輩と一緒にご飯♪
こんな贅沢ないよっ!
「あ…もしもし?お母さん、今日先輩とご飯食べて帰って良い?」
『あ、そうなの?良かったー。今から作るところだったから…出来るだけ早く帰りなさいよ』
「セーフ!ありがと!」
「許可取りオッケーそ?」
「はい!お願いします!」
「お願いします…って奢るつもりじゃないよ!?…まぁ別に良いけどさ」
「あ、私が払いますよ!」
「後輩にそんなことさせられるかっ!」
飛鳥先輩…やっぱりカッコいい♪
近くで見ても遠くで見ても…。
「あ、そうそう。前から訊きたかったんだけど、小宮はどうしてバスケ部?」
「えっ…。」
ど、どうしよう。
答えられないよ、「背、伸ばしたいだけです」なんて。
「ど、どうして訊くんですか?」
あー…。
なんか嫌な訊き方になっちゃったな。
「まぁ…次の大会のメンバー選びの参考に?相性とか熱意とかあるっしょ」
…熱意。
「えっとー…背、伸ばしたくって」
私は嫌われるの覚悟で言った。
「おっ!同じじゃんあたしと」
嘘!?
私は改めて足から頭まで飛鳥先輩を見た。
手も足もスラっとしてて背も高くて…これがバスケで?
「まぁね!ま、3年続けてみなって」
良かった…。
私だけじゃないんだ。
「話しにくかったよねー。あたしよく怖いって言われるしさぁ…よぉし、今日は奢るからアップルパイでもフライドポテトでもなんでも言いなっ!」
「先輩ありがとうございまーすっ!」
「え、飛鳥いるじゃん。美青ちゃんも」
「え、ハンバーガー食べ行くん?」
「奢ってー」
私たちがゆっくり歩いていると後ろから同じくバスケ部の3年生が…。
「あんた達は奢らないからねー」
「え~」「そこをなんとか!」「お願いします飛鳥さん…いや、飛鳥様!」
「自腹で買いなっ」
「「「はーい」」」
---
「小宮はどれにする?何でも言ってよ」
私は画面に映るメニューを一通り見た。
「私は…チーズバーガーとフライドポテトとアップルパイと苺シェイクで!」
「オッケー」
ちょっと…頼みすぎたかな?
私飛鳥先輩は他の先輩たちと別のテーブルで食べることにした。
飛鳥先輩は、チーズバーガー3個とテリヤキバーガー2個とコーラ2本という2日分の食料ぐらい頼んでいた。
「ちゃんと食えよー」
「いただきます」
「あのさ…小宮って同じクラスに友達いんの?」
す、鋭い。
「えっと…バスケ部いなくて、ぼっちで…」
「へぇ、やっぱあたしと一緒だなぁ」
え、また!?
「あたしもさ…さっき言ったみたいに怖い怖いって言われてさ。んで、一匹狼的になっちゃって」
この話をしたとき、珍しく先輩は少し寂しそうな顔をした。
「でもさっ、あたしみたいに変われるよ。小宮はまだ一年あるし、あたしくらい意地っ張りでもないしさ」
「……」
私は先輩の言葉にじーんと来てしまった。
「お?私、良いこと言ったね。涙目になってるー」
「…ありがとうございます。なんかほっとしました」
私は涙が一粒落ちたハンバーガーを頬張った。
---
最近休み時間に、私の周りには2人から3人のクラスメイトが来るようになった。
挨拶をして、大変そうだったら話を聞いてあげて、一緒にお買い物に行っただけなのに。
これを、友達って言うのかな。
私、もう一人ぼっちじゃないんだ。
3日くらいかけて書きました。消えるの覚悟でPCの電源切ったら…復元できると知って感動!ファンレター待ってます😢
青春色のキーボード
僕は白花 葵音(しらはな あおと)。中学1年生。夢は何かのバンドのメンバーになること。
「えっ…軽音部あるんですか!?」
「そうよ、入るの?」
僕は中学に入学して部活に迷っていた。
一覧表を見ると、憧れの軽音楽部があった。
「今年度新しく出来たんだけど人数がねー。続くかは分からな…」
「僕、入ります!」
「先生はおすすめしないけど…分かったわ。顧問の先生に伝えておくから」
「ありがとうございます!!!!!」
やった…これで夢に近づくんだ!
---
「葵音、何部入るの?中学」
母さんが夕食の食器を洗いながら訊く。
「ん…軽音部」
僕は戦闘系ゲームをしながら答える。
「えっ…ちょっと葵音言ったじゃない。将来の夢がバンドっていうのは…現実的じゃ…」
「今、部活の話してたじゃん、将来の夢関係ないし」
「なんで反抗するかな。お母さんはあなたのこと考えて…」
「もういいって」
僕はゲーム機を持ったまま部屋に行った。
「ホント、思春期なんだから…」
最近の母さんの口癖はこれだ。
僕が怒ってるのはそういうことじゃない。
思春期じゃなくても、絶対言い返してた。
「夢なんて叶うか分からないんだよ。」大人はそう言うけど、じゃあ叶わないかも分からないじゃん。
だから…決めつけないでほしい。
---
「失礼します。新しく入る白花です。」
僕は自分でドアを開けずに待機した。
ここは軽音部の部室…音楽室だ。
「ほいほーい。葵音ぉー入ってきなって」
えっ、タメ語?
ガラッ…
「俺だよ、同クラの湯浅 大志(ゆあさ たいし)。」
あぁ~。
あのお調子者か。
クラスでのあだ名は、宿題忘れマン…ノリノリピーポー…最新型掃除機とか。
あ、ちなみに最新型掃除機っていうのは大志の食べる弁当の量がすごいっていうとこから来たあだ名。
てか、こいつも音楽好きだったのか…意外。
ドアを開けて中に入ると、大志とは別に2人男子がいた。
「おっ、後輩」
「大志のクラスメートか」
他の二人は2年と3年の先輩みたいだ。
「俺、2年の那津(なつ)!」
元気なタイプの人だな…。
「3年の怜雄(れお)」
怜雄先輩はなんか…那津先輩を太陽としたら月って感じ。
「じゃ、さっそく入部試験だなー」
「にゅ、入部試験?」
なんだそれ?
「何の楽器にする?」
僕、二つしか演奏できないんだけど。
「じゃあ…キーボード」
「「「おーっ」」」
「なんだよ『おーっ』って…」
「いや、今のところいなかったからさキーボード。結構大事だから…」
「じゃ、これ弾いてよ」
先輩…那津先輩に渡されたのはベートーベンの『月光』。
僕が小さい頃に習っていたピアノ教室の発表会で弾いた曲だ。
これはいける!
---
「おー」
「結構いいじゃん」
「ミス0だし暗譜してる」
先輩&大志からの反応は良く、余裕の合格だった。
「大志は何の楽器なん?」
「え、俺?ギター」
「俺はドラム!4歳からやってる!」
え、すご那津先輩。
ベテランじゃないですか。
「じゃ…怜雄先輩が…」
「ボーカル」
やっぱり…そうなるしかないよな。
「曲考えるのも怜雄なんだよー」
「へぇ…」
「ぼさっとすんな。はい楽譜」
サバサバしてる怜雄先輩に楽譜を渡された。
…え、おかしくない?
今、僕がキーボードって決まったんですよね?
なのにこれキーボードの楽譜…。
「怜雄先輩、僕がキーボードなの予想してたんですか?」
「いや、他の楽器と言おうとやらせる気だったし」
サラって言ったけどさ…お、鬼ぃ…。
今更練習は遅すぎますって。
でも…なかなか楽譜はちゃんとしてる。
楽器を知り尽くしたような…うわっ手汗ヤバ僕。
「え…激ムズなんですけど」
「怜雄先ぱぁい…ここもっと簡単に…」
「ダメだ。練習しろ」
お、鬼ぃ…。
「じゃ、お先」
え…怜雄先輩帰ったんですけど。
「大志…怜雄先輩は?」
「あー。なんかこの後ボーカル専門の塾と、ピアノ教室とギター教室あるらしくってさー。」
鬼である上にストイック…。
帰ったと思ったらドアの隙間から怜雄先輩が顔を出した。
嫌な予感。
「あ、明日には完璧に暗譜して合わせるからー」
お、鬼ぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!
---
僕は家に帰ってすぐキーボードの練習をした。
嫌なことにすぐ母さんが入ってきた。
「葵音…部活?」
「………」
どうせまた諦めろ諦めろ言うんだろ。
「ちょっと聞いてるの!?」
母さんはブチギレてキーボードのコードを抜いてしまった。
「何するんだよ、練習してるんだけど」
ここは大人っぽく怒らないようにする。
「はぁ…。何も分かってないのね。今夜お父さんに言ってやるんだから」
父さん今日出張だし。
僕は母さんが部屋を出たのを確認してコードを差しなおした。
---
「ふぁぁ…こんにちは」
今日は土曜日。
長い部活の始まりだ。
僕が入ると怜雄先輩が一人、練習していた。
音楽室の時計を見ると、まだ集合時間じゃなかった。
来るの早すぎたかな…。
怜雄先輩は発声練習をしている。
昨日から思ってたけど…なかなか声量がある。
「あ、いたの?」
あ、気づかれてなかった僕。
恥ずかしくない?
一人で歌ってたと思ったら人いたの。
「覚えてきたか?」
あ、恥ずかしくないんですね、はい。
コンコン…ガラッ…
知らない女子が部室に顔を出した。
「あの…失礼します。軽音楽部って今日活動日ですか?」
「待ってろ…誰だ?」
ちょ、先輩来た人に誰だは失礼ですよ。
「あぁあぁ…すみません!」
「ほら~、怖くて帰っちゃったじゃないですか…」
「ごめん」
もしかして先輩…女子苦手?
しーん…とした音楽室に二人がやっと来た。
「おっ、早いね葵音ぉ」
「俺…徹夜で暗譜した」
僕はさっきの女子が気になりながらも練習を始めた。
---
「解散!」
「疲れたー」
午前9時から始まった練習は、昼休憩を挟んで午後6時まで続いた。
「葵音、さっきの女子追いかける」
「いや遅いですよ」
そう言いながら僕がドアを開けると…いた。
ドアの横にもたれるように座って眠っている女子…さっきの。
「おーい、ここは家じゃないぞ」
先輩が激しく揺する。
もっと優しくしましょう(泣)?
「ん…はっ!すみません帰りますっ…」
あー、また逃げられた。
先輩なんで追いかけないんですか…。
僕は代わりに走って追いかけた。
「捕まえたっ!入部?」
「…はい。でも…」
「大丈夫!楽器はまだ空きが…」
「そうじゃないんです!…私、音楽室に入ったとき絶句しました。女子が一人もいないなんて…不安で悲しくて」
「そんなの大丈夫だって!怜雄先輩は鬼だけどみんな優しいよ!」
「…本当です…か?でも、私親に現実的じゃないから諦めろって…」
「えっ…」
同じだ。
バンドやめろって?
そんなこと…聞いてられっか!
「大丈夫!一緒に叶えよう!分からないけど…でもきっと上手くいく!」
「…やってみます!入部させてください!」
---
「お父さん…葵音が…」
父さんが出張から帰ってきた。
「葵音…頑張れ」
「えっ…!」
え、なんでどゆことええええええ!?
「父さんは…お母さんと違って応援するよ。その方が頭良いだろ?」
「ちょっとあなた何言って…」
「もし、お母さんが間違ってたらお父さんがカバーしないといけない…二重回答ってやつだ…あ、入試は二重回答ダメだからな」
屁理屈…?
「はぁ…」
母さんは呆れてる。
「飽きずにやるのよ。やり通すのよ、葵音。」
それだけ言って母さんはどこかへ行った。
…ってことは…許可!?
その日はとても嬉しかった。
--- 10年後 ---
僕たちは「Blue spring」というバンドとしてデビューした。
一人も欠けることなく、諦めることなく。
ただひたすらにがむしゃらに楽器を鳴らし続けた。
シリーズ二作目!次がラストです!ファンレターお願いします😢
秘密のゴミ山~美容オタクと家出少年~ 前編
私は如月 麗(きさらぎ うらら)。
自称、イマドキおしゃれ女子 兼 美容オタク 兼 陽キャ!
美容のためにいつも日陰捜ししてるー。
さぁ、メイク決まったから連写でインスタにアーップ!
「はーぁ、なんか暑くなーい?てか熱いわ」
「それな!肌に悪いわ」
私たち…イマドキ女子グループは美容オタクの集まり。
下校中の私の持ち物は…ハンディファンと汗拭きシートとアームカバー。
日焼け防止はマストなんよねぇ。
「んじゃ!明日渋谷集合ね」
「おけ!Y2Kコーデしよ」
「いいよー」
私は遊びの約束をして親友…欅 梨歩(けやき りほ)と別れた。
…それにしても暑いなぁ。
日焼けしちゃう!
私は近くのゴミ山の陰に隠れた。
「はぁー…ここ、臭いけどいい日陰だな」
私が壊れたショベルカーの陰に隠れる。
「…ちょっと?ここ俺の家なんだけど」
どこからか声がした。
私がきょろきょろしながら立ち上がると…。
ショベルカーの運転席に深くキャップをかぶった男子がいた。
身長的に私と同じくらいの年かな。
でも、髪の毛先を暗い青色に染めている。
そのせいか私より大人に見える。
「あのさ、不法侵入だよ。君」
キャップを直したその男子はそう言った。
けど…ここあなたの家じゃないですよね。
そう思って私も言い返した。
「ここ、家じゃなくない?」
「は?お前何歳だよ」
「ん…13歳中2」
「ちっ…同じかよ」
やっぱり。
「と、年下だったらどうだったのよ!」
「んー。食料毎日持ってきてもらってたかなぁ」
は?
命令かよ。
「あ、持ってきてくれる?」
あ、笑った。
何か…可愛い。
「じゃあさ!こうしよ、メイク好きでしょ?」
「うん…」
メイクは好き。
努力次第で好きな自分になれるし、ギャルだし私。
「メイク道具買うからさ…食料恵んでよ」
「はぁあ?」
「一週間に一回でいいから…」
なんか…お願いの顔が可愛い。
わんころ(犬)みたい…。
「わ、分かった」
「やったぁ~君優しいね!今まで10人くらい話しかけて初めてのYes」
「え…そりゃ怪しいって」
「君ギャルだね!」
「そうだけど何か?」
こんな軽い気持ちで始めてしまった…。
今回だけ前編後編です。
気になったファッションや美容グッズあったら調べてみてくださいね!
次の主人公はあなただ!
秘密のゴミ山~美容オタクと家出少年~ 後編
如月 麗(きさらぎ うらら)
→イマドキ女子グループの一員。ノリが軽い。
私は今、自分で作ったお弁当とコンビニで買った数個セットになっているプリンを持ってゴミ山に向かっている。
あ、捨てるんじゃないよ?
あいつに持ってくんだよ!
「お、本当に持ってきてくれたん?」
「当たり前でしょ…ギャルは約束守るよ!」
私は笑顔でそいつにビニール袋を渡す。
「ははっ…これ作ってきてくれたの?」
そういってそいつが取り出したのはお弁当箱。
冷食(冷凍食品)に頼らずちゃんと作ったんだよ。
「んんっ!おいしい!!この唐揚げサクサクだけど肉汁がじゅぅわっ!」
すごいおいしそうに食べるな…作ったかいがあるってやつよねー。
…そういえば、こいつの名前聞いてないんだけど、やば。
「ねぇ…あんた名前何なん?なんか知らない人にお弁当作ってる状態なんだけど」
「聞かないのも悪いけど…僕の名前は如兎(ぎんと)」
「苗字は?」
「…捨てたよ、あんなの」
さっきまでお弁当を頬張ってカワイイ笑顔だったのに…急に鋭い目つきになった。
「ちょっと何怒ってんの?親は…」
「親?今はいないよ。」
「どういうこと…」
「話さないとダメかな、君に」
「私食料恵んでるんだけど?知る権利はあるはず」
そう言うと会話は途切れた。
やっぱ怒ったか…。
と、思ったら溜息をついて話し始めた。
---
俺の本当の名前は月島 如兎(つきしま ぎんと)。
月と兎が揃ってるの珍しいよね。
家は神社なんだ。
全然自慢じゃないけど。
俺…家出したんだ。
親との関係で。
俺の親は物心ついたときから一人だった。
父子家庭なんだよね。
俺は神社の仕事でたまった父親のストレスを軽減する存在になってた。
暴力や、暴言いろいろあった。
でも家出の原因はそれじゃない。
ある日、神社の掃除をしてたとき。
神社の前に背が高くて綺麗な女の人が立ってたんだ。
俺は気になって「何かご用ですか?」って訊いてみた。
そしたらさ…「悠宇(ゆう)さんはいる?」って言った。
ちなみに悠宇っていうのは父親の名前。
どうして知ってるんだろう…そう思った。
その後俺は焦って「呼んできましょうか?」って言った。
え?
なんで焦ってたかって?
なんか、女の人がいなくなっちゃう気がして。
もちろん初めて会った人なんだけど。
父親がその辺を歩いてないか見回して目を離した隙に女の人はいなくなってて。
きっと…俺の母親だったんだ、あの人。
俺の鼻ってさ、特徴的じゃん?
横から見ると丸くて高くてさ。
似てたんだよね。
女の人はマスクをしてたけどマスクが合ってなくて。
それで、俺は家出したんだ――。
---
「え?」
話が急に飛んだような…。
「その女の人がきっかけってこと?」
「うん、前から自分の母親を見てみたいと思ってたから。」
そりゃそうだよね…。
苦労してんだ。
「で、家出したのはいいんだけどさー。行く場所なくて(笑)」
考えてからしなよっ!!
「で、ゴミ山に?」
「そ」
「…あ!私もう習い事ぉー!じゃっ!」
「じゃーね」
私たちはなんの引っかかりもなく別れた。
---
次の週も…また次の週も私はお弁当やお菓子を持って如兎のもとへ行った。
もちろんコスメもくれた(100均で買ったらしい…)。
--- 季節は流れあっという間に冬になった ---
「如兎~?寒くない、それ」
如兎の服は私が家に持って帰って洗って…というのを繰り返している。
如兎と初めて会ったのは夏だった。
だからその時は半袖でどうもなかったんだけど…。
「寒いけどショベルカーの中はちょうどいいよ?」
「ショベルカーだっていつ捨てられるか分かんないよ。いい加減新しい家探そうよ。」
…無理か。
家出して戻っても暴力は…。
そうだ…私が作ればいいんだ、居場所を。
「あのさ、私…高校生になったら一人暮らししよっかなって思うんだけど。そのとき、一緒に住まない?」
そう言うと如兎はとても驚いた顔で私を見た。
「…いいの?」
可愛い。
「もちろん…私頑張るからさ、難関校受かってマンションで都会暮らししたい!」
「じゃあ俺勉強教える」
「え~出来んの?」
「俺3年に一人の天才だから」
「いや、頻度低」
私たちはそう約束した。
それから私はたくさん勉強した。
勉強は苦手だし嫌いだけど如兎の可愛い笑顔を頭に浮かべるとそれも苦じゃなくなった。
--- 2年後 ---
「如兎ーっ!受かっちゃった!私立ミンティア学園高等部!」
「え…マジ!?」
「これで…約束守れたってことだ!」
「ギャルも約束守るんだな」
「守るよー!!」
「で、マンションは?」
「おけ!」
---
それは、突然だった。
「麗~!誰か来たー」
そもそも片づける荷物がない如兎はのんびりしている。
「はいはーい」
私が段ボールに入った荷物を出していた時。
新しい家…マンションのインターホンが鳴った。
前の家とは違う音にビビりつつ、インターホンの画面を見た。
カメラに映っているのは一階の入り口。
「えっ…」
カメラには綺麗な女性が映り込んでいた。
大きめのサングラスをかけていて鮮やかすぎるほどの赤いリップ。
「月島玲菜(つきしまれいな)と申します。如兎、そこにいるんでしょ。開けてちょうだい。話があるの」
女性は、サングラスを取ってそう言った。
月島…!?
「この人…前話した人だ…」
いつの間にか隣にいた如兎がとても驚いている。
やっぱり…如兎のお母さん!?
私は混乱して鍵を開けてしまった。
一階の入り口を通る女性が見える。
開けちゃった…。
「如兎、出た方がいいよ」
「分かってる。ちゃんと話してくる」
私は急いで玄関の鍵を開けた。
ドアスコープを除くともう女性が立っていた。
私はドアを迷うことなく開けた。
「い、いらっしゃいませ…どうぞ」
私はビビりながらスリッパを出す。
「ありがとう。あなたが麗さんね。如兎はいるかしら」
なんで私の名前…。
如兎が部屋の奥からこわばった顔で出てきた。
「母さん?」
私は如兎のお母さん――玲菜さんをリビングへ案内して、お茶を入れて、ドアを閉めて話をこっそり聞くことにした。
「久しぶりね。如兎」
「…ん」
「大きくなったわね。今年で16歳か」
「…なんで…なんだよ」
「え?」
「なんで来たんだよ!ここに」
静かだった如兎が急に叫んだ。
怒ってる?私は息をひそめて話を聞く。
「知らないの?あなたの持ち物にカメラとGPSがついているのよ」
「はぁ?」
GPS…だから如兎の場所が分かるんだね。
「違う!なんのために!?」
「…連れ戻すためよ」
連れ戻す?
「あなたが3歳のときに私は悠宇さん(如兎の父)と喧嘩して、家を追い出されたの」
え…喧嘩。
「喧嘩の原因は…ここで話すことでもない、くだらない些細なことだったわ。追い出された私は実家で暮らし始めた」
「……」
相変わらず如兎はぶすっとした顔で話を聞いている。
「そして、企業を立ち上げて社長になった。で、今のような金持ちになった」
へぇ…確かに高そうなバッグやブランドの服を着てる。
「だから、私一人であなたを養うことが出来るようになった今、連れ戻すtsめに――」
「…出てけ。」
「はぁ?こんなところより豪華で良い暮らしが…」
「約束したんだよ麗と、居場所を作ろうって」
「…え?」
「俺みたいに家出したやつの居場所を作って助けようって」
それ…昨日話し合ったっけ。
将来大人になったらそんな仕事をここでしようって。
「居場所」を作る。
私…泣きそうだよ。
「何それ。まぁ、やってみればいいじゃない。失敗するわよ」
「失敗なんかしないよ。ほら、早く出てけ」
「チッ」
玲菜さんは舌打ちしてマンションを出て行った。
「…ふぅ」
私が何も聞いていないふりをして部屋に入ると、如兎はとても晴れやかで、いつも以上に可愛い顔をしていた。
家が一戸建ての人は分かりにくいと思いますが…(私はどうでしょう?)。
ちょーっと話がトントン拍子すぎるかなー?ファンレター&感想待ってます!これにてシリーズ完結(`・ω・´)ゞ
っていうかちょっと重い話だったかも…。