廃工場で生まれたドールたちが
自由を求め、外の世界に出る権利を奪い合うお話です。
(*企画に参加してくださった方々へ
今作は作品全体の50%、もしくはそれ以上を自主企画に頼って出来上がった作品です。
ですので、キャラの解釈違いなんかがあったりするかもしれません。
その場合は、ファンレターかなんかで教えてください!)
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目次
「廃工場のビスクドール」主人公説明
名前:リーヴァ
性別:女
容姿:銀色の長い巻き毛を下ろしている。
瞳はピンク。
レースのあしらわれた白いロングドレスを着ていて、
頭にはピンクのレースカチューシャをつけている。
イメージカラー:ホワイト
性格:臆病、引きこもり、調子に乗りやすい
思想:なぜ他のドールたちは外の世界に行きたがるのか不思議に思っている。
好きな〇〇:工場の埃っぽいところ、春
嫌いな〇〇:夜、猫
能力名:ヴィトロルミエール
能力説明:光の束を照射し、燃やす。
目くらましにもなる。
一人称:あたし
二人称:あなた
三人称:あの人
口癖:「おお…恐ろしい…」
サンプルボイス:
「あたしはリーヴァ。」
「ごめんなさい、言ってることがわからない」
「外に出るだなんて…怖すぎる…」
「またあの猫が来た。服を引っ張るからヤなのよね」
「え?可愛い?そうかな〜?(テレテレ)」
「ヴィスは月が好きなの?え、あたしの方が好き?参っちゃうな〜(テレテレ)」
「メトリ!助けて!猫があたしを引っ張るの!」
「シャルルさん…踊るの上手…!」
「うわぁ〜!ミーフィ賢い!」
「アレンすごい!物知り!…どうしたの?照れてる?」
「ルオナ優しい…」
「ルークとメアリー…並ぶととても綺麗…」
「レイアさん、今日もボロボロ…大丈夫かなぁ」
「ルビーが怒ってる」
「ブロード、とても不思議な雰囲気」
「シルヴィーさんの言ってること、鋭い!」
「トラウムさんはこの工場のどんな秘密でも知ってるのね」
「イヴのダンス、キレイ」
物語での立ち位置:主人公
工場のどこで暮らしているか:埃っぽい階段の裏
「廃工場のビスクドール」序章
ある街の外れに、『アミアンジュファクトリー』という工場がありました。
そこは、美しいビスクドールたちがまるで踊っているかのように作られることから
『舞台のような工場』と呼ばれ、見物に来る人々が大勢いました。
しかし、だんだんとビスクドールの人気も衰え、
客足も遠ざかっていき、
工場も廃れ、今では廃工場となってしまいました。
しかしある時、工場にとある人物がやってきました。
その者の名前は仮に X(エックス)としておきましょう。
X は工場を動かし、再び人形たちの製造を始めました。
するとなんということでしょう!
人形たちが意志を持って本当に踊り出したのです。
X は言いました。
「君たちは命を持っている。
もう、ただの人形ではないのだよ」
人形たちは驚き、喜び、早速街に出向き、人々の手に渡ろうとしました。
しかし X はこう告げたのです。
「すまない。
この工場を出られるのは、選ばれしドールだけなんだ」
人形たちの間には動揺、不安が広がり始めました。
そして、ある人形がいったのです。
「この中で最も優秀なドールだけが、外に出られる」と。
その時から、ドールたちの間に大きな亀裂が走りました。
これが、あの廃工場での出来事の始まりなのです。
なんだか説明的で上手いように雰囲気が出ない〜!
もどかしいです…が、
自主企画のキャラ応募人が集まってきたら、順次かいていきます!
よろしければ、参加してもらえると嬉しいです!
(*もしかしたら順番が前後するかもしれません)
第1話 廃工場アミアンジュ
ある寒くて寂しい冬の昼。
街の外れの人形工場『アミアンジュファクトリー』に、
長い銀髪を持つ人形がいました。
その人形の名は、リーヴァ。
廃れた工場の埃っぽい階段の下で、リーヴァは白いドレスについたホコリを払っていた。
リーヴァ:「埃っぽい所は好きだけど、これじゃいつか灰色のドレスになっちゃいそう」
そういって、階段の裏から少し顔を出すと
穴の空いた工場の壁から明るい外の景色が見えた。
雪がうっすらと積もっている。
リーヴァが生まれてから、早一年が過ぎようとしている。
もうこの暮らしにもだいぶ馴染んできた。
ふと近くを見ると、壊れた人形の腕が転がっていた。
リーヴァ:「ヒェ…」
やはり夜は怖い。
夜には人形たちが戦いを始める。
あの声、匂い、音、身も心も震え上がってしまうあの光景。
思い出すたびにリーヴァは心が苦しくなる。
リーヴァ:「みんなひとつ屋根の下で暮らす家族なのに…」
悲しさに押しつぶされそうな気持ちになった。
そんな気持ちを紛らわすため、工場の庭に出てみる。
リーヴァ:「雪…綺麗…」
白い氷のわたがリーヴァの手のひらに落ちてくる。
リーヴァは庭を歩きながら、空を見つめる。
リーヴァ:「不思議…」
すると
ドン!
リーヴァ:「わぁっ!」
???:「わっ!」
メガネの白無地マフラーを巻いた人形と曲がり角でぶつかってしまった。
リーヴァ:「ごめんなさい…前を見ていなかったから…」
リーヴァが顔を上げると、彼が固まっていた。その近くに本が落ちている。
リーヴァ:「あの…ぶつかってごめんなさい、これ…」
もう一度謝って本を拾い渡すと、
ヴィス:「僕はヴィス メイ人形…《《ヴィス》》とでも読んでくれ…君は…君の名前は…?」
リーヴァ:「あたしはリーヴァ。よろしくね」
ヴィス:「リーヴァというのか…素敵な名前だね」
心なしかヴィスの頬が赤くなっているように見えた。
「にゃー」
その時、急に灰色の猫が現れた。
(*設定の下の方にネタバレあるので、見ないようにお願いします!)
ヴィスの設定(キャラ原案:ミルクティさん)
https://tanpen.net/novel/62af77ec-abb8-4b82-b1c6-73d9ee1592f9/
ありがとうございました!
第2話 リーヴァと猫
「にゃー」
灰色の猫は、工場の窓枠からリーヴァの元へ目にも止まらぬ速さで降りてきた。
そして、リーヴァのドレスをちぎれそうな勢いで引っ張る。
リーヴァ:「や、やめてー!!」
ヴィス:「おい!僕のリーヴァから離れろ!」
引っ張り合いになる。
リーヴァ:「二人ともやめて!壊れる壊れるっ!」
そんな時、水色の長いワンピースを着た人形が走ってきた。
???:「猫はまかして!サイコキネシス!」
そう言って、手を広げる。
すると、猫が浮かんだ。驚いた猫はリーヴァのドレスを離した。
「おお〜」
リーヴァとヴィスは感嘆の声を漏らした。
猫が逃げていくと、水色ワンピースの人形はふぅとため息をついて言った。
メトリ:「あの猫いっつもリーヴァに絡んでくるから困る。何か取り憑いてるのかなぁ?」
そう言ってニカッと笑う。メトリはリーヴァの友達でもあり、相棒だ。
リーヴァ:「ありがとう!メトリ!」
リーヴァはメトリに抱きつく。
メトリ:「あはは。」
その後ろでヴィスは冷めた視線をメトリに送っているのであった。
(*設定の下の方にネタバレあるので、見ないようにお願いします!)
メトリの設定(キャラ原案:夜珊瑚さん)
https://tanpen.net/novel/2d96a690-de20-4bd2-ba58-8d207bbc5de9/
ありがとうございました!
第3話 狼煙
猫を追い払った後、メトリは疑問に思って尋ねた。
メトリ:「ところで、あなたは?」
そう言ってヴィスの方を見る。
ヴィス:「僕はヴィス…そういう君は?」
メトリ:「私はメトリ。リーヴァの相棒なのさ!」
ヴィス:「そうか…相棒か…」
心なしかヴィスがほっとしているように見える。
ヴィス:「そうだ、リーヴァのこと聞かせてくれるかい?」
リーヴァ:「あたしのこと?そーだな…あっ、春が好き!花がいろんなとこに咲き乱れて綺麗だから。雪も綺麗だけどね」
ヴィス:「そうか…僕も花は綺麗だと思う。‥まぁ、そんなものどうでもよくなるほど、リーヴァの方がキレイなんだが」」
メトリ:「んんん〜?もしかして、ヴィスって…」
ヴィス:「…何?」
リーヴァ:「なになに?」
庭を回りながらおしゃべりして3人が打ち解けてきた頃、
???:「もうすぐ夜が来るよ」
木の上から声が聞こえてきた。
3人が見上げると
アレン:「見慣れない顔が一人いるね。俺はアレン。以後お見知りおきを。」
アレンは木からふわっと降りて、スマートに着地した。
アレン:「リヴァは夜が苦手だろう?みんなも早く戻ったほうがいい。また始まるよ、あれが。」
空を見上げると、夕闇がすぐそこまで迫っていた。
(*設定の下の方にネタバレあるので、見ないようにお願いします!)
アレンの設定(原案:綺星伊織さん)
https://tanpen.net/novel/b8ae8eb5-a476-492b-a4e3-2359c66215c6/
ありがとうございました!
第4話 行こうとするもの、行かせたくないもの
アレン:「みんなも早く戻ったほうがいい。また始まるよ、あれが。」
遠くの方でカラスの鳴く声が聞こえた。
ヴィス:「そうだね。帰ろう。」
メトリ:「私もいつもの製造ラインに戻るね。バイバイ、リーヴァ。」
アレン:「みんなの幸運を祈るよ」
リーヴァ:「また明日、必ず会おうね。」
そう言って4人は別々の場所に帰って行った。
埃っぽい階段の裏。
リーヴァは今宵も誰にも見つからぬよう、じっと息を潜めていた。
すると、
轟音が響いてきた。
コンクリートに物を打ち付ける音。
人形たちの叫び声。
燃える音や凍る音、さまざまな音で工場内が満たされる。
リーヴァ:(恐ろしい…来ないで来ないで…)
枕で耳を塞ぎ、うずくまった。
いつの間にか、眠ってしまった。
目を覚ますと、まだあたりは薄暗かった。
様子を見ようと階段裏から覗いたところ、
誰かの言い争う声が聞こえた。
???:「あなた、正気なの?外なんて、本当に地獄のような場所よ!」
???:「それでも、俺は外に行きたい。ここにいても何にもならないじゃないか!」
どうやら、外に行きたいものと行かせたくないものが衝突しているらしい。
すると、外に行きたいものが無理やり出て行こうとした。
瞬間、
人形は焼き殺された。
???:「あなたは、選ばれしドールじゃ…なかったのよ…」
行かせたくなかったものは、悲しそうな表情で破れた服のかけらを抱きしめた。
そして、こちらに気がついた。
???:「あなた…見てたのね」
悲しみを隠して、その人形は聞いてきた。
リーヴァはこくんと頷いた。
レイア:「私はレイア。よろしくね…怖がらないでいいわ。わたしは外にいきたくない派閥だから」
リーヴァ:「あの人はどうなったんですか…?」
リーヴァがきくとレイアは
レイア:「消えてしまった。ちりとなって…また救えなかった。」
レイアはさっきの服のかけらを握りしめる。
リーヴァ:「…」
レイア:「外の世界は彼らの想像とはまるで違う代物よ。人形を愛してくれる人間なんて実在しない。」
レイアはため息をつく。
レイア:「あなたも外に憧れなんて、|抱《いだ》かないでね…」
そう言って、レイアはどこかへ行ってしまった。
”外への憧れ”そんなものは引きこもりのリーヴァには縁のないものだと
この時は思っていた。
(*設定の下の方にネタバレあるので、見ないようにお願いします!)
レイアの設定(キャラ原案:甘味さん)
https://tanpen.net/novel/b8c427eb-f372-4ff6-9bdc-2e5518ad5275/
ありがとうございました!
「廃工場のビスクドール」キャラ紹介1
名前:マリィ
性別:女
容姿:茶髪ストレートロング、下ろしている、
前髪ぱっつん、
紫の瞳、
落ち着いたピンクのドレス。
頭には落ち着いたピンクのヘッドドレス。
イメージカラー:ピンク
性格:サイコパス、人形の左腕が大好き
思想:あぁ、なんて面白いの…この左腕♡
好きな〇〇:左腕!
嫌いな〇〇:四肢が揃っている体
能力名:ミラージュソワレ
能力説明:自分の分身を生み出すことができる。
一人称:私
二人称:君
三人称:あの人
主人公の呼び方:君
口癖:「左腕左腕左腕…」
サンプルボイス:
「左腕ちょうだい。」
「本当は傷つけたくはない…でも!仕方ないの!」
「抑えられないこの気持ち!」
「貴方の左腕を捧げて」
物語での立ち位置:敵
工場のどこで暮らしているか:煙突の中
*作者は病気ではありません。
第5話 明け方のダンス
明け方になっても、昨晩のことが頭から離れない。
リーヴァは眠れないまま、埃っぽい階段の裏で横になっていた。
すると、
タンタンタタン…
ステップを踏みながら階段を降りてくる音が聞こえた。
その足音はだんだん軽やかになり、やがて
階段近くの広いスペースで踊る後ろ姿が見えてきた。
タンタンタタン…
少し長めのウィステリアミストの髪が、動きに合わせてふわふわと揺れる。
軽やかなステップにリーヴァの目は奪われた。
すると彼は突然ダンスをやめ、つぶやいた。
「|je veux être une personne《人になりたい》」
リーヴァ:「す…すごい…」
思わず声に出てしまった。
すると彼は驚いた顔をしていった。
???:「…さっきの見てたのか。踊るの好きなんだよ」
彼はバツが悪そうに目を逸らした。
リーヴァ:「あたしはリーヴァ。あなたは?」
シャルル:「…信用できないヤツに名乗りたくはないが…まぁ、俺の名はシャルルだ。」
シャルルはそれ以上語らず、帰ろうとしたのでリーヴァはとっさに
リーヴァ:「あなたからはなぜか、工場の匂いがしないのだけど…」
といった。
シャルルはハッとして振り返った。
シャルル:「勘がいいな…そう、俺はこの工場の出じゃない」
過去を思い出したのか、ますますバツが悪くなったような
表情でシャルルは帰って行った。
しばらくすると、ヴィスとメトリが来た。
メトリ:「おはよう。リーヴァ。」
ヴィス:「おはよう。愛しのリーヴァ。今日も綺麗だね」
リーヴァ:「そ…そうかなぁ〜(テレテレ)」
ひとときの穏やかな昼を、思う存分味わおう。
そう思った時、
またあの灰色の猫が来た。
ヴィス:「また来たのか、貴様。」
メトリ:「デジャブ…今回も私が…」
すると少し離れたところから
???:「猫ちゃん、こっちおいで〜!」
という声が聞こえた。
振り向くと、気だるそうな人形がいた。
(*設定の下の方にネタバレあるので、見ないようにお願いします!)
シャルルの設定(キャラ原案:2√さん)
https://tanpen.net/novel/f997eff5-7cb0-4d79-8f9f-4faebe29ba67/
ありがとうございました!
第6話 お姉さんと妹ちゃん
???:「猫ちゃん、こっちおいで〜!」
青緑色のハーフアップの気だるそうな人形は猫に向かって手招きした。
猫はいつになく、素直にその誘導に従っている。
リーヴァ:「あれ?すっごく素直だなぁ」
メトリ:「いつもと人が…じゃなくて猫が変わったみたい。」
猫は彼女の腕の中にするりと入っていった。
おまけに喉まで鳴らしている。
リーヴァ:「あのー!すごいですね!その猫は手懐けるのとっても難しいのに!」
そういうと、彼女は近づいてきた。
ルオナ:「まぁ、これが僕の能力だからね。ちなみに僕はルオナ!よろしくね!」
リーヴァ:「あたしはリーヴァ。こっちはメトリで、こっちはヴィス。よろしく。」
メトリ:「よろしくね〜」
ヴィス:「よろしく。」
ルオナ:「じゃ、私はこの子とどっか行くから、じゃ〜ね〜」
そう言って、ルオナは姿を消した。
入れ違いでアレンが来た。
アレン:「さっきの猫って?」
リーヴァ:「そう。いつもあたしを襲ってくる猫。ルオナさんが連れてってくれたの。」
アレン:「ふーん…あのめんどくさがりのルオナがね…」
すると、アレンの後ろから小さな声が聞こえてきた。
???:「ルオナお姉ちゃんやさしー!」
リーヴァ:「ミーフィ!」
純白ハーフアップで薄黄緑のドレスを纏った小さい人形だった。
ミーフィ:「リーヴァお姉ちゃん!」
ミーフィがリーヴァに抱きついた。
ミーフィ:「みんな今日も生きててよかったー!」
満面の笑みでミーフィがいう。
そうだね。とみんなもいう。
昨晩でいなくなった人形は果たしてどのくらいなのだろうか。
それは考えないようにして、また今日も生きていく。
それがここのドールたちだ。
(*設定の下の方にネタバレあるので、見ないようにお願いします!)
ルオナの設定(キャラ原案:くおるさん)
https://tanpen.net/novel/7c9ce9ed-ef9c-4cea-8c2a-c09241d1fbd4/
ミーフィの設定(キャラ設定:和音さん)
https://tanpen.net/novel/8845fa4c-ed2f-4085-b4a3-7c5194c1eb96/
ありがとうございました!
*最終回みたいな終わり方ですが、まだ終わりません!
第7話 人形ゴロし
アレンとミーフィは階段に腰掛けた。
その後にリーヴァ、メトリ、ヴィスも腰掛ける。
リーヴァ:「アレンとミーフィは何しにきたの?」
アレン:「実は…」
言いかけたところを、ミーフィが割り込んだ。
ミーフィ:「実はね、最近悪質な人形ゴロしがこの工場に紛れてるみたいで…しばらくは一人行動はやめておいた方がいいって伝えにきたの!」
アレン:「貴方たちは俺らの大切な友人だからね。失いたくないんだ。」
『人形ゴロし』という言葉は不思議だと、リーヴァは思った。
リーヴァ:「でも…人形のコロしあいはいつも起きていることじゃ…?」
アレン:「それが、人形を殺すのが目的、みたいなそんな犯行なんだ。ここでは内容は伏せるけれど…」
アレンがちらっと横目でうるうるの瞳を持つ、純真な幼い人形を見た。
ヴィス:「ここでは言えない内容だってことだな。」
メトリ:「怖いね。」
アレン:「そこで、提案があるんだ。」
と、アレンは暇を持て余していたミーフィに目配せをする。
ミーフィは喜んで話し始めた。
ミーフィ:「そこで、提案があるの!『みんなで3人1組になれば、怖くない!』っていう作戦!どう?」
それは名案だと誰もが思った。
メトリ:「じゃあ、じゃんけんで決める?」
ヴィス:「いや、今ここにいるのは5人だから、奇数だと分かれられない。それに…僕は絶対、リーヴァと共に行動する。これは断じて譲らない。」
ヴィスがメガネをスチャ…と人差し指で押し上げる。
アレン:「へ、へぇ。」
アレンの表情がこわばった、ような気がする。
メトリ:「じゃあ、どうする?」
メトリが問いかけたその時、
階段の上の方から人形の足音が聞こえた。
ミーフィ:「そうだ!あの人に入ってもらおうよ!」
今回は新キャラなしでした。
次回をお楽しみに!
第8話 チーム分け
ミーフィ:「そうだ!あの人に入ってもらおうよ!」
階段の手前で立ち止まった、濃い紫のロングヘアーで黒いドレスを纏ったその人形の一声は
???:「早くどいて。めんどくさい。」
だった。
構わずミーフィが話しかける。
ミーフィ:「最近人形ゴロシが現れたから、みんなでチーム作って過ごすことにしたの!君も入ってくれない?」
人形はため息をつき、
???:「なんで私なの?」
と聞き返した。
メトリ:「そりゃ、あなたが偶然ここを通りかかったから」
それを聞くと
???:「めんどくさい。そもそも私が人形殺しだったらどうす…」
すると、ミーフィがまたもや割り込んできた。
ミーフィ:「よし!お姉ちゃんに決定ー!名前はなんていうの?」
キラキラの瞳を紫髪の彼女の顔に近づける。
ライル:「名前は…ライル…でも」
ミーフィ:「ライルお姉ちゃんね!私はミーフィ。こっちがアレンで、こっちがメトリ、それとこっちがヴィスで、こっちがリーヴァ!よろしくね!」
間髪入れずライルの手をブンブン握って握手する。
ライル:「はぁ…」
ミーフィ;「それじゃ!ヴィスお兄ちゃん以外でくじ引きしよー!」
ミーフィ以外のメンバーはあっけに取られているのであった。
くじ引きの結果は、
メトリ、ミーフィ、ライル
リーヴァ、ヴィス、アレン
だった。
メトリ:「リーヴァ、そっちのチームで大丈夫?」
メトリが心配そうに聞く。
リーヴァ:「うん。大丈夫だよ。」
アレン:「大丈夫。何かあったら必ず俺が守るから。」
そう言ってアレンは、ちらっとヴィスの方を見る。
ヴィス:「なんだよ」
こうして無事にチームは決まった。
そして、また夕闇が空を覆い始めていた。
(*設定の下の方にネタバレあるので、見ないようにお願いします!)
ライルの設定(キャラ原案:ミニ海月@さん)
https://tanpen.net/novel/816c157d-fddd-41dc-aaeb-5b69456a26e1/
ありがとうございました!
第9話 左腕
よく晴れた月の美しい夜。
リーヴァはいつもの埃っぽい階段の裏ではなく、
かつて活動していた機械群の一角に3人で身を寄せ合っていた。
ヴィス:「また夜がやってきた」
アレン:「そりゃやってくるだろ」
ヴィス:「文句あんの?」
アレン:「別に」
ギスギスとした空気が立ち込める。
リーヴァ:「喧嘩?」
ヴィス:「喧嘩ではない。それより今宵も綺麗だね、リーヴァ」
アレン:「はいはい、ちょっと離れてくださいね〜」
ヴィス:「邪魔すんな」
アレン:「俺にできることがあったら、なんでも言ってね。リヴァ」
二人の間のギスギスはなくならず、そのままリーヴァは眠ってしまった。
後から二人もグチグチ言いながら眠った。
夜も深まった頃、リーヴァは不思議な浮遊感で目を覚ました。
リーヴァ:「なに…」
目を開けると、そこには
???:「この|左腕《さわん》、すごくいい♡」
見知らぬ顔があった。
リーヴァ:「二人とも…!」
リーヴァが助けを求めた瞬間。
ヴィスとアレンが同時に飛び起き、リーヴァを取り戻した。
???:「あれぇ?そっちの|左腕《さわん》もいいわん」
謎の牡丹色のドレスを着た茶髪ストレートロングの人形が
左腕を欲しそうに眺めている。
ヴィス:「君が『人形ゴロし』か?」
マリィ:「人形ゴロし?巷じゃそんなふうに言われているのね。私の名前はマリィ。覚えておきなさい!」
アレン:「リーヴァは下がってて…」
リーヴァ:「うん」
アレンが気遣って、リーヴァを後ろに隠す。
マリィ:「左腕左腕左腕…」
二人が構えたその瞬間、
マリィの姿が一瞬にして消えた。
アレン:「グラン・カルマ!」
重力が一時的に強くなり、マリィは地面に押し付けられる。
マリィ:「ふふ…やるじゃない」
マリィは笑って、
マリィ:「少し、本気で行くわね。ミラージュ・ソワレ!」
マリィの姿が分身していく。
マリィ:「ふふふ…この数に勝てるかしら?」
すると、メトリ、ミーフィ、ライルが合流した。
メトリ:「なんか、胸騒ぎがして。思った通り!」
ミーフィ:「あれが、人形ゴロし?」
ライル:「めんどくさ…」
全員戦闘体制に入ったその時。
ヴィス:「…ジャッチ・アイ」
ヴィスがそう唱えた瞬間、そこにいた全員はある場所へと飛ばされた。
マリィの設定(私の創作です)
https://tanpen.net/novel/712870d9-0f4d-4689-9435-d3d629c4d5ef/
第10話 裁判
ヴィス:「…ジャッチ・アイ」
ヴィスがそう唱えた瞬間、そこにいた全員はある場所へと飛ばされた。
リーヴァたちが目を開けると、そこは法廷だった。
一同:「はぁ?」
ヴィスが裁判席に座っている。
傍聴席にはメトリ、ミーフィ、ライル、マリィの分身たちが座っていた。
証人席にはアレン、
被告人席にはマリィ本体が座っている。
言うまでもなくリーヴァは被害者側だ。
ヴィス:「僕のこの目からは、逃れられない____これより、裁判を開始する。」
そう言ってヴィスはメガネを指で押し上げた。
ヴィス:「被告人は、今日の深夜2時ごろ、リーヴァの寝込みを襲い、リーヴァに恐怖を植え付けた。」
ヴィス:「その罪を認めますか」
マリィ:「はぁ?何よそれ?」
ヴィス:「それでは、証人尋問です。」
ヴィス:「君はリーヴァが襲われているところを目撃しましたね。」
アレン:「え?あ、はい。」
ヴィス:「被告人マリィ。君はリーヴァに危害を加えた…この罪は重罪だ…。
よってこの裁判の判決__死刑(ドス声)」
ミーフィ:「メチャクチャな裁判…」
メトリとライルも頷く。
マリィ:「何が死刑よ。」
マリィが鼻で笑った次の瞬間。
マリィ:「!!」
一瞬のうちに、マリィの首が飛んでいた。
一同:「!!」
ヴィス:「これにて裁判を終わる。」
第11話 絶望の迷宮
人形ゴロし事件から二日が経ち、いつもの平穏な昼を過ごしていたリーヴァたち。
その陰では新たなる脅威が|蠢《うごめ》いていた。
リーヴァ:「あの時とっても恐ろしかった…」
メトリ:「あはは、確かに、すごい怖かったね〜」
二人が二日前の出来事について話している。
ヴィス:「人形ゴロシの話かい?」
二人が首を横にふる。
リーヴァ:「ヴィス、あなたの話。」
それを聞いた途端、ヴィスはガーーンという表情をしたような気がした。
ヴィス:「ちょっと外で本読んでくる…」
ヴィスは庭に出かけた。
メトリ:「ところでさ…」
メトリが話そうとしたその時。
???:「ちょっと聞きたいことがあるんだけど。」
黒髪ショート、黒のレースワンピースの人形が話しかけてきた。
リーヴァ:「あなたは?」
ルーク:「ボクはルーク。」
リーヴァ:「あたしはリーヴァ。」
メトリ:「私はメトリ。ところで、聞きたいことって何?」
ルーク:「実は、ある人形を探していてね。」
ルークが探している人形というのは、メアリーという真っ白な容姿の人形らしい。
ルーク:「ボクの相棒なんだ。いつも一緒なのに…」
メトリ:「相棒…!それは一刻も早く見つけないと!」
リーヴァ:「そうだね」
こうして、ルークと共にメアリーを探すことになった。
リーヴァ:「メアリーがいきそうなところはもう全部行った?」
ルーク:「あぁ、思いつくところはだいたい。しかし、あと一つ、行ってないところがある。」
メトリ:「それはどこ?」
ルークが、重たい口調で言った。
ルーク:「絶望の迷宮だ。」
リーヴァ:「絶望の迷宮?」
リーヴァが聞き返すと、
メトリ:「リーヴァ知らなかったんだ!パイプが張り巡らされているエリアのことだよ。一度入ったら出られないと言われているの。」
リーヴァ:「おお…恐ろしい…」
リーヴァは身震いした。
ルーク:「もし、まだこの工場内にいるのだとしたら、もうそこしかない。」
ルークは、迷宮のある方角へ体を向けた。
ルーク:「ついてきてくれるかな?」
リーヴァとメトリは静かに頷いた。
(*設定の下の方にネタバレあるので、見ないようにお願いします!)
ルークの設定(キャラ原案:氷さん)
https://tanpen.net/novel/0e6d9bf1-ef61-43fe-a5ed-fe813c822266/
ありがとうございました!
第12話 反響
絶望の迷宮の入り口に立ったリーヴァ、メトリ、ルーク。
意を決して迷宮へと足を踏み入れようとしたそのとき、
???:「貴方たち!そこは危険よ!」
振り向くと、レイアとヴィスがいた。
リーヴァ:「レイアさん、ヴィスも!」
リーヴァが名前を呼ぶと、レイアはキョトンとした。
レイア:「えっと、ごめんなさい…誰だったかしら?」
リーヴァがハッとする。
そういえば名乗っていなかったことを思い出した。 (*第4話参照)
リーヴァ:「あたしはリーヴァ。こっちはメトリで、こっちはルーク。」
どうも、と二人が頭を下げる。
レイア:「どうも。じゃなくて、ここは立ち入り禁止よ?」
ヴィス:「なぜこんな危険な場所にいるんだい。」
ルークが事情を話す。
レイア:「そう…なら、私もついていくわ。こう見えてこの工場には長いこと住んでるの。迷宮には入ったことはないけれど。それに何かあっても私の力で助けられるし。」
ヴィス:「僕も行く。愛しのリーヴァのために。」
一同:「ありがとうございます!」
そして、5人は絶望の迷宮に足を踏み入れた。
迷宮の中では無数のパイプが四方八方に伸びていた。
アミアンジュファクトリーの全盛が思い浮かぶようだ。
ルーク:「メアリー!いるのかー!」
リーヴァ:「メアリー!」
メトリ:「出ておいでー!」
レイアとヴィスは無言でついてくる。
からんからん…
すると、どこかから足音のようなものが聞こえてきた。
ルーク:「!!メアリー!どこにいるんだー!」
ルークの声が響き渡った。
から…ん
足音が止まった。
メアリー?:「誰かいる?」
今日の新キャラはいないです!
(名前は出ていますが…)
キャラが増えてきて作品が充実してきていることが嬉しいと同時に、
矛盾点を生まないようにすることが難しくなってきました。
ここからが正念場!
第13話 パイプ
メアリー?:「誰かいる?」
姿は見えないが、声がはっきりと聞こえた。
横のパイプの裏からだ。
ルーク:「メアリー!!」
メアリー:「ルーク!?」
やっと姿が見えたその人形は髪も服も白く、間違いなくメアリーだった。
ルーク:「大丈夫か?怪我してない?一人でどこかへ行くな。」
メアリー:「ルーク、大丈夫。私そんなに脆くないよ。少し、ゼンマイ人形に熱中しちゃっただけ。だって、まるで生きてるように動くんだもの。」
メアリーがこちらに気がつく。
メアリー:「貴方たちは?」
リーヴァたちは自己紹介した。これまでのことも説明した。
メアリー:「そうだったの…心配しすぎよ、ルーク。皆さんにも迷惑かけてごめんなさいね」
メトリ:「けっこー楽しかったよ!」
ヴィス:「工場についてさらに知ることができたし。」
リーヴァも笑顔で頷く。
ルーク:「それでは帰ろう。みんなもありがとう。」
そうルークが言ったその時、
???:「みなさん、恐縮なのですが、もうすぐでこのエリアは崩壊します。早く逃げてください。」
見上げると、パイプの上に優雅に腰掛ける、ダークグリーンの髪の貴族のような人形がいた。
リーヴァ:「崩壊するって…?」
すると遠くの方から、ものが崩れていくような鈍い音が聞こえた。
レイア:「みんな!急いで逃げて!」
メトリ:「わかりました!」
ルーク、メアリー:「はい!!」
ヴィス:「君も逃げろ。」
???:「もちろん、そういたします。」
後ろから迫る大きな轟音から一行は必死に逃げた。
リーヴァ:「痛っ!」
すると、崩れたパイプがリーヴァの腕に当たって、腕の半分が粉々になってしまった。
メトリ、ヴィス:「リーヴァ!?」
メトリとヴィスが駆け寄る。
メトリ:「リーヴァ…腕が…」
リーヴァ:「…大丈夫!早く行って!」
ヴィス:「僕が連れてく。」
ヴィスはヒョイとリーヴァを担ぎ上げた。
命からがら、全員が逃げ延びることができたが、
絶望の迷宮は、絶望的なまでに崩れてしまった。
(*設定の下の方にネタバレあるので、見ないようにお願いします!)
メアリーの設定(キャラ原案:氷さん)
https://tanpen.net/novel/ab00038f-a002-4e92-a6c3-3472351a3df8/
ありがとうございました!
第15話 X の噂
夜があけて、朝が来た。
今日も埃っぽい階段の裏で目覚める。
昨晩も何もなくて良かった。
そう安堵したリーヴァのもとに誰かの足音が近づいてきた。
???:「X がきた!X がきたぞ!あはは!」
胸元にルビーのブローチをつけた黒髪の彼が喜びながら、
階段を駆け下り、広間を駆け抜けていった。
リーヴァ:(X がきた?)
X を知らないリーヴァはキョトンとした。
リーヴァはドレスのホコリを払った後、ルビーのブローチの人形が向かった場所へ行った。
そこはリーヴァが言ったことのない場所だった。
リーヴァ:「引きこもりすぎて、全然この工場のこと知らないのね、あたし…」
引きこもリーヴァはそんなことを考えながら、太い蛇腹の筒の中を通り抜けていくと、
そこは広く薄暗い集会場だった。
リーヴァは会場を見下ろした。
リーヴァ:「広い…」
天井の無数のオレンジ色のランプが会場内を照らし、
丸いコンクリートの大きなステージを取り囲むようにして
人形たちがガヤガヤと集まっていた。
リーヴァ:「人形って、こんなにいたんだ。」
やっぱりこの工場はとても広いなと思い知らされるリーヴァのもとに誰かがきた。
シャルル:「元気だったか。」
リーヴァ:「あ!シャルルさん!」
シャルル:「そういえば、名前を聞いていなかった。」
リーヴァ:「あたしはリーヴァです。」
シャルル:「リヴァ、でいいか?俺は伸ばす発音ができないんだ。」
リーヴァ:「はい!もちろん」
リーヴァとシャルルは、赤い幕の掛けられた丸いステージを見下ろした。
リーヴァ:「あたし、集会場があるなんて全然知りませんでした。」
シャルル:「そうか…実は俺も去年知ったばかりだ。もう50年くらいはこの工場にいるっていうのにな。」
リーヴァ:「5、50年!?」
リーヴァは驚いて、聞き返した。なにせリーヴァは去年生まれたばかりだからだ。
シャルル:「俺はこの工場の生まれではないと確か話したと思うが、俺を作ったのはある愛情深い人間だった。もう80年も前の話だ。」
シャルルは語り出した。
俺を作ってくれた爺さんの名前はベネット。温厚で面倒見のいい爺さんだった。
爺さんはとんでもない力を持っていた。
作った人形に魂が宿るんだ。
俺は爺さんの人形作りを見ているのがとても楽しかった。
だから、俺はこの工場で生まれなかったけど、今こうして動けている。
今はもう爺さんはいない。
俺は人形で、あの人は人間。ずっと一緒にはいられないんだ。
俺は爺さんがいなくなった後、各地を放浪して、ここに行き着いた。
シャルル:「すまない。長話につき合わせたな。」
シャルルが一息ついて、リーヴァの方を見るとリーヴァは涙ぐんでいた。
リーヴァ:「おじいさんのこと、愛していたんですね…」
鼻水が垂れている。
シャルル:「あ、あぁ。とりあえず、拭いとけ。」
シャルルが差し出したハンカチでリーヴァは躊躇いなく鼻をかんだ。
最後汚い…すみません
次回もお楽しみに!
第16話 X の来訪
涙を拭って、リーヴァがシャルルと話していると
メトリ:「ああ〜!リーヴァいた〜!」
メトリがぬいぐるみを抱えてリーヴァにバックハグしてきた。
メトリ:「いつもいるとこにいなかったから、心配したよ〜!」
メトリが鼻水を垂らしながら、泣いている。
リーヴァ:「ご、ごめん、はい、ハンカチ。」
今度はリーヴァがハンカチを差し出した。
メトリが躊躇いなく鼻をかむ。
リーヴァは少し表情を歪めながらもなんとか隠し切った。
するとメトリの後ろから続々と人形が入ってきた。
ヴィス:「今日も一段と綺麗だ…愛しのリーヴァ…ゴフッ」
ミーフィがヴィスを押しやる。
ミーフィ:「お姉ちゃんおひさ〜」
アレン:「久しぶり。」
ルオナ:「リーヴァ、目がちょっと赤いよ?大丈夫?」
ルーク:「やぁ。」
メアリー:「この前はありがとう。」
みんなステージのある方に向かっている。
ライル:「何ここ…薄気味悪い。しかも汚っ!帰る!」
ミーフィ:「帰っちゃダメだよ、おねーちゃん!”マリオネット”!」
ライル:「うう…」
ライルがミーフィの能力で操られて、下に歩いていった。
シャルル:「じゃ。」
シャルルも降りて行った。
レイア:「腕の調子は大丈夫?」
最後に来たのは、レイアだった。
リーヴァ:「はい。おかげさまで…あの、レイアさんの腕は…?」
レイア:「もう完治したわ。私はみんなと違って、あの程度の傷なら寝れば治るの。だから心配しないで。」
リーヴァ:「ありがとうございます!」
こうして、全員降りて行った。
と、その時、
ブロード:「|私《わたくし》をお忘れですか?」
ブロードが優雅に歩いてきた。
リーヴァ:「あ!ブロードさん!」
ブロードは帽子をとって、お辞儀した。
ブロード:「|私《わたくし》はあなたと同じく、去年生まれたばかりの身ですが、風の噂で聞きました。|私《わたくし》たちの創造主がお目見えすると。」
リーヴァ:「創造主って、エックス?のこと?」
ブロード:「正確な名前はそうではないようですが…ここのものは皆 X と呼んでいますね。」
リーヴァ:「本名じゃないんだ。」
ブロード:「さて、|私《わたくし》たちも参りましょう。リーヴァさん。」
リーヴァたちは、丸いステージの方へ向かった。
これから何が起きるのだろうか。
人数多すぎ〜オールスターみたいで気分上がりますね!
このキャラなんだっけという方のために、キャラごとに初登場回のURL貼っときます!
⚫︎ヴィス (第1話)
https://tanpen.net/novel/f046ff26-a160-468e-bd92-2d3b98f78643/
⚫︎メトリ (第2話)
https://tanpen.net/novel/15c1bf65-1f54-44df-9696-56bc458b08c4/
⚫︎アレン (第3話)
https://tanpen.net/novel/97f57c77-8f85-4b0d-9cfd-175b0fcc690a/
⚫︎レイア (第4話)
https://tanpen.net/novel/34b973d5-d43a-40e8-bcda-a8484ba56223/
⚫︎シャルル (第5話)
https://tanpen.net/novel/7a85c885-d7c3-479a-8ad7-31c03bf5cb27/
⚫︎ミーフィ、ルオナ (第6話)
https://tanpen.net/novel/14448492-f9a5-4431-b909-53f7f5a5fe0b/
⚫︎ライル (第8話)
https://tanpen.net/novel/a6dd3367-51e1-4cd1-972c-c5361e0c7fc9/
⚫︎ルーク (第11話)
https://tanpen.net/novel/9d2737a3-d194-4732-be8e-09851750c3ba/
⚫︎メアリー(第13話)
https://tanpen.net/novel/d7e19b77-85c7-4fb1-bc46-9e4efe10ed6d/
⚫︎ブロード (第14話)
https://tanpen.net/novel/44a75e22-7a52-476c-a460-a804f312594e/
第17話 X の登場
丸いステージの周りに工場中の人形が集合すると、
突然ステージの赤い幕が開き、
真ん中にスポットライトが当てられた。
「レディースアーンドジェントルメーン!ようこそお集まりいただきありがとう!」
スピーカーから、男の声が聞こえてきた。
周りがザワザワし始める。
すると、ステージの奥の暗闇から一人の人間の男が現れた。
シャルル:「あいつが、X だ。」
X は笑みをたたえながら、人形たちに向かって拍手をした。
X:「初めて会うドールも、1年ぶりに会うドールも素晴らしい美しさです!」
ドールたちは、大歓声を上げた。
X:「まあまあ、落ち着いてください。知っているものも多いと思いますが、|私《わたくし》は一年ごとにこの工場にやってきて、新しいドールを作っています。去年作ったドールを思い出すと…ライル、ミーフィ、それから…リーヴァ、他にもたくさんの人形を作りましたね。そして、今日!また新しい人形の誕生をお祝いしましょう!」
会場は歓声に包まれる。
メトリ:「ほとんど去年と同じこと言ってる〜」
ミーフィ:「私、先輩になるんだ!やった!」
リーヴァ:「新しい…仲間?」
X:「それでは開始いたします!ミュージックスタート!!」
X の合図とともに、クラシック音楽が鳴り出した。
ヴィス:「ピョートル・チャイコフスキー作曲、くるみ割り人形より『金平糖の精の踊り』だ。」
ヴィスが曲名を教えてくれる。
音楽に合わせて、奥の暗闇から人形製造機が現れた。
続々と人形が生産されていく。
まるで、踊っているかのように。
その中でも息を呑むほど美しい踊りを踊る人形がいた。
彼女は薄桃色の美しい髪色をしていた。
新キャラは次の回で紹介します!
お楽しみに!
第18話 人形の精の踊り
その中でも息を呑むほど美しい踊りを踊る人形がいた。
彼女は薄桃色の美しい髪色をしていた。
リーヴァは見惚れた。
すると、曲が終わってしまった。
踊っていた人形たちは、続々とステージから降りる。
あの薄桃色の髪色の人形も。
X:「さて、披露も済んだところで…」
X は右手を上の方に向けた。何かが降りてくる。
X:「新人さんたちに、この工場でのルールを説明しましょう。」
ルールその1
勝手に外に出てはいけない。
死んでしまいますよ〜あ!壊れてしまう、の方が正しいでしょうか〜?
ルールその2
優秀なドールは外に出てもいい。
しかし、確かめるには外に出るしかないので、慎重に、ですよ〜?
ルールその3
私が与えた能力は乱用してはならない。
使いすぎると、体が崩れちゃいますよ〜
ルールその4
年に1回のこの集会には必ず出ること。
うちの工場で生まれたドールは必ず参加しないと、焼きコロすことになってしまうので気をつけてくださいね〜
これで説明を終了いたします!ご清聴ありがとう!
そして、ステージの赤い幕は閉じられた。
説明が終わると同時に、リーヴァはあの新人の元へ駆け出していた。
リーヴァ:「とても綺麗だった!あの踊り、見惚れちゃった…!」
息を荒げて、感動を伝える。
???:「ありがとう、です。」
その人形は編み込みのツインテールで、ピンクのロリータ服を着ていた。
リーヴァ:「私はリーヴァ。あなたのファンになっちゃった!あなたの名前は?」
イヴ:「イヴ、です。これから、宜しくお願いします、です。」
イヴははにかんで、にっこりと笑った。
イヴの設定(キャラ原案:ともりさん)
https://tanpen.net/novel/5a7f153a-6f88-4a5a-a4ac-7d7c4c0b6934/
ありがとうございました!
第19話 犬猿の仲
だいぶ人形たちも帰りお開きモードになったので
集会場から出ようとしたところ、
???:「えー!X もう帰っちゃったの!?」
X がきたーX がきたー!と喜んでいた黒髪の人形が騒いでいる様子が見えた。
レイア:「ルビー!まだあの人に心酔しているの?」
レイアが険しい顔で怒鳴りつけた。
レイア:「何度も言っているじゃない!外に出たって意味がないわ!みんなで仲良く暮らすのが一番よ。」
ルビー:「僕の気持ちなんてわからないくせに!知ったような口聞いてんじゃねぇ!」
レイア:「はぁ?外に出るなんて、最悪の一言に尽きるわ!」
二人がガミガミいがみ合っていると
???:「ちょっと、いいですか、アンフォームド・エターナイト」
銀髪ショートカットの人形が仲裁に入り、
何かを唱えると、ルビーとレイアは動かなくなった。
リーヴァ:「ちょっと!二人に何したんですか?」
リーヴァが慌ててきくと、
???:「とても騒がしかったので、少し黙ってもらおうと思いまして。」
そう言って、さっさと帰ろうとする。
リーヴァ:「二人は元に戻るの?」
???:「貴方は二人にとってのなんなのですか?」
???が逆に質問する。
リーヴァ:「私はリーヴァ。二人…というかレイアさんの友達よ!」
???:「そう…友達…安心してください。10分も経てば元通り騒がしくなりますよ。その前に自分は去りますがね。」
???は集会場の出口まで行って、振り返った。
トラウム:「そういえば、相手にだけ名乗らせるのは少々|不躾《ぶしつけ》ですね。自分は、トラウムと申します。では。」
そう言って、出ていってしまった。
会場に残ったのは、レイアとルビーとリーヴァだけになった。
トラウムの設定(キャラ原案:♱𝖑𝖎𝖊𝖓𝖆♱さん)
https://tanpen.net/novel/755fe9fe-6990-4cb5-8296-13369b056eae/
ありがとうございました!
第20話 2種類の人間
集会場に残ったリーヴァはレイアとルビーの仲裁に入った。
リーヴァ:「とりあえず、落ち着きましょう。」
優しくなだめたつもりだったが
ルビー:「あんた誰?」
膨れっ面で跳ね返されてしまった。
レイア:「ごめんなさい、リーヴァ。少し、頭を冷やすわね…」
レイアが疲れた様子で、近くの椅子に腰掛けた。
ルビーも正気に戻ってきたのか、膨れっ面が少しおさまったような気がした。
ルビー:「ごめん。あんたは悪くないよな。僕はルビー」
リーヴァ:「私はリーヴァ。よろしく。」
握手しようと差し出した手は、完全に無視された。
ルビー:「もう帰る。そして、必ず優秀なドールになって、僕は絶対外に出る」
ルビーは走って集会場から出ていった。
レイア:「何度言ったらわかるのよー!」
レイアの叫びが集会場にこだました。
帰り道。
リーヴァ:「どうしてレイアはそんなにも外の世界を嫌がるの?」
レイアは寂しそうな表情を浮かべて答えた。
レイア:「私、過去に外の世界で暮らしていた時期があるの。その時の持ち主がね、私を投げたり、叩きつけたりしてボロボロになったと思ったら、捨てられたの。私が動いているのは魔法でも、うんざりXの力でもない。呪いなのよ。」
リーヴァ:「なんてひどい…外の世界ってなんて恐ろしいの…」
レイア:「だからルビーにも、他の人形たちにも外の世界には行って欲しくない。」
ふとシャルルの話を思い出して、リーヴァは思った。
人間には大きく分けて2種類いると。
物を大事にする人と
物を大事にしない人が。
ルビーの設定(キャラ設定:甘味さん)
https://tanpen.net/novel/e2ef354d-d878-4ce9-b8aa-30eeb56f3f12/
ありがとうございました!
第21話 燃ゆる想い
夜がきた。
戦いが始まる。
リーヴァはいつもの埃っぽい階段の裏で丸まっていた。
少し遠くの方で争いの音がする。
すると、聞き覚えのある声が聞こえた。
???:「あんたの事情なんか関係ないし。」
微かにだがはっきりとそう聞こえた。
リーヴァは階段の裏から出た。
声が聞こえたのは、工場の庭だった。
ルビー:「あーあ。僕にも、他に楽しいって思えることがあったら良かったのに。人間がいないと、何もかもがつまんない。」
ルーク:「ごめん。キミの考え、理解するのに時間かかる。」
庭を覗くと、ルビーとルークが対峙しているのが見えた。
ルビーは赤く光る拳を握り締め、
ルークは構えている。
リーヴァ:(二人とも…何してるの…?)
リーヴァの顔からは血の気が失せた。
先に動いたのはルビーだった。
ルビー:「ルビーバーン!!」
ルビーの拳が触れた野原が燃えた。
ルーク:「メアリー、下がってて。」
メアリー:「わ、わかった…」
メアリーの表情はとても不安げだ。
ルビー:「自分の身より、他人の心配かよっ!」
その時、ルビーの拳がルークの腕に当たった。
ルーク:「くっ…!」
ルークは腕をおさえて座り込む。
その時、リーヴァの体は咄嗟に動いていた。
リーヴァ:「やめてっ!二人とも!」
ルークとルビーの間に入る。
ルビー:「あんた、コロされたいの?」
ルビーの目は赤く燃えたぎっている。
リーヴァ:「家族が傷つけあう姿は見たくないの!」
ルビーが鼻でふっと笑う。
ルビー:「家族…?笑わせるな。僕は早く外に出たい。そしてたくさんの人間に「素敵なドールだ」と認めてもらいたい。出るためなら何でもやる。例え…ドールを壊すことになってもっっ!!」
リーヴァ:「やめて!!ヴィトロルミエール!!」
その瞬間、庭一体が激しい光に包まれた。
ルビー:「まぶ…!」
ルーク:「メアリー!目をつぶれ!」
しばらくすると、光は消えた。
リーヴァは疲れ果てて、倒れていた。
戦闘シーン難しいです。
慣れないなりに頑張りますので
次回もお楽しみに!
第22話 愛情
膨大な量のエネルギーを消費してしまったリーヴァは倒れてしまった。
ルビー:「フン…大したことねぇな。」
そしてルークの方に向き直った。
ルビー:「戦いの続きだ。行くぞ!」
ルークも構える。
ルビー:「ルビーバーン!」
ルーク:「Timerope」
ルークが何かを唱えた瞬間、ルビーの拳は止まった。
ルビー:「あれ、僕…なんでこんなことしてたんだっけ…?」
ルークの方を見る。
ルビー:「あんた誰?」
ルーク:「ボクたちは昔からの友達だろう?ルビー。」
ルビー:「そうか?…そうだな…僕たち友達か。…いや、そうだっけ?」
どこか腑に落ちない様子でルビーは自問自答している。
ルーク:「さぁ、ルビー、もう夜も深まってきた。早く寝床に戻ろう。」
その時だった。
バリン!
メアリー:「えっ?」
メアリーの腕にナイフがあたり、砕けた。
ルーク:「メアリー!?」
ルークは振り返って周りを見たが、怪しいものは見当たらない。
ルーク:「誰だ!」
???:「|私《わたくし》をご存知ない?まぁ、いいでしょう。あなたたちには|私《わたくし》の獲物になってもらいます。」
再びナイフが飛んできた。今度はメアリーを庇ったルークに当たる。
ルークの背中が割れる。
メアリー:「ルーク!逃げて!!」
メアリーが必死に叫ぶ。
ルーク:「逃げるものか…!ボクは、メアリーが無事なら犠牲になってもいいよ…」
ナイフが雨のように降ってくる。
メアリー:「ルーク、ルーク…お願い…私は大丈夫だから…」
すると、ナイフの雨が止んだ。
???:「おや?ナイフが不足してしまいましたか。」
ルークは膝から崩れ落ちた。
メアリーはルークを抱いて支える。
ルークの姿は見るも無惨だった。
両足と右腕は欠損し、胴体や頭部もボロボロだった。
メアリー:「ルーク、きっと大丈夫よ…!絶対、助かるから…」
ルーク:「メアリー、ボクの命のゼンマイは壊れてしまっても…君は、動き続ける…」
メアリー:「そんなこと言わないで…あなたも生きるの…!」
ルーク:「もう、いいんだよ…メアリー。キミは…キミだけは、外の世界で…絶対に幸せになってね」
ルークはそう言って、微笑みながら旅立った。
第23話 火と水
メアリーは静かに泣いていた。
涙がルークの亡骸にぽたりぽたりと落ちる。
その時、ずっと一人で自問自答していたルビーの記憶が戻った。
ルビー:「あれ、僕、今まで何を…」
横を見ると、さっきまで戦っていたルークがボロボロになって倒れている。
そのルークを抱いてメアリーが震えている。
ルビー:「どうなってんだ!?」
ルビーは混乱し始めた。
その時。
???:「ルビーさん、貴方もすぐに始末して差し上げます。」
空から声が聞こえてきた。
ルビー:「誰だ?」
???:「名乗るほどのものでもありません。」
すると急に空間が捻じ曲がり始めた。
ルビー:「なんだこれ!?」
ルビーが捻じ曲がった地面と地面に押しつぶされそうになる。
ルビー:「ガァァァァっ!!」
ルビーが悲鳴をあげたその時。
メトリ:「何がどうなってるの…!」
シャルル:「ルビ、任せろ…水晶監獄!!」
シャルルがそう唱えると、ルビーが水晶の中に閉じ込められた。
地面はルビーを押しつぶせない状態になった。
???:「あぁ…とんだ邪魔が入りましたね…今宵はこの辺で、では。」
謎の声は、消えてしまった。
ルビーを閉じ込めていた水晶は崩れた。
メトリ:「リーヴァ!」
メトリがリーヴァに駆け寄る。
メトリ:「リーヴァ!!平気!?」
リーヴァがゆっくりと瞼を開ける。
リーヴァ:「メ、トリ…」
シャルルはルビーに問いかけた。
シャルル:「ルビ。一体何があったんだ。」
ルビーは顔を伏せたままで何も答えない。
シャルル:「どうした。返事を…」
次の瞬間、ルビーの燃えたぎる拳がシャルルの右頬を|掠《かす》めた。
メトリ:「なにをしてるの、貴方!?」
シャルルはかろうじて避け、よろめきながらもルビーに向かって唱えた。
シャルル:「水晶監獄!!」
ルビーは水晶に再び閉じ込められた。しかし、
バリン!!
燃える拳で水晶の檻を瞬く間に破壊した。
シャルル:「…っ!火…やっぱり苦手だ…!」
ルビーは大声で怒鳴った。
ルビー:「僕が…僕こそが…一番優秀なドールなんだ!」
そう言って両方の拳が熱く燃え始める。
ルビーはシャルルとメトリに凄まじい速さで攻撃を喰らわした。
シャルル:「ぅあっ!!」
メトリ:「キャッ!!」
二人の体にはヒビが入り、一部が崩れた。
リーヴァは叫んだ。
リーヴァ:「やめてっ!!」
するとルビーがリーヴァに向かってこう言い放った。
ルビー:「……リーヴァ。ドールを壊したことに文句あるなら言えよ。…だが、次はあんたの番だ。」
そうして、燃える拳を振りかざす。
リーヴァ:「どうして…こんなこと…」
ルビー:「僕は絶対外に出るんだ。」
リーヴァ:「やめて…!!」
ルビーはその言葉に耳を貸さず、拳を振り下ろした。
リーヴァは目を瞑り、最期を悟った。
第24話 別れとの出会い
リーヴァは目を瞑り、最後を悟った。
その時、
???:「ルビー、もうやめにしよう。」
聞き覚えのある、優しい声が聞こえた。
リーヴァ:「ルオナ…?」
目を開くと、目の前にルオナがいて、ルビーの拳を受け止めていた。
ルオナ:「痛いな…火傷したじゃないか。どうでもいいけど。」
ルオナはそう言って、ルビーの拳を振り払う。
手は赤くなっていた。
ルオナ:「リーヴァ。よく頑張ったね、他のみんなも。」
ルオナは深呼吸する。
ルオナ:「でも、もう大丈夫。これ以上、みんなを傷つけさせたりはしない。」
ルビー:「あんた、なんなんだよ!」
ルビーが唱える。
ルビー:「ルビーバーン!」
ルオナ:「ルボネテレパシー!」
ルオナそう唱えた途端、
周りにたくさんの動物が現れた。
動物たちはルビーによってたかっていく。
そして、ルビーの体を壊していく。
ルビー:「やめろっ!来んな!僕は…外に出て…」
_人間に会いたいんだ_
その言葉を残して、ルビーは粉々に崩れ去った。
ルオナは凍るような冷たい表情で崩れ去るルビーを見ていた。
そして、いつもの優しい表情に戻ってこういった。
ルオナ:「みんな、すぐにレイアを呼んでくるから、待ってて。」
ルオナは動物たちに護衛を任せて、レイアを呼びに行った。
ルオナはレイアを連れて、すぐに戻ってきた。
レイアはこの惨状を見て、ショックを受けた。
レイア:「ルークさん…ルビー…」
悲しむまもなく、レイラは怪我人たちを彼女の住処兼病院の保管庫へ運んで行った。
保管庫に到着し、処置を施したレイアの目には涙が溢れ出していた。
レイア:「ルビー…結局、あなたは…」
粉々になったルビーの破片を震える両手で掬い上げる。
そして、優しい手つきで赤いツボの中にしまう。
それを見ていたリーヴァは自分の無力さに打ちひしがれた。
メトリも割れた部分をさすりながら、悔しさに顔を歪ませた。
シャルルは後ろを向いていた。
メアリーはルークの残された頭部を優しく抱きしめて、ベッドに寝転がっていた。
ルオナは工場の屋根裏へ向かっていった。
謎の声の話をしたところ、情報収集に動いてくれたのだ。
保管庫内には暗く重い空気が立ち込めている。
すると、アレンが保管庫に入ってきた。
アレン:「話は…すべて聞いた。だけど、みんなに言っておかなければならないことがあるんだ。」
アレンは真剣な面持ちでこの場にいる全員に向かってそう口を開いた。
メアリー以外の4人は振り向いて、不安な表情でアレンの次の言葉を待った。
アレン:「昨晩、工場内のおよそ半分の人形が破壊された。」
その場にいた全員が、驚いて言葉を失った。
第25話 強大な仇
アレン:「昨晩、工場内のおよそ半分の人形が破壊された。」
その場にいた全員が、驚いて言葉を失った。
最初に静寂を破ったのはシャルルだった。
シャルル:「およそ半分とは、つまり、何かの事故でもあったのか?」
通常のコロシアイでは一晩でそこまで多くの人形を壊せるものなどいない、
そう考えての推測だった。
アレン:「いや、それがどうも違うようで…」
アレンは考え込んで口篭ってしまった。
リーヴァ:「工場内の人形の半分って…ヴィスとかミーファとか、みんな…大丈夫かな…」
リーヴァは強い不安に襲われ青ざめた。冷や汗が垂れてくる。
メトリ:「…」
メトリは壁に背をつけて座り込んでしまった。
レイアは赤く泣き腫らした瞳を擦り、アレンに聞いた。
レイア:「救助できる状態では…なかったの?」
アレンは静かに頷いて
アレン:「ああ。修復不可能な状態にまで粉々にされていた…」
そう言ってアレンは苦しくなったのか顔を伏せた。
アレン:「俺はこのことを生き残りに伝えたり、調査に動く。みんな次の夜になるまでに安全策を各自で考えておいてくれ。」
そう言って、保管庫を出て行った。
開いた保管庫の扉の隙間から、眩しい光が見えた。
いつの間にか夜が明けていたようだ。
アレンが出ていき、再び保管庫は静まり返った。
レイアが口をひらく。
レイア:「みんな、朝が来たようだからもういつもの場所へ戻りましょう。」
レイアの声かけにより、リーヴァたちは外へ出た。
メアリーを残して。
保管庫の扉を閉めると、微かに泣き叫ぶ声が聞こえた。
4人は聞かないふりをした。
第26話 再会
シャルルとレイアと別れ、
いつもの埃っぽい階段についたリーヴァとメトリ。
そこではヴィスとミーフィがうなだれていた。
リーヴァ:「ヴィス!ミーフィ!」
ヴィス:「リーヴァ!!」
ミーフィ:「お姉ちゃん!!」
ヴィスは走ってきて、リーヴァを抱きしめた。
ヴィス:「心配した…無事で、よかった…」
ヴィスの早い鼓動が伝わる。
ミーフィ:「二人とも無事でよかった〜!いなくなっちゃったかと思ったよ〜!」
メトリとリーヴァの顔を見て、ミーフィが安心して泣き出した。
リーヴァ:「二人とも…」
メトリ:「私たちは無事よ。」
メトリがしゃがんでミーフィの頭を撫でる。
ミーフィは安心して泣き止んだ。
落ち着いた頃に、さっきの話について聞いてみることにした。
リーヴァ:「二人ともアレンから、昨晩のこと聞いた?」
二人は頷いた。
ヴィス:「人形の大量殺戮についてだろう。」
ミーフィ:「アレンお兄ちゃんが夜までに安全策を考えておいてって言ってた。」
安全策とはなんだろう、
どうしたらそんな酷いことをできる犯人から生き延びることができるだろう、
とリーヴァは頭の中でぐるぐる考えを巡らせた。
ヴィス:「バリケードを作るのはどうだ?」
ヴィスが提案した。
メトリ:「いや、もしも昨晩私たちが遭遇した謎の人物が犯人だった場合、バリーケードは意味をなさない。」
ミーフィ:「どんな人と会ったの?」
ミーフィが聞くと
メトリ:「姿は一切見えなかったけど、空間を操ったり、離れたところから攻撃ができる厄介な能力持ちだよ。」
とメトリが答えた。
リーヴァは気絶していたので、その人物のことは一切わからなくてきょとんとしていた。
ヴィス:「では、みんなで集まって、返り討ちにするというのはどうだ。」
それを聞いた3人は納得した
ミーフィ:「それいいね!仲間がたくさんいれば、どんな敵も怖くない!」
リーヴァ:「それならこれ以上犠牲が出なくて済むかも。」
メトリ:「それ以外ないよね!でもさ…ずっと言いたかったんだけど…」
メトリが水を差す。
メトリ:「そろそろリーヴァから離れてくれない?」
そういうとリーヴァを抱きしめたままのヴィスは
ヴィス:「いやだ。リーヴァのことはもう絶対離さない。」
断固拒否した。
第27話 旅の始まり
次の夜に謎の人物を返り討ちにするために
リーヴァ、メトリ、ヴィス、ミーフィは協力する仲間を集めることにした。
リーヴァ:「まずは、身近なところからアレンとかルオナとか…」
メトリ:「シャルルさんとか、レイアさんとか…」
ミーフィ:「ライルお姉ちゃんとか…」
口々に思いつく知り合いを並べていると
???:「貴方埃まみれじゃない!。せっかくのドレスが台無しだわ」
知らない人形から突然話かけられた。
リーヴァ:「あ、あたしですか?」
リーヴァがドレスを確認する。確かに埃まみれだ。
急いで払ってお礼を言う。
リーヴァ:「ありがとう!気づきませんでした…あ!あたしはリーヴァといいます。こっちは左からメトリ、ミーフィ、ヴィス。」
ラベンダーアイスの髪を持つ人形は微笑んで答えた。
シルヴィー:「私はシルヴィー。人形は美しく完璧でないと。」
するとその後ろから、薄桃色の髪を持つ幼い顔立ちの人形がひょこりと顔を出した。
リーヴァ:「イヴ!」
イヴ:「リーヴァ、さん!」
リーヴァとイヴは手を取り合って喜んだ。
ヴィスとメトリとミーフィはポカンとしている。
メトリ:「リーヴァ、知り合いなの?」
メトリが聞くと
リーヴァ:「うん!新人さんのイヴだよ!この前エックス?がきた時、とっても踊りが綺麗だったあの!」
ヴィス:「あぁ、あの子か。よろしく、僕はヴィス。」
ミーフィ:「私はミーフィ!」
メトリ:「私はメトリ!リーヴァの相棒やってます!」
イヴ:「イヴ、です。これから、宜しくお願いします、です。」
せっかくなので、二人にもさっきの話をしてみることにした。
シルヴィー:「昨晩の殺人鬼を返り討ちにする、ですって?」
イヴ:「イヴ、怖いです。」
シルヴィーとイヴは考えこんだ。
シルヴィー:「『殺人鬼』なんて変よ。ドールなら『壊す』が正しいわ。私達は魂が宿っただけの人形だもの」
シルヴィーが細かいところを指摘してくる。
メトリ:「まぁ、そうなんだけどね…って、そこは今重要じゃない!」
メトリがツッコミを入れる。
イヴ:「イヴ、戦うのいや、です。ごめんなさい。」
シルヴィー:「私も。ドレスが汚れるのはいやだわ。それでは。」
二人は断って、どこかへ行ってしまった。
ヴィス:「協力してくれそうな人形に、片っ端から当たるか。」
ヴィスがそういったその時、
ミーフィ:「あ!大変!」
ミーフィが急に大声を上げた。
リーヴァ:「どうしたの!?」
リーヴァが聞き返すと
ミーフィ:「ルオナお姉ちゃんに呼ばれてたんだった!急いで行かなきゃ!またねみんな!」
そう言ってミーフィは駆け出した。
リーヴァ:「そうなの…?またね。」
こうして、リーヴァ、メトリ、ヴィスの
協力してくれそうな人形を探す短い旅が始まった。
シルヴィーの設定(キャラ原案:2√さん)
https://tanpen.net/novel/b76fae64-b545-463a-a57a-d26d5295fed9/
ありがとうございました!
第28話 工場と X の秘密
協力者を探し始めたリーヴァ一行が初めに出会ったのはトラウムだった。
そこはロフトのような狭い通路で、蜘蛛の巣がいくつも張り付いており、
窓ガラスは曇り、光をほとんど通していない。
トラウムはロッキングチェアに座り、ゆったりとくつろいでいた。
トラウム:「自分、一人が好きなんです。静かな時間を邪魔しないで下さい。」
トラウムがこちらに見向きもせず、出て行けと左手で示した。
リーヴァ:「トラウムさん。あたしたち昨晩の事件の犯人を返り討ちにするべく、仲間を集めているんです。あなたの力が必要なんです!」
リーヴァが訴える。さっき断られたからか今度はちょっと強めに言っている。
トラウム:「後ろの二人は誰ですか?」
トラウムが振り向いた。
ヴィス:「僕はヴィスといいます。彼女はメトリ。」
メトリ:「初めまして。」
二人は挨拶をする。
トラウム:「そうですか。しかし、なぜ自分に協力を頼むのです。」
リーヴァが答えた。
リーヴァ:「少しでも多くの力が必要なんです!なにせ、相手は強大な力を持っているので。」
トラウムは考えこんだ。
そして、読んでいた本を横のミニテーブルに置いた。
トラウム:「正直なところ、自分はあまりそう言ったことには関わりたくありません。…しかし」
トラウムが座ったままこちらに視線だけをよこして言う。
トラウム:「…このらんちき騒ぎには腹が立っているんです。一応、自分もかなり昔からここで暮らしているので荒らされたくはないですし。」
リーヴァたちは笑顔で
3人:「ありがとうございます!」
と礼をした。
トラウム:「お三方は、この工場についてどの程度ご存じですか。」
唐突な質問に3人は顔を見合わせた。
トラウム:「…そうですか。せっかくですので、この工場の秘密について話しておきましょう。」
トラウムは話し始めた。
この工場はかつて『舞台のような工場』と呼ばれていました。
しかし、時が経つにつれ、人間たちは飽き、
だんだんとこの工場にも活気がなくなっていきました。
そんな時、工場の設備に欠陥があったことで
ここで働いていた従業員の一人が命を落としてしまった。
その責任を取るため、この工場は閉鎖されて誰も出入りしなくなり、
自分たち人形もこの工場に置き去りになりました。
年月が経ち、工場もペンキが剥がれたり蜘蛛の巣ができたりと散々な状態になってきていた時、
X が現れました。
X が人形を一つ残らず修理すると不思議なことに、人形たちに命が吹き込まれました。
そこまではよかったのです。
それで終われば自分は X を軽蔑することはなかったと思います。
1年後、
また X が現れました。
そしてこう言ったのです。
「すまない。この工場を出られるのは、選ばれしドールだけなんだ」
そう言ってこの工場の周りに人形に対する、強力な結界をはった。
人形は自由に工場に出入りすることを禁じられた。
トラウム:「そうして、今まで外に出たい人形たちは争う羽目になった、と言うことです。」
リーヴァたちは初めて聞くその話に驚愕した。
リーヴァ:「なぜ、 X は人形たちを閉じ込めたの…?」
トラウムはわからないと言うふうに首を振る。
メトリ:「トラウムさんは、そんなに昔からこの工場にいるんですね…」
トラウム:「そうですね。ですが、いまだに X のことはよく知りません。…では、夕方にまた会いましょう。どこへ向かえば良いですか?」
3人は顔を合わせてハッとする。
リーヴァ:「そういえば、決めてなかった!」
メトリ:「いつもの階段のところは?」
ヴィス:「僕たちはわかるだろうが、他の人形は…あ。では、あの集会場にしたらどうかな。」
と言うことで、集合場所は集会場になり、トラウムとは一旦別れ、
次の場所に向かって歩き始めた一行だった。
トラウム久々の登場なので初登場回貼っときます!
https://tanpen.net/novel/824a455f-563a-4cf7-ab38-e9f520618a82/
第29話 仲間
トラウムと別れ、次に向かったのはライルの元だった。
メトリ:「ライルは絶対来てくれないでしょ。めんどくさがりだし…」
ヴィス:「一応は聞いておこう。」
そうしてライルに聞くと意外な反応が返ってきた。
ライル:「仕方ない、いいよ。」
意外にあっさりと承諾された。
リーヴァ:「え?熱でもあるの?」
信じられずに聞き返す。
ライル:「失礼ね。私だってやるときはやるよ。それに…」
ライルが嫌そうな表情をしていった。
ライル:「もう人形の破片がまき散らされるのは我慢できない!」
あ〜…ライルらしい、と3人は思った。
そして、集合場所を伝えて次の場所に向かった。
レイア:「犯人を返り討ちにする!?」
レイアのもとに行くと、アレンとシャルルとブロードもいた。
レイア:「危険すぎるわ!」
しかし、とアレンが遮る。
アレン:「しかし、確かに理にかなっている気がする。話を聞くところ、隠れていても見つかってしまう可能性が高いし…俺は協力するよ。」
シャルル:「俺も協力する。早急に手を打たないと手遅れになりそうだ。」
ブロード:「|私《わたくし》ももちろん協力しましょう。」
そうして全員レイアの方を見る。
レイア:「わかった。だけど、戦闘はできないから。あくまで救護として、協力するわ。」
と、その時、イヴが飛び込んできた。
イヴ:「やっぱり、私も、協力します…」
リーヴァ:「イヴ!!」
ヴィス:「なぜ急に気が変わったんだい?」
ヴィスが聞くと、
イヴ:「怖いです、が、戦いが、終わって欲しい、ので。」
イヴは不安の中にも決意の入り混じった表情でそういった。
次に向かったのはルオナのもとだった。
そこにはミーフィもいた。
ミーフィ:「あ!リーヴァお姉ちゃんたち!ルオナお姉ちゃんも協力してくれるって!」
ミーフィが笑顔で報告してくる。
リーヴァ:「そうなの?ありがとう、ルオナ!」
ルオナは何かに集中して話が聞こえていないようだ。
ミーフィ:「今、鳥さんに情報をもらっているところなんだ。すごい集中してるから、静かにね。」
リーヴァ:「わかった。じゃあ、次行くね。夜に集会場集合って伝えておいて。またね!」
ミーフィ:「かしこまり!」
次に向かったのは、メアリーのもとだった。
リーヴァ:「メアリー…失礼するね。」
保管庫のベッドで横になっているメアリーに優しく声をかけた。
リーヴァ:「あたしたち昨晩の仇を取りに行こうと思うんだけど…」
メアリーはピクッと反応した。
メトリ:「メアリーも来られる?」
メトリが聞くと、しばらく沈黙が続いた。
沈黙の後、答えが返ってきた。
メアリー:「私…行くわ。」
そう言ってメアリーはベッドから降りた。
メアリー:「怖いけど、ルークが残してくれた思いがあるから。大丈夫。」
メアリーの瞳は決意に満ちていた。
リーヴァ:「うん!行こう。」
今晩、アミアンジュファクトリー最大の戦いが幕を開ける。
そろそろクライマックスです!
温かい目で見守っていてください!
第30話 幕開け
空に星のまたたく夜。
集会場には人形たちが集まっていた。
リーヴァ:「ついに…始まる。」
周りを見渡すと、シャルルが新しい服を着ていた。
リーヴァ:「シャルル!その服どうしたの?」
シャルルに聞くとこう言った。
シャルル:「イヴが繕ってくれたんだ。」
そう言うとイヴが現れた。
イヴ:「イヴ、新しい服、作ったです。かっこよく、作ったです。」
リーヴァ:「すごい!そんな特技もあっただなんて!」
リーヴァが驚いていると、集会場の入り口の方でシルヴィーが顔を覗かせているのが見えた。
リーヴァ:「シルヴィーさん!」
リーヴァがシルヴィーの方へ向かうと、シルヴィーはハッとして集会場から出て行こうとした。
リーヴァ:「もしかして、力を貸してくれるんですか?」
リーヴァがパッと明るい表情になっていう。
シルヴィー:「協力はしないわ。だけど…」
シルヴィーが何かを考えている表情で言う。
シルヴィー:「その殺人…壊人鬼は、本当にあなたたちが太刀打ちできる存在なのかしら。」
その言葉を聞いて昨夜のことを思い出し、少し不安になったリーヴァだったが、
みんなの決意に満ちた顔を思い出すと、
リーヴァ:「それでも、やるんです。」
と力強く返した。
シルヴィーは不安げな表情のまま、
シルヴィー:「私たち、生きている人形じゃなければこんなことにはなっていなかったのにね。」
と言って、来た道を帰って行った。
シルヴィーの後ろ姿を見送るリーヴァの元に、
メトリ:「リーヴァ。準備はOK?」
ヴィス:「リーヴァ、僕から離れないように。」
メトリとヴィスが声をかけにきた。
リーヴァ:「うん!」
リーヴァは決意に満ち溢れた返事をし、戦いに向けて想いを固めた。
その時、集会場が突然停電した。
「廃工場のビスクドール」キャラ紹介(未完成)
読んでいる時、物語のイメージをしやすくするため
登場キャラクターのイラストを皆さんに描いていただきました!(私もかきました)
(*許可をいただいたキャラのみ)
⚫︎リーヴァ
https://firealpaca.com/get/F3waA012
⚫︎ヴィス
https://firealpaca.com/get/55PkLvWQ
⚫︎メトリ
https://firealpaca.com/get/UwlJBYjP (夜珊瑚さん作)
⚫︎シャルル
https://firealpaca.com/get/OednB96u
⚫︎ミーフィ
https://firealpaca.com/get/qxetemZo (和音さん作)
(服のイメージ)
https://firealpaca.com/get/lWQ9Oq9N
⚫︎ルオナ
https://firealpaca.com/get/aTgS5YBq
⚫︎ルーク
https://firealpaca.com/get/KTXZUnX1 (霧島 氷さん作)
⚫︎メアリー
https://firealpaca.com/get/ZBTPe1hW (霧島 氷さん作)
⚫︎レイア
https://firealpaca.com/get/cWzerXQ8
⚫︎ルビー
https://firealpaca.com/get/qX8Qb5KY
⚫︎ライル
⚫︎ブロード
⚫︎シルヴィー
https://firealpaca.com/get/jj38aEHK
⚫︎トラウム
https://firealpaca.com/get/7ySaAiL6 (♱𝖑𝖎𝖊𝖓𝖆♱さん作)
まだ完成してないですが、ご協力ありがとうございました!
第31話 仇の紳士
集会場が急に停電し、真っ暗闇となった。
集会場の人形たちは、何が起きたのか分からず騒がしくし始めた。
ミーフィ:「真っ暗!」
イヴ:「どうして、です?」
アレン:「何が起きてる?誰か、ブレーカーの場所知ってるか!」
シャルル:「俺がブレーカーを戻してくる。」
そう言ってシャルルがブレーカーの元へ向かおうとしたその時、
???:「レディースアーンドジェントルメーン!ようこそお集まりいただきありがとう!」
どこかで聞いたようなセリフが集会場内に響いた。
同時にサークル状のステージの中央にスポットライトが当てられた。
リーヴァ:「このセリフ…」
集まった人形たちの視線がスポットライトの先へ向く。
そこにいたのは…
ブロード:「お待ちしておりました。皆さま!」
シルクハットを手に取り、優雅にお辞儀をするブロードだった。
メトリ:「ブロード…?」
たくさんの人形がざわざわし始めた。
人形1:「誰だあれ?」
人形2:「見たことないなぁ」
ブロードは穏やかな笑顔で周りを見渡す。
ブロード:「皆様、不思議に思っていることでしょう。|私《わたくし》がなぜ急にステージの上で話し出したのか…それは」
ブロードはモニターを下ろし始めた。
ライル:「はぁ?めんどくさ…」
トラウム:「何が起きるのでしょうか。」
メアリー:「一体何をしているの…?」
全員が疑問の眼差しでモニターを見つめていると、
映像が流れ出した。人間が写った古いビデオだった。
ブロード:「人間はとても魅力的です。」
ブロードは唐突に語り始めた。
ブロード:「人間は良いですよね。人形とは違い、美しい腕、足、指、目…全てを持っています。それなのに、人形という人もどきを作って美しいと鑑賞する、その不思議さもまた奥深い。私は人間になりたい訳では無いが、周りのドールは人間になっても良いと思います。」
そう|捲《まく》し立てるとブロードはふう、と一息ついて、
ブロード:「長々と話していると、夜が明けてしまいますね。それでは、そろそろ始めましょう。」
無駄話が終わるとブロードは、右手を掲げた。
ブロード:「ショーの始まりです!」
瞬間、空間が歪み始めた。
ステージ近くにいた人形たちが歪みに巻き込まれ、パリンパリンと割られていく。
リーヴァたち:「!!!」
レイア:「なんてことをするの!!」
アレン:「みんな下がって!」
イヴ:「どうして、こんなこと、する、です?」
ブロードがふふふと笑う。
ブロード:「どうして、ですか。答えは簡単です。|私《わたくし》が選ばれしドールになるためですよ!」
ブロードが悪びれない様子で次々に人形たちを木っ端微塵にしていく。
リーヴァ:「あなた、あの時パイプが倒れてくるって教えてくれたよね?親切な人だと思っていたのに…」
ブロードはこれまた小馬鹿にしたように笑い出した。
ブロード:「あはは!え?まさか本当に|私《わたくし》のことを信じていたのですか?馬鹿らしい、嘘だとも思わないなんて。あのパイプは、|私《わたくし》が倒したのですよ。」
あの場にいた4人は訳がわからないというふうにブロードを見上げた。
ヴィス:「何のために!」
メトリ:「許せない!」
ブロードがため息をついた。
ブロード:「鬱陶しいんです。さっさと私の踏み台になってください。」
スポットライトが消え、辺りが真っ暗闇に包まれた。
そしてブロードの姿は見えなくなった。
歪みが押し寄せてくる。
ルオナ:「みんな!一時退散!!」
ルオナが集会場に入ってきて叫んだ。
生き残りの人形たちは急いで外に出て、命からがら逃げ出した。
集会場は無惨にも崩れてしまった。
第14話 レイアの力で
絶望の迷宮からなんとか逃げ切った一行は安堵していた。
しかし、犠牲になったものがいなかったわけではない。
メトリ:「リーヴァ…どうしよう腕…」
メトリは涙を流して、リーヴァを抱きしめた。
ヴィス:「リーヴァ…」
ヴィスは悲しそうな瞳で割れた腕を見つめていた。
リーヴァも泣きそうになるのを、必死で堪えていた。
レイア:「大丈夫。腕は残っているから、元通りになるわ。」
そう言ってレイアはリーヴァの腕があった位置に手を当てた。
レイア:「ドールズケアラー…」
みるみるうちにリーヴァの腕が修復されていく。
ヴィス:「元に…戻った!!」
リーヴァ:「レイアさん!ありがとう…」
リーヴァの目に涙が溢れる。
レイア:「いいのよ、リーヴァ。これが私の生き甲斐だもの。」
リーヴァが視線を落とすと、レイアの腕にヒビが入っていた。
リーヴァ:「レイアさん…それって…」
レイアが腕を隠す。
レイア:「なんでもないわ。じゃあ、私、もう帰るから。」
リーヴァ:「まって…」
瞬く間にレイアはいってしまった。
ルーク:「ところで、君は一体誰なんだ?」
ルークはそう言って、貴族のような身なりの人形の方を見る。
ブロード:「申し遅れました。|私《わたくし》はブロードです。以後、お見知りおきを。」
メアリー:「ブロードさん…聞いたことない名前ね…」
ブロード:「最近作られたものでして。」
さてと、とブロードは帽子の傾きをなおし、
ブロード:「それでは、またお会いしましょう。」
そう言って行ってしまった。
ヴィスとメアリーは|訝《いぶか》しげな表情でブロードを見送った。
ヴィス:「ブロード…か。」
メトリ:「なんだったんだろ…」
リーヴァ:「ね。」
リーヴァはルーク、メアリーと別れ、ヴィス、メトリと一緒にいつもの埃っぽい場所に帰って行った。
(*設定の下の方にネタバレあるので、見ないようにお願いします!)
ブロードの設定(キャラ原案:夜珊瑚さん)
https://tanpen.net/novel/de25b06a-445e-4f6e-bf24-df49716109c0/
ありがとうございました!
第32話 無慈悲なドール
崩落した集会場から逃げ出した人形たちは、暗闇の中でざわついていた。
あいつが人形ゴロしか?
やばくね?一瞬で集会場が崩れたぞ。
戦うなんてやっぱ無理。
リーヴァ:「ブロード…わからないわ…なぜ…」
リーヴァが血の気の失せた表情でつぶやいていると
メトリ:「リーヴァ!無事!?」
ヴィス:「あいつ、何を考えているのかわからないな。」
メトリとヴィスが合流した。
遠くの方で他の知り合いたちも集まっている様子が見えた。
メトリ:「良かった…知り合いはみんな無事ね。」
するとルオナがこちらに向かってきた。
ルオナ:「聞いて!さっきのやつなんだけど…」
一呼吸おいて口を開く。
ルオナ:「鳥たちに聞いた情報によると、あの人…」
周りが息を呑む。
ルオナ:「Xが最初に作ったドールらしい。」
リーヴァ:「えっ…」
するとその時、集会場の方から高笑いが聞こえてきた。
ブロード:「誰一人として逃しませんよ。|私《わたくし》が外に出られるまで。」
ミーフィ:「ヒィ…き、きた…」
ミーフィは半泣きである。
アレン:「みんな、下がって!」
ライル:「い、言われなくても…」
リーヴァたちは後退りした。
ブロードが攻撃を繰り出してくる。
ブロード:「スペースモディファイ!」
工場の床や壁が歪んでいく。
リーヴァ:「避け…」
避ける場所もなく歪みに巻き込まれそうになる。
シャルル:「水晶監獄!」
リーヴァの体が水晶の中に閉じ込められた。
リーヴァ:「!?」
シャルル:「大丈夫だ。一時的なシェルタみたいなものだ。だが、気を抜いている暇はないぞ。」
すぐにリーヴァは解放された。
リーヴァ:「ありがとうございます。」
リーヴァたちはブロードを見据えた。
ブロードの攻撃をかろうじて避けた人形たちはそれぞれの能力を駆使して戦っていた。
トラウム:「アンフォームド・エターナイト!」
ブロード:「おっと!」
ブロードはすんでのところでワープし、トラウムの死角に移動した。
アレン:「|狡猾《こうかつ》な…!」
ブロードは攻撃を放つとワープで回避するという性悪なテクニックを使ってきた。
工場内も薄暗く、更に戦いづらい状態だ。
ヴィス:「これでは攻撃が当たらない。」
メトリ:「どうしたらいいっていうの〜!」
するとどこからともなくブロードの高笑いが聞こえてきた。
ブロード:「あっははは!やはり|私《わたくし》がこの工場で最も優秀なドールだぁ!」
ライル:「ベルフェゴール!ベルフェゴール!ちっともあたりゃしない。めんどくさ!」
周りの士気も落ちてきた。
ルオナ:「これはまずい。相手の思う壺だね。」
ブロードは余裕の表情でまたもや攻撃を繰り出してきた。
ブロード:「今度は逃しません。スペースモディファイ!」
ブロードが唱えると、先ほどよりも大きな歪みが押し寄せてきた。
矛盾点がないか心配なので、気づいた方もしいましたら教えてください!
最終話 新たなる旅路
すこし、いえかなり長めです!
倒れたブロードはぴくりとも動かなくなった。
リーヴァ:「…」
リーヴァは複雑な気持ちでブロードの亡骸を見つめていた。
昇り始めた太陽がその無惨な横顔を照らしている。
周りの人形たちも嬉しいとも悲しいともなんともいえない表情をしていた。
メトリ:「何はともあれ、これが最善だったんだよ。」
メトリがみんなを励ます。
そうだよね、と周りも同意する。
トラウム:「これで万事解決ですね。それでは。」
それぞれが帰ろうとしたところ
ミーフィ:「ねぇ!待って!工場の様子がおかしい!」
みると工場の至る所にヒビが入ったせいか崩れ始めていた。
工場が崩壊を始めた。
ヴィス:「工場が崩れる!外に出ろ!」
ミーフィ:「外に…出るの!?」
アレン:「確かな安全は保証できないけど…」
ルオナ:「どっちにしろここにいたらみんな倒壊に巻き込まれて潰されるよ。」
人形たちは決意を固めた。
レイア:「出口はこっちよ!!」
メアリー:「急いで!」
レイアとメアリーが早速誘導に動いた。
シャルル:「行くぞ!」
ライル:「めんどっ!」
イヴ:「怖い、でも、行くです!」
トラウム:「仕方ないですね…」
生き残りの人形たちが外に脱出し始めた。
落下してくる瓦礫はだんだんと大きなものになってくる。
メトリ:「リーヴァ、ヴィス、私たちも行こう。」
ヴィス:「ああ。そうだな。…大丈夫かリーヴァ。」
リーヴァはふらつきながらも
リーヴァ:「…大丈夫。急ごう。」
そう言って3人が走り出したその時、
突然頭上からコンクリートの瓦礫が落下してきた。
ヴィス:「!!」
ヴィスはリーヴァを庇い、瓦礫の下敷きになった。
リーヴァ:「ヴィス!!」
リーヴァはヴィスのもとに駆け寄る。
ヴィス:「早く逃げてくれ…リーヴァ…」
リーヴァは首を横に振った。
リーヴァ:「イヤ…あなたと一緒に…」
ヴィスは悲しい表情になってこう応えた。
ヴィス:「…ダメだ。リーヴァには笑顔でいて欲しいから…」
そう言ってリーヴァに自身が身につけていた白いマフラーをかけた。
ヴィス:「このマフラーを託す。僕も外の世界に連れて行って…__愛しのリーヴァ__」
そう言うとヴィスは穏やかな笑顔で眠りについた。
リーヴァ:「…ヴィスっ…!!」
リーヴァは震えながらもヴィスに口付けし、
視界がぼやけながらも立ち上がり、瓦礫が崩れる工場の中を力の限り走った。
リーヴァ:「__ごめんなさい…!__」
---
工場の外に出ると、もうXの呪いは機能していなかったようで
逃げ延びた人形たちは無事だった。
ルオナ:「リーヴァ!!」
メトリ:「リーヴァ!無事で良かった!!…ヴィスは?」
リーヴァは肩を震わせて唇を噛んだ。
リーヴァ:「ごめんなさい…ヴィス…」
メトリとルオナは何も言わずに優しくリーヴァを抱きしめた。
すると
???:「あの人、なら…私の能力で…今のところ無事よ。」
振り返るとボロボロのシルヴィーが動かないヴィスを連れて
今にも崩れそうな工場の中から声をかけていた。
シルヴィー:「早く、この人を…連れて行きなさい…」
リーヴァとメトリとルオナは一目散に駆け寄った。
リーヴァ:「ヴィス!シルヴィーさん!」
まずヴィスを崩れる瓦礫の中から救出する。
メトリ:「シルヴィーさんも!」
メトリが手を伸ばした瞬間、頭上から鉄柵が落ちてきた。
シルヴィー:「!!」
リーヴァ:「シルヴィーさんっ!?」
シルヴィーは首と体がなき別れになり、
「|je suis une poupée…《私は人形》」
最後にそう言って動かなくなった。
リーヴァ:「そんな…!」
ルオナ:「大変だ!工場が完全に崩壊するよ!」
メトリ:「シルヴィーさん…」
ルオナが立ちすくむ二人と動かないヴィスを引きずって、工場の外へと脱出した。
---
工場があった場所には今はコンクリートの瓦礫と、
色とりどりの可憐な花が咲く庭と
壊れかけのロッキングチェアがあるだけだった。
するとレイアが4人の元に駆け寄ってきた。
レイア:「みんな大丈夫?彼の救護は任せて。」
レイアがヴィスを連れて治療に動いてくれた。
リーヴァ:「シルヴィーさん…」
メトリ:「私がもう少し早く手を伸ばしていたら…」
リーヴァたちはシルヴィーに対する後悔と感謝とヴィスが無事だったことへの安堵
が入り混じった複雑な気持ちになって涙が溢れてきた。
ルオナ:「シルヴィーさんは…完璧な人形だよ。」
リーヴァとメトリは静かに頷いた。
---
人形たちはこれからの道を決めようとしていた。
アレン:「これからどうする?」
人形たちは俯いて考え込んだ。
イヴ:「私、外の世界に、行ってみたい、です。」
イヴがそう呟くと周りの人形たちがそうだ!外の世界で暮らせるんだ!
と浮き足立った。
その様子を見て
トラウム:「自分は御免ですね。変化は嫌いです。」
釣れない様子でそう言うとトラウムはいつも座っている
ロッキングチェアのところへといってしまった。
ミーフィ:「お外気になるな〜!行ってみたいな〜!」
次にそう言ったのはミーフィだった。
アレン:「でも、危険かもしれないよ?」
アレンが優しく諭す。
ミーフィ:「怖いのはやだな…」
ミーフィは残ることに決めたようだ。
レイア:「私も残るわ。メアリーはどうする?」
レイアがそう聞くと、少し迷った様子だったけれども、すぐに
メアリー:「私、ここに残るわ。ルークとの思い出がたくさんあるから。」
と答えて笑った。
ルオナ:「僕も残るかな。」
ルオナが疲れたように笑って言う。
ルオナ:「…リーヴァたちはどうする?」
そう聞かれたリーヴァとメトリは
メトリ:「私は、リーヴァの相棒だから、リーヴァについていく。」
メトリはリーヴァの手を優しく握る。
リーヴァ:「あたしは…うん。外の世界に行ってみる。」
リーヴァの答えを聞いたルオナは少し寂しそうに笑った。
ルオナ:「…そうか。新しい世界に行くんだね。」
ミーフィ:「シャルルお兄ちゃんとライルお姉ちゃんは?」
シャルル:「俺は、外に行く。」
ライル:「私も…行くよ。」
周りがどよめいた。
ライル:「何よ。私が外へ行くことのどこが変だっていうの?」
アレン:「君がその選択をすることが意外だったからさ。」
ミーフィ:「めんどくさーい!って言うと思った!」
ライルはそっぽをむきながら。
ライル:「ほっといてよ。」
そう言ってそそくさと工場の敷地外へと歩き出した。
イヴ:「イヴも、そろそろ、行く、です。」
シャルル:「俺も行く。」
外に行きたい派閥の他の人形たちも工場の出口に向かって行った。
みんなが外の世界に向かって歩き出した頃。
リーヴァ:「ヴィス、大丈夫かな…」
リーヴァとメトリはレイアの元を訪れていた。
レイア:「あら、二人とも。もう治療は終わってるわよ。」
芝生の上にヴィスが横たわっていた。
ヴィス:「…おはようリーヴァ。今日も一段と美しいね。」
ヴィスが目を開いて、|柔和《にゅうわ》な笑顔でそういった。
リーヴァ:「ヴィス!!」
リーヴァはヴィスに駆け寄る。
メトリ「…良かった。」
メトリは嬉し涙を隠して遠目で見ていた。
ヴィス:「リーヴァたちはこれからどうするんだ。」
ヴィスが二人に聞く。
リーヴァ:「あたしたち、外の世界に行くことにしたの。」
メトリ:「あなたはどうする?」
ヴィスは少し考えてから、
ヴィス:「僕も行こう。」
服についた青い草を払って立ち上がる。
そしてリーヴァの握っているマフラーにちらりと目をやる。
ヴィス:「それはもうリーヴァのモノだよ。自由に使っていい。」
リーヴァは手元に目をやる。
リーヴァ:「ありがとう。」
そしてマフラーを首に巻くとみんなの元に戻った。
リーヴァ:「みんな、しばしのお別れだね。」
そう言うとなんだか寂しくなってきて言葉が続かなくなった。
アレン:「メトリ、ヴィス、そしてリヴァ。君たちとの日々はとても楽しいものだったよ。また会おう。」
ミーフィ:「お姉ちゃんたち行っちゃうんだね…寂しくなるけど、いつか私が大きくなって外に行った時は、外の世界を案内してね!」
トラウム:「特に言うことはありません。きっとまた会えますから。」
レイア:「怪我したらここに戻ってくるのよ。私が直してあげるわ。」
メアリー:「みなさん、お元気で。…ルークのことも忘れないでね。」
ルオナ:「リーヴァ、お別れなんて言わないでよ。絶対にまた会おうね!」
リーヴァ:「みんな、ありがとう!」
メトリ:「またね!」
ヴィス:「それじゃ。」
そう言って3人は新たな旅路に一歩踏み出した。
皆さんのおかげでここまで書ききることができました!
拙い文章とストーリーでしたが最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます!
叶えることのできなかった要望もあったとは思いますが、おおめに見てください!
本編は終了してしまいましたが、もしどなたかキャラの過去などを深掘りしたスピンオフやイラストなどを書きたいという方がいらっしゃいましたら、バンバンかいてください!
私は次は新作をかくかもですし、番外編を書くかもしれません。というか現在、番外編を書いています!
改めて、「廃工場のビスクドール」を読んでいただきありがとうございました!
第33話 守護
先ほどよりも大きな歪みが押し寄せてきた。
メトリ:「まずい!全員巻き込まれる!!」
その時
イヴ:「っっビューティフリュバン!!」
イヴがみんなを庇うようにして前に出た。
イヴの髪からパステルピンクのリボンが生成され、その場の人形たちを包み込む。
押し寄せてきた床や壁はリボンに遮られ、人形たちの元には届かなかった。
ルオナ:「た、助かったよ…」
ミーフィ:「ありがとう!」
イヴ:「よかった、です…」
そう言うとイヴは疲労で倒れてしまった。
レイア:「大丈夫!?しっかり!この子は私が介抱するわ。」
レイアがイヴを攻撃の届かないところに連れて行った。
危機を脱しホッと安堵する人形たち。
しかし依然、戦いは停滞状態を余儀なくされている。
ブロード:「まさかあの攻撃を防ぐとは…感心ですね。」
どこかからブロードが驚いたように呟く。
アレン:「一体、攻撃を当てるにはどうすればいいんだ…」
ルオナ:「一つ心当たりがあるよ。」
ルオナはそう言ってリーヴァの方を見る。
リーヴァはキョロキョロとして、自分を指差す。
リーヴァ:「あ、あたし!?」
ルオナは続ける。
ルオナ:「確か、リーヴァの能力って辺りを照らす力だったよね?鳥から聞いたんだ。」
ヴィス:「そうか。この場が明るくなれば、攻撃も当てやすくなる。少なくとも今よりは。」
メアリー:「そういえば、あの時の光、とても眩しかった…」
メアリーが思い出したように目を細める。
リーヴァは自分の掌を見る。
リーヴァ:「わかった。やってみる。」
リーヴァがブロードに向かって唱える。
リーヴァ:「ヴィトロルミエール!!」
短いですね…
第34話 光
リーヴァ:「ヴィトロルミエール!!」
リーヴァが工場内に大きく響き渡る叫びを発した後、
工場内が真昼のように眩しい光で満たされた。
ブロード:「またこの光かっ!!」
ブロードが顔を両手で覆ったその時、
リーヴァが発した光の粒が至る所で破裂し始めた。
ヴィス:「なんだこれは!?」
トラウム:「光が…!」
ブロードは瞬く間に炎に包まれた。
ブロード:「目が…服がぁ…!」
一心不乱に火をかき消そうとする。
アレン:「やるなら今しかない。」
周りは頷いてブロードに畳み掛ける。
ヴィス:「ジャッジ・アイ。」
メトリ:「サイコキネシス!」
シャルル:「水晶監獄!」
ミーフィ:「マリオネット!!」
アレン:「グラン・カルマ!」
ルオナ:「ルボネテレパシー!」
ライル:「っべルフェゴール!」
トラウム:「アンフォームド・エターナイト。」
ブロードは絶体絶命、かと思いきや
ブロード:「あぁ…愚かですねぇ…」
そう言って鎮火したボロボロの姿で笑い、攻撃自体をワープさせた。
リーヴァ:「なっ…」
攻撃は跳ね返り、人形たちはその攻撃を喰らってしまった。
ライル:「まさか…自分自身に…グゥ。(眠りに落ちた)」
シャルル:「嘘だろ…閉じ込められた。」
アレン:「重力が…重い…!」
トラウムは一時的に行動不能になり、メトリは浮かび上がり、
ルオナもミーフィもヴィスも跳ね返りの衝撃を喰らい、
リーヴァも巻き込まれ跳ね飛ばされた。
ブロード:「終わりです。」
ブロードが空間を歪め始める。
全員が諦めかけたその時。
あの灰色の猫が突然現れてブロードに飛びついた。
ブロード:「な、なんです!?この猫!?」
猫:「シャー!!」
その瞬間、今まで見ていることしかできなかった人形たちが
チャンスを見計らってブロードに一斉攻撃を始めた。
「うおおおおお!!」
「いけええ!」
「絶対に仕留める!」
ブロード:「クッ…小癪な!」
ブロードは四方八方から攻撃をくらい倒れた。
ブロード:「…はぁ…ここまでやったと…言うのに。」
右側の目の当たりをおさえる。
ブロードの頭の右側が潰れてボロボロと崩れた。
ブロード:「|私《わたくし》は…優秀ではなかったと言うのか…?」
そしてそのままブロードは倒れて動かなくなった。
次回最終回です!
廃工場のビスクドール〜番外編①〜
最終回のその後の話です。
工場を旅立ったリーヴァ、ヴィス、メトリ。
3人は期待と不安がないまぜになった気持ちで歩を進めていた。
すると後ろからあの灰色の猫がリーヴァに飛びついてきた。
リーヴァ:「うわぁ!」
3人は突然のことに驚いた。
ヴィスとメトリはいつものように猫を引き離そうとするが、
リーヴァ:「二人ともいいの。…ありがとう猫さん。あなたのおかげで私たちは無事だった。」
リーヴァが二人を制止して猫に感謝を伝える。
ヴィス:「確かに、それもそうだな。」
メトリ:「だね。ありがとう猫さん!」
二人は戦闘態勢を解き、朗らかな表情に戻った。
猫も加わりしばらく歩いていると、
先を歩いていたライル、シャルル、イヴと合流した。
イヴ:「あ!リーヴァさん、たち、です!」
リーヴァ:「あ!みんな!」
6人は再会を喜んだ。
ライル:「ところで、これからどうすんの。」
ライルが猫を撫でながら問いかける。
6人はうーんと考え込んだ。
メトリ:「とりあえず、街に行ってみようよ!」
イヴ:「気になる、です。」
リーヴァ:「そうだね。街で暮らす人を見てみたいし!」
ヴィス:「同意だ。」
シャルルも頷いた。
シャルル:「俺も爺さんが暮らしていた家を見に行きたい。」
こうして6人は工場の麓の街に向かい始めた。
---
たどり着いた街は絵本で見るようなメルヘンな建物が立ち並ぶ小さな街だった。
リーヴァ:「ここが…人の街…」
メトリ:「わぁ…」
イヴ:「人が、いっぱい、です…!」
ライル:「…」
ヴィス:「哺乳類…」
シャルル:「人間が多いな…」
この街の人々はパンを売ったり、井戸端会議をしたりして
のんびりとしながらも生き生きとした街を形成していた。
すると街の一人の人間が人形たちに気がついた。
人間(子供):「ねえ!マミー!道に人形が落ちてるよ!」
人間の少年は嬉々として母親らしき人間を連れてくる。
人間(母):「あら?こんなところにフランス人形?誰かの落とし物かしら…」
リーヴァはすかさず自己紹介をする。
リーヴァ:「私はリーヴァ。山の上の工場からこの街にやってきたの。だから全然この街のこと知らなくて…案内してくれな…」
そんなことを喋っているうちに、母親の顔はみるみる青くなり、
人間(母):「な、な、な、何!?人形が…喋った!?」
大声をあげて驚いた。声からして怯えているのがわかった。
声に驚いた周りの人間たちの視線が一気に人形たちに注がれる。
メトリ:「なんだか…注目浴びてない?」
シャルル:「一旦引くぞ。」
リーヴァたち人形は人の目につかない生垣の裏に急いで避難した。
イヴ:「どうして、あんなに怖がっていた、です?」
イヴが不思議に思って尋ねる。
ヴィスはズレたメガネを押し上げながら
ヴィス:「おそらく、人形が動いたりすることが人間にとってはおかしなことなのだろう。」
ライル:「めんどくさ…幽霊とでも見間違われたんじゃない?」
メトリ:「幽霊…」
リーヴァ:「そんな…怖がられるなんて想像もしてなかった。」
6人は困った表情でこの先のことを考える。
すると、
???:「君たち、ここで…何をしているんだ…?」
見覚えのある人物が現れた。
廃工場のビスクドール〜番外編②〜
突如現れた人物は、みすぼらしい格好をしていた。
リーヴァ:「あなたは…!!」
その場にいた人形は全員目を見開き驚いた。
人形一同:「 X …!?」
その人物はいつもと服装は違うが紛れもない X だったのだ。
X ?:「お久しぶり…でもないな。」
X は微笑を|湛《たた》えながら遠い目になって人形たちを見る。
X :「ドールたちに辛い思いをさせてしまい、|私《わたくし》も申し訳なかったと思ってはいるんだ。」
X は少し悲しそうな瞳をして空を見上げた。
ヴィス:「では、なぜあのようなことをした?」
ヴィスが聞くと X は
X :「ここで長話もなんだ、一旦|私《わたくし》の家に移動しよう。」
そう言って、家までの道を歩き出した。
---
X の家は質素なものだった。
家具としては木のミニテーブルと椅子、クローゼットがあるだけだった。
X :「どうぞそこら辺に座ってくれ。」
X が木の椅子を指し示す。
リーヴァたちは家の中をジロジロと見回す。すると
メトリ:「あれ?ここなんか変?」
そう言ってメトリが妙な壁の膨らみを押すと、
ゴゴゴゴゴ…といって壁が開き、隠し部屋が現れた。
人形たちはびっくりする。
ライル:「急に何?」
メトリ:「まさか開くとは…」
リーヴァ:「驚き…」
X :「おや。その隠し部屋に気が付いたか。さすが|私《わたくし》の賢いドールたちだ。」
X はそう言って自分用の紅茶を入れて持ってきた。
X :「この部屋は工房となっている。まぁ、|私《わたくし》はあまり使っていないが…」
するとリーヴァは、シャルルがさっきからずっと眉間に皺を寄せて
何やら考え込んでいることに気がついた。
リーヴァ:「シャルルさん。どうしました?」
シャルルは眉間に皺を寄せながら呟いた。
シャルル:「…ここは俺を作った爺さんの家だ。」
リーヴァ:「へぃあ!?」
リーヴァは素っ頓狂な声をあげて驚いた。
それを聞いたリーヴァ以外の人形たちは首を傾げた。
イヴ:「シャルルさんは、工場の生まれじゃ、ない、です?」
メトリ:「私も初耳だよ。リーヴァは知ってたの?」
リーヴァはうん。と頷く。
シャルル:「言う必要もないと思ってな…俺のマスタは不思議な力を持っていて、作った人形に命を吹き込むことができた。そして生まれたのが俺だ。」
人形たちは目を見張って驚く。
すると X が話し始めた。
X :「やはりそうだったか、シャルル。あなたは|私《わたくし》の師匠が作ったドールだったんだね。」
X が紅茶を飲む。見窄らしい服を着ていることを忘れるほどの優雅な所作で。
X :「私の師匠はとても腕の立つ職人だった。それはもう弟子に一生追いつけないと思わせる程度には。…しかし、」
そう言って飲みかけの紅茶に視線を落とす。
X :「|私《わたくし》はどうしても追いつきたく、何度も何度も師匠の技を見ては盗み見ては盗み…その繰り返しでやっと命を持つ人形を生み出すことができた。…あの時の感動は今思い出しても涙が出てくる。」
ヴィス:「その人形というのがブロードか。」
X は静かに頷いて、話を続ける。
X :「しかし、師匠は|私《わたくし》を褒めてはくれなかった。それどころか、お前はもう私の弟子ではないと…」
シャルルが静かに憤って X を睨みつける。
シャルル:「爺さんがそんなことを言うわけないだろう。あの人は優しくて穏やかで…よっぽどのことがない限り笑顔を絶やすことはなかった…」
リーヴァ:「シャルルさん…」
X は困った表情をして
X :「しかし、本当にそう言われたんだ。…そして、師匠を見返すために私はドールの生産と選別を始めた。…あの人に認めてもらいたかった。ただそれだけなんだ。本当に申し訳ない…」
何だか X が可哀想になってきた。
しかし、やはり心の傷は癒えない。
ルビーもルークもシルヴィーさんも…ブロードや他の人形たちだって…
戦いの中で散っていった人形たちを思い出すたびに
リーヴァたちの心はズキズキと痛んだ。
しかし X の気持ちも理解できないわけではなかった。
二つの立場に挟まれて人形たちは複雑な気持ちになった。
シャルル:「それにしても…爺さんがそんなことをなんの意味もなく言うはずがない。きっと何か理由が…」
するとメトリがふと閃いた。
メトリ:「そういえば、メアリーと話した時に聞いたんだけど、メアリーの能力って人の記憶を覗けるらしい。」
その話を聞いてシャルルは
シャルル:「もしかしたら X でさえ気がついていない X の落ち度がわかるかもしれない。」
無表情ながらもどこか希望が宿った瞳に変わったことが微かにわかった。
ライル:「え。…ってことは、また工場に戻るってこと!?めんどくさっ!」
ライルが行きたくないと駄々をこねる。
メトリ:「まぁまぁ。またみんなに会えるんだし!…ちょっと早すぎる気もするけど。」
イヴ:「みんなで、いく、です!」
ヴィス:「…」
リーヴァ:「やったー!」
こうして人形たちは X を連れて廃工場『アミアンジュファクトリー』に一旦戻ることになった。
当初予定していた流れと全然違う方向に進み出しました…
自分でもこの先どうなるかわかりません!
廃工場のビスクドール〜番外編③〜
一旦廃工場に戻ることにしたはいいものの
このまま人間と人形が一緒に歩いているとまた目立ってしまうので、
布をかけた荷車に乗って X に引いていってもらうことにした。
ヴィス:「人間の足のほうが早いしな。」
ライル:「まぁ、楽だし、いいわ。」
イヴ:「ガタ、ゴト、揺れて面白い、です。」
猫:「にゃん ♪」
シャルル:「爺さんは何も悪くないんだ。証明してみせる。」
すると荷車が急に止まった。
リーヴァ:「到着した?」
メトリ:「にしては早すぎない?」
荷車にかかった布をどかして外の景色を見てみると、目の前に廃工場の入り口があった。
メトリ:「人間の足って…早いのね…」
人形が小一時間かけて降りてきた道をたった数分で登ってきた人間の力に驚きつつ、
みんなは荷車を降りて工場内に入っていった。
---
工場に着くと
野原で花冠を作っているミーフィが最初にリーヴァたちに気がついた。
ミーフィ:「お姉ちゃんたち!?どうして…まさか怪我でもしたの?」
心配そうに人形たちをみていると、その後ろから来る X に気がついた。
ミーフィ:「わあ!? X だ!!」
その声を聞きつけてアレン、ルオナ、レイアがやってきた。
アレン:「リヴァ!?しかも X まで?」
ルオナ:「一体全体どういった状況!?」
レイア:「だ…大丈夫なの!?みんな…」
リーヴァはパニックになっている3人を落ち着かせようと
リーヴァ:「大丈夫だよ、みんな。さっきお別れしたばかりだけど、少し頼みたいことがあって戻ってきたの。メアリーを呼んで欲しいのだけど…」
そんな話をしていると
メアリー:「私に頼みたいこと?…何かしら。もちろん協力するけれど…」
メアリーが現れた。そしてチラリと X を見る。
メアリー:「どうして彼が?」
シャルル:「実は…」
軽い説明が終わると、メアリーは小さく頷いて
メアリー:「なるほど。それで私の力を借りたいと…わかったわ。今から X の記憶をのぞいてみるから、ちょっと待っててね…」
メアリーは深呼吸して集中する。
メアリー:「Timereader」
---
しばらくしてメアリーは瞼を開けた。
メアリー:「記憶をのぞいてみたけど、シャルルさんの話とは少しずつ食い違っている部分があるの…」
メアリーは首を傾げながらシャルルと X に聞く。
メアリー:「お師匠さんとお爺さんのお名前を伺ってもいいかしら?」
シャルル:「ベネットだ。」
X :「レーゼンです。」
シャルルと X は顔を見合わせる。
メアリーは全てを理解したように
メアリー:「記憶の中のお師匠さんはこう言っていたの。
『私のベネット師匠は偉大なる方だ。お前のようななんの愛情も人形に抱けないものは人形職人失格だ。もうお前は私の弟子ではない。』と。」
シャルル:「つまり… X の師匠は爺さんではなく、爺さんの弟子だった、と言うことか?」
シャルルが眉をひそめて聞き返す。
メアリー:「そう言うことに、なるわね。」
シャルルはため息をつき、
シャルル:「なんだ…勘違いか…」
そう言って安堵した表情になる。
X :「人形に…愛情を抱いていない…?」
その反面 X は頭を抱えて何やらぶつぶつと独りごちていた。
X :「私は、人形を愛していたはずだ…なぜ師匠はそんなことを。」
心の奥底に閉じ込められた記憶が蘇り、自問自答する X のもとに
レイアがやってきて悲しそうな目で見つめた。
レイア:「本当に人形に対して愛があったのなら、きっとあんな酷いことはできないわ。あなたは自分では気がついていないのかもしれないけれど…きっと、愛を知らないのよ。」
それはレイアが長年溜め込んできた悲痛な叫びだった。
レイアの目には涙が溢れ出す。
レイア:「少し…向こうに行っているわね…」
そう言って|人気《ひとけ》のない場所に行ってしまった。
リーヴァ:「レイアさん…」
みんなは心配そうにその背中を見送り、X に向き直った。
イヴ:「X さん、イヴは、生まれて来られて、嬉しかった、です。でも、X さんは、嬉しかった、ですか?」
イヴがそう X に問いかけると、X は目を丸くして自分の心の声に耳をすませた。
X :「…わからない。|私《わたくし》は…一体今まで何を感じていたのだ…?」
X はまたもや頭を抱えた。
人形たちは見ていることしかできなかった。
するとアレンが X にいった。
アレン:「人形作りは誰かに認めてもらうためにやるのではなく、誰かに愛されるような人形を生み出すことが最も大事だと、俺は思うよ。」
周りのみんなも頷く。
ルオナ:「認められなくても、自分が好きだと思ったものを信じる。そうしたら本当に愛せるようになるんじゃない?よくわかんないけど。」
ルオナが肩をすくめる。
リーヴァ:「今まで人形に対して愛情のかけらもないようなことをあなたは平気でやってきたけど、心の底にはまだ愛情が残っているはず。」
その言葉を聞いて X は過去のことを思い出した。
---
初めて一人で完成させた人形、ブロードを作った時のことだった。
あの時、X は達成感を感じていた。
X :「やあ、おはよう。ブロード。」
ブロード:「貴方は・・・?」
ブロードはとても綺麗な透き通った赤い瞳を持っていた。
その瞳は ブロードのシルクハットを縫い直している X の姿を映し出す。
ブロードは不思議そうに X を見つめていた。
X はブロードのダークグリーン色の髪で覆われた頭を撫でる。
X :「君はきっとなれるだろうな。ブロード。」
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X は抱えていた頭から手を離し、深呼吸をした。
あの時、なぜ自分はブロードの頭を撫でたのか、
今まで理解ができていなかったが、やっと X は気がついた。
X :「そうか、師匠…|私《わたくし》は、今の今まで知らなかったんだ。ものは、所詮ものだと思っていたが。それは違った…」
X は先ほどまでの魂の抜けたような様子とはうって変わって、
瞳に生気を取り戻した表情へと変わった。
X :「みなさんありがとうございます。そして…すみませんでした。ひどく辛い思いをたくさんさせてしまい…償っても償いきれません。」
X はレイアが向かっていった方向に目をやる。
X :「本当に苦しい思いをさせてしまった。」
シャルル:「まだ、終わってないだろう。お前は最低なやつだったけど、腐ってもここにいる人形たちのマスタなんだ。最後まで面倒を見ろ。」
メトリ:「あなたは一部の人形からはもんのすごい嫌われているけれど、それがみんなをほっとく理由にはならないからね。」
X は少し微笑んで
X :「そうですね。」
そう言ってこれからのことと向き合った。
夜珊瑚さんの「私の心残り。」から少し引用させてもらいました!
https://tanpen.net/novel/457f08a8-f7b8-4c9c-8458-78f74069a358/
廃工場のビスクドール〜番外編④〜
再び工場の人形たちと別れたリーヴァたちと猫は
もう一度さきほどの街に向かおうとしたが
X と同じ街にいるというのはいささか気が引けたので別の街を目指すことにした。
途中まで X に荷車で送ってもらい、麓の町で別れた。
X :「お元気で!」
リーヴァ:「あなたもお元気で!」
---
X と別れた後、近くに流れる小川のそばを歩きながら
ライル:「はぁ…まさかこんなことになるなんてね。」
イヴ:「X さんとあったときは、とても、驚いた、です!」
メトリ:「しかも実際はあんな人だったんだね〜雰囲気が違いすぎて。」
リーヴァ:「人間には裏の顔があるんだね…」
しばらく歩いているとまた別の街が見えてきた。
ヴィス:「何か、妙な香りがしないか?」
人形たちは香りを嗅いでみる。
メトリ:「確かに。」
シャルル:「これは…潮の香りだな。」
シオノカオリ?とリーヴァは聞き返す。
ヴィス:「本で読んだことがある。『トリメチルアミン』や『ジメチルスルフィド』という成分から発せられる匂いだな。海岸に打ち上げられた腐敗した魚に含まれる成分らしい。」
リーヴァ:「ほ〜…何言っているのかよくわからないなぁ?」
リーヴァにそう言われヴィスは少しショックを受けたような表情になった、気がした。
ライル:「つまりは海が近くにあるってこと?」
ライルが少し興味を持った様子で尋ねる。
シャルル:「そうだな。きっとあの街は港町なのだろう。」
ライル:「ふーん…」
イヴ:「海…!初めて見る、です…!」
メトリ:「楽しみっ!」
リーヴァ:「早く行きたい!」
そう言ってリーヴァとイヴとメトリが走り出した。
ヴィス:「リーヴァ!走ると危ないぞ!」
走り出すリーヴァたちに向かって注意喚起したヴィスだったが聞こえていないようだった。
シャルル:「全くだ。」
ライル:「…めんど」
猫:「にゃー」
---
たどり着いた港町は先ほどまでいた小さな街とはうってかわって賑やかな様子だった。
市場で魚の競りをしている人間の大声や子供たちのはしゃぐ声などで大盛況だ。
ライル:「う、うるさい…」
ヴィス:「人が多すぎる。見つからないように移動しよう。」
人形たちと猫は比較的人が少なく、静かなところへ移動した。
リーヴァ:「どうする?」
リーヴァがみんなを見渡すとイヴがいなくなっていることに気がついた。
リーヴァ:「あれ!?イヴは!?」
他のみんなも気がついていなかったようだ。
メトリ:「嘘!?はぐれちゃった?」
ライル:「あ〜これだからめんどい…」
シャルル:「とりあえず探しに行こう。」
人形たちはイヴの捜索に動いた。
---
イヴが人間に見つかり騒がれたらすぐにイヴの場所がわかるのだが、
そうなってはたまらない。
大至急イヴを見つけるため街を隅から隅へと探し回った。
しかし、一向に見つからない。
シャルル:「一体どこへ行ったんだ?」
ライル:「本当にめんどっ!」
リーヴァ:「もしかして誰かに…」
メトリ:「連れ去られた…とか…」
ヴィス:「縁起でもないことを…いや、あながちハズレでもないかもしれない。」
ヴィスが指差した先には豪華な屋敷があった。
その屋敷に入っていく少女の腕の中にはイヴがいた。
リーヴァ:「イヴ!?」
メトリ:「追いかけよう!」
シャルル:「まさか本当に…!」
人形たちは屋敷の中に入ろうとかけ出したが、門は閉じられてしまった。
リーヴァ:「そんな…」
ライル:「もうどうしろっていうの?」
立ち往生していると猫がにゃ、と言って背中に乗るようリーヴァに促した。
リーヴァ:「え、ここに乗るの?」
リーヴァが猫の背中に乗ると、猫は急に大ジャンプをして屋敷の塀に飛び乗った。
一同:「リーヴァ!?」
リーヴァ:「え〜!!」
そうして屋敷の敷地内に侵入していった。
---
屋敷の中はとてつもなく豪華で床は大理石、天井には特大サイズのシャンデリア、
赤いカーペットの敷かれた大きな階段など
まさにお金持ちといった感じの内装だった。
2階を見るとさっきの少女が部屋に入っていくのが見えた。
リーヴァ:「猫さん、お願い!」
猫:「にゃー!」
猫はスルスルと階段を駆け上がり、少女が入っていった部屋の扉の前で止まった。
そして扉をカリカリと引っ掻き始める。
少女:「どちら様?」
少女が扉を開けて出てくる。その隙に部屋に侵入する。
少女:「猫さん…とお人形さん!?」
少女は驚いているがそんなのはお構いなしにイヴを探す。
リーヴァ:「イヴ!どこなの?」
イヴ:「リーヴァさん。イヴは、ここで、暮らす、です!」
その声に見上げるとイヴは透明なミニテーブルの上で幸せそうな笑顔で踊っていた。
イヴ:「イヴは、素晴らしい人に、出会った、のです!」
少女:「イヴちゃん、その子達はお友達なのですか?」
少女とイヴが仲良く会話している。
リーヴァ:「あ、あの…人形が喋っていても、怖くないの?」
リーヴァは不思議そうに尋ねる。
少女:「どうしてですか?とても楽しいことじゃないですか!」
少女はイヴを持ち上げて抱きしめる。
聞いたところさっき|逸《はぐ》れてしまった時にこの少女がイヴを拾い
その時に仲良くなったらしい。
イヴ:「イヴの夢は、素敵な持ち主さんのために、踊ること、です。ここなら、その夢、叶います!」
イヴはここから去る気は微塵もないようだ。
リーヴァ:「ここで暮らすんだね…わかった。…それじゃ、お別れの挨拶をしなくちゃ!」
寂しさを堪えつつ、リーヴァはみんなの元へイヴと少女と共に戻った。
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メトリ:「心配したよ〜!二人とも〜!」
ヴィス:「リーヴァ大丈夫か…二人とも無事でよかった。」
シャルル:「アレは?」
ライル:「人に向かってアレは失礼じゃ…どうでもいいか…」
イヴは少女を紹介する。
イヴ:「彼女は、アリッサさん、です。イヴの、持ち主になってくれる人、です。」
人形たちは突然のことに驚く。
リーヴァ:「寂しいけれど、イヴとはここでお別れみたい…」
メトリ:「イヴとの旅、とても楽しかった!元気でね!」
メトリがイヴに別れのハグをする。
ヴィス:「戦いの時、攻撃から守ってくれて助かった。」
表情ひとつ変えないが少し寂しそうにヴィスが言う。
ライル:「イヴのダンス、綺麗で悪くないわ。面倒だけど、また見にくるかも。」
ライルはそっぽを向きながらも微かに微笑んで言った。
シャルル:「元気でな。|繕《つくろ》ってくれたこの服も大事にする。」
シャルルは感謝の意を伝える。
リーヴァ:「また、会おうね!」
リーヴァは笑顔で別れを告げる。
イヴ:「みなさん、またね、です!」
そうしてイヴは新しい家で新しい暮らしを始めた。
一行はまた新たな街を目指し始めた。
廃工場のビスクドール〜番外編⑤〜
次の街に向かい歩き出した一行。
リーヴァはふと疑問に思ったことをライルに聞いてみた。
リーヴァ:「そういえば、どうしてライルは工場に残らなかったの?」
後ろを歩いていたライルは顔を上げて
ライル:「そんなの、工場が崩れて汚くなったからよ。」
そう言って横を歩いていた猫を撫で始めた。
しかし、ほかにも何か理由があるようだった。
メトリ:「でもさ、こんな面倒くさそうなことライルだったら絶対しないと思ったんだけどな。」
メトリがライルの方を見る。
ライルは猫から手を離してため息をつき、
ライル:「そんなに知りたいなら教えてあげる。…私、昔は持ち主がいたの。」
ライルは自身の過去について話し始めた。
ライル:「まだ X がくる前の話。あの工場で生まれた後、ある少女のもとに渡ったの。当時はとても楽しかった。だけど…」
ライルが言葉を濁す。
ライル:「あの子は成長して私なんてもう必要なくなった。埃まみれカビまみれの押入れで何年も何年もひとりぼっち…おかげで片目は変色するし、髪はボロボロになって切れるしでもう最悪!それであの家で動かないただの人形としてずっと過ごしていたの。そうしたら…」
リーヴァ:「そうしたら…?」
興味津々な様子で聞き返す。
ライル:「そうしたら、1年前に X が現れてあの工場に私を連れていき、新しい居場所と力を与えた。つまり私は正確にいえば、X につくられたわけではないの。」
リーヴァ:「えぇ!?そうなの?」
ヴィス:「どうりで君に見覚えがなかったわけだ。X から紹介されていないわけだからな。」
メトリ:「そう言うことだったんだ〜」
シャルル:「なるほど…つまり、その持ち主にもう一度会いたいと?」
シャルルがそう聞くとライルはそっぽを向いて
ライル:「別に…」
…誤魔化した。
そんなことを喋っているといつの間にか次の街についていた。
今度の街はビルや鉄塔が立ち並び窮屈そうな所だった。いわゆる都会である。
日も暮れかけていたので、ライトアップされた景色がよく映える。
ライル:「ここ…なんて綺麗…ゲホゴホ!…やっぱ汚い、無理!」
この街は発展しているがゆえに排気ガスやタバコの煙など
あまり清潔とはいえないものが充満していた。
ヴィス:「リーヴァ、ここは体に毒だ。マフラーで口元を押さえて。」
リーヴァは言われた通りに押さえる。
他のみんなも排気ガスを吸い込まないように対応する。
すると、
???:「ライル…?」
どこかからライルを呼ぶ声が聞こえた。
ライル:「誰…?」
ライルが声の出所を探して見上げると
???:「やっぱり。ライルだ!」
大人の女性がライルを持ち上げた。
ライル:「なに!?お、おろして!」
その声を聞いた女性は目を見開いて驚く。
???:「しゃ、喋った?…まさかね。それにしても、どうしてこんなところに?」
ライルをジロジロと見回す。
ライル:「汚い手で触るなっ!…って、」
ライルは女性の目を見てあることに気がつく。
ライル:「もしかして…スーラ?」
???:「やっぱり喋ってる!車とかの音で全然聞こえなかった…そんな機能もあったなんて驚いたわ。って、今私の名前を呼んだ!?」
スーラは持ち上げたライルをまじまじと見つめる。
ライルはスーラを緊張と喜びと驚きの混ざった表情で見つめる。
リーヴァ:「あの…二人って知り合いなの?」
リーヴァが問いかけるとスーラは
スーラ:「うわぁ!人形が動いた?」
仰天してライルを落としそうになった。
ライル:「ちょっと…!危ないじゃない!」
少しの間スーラの中でパニックが起きているようなので
時を待って落ち着いた頃に再度話しかけてみた。
メトリ:「…で、二人はどういった関係?」
メトリが落ち着いた調子で聞く。
まだ混乱しているスーラを尻目にライルが答える。
ライル:「彼女は私の…持ち主だったスーラって人。まさか、こんなところで会うなんてね。」
リーヴァ:「え!?」
ヴィス:「先ほど話していたあの人間のことか。」
メトリ:「えーと…ひどい人?」
シャルル:「本人の前で言うのか…」
猫:「にゃー…」
ライルが少し恨めしそうにスーラを見て言う。
ライル:「あなたのせいで私は辛い目にあったのよ!…忘れたとは言わせない。」
そのライルの恨みのこもった顔を見てスーラは
スーラ:「…ご、ごめんね…」
そう謝ることしかできなかった。
しばらくの沈黙が続いたのち
ライル:「…もういい。行くわよ。」
ライルはそっぽを向いて引き止めようとするスーラを置き去りにして歩き出した。
リーヴァ:「ちょっと待ってよ…」
リーヴァたち人形と猫はライルを追って日の暮れた街の路地裏に行き着いた。
ライルはスーラと別れた時からずっと黙ったままでいる。
リーヴァ:「ねぇ、ライル。どうしたの?」
リーヴァがそっとライルの顔を覗き込むと、なぜかライルは涙ぐんでいた。
ライル:「何よ…」
ライルは顔を見られないように壁と向き合った。
ヴィス:「急に壁を見つめ出してどうした。」
シャルル:「さぁな。」
ヴィスとシャルルは状況があまり分かっておらず困惑している。
メトリ:「ここ…ちょっと不気味じゃない?」
メトリは少し怯えている。
リーヴァは心配そうにライルを見る。
リーヴァ:「ライル。もしかしてスーラとまた暮らしたいんじゃない?」
リーヴァがそう尋ねるとライルは壁に顔を向けたまま
ライル:「そんなわけ…ないじゃない。」
そう言いつつも声は震えている。
そんなライルを見てリーヴァは思い立つ。
リーヴァ:「猫さん!ライルを乗せて!」
猫:「にゃー!」
猫がライルを咥えて背中に乗せる。
ライル:「ちょ…!何してるの!?やめて!おろしなさい!」
ライルは降りようとするがその途端、猫が走り出す。
ライル:「何なのーっ!めんどくさー!」
---
猫はいまだに立ち尽くしているスーラの前まで走って行き止まった。
猫:「にゃ。」
ライルに向かって降りろと合図する。
ライル:「何なのこの猫…」
怪訝な表情をしながらも猫の言う通りに降りてスーラを見上げる。
気まずい沈黙が流れる。
ライル:「あの…」
スーラ:「本当にごめんなさい。」
スーラが真剣な表情で謝ってくる。
ライルはそのあまりの真剣さに思わず目を見開いた。
スーラ:「本当のことを言うと…あの家を引越す前にあなたをずっと探していたの。だけど、引越し当日になって荷物を全部まとめても見つからなくて…もっと探していればきっと見つけられたはずなのに、あの時、私は諦めた。…だけど、今日あなたと再会できた。」
スーラはかすかに微笑んで、しかし申し訳なさそうに
スーラ:「あの時の幸せな時間を思い出したら、また、あなたとおままごととかしたいなって…自分勝手だし、大人がこんなこと言うなんて、変な話だけどね…それにあなたを悲しませてしまったこと後悔しているから…このままお別れはしたくない…」
スーラが真剣な眼差しでライルを見る。
ライル:「おままごとなんて…しないわ。」
ライルがそういうとスーラは少し寂しそうな表情をした。しかしライルは続ける。
ライル:「だって、私はもうあの頃の幼い人形じゃないもの。おままごとなんて恥ずかしいしめんどくさい。…でも…本当は、ずっと…あなたに会いたかった」
ライルは聞こえるか聞こえないかのかすかな声量で呟く。
しかしスーラにははっきりと聞こえたようだった。
スーラは目に見えてわかりやすく明るい表情になった。
後から追いかけてきたリーヴァたちがそっとその様子を見守る。
ライル:「また…あなたと暮らしてあげてもいいわ。あなたが私を綺麗に保ってくれるならね。私、綺麗好きなの。」
ライルはぶっきらぼうに、しかし照れくさそうにそう言う。
スーラ:「ライル…ありがとう…今までごめんね…」
スーラはライルを抱き上げ、優しく抱きしめた。
ライルも心なしか満たされたような表情をしている。
リーヴァ:「ライル…」
リーヴァはライルの幸せそうな表情に少し涙ぐむ。
ヴィス:「持ち主…か。案外悪くない存在かもな。」
ヴィスがさりげなくリーヴァにハンカチを渡す。
メトリ:「よかったね…ライルのあんな安らかな表情初めて見た…」
シャルル:「あぁ。そうだな。」
ライルはリーヴァたちの方に顔を向けて
ライル:「悪いけど、あなたたちとの冒険はここでおしまいね。」
表情はいつも通りのライルだが、瞳には光が宿っていた。
リーヴァはその瞳を見て微笑んだ。
リーヴァ:「会おうと思えばまたいつでも会えるよ。」
ライル:「ふっ…めんど…みんな、またね。」
そしてライルはスーラに抱き抱えられて都会の光の中を進んでいった。
かすかにまだ話し声が聞こえる。
ライル:「この街に住んでるの?…汚いところね。私無理かも。」
スーラ:「家は綺麗だから大丈夫、だと思う…」
仲睦まじく笑い合いながら二人は街に消えていった。
番外編なっが!と思っている方もいらっしゃるかもしれませんね…
なぜか完結後の方がたくさん書けるような気がします。
次回で流石に番外編も終わりです!お楽しみに!
廃工場のビスクドール〜番外編⑥〜
最終回ということでとても長いです!
時間のある時に読むのがおすすめです!
ライルとも別れ、またまた歩き出した一行。
次に辿り着いたのは静かな山の中でひっそりと佇む街だった。
そこはのどかで穏やかで、街というよりは村の方がしっくりくる。
シャルル:「ここは静かでいいな。」
メトリ:「本当…落ち着く。工場と少し似ているかも。」
リーヴァ:「居心地がいい…」
ヴィス:「廃村感がいいな。」
メトリ:「それって褒めてる…?」
猫:「にゃん」
そんなことを話しているとシャルルが急に立ち止まった。
リーヴァ:「…?どうしたんですかシャルルさ…」
シャルル:「あれは…!」
シャルルの目線の先を見ると、
???:「おぅい!シャルルぅ、久しいのぅ!」
知らない人形が歩いてこちらに近づいてきた。
老人のような喋り方をしているが見た目はリーヴァよりも幼く見える。
シャルル:「ジュール、なぜここに…」
ジュールと呼ばれた人形は当たり前だろうとでもいうふうに
ジュール:「ここはわしの家がある街じゃからな。いてもなんら不思議なことなどないわい。…街というか村か…それよりもわしはシャルルがここにいることの方が疑問なんじゃが。そして君たちは誰だ?」
ジュールが物珍しそうにリーヴァたちを見る。
リーヴァ:「あたしはリーヴァっていいます。少し遠くにある工場から来ました。」
メトリ:「メトリです!どうも!」
ヴィス:「ヴィスだ。」
ジュールは首を|傾《かし》げて
ジュール:「こりゃ驚いた!まさかわしたち以外にも動くことのできる人形がいたとはなぁ。」
メトリは聞きたくて耐えられなくなり相手が話し出す前に質問する。
メトリ:「ところで、二人はどんな関係なんですか?」
シャルル:「そうだな。いわゆる兄弟、みたいなものか。俺たちはベネットじいさんに作られた人形なんだ。」
ジュール:「他にも兄弟はおったんじゃが、なんせ人形は物であるからいずれ壊れてしまう。|今日《こんにち》まで残っているのはわしらぐらいじゃろう。」
ジュールがしんみりとした表情でいう。
リーヴァ:「兄弟がいたんですね!ちなみにどちらがお兄さんですか?」
シャルル:「俺だよ。」
シャルルは寄ってきた猫を軽くあしらいながらそう言う。
リーヴァ:「そうなんだぁ」
メトリ:「話し方はジュールさんの方が年上感あるけどね。」
そんなことを話していると、奥にあるこぢんまりとしたログハウスからおじいさんが現れた。
おじいさん:「ジュール、どうしたそんなところで…」
おじいさんはリーヴァたちを見ると目を見開いて驚愕した。
おじいさん:「こりゃたまげた!ジュール以外にも動く人形が…って、お前、シャルルじゃないか。」
おじいさんはシャルルをまじまじと見つめる。
おじいさん:「どうしてこんな|辺鄙《へんぴ》なところに…」
ことのあらましを説明する。
レーゼン:「なるほどな…あぁ申し遅れた。私の名はレーゼンだ。ベネット師匠の弟子だな。シャルルとは何年振りの再会だろうか。もう若い頃の面影もないだろう。」
レーゼンは笑って言う。その顔が少し X に似ていた。
シャルル:「いや、まだ面影はある。かろうじてわかったさ。」
積もる話もあるだろうが、どうしても聞きたいことがあったので
リーヴァは話の途中で割って入る。
リーヴァ:「あの!シャルルさんはレーゼンさんと面識が?ほら X が師匠はレーゼンさんだとかなんとか言っていたから。」
ヴィス:「そういえば、X がそんな名前を口にしていたな。」
レーゼンは X と読んでいることを知らないのでキョトンとする。
シャルル:「お前が弟子をとっているとは知らなかった。『弟子は取らない』が口癖だったと言うのに。」
シャルルがレーゼンに
レーゼン:「あぁ、X とは私の弟子のことか。あいつは私の息子なんだ。毎日毎日弟子にしろとうるさくて敵わなかった。だから仕方なく弟子に取った。」
人形一同:「えぇ!?」
リーヴァ:「レーゼンさんが X のお父さん?」
シャルル:「まさか…そうだったとは…」
メトリ:「驚愕の事実…」
ヴィス:「僕は薄々勘付いてはいたがな。」
ヴィスとジュール以外の人形は驚いてレーゼンをただ見つめることしかできなかった。
ヴィス:「ところで、シャルルさん。懐かしい人たちと再会したわけだが、これからどうする?」
シャルルはヴィスの問いを聞いて、少し考え込んだ。
シャルル:「そうだな。お前たちと旅を続けるのもいいが、俺はここで暮らすことにする。そろそろ体もガタがきているからな…この静かな田舎で余生を謳歌するとしよう。」
シャルルは穏やかな笑顔でリーヴァたちの方を振り返る。
シャルル:「しかし、もうだいぶ暗いからな。お前たちも外を出歩くと危険だろう。」
レーゼン:「そうだな。うちで夜を越してから出発するといい。」
3人:「ありがとうございます!」
---
翌朝。
メトリ:「シャルルさん…お別れなんですね…寂しい、けど元気に暮らしてください!」
ヴィス:「シャルルさんにはお礼をしてもしきれない。リーヴァのことも救ってもらったし。本当に感謝しています。」
リーヴァ:「シャルルさんのおかげで X のことも知ることができて、旅もとても楽しかったです!今まで本当にありがとうございました!」
シャルル:「あぁ、こちらこそ楽しい日々だったよ。…またな。」
ジュール:「いつでもまた遊びにきて良いからなぁ!待っとるぞ!」
レーゼン:「私ができなかったことをやり遂げてくれてありがとう。あいつに次あったら、このことを伝えておく。」
リーヴァ:「はい!またいつか!」
リーヴァたちは手を振って3人に別れを告げた。
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シャルルと別れ、少し歩いたところで分かれ道があった。
リーヴァ:「これ、どっちに進む?」
ヴィス:「そうだな…正直どちらでもいいが。」
するとメトリがどこからかウサギのような見た目のぬいぐるみを取り出した。
メトリ:「それでは、このぬいくんに決めてもらお〜!」
そう言ってメトリはぬいくんを分かれ道になっているところに立たせた。
ぬいくんは中のわたが潰れていてヘナヘナなので簡単に倒れてしまった。
メトリ:「ふむ。ぬいくんは右の道がいいと言っているようだ!」
そうしてメトリが右の道を指差す。
リーヴァ:「ありがとう!ぬいくん!」
ヴィス:「__ありが…とう…?__」
メトリ:「どういたしましてなのさ!」
メトリはぬいくんを抱き上げ、3人と一匹で右の道に進んで行った。
---
右の道は牧場につながっていた。
牛や馬、羊、豚、鶏などなど、たくさんの種類の生き物が柵の中で
呑気に草を|喰《は》んだりしていた。
リーヴァは楽しそうに周りを見渡す。
リーヴァ:「うわぁ!すごいよここ!動物がたくさんいる!」
そう言って二人の方を振り返ると
ヴィスとメトリは牧場の入り口近くで固まっていた。
リーヴァ:「二人ともー!どうしたのー?早くおいでよー!」
猫:「にゃー!」
遠くから呼びかけるも、二人は一向に動かない。
仕方がないのでリーヴァは入り口近くに戻って、二人に事情を聞く。
リーヴァ:「どうしてこないの?」
そう尋ねると
ヴィス:「哺乳類無理哺乳類無理哺乳類無理…」
メトリ:「牛やだ牛やだ牛やだ牛やだ牛やだ…」
二人とも呪文のようなものを言っているだけで言葉が通じない。
リーヴァ:「二人とも…もう一つの道に行こうか…」
こうして3人と一匹は先ほどの分かれ道に戻り、もう一方の道へと進んだ。
こっちの道は賑やかな街に続いていた。
路面電車と人が行き交っており、道沿いにはアンティークショップや
花屋、ダイナーなどが所狭しと並んでいる。
3人と一匹はえんじ色や黒い石畳の敷かれた道を歩きながら、街の様子に目を奪われる。
リーヴァ:「何あれ?」
リーヴァの目線の先には人を乗せた部屋を連結させた長いものがあった。
ヴィス:「あれは『電車』だな。大勢の人間を乗せて遠いところまで運ぶ乗り物だ。」
メトリ:「デンシャ?うわ〜…初めて見る…」
初めての電車に圧倒されていると、
???:「ぶ〜んぶ〜ん…」
どこからか子供の声が聞こえてきた。
ドン!
ヴィスはその子供に突き飛ばされて、石畳に倒れた。
そのひょうしに指が少し欠けてしまった。
リーヴァ・メトリ:「ヴィス!大丈夫!?」
ヴィスは欠けた指を見て少し動揺したようにも見えたが、
ヴィス:「大丈夫だ。」
安心させるようにそう言って上を見上げる。
ぶつかってきた少年は人形たちを見て口と目を大きく開けて驚いていた。
リーヴァ:「すごい顔…」
リーヴァは思わず吹き出しそうになる。
すると、少年の背後から中年くらいの女の人が現れた。
女性:「あら?どうしたのケビン。…そこにあるのは人形?…って、その子指が欠けているじゃない!急いで治さないと…」
女性は人形たちを持ち上げ、少年と一緒にどこかへ歩き出した。
リーヴァ・メトリ:「えぇ!?」
---
彼女に担ぎまれたところは工房のようなところだった。
工房の看板には『人形の病院』と書かれている。
女性は工房に入ると、リーヴァとメトリをソファの上に置いた後
ヴィスを木製の台の上に優しく置き、
何やらごちゃごちゃとした棚をさらにごちゃごちゃに掻き回し始めた。
リーヴァ:「一体何を…」
メトリ:「すごく怪しい…」
猫:「にゃ…」
一緒に連れてこられたリーヴァとメトリと
後からついてきた猫は疑いの目で女性の様子を観察する。
女性:「あった…!」
女性はそう言って、何かのチューブを持って、ヴィスの前に戻ってきた。
女性:「今、治してあげるからね…」
そう言ってチューブの蓋を開き、中身を紙の上に絞り出す。
人形たちは何をするのか興味深そうに見ていたが、
そのチューブの中身を見て流石に声を上げた。
メトリ:「何このグニョグニョ!」
リーヴァ:「おお…恐ろしい…!」
女性はその声を聞いて小さな叫び声を上げた。
女性:「ヒェッ!何!?人形が喋った!?…というか動いてる!?」
女性は思わず後退りしたひょうしに後ろの棚にぶつかり、
棚に載っていたものがバラバラと落ちてきた。
女性:「ヒェイアア!」
女性は慌てて棚のものを押さえる。
ヴィス:「落ち着きのない人間だな。」
メトリ:「…あはは。」
---
女性は棚に落ちた物をある程度戻し、ふぅ、と深呼吸する。
女性:「ところで、あなたたちは本当に人形?」
リーヴァ:「もちろん!」
リーヴァがはっきりと告げると、女性は困惑しながらも頷いた。
女性:「あの…彼を修理してもいいかしら?生きている人形なんて治したことないけど…私こう見えてここの工房長で、壊れた人形を直すのが仕事であり、生きがいでもあるの。」
女性は人形たちにお願いした。
人形一同:「ありがとうございます!」
---
数時間後…
応接室で待たされていたリーヴァ、メトリ、猫は茶菓子なるものを目の前に出されていた。
リーヴァ:「これは何?」
メトリ:「クッキ…?とか言っていたような?甘い香りがするね!」
猫:「にゃん」
猫が茶菓子に口をつけようとする。
女性:「ダメェー!」
さっきの女性が猫から茶菓子を取り上げる。
女性:「猫は食べられないから…!…あれ?人形も食べないか。私ったらうっかり…」
女性は一人でぶつぶつ言いながら、茶菓子を下げに行った。
その先でさっきの少年、ケビンが騒いでいる。
ケビン:「ジーンおばさん!そのクッキー僕にちょうだい!」
ジーン:「はいはい。わかったよ〜」
ジーンはケビンに茶菓子を渡すと、リーヴァたちのところに戻って言った。
ジーン:「さっきの人形さんの修理は終わり。あとは乾かすだけ。ところでみんなの名前を教えて欲しいんだけど…って、まずは私からよね!私はジーン。あの子はケビンと言って私の甥なの。」
リーヴァ:「あたしはリーヴァ。」
メトリ:「私はメトリ。この子は猫で名前はないのさ。さっきの仏頂面の人形はヴィスだよ。」
各々自己紹介を済ませるとヴィスが来た。
ヴィス:「またせたな。」
手元を見ると欠けた左手の中指は元の完全な指に戻っていた。
ジーンの技術に感心していると
ジーン:「ところで、あなたたちは何者なの?」
大まかに説明をするとジーンは
ジーン:「なるほどね。旅をしているんだ…いいね、そうゆうの憧れる!」
にっこりと笑って、しかし少し心配そうに
ジーン:「でも、目的地はないのね…いつまでもこうして旅をするわけにはいかないんじゃない?ほら、3人とも少しボロボロになっている箇所もあるみたいだし…」
ジーンは3人の姿を観察してそう言った。
確かにリーヴァたちの衣服は少しほつれ、陶器の肌にも汚れや微かな傷がついていた。
そしてジーンはハッと思いついたようにこう言った。
ジーン:「そうだ!うちで暮らさない?とりあえずの宿っていうことで!」
リーヴァたち人形は突然の提案に驚き、ジーンを見つめた。
リーヴァ:「そのお誘いは嬉しい!けど…」
メトリ:「迷惑じゃない…?私たちは生きてる人形だし…」
ヴィス:「それに猫もいるぞ。」
ジーンはにっこりと笑って
ジーン:「賑やかでとても楽しそうじゃない!」
ケビン:「え!なになに?そいつらここで暮らすの?やったー!」
リーヴァ:「まだ暮らすと決めたわけじゃ…」
ケビンは話を聞かずに喜びの舞を踊っている。
3人は思わず顔を見合わせて吹き出した。
メトリ:「あはは!ここで暮らすのも、まぁ…悪くないかもね!」
メトリは笑いながら賛成する。
ヴィス:「今まで人のもとで暮らすとか考えたことなかったが、この旅で少し考えが変わった。」
リーヴァ:「人と一緒に暮らすのも、工場で暮らすのと同じくらい素敵なことだよね。」
猫:「にゃ〜」
3人はふかふかなソファの上で笑いあう。
人形たちの物語はまだまだ終わらない。
番外編も意外と長くなりましたがここまで読んでいただき感謝です!
ここは矛盾している!とか細かい部分の質問とか、このシーンの裏側がみたい!とかありましたら送ってください!質問、要望、イラストのリクエスト大歓迎です!
改めて最後まで読んでいただきありがとうございました!