国家化によって“帰る場所”を失った島を描く、思想系ダークファンタジー
続きを読む
読み方
1話ずつ表示します。
閲覧設定
名前変換設定
この小説には名前変換が設定されています。以下の単語を変換することができます。空白の場合は変換されません。入力した単語はブラウザに保存され次回から選択できるようになります
1 /
目次
【第二話】~観測者は笑っていた~
『導座の中枢で、見知らぬ幼子に出会った2人。
「恩人に会いたい」その願いは神が見下ろす通路で世界が静かに動き始める。』
今日は散歩に出た。
作業室から中庭、中央階段などいろいろな場所を歩いた。
同じ歩き方でも床の素材によって足音が変わる。
長年ここにいるのに知らなかった。
「あっ…あのっ!」
2つの足音が止まる。
イルは声の向くほうに振り向いた。
そこにいたのは見知らぬ2人幼子だった。
「誰だ」
相手を刺すような声でイルはそう言う。
「あっ…えっと…その…」
1人が情けない声をあげたの思うともう1人が口をかけた。
「お、俺たちある人に会いに来たんだ!案内してくれないか?」
何を言ったかと思えば1人は続けてこう言った。
「あんたここにいるってことは導座の関係者ってことだろ?!頼む!俺たちの恩人に合わせてくれ!」
愚かだと思った。
この様子だとこいつらは不法侵入者だ
それをあいつら護座や伏座が見逃すわけがない
となると…
「わざとか。」
イルは小さい声でそう言った。
「な、何か言ったか?」
子供が不安げにそう聞くとノルは答えた。
「いいよ。連れて行ってあげる。」
ノアは冷たい目でそう言った。
「おっ、お兄さん本当?!」
そう言ったのは先程おどおどしてたほうの子供だった。
「これであの人に会えるな!」
「うん!」
2人はめっぽう嬉しそうに顔を合わせ、走り出した。
「ノア連絡」
冷たい声でそう言う。
「はい。」
そう言うとノアは何にも触れずに連絡をした。
「伏座案件。表に出すな。」
それだけを言い子供たちの背を追いかけた。
「…名前は」
イルは後ろからそう聞くと2人は立ち止まり弾ける笑顔で明るく答えた。
「俺《カイ》!」
「わ、私《ツクヨミ》と言いますっ!」
そのときだった
『ピロピロピロ…ピロピロピロ…』
「カイ、ツクヨミ」
イルが名前を呼ぶと2人は声を合わせてそれに答える。
「何っ!」
「少し待ってろ。絶対に動くなよ。」
2人は目を合わせた後またイルに顔を向け声を発した。
「おう!任せとけ!」
「は、早く帰ってきてね…」
「ノア、お前もここにいろ。」
「はい。」
それを聞くとイルは通路の角入って行った。
「今更なんのようだ。《観測者》。」
イルは呆れた声でそう言う。
『そんなに怒らないでよ〜。せっかく連絡してあげたのにひどくない〜』
耳から聴こえてきたのは男の陽気な声だった。
「何のようだ?」
『それ聞く必要ある?』
その言葉は狂気に満ちていた。
『レイヴァルくんのことだ、大体予想はついてるんでしょ』
「まあな…」
『じゃあ切るけど、何かあったら連絡してね。』
「ああ…」
そう言ってイルは通話を切り、小さな声でつぶやいた。
「全部見てるくせに…」
この男はどうにも気に入らない。
年下だからと甘く見ている訳ではないだろうが、どうにも癪に触る。
それに…
イルは2人がいる場所に向かった。
「おい、ノア。カイはどこに行った。」
そこにいたのはノアのツクヨミだけ。そこにカイはいなかった。
「導座の姿が見えなくなった瞬間どこかに走って行きました。」
ツクヨミが何かを察したのか少し怯えながな弁明した。
「わ、私はちゃんと動かなかったよ!」
それを聞いたイルはいつも通りの声色で言葉を返す。
「まだ何も言っていないだろう。」
そんな会話をしていると後ろからカイの声が聞こえてきた。
「あ、あの〜」
イルは振り返った。
「動くなと言ったはずだが。」
「い、いや別に早く会いたいな〜って思ってどっか行った訳じゃ…」
と、カイは怯えた声でそう言い顔を上げた。
一瞬カイの顔がこわばった気がした。
「な、何でお兄ちゃんの後ろにいた人形みたいな人もツクヨミも黙ってたんだよ!」
カイは必死に2人を責める。
「まあ。良い。ついて来い。」
イルは歩き出し、それにツクヨミがついていく。
カイがノアの服を掴み、小声でノアに声をかけた。
「ね、ねぇ。人形のお兄さん。お兄ちゃん怒ってるよね…俺が変なところ行ったから…」
ノアは無言で前を向きイルの背を追い始めた。
「ちょ、ちょっと待ってよ!」
カイが必死で声をかけ、ノアの手を握った。
「ごめん…」
イルが静かに振りむく。その目は冷たく、言葉が見えなかった。
「……何がですか」
突然カイが驚く顔を見せた。
「……何ですかその顔は」
「え? いや…その…喋るんだって…」
少しして、ノアが答えた。
「……私も人間なので、言葉を発することくらいします。」
その後、カイがさらに顔が驚きで引きつる。
「えっ! 人間! 竜じゃなくて?!」
ノアは今まで何度も聞いたその言葉に疲れるように答えた。
「……ああ」
「もしかしてお兄さん、何かあった?」
カイが懸命に尋ねる。
ノアは無言で歩き続けた。その顔に感情はなかった。
歩く先にはイルとツクヨミの姿があった。
---
通路の天井に小さな星が煌めいた。
だがイルはそれを放置した。
神が自分を導いていたとしても。
---
ツクヨミは思った。
この名前を持つ私がこの場所にいて良いのか。
それでも彼女は信じていた。
恩人はきっと──
【第一話】~変わらない一日~
朝、人々が目を覚ます。
何も変わらない普通の一日。
小さな足音と共にドアが開いた。
「おはようございます。」
そう言って部屋に入ってきたのはノア・グレイヴだった。
表情は穏やかですらあるのに、なぜか安心できない人間だった。
島の狂気に慣れきった者特有の静けさが彼にはあった。
「急ぎのためノックは省かせていただきました。」
彼はそう言いながら部屋の持ち主であるイル・レイヴァルの背後に足を寄せた。
「資料は」
ノアはそれを聞くと即座に応じた。
「こちらです。」
差し出された資料を、イルは振り返らずに受け取った。
今日は何かが違うように感じた。
だがその足音だけは、いつも通りだった。
---
また朝が来た。
気のせいだろか…
帰れる場所が、少しだけ遠くなった気がした。
だが問題はない。
必要な距離は、すでに測ってあるから…
狂気は、計測され尽くした日常の隙間に
そっと息を潜めていた。
【第三話】~神の手のひら~
気づいてなかったが、俺はかなりの距離を歩いていたらしい。
それを不自然だと思わなかったことが、少し気にかかった。
五分も歩いたがまだ部屋につかない。
あの通路まで来たときの道のりは嘘みたいに時の流れが早かったのに。
---
『ガチャ』
ノアが作業室のドアを開けた。
「ここが俺の作業室で…」
問題を起こさないようにと釘を打っておこうとした途端カイがイルを追い越した。
「ひっろーい!ここがお兄ちゃんの部屋?!」
カイがソファーに飛び込みそう言う。
「ツクヨミを来いよ!ふかふかだぞ!」
「い、いいよ私は!」
ツクヨミが手を横に振る。
相当お気に召したのかカイはしばらくそこを動かなかった。
「カイ。はしゃぐのはいいが壊すなよ。」
「分かってるって! それよりさ! いつあの人のところに連れて行ってくれるんだ?!」
イルは少し間をおきこう言った。
「まずそいつの特徴を教えるところからだろ」
「え?」
このときのカイの顔はまさに鳩に豆鉄砲だった。
「お兄ちゃん場所知ってるんじゃないの?」
「誰かもわからないのに知る訳ないだろ。それにお前は俺たち《帰処|きしょ》のことも何も知らない。」
「そんなことない! 俺たち帰処のことちゃんと知ってる! だよな! ツクヨミ! 」
カイに突然話を振られたことに驚いたのかツクヨミが飛び上がった。
「うっうん…! あの人に教えてもらったから…ある程度は…」
ツクヨミが不安げに言う。
すると、イルが2人に問いかける。
「ここがどう言う場所か分かるか? 」
「えっと…お兄ちゃんがこの島のあらゆる情報の管理をしてる《導座|どうざ》なのはこの部屋を見れば大体…」
ツクヨミの通りこの部屋の机には島や竜についての資料が散らかっていた。
それに続けてカイが自信満々に答える。
「それでお兄ちゃんの後ろにいるお兄さんは島の人を守る護座だろ! 他にも各部署の代表が集まる少数精鋭の《衡議座|こうぎざ》。
これはあんまり知らないけどよく島の外に行く《理座|りざ》。
書類とか施設の設備をする《下座|げざ》。どこの座が合ってるか決めるのもここでやるって聞いた。
そして帰処のトップである《上座|じょうざ》! 」
このときのカイはどうだと言わんばかりに意気揚々としていた。
「ねぇ、お兄ちゃん…ずっと思ってたんだけど何で帰処って各部署の名前を星座みたいにしてるの? 」
ツクヨミが首を傾げる。
イルがしばらく考えるように黙り込んだ。
「…さあな。それで知ってるのはそれだけか? 」
カイとツクヨミが目を合わせる。
「う…うん…」
「導座。そろそろ会議の時間です。」
ノアが部屋に入ってから初めて声を上げた。
「カイ今度は大人しくしてろよ」
「うっ、うん…!」
カイが何回も頷く。
この時イルは確信した。なぜ護座や伏座が2人を見逃したのか。なぜ観測者が連絡してきたのか。
---
会議後廊下にて…
イルの歩いている廊下には上を向くと星があった。
「観測者。」
廊下にイルの声が響く。
『まさかこんなに早く連絡をくれるなんて。嬉しいよ。レイヴァルくん。』
観測者は嬉しそうに声を上げる。
「それはどうでもいいそれで上は何て言ってたんだ。」
『「好きにしろ」だってさ。』
「ミスったら責任取れってか?」
イルが呆れた声でそう言う。
『いや、その逆だよ。』
「そうか。」
『ふふっ。』
観測者は突然笑みをこぼした。
「急に何だ。」
『レイヴァルくん今笑ってるでしょ。』
「…」
「そうだな。」
『えー。素直に答えるなんて珍しー。何かあったの?』
「…ずっと見てたくせに」
イルは小声で呟く。
『ひどいな〜。そんなに嫌わなくても良くない〜。僕は結構レイヴァルくんのこと好きなのに。』
わざとらしい声でそう言う。
「…周りには俺の声もお前の声も聞こえないんだから問題ないだろ。」
そうこの通話機器は下座の技術班が腕によりをかけて作った優れものだった。下座は帰処外や中で良く雑用係などと言われていることが多く、問題が起きること多くない。だがたいていのものはどこかの下座の必要性を知ることになるのだ…
『連れないな〜。まあ、変にちょっかい掛けて来たり、嘘つかれるよりはいいけどさ。あっ。そういえばレイヴァルくん僕に嘘ついたことないんじゃない⁈』
すると、途中から愉快な女がイルを呼ぶ声が聞こえた。
「お〜い。バカ幹部〜ちょっときて〜。」
イルが振り向くとそこにはピンク髪で淡い緑色のメッシュと竜の尻尾を持つ竜と人間のハーフの女だった。その者は腕を横に振りながらイルを呼ぶ。
「…」
「どうでもいいだろ。それじゃあ切るぞ。」
イルは観測者に向けてそう言った。
『え!もうちょっと話そ……』
イルは通話を切り、小声で呟いた。
「騒がしいやつだな。」
「いやそれは酷すぎでしょ?」
引くわ〜と女は声を出した。
「…勘違いもほどほどにしろ。戦闘狂が。」
イルは自分の尻尾を撫でながらその女に対して嫌味を言った。
「あ〜あ。ひどいひどい。《ヴェルナ》泣いちゃうな〜。」
「お前が泣いたところで誰も言わないだろ。」
冷たい声で言う。
「うっ…!まあ…確かにそうだけど…これは置いといて…イル子供預かってるんでしょ!私も合わせてよ!」
何か良いたげにうなだれだと思うと、ヴェルナは機嫌を一変させそう言う。
「…必要あるか?」
イルが聞く。
「子供なんでしょ!絶対かわいいじゃん!どこで見つけたの!」
連れてって!と言わんばかりに表情を緩める。
「テヴェルナあいつらのことは知らない方がいい。」
一瞬驚きの表情を見せ、ヴェルナが言う。
「大丈夫だよ。私ちゃんと線は引くタイプだから…」
---
あの通路での出来事は、すでに神のひらにあった。
ただそれが、何のための誰のための記録なのかはまだ誰にも分からない。
【第四話】~記録にない名前~
作業室にて…
『ガチャ』
「あっ〜!お兄ちゃんやっと帰って来た!」
カイはノアを指差した。
「カイ…後ろにいる女の人誰かだろ?」
ツクヨミがカイにひっそりとそう言う。
「こいつは…」
「かわいい〜‼︎」
ヴェルナはイルを遮り、2人に抱きついた。
「ちょっ…何してっ…!」
カイが急の出来事に驚く。
「ほらっ…ツクヨミもなんか言って…てっ! 固まってる!」
「急に抱きつかれるなんて…どうすれば…」
カイの言う通りツクヨミは困った様子で体が固まっていた。
「……ヴェルナ。離れて下さい。」
ノアが口を開ける。
すると、2人に抱きついたまま、ヴェルナが驚いた表情で話す。
「ノアが人のこと心配するなんて珍しい〜」
性格変わった?といつも通りノアちょっかいをかける。
「やっと…抜け出せた…」
カイが疲れたように言う。
「そんなことより早く本題に行くぞ。」
2人が逃げるのを見て寂しがるヴェルナを見ながらそう言う。
「え〜。つまんないの〜。」
でもしょうがないかとヴェルナは立ち上がる。
「お兄ちゃん本題って?」
ツクヨミが聞く。
「あっ!もしかしてあの人のことか?!」
カイが先ほどの疲れ切った姿が嘘のように生き生きとした声を出す。
「いや、それじゃない。」
「そっか…」
その言葉にカイは落ち込み出す。
イルの視線が、ふと冷える。
「急で悪いが。カイ、ツクヨミお前ら外から来たな。」
「……え? 」
イルの突然の言葉に2人は驚きを隠せなかった。
「そ…れは…」
ツクヨミの声が詰まる。
するとカイがツクヨミの前に出た
「いつからだ……?それより拷問でもして情報を吐かせようってか…」
その声は不安と恐怖が入り混じったものだった。
「聞いてどうする」
イルの冷たい声が部屋に響いた。
「そんなに怖がらないでよ〜今は怖いことはしないからさ!」
ヴェルナが2人を安心させようと穏やかな表情で話しかけるが裏には違う顔が隠れていた。
「知っていることを全て吐けというわけではない。話せる範囲でいい。」
しばらくするとカイが突然口を開いた。
「…俺が最初にこの島のことを聞いたのは2年前。《竜伝島》って言うお伽話だった。これを読ませてくれたのは俺たちの恩人。その前俺たちは孤児でずっと孤児院で暮らしてた。」
「そんな私たちを恩人は引くとってくれたの。」
ツクヨミが続けて言う。
「それから恩人にお金の使い方とかスリの捕まえ方とか色々なことを教えてもらった。」
「でもなんで君たちはこの島にきたの?」
ヴェルナが2人に問う。
「それは……」
カイの声が詰まる。
「……ある日突然仕事から帰って来なくなったの。」
ツクヨミは何かを決心したのか彼女の目は鋭くなっていた。
「なっ…!ツクヨミなんでっ!」
カイは何かを焦るように必死に言った。
「でっ、でも!言わないとどこにいるか分からないじゃん!」
「そ、そうだけど…」
カイが下を向く。
「ちょっとノアこの喧嘩止めないの⁉︎」
ヴェルナがノアにヒソヒソと話しかける。
「……まだ何も言われていないので。」
「ちぇ。つまんないの。イル止めた方がいい?」
イルの方を向く。
少し考えてからイルは逸らしていた目を2人に向け言った。
「話したい方だけ喋れ。」
「……。」
2人は黙り込んだ。
ツクヨミが口を開く。
「あ…あの人の仕事の内容は教えてくれなかったから分からなかったけど…一回仕事に行ったら絶対三日は帰って来ないの。だから最初はあんまり気にしなかった。でもおかしいと思って。良く家に来るあの人に聞いた。あの人は怖かったけど会うたびに仲良くなって……」
「ちょ、ちょっと待って。さっき言ってた恩人とあの人って違う人だったの⁉︎」
「う…うん…。」
ツクヨミが呆れるように言う。
「……今気付いたんですか?」
イルの後ろにいたノアがヴェルナに対して皮肉の言葉を発した。
「え〜。何〜。珍しいじゃんノアから話しかけるなんて。」
そのときのヴェルナはなぜか少し楽しんでいるように見えた。
「……あなたは一々うるさいですね。」
「はぁ〜⁉︎まともに話さないヤツに言われたくないんだけど!」
「えっと……。」
ツクヨミが困ったようにイルを見る。
「…ノア、ヴェルナ。無駄口を叩くな。」
「……すみません。」
「は〜い。」
2人が謝意を示すとヴェルナがノアに口を挟んだ。
「ねぇノア今ちょっと殺気出てたでしょ。楽しい?」
ヴェルナがノアの顔を覗き込む。
「……意味の分からないことを言わないでください。」
ノアがそれに言い返す。
「え、え〜っと…。」
するとずっと黙っていたカイが言った。
「は、話…戻すけど…その後あの人は『俺たちも恩人にようがあるから一緒にさがそう』って言ってくれたんだ」
カイは静かにそう言う。
「カイっ…」
ツクヨミはカイからも話してくれたことがよっぽど嬉しかったのか声を上げ抱きついた。
そして、ヴェルナとノアがまたひそひそと話し始める。
「…今のの何が良かったんだろ。私全然わかんないや。」
「……それは俺もだ。」
ノアがヴェルナに珍しく共感する。
「子供は良く分からないものだな…」
この発言にヴェルナが反応する。
「イルでも分からないんだ。」
ヴェルナはへ〜と興味を示す。
「ああ。」
「本当の本当?」
「そうだと言ってるでだろ。」
煩わしい思いつつもイルは返答をする。
「それで続きを聞かせてくれるか?」
イルが2人に聞く。
「うん!」
2人の声が綺麗に揃った。
「あの人とはあれから1年半くらい一緒に旅をしたんだ。」
続いてるツクヨミが発する。
「それで旅を始めて半年くらいの時に恩人がお伽話に出てくる竜伝島が
がほんとにあることあの人が向かった場所がここって言うことがわかったの。」
「へ〜。だからこの島に…」
なるほどとヴェルナは頷いた。
「……ヴェルナ。重要なことを忘れてますよ。」
ノアがヴェルナに声をかける。
「重要なこと?」
ヴェルナが首を傾げると同時にノアがイルの方に顔を向ける。
「それで。あの人はどこだ。島の情報は探せば出てくる。だが、入るのは別だ。二人だけで来たと思えない。」
イルは2人に疑問を投げつける。
「ああ。俺たちはあの人と来た。悪いけど俺たちが話せるのはここまでだ…」
---
机に3つの小さな火玉が落ちる。
---
[来訪者記録書]
[訪問者 二名][侵入者 一名]
【第五話】~侵入者、一名~
1時間前とある部屋にて…
『ガチャ』
「失礼っしま〜す。や〜。すみません遅れちゃって。」
そう言って入ってきたのは、金髪でみるからにチャラそうな男。
動くたびにアクセサリー同士が当たる音がする。
「遅いぞ。《レオン》」
そこにいたのは目付きが鋭く、ガタイの良い外見の男だった。
「しゃーないじゃないっすか《ラグ》さん。レイヴァルのこと行ってたんすよ。」
資料もらってきましたよ、とラグの机にそれを置く。
「あいつらは大丈夫なのか。」
ラグが資料に目を通す。
「大丈夫と思うっすよ。今回も観測者あの人みたいだし、まあレイヴァルの部隊は問題児多いっすけど。あそこは一人一人がやばいっすから。ほんとラグさんもすごい人拾いましたよね〜」
レオンは資料棚を整理しながらそう言った。
ラグは表情を変えないが、その手にはわずかに力がこもっていた。
「…今日の会議、結構楽しかったっすよ。」
このときのレオンの声色は穏やかなものだった。
「あ、ちょっと忘れ物したんでまた会議室行ってきますね〜」
そう言ってレオンは資料を近くの椅子に置き、部屋を出た。
---
会議室近くの廊下にて…
「あれ⁉︎ レイヴァルとヴェルナちゃんじゃ〜ん。さっきぶり〜。」
レオンは腕を大きく振って2人の元に向かう
「…先輩?」
「よっ!」
走った勢いでイルの肩に腕を回した。
「レオンさんイルとすっごい仲いいですよね〜。兄弟みたい」
イルとレオンは同じ体勢のまま目を合わせる。
「そう「か」?」
2人の声が無意識に合う。
「あっ…」
イルが声を上げる。
「ははっ。今思いっきりハモったな。」
そう言ってレオンは笑みを浮かべた。
「ですね。」
一瞬だったがそのときのイルは顔をほころばせていた。
「え〜。もしかしてイル笑ってる〜?笑ってるよね〜。」
ヴェルナがイルの顔を覗き込む。
「ヴェルナ鬱陶しい。」
いつものような冷たい声でそう言う。
「は〜い。」
「先輩そろそろ行かないといけないので失礼します。」
「うん。また。」
イルは別れる間際に頭をほんの少し下げた。
---
『カツカツカツ…』
『ジャラジャラジャラ…』
足音、アクセサリーの音、服が擦れる音、レオン周りから色々な音が聞こえてくる。
会議室のドアが開く。
首を左右に振り忘れた物を探す。
「あった。あった。」
それはレオンが座っていた椅子の近くに落ちていた。
しゃがみ、それを取る。
静寂がレオンを襲う。
再び廊下に出ると天井には星があった。
「なんすか、《観測者さん》」
レオンが歩くのをやめ、上を向きそう言った。
『至急お越し頂きたい案件が。』
聞こえてきたのは透き通った女の声。
「そう言うのは、レイヴァルのところの方がいいんじゃないっすか。」
レオンはまた歩き始めた。
「いえ、今回はあなたが適任です。詳細は既に掲載しました。ご確認を。」
それを見るとレオンは走り出した。
「相変わらず仕事早いっすね。でもこれ結構急がないとやばいじゃないっすか。早く言ってくださいよ。間に合うんすか。」
静脈路を通りながら目的に向かう。
「はて、私は至急と言いましたよ。」
そう言って、彼女はしらばっくれた。
「はい。はい。そうっすか。」
ちなみに静脈路、通称ヴェインとは施設内を移動するための長い廊下。
そこに埋め込まれている磁石と職員の靴の底に入ってある磁石によって移動を補助してくれる優れ物である。磁力を操作してコントロールすることも出来るとか。(リニアモーターカーの原理と同じです)あ
---
数分後…
レオンはある部屋に飛び込むように入る。
「すんません。今どう言う状況っすか。」
レオンはすぐに指揮官に声をかけるが返事が返ってこなかった。
そこはオペレータールームだった。
扉の前には机と椅子がその正面には大きなモニター下にはオペレーター達がいた。
「……この人寝てますよ。」
後ろから聞き慣れた声が聞こえた。
「ノア⁉︎なんでここに…それよりこの人はまた…」
そう言って目の前の椅子に座る。
「……助かります。」
「いいのいいあの。でもやっと俺が呼ばれた理由が分かったよ〜。」
新しい情報が来たら教えてけ〜とノアに言い資料を確かめる。
「……最後に上司から伝言が。『導座の副責任者としてがんばれ〜』だそうです。それでは私は失礼します。」
そう言ってノアはオペレータールームを出た。
「相変わらずこの人は自由人だな…よし、それじゃあ…お仕事始めるか〜」
---
『ガチャ』
「あっ…お兄さんただいま…」
ツクヨミが控え気味にそう言う。
「お兄さんことゲームすっげえ楽しいよ!それにしてもお兄さん電話長かったな〜」
カイは自分の家のようにゲームを楽しんでいた。
「……俺はこれでも忙しいんだ。」
しばらくしてドアの扉が開いた。
そこにいたのは──
【第六話】~静寂の前奏~
「ねえねえ、お兄ちゃんこれからどうするの?」
ツクヨミがイルに問う。
「まずはあの人のやらの目撃情報を集める。」
「お〜なんかそれっぽくなってきたな〜」
「ね!」
カイとヴェルナが顔を合わせる。
「でもどうやってするの。このことを他の奴らに言う訳にもいかないてしょ。」
ヴェルナが問いかける。
「とりあえず、観測者に情報を持ってないか聞く。」
ヴェルナが驚いた顔をして言う。
「いやいやいや、何言ってんの無理でしょ。だってイルの観測者って…」
ヴェルナの声が濁る。
「大丈夫だ。あいつは俺に好きにしていいって言ったんだ。」
「それは…偉い人が言ったことを伝えただけじゃないのか?」
カイがそう言うとツクヨミが頷く。
「あいつが毎回上の言ったこと言うはずないだろ。」
そのときのイルは堂々とした顔をしていた。
「そ、そんなもんなのか…?」
カイが驚いた顔をして言う。
「イルが異常なだけだよ。」
よしよしとヴェルナはカイの頭を撫でる。
「まあ、今は見てないようだから後になるがな。」
するとノアが口を開ける。
「……2人は観測者についても知っていたんだな。」
「ええぇ〜!そうなの?!すごぉ〜い!」
ヴェルナが顔をキラキラさせる。
「ま、まあね〜…」
カイは横を向きあははは…動揺しながらそう言う。
「そ、そ、それよりお兄ちゃん何で上向いてるの?」
カイが必死に話題を変える。
「……いる。」
ノアがいつもの変わらない表情で言う。
「あ〜来た?観測者。」
ヴェルナが異様の笑いをした。
すると、部屋の天井が光った。
「カイ、今天井光らなかった?」
ツクヨミが天井を指差し言った。
「そうか?見えないけど…」
カイが目を細めて言う。
横向くとイルが何かを小さな声で呟いていた。
「…今何言ったんだ?」
カイがイルに問いかける。
「…あぁ、ちょっとな。」
そのときイルの視界に一行の文字が映った。
――侵入者は東区画。
イルが一瞬だけ目を細める。
「……イル?」
ヴェルナが声を出す。
「……今、来てましたね。」
「え…?」
カイが何のことか分からない様子で戸惑う。
「…ま、まだいるね。」
ツクヨミが少し天井を見ながら怯えた様子で言う。
「えっ…分かるの?」
ヴェルナがツクヨミの発言に驚く。
「うん。ずっと見てる…」
「……気にするな。」
イルが静かに言う。
そのときの目は笑っていなかった。
すると、イルの視界にもう一行文が追加される。
――観測対象:月読。
イルの目が僅かに揺れた。
このとき皆は異を唱えた。
ノアは何かに気づき、ヴェルナはそれを楽しみ、イルは密かに織り込む。
カイは何が起きているのかわからない状態だった。
だがツクヨミは諦めた目をしていた。
---
『バン!』
大きな音と共に扉は開いた。
「たっ、大変です!西区域にて侵入者が!」
扉から慌てて飛び出していたのは最近イルの部隊に配属した新人だった。
「それってもしかして…!」
カイとツクヨミが飛び出し、目を合わせる。
「こ…子供……⁉︎どうしてこんなところに…もっ、もしかして誘拐してきたんですか⁉︎」
新人が2人を指差しそう言う。
「それより!下っ端みたいな人!それほんとなのか⁉︎西区域のどこなんだ⁉︎」
カイが新人の服を掴み必死に聞く。
「ちょっ、急に何なんだよ!」
新人が困惑した表情になる。
「…行くか?」
イルが2人の後ろから声をかける。
「たっ隊長!それは…」
「問題ない。ついて来るだけだ。」
冷たい目でイルが言う。
「私は反対〜ついて来るだけとはいえ、邪魔なのは変わらないじゃん。」
そこにヴェルナが声を上げた。
「そうですよ隊長!もし何があれば…」
それに新人が、口を加える。
「ちゃ、ちゃんと邪魔しないようにするから頼む!俺たちも連れて行かしてくれ!」
カイが頭を下げ、そう言った。
「カイ、ツクヨミ。接触は明日だ。それまでに各自準備をしておけ。」
2人の顔がその一言で明るくなった。
一方。ノアにそのときのイルは何かが欠けている様に感じたのであった。
---
「隊長…ほんとに良かったんですか…?部屋まで用意させて…ヴェルナさんもあの2人気に入ってるみたいでしたし…」
「それに関しては大丈夫だ。あいつの性格を知っているだろ。」
そう言って、イルは椅子に座り込む。
「って言うか。何で自分だけ部屋に?ノアさんも出させるなんて…」
新人がおどおどしながら言う。
「お前のせいで面倒なことになったんだ。それなりのことはしてもらう。」
イルは目を鋭くさせた。
「あぁ…やっぱりバレてましたぁ〜?それにしても面白くなかったですかぁ?あの子供の反応。あんなに騒いじゃって…馬鹿だなぁ〜」
男は本性を出すように笑い出す。
「それで。これからお前はどうするんだ。」
イルは男に貰った資料に目を通した。
「ん〜隊長はどうして欲しいです?」
男はイルを困らせるように言った。
「今はその下っ端のままでいろ。」
イルは万年筆を手に取る。
「は〜い。」
男が愛想良く返事をする。
「それとお前はここで待機しておけ。」
男の顔が固まる。
「えぇ〜それは聞いてないんだけどぉ。俺も行きたいぃ〜」
男は子供のように暴れる。
「……。」
イルは男に見向きもしないでペンを進める。
「隊長のけちぃ〜もう僕帰るからねぇ〜」
そう言うと扉の方に足を運んだ。
「《ミカゲ》。」
イルが名前を呼ぶと、男に折り畳まれた紙を差し出した。
「えぇ〜なんですぅ。隊長が名前で呼んでくれるなんてぇ。珍しぃ〜」
ミカゲは足を止め、ある紙を取りに行った。
「…隊長これって。」
ミカゲの表情が引き締まる。
「内容は後で読めるだろ。早く動け。必要なことは書いてある。」
イルは何も言わず、作業に戻る。
「は〜い……」
ミカゲは少し戸惑いながら言葉を発する。
その静けさの中でミカゲは紙を握りしめた。
イルの目にはほんの少し、公園で無邪気に遊ぶ子供のように見えた。
「それじゃぁ。隊長〜。また明日…会いましょうね。」
ミカゲはそう言って部屋を出た。
---
部屋を出るとあたりは静まり返っていた。
「……やるかぁ〜」
深く息をし言う。
足音を最小限抑えながら、指示の通り徒歩で東区域に向かう。
いくつもの監視カメラや警備を避け、角を曲がるたび、周囲の目を光らせる。
小さな胸の中で恐怖と期待に心が躍る。
「侵入者……か…。」
ミカゲの瞳が引き締まる。
まだ出会ったことない敵…者だが、任務は任務。躊躇は許されない。
東区域の入り口に差し掛かるとミカゲは紙に書かれた指示をもう一度確認する。
「待機…状況次第で対応……。」
それを読むと自然と体が軽くなった。失敗すれば決してその責任は軽くない。
だが自分に与えられた役割を果たせる喜びがミカゲにはあった。
「……任せてください。隊長。」
小さな声で呟くとミカゲは影に身を潜める。
その瞬間から侵入者との接触に向けての彼の行動が始まった。
---
影に潜むミカゲの視線は、ゆっくりと伸びる侵入者の影に向けられていた。
心臓が激しく脈打つ。
ミカゲは紙に書かれた指示通り、待機を始める。準備は完璧なものだった。
そのとき、影がわずかに動く。
侵入者は角を曲がり、灯の届かない路地にその影がくっきりと姿を現す。
「ここまでか……。」
ミカゲは影を潜め、体を低くする。
紙を握る力を強める。
二つの影が揺れる。
紙に書かれた文字以上に、今、この状況を把握することに頭が働いた。
影と影が重なり合う。
その瞬間、ミカゲには世界が一瞬止まったように静まった。
呼吸が、動きが、わずかな光と互いに混ざり合う。
---
『ブルルッブルルッ』
その夜、イル宛に観測者から連絡が来た。
――観測対象、反応確認。