タイトル通り!
あらすじ
人間に仇なす【不滅の魔王】を勇者は滅ぼした―――ことになっていた。
人間恐怖症の魔王が勇者に飼われて幸せになる話。
作者一言:やっぱ受けは可哀想なほど可愛いよねっ!(お巡りさん、コイツです)
⚠残酷描写、暴力描写があります。
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目次
プロローグ
魔王の君臨、それは人類にとって寝耳に水だった。
醜い容姿だが、高い身体能力と魔力を有する魔人は、人類に文字通り「飼われて」いた。
それはもう、何千年と奴隷として。
しかし、その魔人族の中で立ち上がったのは後に【不滅の魔王】と呼ばれる不死身の魔人だった。
魔人たちは、人類よりも優れた能力で奴隷と侮っていた人類を蹂躙していった。
魔人たちが人類を次々に滅ぼし、ついに人類が危機に瀕した時、一人の勇者が立ち上がった。
勇者は次々に魔人を討伐し、そしてついに魔王の下へとたどり着いた―――。
+++
玉座にふんぞり返る魔王。
真っ直ぐと勇者を射抜くその目はとても人間とは思えぬ猫のような瞳孔をしており緋色に輝いている。
そして頭には漆黒の角が生えている。
(⋯でも。それ以外は人間の青年と大差ない)
勇者は、目の前にいる魔王の圧に気圧されながら。
―――あぁ、なんて美しいんだろう。そう思っていた。
けれど、勇者も人類だ。放っておけばいずれは己も死んでしまうかもしれない。
それに、美しいとはいえこの魔王は人間を大勢殺しているのだ。情状酌量の余地などない。
勇者は剣を構える。これまで何人もの罪なき魔人を葬ってきたのだ。今更、引けない。
「私は勇者。【不滅の魔王】あなたを討伐⋯いや。殺しにきた者だ。」
「⋯ほう?人間様より能力が遥かに上の僕を?それに僕は老死以外で死ぬことはできない。不可能だ」
地を這うような低い声が響き渡る。
その言葉を開戦の合図とし、戦いが始まった。
勇者は三日三晩の戦いの末に魔王を滅ぼした。
―――そう、されている。
一話
残酷描写、暴力描写が過剰なまでにあるから苦手な人はUターン
読む人は心して読むよーに(どんなまえがきだよ)
きっと、魔王は滅ぼされたことになっているのだろう。
【不滅の魔王】、リラン―――僕ははぼんやりとそんなどうでもいいことを考えていた。
実際、僕は勇者であるルナに敗れた。しかし、老衰以外で死ねない僕がどう敗れたのか。
簡単。眠らされたのだ。【スリープ】人間が作り出した魔法によって。
最も、ルナもこの魔法が魔王に通用するのか賭けだったようだけど。
何時間眠らされたのか。あまり良くわからないが、激痛と共に目覚めた僕は冷たい鉄の椅子に拘束されていた。手、足、首、腰。硬い鉄に縫い付けられるように拘束されては身動きも取れない。
周りはまるで独房のようで、かび臭い。そしてほのかに血の匂い。
更に最悪なことに、目の前には武器を持った人間たち。この日から僕は地獄を見ることとなる。
まず、ご飯は与えられない。死ぬわけじゃないが、空腹に苦しめられた。
そして実験と称して体を切り刻まれたりされた。死ぬわけじゃないが、痛みに苦しめられた。
そんな日々が数日続いた時、談笑する声と共に何人かが入ってきた。
「ねぇ、これ死んでないよね?」
「御冗談を。これが死ぬわけないと貴女もわかっておられるでしょう?」
「でもピクリとも動かないけど?」
「体を一センチ間隔に切り刻むのを10回、毒薬を打ち込むのを20回、腹から内蔵を引きずり出すのを5回ほどしましたが、いずれも苦しむだけで死にはしませんでしたよ。ほら、傷もないでしょう?」
「⋯飲食は?」
「必要ないでしょう?そして服も。」
「⋯⋯⋯そうね」
いつも僕を酷い目にあわせる声が妙にへりくだった声をしていた。偉い人でも来たのだろうか?目を開けるのも億劫な僕に取ってはもう、どうでもいいけど。
そんなことを思っていたら、ガシャンッと僕が座っている椅子が蹴られた。
「ほら、目を開けて」
女の声⋯?こんな部屋に?でもこの声、どこかで―――
のろのろと目を開けると、そこには僕を眠らせた勇者、ルナがいた。
勇者は一瞬安堵した顔をした気がしたが、すぐに顔を歪ませた。
「私のこと、忘れたわけじゃないよね?」
流石に自分をこんな窮地に追い詰めた人間を忘れられるほど、僕は図太くない。
ルナはそんな僕の態度を見て、それから周りの人を見てからまた、僕を見た。
口が“ごめん”と動いたかと思ったら、頬に鋭い痛みが走った。ぶたれたのだ。
「何?その反応の無さ。」
苛立たしそうな声を出しているが、少しだけ苦しそうに見えた。
ルナはくるっと周りの人間の方を向く。
「⋯ねぇ。この猿ぐつわ、外していい?」
「いいですが、それを外すと己の肩を食おうとします」
「⋯」
しばらく迷ったようだが、ルナは僕につけられた猿轡を外すことにしたらしい。
その手つきが妙に優しい気がしたのはきっと自分の気のせいだ。
「これで話せるよね。⋯あぁ、コラ。自分の肩を噛まないよ」
別に、僕の体をどうしようと僕の勝手じゃないか。
反論しようとしたが、喉がカラカラで声も禄に出なかった。
「⋯魔人は人間の手によって全員滅ぼされた。残るはあなただけ」
ルナの凛とした言葉に僕の目は大きく見開かれた。
死んだ⋯?みんな死んだの?奴隷時代の仲間たちも、魔王時代の仲間たちも?
みんな、みんな、?僕が、不甲斐なかったばっかりに?守れなかったばっかりに?
とうに水分なんて枯れ果てた僕の目に一雫の涙が伝った。
周りの人間たちからどよめきが起きた。
「さすがは勇者様だ!一度だって涙を見せなかったコレが泣いてるぞ!ハハッ。ざまぁないですね!ご覧くださいよ、こんなにみっともない!」
「⋯」
もう、誰の言葉も聞こえない。
僕はただただ絶望していた。無力な自分に。だから、ルナの言った言葉も聞いていなかった。
「⋯じゃあ手はず通り、この魔王は私が管理するから」
「えぇ、えぇ!きっと勇者様ならもっとコレを苦しめることができるでしょう!」
「⋯」
ルナは僕の頭に手を置いた。やけに優しい手に、なんだか救いを求めたくなった。
「【スリープ】」
また、この魔法か⋯
僕の意識は深く、深く沈んでいった。
+++
「ん⋯?」
気がつくと、柔らかな布の感触が体を包んでいた。
いい匂いのするふかふかと幸せな感覚にしばらく微睡んで⋯いや、おかしいなと目を覚ました。
どうやら大きくて綺麗なベッドに寝ていたようだ。手足は縛られていない。が、首に硬い金属の感触。
首枷だ。黒い首枷がこのベッドに繋がっている。
これを無視すればかなりの高待遇に違いない。キョロキョロと辺りを見渡す。
綺麗で少し大きめの部屋だ。そして、ベッドの横の机に水の入った入れ物とコップが置かれていた。
こんなところに水を置いておくほうが悪い、とばかりに僕はその水に手を伸ばそうとし、
⋯己の体の小ささに気づいた。
「!?」
どういうことだ?なぜこんなに体が小さい?混乱しつつ、とりあえず水を飲む。
乾ききった体に染みる水。久方ぶりの水分はこれほどまでに美味しかっただろうか?
僕は全ての疑問を忘れて一滴も零さず入っていた水を貪るように飲みきった。
本当は毒でも入っているんじゃないかとも思ったが、変な味もしなかったし、舌も痺れない。
しばらく様子を見たが、特に何も無さそうだ。⋯まぁ既に体が小さくなっているという異常はあるが。
「あー。あー。」
声も高い。一体どうしてしまったのか?僕はベッドからよいしょと降りて、姿鏡に近づく。
―――そこには、幼い頃の自分が驚いた様子で立っていた。
「え、はぁぁぁああああ!?!?」
僕の絶叫が部屋を満たした。
2話
状況を整理しよう。
確かルナに魔法で眠らされた。目が覚めたらまぁまぁな高待遇の部屋に繋がれていた。
そしてなぜか幼くなっていた。うん。わからない。
「どうなってるんだ⋯?」
姿見に映る現実に項垂れる。何か考えようとしたが、栄養が足りていないのか頭が回らない。
仕方なく、服を捲り自分の腕を引きちぎろうとするが⋯顎の力が弱いらしく、歯型がつくだけだった。
それにしても。少し大きめのパジャマ。そして寝てる間に洗われたらしい体はさっぱりとしている。
これは高待遇なのか否か。僕は判断に迷っていると、ドアが開く音がした。そちらに目をやると、ルナが入ってきたところだった。
「ん?あー。駄目だよ?まだ寝ててね?」
「⋯ルナ、僕に何をした?」
「おぉ!名前覚えててくれたんだ。意外と律儀だね」
「いいから、答えろ」
「んー。とりあえずベッドに戻ろっか。」
ヒョイッと軽々と持ち上げられ、運ばれる。
「離せ!」
「うん。ベッドに着いたら離すよ」
ジタバタともがくが、小さい手足は非力で、びくともしない。
ぽすっとベッドに降ろされ、上布団をかけられる。そして、ルナはベッドの隣の椅子に腰を下ろした。
「で、さっきの質問の答えだけど。それは国の命令だから。」
「命令?」
「そう。その首枷と、幼児化の術を施すまでは外に出すなって命令」
「なぜ、幼児化?」
「簡単な話だよ。幼児化させたら、筋力も弱くなるし遠くにも行きにくい。」
「っ⋯」
「でも魔力はそのままだ。そこでその首枷だよ。それは魔力が発動できないようにするものだ」
確かに、魔力が操れない。なるほど。無力化されたわけだ。
そして、僕はルナに飼われるってことなのだろう。
少しシュンとしていると、パンッと両手を叩く音がした。ルナだ。驚いてルナの様子を伺う。
「よし。水もちゃんと飲んでるね。じゃあご飯持ってくるから寝ててね」
「⋯別に、食べなくても死なない」
「でも、お腹は空く。だからさっきから腕を噛んでる」
図星だったため押し黙る。
その様子を見たルナはクスッと笑って「ちょっと待ってて」と言って部屋を出ていった。
それを見送った僕は再度ベッドから降りる。別に今更逃げようとは思っていない。
ただ、部屋がどんなものか把握したかった。
ベッドから見て真正面のドアは外?に繋がっているらしい。
そっちに行ってみようとしたが、ガシャンと鎖がそれを止めた。
どうやら、出れないようになっているらしい。ではと手前の右側のドアを開ける。
トイレのようだった。僕は左側のドアも開ける。そこは書斎のようだった。
色とりどりの本に囲まれるように、椅子と机が並んでいるその部屋はとても魅力的だった。
僕はその部屋を出て、ベッドの部屋にあるクローゼットを開けた。
小さめの服が何着も並んでいる。部屋着のようなものから外出用のものまで。
外出することなんてないだろうに。僕はパーカーとショートパンツを取り出し身につける。
僕のものではないだろうが、手に取れる場所に置いておくほうが悪い。
すると、ドアが開く音がした。
「ただいま〜ってあれ?ベッドにいない⋯」
キョロキョロと辺りを見渡すルナだったが、小さい上に壁に座っていたからか死角に入ってしまったらしく、僕を繋いだ鎖に引っかかり体制を崩した。
「うぉっと!?」
ルナはなんとか体制を立て直したが、持っていたお盆がガシャーンと音を立てて落ちてしまう。
乗っていたスープは床に散らばってしまった。
「あちゃー。気が抜けてたかな。お?そこにいたのね。大丈夫?かかってない?」
コクリと頷く。
「雑巾と変えのご飯持ってくるから今度こそベッドで待ってて」
またもやヒョイッと運搬されベッドに戻される。
ルナは早足で部屋を出ていった。
僕はしばらく迷ったあと、スープのそばまで行く。
床に散らされたスープ。僕はこの光景に覚えがあった。
+
それは、僕が奴隷だった頃。丁度、今と同じぐらいの幼い体だった。
牢の外から人間が皿に入ったスープを中にぶちまけた。
「ありがたく食え」
そう言って去っていった。
牢の中の泥でぐちゃぐちゃになってしまったスープを他の子達は食べなかった。
だから、僕が食べた。ジャリジャリとした砂の食感。
ほとんど薄い塩水のようなそれを、無心で食べた。
+
それに比べれば、砂も少なくていい匂いがして湯気が立っている。
僕は地に這いつくばってスープを舐めた。美味しい。昔の何倍も。
僕のスープか怪しいが、こんなところにスープをこぼすほうが悪い。
僕は夢中でスープを舐めていた。だから、ドアの開いた音に気づかなかった。
「ふぅ〜ただいまーちょっと雑巾が見当たらなくて⋯何してるの?」
顔を上げると、驚いた顔をしたルナと目が合った。
が、スープを舐めるのに忙しい僕は再度、床を舐める。
「ちょ、ちょちょちょ。衛生的に良くない!ほら、飲むならこっちにして。」
ベリッと床から離された僕はポーイッとベッドに投げられる。
そして、ルナは僕に器に入ったスープをくれた。ゴクゴクとそれを飲む。
その間に、ルナは雑巾で床を拭いていた。
「床に溢れたスープ飲むとか本当にあの玉座に座ってた魔王?魔王のプライドどうしたの?」
僕はそれをツンと無視してスープを飲む。
床を拭き終えたルナは困ったように僕を見る。
「野良猫を拾った気分だよ⋯まぁ、お腹が空いてたんだよね。おかわりいる?」
「欲しい」
「めっちゃ食い気味に返事するね?わかった。持ってくる。⋯今度こそベッドにいてね?」
僕は無視した。