東京の一角にあるVOISINGの事務所。
そこに所属するないこ達は、知り合いのカラフルピーチを誘い、サーカスを見に行くことに。
しかし、サーカスに黒い噂が存在することを知り、雲行きは怪しくなっていく。
そして事務所の近所に2人の少女が現れる。
少女達はとんでもない秘密を持っていた。
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目次
story1
東京のとある一角。
大きな歌い手事務所があった。
皆様ご存知、VOISINGである。
ないこ「みんな、荷物持った?」
全員「はーい!」
ないこ「今日はアニサーを観に行くんだから、忘れ物とかしたら許さないよ」
VOISINGの17名は、最近話題の『アニマルサーカス団』通称アニサーを観に行くことになっていた。
LAN「ないこさーん!」
ないこ「LAN!やっぱり時間きっかりだね」
シクフォニの6人も合流し、全員でアニマルサーカスに向かう。
りうら「あ、そうだ皆さん!今日ドズル社さん達のコネで、更に凄い人達と合流予定なんですよ!」
悠佑「楽しみにしといてや!」
そもそも、何故突然サーカスに行くことになったのかと言うと、ないこがチケットを大量に譲り受けたからである。取引をしているレコード会社が、社員35人の旅行用に購入したチケットだが、社内感染により旅行が中止になってしまった。アニマルサーカスのチケットは返品できず、ないこにチケットを引き渡したのだ。
ないこ「じゃぱぱさん!」
じゃぱぱ「おお!ないこさん!」
VOISINGとシクフォニがいても23人にしかならない。
なら、残りの12枚は?
ないこは自分がコラボしたことがある12人グループ、カラフルピーチに目をつけたのだ。よくコラボしているドズル社達にも声をかけてもらい、チケットを譲った。
じゃぱぱ「まさかないこさんにお誘いいただけるなんて思いませんでした!」
ないこ「突然声かけてしまってすみません。予約変更は済ませてるんで、入りましょう」
35人はカーテンをくぐり、サーカスのテントに足を踏み入れた。
ピエロ「ladies and gentlemen!長らくお待たせいたしました、アニマルサーカス団でございます!」
パチパチパチパチパチパチパチパチ!
ピエロ「本日は団体35名様の貸切となっておりますので、最後までお楽しみください!」
やがてブザーが鳴り、サーカスは始まった。
ピエロ「最初は火の輪くぐり!」
ないこ「おおすげぇ!」
りうら「ライオンが火の輪を潜ってる!」
ピエロ「お次は空中ブランコ!」
ゆう「わぁ!お猿さんがやってる!」
Relu「器用なもんやなぁ」
ピエロ「続いては玉乗り!」
みこと「ほわぁ!?猫ちゃんや!」
こさめ「いけいけぇ!」
ピエロ「今度は綱渡り!」
れむ「リスさんだ!落ちないでね〜!」
うるみや「いっけぇ!もうすぐゴールや!」
ピエロ「最後はバランス芸!」
どぬく「ひえええ・・・あんなに乗ってて大丈夫?」
ヒロ「ちゃんとバランス取れてるのがすごいよね」
じゃぱぱ「今日はありがとうございました!」
ないこ「いえいえ!そんな!」
すると、サーカスを出てからずっとスマホを見ていたすちが、「あの・・・」と画面を見せた。
そこには、とんでもないことが書かれていた。
story2
ないこ「何これ・・・?『アニマルサーカス団の闇に迫る』?」
すち「うん、さっき調べたら出てきたの」
くに「日本に長期滞在予定・・・?」
初兎「あれ、おかしくない?アニサーって世界を回ってるんやろ?」
えと「確かに、でもピエロは『もうすぐアメリカに行くんですよ』って言ってなかった?」
いるま「なんか秘密がありそうだな・・・」
すち「あとね、アニサーのこと検索したら、検索欄に『獣人』って出てきたんだよ」
たっつん「俺、ちょっと獣人のこと調べるわ」
LAN「なんのために日本に長期滞在するんだろ?」
しゃるろ「獣人と何か関係してそう」
たっつん「出た。世界に10万人しかいない幻の種族らしいわ」
アルケー「日本にも100人だけ・・・相当少ないみたいだな」
その後、しばらく黙ってしまったが、結局その場で解散となった。
数日後。
りうら「ないちゃん!」
ないこ「どうしたの?」
りうら「実は・・・会社の前に女の子が倒れてて」
ないこ「え!?」
慌てて外に出ると、そこに白髪ポニーテールの女の子が。
ないこ「ちょっ、大丈夫!?とりあえず中に!」
ないこは女の子を抱き上げて、社内の医務室に連れて行った。
?「ん?ここは・・・?」
ないこ「あ、起きた?」
?「あの、アナタは?」
ないこ「ここはVOISING、俺はないこ」
ないこが「このことは内緒ね」と言いかけた時、
?「ええええええ!?あ、アナタがないこさん!?」
女の子は大袈裟なほど驚き、その場で目を輝かせながら
まゆの「私は乾まゆのです!ないこさんのこと、ずっと尊敬してたんです!」
と深々とお辞儀をしたのだった。
ないこ「尊敬・・・?知ってくれてるのは嬉しいけど、推してるんじゃなくて尊敬?」
まゆの「はい!」
まゆのは何度も頷き、先ほどとは打って変わって真面目に話を始めた。
まゆの「X見ました。アニマルサーカスに行ったそうですね」
ないこ「ああ、うん」
まゆの「ということは、獣人のこともご存知ではありませんか?」
ないこ「そうだけど・・・、まさか君が!?」
まゆの「はい。私は10万人のうちの1人、犬獣人です」
話を聞くと、まゆのはアニマルサーカスに祖父母を殺され、自身も逃げ回っていたのだが、動画配信サービスでないこのことを知ったらしい。アンチに負けず頑張るその姿に感銘を受け、アニマルサーカスをぶっ潰す!と決意したという。
ないこ「そうだったんだ・・・」
まゆの「いきなりですけど、ないこさん!」
“私達の獣人村に来てみませんか?”
story3
同じ頃、カラフルピーチのシェアハウスでは・・・。
じゃぱぱ「ん?」
買い物から帰ってきたじゃぱぱは、家の前に女の子が座り込んでいるのを見つけた。
じゃぱぱ「この子・・・気を失ってる!?」
急いで中に運び入れ、るなに女の子を託した。
るな「じゃぱぱさん!あの子起きました!」
じゃぱぱ「まじ!?すぐ行くわ!」
女の子は椅子に座っていた。
女の子「あたしは墨江琴乃です」
じゃぱぱ「琴乃ちゃん?よろしく」
琴乃「あの・・・その声、じゃぱぱさんですよね?あたし、あなたに勇気をもらえたんです」
じゃぱぱ「え?確かに俺はじゃぱぱだけど・・・勇気をもらえた?」
琴乃「はい!じゃぱぱさんの動画を見て、あたしも頑張らなきゃって思って、アニマルサーカスをぶっ壊してやるって決めたんです」
るな「アニマルサーカスって、少し前に見に行ったやつですよね」
じゃぱぱ「なんでそれを壊すの?」
琴乃「皆さんはアニサーの黒い噂、ご存知ですか?」
じゃぱぱ「あー、なんかすちさんが調べてたな」
琴乃「アニサーは獣人達を捕まえて、サーカスの見せ物にしてるんです。あたしの友達のまゆのちゃんも祖父母を殺されています」
じゃぱぱ「嘘・・・」
琴乃「黒い噂を調べてしまったじゃぱぱさん達も、アニサーに狙われています。あたしが秘密を話さなくても、既にターゲットになってるんですよ」
じゃぱぱ「じゃあ、俺達はどうすればいいの?」
“獣人村に来れば安全なはずです”
ないこ「獣人村?」
まゆの「はい。アニマルサーカスの黒い噂を調べている時点で、皆さんは消される運命にあるんです。特に、アニマルサーカスを最初に調べてしまったすちさん、獣人を知ってしまったたっつんさんは危ないです」
ないこ「あぁ・・・。そういやXに詳しく書いてたっけか」
まゆの「獣人村は結界で隔てられてるので、アニサーは見つけられないはずです」
ないこ「・・・行くしかないのか」
まゆの「あいつらの黒い噂が明らかになっていないのは、秘密を知った人間は1人残らず殺されているからです。このままじゃみんな殺されます」
まゆのの目は真剣だった。
ないこ「わかった。みんなを連れて、獣人村に行くよ」
じゃぱぱ「獣人村・・・」
琴乃「獣人村はあたし達が住む場所です。結界が張られているので、そう簡単に破れはしないでしょう」
じゃぱぱ「よし、それならみんなに話そう。琴乃ちゃんからも説明してくれる?」
琴乃「お任せください!」
story4
じゃぱぱ「みんな来てー!」
じゃぱぱの大声で、メンバーがやってきた。
じゃぱぱ「この子、琴乃ちゃん。琴乃ちゃんから話がある」
たっつん「なんや?」
〜説明中〜
たっつん「はぁ!?獣人のことを調べた俺が1番危ない!?」
琴乃「はい。村長に話はしてるので、言えば村への入り口が開くはずです」
ヒロ「本当にみんな死んじゃうの・・・?」
琴乃「ええ。死にたくないのなら、サーカスをぶっ潰す他ありません」
じゃぱぱ「そういうわけで、しばらくシェアハウスを出て、村に行くしかないんだ」
流石に死ぬのは嫌だと思ったのか、全員一致で村に行く事にした。
『至急メンバーを連れてVOISINGに来て欲しい』
ないこはいれいす以外の各グループリーダーに同様のメッセージを送った。
Coe「どうしたの〜?」
LAN「サーカス見に行ったメンバーじゃないですか」
かなめ「何か緊急事態ですか?」
ないこ「実はね・・・」
〜説明中〜
全員「はあぁぁぁぁぁぁ!?」
Coe「僕達が殺されちゃうかもしれないってこと!?」
LAN「え?え?ちょっ、待っ・・・え!?(パニック中)」
かなめ「なら俺達、どうするんですか!?」
ないこ「そのことはまゆのちゃんから話してもらおう」
まゆの「はい。まず、私は獣人です。アニサーに追われ、ないこさんに助けられました。私は獣人村から来ていて、そこは結界で隔てられてるので、安全です」
ないこ「というわけで、みんなで獣人村に行く」
りうら「え、ちょっと待って?話が急展開すぎてついていけてない」
こったろ「つまりは・・・アニマルサーカスから避難するって感じかな・・・」
暇72「今までの感じだとそうなるな」
しの「でも死にたくないし・・・そうするしかないよね」
こちらも命は大事だったらしい、全員一致で獣人村に行く事が決まった。
?「お父・・・ううん。村長、まゆのちゃんから連絡が来ました」
村長「わかった。では、ゲートを開通させよう」
ブォン
獣人村の村長・|古龍蔵《いにしえりゅうぞう》は、結界石に何かを唱え、入り口を開いた。
村長の娘である|古大弥《いにしえだいや》はそれを後ろで見ていた。
大弥は無表情だったが、哀しそうな目をしていた。
story5
琴乃「ここが獣人村です。あそこにあるのが村長の家です」
琴乃が指差した先には大きなお屋敷があった。家の前に村長らしき男性が立っていた。
村長「ようこそ獣人村へ。私は村長の古龍蔵と申します」
ないこ「初めまして、ないこです」
じゃぱぱ「じゃぱぱです」
Coe「Coeです」
LAN「LANです」
かなめ「かなめです」
村長「琴乃さんとまゆのさんから話は聞いています。どうぞ中へ」
村長は35人を中に招き入れ、椅子を勧めた。
村長「ここは広いから、物を壊したりしなければ好きに見ていただいて構いませんよ」
ないこ達はメンバー達に「リーダー組が話を聞くから、他のところ見てきて」と伝えた。
応接室にないこ、Coe、LAN、かなめ、アルケー、じゃぱぱを残し、メンバー達は他の場所を見に行った。
応接室に置いてある、本棚や絵画が気になった悠佑、如月ゆう、こったろ、すち、ヒロ、のあは応接室に残った。
村長「ここなら、アニマルサーカスに見つかることはないでしょう。ゆっくりして行ってください」
村長は優しそうな男性で、結界石の管理をしているという。
ないこ「ここに日本の獣人全員が住んでいるんですか?」
村長「そうです。100人みんな、ここで平和に暮らしていますよ」
本棚の本を見ていたすちは、部屋の隅で座り込む少女に目が行った。
すちが少女を見ている事に気がついた村長は、笑いながら告げた。
村長「あぁ、その子は私の娘で、大弥というんですよ」
すち「ふーん・・・」
すちは少女に近寄り、目の前でしゃがんで話しかけた。
すち「ねぇ、君だいやって言うの?」
大弥「え、あ・・・はい」
すち「俺、すち。何読んでるの?」
大弥「シャーロック・ホームズです」
すち「そんな難しそうなの読んでるの?すごいね」
大弥「そうですか?えへへ・・・」
すちが隣に座っても、大弥は嫌がらなかった。それを見ていた村長は目を丸くする。
村長「あの少年・・・すごいな」
LAN「何がですか?」
村長「大弥は人見知りで、あまり人に心を開かないんですよ。でも、あんなに楽しそうに話してるのを見るのは、かなり久しぶりです」
LAN「あぁ・・・。すっちーは優しくてほわほわしてますからね、大体初対面でも仲良くなれるんで」
そこに琴乃がやってきた。
琴乃「村長宅に全員住めるほど部屋がなかったので、あたし達が暮らすシェアハウスに来てください」
まゆの「皆さん、同居人を見たら驚くと思いますよ!」
まゆのも後ろからやってきて、楽しそうに笑った。
story6
村長宅になおきり、ゆあん、くに、すち、しゃるろを残し、30人で琴乃達のシェアハウスに向かった。
りうら「でっか・・・」
うり「俺らのシェアハウスよりデケェんだが」
琴乃「こっちです!」
琴乃とまゆのが入り口に案内してくれた。
琴乃「お姉ちゃん!お義兄ちゃーん!」
姉「はーい!」
琴乃「ただいま〜!あと、余ってる10部屋使う事になりそー!」
義兄「えー?そんないきなり〜?」
琴乃が姉と呼ぶその人物を見た途端、歌い手組は驚愕の顔で叫んだ。
歌い手組「まふまふさんと96猫さん!?!?」
96猫「ども、琴乃の姉の96猫よ。名前は墨江|美黒《みくろ》」
まふまふ「96猫の旦那の|麻布真《あさぬのまこと》でーす」
ないこ「まさか96猫さん達レジェンドが住んでいたとは・・・」
96猫「やめてよ、レジェンドだなんて」
まゆの「真兄ちゃんは私の兄でもあるの。私と琴乃ちゃんは親戚なんです」
琴乃「他にも天月さんとそらるさん、キヨ兄ちゃんも住んでます」
じゃぱぱ「え!?あのチャンネル登録者500万人越えの超有名YouTuberの!?」
琴乃「はい!あとで紹介します!」
まゆの「私が住んでるのは孤児院です。この後で案内しますね」
ヒロ、のあ、うり、たっつん、りうら、ほとけ、初兎、如月ゆう、雨乃こさめ、かなめの10人をシェアハウスに残し、20人でまゆのの孤児院に向かった。
まゆの「ここが私の両親がやってる孤児院です」
やってきたのは大きな建物。
まゆの「ここは元々学校なんです。一部屋に4人住んでいて、孤児院で20歳まで過ごした人は、卒院するか孤児院で働き始めるんです」
ないこ「お、大きい・・・」
まゆの「どうせ外界は危険です。ここでしばらく過ごした方がいいですよ」
しの「そうだね・・・。サーカスがどこでかぎ回ってるかわからないし」
そこにいた20人全員は、孤児院の余っていた部屋に住むことが決まった。
琴乃「とりあえずみんなを安全な場所に移せた・・・」
琴乃は自分の部屋でため息をつく。
自分に勇気をくれた人達を、見殺しにはできない。だからこそ決めたことだ。
琴乃「次は・・・奴らとの戦いが待ってるんだもんね。あたし達だけで止めるのは難しい・・・。みんなに助けてもらうしかないけど、みんなはどう思うかな・・・」
琴乃は窓の外をじっと見た。
琴乃の悲しそうな黄色い目は、青く澄んだ空を捉えていた。