死歿の歌シリーズ。
『死は何故か、僕を歌って呼んでいる。』
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目次
死歿の歌 一話
らるらりら らるらりら
誰かが私を呼んでいる
るらりらら るらりらら
誰かが私を呼んでいる
らりららる らりららる
誰かが私を呼んでいる
りららるら りららるら
誰かが私を呼んでいる
ああ閻魔様が呼んでいるのか?
歌を歌いながら 僕は閻魔様を待つ
ああでも僕はあの人に あの人に
呼んでほしいんだ
ららるらり ららるらり
誰かが私を呼んでいる……
人間は誰もが愛を求めている。
愛は人間を嫌っているかもしれない。
人間から愛は、僕らにとって、救済者だと思っているだろう。
一話『指から垂れる血と人間の欲求』
---
ある日、洞窟の奥深くに、僕ら…人間が一番求めていたものがいた。それは、人間が最も必要だと思っているものだ。僕らはそれを必要としているから、なんとしてでも取らないと、いつになっても取るチャンスは来なくなってしまうだろう。
でも、人間が一番求めているものだから、勿論僕ら以外の人間、求めてきた人間がくるだろう。
だが、僕の|腦裏《のうり》でアイデアが思いついた。
『全員いなくなればいいんだ。』
そう思った自分は、深夜に包丁を手に取り、僕が求めているあの洞窟の奥深くへと向かった。
だがしかし、|玄關《げんかん》を出る前に、自分が世界で一番嫌っている母親と父親が、外に出ようとしている自分に対してこう告げた。
父親「こんな夜にへ出かける何処へ出かけるんだ!」
母親「もう寝なさい。」
父親は怒鳴り、母親は親という立場を理解しているのか、子に対して優しい声を発した。
だがしかし、そんな二つの声は、自分によって掻き消された。もうこんな声、二度と聞くか。そう思って、自分は親に向かって、淡々と語った。
『これは決定事項なんだ。絶対に自分を止めるな。』
親は自分が言った言葉を聞いて、呆然としていた。
そして親が呆然としている隙に、自分は玄關を出て、求めているものがある洞窟の奥深くへと向かった。
深夜だから、勿論のこと暗い。懐中電灯を持ってきた、それが自分の唯一の光源だった。
何も|計畫《けいかく》しずに、外に出てきてしまった。仕方がない、洞窟になるべく早く着くために、少しの時間でも進もう、そう思ったので、自分は寝ずに進んだ。
そして、夜がやっと終わり、早朝となった。ついに洞窟についたのだ。自分は喜んでいたが、まだ早い。自分が行きたい場所は、洞窟の奥深くだ。まだまだ道のりは長かった。
洞窟の入る大きな穴の近くには、沢山の人間がいた。この人たちも、狙っているのか。なにかこそこそ恐ろしいことを|計畫《たくら》んでいるかもしれない、自分はそう思った。
自分は大きな穴の近くにいた人間たちを気にしずに、穴の中に入っていった。
多少灯りはついていたが、薄暗かったため、愛用の懐中電灯を使って、前へと進んだ。でも、こんなところに、人間が一番求めているものはあるのだろうか。少し疑ったが、せっかく来たんだ、ちょっとは信じてみようと思い、改めて前へ進んだ。
そして、だいぶ進んだところだった。僕は、広い空間に着いた。人間も大勢いた。
人間はとある特定の場所に集まって、大きな声で話していた。僕もその近くに行ってみた。
ところがどうだろう、人間が輝いた石を食っているではないか。輝いた石、今で言えば|寶石《ほうせき》とも言うものだ。
僕は石を食っている人間に話を聞いてみた。
『あの、なんで食べて…?』
石を食った人間は、こう告げた。
石を食った人間「え、お前知らねえのか?このハートの形をした寶石を食べれば、|女性《にょしょう》からチヤホヤされるらしいぞ。でも、噂じゃねえんだ。本当になった奴がいるんだよ。」
確かに石はハートの形をしていた。
|女性《にょしょう》からチヤホヤされる、自分はこのことに全く興味がなかったのだ。
人間はこんなことを一番求めているのか?僕は期待していたのに、その期待は現地に来てから、一瞬で無くなった。人間の欲求は怖いものだ、とあとから思った。
さらに石を食った人間はこう言った。
石を食った人間「あとさ、マジで結婚したやついるらしいぞ。|女性《にょしょう》から好きになってもらうって最高だろ〜!」
そう言って、石を食った人間は、さらに石を食い始めた。
自分は呆れてしまい、その場でしゃがんだ。
石を食った人間「おい、お前も食べるか。」
『要らない。』
何故ここに来てしまったのか、と誰にも聞こえない小声で呟き、立ち上がった。
石を食った人間「なんだよ、このために来たんだろ、食べろよ。」
そう勧められるが、一切興味は湧かない。
そして、心の中で自分は決断した。そもそも選択肢になかった選択かと思っていたが、意外とあったんだと実感した。自分は|衣嚢《いのう》から、家で用意した包丁を右手で持った。そして、それを石を食った人間に見せつけた。
石を食った人間「は、お前それ…!や、やめろ…!」
石を食った人間は、刺して欲しくないのか、首を振っている。
自分は首を傾げ、石を食った人間に対してこう言った。
『やめてください、でしょ。』
【グサッ!】
この音に、周りにいたみんなが反応した。
「っ!?」
「え…!」
「おい何やってる!!」
自分に、この声たちは届かなかった。
ヒステリアな状態な自分を、阻止することは誰にもできなかった。
何分か経った後、あんなに沢山いた人間は一体どうしたのか。全員倒れ込んでいる。
倒れ込んでいる人間からは、体の何処かから、大量の紫色の血が垂れていたり、出ている。
自分勝手な行動だったかもしれない、だが、人間が愛を求めているのは気に入らない。愛を手に入れても、何の役にも立たない。
自分はこれ以上人間を信じることは辞めた。
だが、外から声がした。
「待ちなさい!|邏卒《らそつ》よ。」
生意気な|女性《にょしょう》邏卒が、自分に対して声をかけた。
「ここから動いたら、撃つわよ。」
そう言って、自分を捕まえようとしているのか近づいてきた。
さあ…捕まえれるのかな?
衣嚢(いのう)=現代でいうと、ポケット。
女性(にょしょう)=女の人。
寶石(ほうせき)=宝石。
腦裏(のうり)=脳裏、頭の中、心の中。
玄關(げんかん)=玄関
計畫(けいかく)=計画。
計畫(たくら)=企む。
ヒステリア=暴力的な精神的動揺状態。
邏卒(らそつ)=現代でいうと、警察。
死歿の歌 二話
らるらりら らるらりら
誰かが私を呼んでいる
るらりらら るらりらら
誰かが私を呼んでいる
らりららる らりららる
誰かが私を呼んでいる
りららるら りららるら
誰かが私を呼んでいる
ああ閻魔様が呼んでいるのか?
歌を歌いながら 僕は閻魔様を待つ
ああでも僕はあの人に あの人に
呼んでほしいんだ
ららるらり ららるらり
誰かが私を呼んでいる……
人間は誰もが愛を求めている。
愛は人間を嫌っているかもしれない。
人間から愛は、僕らにとって、救済者だと思っているだろう。
二話『正義』
---
|女性《にょしょう》の|邏卒《らそつ》が、自分を捕まえようとゆっくりこちらへ歩いてくる。邏卒の手には、黒色の銃を持っていた。
女性の邏卒「あなた、一体ここにきた人たちに何をしたの。」
邏卒は自分に対して問いかけたが、自分は答える気にならなかった。答えてマズイということはないが、自分は、この邏卒の何処か嫌いだったんだ。
そして|女性《にょしょう》の邏卒はこう言った。
女性の邏卒「あなたがやったことは絶対に間違っている。大人しく私に捕まりなさい、これ以上あなたは悪いことをしてはいけない。」
そういって、どんどん邏卒が自分の方に近づいてくる。
そして、自分は邏卒に一声かけた。
『正義ぶってんじゃねえよ。』
女性の邏卒「は…?」
邏卒は一回止まった。そして、邏卒は睨み、自分に言った。
女性の邏卒「あのね、正義ぶってはないわ。私が言っているのは、あなたがやったことは間違ってるから捕まった方がいいということよ。」
『まさか、正義感強すぎでしょ。』
そして邏卒が黙る。
自分は、邏卒が来てからぴたりとも動かさなかった体をようやく動かした。
邏卒「動くな!!」
そういって、自分に銃を向けるが、邏卒の手は、人間を撃つのが怖いのか、震えていた。
自分は、ハートの形をした石の方を見て、あることを思いついた。
確かに、自分にとってはこのハートの形をした石は必要ない。でも、必要としている人がいるはずだ。このハートの形をした石を邏卒にあげたら、勿論正義感が強い邏卒は必要な人に…配ると思う。それが正義なのかはわからなかった。でも、困っている人を助けるのも、正義感が強い人がよくやることの一つだと思っていた。
自分の近所のとある人間は、正義感が強かった。その人は、困っている人を助けたりしていた。でも、正義にも限度がある。やりすぎることがあるのだ。自分もやってもらわなくてもいいことをやってもらった。今でも鮮明に覚えている。
自分は邏卒に言った。
『君は正義感が強い人だ。よければ、この石を必要としている人に配ってあげた方が、いいのではないか?』
女性の邏卒「その石を食べたら周りの|女性《にょしょう》が好いてくれるなんて、そんなのただの噂よ。」
『さあ、どうだろうね。』
そう言って、何十個か石が入った袋を邏卒に渡した。
女性の邏卒「だから噂よ…!要らないわ…!」
『あれ、君…邏卒なんだよね?人間らが、もし欲しがっていたら…まあ邏卒はそんな役割はない。でも、君なら…ね。』
女性の邏卒「はあ…!?」
邏卒は仕方がなくもらった。
そして邏卒は洞窟を出ようとしていた。出ようとする前にこう言った。
女性の邏卒「出直すわ。次こそ、捕まえるから。あなたの罪は重いわ。」
そう言って、帰って行った。
よくよく思ってみると、あの邏卒は一人で来たから、正義感が強いとも言える。
自分は、この洞窟から出て、家に帰らず、広い村をただひたすら歩いた。歩いただけで、特にメリットもデメリットもないんだ。ただ、自分でもわからない、なぜか歩いていたんだ。
そして歩いていたところを急に止めると、あることに気がついた。手を見ると、紫色の血が付いていた。これを見て、自分はこう思った。
『僕は悪い子なの?』
声に出していうほど、思ってしまった。
明日は、またあの洞窟へ行ってみよう。
---
悪い子は、どうなってしまうのだろう。
どうせ、お叱りをいただくのか?それとも、暴力を振るわれるのか?
悪い子なんて、世界に沢山いるでしょう?
…違うか、人間全員悪い子なのか。
君も悪い子、あなたも。そう、お前もだ。
悪い子は、僕らだった。
死歿の歌 三話
よろしくお願いします。
らるらりら らるらりら
誰かが私を呼んでいる
るらりらら るらりらら
誰かが私を呼んでいる
らりららる らりららる
誰かが私を呼んでいる
りららるら りららるら
誰かが私を呼んでいる
ああ閻魔様が呼んでいるのか?
歌を歌いながら 僕は閻魔様を待つ
ああでも僕はあの人に あの人に
呼んでほしいんだ
ららるらり ららるらり
誰かが私を呼んでいる……
人間は誰もが愛を求めている。
愛は人間を嫌っているかもしれない。
人間から愛は、僕らにとって、救済者だと思っているだろう。
三話『裏切り』
---
人間は都合が悪かったら簡単に誰かを裏切ることができる醜い生き物だ。|腦裏《のうり》に、「裏切り」という文字が思い浮かんでくる。自分は「裏切らない」と思っても、結局はしてしまうのが現状だ。
今日は日差しが強い。自分は、近くで拾った麦わら帽子を被った。麦わら帽子についているリボンというものは、|青灰色《せいかいしょく》のような色をしていた。まあ、洞窟に行くから、どうせ麦わら帽子など要らないのだが、と、被った後に思った。
洞窟に入る大きな穴の前に着くと、自分は麦わら帽子を洞窟の中へと投げ捨てた。麦わら帽子は、奥深いところまで落ちただろう。麦わら帽子は、自分には似合わないから、早く捨ててしまおうと思い、今捨てた。そして、洞窟の中へと入って行った。
相変わらず気味が悪い。あまり好きではないが、この前殺した人間の死体はあるのか、また、邏卒どもはいるのか、それが気になったから先に進んだ。まあ邏卒どもは、調査などでここに来てるだろう。
もうすぐ奥深くか?と思ったその時だった。自分の勘は当たったようだ。
邏卒どもが5人ほどいたのだ。なにやら話をしている。その邏卒どもの中には、前日の|女性《にょしょう》の邏卒も居た。
そして、一人の邏卒が、自分の存在に気がついた。
邏卒「あれ、君〜?ここは、立ち入り禁止だよ。」
実は、洞窟の入る大きな穴には、立ち入り禁止の看板があった。だが、自分はそれを無視してこの洞窟に入った。
そして、一人の邏卒が気がついたことによって、この洞窟にいた邏卒が自分に気がついた。
|女性《にょしょう》の邏卒は、自分を睨んだ。
そして、最初に自分に気がついた邏卒が、|女性《にょしょう》の邏卒が自分に睨んだことがわかり、邏卒は、|女性《にょしょう》に問いかけた。
邏卒「なあ、なんで今睨んだ?」
女性の邏卒「…え?」
邏卒「間違えて入っただけだろ、お前連れて行ってあげなよ。」
女性の邏卒「ちょっとまって、彼奴は…!」
邏卒「彼奴って呼ぶな。」
|女性《にょしょう》の邏卒は、下を向いて黙った。だが、動こうともしなかった。
邏卒はこう言った。
邏卒「もしかして、知り合い?」
|女性《にょしょう》の邏卒は首を何回も勢いよく、横に振った。
女性の邏卒「なわけ…ないわよw」
邏卒「でもさ、じゃあなんで睨んだの。」
女性の邏卒「あの人が、この洞窟にいた人たちを殺したのよ…!昨日、現場にいたの!」
邏卒「でも、もしあの子が犯人だったら、何故わざわざこの洞窟へと来る?ここにきて何の得もないさ。」
|女性《にょしょう》の邏卒は黙ってしまった。
邏卒「ごめん、今日の君は何か変だよ。あと、犯人はあの人説が濃厚だろ?もしかして、君が疑っている犯人が、僕が疑ってる犯人より濃厚じゃなくて、悔しがってるのか?」
女性の邏卒「な訳ない…でしょ…!」
邏卒「…一人だけ違う道に行ってるのもおかしいよ。ごめんだけど、もう捜査には協力しないでほしい。」
そう邏卒が言うと、女性の邏卒をここから出そうと、背中を押した。
邏卒「ついでにあの子も連れて行ってね。」
そう言って、捜査に戻ってしまった。
自分は、|女性《にょしょう》の邏卒と一緒に外へ出ると、女性の邏卒はこう言った。
女性の邏卒「彼奴…私を裏切った…!!」
女性の邏卒が涙を流した。だから言っただろう?人間は簡単に裏切ることができる。そして自分は、これをチャンスだと思い、女性の邏卒に話しかけた。
『仲良くなろうよ、永遠に。』
女性の邏卒「は…?」
いつかは、|偽瞞《ぎまん》することになるのだろう。
---
裏切り者を許すことは決して、仲間に許されることはできないだろう。
一人の人が裏切っても、その周りにいた人が裏切り者を庇ったら、きっと庇ったやつも裏切り者となる。
つまり、助けなかった方がハッピーエンドということだ。
裏切り者は、どうせ裏切られる。嘘も見破られる。
所詮、ずっと嘘をつけるとは思っちゃいけない。
ハッピーエンド、このお話は、ハッピーエンド。
この時点ではね…
裏切り者を許すのは禁じられている。
それは、ビターエンドになるからだ。
裏切られる覚悟はできていないといけないのだ。
青灰色=灰色がかった青色
偽瞞=あざむきだますこと。
死歿の歌 四話
らるらりら らるらりら
誰かが私を呼んでいる
るらりらら るらりらら
誰かが私を呼んでいる
らりららる らりららる
誰かが私を呼んでいる
りららるら りららるら
誰かが私を呼んでいる
ああ閻魔様が呼んでいるのか?
歌を歌いながら 僕は閻魔様を待つ
ああでも僕はあの人に あの人に
呼んでほしいんだ
ららるらり ららるらり
誰かが私を呼んでいる……
人間は誰もが愛を求めている。
愛は人間を嫌っているかもしれない。
人間から愛は、僕らにとって、救済者だと思っているだろう。
四話『暗闇』
---
洞窟の入り口、大きな穴のそばを離れた自分と|女性《にょしょう》の邏卒は、地面に座り込み、そのまま会話が生まれない時間を過ごした。
自分は正直にいうと、女性の邏卒と仲間なんて、絶対に無理だと思っている。正義感が強い、自分とあったらすぐに睨んでくる、本当に邏卒か?と思うほどだった。
そして、女性の邏卒が口を開き、自分に対して喋った。
女性の邏卒「仲良くなるって…本当なの?」
まさか、とは心の中で思ったが、そんなこと言ってしまったら、その場で捕まるだろう。勿論嘘をついた。
『うん。君と同じ邏卒に裏切られたんだろう?まあ可哀想だからね。』
女性の邏卒が黙ると、自分は女性の邏卒に言った。
『市電に乗って、どっかいこう。誰にも気づかれない場所へ。』
自分は女性の邏卒の手を掴むと、一緒に駅に行って、市電に乗った。
乗っている時に、一緒にお話をした。
最初に話しかけたのは、女性の邏卒だった。僕のことを知りたいらしく、僕のことについて質問をしてきた。名前は?年齢は?何であの人たちを殺したの?など。だが、自分はどれも答えなかった。
女性の邏卒はムカっとしたのか、外の方を向いた。
自分は特に話そうともしなかった。話すことがないのは当たり前だが、自分のことを答えると、僕が不利になるではないか。だから答えなかった。
市電から降りると、何もない平凡な道を二人で歩き始めた。歩いている途中、|女性《にょしょう》の邏卒が自分に話しかけた。
女性の邏卒「あなた、本当にどこへ行くの?」
『誰にも気づかれない場所、そこに連れて行ってあげる。』
そう言ったら、自分は山の奥を目指して歩き始めた。
そして、だいぶ時間が経った時、山を登りきった。女性の邏卒も息切れをしている。よほど辛かったろう。
頂上は、少し薄暗く、自分にとってあまり好みではないところだった。きっと、人間もあまり好きなところではないだろう。だから、誰にも気づかれないだろう。
だが、山を登りにきた人が気づいてしまう。自分は、この山の頂上への入り口を立ち入り禁止にした。ロープを使って、入れなくなるようにした。
そして、自分は女性の邏卒に言った。
『君は何になりたい?』
単刀直入に言ったが、女性の邏卒は答えてくれた。
女性の邏卒「は、はあ?何になりたいって急に…しかも、私は邏卒よ。子供の頃から邏卒になりたかったの。」
『甘いね甘いね〜。規模が狭い狭い。』
女性の邏卒「な、何よ。夢は何でもいいじゃないの!」
『例えば太陽になりたいとか、神様になりたいとかあるじゃないか。自分はあれを求めていたんだけどな。君にお似合いなのは…天使とか?』
女性の邏卒「馬鹿にしないで!」
そう言って、女性の邏卒はそこら辺にあった石を蹴った。
女性の邏卒「なんならあなたの夢は何なの!」
『僕の夢?僕はね…お友達を作ること。僕も規模狭いよねw』
そう笑うと、女性の邏卒が揶揄うように喋ってきた。
女性の邏卒「はっ…人のこと言えないじゃないの。」
女性の邏卒の一言から、僕は嘘をどんどんつきはじめた。
『僕は規模狭くていいの。ただ、君がどんどん上に進んでいくのが楽しみなんだ。』
女性の邏卒「えっ…?一体何…!」
『だって、僕と君は"友達"だよ。』
過去最大の嘘をついてしまったかもしれない。今まで数えられないほどの嘘をついてきたが、友達という嘘をついたのは初めてかもしれない。
そして、女性の邏卒に問いかけた。
『さあ、決まった?今の夢。』
女性の邏卒「…あなたと友達ねぇ…わかった、あなたは私の夢は天使になることがお似合いって言ってたわよね。じゃあその真逆で悪魔とかどう?面白そうじゃない。」
『真逆かぁ。面白いね。』
女性の邏卒「ありがとう。どこからか勇気が出たような気がするわ。」
『うん。じゃあ僕が"今から"君の願いを叶えてあげるよ。成功するかは知らないけどね。』
女性の邏卒「え?」
気付けば、女性の邏卒の背中には、僕の愛用しているナイフが刺さっていた。刺したところからは、紫色の血が出てきた。ナイフを抜くと、女性の邏卒はその場で倒れた。
騙した、人間を騙したんだ。人間ってこんなにちょろいんだと思った。
女性の邏卒「だま…したな…!」
『エスぺランス、期待しているよ。』
そう言ってから、意識を失ったのか、それとも死んだのか、何も喋らなくなった。
こんなことをしている間に、もうすっかり夜になっていた。暗闇の中、自分は女性の邏卒を置いて行って、山を降りた。
この時、あんなことに気づかなかったことが馬鹿だった。
もう既に、この世界は異変が起きていることに。
---
--- 『愛』 ---
それはとても恐ろしいもの。
愛のせいで、明日が来ない人間もいただろう。
恋愛は、人生には必ずしも必要ではない。
でも、人間は人生に必ず必要だと思っている奴が何人かいる。
でも、愛はこう言った。
【其方らは愛が必要。】
愛を止められる人は誰もいない。
エスぺランス=フランス語で、希望、期待。
死歿の歌 五話
らるらりら らるらりら
誰かが私を呼んでいる
るらりらら るらりらら
誰かが私を呼んでいる
らりららる らりららる
誰かが私を呼んでいる
りららるら りららるら
誰かが私を呼んでいる
ああ閻魔様が呼んでいるのか?
歌を歌いながら 僕は閻魔様を待つ
ああでも僕はあの人に あの人に
呼んでほしいんだ
ららるらり ららるらり
誰かが私を呼んでいる……
人間は誰もが愛を求めている。
愛は人間を嫌っているかもしれない。
人間から愛は、僕らにとって、救済者だと思っているだろう。
五話『今』
---
そう、これは事実なんだ。受け止めれないといけないことだったんだ。でも、自分は受け入れられず、受け止めることに必死だった。
父さんが死んだんだ。
俺は父さんの|死體《したい》を見て、「父さん!父さん!」と叫んだ。だが、死體だから、父さんはピクリとも動かなかった。
家に帰ってから、部屋に引きこもった。ベットは涙でびしょびしょ。俺は父さんに会いたい、部屋にいる間ずっと思っていた。
やっと気持ちが少し落ち着くと、晩ご飯が用意されていた。生姜焼きだった。母さんの手作り料理、俺は大好きだった。今日も美味しかった。
今日も今日とで、母さんと寝食を共にすることができた。でも、父さんとは…
…思い出すと、涙が溢れそうになる。もう、決してこの世界では会えない、たった一人の本当の父親なのだから。でも、俺が次第に大人になっていくにつれて、勉強や仕事で忙しくなり、父さんのことを思い出す時間は無くなった。
父さんが死んだのは、俺が小学四年生のころだった。今でも鮮明に覚えている父さんの顔と体。父さんは、通り魔によって殺された。俺が大人になっても、父さんを殺した通り魔は捕まっていない。捜査も、今は活発には行っていないのだ。よほど手がかりがないのだろう。
父さんは、明るくて元気、子供をよく気にかけてくれた素敵な父さんだった。たまには、楽しいところへ連れて行ったり、ときには勉強を教えてくれたりしてくれた。
また、友達からも好評だった。友達の前では、まるで金持ちのような感じで、欲しいものを買ってあげていた。流石に限度はあったが、友達はとても喜んでいた。
だが、あんな悲劇があるとは思ってもいなかった。
中学生になっても、悲劇のことは忘れられなかった。授業を受けているときも、半分授業、半分父さんのことを考えていた。だが、高校受験で忙しくなってきた中学三年生では、父さんのことはあまり考えられないようになった。
高校の受験は無事に受かった。このあとからだ、問題は。早速、合格のことを母さんや叔父、叔母に伝えに行った。母さんに伝えたとき、母さんはこう言った。
--- 『このことをお父さんにも伝えられたらねぇ…』 ---
こんなこと聞かなければよかった。父さんにも言いたかった。俺が合格を最初に言いたかったのは、父さんだった。
高校生になると、父さんのことはまるですっかり忘れていたようだった。成人すると、仕事で忙しくなり、今度は母さんのことも考えられなくなった。
でも、あの出会いでまた、父さんを思い出すきっかけとなった。22歳のとある日、後輩ができたのだ。後輩になったのは、『青空 |杏《あん》』さんという方が、俺が入っている会社に入社した。結構話が合う人だった。お酒好きで、よくお酒の話をする。
そして何ヶ月か経ったとき、杏さんが俺に告白をしてきた。唐突かもしれないが、告白をしてきたのだ。あの時は両思いではなかったが、杏さんと是非…と思ったので、Okを出した。
その後、結婚をし、杏(竹崎 杏)が子供を産み、今は二人の子供を育てている。生活も充実していて楽しい。
…だが、子供も成長する。一人がどこかへ行ってしまったのだ。俺が強い口調で話してしまったせいかもしれない。一人が、夜中に出かけようとしていたのだ、勿論止めた。
しかし、止められることができず、出て行ってしまった。いわゆる家出か。
…話が長くなってしまったな。最後に一つだけ。
俺は『竹崎 泉』
もし、俺の子供を見かけたら…教えてちょうだいな。
---
『今』、それは、一度過ぎたらもう二度とない時間ということだ。
一歩一歩、共に歩んできた人間たち。
仲間を大切にしてきた人間たち。
もう過ぎたものはしょうがない。
---
死體=死体。
死歿の歌 六話
すみません今回短いです。
らるらりら らるらりら
誰かが私を呼んでいる
るらりらら るらりらら
誰かが私を呼んでいる
らりららる らりららる
誰かが私を呼んでいる
りららるら りららるら
誰かが私を呼んでいる
ああ閻魔様が呼んでいるのか?
歌を歌いながら 僕は閻魔様を待つ
ああでも僕はあの人に あの人に
呼んでほしいんだ
ららるらり ららるらり
誰かが私を呼んでいる……
人間は誰もが愛を求めている。
愛は人間を嫌っているかもしれない。
人間から愛は、僕らにとって、救済者だと思っているだろう。
六話『抗えない』
---
一人の人生のエンドロールが流れた。この人の人生は終わってしまったのだろうか。その一人の関係者や家族、親戚などの名前が載る。…これは夢なのか?
一体、誰のを見ているのだろうか。
竹崎 泉…
エンドロールを見ていて、はっきりと見えた名前は『竹崎 泉』だった。
自分が見て、好きな名前でもなく、嫌いな名前でもない。
ただ一つ、事実がある。竹崎 泉は、僕の父親ということ。君も最初に見てたでしょ、僕はあまり父親は好きではないよ。聞きたくもない名前だ。だって、母親と愛し合っている人間の一人なのだから。
でも、今は一人で聞いていたいんだ、この名前が。
---
愛が心というものを生み出し、ついに|人閒《にんげん》を従わすことができるようになりました。
人閒は愛を深く愛しています。なので、従わされられるのも、きっと嬉しいことでしょう。
愛は、全ての人閒の心を侵略します。そのため、愛に逆らえるものは、誰もいない。
明日はきっと、愛があなたを選んでくれます。それでは、今日にさよならを。明日にあいさつを。
【誰かが、僕を呼んでいる。】
《誰かが、私を呼んでいる。》
【ああ神様が呼んでいるのか?】
《ああ閻魔様が呼んでいるのか?》
【僕はきっと、天国行き。】
《私はきっと、地獄行き》
【僕はいいことをしたのだから。】《私はわるいことをしたのだから。》
この声が聞こえたあなたはラッキーかもしれない。
そう思って、僕はそこらへんの草をむしる。
僕はいいことをした。それは確かなことだ。だって、この前の|女性《にょしょう》の邏卒のことだって、なりたいって言ってた夢を叶えてあげるために、一歩近づかせてあげた。これっていいことでしょ?
だから、死んでも僕は天国行き、きっと閻魔様は僕の行き先を天国と選んでくれるよ。だって、閻魔様だから。
窓の隙間から、冷たい風が吹いてくる。凍えるほど寒くはないが、冬なのかと実感させられる寒い風だった。
明日、天気予報によると、雨が降るらしい。
人閒=人間
死歿の歌 七話
七話です。
ちなみに七話で主人公初登場です。
らるらりら らるらりら
誰かが私を呼んでいる
るらりらら るらりらら
誰かが私を呼んでいる
らりららる らりららる
誰かが私を呼んでいる
りららるら りららるら
誰かが私を呼んでいる
ああ閻魔様が呼んでいるのか?
歌を歌いながら 僕は閻魔様を待つ
ああでも僕はあの人に あの人に
呼んでほしいんだ
ららるらり ららるらり
誰かが私を呼んでいる……
人間は誰もが愛を求めている。
愛は人間を嫌っているかもしれない。
人間から愛は、僕らにとって、救済者だと思っているだろう。
七話『主人公、今前へ進め。』
---
今日は、昨日思った通り雨だった。
冷たい雨に濡れながら、座れそうな岩の上に座った。岩は濡れていたが、自分はもう濡れていたので、気にすることもなかった。
誰もいないけど、ひとりぼっちが好きだからここにいる。誰にも見つからない場所へ来たと同じだ。
ただ地面を見ていた、その時だった。足音が聞こえてきたのだ。
足音が聞こえる方を向くと、びしょ濡れの|女性《にょしょう》が、こっちへ近づいてきた。口が動いている、何か喋っているのかもしれないが、僕には|女性《にょしょう》の声が聞こえなかった。
そして、僕の前で倒れた。
顔が真っ青になっている。服も、着替えがないのかと思うぐらい破れていた。そして、一番印象に残ったのは、この|女性《にょしょう》が来ていた服に、一つの紙が張り付いてあったことだ。大体場所は、背中。誰かの悪戯?とも思えるようなところに貼り付けてあった。しかも、紙には字と思えるものが見えていた。
|女性《にょしょう》が倒れた後に、自分は|女性《にょしょう》の背中に貼り付けてあった紙を取った。そして、その紙に何か書かれてないかと紙を見た。
だが、紙には自分の予想より遥かに超えている内容が書かれてあった。
【自分は脇役。】
【みんなが幸せになったら、自分はそれでいい。】
【脇役は脇役として生活しないといけないの。】
【悪者。】
【主役はみんな、自分は悪者。】
【バカ、あほ、なんでこんなに自分って変なの?】
この紙に書いてあった内容は、自分への悪口だったのかもしれない。
とにかく、紙にびっしり書かれていた文字は、薄く、誰にも読めないようにしたような文字だった。
そういえばそうだ、早くこの|女性《にょしょう》を雨が当たらないところへ連れて行かなければ、まだ雨が降っていたため、自分は大きい|女性《にょしょう》の体をおんぶして、屋根がある場所へと連れていった。
幸い、近くに屋根があるバス停があったため、バス停にあった椅子の上に座らせた。
髪の毛にゴミもついている…、いったいどこから来たのだろうか…。不思議な|女性《にょしょう》。じっと見つめていると、女性が起きた。少しびっくりした。
そして、女性は僕に話しかけてきた。
女性「誰ですか…?」
まあ僕のことを知らないからまずはそう聞くとは思っていた。そして、自分はそれに答えた。
『う〜ん…君を助けた存在かなぁ。大丈夫だった?』
女性「あ、はい…助かりました…」
そういうと、女性が立ちあがろうとした。しかし、足はガクガクしているし、手も凍りつくような冷たさだった、女性はフラフラで、倒れそうになった。
『大丈夫じゃないよね。家は?』
そう聞くと、女性はなぜか黙ってしまった。家がないかもしれない、そう思った僕はある提案をした。
『ねえねえねえ、家がないならいい提案をしてあげるよ。それはね…』
しかし、
女性「いらないです…私がその提案を受け入れる権利はないので…」
そう言って、女性は僕と目線を合わせないようになった。
雨はいつのまにかすっかりやんで、虹が出た。
女性「私、あなたみたいな主役じゃないので。」
そう言って、女性は去っていった。止めようとしたが、止められなかった。
死没の歌 八話最終話
ストーリー短くてすみません…。
らるらりら らるらりら
誰かが私を呼んでいる
るらりらら るらりらら
誰かが私を呼んでいる
らりららる らりららる
誰かが私を呼んでいる
りららるら りららるら
誰かが私を呼んでいる
ああ閻魔様が呼んでいるのか?
歌を歌いながら 僕は閻魔様を待つ
ああでも僕はあの人に あの人に
呼んでほしいんだ
ららるらり ららるらり
誰かが私を呼んでいる……
人間は誰もが愛を求めている。
愛は人間を嫌っているかもしれない。
人間から愛は、僕らにとって、救済者だと思っているだろう。
八話『歌』
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今日はやけに静かだった。
昨日は、とある少女が倒れたりフラフラだったり、そして自分への暴言の数々。一体何だったんだと思う。でも、そんなことはあっという間に過ぎた。
自分は今、自分の部屋にいる。とは言っても、部屋というよりは洞窟と言ったほうがいいか。以前に言ったが、自分は家出した。もう父や母は、家出した僕を受け入れてくれないだろう、そんなことは知っている。勿論、家の方がきっと住みやすい。でも、今は洞窟にいたいんだ。誰もいない、静かで安心できて、何故か隣に誰かがいるような気がして…
まあどうせただの自分の妄想だ。
しばらく洞窟にいると、外から声が聞こえてきた。もしかして、この洞窟に来たかもしれない、そう思った。けれど、それは違った。|女性《にょしょう》が外で歌を歌っているではないか。
聞いていると、何故か懐かしいような歌。でも、聞いたことない歌。寒い風が吹いている中、たった一人で歌っていた。
その女性は、この前の女性と似ている。でも、この女性をみると、なぜか一緒にいたくなる感じかする。家族のように。
そして、歌を歌い終わったのか、急に歌を歌うのをやめると、|女性《にょしょう》は、いつの間にかいなくなっていた。
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悲報だ。今世紀一番の悲報かもしれない。
杏がいない。杏がいないんだ。俺の唯一の母、杏がいないんだ。
2期決定しました。
でも、あんまり投稿遅くなるかもです。よろしくお願いします。
2期で恐らく全てがわかるでしょう。
今のままじゃ、一体何が起こったかわからないだろうし。
でも安心してください。この小説の文字数をご覧ください。
…もうわかりましたよね?結末は___