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太陽のせい
2026/06/29 太陽のせい
「お前また、嘘ついたのかよ…。」
佐川が呆れたようにつぶやいた。私は思わず口元に力を入れて、それから「ついてない!」と言った。嘘ついてない、ということ自体が嘘だった。佐川も当然それくらいわかってるんだろうが何も言わずに息を吐いた。むかついた。言いたいことがあるのなら言えばいいのに、もったいぶらずに放てばいいのに、それは遠慮なのか、もちろん遠慮なんかじゃないんだろうってそれくらいは流石にわかるよ、選択肢として出しただけで…だからこれは見放しなのか、見放しなんだろうな。もやもやとぐるぐると、頭の中で回るそれを捕まえて、私は佐川に差し出した。
「なに、悪いの。」
「わるかねえよ、好きにすりゃいいんじゃねえの。」
ひどく冷たく響いた佐川の言葉に私は驚きを隠せなかった。驚きというか困惑というか動揺。困惑と動揺はかなり≒だけどともかくそんな感じで、どもった。「な、あ、はあ、そう。」それでも平静を装った。視線が泳ぎすぎたのでバレバレだったはずだ。無意味。
「そんなこと繰り返してたら、…あーいや。」
佐川はそこで止めてなんでもない、と言いたげに首を横に振った。もやもやが、頭の中で回るだけじゃなくて、増殖していく。埋め尽くしてきて鬱陶しい。振り払うように私は声を張り上げた。
「はっきり言いなよ!」
佐川はびくっと肩から頭にかけてを震わせた。それも一瞬ですぐに眉をひそめたけど。睨み合う。睨んでいるのはもしかしたら私だけなのかもしれない、佐川は元から目つきが悪いので私は今睨まれているのか睨まれていないのかよくわからない。
言うことなんかねえよ、と佐川は吐息混じりに吐き出した。
私は少し、傷ついた気がした。
「あっそう。私も言うこと、なんてないから、じゃあね、おせっかいやめてね!」
多分気のせいだった。私は通学カバンを掴むと踵を返して部室を出た。完全に開き切っていないドアにぶつかって腕が痛かったがそれに反応するのも癪だったので無視して突き進んだ。廊下を歩いているとちょうど部活にやってきたらしい先輩とすれ違って「え、鍵空いてなかったー?」などと言われたが「帰ります、予定できたので!」とだけ答えて歩みも止めずに立ち去った。
イライラして、億劫で、焦燥もあったし、どこかに罪悪感もあったかもしれないが、とにかくメインはイライラだったし、しかしそれを肯定したくなかった。できれば億劫の方をこの状況でのメインの感情にしたかった、そっちがなるべきだと思った。だが感情をそんなふうにコントロールできるなら佐川に対抗してムキになることだってなかったわけだし、だからつまり私は私をコントロールすることがとにかく苦手なのかもしれないけど、それは今考えることではないし、じゃあ今なにをするべきなのかというと感情のコントロールで、でもコントロールが苦手だから…なんていう無限ループに陥った思考回路に対してのイライラも生まれた。
学校を出て10分ほどにあるバス停に着くと腕時計と時刻表を見比べて次のバスまであと何分か確認した。2分。きっとあっという間。ベンチに座り、足はとっくに地面につくのに子供みたいにぶらぶらと持て余すふりをした。
じりじり照らす太陽は、全てを追い込むよう、あるいは包み込むようだった。