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目次
人の形をしたデータ達
毎度の如く書きたいシーンがあっただけなのでそこ以外が変になっているのと結構な間全然違う書き方で書いていた為視点がぐちゃぐちゃになっております
一回間が空いたら視点か場面が変わったと思ってください
大体は一人称や口調で差があります
「人形を燃やせ!」
そんな声が聞こえたのはいつか、私は分からない
人間達は綺麗な布を纏い、穢れを知らない髪を持ち、無垢な瞳を持った生き物をいつしか人形と呼び始めた
それがただ美しく無垢な事を罪とし
燃やし、刻み、消した
そして人形は意思を持ったものを主としそれに反抗し恨みを持ち争った
そんな中でも一部の人間が人形の事をデータとし
残した
そのデータは数年後、現在
人形はまだ批判される存在でありながら人間に馴染み、判断が難しいものへ変化した
未だ見つかれば処分されると分かりながらも自らの意思を持った人形は、今でも人間を恨みながら世間へと混じっていた
「…人形ってまじでいるのかもわからないのに、なんでこんな本があるんだ」
「いやー、一様じゃない?」
「人間を恨んでるっことは危ないんだろ?一様じゃやばいだろ」
「浅義は真面目だなぁ」
「揶揄うな、擬波」
「なはは」
青空に白が浮かぶような普通な日、その下で2人は歩いていた
「ん?」
「あ?どうした擬波」
「…なんかいる」
「……幽霊とかじゃないだろうな」
「何、怖いの浅義?」
「そ、そんなわけないだろ…まて、あれ、人じゃないか?」
「…それってやばくない?」
「擬波、携帯準備しておけよ、やばそうなら救急車だ」
「わかってる」
2人は駆け足で倒れている人へ近づいていく
そこにあったのは黒髪を散らばしてローブをきた人であった
「…大丈夫ですか」
「え、浅義、これどっちだと思う?」
「は?」
「男女!」
「アホなこと言ってる暇あるなら呼びかけろ」
「いやだって、この人寝てるだけじゃん?」
「は?」
体に触れ、確認しても脈も呼吸もあり、普通である事が判明した
「ほらね?」
「…で、なんで男女なんだよ」
「だって、髪の長さ微妙だし、ローブ着てるしなーって」
「そんな関係ないだろ」
擬波がバサっと音を立ててローブを捲る、さらっと下半身を覗いている
「女だ!」
「そーだろうな変態野郎自主してこい面会は行かないでおいてやるよ」
「せめて来てよそこはぁ!」
騒ぐ中、眠っていた少女は目を覚ました
「だれですか」
「…おきた!」
「当たり前だろこんなに騒げば!」
「誰ですか」
「あー、僕は擬波、で、こっちの眼鏡が浅義!」
「誰が眼鏡だ」
「私は、05です」
「…05?数字なの?」
「あだ名とかじゃないのか?」
「05、です」
「…どうするよ浅義〜」
「名前が数字って事は、お前人形か?」
「…どゆことだ?」
「この本に書いてあったんだよ、人形は数字で名前でつけられていたって」
擬波が覗いた浅義の手に抱えられた本には[その時代、人形達は製造順の番号で呼ばれていた]と書かれていた
「はい、私達は製造番号05、初期体の人形です」
「初期体?」
「私達には体名があり、100までが初期体、500までが順化体、それ以降が進化体と決められています」
「人形なら処理班に連絡、した方がいいのか」
「…いや、どうせならさ浅義、連れて帰らない?」
「は?」
「これは古いやつなんでしょ?ならよくない?」
「何言ってんだよ古いなら尚更っ!」
「浅義、頼むよ」
なんの気の迷いか、擬波の言葉の後気付いた時には俺らの家の中には、古い、初期体の人形が住むことになってしまった、あの時のあいつの少し濁ったような瞳はもう見たくない
「浅義〜?食べないの?」
「いや食べるよ、いただきます」
「いっぱい食べろよ?痩せてんだからさぁ」
「うるさい、お前は食べないのか」
「もう食べたから大丈夫、人形ちゃんの所行ってくるからゆっくり食べなね」
「はいはい」
数年前から、2人でこの空き家に住んでいた
俺は家出で、出た数年後には親が死んだ事を知って、擬波は親がいなくて、ずっとこの空き家に住んでいて、
家事は殆ど擬波が、でもあいつはずっと俺の前でご飯を食べた事も寝た事もない、気になった事はない、気にしても意味はないだろうから
テレビからうるさくニュースキャスターの声が聞こえてくる、いつも変わらず処理班の殺害事件のニュースだけが流れてくる
犯人も不明、手段も不明、わかってるのはみんな刺されて死んでる事だけ、俺らが知っても意味はないだろうに
「あれ、まだ食べてるの?」
「擬波、もうよかったのか」
「あぁ、人形ちゃんの事?色々聞いてきただけだからね、大丈夫」
「それにしてもどうするんだ、あの人形」
「んー?処理班には渡すつもりないよ?」
「だろうとは思ったが、このまま保護してバレた時はどうするつもりだ」
「切り捨てるよ、そりゃね、浅義の方が大切だし」
「相変わらずの乙女ゲー台詞だな」
「乙女ゲーって何?」
「兄がやってた女を口説くゲーム」
「あはっ僕口説いてないよ?本音だし」
「はいはい、先風呂は入るぞ」
「はーい」
「ねぇ浅義、テレビ消したい」
「勝手に消していいぞ?」
「はーい」
プツッと消える画面
「やっぱりうるさいなぁ、テレビ」
僕はずっとこの家にいた、だから家事はできる、まぁ僕的にはいらないけどね
浅義はいつも、何も言わないでくれるし察してくれるし、毎日が楽しい
このままでいれたらいいのにね
「浅義〜!ちょっと散歩してくるね!」
そういったら
「夜遅いからちゃんと警戒はしておけよ」
心配で返してくれる浅義が大好きだよ
「はーい」
もう少し疑いは持ってほしいけど
鳥の声が聞こえて、外を見るとまた雲に隠された青が見えて目が覚める、部屋をでて階段を降りる
「おはよう」
「あ、おはよう浅義!」
毎日こいつは俺より早く起きて朝食を作っている
「…ほんとお前いつ起きてんだ?」
「いつだろうね〜、そういえばあの子の名前どうする?」
「は?」
「だって05って呼びずらいでしょ?」
「まぁ、でも…」
「なぁに、やっぱり面倒ごとは嫌い?」
「それはそうだが、名付けなんてした事ない」
「ま、それはそうだよね〜」
「お前は名前の案あるのか?」
「ん?」
「そんな事を言い出すんだ、あるだろ?」
「えーじゃあレイファとか?」
「レイファ?」
「0ってレイって読めるし、5をファイブにしててーいってした」
「雑だな」
「でも、よくない?」
「まぁ悪くはないが…その事言わなくていいのか?」
「あ!確かに忘れてたや」
「連れてきてやれよ」
「はーい!」
パタパタと足音を鳴らして擬波は部屋へ向かう、少し聞こえた何かにひびが入ったような音に俺は気にしないフリをした
「おーい、起きてる?05ちゃん」
「意識は浮上しています、ご用でしょうか」
「少し、着いてきて?」
「はい」
素直についてくる05ちゃんは少し子供みたいで、多分パッチ取れちゃったのかな?自我はあるけど命令遵守してるしなぁ
「浅義〜!連れてきたよ!」
「声が大きい」
「何のご用でしょうか」
「…名前変更してもいいか?」
「名称変更権は消失しておりますので、変更は不可です、その代わり、呼び名を変更する事は可能です」
「なら、呼び名をレイファにしてくれ」
「了解いたしました」
「…なんか機械みたいだな」
「あぁ、パッチないみたいだしね」
「パッチ?」
「人形にはパッチがあるんだよ、自我を表に出す為のものらしいけどね」
「なんで知ってんだ?」
「井戸端会議!」
「なんて話してんだよ」
「猫って詳しいね!」
「それは井戸端じゃねぇだろ猫集会にいくな」
「他にご用はありますか」
「…レイファは、記憶はあるのか?」
「記憶ですか、記録ならございますが記憶と名のつくデータは私にはありません」
「そうか」
少し首を傾げて微笑むその姿はあまりにも人間にしか見えなかった、話す姿も少し目を転がすような動きも、姿だけは人間としか思えなかった
「なーに、浅義、やっぱり人間に思っちゃう?」
「あぁ、見た目が人間にしか見えない」
「…まぁ、今の人形ってみんな演技が得意だからねぇ」
「なんで詳しいんだよ」
「犬って嗅覚がいいんだよ!」
「お前は人間だろ」
「そこなんだ」
「?じゃあどこだよ」
「ううん、…でも、浅義」
「なんだよ」
「もし、僕が人形なら、どうする?」
「あ?そんなの決まってる」
「どうするの?」
「レイファと一緒に隠す」
「…いいんだ」
「一般のルールより仲間だろ」
「仲間?友達じゃないのぉ?」
「それは置いといて、まず俺達は元々一般からのはぐれものだ、なら、一般から思考が外れてても不思議じゃないだろ?」
「わー浅義カッコいいねぇ〜!」
「煽るなアホ」
「あは、ごめんね」
「もうご飯買いに行くからな」
「え、浅義が行くの?僕行くよ?」
「もうそろそろ俺も自立できるようにしないとな、いつまでもお前に任せきりは嫌だ」
「…なら今日の夕飯カレーにするから、具材買ってきて?」
「わかった、行ってくる」
「…」
扉の閉じる音と鍵を回す音が聞こえた
「レイファちゃん」
目の前の人形は綺麗な姿勢で目を向ける
「はい、なんでしょうか」
「パッチ、あったらほしい?」
「所持しているので?この国では人形の自我パッチは上層部しか所持していないと聞いたのですが」
「うん、そうだよ、これはちょっと色々あってゲットした特殊なの」
キラリと反射したパッチをレイファの前に置く
「ほしいなら、あげるよ」
「…いただきます」
パッチを手のひらの器にいれ微量の電子音の後、目を開けるとハイライトが光る様な瞳へと変わった
「ありがとうございます、擬波さん」
「ううん、僕はいらないからねぇ」
「何か、できる事はありますか?」
「できる事?」
「お礼をするのは当たり前ですよね」
「…あ、なら夜、僕が散歩に出た後は浅義が外に出ない様にしてよ、寝る様に促したりしてさ」
「わかりました、ですが何故?」
「…気になるなら今日は一緒に散歩する?」
「一緒に、ですか」
「そしたら、わかるでしょ?」
「了解しました」
まぁ、レイファちゃんも馬鹿ではないだろうしね、いざとなったら迷子になった間にとでも言えば浅義はわかるだろうしね
「ん?あれ浅義?」
「どうかしましたか」
「いや、電話」
「どうしたの?」
[擬波、お茶パックってどれだけあるかわかるか?]
「えーと、たしか一袋だと思うよ」
[わかった、じゃあ一つ買ってくな]
「おっけー!よろしくね」
可愛いなぁ
「さ、レイファちゃん、ご飯炊くの手伝ってもらってもいい?」
「はい、何合ですか?」
「ごめん覚えてないや」
「勝手に入れますよ」
「おっけー3合で」
「わかりました」
「ちなみに言わなかったらどれだけやるつもりだったの?」
「ちょっと多めに10合ほど」
「やりすぎじゃない?」
「私はいっぱい食べれるので」
「ここには人間がいますが??」
「知りません」
扉の開く音が聞こえた
意外と早かったなぁ
「おーい擬波、帰ったぞ」
「おかえり浅義!」
「…レイファにハイライトがある⁈」
「はい、つきました」
「つきました⁈つけるもんなのこれ」
「あ、今ご飯用意するね!」
「はーい!」
こんにちは皆さん、今日からデータ保存の為にこんにちは、レイファです
いきなり始まって驚いているかも知れませんが
とりあえずピースですピース
「レイファ?どうしたいきなり」
「いえ何も」
すみませんついそのままやってしまいました
私は人形なのですがチップをいただいたのでこんな元気になりましたいぇーい
あ、もちろんデータですのでこんな事もできますよいぇーい🏠✌️
まぁそんな事は置いておいて、美味しいカレーを食べた後、私は擬波さんのお散歩についていきます、少し楽しそうなので楽しみです
「ごちそうさま、風呂って沸いてるか?」
「沸いてるよ、入る?」
「うん」
「じゃあその間散歩行ってるね、今日はレイファもいっしょ」
「2人で行くのか、どうせなら牛乳買ってきてくれるか?」
「いいよ!明日はクッキーでも作るの?」
時々、日頃のお礼でクッキーやチョコを作って渡す事がある、擬波は何故か毎回手作りを望むから作ってる、その割には食べてる所みた事ないけど
毎回美味しかったって言われるから気にしてはいない
「じゃあ行ってくるね」
「行ってきます」
「いってらっしゃい」
また後ろから処理班の連続殺人についてニュースキャスターが話し始めた頃2人は外に行って俺は風呂に入る準備をする
誰もニュースには触れない、レイファは気にしてないだろうし、俺は擬波があのニュースが嫌いな事はわかってるしあいつはその話が嫌いだから
「風呂入るか」
えーこんにちは、レイファです
拝啓、マスター、私は今人間って怖いと思っています、人間は愛が重いとこうなることを知りました、知りたくなかったです
「どうしたの?レイファちゃん」
「…いえ、大丈夫です」
私には過激なものは別のものに見える機能がありますが、
こんな沢山の赤い宝石が落ちているのは記録内では初めてです
「さ、帰ろっか」
「始末はいいので?」
「…あーそっか初期体だったね、大丈夫、誰かがやってくれるから」
「そうですか」
早く帰らないと、いけない気はしました
少し遠くから、特徴的なサイレンが聞こえています
青空と鳥の声の下、どんどんと音が聞こえた
「おい擬波!起きろ、人形のこと調べに行くぞ」
「…どーしたの?」
せっかくゆっくり休んでたけど、浅義なら仕方ないなぁ
「レイファの事、知りたいから」
「それなら僕が知ってるよ?」
「世間からの情報も欲しいんだ」
「浅義は見つかったら危ないんだよ」
「だからで興味は打ち消せない」
「本人に聞くのは?」
「言いたくない事があるかもしれない」
「そんなに行きたいの?」
「…あぁ」
「そっかぁ、仕方ないね、行こっか」
「さんきゅ、擬波」
「…お二人はお出かけですか」
少し不恰好なもじで図書館行ってくるねと書かれた紙を持った
「どうしましょうか…私もお出かけしますか」
何を買いましょうか、お金があるわけではないですから、少し食事でも買いましょうか
と、思って外に来たのですが…
なぜ浅義さんと誰かが言い争う場面に…?
というか擬波さんはどちらに?
「だから!もう帰らないって言ってるだろ!」
「あぁ…可哀想に、やっぱり外になんて出すべきじゃなかったのね、こんなにも痩せて」
「はぁ⁈前の方が痩せてたぞ脳だけじゃなく目もまともに使えないのか!」
すごい言い争いですね…語彙力が
これは…まぁいいでしょう迎えにでも行きますか
「浅義さん?」
「レイファ!ちょうどいいさっさと帰るから荷物持ってくれ」
「はい」
「人形…?…きゃぁぁ!」
お相手の方がいきなりヒステリックな高音を出す、うるさい…
「だれか!処理班を呼んで!ここに人形がいるわ!」
「いい加減にしろ!レイファ、早くいくぞ!」
騒ぎにつられて集まり出した人たちの中、浅義さんに引かれ歩く、後ろからはずっとヒステリックな声が聞こえる、それを無視して、家へ帰った
家の扉を思いっきり開ける
少し驚いた顔をこちらを見る擬波にたまらず抱きついた
「お、おかえり…え、どうしたの?」
「えーと、どなたかはわかりませんが、言い争いをしておりまして」
「母さん、あれ母さんだよ、俺の」
「あのヒステリックなムンクのような顔をした方がですか?似てませんね」
「整形とメイクの産物、ろくな結果になってないだけだ」
「…ここももうすぐかな?」
「あぁ、移動しないとな」
「あの…ちなみに何故擬波さんは家に?」
「借りた本を置きに先帰ったんだよ、一緒にいればよかったな」
少しの沈黙の後、私は決めました
「…擬波さん、これ持っててもらえませんか?」
私は、人形ですから、データを移すことは簡単ですから
「わかった、…無茶はするなよ」
「はい、おやすみなさい」
「…レイファ、いるか?」
おやすみと言った後、どうしても1人は無理で、擬波をいつも通り散歩に送り、今はレイファの部屋前にいた
小さくあいた音がした
「…どうしましたか?」
「少し、話していいか」
「どうぞ」
レイファの部屋へ入ると殺風景な白の部屋、家具はベッドだけで窓は開かれ風がカーテンを押している
「家族の話、していいか」
「もちろん」
「浅義正斗って、知ってるか?」
「有名な政治家一家のご子息ですね、数年前から行方不明の」
「それ俺」
「…何故ここに?」
「母さん達、俺の話一切聞かないしなんなら外にも出してくれなかった、人形に会ったら危ないからの一点張りで」
「だから家出したと」
「簡単だった、ご飯の時についてたフォークを思いっきり窓に投げて割って、2階だったからすごい痛かったけど、走れたからそのまま逃げて、擬波と会った」
こんな事を話す気はなかった、
でも話す事がなかったものあったけどすらすらと言葉がでてくる
なんで人形が嫌われてるのか、いや
なんで戦争なんかしたのかも知らない
でもこれだけはわかった
俺はずっと理解できない事が
雲に覆われた月夜の下、
ずっと話して、途中で目から流れた雫が頬を伝った、それも無視して話した
泣き疲れたのか、話疲れたのか、
そのまま目を閉じた
目を閉じる時、月光が途切れた時
レイファはハイライトのない目で微笑んでいた
「浅義、寝た?」
話し疲れて寝てしまった浅義さんを撫でながら
擬波さんは問いかけた
「えぇ、疲れなので簡単には目覚めないと思われます」
「そ」
簡単な返事、浅義さんの意思に反する行動をすると決めた私にふざけるなとでも言いたげな瞳
それすらも月を反射して光る
羨ましい、と思った事もありました
人形の初期体に、意思のなかった私達には光はなかったのですから
私達人形の初期体は、人間に近くとも近すぎないものを作るべく作られ、飲食をする機能はありましたがパッチの有無により瞳の光の有無が変わるようになりました
最初の数機以外はみなパッチをつける資格はなくただ無機質に過ごしていました、
戦争の起こった頃でも同じ
みな、何も言わず壊れていきました
生き残った人形達も、処理班の発足によりほぼ壊れました
処理班は、発足時私達の研究所を襲撃しました
ハイライトの入った数機は誘拐された人間だと判断され保護、私達はみな有害な人形だと処分
私は逃げました
できるだけ遠くへ、だからこんな事になるなんて思ってもいませんでした
もうこの時から、人間に人形を判断する事はできない事がわかってしまった
ハイライトの有無で人間を見分けてしまうのなら、パッチさえあれば分からなくなってしまうのに
「レイファ」
「はい」
「いくよ」
「…はい、擬波さん」
少しノイズが混じるチャイムの音がする
「擬波さん」
「何」
「絶対逃げ切ってくださいね」
「当たり前、浅義はあんな奴らに絶対渡さない」
「…擬波さんも、ですよ」
「…できたらな」
少しずつ、ノックも混ざってくる
罵声すらも聞こえてくる
いつから処理班は悪口の巣窟になったのかなんて
考えたくないな
レイファは玄関でただ無機質に立っている
僕は眠ってる浅義を持ってここを離れる
絶対壊されるだろうなぁ、レイファは
そんなこと分かってても僕らは浅義に笑っててほしいと思ってしまったから
「じゃあね、レイファ」
「えぇ、また、擬波さん」
もうレイファの顔は見る気にもなれなかった
ドンドンと音が聞こえてくる
擬波さんはもう行ってくれたでしょうか
浅義さん、私達の事調べていてくれたけれどどこまで本当の事のっていたのでしょうか、
大体は嘘がのっていますから
もう少し話したかったです
こんな簡単に別れが来るなら再会も簡単に来てくれたら嬉しいです
「また、会いましょう」
扉の開いた音と走る音が窓の開く音と同時に聞こえました
「浅義、行くよ〜…」
眠ったままの浅義を抱えて窓を開けた
2階だからか風が吹いてくる
とんっと窓の縁を足蹴に落ちる
ざわざわとした声達を無視して走る
路地裏や小さな屋根を通っていく
浅義の時々の呻く声だけが僕の耳はとらえていたけど、ポツポツと嫌な音が聞こえてきた
「あー…どこか屋根ないの…?」
カラッと音がした
「そこの人、よかったら入ってください」
「ん…」
目が覚めたら全然違う場所
いや何があった
「起きましたか?」
「えっと…誰ですか」
「私は明莉紗です、たまたま貴方を抱えた人がベランダにいたので、そのまま入ってもらいました」
「擬波は…」
「擬波さんなら隣の部屋にニニといますよ」
ドタドタと走る音が近づいてくる
大きい音を立ててドアが開く
「浅義〜!おはよう!」
「擬波!」
「擬波さん、声小さくしてください、近所迷惑ですよ?」
「あ、ごめん」
「擬波、なんでここにいるんだ?俺達は、レイファは?」
「レイファはここにはいない、どこにいるかは知らないけどね」
「置いてきたのか?」
「いや?レイファの意思だよ」
「…現状把握は私のいない所でお願いしても?」
少し不満そうな顔で明莉紗が呟く
確かにまだ幼い子の前で話す話ではないな
「そうだな、少し席を外してもらっても?」
「それはもちろん、ですがご飯の時までには終わってくださいね、呼びにくるので」
「ありがとう」
「それで…擬波」
「うん可愛い」
ベットの上で座ったまま、浅義がこちらを少し睨む、可愛い
「殴るぞ?」
「あはごめん」
「それで、ここは何処だ、何があった」
「ここは明莉紗ちゃんの家、昨日浅義を背負って逃げてたら入れてくれたんだ」
「だからなんで逃げてきたんだ、レイファは⁈」
「処理班が来たからだよ、レイファはレイファの意思で家に残ったけどね」
パッチは僕が持ってるし最悪話す事はできるけど
「…」
浅義、レイファの事大切にしてたもんね
やっぱりきついかな
「ほら、浅義顔あげて?」
頬を撫でて目を合わせる、まだ不安か心配で目が揺れてる
少しやりたくなってメガネをそっと取る
「擬波…?」
額を撫でて髪を退ける、
可愛らしい鼻に少しだけ、唇を当てる
ぽっと浅義の顔が赤くなる
「ぎ、ぎな擬波…⁈」
可愛いなぁ
「あの…いちゃつき過ぎないでくださいね?」
もう呼びに来てたんだ
「あ、あぁ…ごめん、もうご飯?」
「まぁ、はい…擬波さん、せめてキスまでにおさめてくださいね?」
「明莉紗ちゃん僕の事なんだと思ってるの?」
「同性愛者では?」
「違うよ⁈普通に浅義が大切なだけ!」
「そうです?」
「肉じゃがって大丈夫でした?」
リビングに入ると人数分の肉じゃがと2個のお茶碗が置いてあった
椅子は4つあってひとつには大きい狼のぬいぐるみがある
「大丈夫だけど、そのぬいぐるみは?」
「ニニです、私の宝物」
ニニと呼ばれたぬいぐるみの前にも肉じゃがが置かれている
「…肉じゃが、食べれるの?」
「これは自己満ですよ、ちゃんと後で食べます」
「あ、なら浅義僕の分食べて?僕お腹空いてないんだ」
「何がならだよ、いいのか?」
「うん、いっぱい食べて?」
肉じゃがはすごく甘かったけど美味しかった
擬波の分も食べたからすごい量にはなったけど、お腹空いてたからか食べきれたな
「…で、明莉紗さん、色々聞いてもいい?」
「大丈夫ですよ、敬語はやめます?」
「そうだな、やめるか」
「じゃあ私もやめるね、何が気になるの?」
「まず、俺の事は知ってる?」
「浅義家の子でしょ?わかるよ」
「なら、なんで保護した?危ないのに」
わかるなら尚更、危険だとわかる筈だ
「別に大丈夫だよ、ここを知ってるの先生くらいだし」
「先生?」
「孤児院の先生」
「孤児院?」
「近くにあるんだ、自由に誰でも入れるの」
「そっか」
「うん、というか…浅義くんは何歳なの?今」
「確か16、明莉紗は?」
「14、ちなみに擬波さんは?」
「僕は18だよ」
「綺麗に2歳ごとだな」
「ニニは12だから四連続だね!」
「…その、ニニってのなんなんだ?宝物って言ってたが」
ニニの話をしてる時の明莉紗は楽しそうなのに少しだけ寂しそうで何かあった事は明確だから触れたくはなかったが知らないと話が合わないだろうからな
「ん?人形の友達だよ」
「え」
「へー…今何処にいるの?」
「もういないよ、これもニニの持ってたものだし」
「処理班か」
「そうだね…このまま、話してもいい?ニニの事」
「大丈夫だ、その方が話が合うだろうしな」
「じゃあ、まず、私達は別々の孤児院にいたんだ」
「はじめまして、ニニですよろしくお願いします」
最初見た時きれーな男の子だなって思ったの
「私明莉紗、よろしくニニ君!」
仲良くなるとは思ってなかったよ?まだね
仲良くなったのは確かね
それから5ヶ月くらい経った頃
ニニが手をメンテナンスしてたんだよね
それをたまたま見ちゃって
「明莉紗ちゃん⁈なんでここに」
「ニ、ニニ君お人形だったの⁈すごい!」
「え?」
「だからそんな肌白かったんだいいなぁ」
「あ、明莉紗ちゃん?」
「どうしたの?」
「えっと、怖がらないの?」
「うん、なんで?」
「人形なんだよ?僕」
「うん、綺麗だね」
って、私人形普通に気になってたからめっちゃテンション上がっちゃって、そこから仲良くしてたな
時々会った時に話したり
ニニの日記に少しいたずらしたり
何したのかって?
日記用ペンをラメペンにしたし
消しゴムを白いスポンジに変えたの
普通に使ってて面白かったな
「そのまま使うんだ…」
「うん、ラメペンでも書けるしスポンジでも消せるんだよ」
「そーなんだ…」
スポンジで消せるのその時初めて知ったんだよね
あとはたしか…
あ、でもぬいぐるみ、ニニはおーくんって呼んでたんだけど
そのおーくんをめっちゃ撫でてボサボサにしたこともあったな
ふわふわで毛が多いから簡単にボサボサになるんだよね
あ、何があったかの話だもんね、話戻すね
まぁ、仲良くしてたんだけど
処理班の人が見回りに来たんだ
そしたらいきなり調査だとか言って入ってきたの
そしたら何を思ったのか人形がいるとか言って
何人かの子を撃ち始めた
「明莉紗ちゃん!」
私も狙われたんだけどニニが庇ってくれた
そしたら処理班の人が急に狼狽始めて
どうしたのかって思った時思い出したの
ニニは人形だって
撃ち抜かれた場所は空洞になってて
頭は少し割れてた
でも私の事を心配してくれてた
「大丈夫?明莉紗ちゃん」
「大丈夫、だけどニニが」
「僕は大丈夫だから、大丈夫だよ、明莉紗ちゃん」
立ってたけど私は腰が抜けちゃって、ニニは足も撃たれてたから立てなくて
そこからは覚えてない
次に起きたらニニがいなくて、おーくんもなかった
先生に聞いても教えてくれなかった
でもニニがいないって思ったら辛くて閉じこもった
ずっと閉じこもってお腹空いてたけどそんな事後回しで部屋にいたの
時々水は飲んでたしちっちゃなチョコとかは食べてたよ?
そのままいたらいつかは忘れたけど
処理班のお兄さんがきたの
先生に謝ってたしすごい真剣だった
そしたら先生が私の話をしたのかお兄さんが私がいる部屋にきたから扉越しで話したの
「明莉紗さん」
「来ないで、もう人形はいないでしょ」
「今回きたのはお詫びです」
「なんのお詫びなの、ならあの時の人達連れてきてよ!あの人達が撃たなかったら、来なかったらニニはまだ生きてた、いっぱいいっぱい、今でも話せてたのに!」
「あの処理班は解散させ逮捕しました、刑務所から連れてくるのは難しいから、私がきました」
「お兄さんは悪くないのに」
「あの者たちは私の担当でしたから、処理班の本当の意味をきちんと教えられなかった私の責任です」
「本当の意味?」
「私達はただ人形を壊す為にいるわけではなく、人に害を及ぼす人形を壊すのが本来の意味です」
「…それで何なの」
「今回の件、あの人形の子はだれでも手を出していない人形、だから本来なら捨てられる筈の持ち物を誰かに渡すことができました」
「…持ち物」
「あの子と1番仲がよかったのは貴女と聞いてます、だからこれを、持っていてくれないか」
そう言ってお兄さんが出したのはおーくんだった
え、口調ほんとに合ってるかって?
うろ覚えだから多分違うと思うな
でもおーくんはそれで私のものって事になった
お兄さんは他にも日記とか、ニニが誰かにプレゼントしようとしてたピンをくれた
それがこの真っ白なピン
めっちゃ安っぽいけど、可愛いでしょ?
このピン、私への誕生日プレゼントで用意してたんだって
それから少しは外に出るようになったの
そして2年後、私は孤児院を出てここにきたの
おーくんの事をニニって呼び始めたのはそこからだね
こんな感じかな
「まぁ大体こんな感じだよ」
そう話し終わった明莉紗は少しすっきりした様な顔でピンを撫でた
「そのピン、プレゼントだったんだ」
「うん、可愛いでしょ?」
「可愛いねぇ」
「擬波、手を出すなよ?」
「浅義は僕の事なんだと思ってるの??」
「変態」
「心外!」
「それで、浅義くんは話してくれるの?」
「…無理って言ったら?」
「別に大丈夫だよ、その代わり今日の買い物手伝ってくれない?」
「いや、俺追われてるんだが」
「変装しよ、いっぱいあるからさ」
「いやいやいや、服変わっても意味ないだろ」
「ううん、髪も顔も」
「あー…浅義がんばってね」
「意味わからん!」
ほんとに意味がわからない、なんか明莉紗はニコニコしてるし擬波は冷や汗かいてるし
「ほら、一回ミスって買ったワンピースあるんだ〜…浅義くん、似合いそうだね」
「…まじで?」
明らかに女物のワンピース、なんならウィッグまで
なんでこんなん持ってんだ明莉紗は!
「先生の趣味だったんだ、たまたま見ちゃってね、もらったんだ」
先生の影響多すぎねぇ⁈
というか心読むなよ
「大丈夫大丈夫!似合うよ」
「そんな問題じゃないだろ」
そんな会話をしながらもほいほいと着させられてしまった…
頭には少しだけ違和感のあるボブ
服は白とピンクのワンピース
下は黒タイツで靴だけいつもの…
メガネだけは守ろ…
「似合うね!」
「可愛いよ浅義〜」
「揶揄うな!」
「ほらほら、買い物手伝って?今日は糸買いに行くんだ」
「糸?」
「ニニの修理、少しほつれてきちゃったんだ」
「糸だけか?」
「いや?布も買うよ」
「ここにいたらダメか?」
「ダメだね!ほられっつご!」
「おい!」
引かれて外に出てしまう
スカートはスースーするし少し見られている感じもして落ち着かない
これの方が目立ってないか⁈
「大丈夫、みんなかわいいって思ってるだけだよ!」
「いやいやいやいや」
「あ、ほらここだよ」
指を刺した先は小さな路地裏にしか見えなくて
「路地裏?」
「この奥に友達の手芸屋さんがあるの」
「手芸屋」
「うん、あ!おーいみーちゃん!」
「あっこら!」
人影が見えた瞬間に明莉紗が走っていってしまう
道が一つじゃなかったら迷ってただろ!
進んでいくと誰かが明莉紗と話していた
「明莉紗」
「あ、浅義くんごめんね置いてっちゃって」
「…女の子?」
「違うよみーちゃん、変装してもらっただけだよ」
「こんな格好嫌だったがな」
「似合ってますよ」
「あ、ちなみに浅義くん、この子はみーちゃん!私の友達」
「みーちゃんこと蜜名です」
黒髪のツインテールで…ポンパドールだっけかこの前髪、ワンピースの下からなんか見えてるけどまぁいいか
「浅義です」
「で、みーちゃん、今日も糸頂戴、後布も」
「はいはい、また灰色?」
「うん、灰色と白」
「…浅義さんはいい?」
「お金は持ってない」
「私はお金はもらいませんよ、もらうのは日用品です」
「日用品?」
「私の家に沢山ある布や糸と交換でペンとか本とかをもらったりしてるんです」
「…この子も訳ありか?」
「いや、人間嫌いなだけだよ」
「えぇ、だってあんなバカな事する奴が蔓延ってる一般社会になんて行きたくないですから」
「あ、私が話した乱射事件の時に友達無くしたんだよみーちゃん」
「訳ありじゃねぇか」
その分かりません顔やめろよむかつく
「その顔煽りにしか見えない、明莉紗」
あ、言った
「え⁈煽ってないよ!」
「それでも呆けたらむかつく」
「えー…」
「浅義さん、服とか破れてたりは?」
「それは擬波がやってくれてるしいつのまにか新品買ってきてくれてるから大丈夫だ」
「なら、大丈夫ですね」
「…一緒にお守り作らない?」
「お守り?」
「うん、それぞれ好きな色選んでさ、これからも笑顔でいられますよーに!ってお願いするの」
「…じゃあ、白の布と黄色の糸」
「わかりました、お代、どうします?」
日用品…
「なら、これでもいいか?」
「…これは?万年筆ですか?」
「あぁ、俺がたまたま家から持ってきてたやつ」
「インクはあるので大丈夫ですね、どうぞ」
「ありがとう」
「じゃあ帰ろっか浅義くん!またね!」
「あぁ」
帰る道は少しだけの降り始め雨が落ちていた
「…走る?」
「そうだな、走るか」
ぽつぽつと聞こえる音の中走る
すぐに音は消えて少しだけ虹が見えた
…お守り、あいつ喜ぶかな
「…2人とも遅くない?……ねーニニ君」
ぬいぐるみは何も話さない、わかってるけどね
「守って壊れて、どんな気持ちだった?」
明莉紗ちゃんの話で出たニニ
仲良くなって、最後は大事な人を守って壊れて
多分パッチつけてないだろうから
もう戻れない話せない
「バカだね」
扉の音が大きく聞こえた
「ただいま」
「おかえり2人とも、って濡れてるじゃん、着替えなー?」
「もう家だしそれ脱いでいいよ浅義くん」
あ、見るからに喜んでる
「よっしゃ脱いでくる、擬波、風呂沸かしといてくれね?」
「いいよ、ご飯も作っとくね」
「え、なら今日オムライスがいい!」
「おっけー、半熟?」
「気まぐれレシピ!」
レストランじゃないのになぁ
「シェフの気まぐれオムライスってか」
「シェフ!」
平和だね?
「ほら、早く着替えな?」
「はーい」
「はー…ウィッグあちい」
脱いだはいいけどこれどうしたらいいんだ
「あ、それもらうよ片付けておく」
「あーさんきゅ…っては⁈なんでいんだこら!」
「ん?脱衣所だから?」
「先に服を着ろ!」
「はーい」
恥じらいを持てよ…
「そーいえば、なんだけどさ、蜜名ちゃんのあの下に履いてるのドロワーズってやつだよ」
「いきなり何の話だよ」
「わからなかったでしょ?」
「でも今いらないだろ、着たから先いくぞ」
「はーい」
「すごい声出てたね」
大方明莉紗ちゃんが着替え中に突撃したんだろうなぁ
「明莉紗が服着てねぇのに抱きついてきたんだよ」
「あー…まぁだろうなとは思ったな」
「ご飯もうできたー?」
「できてるよ」
「じゃあ先いただきます!」
美味しそうにたべるなぁ
「いただきます」
「これ美味しい!」
「ならよかった」
少し沈黙になった後
明莉紗ちゃんがこっちを見ていた
「どうしたの?」
「いや?これからどうするのかなーって」
「これから?」
「ずっとここにいる訳にもいかないからだろ」
「あー…」
考えてなかったな
「どれくらいでいくつもりなの?」
「来週くらいでいいんじゃね?」
「そーだね、でもどこいくの」
「…家、戻るか?」
「レイファはいないと思うよ」
「わかってる」
「いいよ、来週、家に戻ろうか」
少しだけ、気をつけないとね
「また散歩いくのか?」
「うん、これだけは欠かせないからね」
「いってらっしゃい、先寝てるね!」
「いってくる」
…いったな
「よし、じゃあ浅義くん!作るよお守り!」
「あぁ、初めてだから優しく教えろよ?」
「もっちろん!」
「…暗いな」
もう帰ろうかな暗すぎてバレにくいけど見つけづらい
「そこにいるのは誰ですか」
…女の子?
「そっちこそ、誰?」
「蜜名です、貴方は」
「擬波」
「擬波さん、…その赤はなんですか」
「君が知ってどうするの…ん?その万年筆」
「今日のお客さんからもらった物ですよ」
今日いったお店
たしか日用品と交換してるお店だったっけ
って事はこの子が明莉紗ちゃんのお友達か…
なら、いいかな
「ねぇ、蜜名ちゃん、少しお願いしてもいい?」
「はい?」
「君のお友達の事でお願いしたい事があるの」
「ただいま〜」
声は聞こえない
もう寝たかな
「ん?」
なんか机の上に…
「お守り…?紙もある」
多分ちゃんと漢字なのが浅義かな?
「お守り作ったから持ってろ…中に小さいおねがい書いた紙はいってるからあけないでね、そこ開けちゃダメなんだ」
可愛いなぁ
「ま、僕も寝るかぁ」
「おはよ」
「おはよう浅義くん!今日何の気分ー?」
「…飯」
「…パンおあライス!」
「パン」
「おっけー!飲み物は?」
「牛乳でいい…」
「よし、メロンパンおあクロワッサン!」
「クロワッサン」
「何してるの…?」
「おはよう擬波さん!パンおあライス!」
「あ、僕は大丈夫だよ」
「今度から無しの選択肢作る!」
「僕しか使わないよ?」
「?わかってるよ」
元気だな明莉紗…眠いだろ普通まだ
「今日何かあるの?」
「友達と会うんだ、ずっと仲良いの!」
「?人間か?人形か?」
「猫!」
……ねこ
「…ねこ」
「なんで2人ともそんな顔してるの⁈」
「紛らわしい言い方するからだろ」
「とりあえず、今日は浅義くん達は家にいてね!私、行ってくるから!」
明莉紗、猫好きなのか
「可愛いねぇ…ちなみに浅義〜?」
「なんだよ」
「今日これで2人きりなの確定したけどどうする?」
「…はぁ?どうするってなんかするのか?」
何かすんのか?ゲームかなんかあったっけか
「んー…なんか作ってみる?」
「え?ご飯食べただろ」
「お菓子、それならいつでも食べれるでしょ?」
クッキーとかなら…って擬波が本棚調べ始めてるけど俺食べ物作った事ないんだが
「スノーボールクッキー作る?」
「スノーボール…?」
雪の球?砂糖でも固めるのか?
「スノーボールわからない?」
「砂糖固めるのか?」
あ、笑い堪えてるなんで笑ってんだ
「えーと、クッキーだよ?」
「おー…」
「やってみる?」
「…で、何があったの?」
「うーんとね…浅義は料理無理だったっていうか」
スノーボールクッキーいけるかなーって思ったんだけどね…
まさかこんなどろどろのまっしろけになるとかおもってなかったな?
「スノーボールクッキー?」
「うん、むりかなーって思ってやったの」
「…え、このなんかシェイクみたいなのが?」
「固まってはいるから…食べれはするけど」
「…食べていい?」
結構硬いけどいけるよね…おりゃ
…やばい音したね?何今ゴキって聞こえたよ?
「え、大丈夫これ?」
「…いけるいける!」
「いただきます…」
ベキゴキって音すごいね⁇
「まぁ、美味しいね…というか浅義くんは?」
「疲れて寝てる〜」
「寝てねぇよ」
「あ、おはよー」
「キッチンの片付けしてたんだよ」
キッチン…ならもう固まってるかな?
「あ、なら冷蔵庫のチョコって固まってた?」
「おー、できてたぞ」
「持ってきて〜」
「あいよ〜」
お、綺麗にできてるな
「え、おいしそ…」
「食べる?明莉紗ちゃん」
「え、いいの……おいしー!」
あは可愛いなぁ
「……擬波」
「なぁに?食べる?」
「あ」
これは…食べさせろかな?
「はいどーぞ」
「ん、うまい」
「目の前でいちゃつかないでください〜」
「あは、いちゃついてないよー?」
「…そうだ2人とも、私の家早めに出た方がいいかも」
「?なんでだよ」
「今日出かけた時に行方不明のビラあったの、浅義くんの」
「…今更かよ」
「そこに処理班への電話番号あったから人形が攫った判定なんだと思うの、つまり力ずくで来る可能性ある」
「あー…家焼き討ちとかしそう」
「うん、だからすぐ逃げれるようにした方がいいかもね」
「わかった、擬波寝る前に荷物まとめとくぞ」
「おっけー」
少し、焦げた匂いがした
「…予想大当たりか」
「そーだね…急ごう」
擬波が荷物を持って窓から出ようとする
「いや待て明莉紗はどうする!」
「大丈夫、もう助けは呼んであるからさ」
擬波は微笑んで手招きをする
「…信じるぞ」
「うん」
少し走った頃後ろを見ると家が燃えている
人形の昔話で人形を燃やせと喚いた人の話を思い出す
今の状況はあまりにも皮肉だろう
「まるで魔女裁判だな」
処理班の人間達は人形ではなく人間の家を燃やしたのだから
パチパチって聞こえた
「ん…」
多分、当たっちゃったのかな、予想
…ニニはここにいる、2人はすぐ出るだろうから私も出ないと
ガラガラって音がした
これ、やばいんじゃ…
扉を開けようとする
開かない、固まった…!
「やばいって…これじゃ死んじゃうよ」
ここは裏口の扉だからここさえ開けばいけるのに!
少しずつ煙で苦しくなる
身体がまだ小さいから、まわるのが早いのかも
「…どーしよ」
木が割れる音と小さな声が聞こえた
「明莉紗、無事?」
扉は跡形もなく落ちて見えたのは見覚えのありすぎた子
「みー…ちゃん?」
「ほらきて、ニニも持って行くんでしょ」
「う、うん…でもなんでここに」
「情報提供者がいるの、前の万年筆と交換でね、ほら早く」
手を引かれて石を踏んでちくちくとする足を動かして離れる
「…なんで、ここに?」
「何回言うの、少し前に変な人に明莉紗ちゃんを助けてあげて、なんて言われたの」
明莉紗ちゃんなんて呼ぶの1人しかいないけど…まぁいっか
「大丈夫なの?人形だと思われない?」
「さっき、窓から出た奴らいたでしょ」
「え、うん」
「あっちを怪しんだ数人はあっちに行ったしそもそも男って事わかってるのにこっちを撃つバカは流石にいない」
「バカって…」
「合ってるでしょ、ろくに調べもせず人の家を放火するとか馬鹿のやる事でしょうに」
蜜名ちゃんが呆れたような顔をしながら家を見た
家は燃えてがらがらと崩れる音が立て続けになって、少し怖くなってニニを抱く
「…明莉紗、ニニ後で洗うよ」
「え?」
「すすで汚れてる、綺麗な方がいいでしょ」
「ありがと、みーちゃん」
2人は心配だけれど、おそらく擬波さんが浅義くんを守ってくれると信じてみーちゃんと手を繋いで走る、ニニとお守りしか持ってないけど、また会えると思うから
息が荒くなる
靴と地面が当たる音が2人分響く
擬波に手を引かれて影に入り込む
「浅義、大丈夫?」
「大丈夫だから早く動くぞ」
どうやら窓から出た姿を見られていたらしく追われている、人形だとか関係なく捕まったらあの家に逆戻りなんて勘弁だ
「背負ってあげようか?」
「やめろ遅くなるだろ」
「変わらないのに」
「そーかよ」
話して休んでいると小さく声が聞こえた
人形やらこっち、だとか言ってるってことは処理班か
「浅義、ここはいろ」
「あぁ」
コンクリと空を写す窓ガラスしか見えない建物に走って隠れる
入る際にちょっと聞こえた音は1人分だけで
「擬波、多分1人だけだ撒けるか」
「いけると思うよ、!っ浅義!」
「は」
目の前が擬波で覆われる
刹那聞こえた2連続の弾の音
腰が抜けて崩れると擬波が倒れ込む
「擬波…?」
「やっと追いついた、観念しろ」
知らない声が入る、処理班の制服じゃなくて警察の服で、そこに背の高い男が立っている
「少年、浅義家の子で合ってるかな、連絡しないと…」
連絡
止めないとダメだ
どうやって
力はない
なら
力が抜けた手で明莉紗の家から持ち出した包丁を持つ
これしか
ない
刃を男の顔を目指して突き刺そうとする
気づいた男はギリギリで避けてすぐ銃をこちらに構える
「何のつもりだ」
「うるさい」
すぐに包丁を持ったまま飛び乗る
すぐには撃てないのかそのまま倒れる
「やめろ、少年…!」
このまま、刺せば
こいつは簡単に死ぬ
殺さなきゃ、
俺が捕まったら擬波が
壊される
包丁を上にあげる
男が青ざめた顔をする
そんな関係ない
このまま
「だめだよ、浅義」
呟く声が聞こえて振り向く
もうそこに擬波はいなくて
俺の後ろに寄り添って包丁を奪う
「浅義は人を殺しちゃダメ、人殺しは僕だけで十分だ」
擬波が男の首を掻き切って血が飛ぶ
血を多く浴びた擬波は
体にできた二つの空洞をそのままに
「バレちゃったね」
いつもより元気がなさそうに微笑んだ
あーあ
バレちゃった、完全にバレちゃった
ほんとにバラすつもりなかったのに
浅義はぽかっと口を開けて僕を見てる
「浅義、家に行ったら別行動しようか」
「は?」
「人形、しかも人殺しの人形の近くにいたら浅義が危ないでしょ、だから」
「そんなの関係ねぇ」
「関係あるよ、その証拠に今浅義は人殺しになりかけた」
「これは俺の意思だ、お前は理由になってねぇ!」
声が近づいてきた
早くしないと
「…ほら、いこ」
「…っ擬波!」
一際大きい声で浅義が僕を呼ぶ
「なぁに?」
浅義は芯をもった目で僕を睨む
「どうせ、人形だからとかが大元だろうがな、知ってんだよ前から、ずっと音鳴らしておきながらバレてねぇと思うなよ」
音…?
「メンテナンス、してないだろ?だから中に入った異物で音鳴ってたんだよ」
まじか…結構前からわかってたってこと?
「ほら、これでもういらんこと考えなくていいだろ?俺はお前と逃げたい、ここから、親から、この現実から!」
現実、…
「俺の事、守ってくれるだろ?擬波」
そう言った浅義は久しぶりに見るいい笑顔をしていた
「…任せて、浅義」
多分僕も、笑顔なのかな
擬波が穏やかに微笑んだ瞬間
銃をリロードする音が小さく聞こえて
すぐに窓から飛び出す
少し高いが擬波が抱えてくれて上手く着地して走る
ちょっと前よりも元気になった気がした
俺らにもう秘密はないから
「浅義」
「なんだ擬波」
「今度はどこにいく?」
「その前に家に帰るんだろ」
「はは、そうだね!」
隙間から見えた光は夜明けを告げていた
「…疲れた」
逃げた後、撒けたから家に帰った
案の定レイファの身体は落ちてなかったけど
それさえ抜けば前のままで
浅義はソファに身を沈めた
「疲れたねぇ…なんか食べる?」
「何あんだ?」
「んー…冷蔵庫の中身無事なら冷凍物ならあるかも」
「チャーハンあるか?」
「あるかもねぇ」
冷蔵庫の中身も無事でチャーハンをレンジで温める
「食べたらすぐ寝よ?」
「風呂はいいのか」
「明日の朝にでも入ろっか、眠いでしょ」
「まぁ、そうだけど」
「ほら、食べよ!」
「…てかなんでお前は食べないんだ?いつも」
「んー…人形の初期体とかってあったでしょ」
「レイファが言ってたやつか」
「うん、僕は進化体、多分ニニくんは順化体だったのかな」
結構綺麗に分かれてたんだね僕ら
「違いがあるのか」
「初期体はパッチがないと自我を表に出さないけど、食べ物食べたり飲んだり、寝たりとか人間の基本行動は大体できるんだ」
「レイファが食べれたのはそれか」
「そーだね、順化体は人外じみた見た目…というか人形といえばみたいな見た目でパッチはいらない、メンテナンスは月一必要な感じ」
「食べたりは?」
「できるほどたくさんは食べないと思うよ」
「で、お前らは?」
「人間に1番近い見た目の代わりに基本行動のほぼすべてができない、寝れないし食べれない」
「…それ劣化してね?」
「気にしない〜ほらごちそうさま、寝るよー」
「おいこら」
それはみんな思ってるから言ったら終わりなんだよね〜
「…おやすみ」
「うん、おやすみ」
慣れてたベットで起きるのは久しぶりで
「ずっと布団だったからな…」
明莉紗の家には布団があるだけでベットはなくて少し最初は慣れなかった
「あ、浅義〜起きたー?」
「おう、おはよう」
「なら降りてきな?話があるからさ」
「話…?」
出てくとかじゃないだろうな
「あ、出てくとかじゃないよ?レイファの話」
「なんでわかんだよ」
「感?」
レイファの話か…なんかあんのか
「ほら早く降りて?」
「はいはい」
「で…」
「うん、レイファちゃんについてのお話だよ」
「あの時の事でも話してくれるのか?」
「いーや?それは無理、でもレイファちゃんと話せる様にはなるから聞きたいなら本人から聞いてね?」
「はぁ?」
話せるようにってなんだよ
そんなバックアップしてたみたいな…
ん?
バックアップ
確か初期体って、パッチが
「もうわかっただろうけど、ここにあのパッチがあります」
「…でも身体がないだろ」
「それは大丈夫、蜜名ちゃん?と交換してきた」
「そーかよ」
「で、どうする?話したい?」
「当たり前だろ」
「おっけー、じゃあ早速やっちゃおうか、人形持ってくるね」
擬波が歩いてく、でもあの店そんなでかい人形あったか?
「はい、お待ちー」
手持ちほどの大きさの黒髪の人形を持って戻ってきた
「…ちっちぇ」
「そりゃこれしかないからね」
「こんな大きさでパッチはいんのか?」
「いけるよ」
背中が開いて丁度入りそうな隙間ができた
「じゃあ、おかえりしよっか」
パッチをいれる
途端、ぱちっと目を開く
手が震え足が動きだす
黒髪がふわふわと揺れて黒目が俺を見る
小さな口が動いた
「ただいま、戻りました」
「…おかえり、レイファ」
レイファは柔らかく、微笑んでいた
それを見た瞬間涙が出たのは
絶対擬波にはバレたくねぇなぁ
…えー久しぶりのあとがき入りです
まず、20206文字…2万字突破大歓喜!!
ただやりたかったシーンあっただけなんですよ⁈
だから文字数そんないかず没またなるかなーって思ったら2万字突破!
普通にキャラ私好きだから感想ほしい気持ちがありながらもその欲はリア友とかで満足させるのさ
まぁでも読んでほしくはあるので小説コンテストあったら出しますけどね!
では、お疲れ様でーす!