ある日、何やら天界に異変が起こっていることがわかった。どうやら、天使や神が暴走しているらしい。
由有、紅は異変を解決する。
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目次
気づき
「あら」
わたし__由有__は、空を仰いだ。このもっと上に、天界がそびえ立っている。そこは天国になっており、善人の幽霊が転生までの10年間を過ごしている。そこを『天国』と呼んでおり、隣には天使や神が働いている『天の仕事場』がある。
しかし、その『天の仕事場』がやけに沈んでいる。こっちへ迫っている。『天国』はいつも通り、高い高いところにある。
「おう、由有」
「紅。最近、異変続きね。もう疲れちゃうわ。さっさと済ませるわよ」
「話が早くて助かるな」
---
「あら。誰かしらね」
天使がいた。『天の仕事場』はまだ上だけど。
「あんた、誰?」
「僕?立花心寧ですっ。見習い天使ですっ!」
「ふぅん…。さっそくだけど、異変について何か知らない?」
「え?」
はい、怪しい。ってことは、攻撃でものを言わせないとね。
「飛符___」
「わっ!?ちょっとまってくださいっ!僕、まだ『天使学校』も卒業してないんですっ。だいいち、全然何も知らないしぃ」
『天使学校』。立派な天使になるための学校だ。
「じゃあ、誰か知ってそうな人は?」
「知らないですっ…」
「まあ、天使と言ったらあいつらよね」
あいつら、とは勿論リーシュのことだ。それ以外、天使はあまり知らない。
「ま、じゃあね。わたしたちはやることがあるから」
「頑張ってくださいねっ」
さて…リーシュは何処にいるのか。いや、リーシュじゃなくても、どんなやつでも情報を持ってりゃいい。文のところへ行く?でもあそこは取り上げてないだろうし。だいいち、趣味の営業だ。ほのぼのしたやつしか取り上げてない。
「どっかあてはある?」
「さあ?リーシュに天使のことを教えてもらう以外ないだろ」
「そうよねぇ。特別、天使のことを知っているわけでもないわ」
「というか、なんで天使が関係してるんだ?」
「え?天界が沈んでるからよ」
「じゃ、神にも聞かないとじゃないか?」
「はぁ?そんなわけないじゃない。あんた、天界の仕組みを知ってるの?」
天界の仕組み。だいたいだが、知っている。
神をサポートするのが天使だ。因みに、神に15回背くと堕天使認定され、天界から追放され、リーシュみたいになる。
一見すると天使が大変そうに見えるが、神にも責任はある。神は、天使に何事も包み隠さず話さなければならない。ではないと、混乱を招いてしまうからだ。
神は用心深く、疑り深い。わたしがいくら名のしれた何でも屋でも、簡単に通してはくれないだろう。代わりに、天使が出てくる。イコール、神だ。神と等しい情報を持っている。異変の黒幕が誰かも知っているのだ。
「へぇ」
「あんた、知らなかったの?」
呆れた!
もうひとりの堕天使
「そこっ!」
きっぱりとした、鮮明な声。トーンは低く、暗い印象。
「あんた、誰よ?」
「ああ、あたしのことね。あたしはシツン。まあ、ピンと来ないでしょうね。そうねぇ、リーシュと同じ類の同僚よ」
「は?あんたも堕天使?」
左腕が剣になっている。全身に網目マークが施されてて、それが失恋マークのひびとわかるのはちょっと時間がかかる。左目が隠されていた。
「そうよ。あたしはシツン。失恋の天使。リーシュとは同期。恋愛の神・ヴィーテは知っているでしょう?ヴィーテは愛、美しさ、恋を司る神。でも彼女は二重人格で、もうひとつの性格がある。その性格は失恋を司るのよ。あたしはそっちのほうに仕えてた。でも、自分の意志で飛び出してきたわ」
「は?お前、バカじゃないのか?天界ではなんでも保証されんだろ?」
「そうだけど?あたしはリーシュと同級生。リーシュはいつもあたしに依存してた。あの子は依存していないと生きていけないもの。それに、裏で働いているってのが嫌いになった。だから、飛び出してリーシュとともに行動し始めた」
「ってことは、リーシュは今何処にいるか知っているのね?」
はあ、というため息が、わたしたちの希望を打ちのめす。
「今、何処にいるか知らないわ。探してちょうだい。どうせ、異変のことでしょ?あなたたち。リーシュはなんにも知らないと思うわ」
「はあ?なんでわかんのよ、そんなことが」
「長年付き合ってきたカン…とだけ言っておこうかしら。絆よ、絆。どこぞのエルフよりもこのカンは当たるわ」
そんなスピリチュアルなこと…。信じるわけ無いじゃん。
「どうせなら下級神かのところへ行きな。そうね、御守りの神様のところはどう。あいつならちょうどいい塩梅よ。それに、手土産ももらえるし」
「ああ…御坂のとこ?」
「そこしかないでしょ」
御坂真守。彼女は身分は低いが神で、御守りを司る。御守りを作る程度の能力を持ち、手土産に今の状況にあった御守りをくれるいいやつだ。効き目も信頼されている。
「あとは…半人半神でいいなら、レイン・アイルズ。もっといるだろうけど、あいにくあたしは堕天使だから。詳しくは知らないけど、こんなもんでどう?」
「ああ、ありがとうな。さて、由有。行くぞ」
「…あんたの行動力だけは認めてやるわ」
次は…やっぱり、真守のところかな。
御守りを作る神
「真守ぃー?」
「はいはい、何っ」
呼んだだけですぐに出てくる。彼女は全身に御守りを身に着けている。
御守りのイヤリングとネックレス。指に御守りをぶら下げてて、巻きスカートの部分には御守りの紐部分の飾りがあしらわれている。神界でトップクラスのオシャレさんらしい。
彼女が身につけている、作る御守りは多岐にわたる。恋愛成就、健康促進、絶対合格、学問成就、金運上昇…。縁結びの御守りもあり、その強い効果でいつもわたしたちの前に現れることができるらしい。
「あんた、天界異変について知らない?天界が沈むやつ」
「う〜ん。あーしは天界について良く知らないないな。うろうろしながら御守りを配って、信仰を集めるのがスタイルだから。偉そーに座って、部下に集めさせるなんてやり方は気に食わないし。んで、異変だね?あーしは知らないよ。でも、天界を支配しよとしているやつは一定数いると思うねっ」
「誰だ、支配しようとしてるやつは?」
紅がすかさず聞くと、真守はにんまりとした。
「そうだね。正確には、管理神に上り詰めたいやつら。楓衣がやろうとしてるのは有名だろ。他にも、プロレットとか。まあ、真相は明らかじゃないさ。噂を建てるので精一杯」
「へえ。つまんないな」
「煩いなっ。あんたに御守りを持つ資格なんてない。御守りのことはすべてあーしが決めることだかんねっ。じゃあ、あんたには『金運上昇』」
「ありがと」
金運上昇!さすがだ。やっぱり、真守はわたしたちのことを本当に守っている気がする。
「で、紅。うーん…よくわかんないから、『健康促進』」
「はあ?!適当だな」
「さっきバカにした罪を償えっ。没収」
「はあ!?」
カッとなっている紅を横目に、わたしは真守としゃべる。
「そうね…もっと強い御守りが欲しい?」
「できれば」
「じゃあ、ちょっと時間を要するけど。まだ下級だからね。で、何が良い?」
「異変を早く解決できるやつ」
「欲に従順だね。みつが気に入るのもわかるねっ。守造『神速守創造 異変解決 有可由有』」
彼女の秘技は実に変わってる。この技しか見たことがない。サニーみたい。
御守りを作る秘技だ。神速守創造、と言ってから目的と使用者を唱えると、瞬時に御守りを作るのだ。
「はい」
灰色とくすんだ青の御守り。白い刺繍で『異変解決』とかかれている。
「ありがとね。いろいろ聞いてみる」
わたしは首に御守りをぶら下げ、また飛び出した。
正義の女神
「いたわ、偽神」
「はぁ?聞き捨てならない言葉を聞いてしまったわね」
偽神、と呼んだのはアストレアだ。あいつが一番信用できない神で、戦と正義を司る神だ。
「あんたが異変の元凶なんでしょ。分かってるんだから」
「はあ…今どき、正義を一意に定めるのは難しいわね。でも、人は殺しちゃダメでしょ?どんな敵であっても、人を生かすのは悪なのでしょうかね。さあ、神の力、思い知るが良い!戦符『エピックス・ストーム』っ!」
「はあ…ったく、こんなやつに付き合うなんて嫌ね。まあ、相応の情報を持ってると見たわ。種族を超えてでも、勝てるのを見せつけてやるわ!飛符『飛天連舞』!!!」
「落ちこぼれでも、勝てるのを今証明してやる!魔符『セイバー・ブラスト』!」
シュッという風の切る音と、紅の放ビーム魔法が飛び交う。それと同時に、アストレアの金色の光も突き抜ける。
「トドメだ、由有っ!魔符『ハイパー・ビーム』!」
「そんな攻撃で済ませるものか!」
アストレアはひょいと避けた。でも、そこにわたしの秘技を食らわせる。
「ふふふ、随分強くなったみたいね」
わざとらしく、アストレアはちょっとだけ攻撃を食らった。
---
「さーあ、情報をもらおうか」
「はぁ…なんで、戦の神が負けちゃうのかしら。まあ、これも宿命よね。手加減しなかったら、あなたたちは死んでしまうもの。情報?そうね、わたしはなんにも関与していないわよ。まあ、命当たりが怪しいでしょうに」
「命?意外なやつね」
命___彼女は1番強く、他の管理神とは比べ物にならないくらい強い。ビー玉と宇宙くらい、比べるのさえ呆れるほどの差がある。1回倒すだけでも一苦労なのに、彼女は100の魂を持っている。その魂は寿命死することなく、誰かにやられるだけしか死ぬことはないのだ。その魂はビーズ状になっており、ネックレスとして首元にある。その魂はかたく、割れることはないのだ。
「さあ、動機はわかんない。まあ、命なんかのとこへ行ってみたら?」
「あんなに泡影会を大事にしてんのに…なんでだろ、由有、わかるか」
「前から胡散臭いやつでしょ?どうせ、適当な口実つけてやってるわよ」
だけど___
あんなに泡影界をたいせつにしているのに、なんでだろう。
異変の元凶
「ふふふ、なんの用?」
上品で気品があって、どこか鼻につく声。
彼女こそが、最高管理神・百万命だ。勿論、倒すことは限りなく不可能だ。泡影界にいるすべての人が戦って、ようやく勝てる。そんなレベルだ。
命は魂のネックレスをいじくっていた。彼女にとって、百もある魂の重みは軽いのだろう。
「この異変の元凶め。今、神であろうと、穢れを払ってくれるわ!」
「神をも脅かす魔法の力、今、見せつけてやる!」
「「飛魔|天翔ける煌光《スカイブラスト・ビーム》!!」」
一緒に飛び立ち、ぐるぐると命の周りを囲む。ビーム状の弾幕を命へ向かって放つ。
「へぇ…。アストレアが通しただけあるわねぇ。でも、そんなのじゃわたしの魂、刹那も削ぐことはできないわ。こんな奴相手に本気出すなんて、馬鹿げてるわね」
「はぁ…!?」
ムカつく!なんなの!?本当、どうかしてるっ。
「落ちついて。ふふ、こんな幼稚なことに乗ってくるのねぇ。まあいいわ。この異変の元凶はわたしよ。近頃、異変続きでしょう?神が怒っていることに気づけば、ちょっとは収まると思ったのよね。…戻しておくわ。さあ、ゆっくりお眠り」
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「む…」
「ふふ、ごめんなさいね。やっぱり、貴女たちの結論に納得がいかなくて」
「幻夢…?」
命とはまた違った、胡散臭い声。
「起きて。貴女ぐらいよ、幻じゃないのは」
重い目をこすりながら、わたしは起き上がる。どこまでも続く暗闇に、真上に小さなランプがともっていた。
「幻夢…一体どうしたのよ。紅は?」
「貴女が出した結論に納得がいかなかったの。この世で1番強いのは命だって。そんなの、納得いかないわ。わたしの能力は___」
「___幻を操る程度の能力」
幻。
「落ちこぼれ魔法使いさんだって、光と闇の幽霊さんだって、バカな妖精だって、百の命を持つ神だって、すべて、他の世界では幻に等しいわ。そんな中、貴女たち人間は、定説として存在している世界がある。他はすべて、異説にもならないくらい、信じられてないの。百の命を持つ神___幻を生み出したのはわたしよ。人間以外、わたしの支配下にあるの。ふふ、伝えたいことは終わったわ。さあ、元の世界に戻って」
よくわからない。でも、なんだか眠くなってきた____
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「由有っ」
「あ…紅。おはよ。あんた、幻だってさ」
「はあ?あたしが?」
泡影界を支配しているのは命ではなく、幻夢である。
それを、とにかく伝えたかったのだろう。