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目次
サイダー
私は飲み物を取り出し口から取り出した。
今は夏真っ盛り。
この8月を生き残るために必要なものは一つ。
私は、『それ』を自分の首に当てる。
「ちべたっ!」
自販機で一本120円のサイダーだ。
丸みを帯びたボトルの中には、自販機の中でよく冷やされたドリンクが一杯に入っている。
蓋を回すと、プシュッと軽快な音が鳴る。
私は飲み口と口づけをして、そのまま首を上にあげる。
私の口に、サイダーが流れ込んできた。
「んっ、んっ……」
私の口に冷えた液体が流れ込む。
強い炭酸のおかげで、喉の奥にわずかな痛みを感じる。
が、そんな痛みなど帳消しにする爽やかな甘みが、直後にのどに流れた。
「んっ……ぷはぁ!」
最高だ。
無色透明の液体からは、この夏の暑さを吹き飛ばす甘さが与えられる。
ここまで歩いてきた自分にとっては最高のご褒美だ。
私は一度キャップを閉め、少しずつこの液体を飲み干そうとした。
―――が、ダメだった。
プシュッ。
最初に開けた時より、わずかに小さなその音がサイダーへの期待値を底上げする。
少しずつ飲むなんてこと、この私にできるはずがない。
この味を一度知ってしまったからには、もう私は人間ではなくなる。
私は、この液体を飲み干すまで止まれない怪物だ。
「すぅー……んっ」
もう一度サイダーと口づけをする。
次の瞬間、私の口は幸せで満たされた。
この甘さ。この甘さがいいんだ。
砂糖まみれの甘い液体を、炭酸が中和する。
こういうのをハーモニーと言うんだろう。
「ぷはぁ!」
水泳の息継ぎのように、私は飲み口から離れる。
ゆっくりと、しかし確実にサイダーの冷たさが体を循環する。
それをしっかりと感じ、私はまた、サイダーを飲み始めた。
それから数分。
私はおそらく日本人の一般的な速度の何倍もの速さで、サイダーを飲み干した。
「……どうしよ」
さすがにやってしまった。
私の手には、もう捨てられるのを待つだけのボトルだけが残っている。
まだ道はあるのに、サイダーはもうない。
でも―――本当に満足できた。
ほのかな後味が、まだ私の口の中に残る。
「後味だけでいけるわ」
やはりサイダーは最高だ。
私はそう言って、夏の道を歩き出した。