リレー開始者:紫桜
#小説以外 #ボツ #供養 #一次創作限定
最低100文字/最大3000文字
話数 2 / 30
ボツにした小説、続きの展開を諦めた小説、普通に飽きた小説。
ここに供養していきましょう。あとで思いついたら、普通に書いて投稿してみてください。
読んで展開を思いついたら、ファンレターで送ってみてくださいね。
『ボツ』
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|星宮美月《ほしみやみつき》の夢を知らない人は、クラスにいない。というか、学年にもいないだろう。
彼女の性格は明るく優しく、言葉遣いも丁寧だ。さっぱりざっくりとしていて、無駄な謙遜はしない主義。運動は置いておいて、勉強もそこそこできる。容姿は気にせず、ただひとつに結んだだけだ。
そんな、先生らにとってまさに理想的な彼女の夢は、あまりに突飛なものだ。
「わたし、将来月に行く!」
宇宙飛行士になるのかとたずねたら、「えー、それはなぁ。まぁ、考えてみてもいいかもね」と言っていた。あくまで職業ではなく、月に行けたらなんでもいいという感じだった。
美月のその夢は、ちょくちょく弄られることもあった。
「いや、そんなの現実的じゃないじゃん」
「そんなことないよ、行ける。美月なら絶対」
そんなふうに美月を応援するのは、|東雲陽向《しののめひなた》。数年前からの同級生で、半ば腐れ縁だ。優しさが特段際立つが、あまり目立ちたくないのが本音だ。ネガティブに言えば、暗い。
「だよね!陽向はどうなの?」
「え?わたし?」
国語の授業。5年生に書かせるにはあまりにもハードルが高すぎる、500字詰め原稿用紙。まだ名前を書いただけで、まっさらな状態が机に並んでいる。引き出しには、あと3枚入っている。すでに優等生と名高いメンバーは黒を足していっているが、殆どがネタがなくて白い。
「わたし…」
「まっ、いいんじゃない?ゆっくり考えてさ」
そう言ったきり、美月は月という字を書き始めた。
さらさらと黒が足されてゆく様子を、陽向はぼうっと眺めていた。右隣の美月の横顔は一切ブレず、ただ右手だけが動いていく。
「陽向ちゃん」
「うあっ、あ…」
陽向の左隣の|天宮世空《あまみやよぞら》が、陽向を目覚めさせた。
「世空ちゃん…」
彼女もまた、名前を書いただけの状態だった。
「どうしたの?」
「え…わたし、将来の夢がなくて」
「そっか。わたしもだけど…大体、5年生に将来の夢について2000字書かせるほうが馬鹿だと思うよ」
言葉に棘がある彼女の言葉は、陽向を笑わせるものだった。心の底ではなく、相槌のような。思っていないのに、口角が自然と上がった。端的に言うと、彼女の言葉が苦手だった。
「いいよねぇ、美月ちゃんは」
こんなに乱暴な言葉使いなのに、ちゃんづけなのが少し不思議で面白い。
「将来の夢があってさ」
「うん」
美月は2行目を書き進めていた。スピード的に、たぶん2枚目だ。
『私の名前は、美しい月と書いて『美月』です』
その文が見えた。羨ましくなった。
---
「お母さぁん」
「何?」
「わたしの名前の由来って、何?」
小学3年生ぐらいの頃、『名前の由来をさぐる』というものがあった。宿題として、名前の由来を聞いた。
「陽向って名前」
別に『陽向』をなんとも思っていなかった。ひなた、という響きは好き寄りの普通だったし、『陽向』という字はあまりよくわからない。
「ああ、陽向ね。いい名前」
母は説明していた。しきりに「いい名前だ、本当に」と言っていた。
陽向には、太陽が当たる場所っていう意味があるの。陽が当たる場所へ、明るく、前向きに生きてほしいって思ったの。
それをメモして、配られたシートにまとめた。書いているうちに、とんでもない気持ちが押し寄せてきた。
自分の性格は、暗い。それはどうにも変えようがないことで、今更明るく接するなんてとてもできない。母の意思と自分の性格があっていないようで、申し訳なくなった。陽向にも行けないし、陽向にもなれない。そんな自分が、とんでもなく惨めだった。
陽向という名前が嫌いになったのは、それが原因だ。
---
美月という名前だと胸を張って言えるのは、羨ましい。
「世空ちゃんはさ」
「わたし?」
「どんな由来?名前」
「あ〜。えーと、世の中を包み込むほど、空みたいに優しい子になってほしいって」
優しい子。
彼女は優しいかと言われると、あまりイメージがそぐわない。どちらかというと、テキパキしていて、積極的なタイプだ。
「じゃあ、名前は好き?」
「普通」
その後、世空は鉛筆を手に取った。
将来の夢、か。
美月の声がフラッシュバックした。
〝あんな綺麗なんだよ、近そうに見えるし、絶対いつか行けるよ!綺麗だから行ってみたい。見るたびに、わたしはあんな綺麗なところに行ったんだって胸を張りたい。美月が美しい月に行きましたー、って〟
きっと、彼女の名前も関与しているだろう。月が身近だったから。
でも、わたしは日向ぼっこは嫌いだ。
---
45分が終わった。
適当に先生が好みそうな文を書き、また明後日と言われた。明後日が重い。
「美月」
隣へ椅子を向けた。
「何?」
「なんで月に行きたいの?」
いつの日か忘れたが、殆ど同じ内容の返事が返ってきていた。やっぱりそれが原動力なんだ、と陽向は思った。
「あとね、言ったんだ」
新たな理由ができていた。
シオダリキヤという塾の知り合いに夢を話したところ、すごく応援してもらえたということだった。
陽向は呆然としていた。いつも美月の原動力は、自分だった。でももう、その力也という人に吸い取られてしまったのかもしれない。
でもそんなことを思いながら、名前はどう思っているんだろう、と思う。将来の夢は?どんな性格?なんで塾通い?聞きたいことが山程有る。
「どんな字?シオダリキヤって」
「あ、字?えーとね、潮目の潮に、田んぼに、力に、ほかの人偏がないやつ」
潮田力也、と変換される。
そういえば、と思う。偶然だ。必然なんかじゃないはずだ。
月は、潮の引力で動く。太陽は動くのに一切関与していない。
---
塾があるんだ、と美月は言った。独りで帰る羽目になった。世空と帰るのも、気が引ける。
力也。見たことないけれど、なんとなく知的な感じがする。でも実際のところわからない。気さくな子なのかもしれないし、そうじゃないのかも。
「ったぁ…」
ごつん、とぶつかった。電柱。おでこをさすりながら、また足を前へと動かす。ツイていない。完全に自分が悪いけれど、でもツイていないせいにしたかった。
---
綺麗な上弦の月が、登校する冬空に浮かんでいた。寒い。マフラーや手袋をして、完全防備。
「わぁ、月が綺麗」
隣の美月が言う。
「そうだね」
陽向も、曖昧に返事をした。
「あそこにいたいなぁ。ほら、幼稚園の頃、ああいう半月とか三日月とか、行けないと思ってたよね。新月とかとくに、足の踏み場がないだろうなぁって」
「ああ…」
「あとさ、月って裏側が見えないんだよね」
月って、裏側が見えないんだよね。
それが、美月の裏側が見えない、という意味に感じ取れていた。本人は何も考えていなさそうだった。
「だから、裏側を見てみたいよね〜」
「確かに、ミステリアス、だね」
言葉に詰まった。首元がきつい。マフラーのせいにしたい。
---
昨日の帰り道は、電柱に何回もぶつかった。冬だから、さすがに冷たい。なのにおでこはヒリヒリして熱かった。
ああ、今日はまた作文書かなくちゃと思うと、途端に憂鬱さがこみ上げてきた。
「そうだ、今日、星を見よう」
「星?」
「うん。星。星は絶対行けないから、見るだけにするんだ」
美月の月に、陽向の太陽。世空の空に、力也の引力。
普通に収まりきらなかった。
くぅ。
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Mako
ボツにした小説です。
タイトル「赤と青」
「……君、泣いてるの?」
問いかける。
私は路地裏で泣いている子を見つけた。
「……誰?」
質問返しをくらった。
「ええと、私は|花梨《かりん》。一応言うと《赤》」
「……赤……」
私の言葉を繰り返し言うその子は、こっちを向いてまじまじと私の顔を観察してくる。
(この子、綺麗な顔してるなぁ。青い瞳にちょっと赤い髪……うん、将来有望)
そんなことを考えているとその子が口を開く。
「僕は|大智《たいち》」
「大智くんね」
「種族はー……《青》」
「……HA?」
「君は《赤》か。……じゃあ関わらないほうがいいね」
そういうと大智はまた後ろを向いて静かに泣き始めた。
「ちょいちょいちょ、い!!なんでわざわざまたなくのさっ」
「出会った人が《赤》だったから。《青》だったら助けてもらえたかもしれないけど《赤》なら希望の光はない。君も今すぐ去ったほうが……僕から離れたほうがいい」
この世界の人間は主に二種類。
《赤》と《青》に分かれている。
赤は基本的に普通の人間。
青は特殊能力を持った《普通じゃない人間》だ。
赤は青と関わってはいけない。
青は赤と関わってはいけない。
というルールがある、理由は偉い人(赤)が青の人間と関わった後に不幸の連発があったからその偉い人が「こいつら《青》と関わると悪いことがある!」と宣言したからだそうだ。
ーこの子は《青》。関わっては……
いけ、な、い……けど!!
「泣いてる子ほっとけないって!!青でも赤でももうどうでもええわ!!」
「……ぇ」
私は深呼吸して大智をお姫様抱っこした。
「!?!?お、おろせっ!」
ジタバタ暴れるが次の瞬間には大智のお腹がぎゅううるえうと音を立てる。
というか大智軽っ、
「ちゃんとご飯食べてるの?」
「……余計な一言」
ああ、図星か。
「家に帰ったら事情聴取ね」
「……家に?何故赤が青にそれまでする?馬鹿なのか?……バチが当たるぞ」
「いーの。そもそも赤と青が関わったら痛い目見るなんてどこから来た噂よ。根拠もない」
「……それは、《赤》の人間が《青》にひどいこと言うから仕返ししただけで……別に何もしてこなければこっちだって害さないし」
大智によると、赤側の人間が青の人間に「お前らなんか人間とは名ばかりの化け物のくせに」って言ってきたから苛立って自身の超能力を使い仕返しをしたそうだ。
《青》の人間は幸福の祈りという超能力が使える。誰かを想いながら超能力を使うと思い浮かべた人が『ずっと幸せに暮らせる』という加護が与えられるらしい。逆に『不幸の祈り』もできるらしく思い浮かべた人に『ちょっと痛い目みせる』ことができるらしい。こちらは半日ほどで効果が切れるとのこと。
「青は青でも人間には変わりないのに。化け物扱いなんてひどいじゃないか」
大智は泣きそうな顔でそう言った。
大智があそこにいた理由は、《赤》の人が行くスーパーにお忍びで買い物に行って、《青》の人間だとバレたことで追いかけ回されて隠れたのがあそこだったが迷子になったらしく俯いて泣いていたのだとか。
「赤と青はすむところも離れさせられているから、一回お忍びで買い物に行ってみたかったんだ。売ってるものも違うし」
と大智。
「そうね。……はい、ここが私の家」
「……でかいな」
自慢じゃないが私の家はお金持ちなのだ。
「美味しいご飯を食べさせてあげるから。そしたらお家までお帰り。地図も渡してあげるからね」
「……ありがとう」
ご飯を食べて、満腹になった大智は、「ありがとう」とお礼を言ってきた。
「別にお礼はいいよ、私が勝手にやったことだし」
「ありがとう」
何よ、そんなお礼言われると恥ずかしいじゃない!!
「花梨にはお礼に僕から」
「祈りを捧げる」
パァッと、部屋に光が充満する。
「……綺麗」
「はい、これで花梨は一生幸せに生きれる」
「え!本当?ありがとう。あ、でも」
「ん?何?」
「それって自分にかけることはできないの?」
「っは?」
「自分を思い浮かべながら祈ることってできないの?」
そういうと大智は、
「……考えたこともなかった」
と驚いた様な顔で言った。いや、驚いていたのだろう。
「……やってみる」
パァッと、また光が舞う。
「…………できた」
惚けた様な顔で大智は言った。
「……これで僕も一生幸せ……?」
「そうなんじゃない?」
「……やった!ありがとう花梨!」
「全然。私はアイデアだしただけだし。でもよかった。大智はこれからずっと幸せに生きれるのね」
「うん」
「じゃあお家へお帰り。またね」
「……ありがとう。またね」
不思議な出会いがあった日。
この出来事以来、《赤》と《青》が交わることがよしとされたのだった。
なんかノリで書いて後からボツにした小説です。