とある日。目覚めると何も分からなかった。 ここにいる理由も。自分の名前も。友達も家族も。 私「ここは何処。私は誰。」 ピンポーンとチャイムが鳴る。 母親「友達よー。早く出なさいよ。」 ともだち？そんなのいたっけと思いながらインターホンを応答する。

「約束の時間過ぎてるけどどうしたのー？」 約束？そんなの知らない きっと前の私がこの子と会う約束をしていたのだろう 「…ごめん。体調悪くて」 とりあえず私はそう言っておいた 名前も知らないその子は「そっかー」と言い残して帰ってしまった 自分の部屋に戻り考える これから、どうしようか。

よく分からなかったので。 外に出てみた。 何も思い出せない。冷たい風が頬をかすめてゆく。 この風に記憶をもってかれちゃったのかな。 しばらくここには戻らない。 少なくとも何かを思い出すまでは、と決めた。 ひとりぼっちだ。私は。 なんだか遅れて悲しくなってきた。 目の奥から湧き上がってくるあついものをこらえる。 __ガサリ__ ヤブに何か人影が見えた。涙がひっこむ。 「あのー、」 男の子の声だ。

「里菜だよね？こんなとこで何してんの？」 男の子は私に話しかけてきた。私は「りな」っていうのか。 「……うん。お母さんと喧嘩しちゃってさ」 「まじか〜。大丈夫？早く帰りなね」 そう言うと、男の子は歩き出した。でもすぐ止まって振り返った｡ 「このまま遊んでく？」 「…うん。いいよ」 記憶にない人と遊ぶのは少し不安だけど…まぁいいや。 「あ、陽色もいる！」 男の子は、陽色、という子の元に行った。

男子「陽色！」 陽色「陸！久しぶり。」里菜には誰かわからない 陽色「何してた？」 陸「こいつささっきから何も喋らないんだよ。」私のこと？ 陽色「君可愛いね。」何言ってんの。私ってそんなかわいい？ 里菜は陽色と陸が話が盛り上がっているので帰ることにした。 家を忘れたので帰れなかった。

「どうしよう………」 家を忘れたらもう帰れない。 どうやってここまで来たっけなぁ………んーと……………。 「あれ、里菜じゃん！具合悪いんじゃなかったの？」 さっき、家に来た友達だ。 「…具合、よくなったから」 「ほんとに〜？まだ顔色悪いよ。家まで一人で行ける？」 変なチャンスが回ってきた。 「ちょっと……むりかも」 「ん。じゃあ連れてくよ。」 こうして、私はこの子のおかげで、家に帰ることができた。

家に帰れた。 里菜「ありがとう。お陰で帰れたよ。ところであなたの名前は？」 ？？？「忘れたの？私は奈々」 里菜「奈々って言うんだね。」 奈々「大丈夫？顔色悪いよ。なんか今日変だし」 里菜「そう？」 里菜の頭の中では何で言葉が出ないんだろう、思い出せないんだろう、そんな思いが出て涙目になってしまった。 奈々「どうしたの。何かあった？」 里菜「ど......どうして言葉が......出ない、の、何も」