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【氷解の魔法使い】PROLOGUE・B
「ロア様、これは何事でしょうか!?」
学園の教員の一人が熱さと焦げ臭さに耐えながら駆けつけ、老練の魔法使いロアにたずねた。
ロアは応えず、自分の左腕を庇う仕草をした。
左腕に、岩のひび割れのような傷ができている。
「そんな、ロア様、腕が」
うろたえる教員に、ロアは微笑んで言う。
「ええ、彼にやられました。あと三百年くらいは銅像として学園を守っていくつもりが、これでは百年持つかどうか……それより見てください」
示されて、教員は炎使いを見上げた。
驚愕の色が浮かんだ。
教員の反応にロアはますます笑みを深める。
「久々の侵入者、とんでもない攻撃、誰かと思ったら少年ですよ」
炎使いの少年は恐ろしいほど静かだ。
身じろぎもせず、二人を見つめている。
紅い瞳だけが無限の熱をたたえ、風の精霊が少年の右肩あたりに浮かんでいる。
ロアが大声で言う。
「高等部一年A組の生徒にしましょう! もし貴方が十六歳の浮浪児で……この禁庫の中にある、死者蘇生の魔道具が欲しいのならね」
「「は?」」