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第3話 トラウマ
「この…っ人殺し…が…っ!」
目の前で顔を激しく歪める女の子。自分の手のようなもの(以下、手)に込められる力がさらに強くなる。彼女は必死で首に巻きつく手を外そうともがいた。
「…無駄だ。人間ごときが俺に勝てるとでも?」
重い声が自分の口から出る。違う。これは俺じゃない…。
お姫様抱っこのような形に手が女の子を持ち変える。頭が右手、足先が左手の上にある。俺にとって人間、しかも小学生など、片手で持てるほどに小さい。そして見てわかるほどに彼女の顔は赤く、血色が悪くなっていた。
無言で手が合掌のような形へと移り変わる。足が曲がらないように押す角度を調整する。彼女が痛みに悲鳴をあげた。それでもなお、押し続ける。ミシミシと嫌な音を立てたかと思えば…
……彼女は粘土のオブジェの如くグシャッと……
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「………っ!」
そこで目が覚めた。ゆっくりと起き上がる。手に脂汗が滲んでいた。…人間でも無いのに。
「…あの夢は……」
今でもはっきりと夢の内容を覚えている。あれは、実際に俺が小学校の卒業式の時に起こした事件…。潰したやつは転校生をターゲットに虐めるいじめっ子のグループのリーダー。殺したのは…俺だ。俺は人間たちとの生活に慣れるために、小学6年生からというなんとも中途半端な時期に彼女たちの学校へと編入…という形で潜入をした。そこで彼女たちにやはり虐められた。紙屑を後ろから投げてきた。上履きを隠された。椅子に画鋲を置かれた…。今思えば実に「学校の虐めといえば」ですぐ出てくるようなテンプレの、陰湿なものだった。しかし、そんないじめというものなど、魔界でもあまり他人と触れ合わなかった俺が知るよしもない。何も気に留めない様子で日常生活を普通に送り続けていた俺のことが気に食わなかったのだろう。卒業式の日にわざわざ別教室に二人というシチュエーションを作り出し、俺に下剤入りのチョコレートを渡してきた。それが原因で、擬態が溶けかけ、我を失い……
…あの夢のような状況に至る。
「…馬鹿らしいな」
あの事件のせいで人間たちは俺を警戒し、魔界の人間からも良い目で見られないようになった。人間学の教師として務め出したのはそれからだ。人間のことを他のやつらに伝えて、このような事件が金輪際起こらないように…結局は他力本願か……
…がちゃっ
自室の扉が開く。扉の向こうには、清羅が立っていた。
「…こーくん…ねぼう?」
「いや、起きてた」
「…うそつき」
「違う」
簡単な会話を交わしているうちに気づく。清羅も見た目(だけ)はもう小学生半ばあたり、そして何より種族はアンデッド___人間の血肉を食らうやつだ。もしこいつが、俺と同じ立場に立たされた時…何事も無くいられるという確証はあるか。ベッドの上に座ったまま、清羅を抱きしめる。
「…こーくん…?」
「…お前は絶対に人を襲ったりするんじゃないからな……!」
「…こーくん……やっぱりねてた?」
「違うって」
その時。がちゃっ。最悪なタイミングでハイビスカスと弟が入ってくる。
「おはよー…って……え?どういう状況、これ?」
「お兄ちゃん……?何、もしかして……なんか二人でやらしーことでも…?」
2人が困惑している。
「だから違うって!!」
顔が真っ赤に染まったのを自分でも感じる。…人間でも無いのに。
__「もう…せっかく朝ごはんにたこ焼きパーティしようと思ってたのに、冷めちゃうよ?」__
__「朝からタコパ!??」__
__「たこやき…たべたことない…」__
__「…なんか焦げ臭くない?」__
__「「…え??」」__
「…ふっ」
嗚呼、もし神様とやらがいるのだとするのなら…
……この限り無く平和な日常を壊さないでほしい。
他の人を出したいのに、ネタが見つからないという中の人の独り言でしめます。