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蛇
一歩、一歩が凄まじく重くなっていく。
歩いていくごとにカラダに纏うものを全て捨て置く
わたしは一体いつまで
"この感情"を抱えていなければならないのだろう
"----"から生を授かってもう幾年
時間というものは
ワタシのようなモノにもどうやら有限らしいが、
一体いつになればその限りが訪れるのか
「…待ちくたびれて朽ちてしまいそう」
いつも気がつけばここで目が醒める。
ここは言わば、遊女の階級の最上位____
「花魁」の個室___、普段から実生活を送る部屋なのだろう。
広くて豪勢な柄を催したお客のための大きな布団に
ぽつんと、独り
深く眠りこけていたワタシのその姿は
酷く滑稽であったろうな。
淡々とした動作で、いつものようにカラダを起こし、布団から出る。
ふと、あたりを見回すと"あの道"に脱ぎ捨てたはずの仕掛※や前帯※がすぐそばにある__
身に纏うのは|襦袢《じゅばん》※のみ。
お目汚しも|甚《はなは》だしい。
|己《おのれ》の醜さ、浅ましさに打ちのめされるも、
もう"|彼《あ》の方"は去った後。
ワタシみたいな醜い心根を持ち合わせた者にも
手を差し伸べて下さる"彼の方"
せめてそのお優しい手の温もりさえわかれば、
彼の方を初めて目にしてから随分と時間が経った気がする。
ワタシが"あの道"を辿ると、気づけば意識が消え失せている。
そして、あの時もまた、意識が_____
うつらうつら、薄暗く、朝焼けのような中
もう見飽きた景色に囲まれ、布団の上で目を醒まそうとした時だった。
彼の方の後ろ姿がこの重苦しい籠の中のような部屋から去っていく、
微睡んだ瞳に差し掛かる日のように。
今も記憶に残っている。
今では彼の方だけがワタシのーーー。
望みのない希望を抱えることもワタシには
|赦《ゆる》されないことであるのだろうが、
仕掛…羽織
前帯…豪勢な魅せる帯
襦袢…肌着のようなもの
3/13加筆修正等