公開中
生まれてから死ぬまでのカウントダウン 一話
Aki🧣
--- 第一話:数字だけの世界で ---
すべての人間の頭上には、生まれた瞬間からデジタル時計のような数字が浮かんでいる。
【78年 04月 12日 05:12:04】
街を行き交う人たちの頭上を見上げれば、だいたいはそんな風に、気が遠くなるほど長い時間が刻まれている。みんな、その数字を「当たり前」のものとして見つめ、何年も先の未来の話を楽しそうにしている。
けれど、私の頭上にある数字は、それとは全く違っていた。
【00年 02月 14日 18:24:11】
あと、たったの二ヶ月。
私のカウントダウンは、生まれた時から他の人の何十倍ものスピードで、ものすごい勢いでゼロに向かって進んでいる。
でも、私にはそれが嬉しかった。早くこの世界から消えてしまいたかったから。
「おい、いつまで寝てんだよ。さっさと起きろよ、役立たず」
冷たい罵声とともに、硬いプラスチックのゴミ箱が私の背中に叩きつけられた。中のゴミが床に散らばる。鈍い痛みが走るけれど、私は声を出さない。声を上げれば、さらにひどい暴力が飛んでくることを知っているからだ。
母親にとって、私は自分の人生を邪魔するお荷物でしかない。
「ごめんなさい……」
俯いたまま床を片付け、学校の制服に着替えて逃げるように家を飛び出した。長袖のセーターの袖をきつく握りしめ、腕にある新しい青あざを隠しながら。
学校に行っても、私の居場所なんてどこにもない。
教室のドアを開けると、朝の賑やかな声が耳に刺さる。
「あ、おはよう……結愛ちゃん」
クラスの中心にいる黒崎結愛(ゆあ)に、勇気を出して声をかけてみた。けれど、彼女は一瞬だけ嫌そうな顔をして、すぐに自分のグループの友達の方を向いた。
「ねえねえ、夏休みの旅行どこ行く? 楽しいこといっぱい計画しよ!」
結愛たちの頭上には、あと70年近くある輝かしい時間が浮かんでいる。楽しそうな未来の話。私には絶対に訪れない、遠い世界の話。
クラスの誰もが、私のことなんて透明人間のように扱い、関わろうとはしない。
家でも、学校でも、私は一人ぼっちだった。世界は灰色で、冷たくて、どこを見渡しても絶望しかなくて。
(早く、ゼロになればいい……。そうすれば、全部終わるから)
夕暮れの放課後。夕陽が教室を赤く染める時間。
誰もいなくなった放課後の教室で、私はぽつんと窓際の席に座り、窓ガラスに映る自分のカウントダウンを見つめていた。
【00年 02月 14日 16:02:55】
【00年 02月 14日 16:02:54】
一秒、また一秒。私の命が確実に削られていく。
早く、早く終わってほしい。そう願って、そっと目を閉じた。
その時だった。
「……やっぱり。君の時計、もうすぐ止まっちゃうんだね」
静かな教室に、場違いなほど穏やかな声が響いた。
驚いて目を開けると、いつの間にか私の席の前に、クラスメイトの一ノ瀬春馬(はるま)が立っていた。普段は誰にでも優しくて、クラスの人気者で、私とは正反対の「光」の中にいる男の子。
彼が、愛おしそうに、そして少しだけ悲しそうに私の頭上を見上げている。
「え……?」
声が震えた。普通の人には、他人のカウントダウンの数字なんて見えないはずなのに。
春馬は驚く私を見て、ふっと悪戯っぽく笑うと、私の前にしゃがみ込んだ。そして、冷え切った私の手を、両手でそっと包み込むように握りしめた。
彼の温かい体温が、じわが、と私の心に染み込んでいく。
「ずっと気になってたんだ。いつも一人で、今にも消えちゃいそうな顔をしてるから」
春馬は私の目をじっと見つめ、静かに、だけど真っ直ぐにこう言った。
「ねえ。その最後の時間、僕に預けてくれない?」
カチ、と、私の頭上の数字が動く。
灰色だった私の世界に、生まれて初めて、鮮やかな色がついた瞬間だった。
(第一話・終わり)
きゃああああ❣️やばくないですか一話‼️
私の表現力‼️これぞ、天性の才能、、✨🪽
なんちゃって⭐️
一話は春馬との関係がちょびっとできるやつです‼️
二話もお楽しみに❣️