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Crush Idol! #1
#1 5回目の地獄
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「ごめんね、急に」
|天沢《あまさわ》|莉帆《りほ》の声はいつも以上に明るく聞こえた。
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〘 |IRise《アイライズ》 〙は5年前にデビューした9人組のアイドルグループだ。
その人気は凄まじく、新曲が出るたび注目度が増して、瞬く間に旬のアイドルとなった。
中でも人気だったのは、いわゆる「前列組」と呼ばれた5人。
曲中のダンスなんかで前後に分かれるときの、前列のメンバーがとても人気だった。
3年前までは。
デビューして2年が経った頃、突然メンバーの1人が脱退した。理由は体調不良だった。
その後2ヶ月も立たずに、また1人、脱退した。
デビュー3年目にまた1人。
その2年後にまた1人。
そして、今日、また1人。
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こんなに知ったような感じで語っているが、私はIRiseの熱烈なファンなどではない。
私の名前は|水ノ江《みずのえ》|露乃《つゆの》。これでもIRise水色担当の現役メンバーだ。
今日私が来ているのは、IRiseのセンターを務める天沢莉帆の自宅だった。
莉帆といえば、グループで圧倒的NO.1人気を誇る不動のセンター。メンバーカラーは赤。
9人時代からセンターは大概決まって莉帆が務めていた。
人気の理由はビジュアルが良すぎる、歌もダンスもうますぎる、まあつまりは最強ということ。
5人体制になってからというもの、IRiseは莉帆一強の時代に突入していた。
「IRiseといえば?」と聞くと街行くピーポー(?)は皆こう言う。
「天沢莉帆ちゃんでしょ!」
「りほたん〜!!」
「赤の人」
「知らない」
「莉帆ちゃんとその他」
「天沢以外知らん」
まあこんな感じで、とにかくIRiseはメンバーの人気格差がえげついアイドルグループである。
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ところで、莉帆の家に集まっているのは私だけではない。
同じくメンバーの|柳町《やなぎまち》|初里《はつり》、|糸嶺《いとみね》マコト、|七宮《ななみや》|冬《ふゆ》も、私の隣に座っている。その顔は酷く神妙だった。
無理もない。きっと私も同じような顔をしている。
「紅茶でも、飲む?」
ぎこちない莉帆の声に、「お気遣いなく」と応える初里。
しかし全く聞こえていないように、莉帆はテキパキと慣れた手つきで紅茶の準備を始めた。
今、私達はリビングのテーブルを取り囲むように、真ん中を開けて座っている。
5回目の地獄が、始まる。
「どうぞ」
莉帆が紅茶を運んできた。2つずつ、慎重に二往復して。
「ありがと」「ごめんねわざわざ」「さんきゅ」「ありがとうございます」
運び終えた莉帆は4人の礼にいちいち応えながら、ゆっくり4人の真ん中に座った。
急にズドンと落ちてくる重い沈黙。
「それで、急に呼び出して話したいこと、って?」
耐えきれないとばかりに、マコトが話を振る。
「あー、えーっと......経緯を話すと長くなっちゃうんだけどね」
「もう、アイドル辞めようと思う」
莉帆の言葉は予想通り、それ以上でも以下でもなく想像のそのままだった。
3人も同じだったのか、驚く者は誰もいない。
「理由は聞いてもいいの?」
「うん」
しかしあとに言葉が続かない。
「無理して言わなくてもいいよ」
嘘だ。言ってくれなければ納得できない。
そんな私達の胸中はわかりきっていたらしい莉帆は、聞いたことがないか細い声で打ち明けた。
「──|星来《せいら》がいなくなってから、限界が来ちゃったの」
アイドルの闇。
読んでくださった方に感謝です!