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メーベル 太中
(笑えない)
『私たちも変わってしまった』
なんて、どの口が言うのだか。
自分で彼を手放したのに、あの頃が懐かしい、だなんて。
『敵は消滅した。もう休め』
そう言って掴んだ左手の感触が。
『ちゃんと、拠点まで送り届けろ、よ』
そう言って叩かれた胸の痛みが。
少しずつ心を侵食する。
何度も何度も胸の虚しさを誤魔化し乍ら、共に組んでは離れている。
(莫迦だなぁ、私)
織田作を理由にしても、森さんが図ったことだとしても、何も変わりはしないと云うのに。
そんなことを考え乍ら見上げた空は、水の向こうで曇り、暗く。
私は水音を上げながら身を起こすと、何かを振り払うように頭を振った。
髪から舞った水滴が川に落ちる。
私が陸へ上がり、再び眠ったような川に、私は一瞥をくれると帰路についた。
(おやすみ)
だから
この虚しさに向き合うのは闇が明けてから。
朝日を見るまでは蓋をしていたい。
こうやってぽっかりと空いた穴に詰め物をして目を瞑る。
(寂しい)
ふと浮かんだこんな言葉に深い意味などは無いから。
どうか目を瞑って。体を丸めて。
(経た時間ってだけなんだろ)
この四年間、人肌恋しさを何度感じただろう。
何故寒いのか。
其れは時のせい。
どこか噛み合わない自問自答を繰り返しながら、今日も夜を迎える。
『そんな君が大好きだよ』
昔彼奴が口にした言葉を思い出す。
あの頃はひたすらに彼奴が憎らしかったと云うのに。
(分かってるよ)
大した意味などないと。
でも、その“好き”にでも縋っていないとこの寒さが纏わり付いて離れない。
『変わらないね、君』
その言葉にも自分は揺れてしまうのに。
自分を置いて行ったのは。
何故?
この寒さを誤魔化してしまうのは彼奴の言葉が怖いから。
彼奴が自分を嫌いなのは分かりきってしまうのに、都合の良い部分だけを切り取ってしまいそうで。
マフィアにいた彼奴に、最後に会った時。
彼奴は珍しく煙草を燻らせていた。
口をつけるわけでもなく、火の点いた煙草を見つめ続けていた。
『何してんだよ』
『別に』
そんな彼奴に俺は声をかけた。
けれど何も答えなかった。
『またね』
最後に彼奴はそう言った。
彼奴が持った火が、遠く、遠くなっていく。
その次の日、彼奴は去り、車は爆破され、俺は葡萄酒を空けた。
この虚しさの意味に、真剣に応えるにはもう余りに時が経ち過ぎた。
そう思って俺は目を瞑る。
ただただ、目の前の敵を考えていた蒼い時代。
いつだか其れは林檎の様に紅く染まって。
いつの間にか黒く。
この覚束ない想いばかりが募って、|支《つか》えて。
嗚呼、どうしようもない。
だから
彼と、彼奴と、向き合うのは昊が白んでから。
そればかりを思って今日も目を瞑る。
『何故なら私たちは運命の──』
あの後、私は何を言おうとした?
あの後、彼奴は何を言おうとした?
どんなに蓋をしても溢れてきてしまう問を、もう一度仕舞って。
そうすれば、触れられそうな程にその存在を主張する虚しさが、寂しさが残った。
・
眠り姫です!
最近バルーンにハマりにハマっています(紫:遅くね?)うっさい。
なかでもこのメーベル、そしてレディーレやveil、パメラは太中に似合い過ぎていないか!? となりまして
曲パロを公開した次第です
他の曲もしたいなー
では、この辺で
読んでくれたあなたに、心からの祝福を!