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私たちの日常 制服
2階:お気に入りの場所と、大切なクローゼット
扉を開けて外に出ようとしたその時、三女のらこが慌てて声を上げました。
「待って~~!クローゼットの中にあるポケモンセンターの服着なきゃ!」
その声に、長女のつばさがハッとして足を止めます。
「そうだった!らこ、教えてくれてありがとう。私としたことが、気合が入りすぎて忘れちゃうところだったよ」
つばさは明るく笑いながら、みんなを連れて2階へと引き返しました。
2階の廊下には、壁際に積み上げられたたくさんの古い本があります。それは、しおんとこのみが仕事の合間や休日に何度も読み返している、二人のお気に入りの場所。文字がかすれ、ページが茶色くなった本たちが、静かに4人を迎えます。
その図書コーナーをそっと抜けた突き当たりに、そのクローゼットはありました。
ボロボロの家の中で、そこだけが魔法がかかったように綺麗に磨かれています。つばさがゆっくりと扉を開けると、中には4人分の**「ポケモンセンターの制服」**が、大切に、大切に並んで掛けられていました。
「わあ……何度見ても、やっぱり可愛いねっ!」
らこが目を輝かせて、自分の制服を手に取ります。
「……うん。この服を着ると、自分じゃないみたいに強くなれる気がする」
しおんが丁寧に制服のシワを伸ばすと、このみもしおんの隣で、ピンク色の生地を愛おしそうに撫でました。
魔法の制服に身を包んで
薄いおかゆしか食べたことがなくても、ボロボロの家に住んでいても。
この制服に袖を通すときだけは、彼女たちは「捨てられた子」ではなく、街の人々に頼りにされるプロフェッショナルになれるのです。
「よし! みんな、準備はいい? リボンも曲がってないかな?」
つばさが一人一人の襟元をチェックして、最後に自分の帽子をキリッと被りました。
「しおん、このみ、らこ。今日もミアレのポケモンたちのために、最高の仕事をしようね!」
「「「はいっ!」」」
クローゼットの鏡に映る4人は、さっきまでの「路地裏の女の子」ではありません。
誰よりも優しく、誰よりも輝く、ミアレシティ・ポケモンセンターのスタッフたち。
4人は今度こそ、胸を張って古い家の階段を駆け下りていきました。