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一、始まりノ時
夜空に浮かぶ月が、ゆっくりと黒く染まっていく。
誰もが異変に気付いていた。
空気は重く、風は止み、街には不気味な静寂が広がっている。
そして次の瞬間。
空が割れた。
「な、何だあれ!?」
人々の悲鳴が響く。
空間の裂け目から、黒い影の怪物が次々と現れた。
それは世界を滅ぼす存在。
黒蝕(こくしょく)。
黒い霧をまとい、赤い眼を輝かせながら街へ降り立つ。
建物が壊され、人々は逃げ惑う。
絶望が広がり始めたその時だった。
炎が夜空を貫く。
「どいて!」
少女の声が響く。
真紅の炎をまとった剣が黒蝕を切り裂いた。
ドォン!!
怪物が吹き飛ぶ。
そこに立っていたのは、
ノア・アークライト。
ASTRAL KNIGHTS最年少。
わずか13歳の少女だった。
「みんな避難して!」
炎の剣を構えながら叫ぶ。
しかし黒蝕は一体だけではない。
十体以上が街へ降り立っていた。
「数が多すぎるよ……!」
ノアが唇を噛んだ瞬間、
まぶしい光が降り注ぐ。
「心配するな。」
黒蝕が一瞬で消滅した。
光の槍を手に立っていたのは、
キル・ローゼン。
ノアの相棒である。
「キル!」
「無茶をするな、ノア。」
優しく微笑みながらも、その瞳は戦士そのものだった。
だがその時。
周囲の気温が急激に下がる。
氷が地面を覆い始めた。
「遅かったな。」
冷たい声。
現れたのはノアの兄、
ロゼ・アークライト。
蒼い氷の剣を握り、黒蝕を見据える。
「兄さん!」
「怪我はないか。」
「ないよ!」
ロゼは小さく頷くと、
巨大な氷柱を無数に生成した。
次の瞬間、
全ての黒蝕を貫いた。
街に歓声が上がる。
しかし。
ロゼの顔は険しいままだった。
「終わっていない。」
「え?」
すると空の裂け目がさらに広がる。
黒い雷が走った。
そして裂け目の奥から現れたのは、
巨大な黒い竜だった。
街全体を覆うほどの大きさ。
人々の顔から血の気が引く。
その竜の頭上には一人の男が立っていた。
銀色の髪。
黄金の瞳。
圧倒的な威圧感。
「…………。」
ロゼの表情が変わる。
キルも息を呑んだ。
「あれは、まさか……」
男は薄く笑った。
「久しいな、人間共。」
圧倒的な魔力が街を揺らす。
男の名は、
ルシアン・ドラグノフ。
NIGHTFALLの王。
『竜神』と恐れられる存在だった。
ノアは震える手で剣を握る。
初めて感じる恐怖。
だが目は逸らさない。
ルシアンはそんなノアを見下ろし、
少し興味深そうに笑った。
「ほう。」
「その年齢で私を見て逃げないか。」
ノアは炎を燃やす。
「誰かを守るためなら、逃げない!」
するとルシアンは楽しそうに笑った。
「面白い。」
その時だった。
空から巨大な炎の刃が落下する。
轟音と共にルシアンの前へ突き刺さる。
ズドォォォン!!
炎の中から現れた男。
真紅のマント。
巨大な大剣。
ASTRAL KNIGHTS総隊長。
レオン・ミステリア。
「子供相手にするとは趣味が悪いな。」
さらに。
冷気が周囲を覆う。
「総隊長。」
レオンの隣へ現れたのは、
副隊長。
アルト・ブレイド。
そして空から神々しい光が降り注ぐ。
「みんな無事ですか?」
聖剣トアライドを携えた
エリア・ローリアン。
ASTRAL KNIGHTS三大中心人物が揃った。
ルシアンは満足そうに頷く。
「なるほど。」
「これが今代の騎士達か。」
レオンは大剣イグニスを構える。
「ルシアン。」
「ここで終わらせる。」
しかしルシアンは首を振った。
「まだ時ではない。」
その瞬間。
巨大な魔法陣が空に現れる。
「ひとつだけ忠告してやろう。」
世界中に響く声。
「黒蝕の王は、すでに目覚め始めている。」
全員が息を呑む。
ルシアンは不敵な笑みを浮かべた。
「お前たちに残された時間は少ない。」
黒い炎が渦を巻く。
「せいぜい抗ってみせろ。」
ルシアンの姿が消える。
黒い竜も消滅した。
街に再び静寂が訪れる。
しかし誰も安心できなかった。
レオンは空を見上げる。
アルトは険しい表情を浮かべる。
エリアは祈るように剣を握る。
そしてノアは拳を握り締めた。
「私が守る。」
「みんなを。」
夜空の月は、まだ黒く染まったままだった。
世界を滅ぼす黒蝕との戦いが、
今、始まる。
読んでくれてありがとうございました