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シティ・ロマンス 第八話
「眼鏡なんてかけるんだぁ」
邪魔しないでと言った五秒後、佐倉さんが口を開いた。
「まぁ…」
「なんだようその返事。掛けさせてー」
「あっ、ちょっと!」
「…」
「…」
「…これ度強くない?」
「これじゃないと何も見えないんですよ」
「こんな時間に外でパソコンなんかいじってるからじゃないか〜?」
「そうは言っても締め切りやばいんですよ」
「なんのレポートなの?あ、眼鏡返すね」
「なんか…裁判の平等性とか…」
「君法学部なの!?!?!?!?」
「言いませんでしたっけ」
「聞いてない聞いてない!!」
「弁護士志望なんです。おじいさんの代から続いてて」
「へぇ〜。夢があるね」
「…」
「…うん?」
「本当は…なりたくなんです」
「へ?」
「父さんがなれって言ったから…一応法学部で頑張ってるんですけど…」
「…」
「僕は弁護士なんかになりたくないんです」
「本当は…作曲家になりたい。音楽がやりたいんです。産まれた時からずっとそう思ってるんです。僕には夢があるんです」
「…」
「まあ…そう言ったとこで……」
そこで言葉が詰まってしまった。そして泣いた。声をあげて泣いた。
「ごめんなさい…情けないですよね…」
「…夢、叶うと思うよ」
「…」
「私、そういう人たちいっぱい見てきたんだ。みんなよく頑張ってた。君も頑張ってると思うよ」
「…」
「まだ、間に合いますかね」
「All our dreams can come true, if we have the courage to pursue them.」
「…?」
「私が一番尊敬して、信頼して、憧れてる人の言葉」
「頑張ってね」
その言葉は、僕の背中を強く押した。