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13話「希望の先へ」
「みんな!暴食に気をつけろ!!全方向厳重警戒!!」
「ナツキさん?」
「オットー・スーウェン…イタダ__」
「インヴィジブル・プロビデンス!!!!」
見えざる手がロイを襲う
「がぁ!?」
「…!アルデバラン…イタダキマス!!!!」
スバルは…その光景を静観していた
「…え?」
「…ごちそうさまでした」
「…あれ…ここ…どこ…だ?」
「あァ…記憶が流れ__」
「ここからが…俺たちの反撃だ!!」
ロイの顔から、初めて余裕が消えた。
「待っ__」
見えざる手が、再びその身体を拘束する。
「う、あ……っ!」
「暴食」
スバルの声は、怒鳴るでもなく、冷たかった。
「二度と同じ苦しみを味わいたくなかったら、記憶を返せ」
「やめろ……っ!また死ぬ……っ!やめろォォォ!!」
ロイの瞳が、恐怖に染まっていた。
それは傷の痛みではない。
アルデバランの記憶に触れた者だけが見る、終わりのない“領域”への恐怖だった。
ロイの身体が地面を転がった。
「やめろ……っ!また死ぬ……っ!戻る……戻る戻る戻る戻る……っ!!」
その瞳は焦点を失い、見えていない何かを見続けている。
スバルは静かに息を吐いた。
「……アルの記憶を見たんだな」
「来るなァ!!」
ロイが悲鳴を上げる。
「死ぬ……死ぬ……死ぬ……っ!終わらない……っ!あの領域は……っ!」
オットーが顔を引きつらせた。
「ナツキさん、これ……」
「暴食が記憶を食った結果だ」
スバルの声は、驚くほど冷静だった。
「他人の人生を覗くことには慣れてても、“終わらない死”には耐性がなかったらしい」
ロイは頭を抱え、地面を掻きむしる。
「いやだ……っ!戻るのは嫌だァ!!また同じところに……っ!」
その姿は、もはや魔女教の大罪司教ではなかった。
ただ恐怖に壊れかけた、一人の人間だった。
「今だ、全員下がれ!」
スバルの指示に、ラムとユリウスが即座に動く。
ガーフィールが眉をひそめた。
「大将、今ならやれるんじゃねぇのか!?」
「やれる。だからこそ、まだやらない」
「……は?」
スバルはロイから視線を逸らさない。
「こいつは今、アルの記憶に飲まれてる。下手に近づけば、何を食うかわからない」
ベアトリスが小さく頷いた。
「正気と狂気の境目にいる、というわけかしら」
「ああ。だからここからは、力押しじゃない」
スバルは一歩前に出る。
「交渉だ」
ロイの肩がびくりと跳ねた。
「来るな……っ!」
「安心しろ。食うなとも、死ねとも言わない」
スバルはゆっくりと膝をついた。
「俺が欲しいのは一つだけだ」
ロイの瞳が揺れる。
「……なん、だよ……」
「返せ」
短い一言だった。
「セッシー、エミリアの記憶と名前を」
ロイは震えながら笑った。
「は、はは……っ!返したら……俺を殺すんだろォ……?」
「殺さない」
「嘘だァ!!」
「じゃあ聞く」
スバルの目が、まっすぐロイを射抜いた。
「もう一度、アルの記憶を全部見るか?」
ロイの顔から血の気が引いた。
「やめろ……」
「返さないなら、俺はアルに頼む」
「やめろォ!!」
「お前に“領域”を最後まで見せる」
「やめろやめろやめろやめろォォォォ!!」
ロイは耳を塞ぎ、子供のように叫んだ。
静寂が落ちる。
誰も動けなかった。
スバルだけが、静かに言った。
「選べ、ロイ・アルファルド」
「セッシー、エミリアの記憶と名前を返すか」
「それとも、“終わらない死”をもう一度味わうか」
ロイの瞳から、涙がこぼれた。
「……っ、なんで……」
「なんでお前が……そんな目をするんだよ……」
スバルは答えなかった。
ただ、その目には確かにあった。
絶望を知った者だけが持つ、静かな覚悟が。
勝った…俺たちが…勝ったんだ
空を見ると……数羽の白い鳥が飛んでいた。
「__あの鳥って…監視塔の時に…」
<`「ええ、始めましょう。地獄を。ループを。終わりなき世界へ。今、|誘《いざな》いましょう」`>
「__あ」
白い鳥が、スバルの肩にとまった。
その瞳が、静かにこちらを見つめる。
どこかで見た白だった。
監視塔で。
いや__もっと以前に。
「__あ」
次の瞬間、世界がずれた。
時間が戻る。
「__あ」
「なんでお前が……そんな目をするんだよ……」
死んだ?戻った?なんで?何があった?何をした?なんで死んだ?原因は…?理由は……__
<`「あら、死んじゃいましたか?」`>
14話次回予告
「もし…あの時…白い鳥に餌をあげていたら…」
「それってそんな大事なことなのかよ。兄弟」
「大事だろ!!餌あげてたら…なんか…こう…襲われなかったかもしれねぇだろ!」
「根拠は?」
「食べ物を前にして食いつかないものはいない。さぁ、アル、一緒に納豆の匂いでも嗅ごうぜ?」
「クンカ、クンカ」
「きょ、兄弟?」
「クンカ、クンカ」
「ク…クンカ、クンカ」
「クンカ、クンカ」
「クンカ、クンカ」
「次回14話「白の観測者」クンカ、クンカ」
「クンカ、クンカ」
「クンカ、クンカ」
「ク…兄弟…俺納豆の臭い嫌いなんだぜ?オエエエエエエエ!!」
「日本人としてあり得ねぇな」