公開中
日常1:ある日の朝
ミアレシティの夜明けは、プリズムタワーの先端が金色に染まることから始まります。しかし、路地裏の廃屋に届くのは、湿り気を帯びた薄暗い光だけ。
「……うう、寒い。しおん、足、当たってるよ……」
一番下のこのみが、薄い毛布の中で身を縮めます。4人は狭い2階の一角で、お互いの体温を分け合うようにして眠っていました。
「ごめん。……でも、起きなきゃ。遅刻したら、ジョーイさんに迷惑かかる」
しおんが眠い目をこすりながら体を起こします。彼女の朝は、まず「家の現状確認」から始まります。
「つばさ姉ちゃん、起きて。……あ、もういない」
1階に降りると、長女のつばさがすでに動いていました。
「おはよー! 見て、今日の雨漏りバケツ、ちょうど満タン! これで顔が洗えるよ!」
つばさは、昨晩の雨で溜まった水を、ヒビの入った洗面器に移していました。ろ過なんてできていませんが、彼女たちにとっては貴重な生活用水です。
「らこ! 起きなさい! ほら、今日もミアレ一番の笑顔を作るよ!」
「……むにゃ。……おはよーっ! 今日はピカチュウを100匹なでる夢を見たから、縁起がいいね!」
らこが跳ねるように起きてきます。
4人は代わる代わる、冷たい水で顔を洗います。
そして、この家で唯一「綺麗」に保たれている場所へ向かいました。3階の、比較的雨漏りが少ない部屋にある、ガムテープで補強された古いタンス。
その中には、真っ白でシワ一つないポケモンセンターの制服が収められています。
「このみ、えりが曲がってるよ」
しおんが、このみの制服を整えてあげます。
「……ありがとう、しおん姉ちゃん」
壁に立てかけられた、割れて破片が足りない鏡。
そこに映る自分たちを、4人は真剣な目で見つめます。
「よし! 制服を着れば、私たちは『路地裏のゴミ』じゃない。ポケモンたちの味方だ!」
つばさがパン、と自分の頬を叩いて気合を入れます。
「……お腹、鳴っちゃった」
このみが恥ずかしそうに言いました。
「大丈夫! 仕事に行けば、お昼にジョーイさんがたまにくれる『余ったきのみ』が食べられるかもしれないよ!」
らこが励ますように笑います。
4人は、ガタガタのドアを丁寧にしめ、光の射す表通りへと歩き出しました。