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リボンの結び目、星の火花
長いですが読んでみてね〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜‼️
第一章:木漏れ日の出会い
風が、そっと緑の葉を揺らす季節だった。
なだらかな丘が続く『ミストラル平原』の片隅に、その大きなクスノキは立っている。木陰にはいつも心地よい風が吹き抜け、お昼寝には絶好の場所だった。
「ふあ……、よく寝たぁ」
ニンフィアのルルは、大きなあくびをしながら身を起こした。桃色の美しい体に、蝶のような形をした一対のリボン。そこから伸びる長い触手を、ルルはストレッチするように優しく伸ばした。触手からは、周囲の気持ちを和らげる癒やしの波動が自然と放たれている。ルルはこの平原で、お気に入りの花を眺めたり、木の実を集めたりして、毎日を穏やかに過ごしていた。
その時、クスノキの裏側から「ジジ……」と、かすかな電気の爆ぜる音が聞こえた。
「あら?」
ルルがトコトコと歩いて木の裏へ回ると、そこには1匹のサンダースが丸くなって寝ていた。
鮮やかな黄色の体と、首回りの真っ白な針のようなたてがみ。しかし、その体は時折ピクピクと震え、背中の針から小さな火花が漏れている。
「(うう……、また上手く制御できないや……)」
サンダースのライは、夢の中でうなされていた。彼は生まれつき電気のエネルギーが人一倍強く、感情が高ぶったり、深く眠ったりすると、無意識に体に電気が溜まって火花を散らしてしまう性質があった。そのため、他のポケモンを驚かせたり傷つけたりしないよう、いつも少し緊張して生きていた。
ルルはそっと近づいた。ライから放たれるピリピリとした空気を感じたが、怖がることはなかった。
ルルは自分のリボン(触手)を優しく伸ばすと、ライの体にそっと触れた。
「大丈夫だよ、怖くないよ……」
ニンフィアの触手には、ポケモンの気持ちを和らげ、敵意を消し去る力がある。ルルが優しく癒やしの波動を送り込むと、ライの体からトゲトゲしさが消え、激しかった電気の火花が、みるみるうちに穏やかな光へと変わっていった。
「……ん……?」
ライがゆっくりと目を覚ます。視界に飛び込んできたのは、自分に触手を巻き付け、優しく微笑んでいる桃色の綺麗なポケモンだった。
「あ、ごめん! 僕、また電気を出しちゃって……危ないから離れて!」
ライは慌てて飛び起き、距離を取ろうとした。しかし、ルルはクスリと笑って、さらに一歩近づいた。
「ううん、全然危なくないよ。私はルル。あなたの電気、とっても綺麗ね。まるで夜空の星がパチパチ弾けているみたい」
「綺麗……? 僕の電気が……?」
ライは驚いて目を見開いた。今まで「トゲトゲして痛そう」と言われることはあっても、綺麗だなんて言われたのは初めてだった。ライの耳が、恥ずかしさで少し赤くなる。
「僕はライ。……驚かせちゃって、ごめんね」
「気にしないで。これからよろしくね、ライ」
これが、真逆の性質を持つ2匹の、長い長い物語の始まりだった。
第二章:触れ合う距離
それからというもの、ルルとライは毎日あのクスノキの下で集まるようになった。
ライはルルのために、高い崖の上にしか咲かない珍しい花を、その自慢の俊足でひとっ走りして採ってきてくれた。ルルはライのために、得意の触手を使って、高い枝にある甘いモモンの実を器用に落としてプレゼントした。
2匹で過ごす時間は、どこまでも穏やかで、優しさに満ちていた。
ライは、ルルの隣にいる時だけは、不思議と電気が暴走しないことに気づいていた。ルルの放つ癒やしの波動が、ライの心を芯からリラックスさせていたからだ。
「ルルと一緒にいると、すごく安心するんだ」
ある日の夕暮れ、ライはオレンジ色に染まる空を見上げながら呟いた。
「私もよ、ライ。ライはいつも私を気遣ってくれる。歩く速さを私に合わせてくれたり、風が強い時は風上に立ってくれたり。とっても優しいのね」
「それは……ルルに怪我をしてほしくないからさ」
ライは照れくさそうに下を向いた。
ルルはそんなライが愛おしくてたまらなかった。もっと近づきたい、もっと触れ合いたい。
しかし、ライはいつも、ルルから一歩引いた距離を保っていた。
「ライ、もっと近くに来て?」
ルルがそう言って近寄ると、ライは少し困ったように笑って後ずさりする。
「ルル、気持ちは嬉しいんだけど……僕の針は硬いし、もし急に電気が走ったら、ルルの綺麗な毛並みを焦がしちゃうかもしれない。だから、このくらいの距離がちょうどいいんだ」
ライは、ルルのことが大好きだからこそ、傷つけたくなくて距離を置いていた。
嫉妬も、誰かへの不満もない。ただ、相手を大切にしたいという純粋な想いだけが、2匹の間にあった。
ルルはライの優しさを理解しつつも、少しだけ寂しかった。
(どうすれば、ライを怖がらせずに、もっと寄り添えるかしら……)
ルルは、自分のリボンを見つめながら、あるアイデアを思いついた。
第三章:おまじないのリボン
次の日、ルルは小さなカゴいっぱいに、平原に生えている柔らかい「ワタコガシラ」の綿毛を集めてきた。
「ルル、それ何に使うの?」
不思議そうに尋ねるライに、ルルは嬉しそうに言った。
「これね、とっても柔らかくて、電気を通しにくい草の綿なの。これを私のリボンに少し編み込んでみたのよ」
ルルは自分の触手をライに見せた。パステルカラーの触手の先が、綿毛でさらにふわふわになっている。
「これなら、ライの針に触れても痛くないし、電気が来ても大丈夫。……試してみてもいい?」
ライはルルの健気な工夫に、胸が熱くなった。自分のために、そこまで考えてくれたことが嬉しかった。
「うん……。ゆっくり、ね」
ライは緊張で体を少し硬くした。背中の針がわずかに逆立つ。
ルルは優しく微笑み、ふわふわの綿毛がついた触手を、ゆっくりとライの首回りに伸ばした。そして、ライの真っ白なたてがみを包み込むように、そっとリボンを巻き付けた。
じわり、と温かい感触がライに伝わる。
電気は走らなかった。針がルルを傷つけることもなかった。
「……すごいや、ルル。全然痛くない。あったかいよ」
「ふふ、大成功。これが私たちの『おまじないのリボン』ね」
ルルはリボンを巻いたまま、ライの体にそっと頭を寄せた。サンダースの体は、ほんのりと温かく、静かな鼓動が聞こえる。ライもまた、ルルの桃色の頭に、自分の顔をそっと寄せた。
2匹の距離は、ついにゼロになった。
そこには、ただお互いを愛おしむ静かな時間が流れていた。
第四章:星降る夜の約束
数ヶ月が経ち、季節は秋から冬へと移り変わろうとしていた。
ミストラル平原の夜空は、1年で最も星が綺麗に見える時期を迎えていた。
その夜、2匹はクスノキの丘に並んで座り、夜空を見上げていた。ルルのリボンは、しっかりとライの体に結ばれている。
「ねえ、ライ。私、ライと出会えて本当によかった」
ルルが星空を見つめながら言った。
「僕もだよ、ルル。僕は自分の電気が嫌いだった。みんなを遠ざけちゃうから。でも、ルルが『綺麗』って言ってくれて、僕の電気を受け止めてくれて……初めて、この体で生まれてよかったって思えたんだ」
ライの言葉に、ルルは胸がいっぱいになり、リボンをぎゅっと引き寄せた。
「これからも、ずっと一緒にいてね。春が来ても、夏が来ても、次の冬が来ても。私はずっと、ライの隣でリボンを結んでいたいわ」
「うん。約束するよ、ルル。僕の足が動く限り、君の行きたい場所へどこへでも連れて行く。君が寂しい時は、僕の電気でいつでも夜空を照らすよ」
その時、夜空を大きなたすきをかけるように、美しい流れ星がいくつも走り抜けた。流星群だ。
「わあ……綺麗……!」
ルルの瞳が、星の光でキラキラと輝く。
ライはルルの横顔を見つめ、静かに心の中で願った。この幸せが、永遠に続きますように、と。
すると、ライの感情の高まりに応じるように、彼の背中の針から、黄金色の小さな光の粒がぽろぽろと溢れ出した。それは暴走した電気ではなく、ライの幸福感が形になったような、温かく優しい光の火花だった。
光の粒は、ルルの放つピンク色の癒やしの波動と混ざり合い、2匹の周りをふわふわと舞い上がった。まるで、2匹だけの小さな宇宙がそこにできたかのようだった。
「見て、ルル。僕たちの光だよ」
「ええ、本当に素敵……」
桃色のリボンと、黄金色の火花。
真逆の力を持つ2匹は、お互いを補い合い、最高の形で結ばれた。
平原を吹き抜ける冬の風は冷たかったが、クスノキの下にいる2匹の周りだけは、春のような温かさに包まれていた。2匹は身を寄せ合い、輝く星空の下で、いつまでも、いつまでも寄り添い続けるのだった。
(終)
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