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PROLOGUE: PROJECT_ALICE
--- *PROJECT_ALICE* ---
--- *STATUS : SLEEPING* ---
--- *ACTIVATION IN:* ---
--- *2180 YEARS 07 MONTHS 13 DAYS* ---
--- *WARNING:* ---
--- *CORE SYSTEM UNSTABLE* ---
--- *EXECUTE?* ---
--- *ーーYES ーーNO* ---
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オゾン色の淡い光を放つ画面の前で、科学者はしばらく動かなかった。
もう長いこと安らかに眠っていない彼の眼は深く窪んでいたが、その銀色の瞳だけは少年のように爛々と光っていた。
こんな時間まで研究室に残っているのはこの狂った老人ただ一人である。時計の秒針が無機質に進む音を除いて、痛々しいほどの静寂が壁の間に響く。窓の外の眠らない街は、看板の蛍光灯を酸性雨の水たまりに反射させてどろりと溶かしてしまう。天井の白いタイルに、ネオンの影が波紋をつくって揺れた。
科学者は長い溜息を吐くと、おもむろに腰掛けから立ち上がった。椅子の足に施された車輪がリノリウムの床に擦れて不快な音を立てる。彼は白衣を翻して、ガラス張りの研究室の端へ足を運んだ。
外の景色はディストピアそのものであった。
大気に吸い込まれるほどに高層な建物群が痩せた大地を埋め尽くし、それぞれが鉄筋の連絡通路で昆虫の巣のように繋がっている。所々で赤や黄色の表示灯が心音モニターのようにチカチカとリズムを刻んだ。
全てが合理化され、システムの管理下に置かれたこの世界は文明の頂点とも言えよう。有機的で感情的で非合理的な人間は最早必要とされず、科学者が佇むこのラボでも人工知能を究極化する生命実験が日々行われているのだ。
ジジジ、とどこか近い所で静電気が鳴る。科学者はようやく思い出したかのように椅子へ戻ると、微かに震える指先を実行キーの上に乗せた。
*ーーYES*
「おやすみ、アリス。」
星も見えない夜空を巡航する爆撃機の轟音が、ガラスの窓をわずかに揺さぶった。