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入学式編 4,友達との会話
kosui
放課後、授業が終わった後の教室は、すぐに活気を取り戻す。生徒たちは部活に向かう準備を始めたり、友達同士でおしゃべりをしたりしている。圭も、いつものように森田と一緒に帰ろうとしていたが、どうしても昨日の清水梨乃とのことが頭から離れなかった。思い返すと、まだ少し信じられない気持ちでいっぱいだ。
「なあ、圭!」突然、背後から呼ばれる。振り返ると、森田がにやにやしながら近づいてきた。
「なんだよ、森田?」圭は少しうろたえながら振り返った。森田のその表情を見て、何かを言われる前から予感があった。
「お前、また顔がニヤニヤしてるぞ。清水梨乃と一緒に帰ったってことで、そんなに浮かれてるのか?」森田は口元に笑みを浮かべ、圭をからかうように見つめた。
「浮かれてないって!」圭は焦って否定した。あんな冷静で高嶺の花のような存在が、自分と一緒に帰るなんて思ってもみなかった。その瞬間を何度も思い返していたが、それを他人に言うのは恥ずかしくて仕方がない。
「本当に?」森田は疑わしそうに言った。「でも、昨日はいつもより顔が赤かったし、明らかに嬉しそうだったじゃん。」
「それは…」圭は言葉に詰まる。確かに、昨日、清水梨乃と一緒に帰った時のことは、今思い返しても夢のように感じる。彼女が自分に話しかけてくれたことが、まるで奇跡のようだった。それが嬉しくて、つい顔が赤くなってしまったのだ。
「まあ、いいけどさ。」森田はにやりと笑いながら言う。「でもさ、清水梨乃みたいな女と一緒に帰れるなんて、普通に考えたらすごいことだよ。」
「すごくないって。」圭は頭を振る。少しでも自分が浮かれていることを森田に知られるのが嫌だった。「ただ、一緒に帰っただけだし。」
「いやいや、一緒に帰るなんて普通できないぞ?」森田は圭の肩を叩きながら言った。「あの清水梨乃って、他の男子となんてほとんど話さないだろ?それが、お前と一緒に帰るって、明らかにお前に興味があるってことじゃん。」
圭はその言葉に少しだけドキッとした。確かに、清水梨乃は他の男子とはほとんど関わらないし、彼女が自分と一緒に帰ることは、今までの自分からしたら考えられないことだった。それが、もしかしたら彼女が自分に少しでも興味を持っている証拠なのだろうか。
「うーん、でも、俺なんかが清水梨乃に興味を持たれているとは思えないし…。」圭は少し首をかしげる。
「いやいや、そんなことないだろ。」森田は真剣な顔で圭に言った。「お前だって、結構落ち着いてるし、頼りになる感じだろ?俺から見ても、圭は結構魅力的な奴だよ。」
「いや、それは…。」圭は恥ずかしそうに顔を赤らめる。友達にこんなことを言われるのは、少し照れくさい。でも、同時に嬉しい気持ちも湧いてきた。森田はいつも自分を応援してくれる友達だから、そう言ってくれることに心から感謝している。
「でも、圭が清水梨乃と話してると、なんか…自然に会話が弾んでる感じがするよな。」森田は続けた。「あの冷静な清水梨乃が、圭には素直に接してるっていうのが、なんかすごいことに思える。」
「ほんとに?」圭は少し驚いた顔をして森田を見た。「俺は、ただ普通に話しただけだし、そんな特別なことしてないけど。」
「いや、それが大事なんだよ。」森田はうんうんとうなずきながら言う。「お前が無理にカッコつけたりしないから、逆に清水梨乃もリラックスできるんだと思う。お前が自然体でいるから、彼女もそのままでいられるんじゃない?」
「なるほどな…。」圭は少し考え込んでみた。清水梨乃と話しているとき、確かに無理にカッコつけたりしなかった。ただ、彼女が何を言っても、素直に受け止めて、返すだけだった。それが良かったのかもしれない。
「でもさ、お前も分かってるだろ?」森田が続ける。「清水梨乃って、めちゃくちゃクールで、周りの男子からしたら手が届かない存在だろ。だからこそ、お前みたいな奴が、何気なく接している姿が、逆に他の男子にはない魅力になるんだよ。」
「そうなのかな?」圭は自分に自信が持てないまま答える。確かに、清水梨乃は周りの男子にとっては手が届かない存在に見える。彼女のクールな雰囲気や、完璧に近い容姿は、多くの男子が憧れるものだ。それに対して、圭は普通の男子だし、彼女に比べると特別なところは何もないように思える。
「そうだよ。お前が自信を持って接すれば、もっと良い結果が出ると思うよ。」森田は自信満々に言った。「でも、圭、もし次また一緒に帰れるチャンスがあったら、ちょっとだけでも素直に気持ちを伝えてみろよ。」
「気持ち?」圭は驚いて森田を見た。
「お前、清水梨乃に対して少なからず気持ちがあるんだろ?」森田はにやりと笑って言う。「それを、ちゃんと伝えることが大事だぞ。」
「うーん、まだそんなこと言えるわけないだろ。」圭は顔を赤くしながら答えた。「そんな急に告白とか、できないよ。」
「まあ、焦る必要はないけどさ。」森田は肩をすくめて言う。「でも、少なくともお前の気持ちを少しずつ伝えていけば、彼女もお前のことを意識するようになるかもしれないぞ。」
「分かったよ。」圭は少し考えてから答える。「でも、急には無理だから、少しずつだな。」
その後、二人は軽く会話を続けながら帰り道を歩いた。圭は森田の言葉を頭の中で何度も反芻しながら、自分の気持ちを整理していた。少しずつ、清水梨乃に対して何をすればいいのかが見えてきたような気がした。
その日、圭は帰宅途中に再び清水梨乃を見かけた。今度は目が合った。彼女は一瞬だけ視線を合わせ、何も言わずに歩き続けた。圭はその背中を見送りながら、次に会ったときには、もっと自然に接することができるようになりたいと思った。