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Ⅲ〈四年前〉
「ありがとうございます」
女性はほっと胸を撫で下ろし、大切そうに両手でピアスを包み込む。白衣の男性はそれを見ると、ほっと息をついて笑った。
「タンザナイトやアイオライトだったら割れてましたよ……サファイアで良かったですね……!」
その言葉に、ピアスを眺めていた魔女がぴくりと反応する。彼女は男性の顔をじっと覗き込んだ。
「その水色の髪に猫目! 研究家のクートワリア・ミフォリだね」
不意に名前を呼ばれた男性── クートワリアさんは、驚いて肩を跳ね上げる。丈の短い白衣をバタつかせ、彼は素早く慌てた。
「えっ、はい、クートワリアです! どうして僕の名前を?」
私はスッと二人の会話へ割って入る。
「やはりそうでしたか! 貴方は業界で有名ですよ。なんせ四年前に伝説の〈ダイヤモンド〉を目撃したという方ですから」
私の言葉に、魔女は面白そうに片眉を吊り上げた。彼女はクートワリアさんを射抜くような眼差しで見据える。
「クートワリア、一緒に〈竜の鉱脈〉へ行こう。私、この手で〈ダイヤ〉にとどめを刺したい」
それを聞いた彼は、少しだけ頬を引きつらせた。
「ちょーとまってください、僕と貴女は会ったことありますよね?」
「そう?」
「まさに四年前、出会い頭に吹き飛ばされた苦い思い出があり」
クートワリアさんはそう苦笑するが、実はあの爆風が来る瞬間、彼は身を翻して直撃を免れていた。いざという時の反射神経と危機管理能力は備えていそうだ。
魔女はきょとんと目を丸くし、それから「あー……」と得心がいったように声を漏らした。
「もしかして、双子の姉のこと言ってる? 私と同じ姿であちこちで暴れてて、本当に迷惑してるんだよね。たしかに私も爆破好きだけど、さすがに人まで攻撃しないから」
彼女はため息をつきつつも、どこかケラケラと楽しげに笑い飛ばす。
「私は被せられた不名誉を改善するために、竜討伐で社会貢献してる。だから〈ダイヤ〉も、姉のせいでこれ以上被害が出る前に私がどうにかしたいわけ。ね? 誤解しないでよ」
私は内心でフッと鼻を鳴らす。──この魔女も、私と同じで相当な詐術の持ち主ですね。
そんなことを考えていると、私のすぐ隣で、青いベレー帽の女性がごくりと唾を飲み込んだ。彼女はピアスと同じ青い瞳をきらきらと輝かせ、一歩前へ踏み出す。