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わたしちゅうぶらりん
いまだに視界はくすみ、灰色に染まっている。
『あんたもう終わりなんじゃない?』
あの子に言われたあの言葉を思い出す。
あの子の言う通り、終わりなのかもしれない。
無気力になり、ボーっと部屋の角を眺めていると、インターホンのチャイムが鳴った。
「・・・誰・・・」
唯はのそり、とベッドを出た。
ガチャ
「え・・・?」
ドアを開けると、そこには予想外の人物がいた。
「唯ちゃん、おはよう」
「先輩?!」
そこには、ひらり、と手を振る先輩の姿があった。
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急いで出した客用の座布団に先輩を座らせる。軽く「ありがと」と言うと先輩は背筋を伸ばした。それにつられて唯の背筋も伸びる。
「単刀直入に言うね」
先輩の顔が真剣になる。
「先生から・・・鬱の事聞いたんだ・・・」
「・・・そう、ですか・・・」
唯は不安だった。この事を知ったら先輩は心配するのでは、と。
いや、心配するに決まっている。そんな事望んでいない。絶対に嫌だ。
「それと・・・唯ちゃん、学校来ない理由ってさ・・・」
「彼女達、だよね?」
「あ・・・」
ことごとく、全てがばれていく。嫌だ。嫌だ。嫌だ。
「あ、で、でも、大丈夫です。私、大学元からそんなに好きじゃないし・・・」
絶望の中、声を絞り出す。頭が回らない・・・
「僕のせいだよね。ごめんね、ごめん・・・」
「違います!違うから・・・謝らないで下さい・・・ほら・・・っ!?」
何とか落ち着かせようと、話しかけた途端、先輩が急に抱きついてきた。
「は・・・?!」
「ごめん、言うのは今じゃないのは分かってる、でも・・・」
先輩は、大きく息を吸う。
「好きだ」
「・・・・え・・・・」
唯の顔が熱くなる。徐々に目も熱くなり、目から水が溢れ出した。
「私も・・・大好きです・・・っっ!」
気づいた時には口にしていた。先輩の背中に手を回す。
「・・・嬉しい・・・ありがとう・・・」
お互いに抱き合いながら、先輩は話しだした。
「君の鬱も、いじめの事も、全部抱えるから。でも、それは僕にとって苦痛じゃないから。お互いに助け合う事が、僕にとっての幸せだから」
先輩は、ゆっくりと、でも力強く説明した。唯は感情でぐちゃぐちゃになりながら「はい・・・」と答えた。
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あれから少しして、先輩は帰った。
唯はベッドに腰かけ、ボーっと部屋の角を見つめた。
これで良かったのだろうか。
考えても考えても答えは出ない。ただ、この幸せを失うのが、辛く、とても怖い。
この幸せを全部無駄にしたら、愛した罰を受けないといけないな・・・
でも・・・酷く優しい先輩の胸で、あんな風に泣けるだろうか。
全部夢なのでは?
もし夢なのなら・・・
「幸せな夢、だったな・・・」
明日が怖い。あの子が怖い。全部怖い。
怖い。怖い。怖い。
もし、この恐怖を、苦しみを、全部消し去る魔法があるとすれば・・・?
どんなペナルティがあっても、自分は使うだろう。
「ありがとう、先輩」
「わたし、ちゅうぶらりん」
それだけ言い残し、唯は宙に浮いた。
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それから、大学に唯が行くことはなく、先輩の前にも姿を現す事はなかった。
きゅくらりん・終
ども!ヤナギでぇす!
失踪することなく終われました!やったー!!
てなわけで、きゅくらりんは完結なんですが、是非いよわさん作「きゅうくらりん」聞いてみて下さい!お願い!神曲だから!
まあ、きゅうくらりんを今まで見てくれた方々、本当にありがとうございます!
もう自己満足で書いてるだけのものを見てくれてる、っていうのが、もう・・・ありがたいものです・・・
えーと、これからもちょいちょい書いていくつもりなので、よろしくお願いします!
ではでは~^^ /