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乙女解剖
乙女解剖であそぼうよ ドキドキしたいじゃんか誰だって
彼とはネットで知り合った。
SNSで、共通の趣味を持っていて。そこから、どんどん彼に引き込まれていった。
幸せだった。本名も教えて。毎日のように連絡して。なのに。
ある日、彼の家に行った。合鍵を持っていたから、連絡なしで。サプライズで。
なのに。
「え」
「あ!?ニナ!?あ、いや、違う!その・・・!」
「ねぇ、その女の子、誰」
「違う、これは・・・」
「あーもーいいから。浮気なんでしょ?」
「違うんだって!」
「あのさぁ、じゃあなんで女の子がベッドにいるの?」
「う、えと、あの・・・」
「はぁ、もういい。帰る」
そのまま私は、家に帰った。
ああ、嫌だ。グルグル考えていたら、もう夜だ。私は眠りについた。
心の傷。それは決して浅いものではないはず。でも、まだ、彼の事を完全には嫌いになれない。こんな私が嫌い。
あぁ、そうだ。恋愛なんて、痛いくらいがいいんだ。
そう知った。
あの夜から。
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「こんばんは。いま平気?」
「特に言いたい事もないんだけど」
携帯電話を片手に、独り言のように呟く。
電話しようと思っても、中々手を出せない。
でも、彼がいないと「いいな」も「いやだ」も、どれでもないや。
あぁ、ネットという仮面で、イチャついてら。
今思えば、あの頃から恋愛はちゃんと成り立っていなかったかもしれない。
本当の名で呼び合って。愛して。
でも、もう、嫌になっちゃった。
あぁ、そうか。
「行きたくない」って、そう言えばいいんだった。
そしたら、楽になれるかな?
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今日、朝起きてから、勇気を出して電話した。
「こんな早くにごめんね、起こしちゃったよね」
「え?あ、あぁ、いや、大丈夫」
浮気を見られた彼は、私から電話を掛けられるとは思っていなかったようで、あからさまに動揺していた。
「あの、どうしたの?」
「あぁ、そのね、」
私は言った。
「あなたが別の人のことを好きになるって夢を見ちゃって・・・」
「え、あ」
「? どうしたの」
「な、何でもない」
「そっか」
彼は今頃きっと、ベッドの女の横で、青ざめているだろう。
「でも、そんなことないよね?」
「う、うん!きっと、そんなことしない!」
完璧には否定しないんだ。ねぇ、否定してよ。
ねぇ、愛して?
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あぁ、そうだ。きっと思い込みだったんだ。私が、勘違いしてたんだ。
当たり前だけど、最近冷たいね。
スマホが鳴った。誰からか確認したとき、嫌な予感がした。
彼からだ。
深呼吸をして、開く。
「会いたいんだけど、会えない?」
は?
え、なに?
まだそんなこと言えるの?私が、電話で、|悪戯《いたずら》に忘れたふりしたから?本当に忘れたんだと思ってる?あぁもう、嫌だ。
身を焦がす感情は、日に日に減ってきている。
もう自分がバカみたい。
「嫌」が。
「嫌」が。たまんない。
メールに返事する。
「ふざけてんの?もう私たちって終わりでしょ?」
「違う、誤解なんだ。あれは、違う」
文脈からも焦りが伝わる。
その誤解は、解けるのかな?解けるかどうか、確かめよう。
「もう言い逃れしないでよ。醜いから」
「ごめん」
あぁ、認めた。誤解は解けないね。
期待外れ。
最高潮だったのに。
あの夜は。
あぁ。こんなに身体をばらばらにされる気持ち、味わった事ないよ。
解剖されてるみたい。
本当の名前で呼び合って。なのに、裏切られた。
あぁ、もう、
「生きたくないよ・・・」
ドキドキしたかった。
ドキドキしたいでしょ?誰だって。
恥をしたい痛いくらいがいいんだって知った。
あの夜みたいに。
こんなに身体をばらばらにされて。まさに解剖。
乙女の身体をばらばらにするこれは、
乙女解剖
恥をしたい 痛いくらいが良いんだって知った あの夜みたいに