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人生って何かわかったようなわからないような。でも両親に言いたい。ありがとう
魔王は苛立った様子でそう言った。タケヒトは、わかったと答えた。
その後、タケヒトは魔王を連れて過去へと戻った。そして、これから起こる出来事について話した。
まず最初に、魔王に人間と仲良くなるよう説得することにした。そうすれば、自然と人間と仲良くしようとする意識が高まると思ったからだ。魔王は最初こそ嫌そうな顔をしていたが、最終的には協力してくれると言ってくれた。
タケヒトはホッと胸を撫で下ろした。これで一歩前進することができたからだ。
魔王の説得に成功したタケヒトは、次に過去の世界で魔王と出会った場所に向かった。そこで魔王は、不思議な生物と再会することができた。魔王様は、相変わらずですね。
その生物は、魔王に向かって笑いかけた。魔王は少し照れ臭そうな顔をして笑った。
魔王は過去の世界では普通の青年として過ごしている。その生活に満足しているようで、毎日が楽しいと言っていた。
それから魔王は、未来の世界に戻ってからも頻繁に過去の世界を訪れるようになった。魔王は過去の世界が好きになり、よく遊びに行くようになっていた。そんな魔王の姿を見ているうちに、タケヒトは少しずつだが魔王に対する警戒心を解いていた。
魔王は変わったのだ。タケヒトはそう思うことにした。
そんなある日のこと、タケヒトは魔王に頼み事をされた。なんでも、未来の世界にある楽器をいくつか作ってほしいのだという。
なぜそんなことを頼むのかというと、音楽が好きなのだと魔王は語った。魔王は今までずっと孤独だったため、暇があれば音楽を聴くようにしていたそうだ。そんな時に出会ったのが、音楽茶釜速報という日本の音響番組だったらしい。最初は興味本位で聴いていたが、そのうちに夢中になっていったそうだ。魔王はすっかり音楽の虜になっていた。
それを聞いたタケヒトは嬉しくなった。なぜなら、魔王が自分のことを仲間だと認めてくれたような気がしたからである。
タケヒトは、魔王のために新しい楽器を作ることを決意した。
魔王に頼まれてから数日後、タケヒトは魔王に頼まれて新たな楽器作りに取り掛かった。魔王はどんな楽器を作りたいのかをタケヒトに伝えた。魔王は、とにかくたくさんの種類の楽器を作ってほしいと頼んできた。
タケヒトは困ってしまった。なぜなら、魔王の要望が多すぎてどれから取り掛かればいいのかわからなかったからである。
とりあえずタケヒトは、魔王に要望を聞きながら必要な材料を集め始めた。
それから数日が経った頃、タケヒトはようやく全ての準備を整えることに成功した。
魔王は完成した楽器を見て感動していた。早速試してみたいと言い出したので、タケヒトは魔王を人気のない場所に案内した。
魔王が演奏を始めると、タケヒトの予想以上に素晴らしい音色が響き渡った。
魔王の演奏が終わった後、タケヒトはその出来に満足していた。
魔王も大喜びだった。そして、この楽器の名前は『ミュージックチャガマ』にしようと決めた。
魔王がこの楽器で演奏しているところを、俺は一度見てみたいな。
タケヒトがそう呟くと、魔王も同意した。魔王が言うには、近いうちに演奏会を開く予定なのだそうだ。
その時は、ぜひ見に来てくれ。
魔王は嬉しそうにそう言った。タケヒトは笑顔で約束すると言った。
魔王が未来の世界へ帰る日が来た。タケヒトは寂しくなりながらも、別れを告げる。
じゃあな、元気で暮らせよ。
タケヒトの言葉を聞いて、魔王は複雑な表情を浮かべた。
ああ、お前もな。
魔王がそう言い残すと、その姿が消えていった。
こうして、タケヒトは無事に現代に戻ることができたのである。
―――
「……それで、タケヒト君は過去に飛ばされて戻ってきたのね」
タケヒトは、女の問いに静かにうなずいた。
「……はい。俺は、魔王と一緒に未来へ帰りました。そして、現代の世界に帰ってきたんです……」
女は何も言わなかった。ただ、真剣な表情で話を聞いていた。
「これが、俺が体験してきたことです。信じてもらえますか?」
「ええ、信じるわ」
あっさりと肯定されて、タケヒトは驚いた。「……どうして、こんな突拍子もない話を信じられるんだ?」
その質問に対して、彼女は優しい口調で答えた。
「だって、あなたが嘘をついているようには見えないもの。それに、私も同じ経験をしたことがあるからわかるのよ。私は、過去の世界に行ったことがあって、そこで出会った人に助けられたという経験があるの。その人は、私の命の恩人でもあるわ。その人がいなかったら、今の私が生きていることはなかったでしょうね……」
彼女の言葉からは、強い想いが感じられた。
「……その人には、感謝してもしきれなかったわ。でも、その人に会うことは二度と叶わなかったの。その人の名前さえ知ることができれば、どれだけ良かったか……!」
その声は震えていた。
それからしばらくの間、二人は沈黙したままだった。
先に口を開いたのは、タケヒトの方だった。
「俺は、どうすればいいのかな?どうしたら、みんなを助けることができるのかな?俺はどうすればいいのかわからないよ……」
タケヒトは、苦しげな表情で悩みを打ち明けた。
その様子を見かねた彼女は、優しく語りかける。
「あなたのやるべき事は決まっているじゃない。自分の両親を助けるのよ。そして、仲間たちを助けてあげて。それができるのは、タケヒト君だけなんだから」
タケヒトはハッとした。そして、何かに気付いたかのように目を見開いた。
俺のやることは一つしかない。俺は、みんなのためなら何でもできる! その瞬間、タケヒトから放たれていた禍々しいオーラは綺麗に霧散した。
タケヒトは決意を新たにした。そして、絶対に両親と仲間を救うと心に誓った。
その日の夜、タケヒトは夢を見た。それは、かつて自分が過ごしていた日常の夢だった。そこには、両親と兄の姿が映し出されており、とても楽しそうに暮らしていた。
翌朝、タケヒトは目を覚ましてすぐに家を出た。向かう先は、自分の実家だ。
家の前に到着すると、そこにはタケヒトの家族の姿があった。母親はタケヒトを見ると泣き崩れてしまった。父親は泣きそうになるのを必死で堪えていた。
タケヒトは、家族の元へ向かった。そして、何も言わずに抱きついた。
すると突然の出来事に、両親は驚き戸惑っていた。
タケヒトは、今までのことを全て打ち明けることにした。自分は異世界から来た存在だということ、魔王と戦ってきたこと、魔王に協力してもらって過去に行き、両親の死の運命を変えることに成功したということなどを話した。
タケヒトは、これまで自分が抱えてきた不安を吐き出した。そして、これからもずっと一緒に暮らしたいという気持ちを伝えた。
すると、父は泣きながらタケヒトを抱き締めた。母は、そんな二人を優しく見守った。
タケヒトは、父と母に本当の名前を教えた。
その名は、タケヒト・シンヤといった。
タケヒトは、両親とともに暮らすことになった。だが、いつまでも過去の世界で暮らすわけにはいかないと考えた。そのため、両親には一時的に別の世界へ移住してもらうことにした。
そこでタケヒトは、ある提案をする。
俺が過去に行って両親の死を回避できたとしても、必ずまた誰かが死ぬことになるんだ。だから、俺は両親の代わりに俺の仲間を守っていこうと思うんだ。
その意見に対して、父も賛成してくれた。タケヒトが旅立つ時がやってきた。
父さん、母さん、今まで育ててくれてありがとう。
タケヒトはそう言って、別れを告げようとした。しかし、父さんに止められる。
ちょっと待ってくれ。
父さんはそう言うと、タケヒトに小さな箱を手渡した。
これは、父さんと母さんの宝物が入っている物入れだよ。これを持っていきなさい。
タケヒトは、父からの贈り物を受け取った。
それからしばらくして、タケヒトは旅立った。
これから先、何が起きるのか誰にも分からない。それでもタケヒトは自分の道を突き進んでいくだろう。
タケヒトの旅路に幸あれ……。
※この作品はフィクションです(笑)
プロローグ 西暦二〇九五年四月某日―—東京都心部から車で一時間ほどの山奥にひっそりと佇む、