公開中
【第3話】ターゲットが普通に強かった。
※若干のBL要素があります。(全体的な空気感、匂わせ程度)
とりあえずこいつの彼氏がとんだDV野郎だとか、
そういうのは置いといて...まずはこいつをどう始末するかだ。
散々歩いて、やっと人目につかないような路地裏に辿り着き、
俺らは戦闘の準備を始めた。こいつについて、俺は事前のリサーチをしたのだ。
こいつはアイスピックを用いた、ガチガチ近接型の脳筋ゴリラ。
なんだこいつほっそ、俺でもやれるわ!となったところを
近接でぶちかますのが得意らしい。
対して俺の武器は音が鳴らない拳銃と、投擲用の短刀。
ガチガチ遠距離型のド陰キャ戦法を得意とする。
ちょっと自分で思ってて悲しくなるのだが。
要は、距離を詰められなければこっちの勝ちというわけだ。
武器はアイスピック一本だけらしいから、まさか投げるなんて真似もしないだろう。
俺のように、投げるために何本も持っているならいいものの
あいつはあれを投げたら、手持ち無沙汰になってしまう。
さすがに手ぶらのやつに負ける俺ではない。
多分勝ったから、二川には風呂食って飯入っててもらおう。
「行くぞ阿部」
「どーぞどーぞ」
そう言ってから、橘は馬鹿正直に真正面を突っ切ってくる。
猪かなにかなのか?とりあえず、この調子で来てくれるなら勝ち申した。
こいつに負けないスピードで後退しながら、短刀を一気に二本投げた。
馬鹿みたいに突っ込んできている時に、これはきついのではないだろうか。
橘は一瞬驚いた顔をしたものの、短刀の一本をピックで弾き飛ばした。
ここまでは予定調和のようなものだ。だがここから。
もう一本、同時に投げていた短刀をどう捌くか?
アイスピックは一本を弾き飛ばすので精一杯。
もう一本弾き飛ばすには、恐ろしい速さで腕を動かさないと不可能。
これは勝った、そう思った。
だが橘は、素手で自分に向かってくる短刀をキャッチし、
そのままこちらへリリースしてきた。
いや待て、こんなキャッチ・アンド・リリース許されていいのか。
恐ろしい速度で投げ返された短刀が迫ってくる。
そんなこと出来るんだったら、普通に超高速で腕動かして
アイスピックで弾き飛ばすほうが、効率がいいだろうに。
魅せプか。魅せプなのか。
仮にも世界一の殺し屋相手に、魅せプなんてするやついるのか。
いやここにいた。
俺はリリースされた短刀を間一髪で避け、
突っ込んでくる橘をよく見る。ここの位置に叩き込む。
拳銃を構え、すぐに打つ。
普通狙って打つには、もう少し構えたほうが安定感が増す。
だがこの距離、狙わなくたって外さないほどの至近距離だ。
今度こそ勝った。鉛玉はやつのけったいな脳みそを突き破り、
生命活動を完全に停止させる。
「甘いな」
橘がそう呟いた、気がした。
こいつは至近距離で発砲された銃弾を、やすやすと避けてみせた。
まさかそんなはずは、こいつは俺より強いのか?
いや、技術の面では俺が勝っている。
ならこいつは、勘だ。それと動体視力。
俺が世界一の殺し屋なら、こいつは世界一の獣。
土俵が違うのなら、決着など着くのだろうか...?
喉元に突き立てられたアイスピック。
だが俺の拳銃も、同じくやつの脳天に突き立てられていた。
お互いに大きくため息を付く。
「これは...」
「引き分け、だな」
こんなに派手にやったのに決着がつかなかったという、
少しの疲労感を覚えながらも、とりあえず得物を仕舞う。
その瞬間、橘の方からスマホの通知音が聞こえた。
橘はすぐにアイスピックを仕舞い、代わりにスマホを取り出す。
お互いの位置関係のせいで、スマホの画面がこっちにも見えてしまった。
《やっぱりたっチャンさっきの男とやってんじゃないの?
おれ寂しいナ...寝取られ気分も悪くないケドね》
きっもーーーーーーーい。
本当になんでこの男はこんなやつと付き合ってるんだ。
見る目なさそうだもんな、と一人で納得する。
橘は素早い速度で画面を叩き、すぐに返信を返した。
またあの淡白な文章かと思いきや、様子が違う。
《そんなことないよ?わたしは彼ピくんが一番だからね!》
...このバカップルは一生爆発していればいい。
いつものように橘は、彼氏に呼ばれたから帰ると言って
そのままひとりで帰っていってしまった。
それにしても、この胸のざわざわはなんなのだろう。
わかった、バカを目の当たりにした共感性羞恥だ。
あー理解不能。そう考えながら、俺も帰路についた。
〜あとがきクソ茶番〜
二川「なんか面白いこと言ってくださいっす」
阿部「あぁん?しょうがねえな」
阿部「人を殺すときに狙う場所とかけてテストの点数とときます」
二川「その心は」
阿部「どちらも脳天(NO点)でしょう、ってな!がはは!」
二川「うっす...これが本番じゃなくてよかったっすね...」
阿部「たった今依頼が来たからお前を殺す」